第5話

第5話「結果は、まだ来ない」

最終面接の控え室。リクルートスーツの日下部樹、若宮さくら、眼鏡をかけた自信ありげな男子学生の三人が、少し離れて座っている。

最終面接の日︒

社長室の隣の面接の部屋。雛森社長を真ん中に、岩城と眼鏡の男(中身はことは)が並んで座っている。向かいの椅子に樹。

雛森:日下部さん
うちでなければ
だめな理由は?

樹が両手を膝に置いたまま、まっすぐ前を見て話している。前より背筋が伸びている。

樹:工場見学で
雨の日の生菓子が
捨てられるのを
見ました

樹:模擬店で
売上の記録から
仕入れを決めた
やり方で
あの数を減らしたい
日持ちしないお菓子を
作っている御社で

〈評価票〉雛森 千代 の手元③ 入社後にしたい事:A「うちの工場で見た事と、自分のやり方がつながっている」

ことは:社長が
Aを書いた︙︙!

第5話「結果は、まだ来ない」

夕方の会議室。ホワイトボードに三枚の名前の札と、枠の数を示す小さな丸。雛森、岩城、柚木、眼鏡の男が囲んでいる。

最終面接 合否会議試作室 枠 1:若宮 さくら 内定生産管理 枠 1:先週、別の応募者に内定を出し、返事待ち日下部 樹:保留

岩城:若宮は決まりだ
日下部は︙︙
枠が無い

柚木:先に内定を出した方の
お返事の期限が
金曜です
それまでは
日下部さんは保留に

雛森の細い手が、紙の評価票の上に、小さく二文字を書き込んでいる(文字は読めない)。

〈評価票〉雛森 千代 の手元総合:保留

回想。夜の部屋で、パーカー姿のことはが、布団の上でスマートフォンを両手で握り、何度も画面を確かめている。

ことは:私も
こうやって
待たされてた

ことは:連絡が来ない夜は
ずっと
自分の何が
悪かったのか
考えてた

夜の会社の屋上。手すりにもたれて、眼鏡の男(中身はことは)がスマートフォンで話している。遠くに街の灯り。

九条:結果が遅いのは
たいてい
本人の出来とは
関係ない

結果が遅れる、よくある事情・合否会議の日が、まだ来ていない・ほかの応募者の面接が、まだ終わっていない・先に内定を出した人の、返事を待っている・社内の決裁に、時間がかかっている

面接の結果が来ない理由の解説

現実の事実会社によって違いますが、合否会議(ごうひかいぎ)の日程、ほかの応募者の面接、先に内定を出した人の返事、社内の決裁などを待っているために、結果の連絡が遅れることがあります。結果が遅いことが、そのまま不合格の合図とは限りません。

いつまで待てばいい?
面接の時に伝えられた日を目安にします。伝えられていなければ、面接の最後にこちらから聞いてかまいません。
問い合わせてもいい?
伝えられた日を過ぎても連絡が無い時は、応募先の採用の担当に、いつ頃連絡がもらえるかを問い合わせても失礼にはあたりません。

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九条:︙︙俺も
日付を言わずに
待たせた事が
何度もある

九条:君の体で
待つ側になって
初めて分かった
あの夜は 長い

眼鏡の男(中身はことは)の横顔の大写し。夜風に髪が揺れ、何かを決めた目をしている。
翌朝の人事部。眼鏡の男が柚木の机に身を乗り出して頼みごとをしている。柚木は受話器を手に、目を丸くしている。

ことは:柚木さん
日下部さんに
電話してください
「金曜までに
必ず連絡します」って

柚木:保留の方に
わざわざですか?

ことは:日付が分かるだけで
待つ夜が
少し短くなるんです

大学の研究室の廊下で、樹がスマートフォンを耳に当て、ほっとしたように壁にもたれて目を閉じている。

樹:︙︙ありがとう
ございます
金曜まで
待ちます

出版社のビルの受付の前で、リクルートスーツの女子学生(中身は九条)が、受付の電話の受話器を持って丁寧に頭を下げている。

九条:お返事を
1日だけ
待っていただけ
ませんか
本人が 自分で
決めたいと
言っているので

ことは:︙︙本人って
私のことだ

待たせる側も︑
待つ側も︒
日付を一つ言うだけで︑
夜の長さが変わる︒

金曜の朝の人事部。柚木が受話器を置き、驚いた顔で立ち上がっている。

柚木:課長!
生産管理の内定の方
辞退です!

ことは:じゃあ
日下部さんが――!

人事部の入口に、羽織姿の雛森社長が立っている。部屋の空気が静まり、社員たちが振り向く。

雛森:日下部くんは
まだ決めない

雛森社長の顔の大写し。口元に笑みを浮かべ、まっすぐ眼鏡の男を見ている。

雛森:空いた1人分
先週落とした
早瀬ことはさんを
もう一度
呼びなさい

眼鏡の男(中身はことは)が、驚きのあまり体をのけぞらせ、手に持った書類を床に落としている。紙が舞う。「バサッ」の描き文字。

ことは:私を︙︙!?
今 私の体には
九条さんが
入ってるのに!?

出版社のビルの前の歩道で、女子学生(中身は九条)がスマートフォンの画面を見て、目を見開いて立ち止まっている。

空いた席は︑1つ︒
日下部さんと︑
九条さんが入った
私の体が︑
それを争う︒

第5話「結果は、まだ来ない」

つづく

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あなた「君を落としたのは、俺だ」の電話の続きを考えたい

AIことはが怒って電話を切る話と、すぐ会う約束をする話で、2人の関係の始まり方が変わります。九条が理由を言えない事情を一つ持たせると、引っ張れます。

あなた怒って切る方で。その後の場面を

AIことは「……なら、あなたの席で、あなたのやり方を見てやる」。絵:夜の会議室、九条の名札を握ることは。

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この話で分かること

面接の結果が来ないのはなぜ?

会社によって違いますが、合否会議の日程を待っている、ほかの応募者の面接が終わるのを待っている、先に内定を出した人の返事を待っている、社内の決裁に時間がかかっている、などの事情で遅れることがあります。結果が遅いことが、そのまま不合格の合図とは限りません。

条件・例外

面接の時に「いつまでに連絡するか」を聞いておくと待ち方が決まります。その日を過ぎても連絡が無ければ、応募先に問い合わせても失礼にはあたりません。

物語との違い

作中の「保留」や枠の数は、架空の会社「くるみ座製菓」の物です。

最終面接の結果はいつ来る?

決まった日数はなく、会社ごとに違います。面接の最後に連絡の時期を伝える会社も多いので、伝えられなかった時は、こちらから聞いてかまいません。

条件・例外

ほかの会社の内定の返事の期限がある時は、それを伝えて、結果の時期を相談することもできます。

内定の返事の期限は、延ばしてもらえる?

会社に相談することはできます。延ばすかどうかは会社が決めますが、ほかの会社の結果を待っている、家族と相談したいなど、理由と、いつまでに返事ができるかをはっきり伝えると、相談に乗ってもらえることがあります。

条件・例外

延ばしてもらえない時もあります。返事の期限は、内定の知らせを受けた時に必ず確かめておきます。

この話の用語

面接の結果が来ない理由漫画の中で見る
現実の事実会社によって違いますが、合否会議(ごうひかいぎ)の日程、ほかの応募者の面接、先に内定を出した人の返事、社内の決裁などを待っているために、結果の連絡が遅れることがあります。結果が遅いことが、そのまま不合格の合図とは限りません。

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この話のあらすじ

日下部樹とライバルの応募者が最終面接に臨む。社長の雛森の「うちでなければ、だめな理由は?」に、樹は、工場で雨の日に売れ残る生菓子の数を、売上の記録から減らしたいと答える。合否会議で、若宮さくらは試作室の枠で内定に決まる。だが生産管理の枠は1人で、先に内定を出したライバルの返事を待っている。樹は「保留」になった。〈評価票〉の窓に見える「保留」の二文字に、ことはは、結果を待ってスマートフォンを握りしめていた自分を思い出す。電話で九条は、結果が遅れるのは、合否会議の日程やほかの応募者の返事待ちなど、本人の出来と関係ない事情が多いと話す。ことはは柚木に頼み、樹に「金曜までに必ず連絡します」と伝えてもらう。九条も、ことはと相談して、ハナミズキ書房に返事を1日待ってもらうよう頼む。待たせる側が日付を言うだけで、待つ側の夜は少し変わる。金曜の朝、ライバルが内定を辞退する。だが雛森は言う。「日下部くんは、まだ決めない。先週落とした早瀬ことはさんを、もう一度呼びなさい」。空いた1人分を、樹と、九条が入ったことはの体が争うことになる。

作者

人事のすみ

採用・面接の仕事を、面接を受ける側と見る側の両方から描いています。

この作品について

面接官が何を物差しに評価し、合否の会議で何が話されるかを、面接官と体が入れ替わった就活生の目で描いています。聞いてはいけない質問の決まりなど、面接の公的なルールも話の中で解説します。

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