第2話「告げること、告げなくていいこと」

2年前の冬︒
2階の3号室に泊まっていた
旅の商人が︑夜中に
魔物に襲われて亡くなった︒

リタ:言わなきゃ︑だめ?
言ったら︑また
値なしに戻る︒

ケイ:前の世界でも︑
いちばん多かった
相談だ︒
ケイ:隠して売れば︑
後で必ず揉める︒
そして︑次に買う人が
いなくなる︒

前の世界で一度だけ︑見た︒
隠して売られた家の買い主が︑
泣きながら
事務所に来た日を︒
リタ:︙︙父さんのことも?
父さんも︑
この宿で死んだ︒

ケイ:お父さんは︑
病気だったね︒
前の世界の国の手引き
(人の死の告知に関する
ガイドライン)は︑
そう決めていた︒
告げる死事件や事故など、それ以外の死。※貸す時は、起きてから概ね3年たてば、原則として告げなくてよい。※売る時には、その年数の目安は無い。
リタ:3号室のことは︙︙
ケイ:売るなら︑告げる︒
年数や死因にかかわらず告げる時・買う人、借りる人から聞かれた時・世の中に広く知られた事件などで、買う人が知っておくべき事情がある時
告げる中身いつ・どこで・何が原因か(分からなければ、分からないと)。亡くなった人の名前や、詳しい様子までは告げない。後で揉めないよう、書いて渡すのが良い。
ケイ:ただし︑
告げるのは
確かめた事だけだ︒

年老いた衛兵:2年前の冬の件なら︑
わしが退治した︒
奴は裏の古井戸から
上がってきたんだ︒
査定書|確かめた事(月見鳥亭)2年前の冬・2階の3号室泊まり客が魔物に襲われて亡くなった魔物は裏の古井戸から(衛兵の記録)衛兵が退治・床と壁は張り替え済み


告知書(月見鳥亭)2年前の冬、2階の3号室で、泊まり客が夜中に魔物に襲われて亡くなりました。魔物は町の衛兵が退治し、部屋の床と壁は張り替えてあります。
リタ:昨日は︑
答えられなくて
ごめんなさい︒

ドーラ:お父さんの事は︑
書いてないね︒
ケイ:病で亡くなりました︒
聞かれたので︑
お答えします︒
ドーラ:︙︙正直だね︒
部屋を見せてもらうよ︒


ドーラ:冒険者が気にするのは︑
一つだけ︒
魔物が︑どこから来たか︒
ケイ:衛兵の記録では︑
裏の古井戸から
上がってきた︒

ケイ:今は鉄の格子で
塞いであります︒
昨日︑俺が
見てきました︒

ドーラ:怖がる客もいる︒
その分は︑
値から引かせてもらう︒
ドーラ:でも︑隠さなかった分︑
あんたたちを信じる︒
買うよ︒
ドーラ:値は︑建物の分も
出してから決めよう︒
事件のあった家を︑
どれだけ嫌うかは︑
人によって違う︒
だから先に告げて︑
買う人に決めてもらう︒

値は︑隠した事の上には
立たない︒

リタ:︙︙ありがと︒
父さんの宿︑
隠し事なしで
渡せる︒
ケイ:まだだよ︒
建物の値が︑
残ってる︒



リタ:神前査定︙︙?
負けたら︑
二度と値を
口にできなくなる︒

ケイ:神託と︑
値の出し方で勝負か︒
︙︙望むところだ︒

大神殿の鑑定官グレゴール
グレゴール:80年︙︙︒
一度も︑
書き換えていない︒
値なしの土地、査定します
第2話「告げること、告げなくていいこと」終





