第1話

第1話「5社から、電話が来た」

縦に長い絵。上に夜の住宅地の空と、窓が1つだけ明るい古い木造2階建ての家。真ん中に、段ボールの積まれた畳の居間で、座卓に向かいスマホの光を顔に受ける女性。下に、畳の上の封筒と、泥の付いた軍手。

土曜の︑
午前1時4分︒

母が亡くなって︑
1年︒

実家は︑
空き家のまま︒

〈ならべる査定 お申込み〉物件:母の家(木造2階建て・昭和53年に建った家)査定を頼む会社:5社(町の会社 2・全国の会社 3)連絡先1:宮部 千夏連絡先2:宮部 航(家の近くに住む弟)備考:平日の昼は仕事です。連絡は、朝7時台か夜に。☑ 選んだ会社へ、入力した内容を送ることに同意します

ならべる査定(さてい)(作中の一括査定(いっかつさてい)のサービス)の解説

作中の世界の決まり「ならべる査定」は作中の架空のサービスです。売り主が入れた家の情報と連絡先を、売り主が選んだ不動産(ふどうさん)会社へ届けます。売り主は無料で使えます。

作中の世界の決まり一括査定は、一度の申込みで、いくつかの不動産会社に家の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた家の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方は、サービスごとに申込みの画面で確かめます。

何社に頼めばいい?
決まった数はありません。頼む社数が多いほど、連絡も多く来ます。作中の千夏は、町の会社と全国の会社を合わせて5社に頼みました。

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個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意の解説

現実の事実個人情報(こじんじょうほう)保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。個人情報保護委員会のガイドラインは、同意を得る時は、本人が判断できるよう、合理的かつ適切な範囲の内容を明らかにするよう求めています。

出典

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細い横の帯の寄り。スマホの画面の上で止まる親指。画面の光で指先が白い。暗い居間。段ボールに囲まれ、座卓でスマホを見つめる女性。棚の上に、庭で笑う年配の女性の写真立て。

宮部 千夏:比べる
だけ

会社員。実家を売るか迷っている宮部 千夏

午前7時12分︒

朝の光の居間。座卓に突っ伏して眠る女性の横で、スマホが震え、橙の着信の光と震えの線が上へ広がる。

〈着信〉7:12 知らない番号7:12 知らない番号7:13 知らない番号

迷惑な時間の勧誘の禁止の解説

現実の事実宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)の施行規則は、不動産(ふどうさん)会社(宅地建物取引業者(たくちたてものとりひきぎょうしゃ))などが契約の勧誘をする時に、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることを禁じています(第16条の11 第1号 ホ)。何時から何時が迷惑かは決まりに書かれていないので、連絡してほしい時間を申込みの時に伝えておくと、すれ違いを減らせます。

出典

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居間で跳ね起き、寝ぐせのまま額に手を当ててスマホを耳に当てる女性。

三好 蓮:ならべる査定から
お申込みの
宮部様ですね

朝の明るいオフィス。ヘッドセットを付けた若い男性の営業が、メモを手に、にこやかに話している。机に缶コーヒー。

宮部 千夏:︙︙7時
ですけど

三好 蓮:備考に
朝7時台と
ありましたので

全国に店を持つ不動産会社の営業三好 蓮

宮部 千夏:︙︙書いたの
私だ

三好 蓮:明日の午後
お家を
見せていただけますか

宮部 千夏:見る
だけなら

同じ朝︒
ならべる査定の窓口︒

白い蛍光灯の窓口の部屋。並んだ机の一つで、ヘッドセットを付けた若い女性が画面を見つめ、後ろに立つ先輩の女性が画面を指さしている。

一括査定「ならべる査定」窓口の新人芦田 真帆

同じ窓口の3年目小野寺 円

〈ならべる査定 窓口の画面〉お申込み:宮部 千夏 様(午前1時4分)送った会社:5社7:12 三好(全国の会社):電話がつながった7:13 北条(町の会社):留守電に残した7:20 ほか2社:連絡先2へかけた

芦田 真帆:申し込んで
6時間で もう
電話が来てる

小野寺 円:早いでしょ
忙しいのは
ここから

机の電話の2つの外線のボタンが橙に光り、若い女性の窓口係が受話器をつかむ。

宮部 千夏(電話の声):5社 全部から
電話が
来るんですか?

芦田 真帆:あ はい
えっと
たぶん

小野寺 円:2番の電話
会社さんから
「連絡先に
つながらない」って

ヘッドセットのまま、もう1本の受話器を肩にはさんで、落ち着いて小さく笑う先輩の女性の寄り。

小野寺 円:売り主さんも
会社さんも
どっちも 間違ってない

芦田 真帆:︙︙どっちに
謝ればいいの

その頃︑実家の庭︒

晴れた昼の、古い木造2階建ての家の外観。伸びた庭の草を刈り払い機で刈る30代の男性。ズボンの後ろのポケットで、スマホが橙に光っている。

千夏の弟。実家の近くに住む宮部 航

弟は︑草刈りの音で︑
何も聞こえていない︒

その夜︒

夜の暗い居間。スマホを耳に当て、留守電を聞きながら目を見開く女性。画面の光だけが顔を照らす。

北条 匡(電話の声):宮部さんの
娘さんですね
駅前の 北条です

北条 匡(電話の声):お母さんの家
覚えてますよ

色のあせた昔の思い出。小さな不動産屋のカウンターで、年配の店主が若い母親に古い鍵を渡し、母親の手を小さな女の子が握っている。木の札の付いた鍵が垂れている。

2つ目の電話は︑
母と通った︑
町の不動産屋だった︒

第1話「5社から、電話が来た」

つづく

次の話 10月31日(土)更新

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あなた留守電の声が北条さんだと分かった後の、千夏の夜を考えたい

AI千夏が母の古い手帳を開き、昔の住所録に「北条」の名前を見つける形にすると、知らない番号だと思っていた電話が、母の暮らしにつながっていた事が出せます。

あなたその線で、台詞を

AI千夏(つぶやき)「……北条さん。お母さんの字」。手帳を閉じて「かけ直すのは、明日」。絵:手帳の上に置いたスマホの、橙に光る不在着信。

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この作品を読んだあなたへ

この話で分かること

不動産の一括査定を申し込むと、何が起きる?

入れた家の情報と連絡先が、選んだ不動産会社へ送られ、各社から電話やメールで査定の連絡が来ます。頼んだ社数の分だけ、連絡が来ることがあります。

条件・例外

送り先・社数・連絡の方法の選び方は、サービスごとに違います。申込みの画面の説明と同意の欄で確かめます。根拠:個人情報保護法 第27条(個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が要る)。

一括査定に入れた個人情報は、どこへ行く?

申込みの時に同意した送り先、つまり選んだ不動産会社へ送られます。同意する前に、送り先の会社と、何に使われるかの説明を読みます。

条件・例外

家族など、自分以外の人の連絡先を書く時は、先にその人に伝えておきます。根拠:個人情報保護法 第27条、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-6-1(同意を得る時は、本人が判断できるよう、合理的かつ適切な範囲の内容を明らかにする)。

査定の電話は、朝早くや夜遅くにも来る?

不動産会社(宅地建物取引業者)などが契約の勧誘をする時に、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることは、国の決まりで禁じられています。連絡してほしい時間は、申込みの時に書いておきます。

条件・例外

決まりに「何時から何時」という時刻は書かれていません。自分で書いた希望の時間には、電話が来ることがあります。根拠:宅地建物取引業法施行規則 第16条の11 第1号 ホ(宅地建物取引業法 第47条の2 第3項)。

この話の用語

ならべる査定(さてい)(作中の一括査定(いっかつさてい)のサービス)漫画の中で見る
作中の世界の決まり「ならべる査定」は作中の架空のサービスです。売り主が入れた家の情報と連絡先を、売り主が選んだ不動産(ふどうさん)会社へ届けます。売り主は無料で使えます。
作中の世界の決まり一括査定は、一度の申込みで、いくつかの不動産会社に家の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた家の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方は、サービスごとに申込みの画面で確かめます。
個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意漫画の中で見る
現実の事実個人情報(こじんじょうほう)保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。個人情報保護委員会のガイドラインは、同意を得る時は、本人が判断できるよう、合理的かつ適切な範囲の内容を明らかにするよう求めています。
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現実の事実宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)の施行規則は、不動産(ふどうさん)会社(宅地建物取引業者(たくちたてものとりひきぎょうしゃ))などが契約の勧誘をする時に、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることを禁じています(第16条の11 第1号 ホ)。何時から何時が迷惑かは決まりに書かれていないので、連絡してほしい時間を申込みの時に伝えておくと、すれ違いを減らせます。

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この話のあらすじ

母が亡くなって1年。空き家の実家の固定資産税と草刈りに疲れた宮部千夏は、土曜の午前1時、一括査定のサービス「ならべる査定」で5社に査定を申し込む。翌朝7時12分から、知らない番号の電話が鳴りはじめる。最初の電話の営業・三好は「備考に、朝7時台とありましたので」。書いたのは千夏だった。同じ朝、ならべる査定の窓口では、新人の芦田真帆が、売り主からの「5社全部から電話が来るのか」という問い合わせと、会社からの「連絡先につながらない」という電話を同時に受ける。先輩の小野寺円は「どっちも、間違ってない」と言う。その夜、千夏が留守電を聞くと、2つ目の電話の声は、子どもの頃に母と通った町の不動産屋、北条だった。

作者

あいみつ舎

比べて選ぶ人と、比べられる人。申込みの向こう側の両方を描いています。

この作品について

不動産の一括査定を申し込んだ時に起きる事、断り方、査定額の根拠などを、法令(e-Gov)・個人情報保護委員会・国土交通省の資料で確かめて描いています(確かめた出典は各話の解説に)。一括査定のサービス「ならべる査定」と、作中の不動産会社・人物・家・査定額は架空です。実在のサービス・会社の仕組みや料金を示す物ではありません。個別の売却・相続・税の判断は、不動産会社・法務局・税務署・専門家に確かめてください。

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