第5話

第5話「死亡届は、七日以内」

土曜の昼の、静かな市役所。閉まった正面と、明かりのついた横の通用口。前に止まる寝台車。

少し戻って︑
土曜の午後︒
5頁目を開く前︒
市役所は︑
閉まっていた︒

柏木:死亡届は
土日も 横の窓口で
預かってくれます

柏木:届書を持っていくのは
僕が代わりに
することも
多いんですけど

小春:自分で
出したいです
︙︙喪主なので

休日の受付の小さな窓口。カウンターの向こうに年配の職員。
カウンターの上の大きな用紙。左半分に小春の手がペンで書き込み、右半分には医師の欄(読めない)。

死亡届死亡した人 篠原 守届出人の資格 同居していない親族届出人 篠原 小春(長女)

柏木:同居していない
ご家族も
届出人に
なれます

死亡届(しぼうとどけ)の届出人(とどけでにん)と届出地(とどけでち)の解説

現実の事実死亡届は、同居の親族、その他の同居者、家主・地主などの順に届出の義務があり、同居していない親族や後見人(こうけんにん)なども届け出ることができます(戸籍法第87条)。届出先は、死亡地・本籍地(ほんせきち)・届出人の所在地のいずれかの市区町村です。届書を窓口へ持っていくのは、葬儀社などの代理の人でもよい自治体が多くあります。

いつまでに出す?
死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった時は3か月以内)です(戸籍法第86条)。

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用紙の右半分を見つめたまま、手を止める小春の顔の寄り。

死亡診断書(医師の記入)死亡したとき 午前2時50分

小春:2時50分

回想(色の抜けた現代の記憶)。夜中の東京の部屋。毛布にくるまって眠る小春と、床の暗いスマートフォン。

小春:私は
寝てた
次の日の
進行表の夢を
見てた

第5話「死亡届は、七日以内」

カウンターで小春の横に立ち、書類のファイルを持って静かに待つ柏木。

職員:お預かりします
︙︙はい
不備はありません

窓口の年配の職員が、小さく頭を下げて書類を差し出す。

職員:火葬の許可証です
ご愁傷さまでした

土日・夜間の死亡届(しぼうとどけ)の解説

作中の世界の決まり作中の市は、休日の窓口でも火葬許可証(かそうきょかしょう)をその場で出しています。

現実の事実多くの市区町村は、閉庁時間(へいちょうじかん)や土日祝日にも、夜間休日の窓口や宿直室(しゅくちょくしつ)で死亡届を預かります。火葬許可証をその場で渡す市(例:立川市)もあれば、夜間は交付せず、預かった届を翌朝に扱う市(例:広島市)もあります。火葬(かそう)の日程に関わるので、届ける前に交付の時間を確かめます。

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小春の両手の中の、火葬許可証の紙(読めない)。

火葬許可証死亡した人 篠原 守火葬の場所 市営斎場市長

柏木:これが無いと
斎場は
火葬ができません
月曜に
斎場に出します

柏木:火葬が済むと
裏に証明を書いて
お骨と一緒に
返してくれます
納骨の時に
それが要ります

火葬許可証(かそうきょかしょう)の解説

現実の事実死亡届(しぼうとどけ)を受理した市区町村長が火葬(かそう)を許可し、火葬許可証を交付します(墓地、埋葬等に関する法律 第5条・第8条)。火葬場(かそうば)の管理者は、火葬許可証を受け取った後でなければ火葬できません(同法第14条)。横浜市の斎場(さいじょう)では、火葬の後に許可証の裏に火葬済みの証明を記して、骨つぼと一緒に返しています。

納骨の時は?
墓地や納骨堂(のうこつどう)の管理者は、火葬許可証などを受け取った後でなければ、焼骨(しょうこつ)の埋蔵(まいぞう)・収蔵(しゅうぞう)をさせてはならないと決まっています(同法第14条)。なくさないようにします。

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帰りの寝台車の中。運転する柏木と、助手席で海を見る小春。

小春:柏木さん
父って
仕事を休む人
でした?

ハンドルを握ったまま、少し言いよどむ柏木の横顔。

柏木:︙︙一度も
いや
毎年
11月の頭だけ
早く上がってました

柏木:理由は
誰にも
あの守さんが
仕事を
休むなんて

小春:運動会には
来なかったのに

夕方の家の庭。折りたたみ机に大きな紙を広げ、名前を書き込む叔父。

勝:おう 帰ったか!
受付の名簿
作っといたぞ!

長く垂れた名簿の紙を、得意げに両手で掲げる叔父。

勝:町内会 漁協
小学校の同級生
兄貴が送った家の
息子と娘
︙︙280人だ

小春:叔父さん
それ 家族葬︙︙

勝:お別れの時間に
来る分だ!
焼香だけだ!
断るなって
書いてあったろ!

小春:︙︙父の弟だ
間違いなく

その夜︑5頁目に
「宮下」の名前が
出てきた︒

日曜の朝︒
台所で︑
母が待っていた︒

朝の光の差す台所のテーブル。湯のみを前に座る母と、向かいに座る小春。

小春:お母さん
宮下さんのこと

涙をにじませながら、かすかに笑う母の顔の寄り。

澄江:︙︙毎年ね
11月3日だけ
お父さん
帰りが遅かったの

澄江:20年
一度も
聞けなかった
聞いたら
何か終わる気がして

回想(鉛筆のセピア)。夜の食卓で、ラップをかけた皿を前に、一人で待つ若い頃の母。

澄江:「宮下」って
お父さんの寝言で
一回だけ
聞いたことがある

父の背広の
内ポケットから︑
小さな黒い手帳が
出てきた︒

開いた小さな黒い手帳。同じ位置に同じ短い書き込み(読めない)。

父の手帳11月3日 宮下

机の引き出しの中に、同じ小さな黒い手帳が二十冊、きちんと並んでいる。

引き出しの手帳は︑
20冊︒
どの年の
11月3日にも︑
同じ名前があった︒

暗がりの中、決意をにじませる小春の目の寄り。

小春:通夜は 今夜
宮下さんは
来る

小春:お父さん
通すよ
――でも
話は聞く

第5話「死亡届は、七日以内」

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AI小春が、仕事で覚えた進行管理のやり方を葬儀に持ち込む話にできます。父の段取り帳と小春の段取りがぶつかる所が見せ場になります。

あなた小春が段取りを書き出す場面を

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この話で分かること

死亡届はいつまでに、誰が、どこへ出す?

死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内)に出します。同居の親族などに届出の義務があり、同居していない親族も届け出ることができます。届出先は、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村です(戸籍法第25条・第86条〜第88条、法務省)。

条件・例外

届書を窓口へ持っていくのは、葬儀社などの代理の人でもよい自治体が多くあります(例:神戸市・立川市)。届出人の欄は、届出人本人が書きます。

火葬許可証とは? どこでもらう?

火葬をするために要る市区町村長の許可証です。死亡届を受理した市区町村長が火葬を許可して交付し、火葬場はこれを受け取った後でなければ火葬できません(墓地、埋葬等に関する法律 第5条・第8条・第14条)。

土日や夜間に死亡届は出せる?

多くの市区町村は、夜間休日の窓口や宿直室で預かります。火葬許可証をその場で渡す市(例:立川市)もあれば、夜間は交付せず翌朝に扱う市(例:広島市)もあります。火葬の日程に関わるので、交付の時間を前もって確かめます。

物語との違い

作中の市は、休日の窓口でも許可証をその場で出しています。

火葬許可証は火葬の後どうなる?

火葬場で火葬済みの証明を記して返されることが多く(例:横浜市の斎場は許可証の裏に証明を記し、骨つぼと一緒に返す)、納骨の時に墓地や納骨堂へ出します。墓地・納骨堂の管理者は、許可証を受け取った後でなければ焼骨を埋蔵・収蔵させてはならないと決まっています。

この話の用語

死亡届(しぼうとどけ)の届出人(とどけでにん)と届出地(とどけでち)漫画の中で見る
現実の事実死亡届は、同居の親族、その他の同居者、家主・地主などの順に届出の義務があり、同居していない親族や後見人(こうけんにん)なども届け出ることができます(戸籍法第87条)。届出先は、死亡地・本籍地(ほんせきち)・届出人の所在地のいずれかの市区町村です。届書を窓口へ持っていくのは、葬儀社などの代理の人でもよい自治体が多くあります。
土日・夜間の死亡届(しぼうとどけ)漫画の中で見る
作中の世界の決まり作中の市は、休日の窓口でも火葬許可証(かそうきょかしょう)をその場で出しています。
現実の事実多くの市区町村は、閉庁時間(へいちょうじかん)や土日祝日にも、夜間休日の窓口や宿直室(しゅくちょくしつ)で死亡届を預かります。火葬許可証をその場で渡す市(例:立川市)もあれば、夜間は交付せず、預かった届を翌朝に扱う市(例:広島市)もあります。火葬(かそう)の日程に関わるので、届ける前に交付の時間を確かめます。
火葬許可証(かそうきょかしょう)漫画の中で見る
現実の事実死亡届(しぼうとどけ)を受理した市区町村長が火葬(かそう)を許可し、火葬許可証を交付します(墓地、埋葬等に関する法律 第5条・第8条)。火葬場(かそうば)の管理者は、火葬許可証を受け取った後でなければ火葬できません(同法第14条)。横浜市の斎場(さいじょう)では、火葬の後に許可証の裏に火葬済みの証明を記して、骨つぼと一緒に返しています。

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この話のまとめ(作品の設定・登場人物・あらすじ・用語・出典)です。AI に貼ると、話を踏まえて相談できます。

この話のあらすじ

5頁目を開く少し前の土曜の午後、小春は柏木と市役所の休日の窓口へ死亡届を出しに行く。死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に出し、同居していない家族も届出人になれる。用紙の右半分の死亡診断書には、父が亡くなった時刻「午前2時50分」。その時、小春は東京で眠っていた。窓口で火葬許可証を受け取る。これが無いと斎場は火葬できず、火葬の後は証明を書いて骨つぼと一緒に返される。帰りの車で、仕事を休まない人だった父が毎年11月の頭だけ早く上がっていたと、柏木が話す。家では叔父が、お別れの時間に来る町の人の名簿を280人分作っていた。その夜に5頁目で「宮下」の名を見た翌朝(日曜)、母は、20年、毎年11月3日だけ父の帰りが遅かったことを打ち明ける。父の背広の内ポケットから小さな黒い手帳が1冊、机の引き出しからは同じ手帳が20冊。どの年の11月3日にも「宮下」の名があった。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

初めて喪主を務める人が知っておきたい、亡くなってから火葬までの流れ、喪主の役目、見積書の見方、家族葬・一日葬・直葬の違い、死亡届と火葬許可を、葬儀屋だった父の段取り帳を手がかりに描いています。決まりは法令と公的機関の資料で確かめ、見積もりの額は作中の値です。作法は宗派・地域で違います。

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