第1話

第1話「電話が、鳴りやまない」

縦に長い絵。上に秋の晴れた空と、警察署の前の道。真ん中に、白い古いセダンを運転する40代の女性と、助手席でひざの上の封筒を両手で持つ年配の男性。下に、家の車庫に止まった白いセダンと、棚に置かれた車の鍵。

父が︑
運転免許を返した日︒

帰りは︑
私が運転した︒

父が18年乗った︑
白いセダン︒

車の中。助手席の年配の男性が、運転席のハンドルをじっと見ている。運転席には、ハンドルを握る40代の女性の手と肩。

奈緒の父。運転免許を返したばかり笠井 寛治

笠井 寛治:この車
どうするかな

笠井 奈緒:売ろうよ
乗らないのに
税金も保険も
かかるんだから

笠井 寛治:︙︙お前に任せる

その夜︒
実家の居間︒

夜の実家の居間。座卓でスマホを見ている40代の女性。座卓の上に、車検証を入れた古いビニールのケースと、湯のみ。

会社員。父の車を売ることにした笠井 奈緒

笠井 奈緒:何社か比べて
いちばん高い所に
売ればいいよね

〈ならべる査定 お申込み(車)〉車:白いセダン(18年目・走った距離 92,000km)査定を頼む会社:7社連絡先:笠井 奈緒連絡の希望:(書いていない)☑ 選んだ会社へ、入力した内容を送ることに同意します

ならべる査定(さてい)(作中の一括査定(いっかつさてい)のサービス)の解説

作中の世界の決まり「ならべる査定」は作中の架空のサービスです。売り主が入れた車や家の情報と連絡先を、売り主が選んだ買取の店・不動産会社へ届けます。作中では、売り主は無料で使え、窓口は売り主と会社の両方からの問い合わせを受けます。

作中の世界の決まり車の一括査定は、一度の申込みで、いくつかの買取の会社に車の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた車の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方や、料金の決まりは、サービスごとに申込みの画面で確かめます。

何社に頼めばいい?
決まった数はありません。頼む社数が多いほど、連絡も多く来ます。作中の奈緒は、7社に頼みました。

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個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意の解説

現実の事実個人情報保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。一括査定(いっかつさてい)の申込みで同意の欄にチェックを入れる時は、どの会社へ、何のために送られるかを読んでから入れます。

出典

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送って︑
3分後︒

夜の座卓の上で、震えるスマホが湯のみの横を滑っていく。橙の着信の光。スマホが絵の枠の下の線を越えて手前へはみ出している。

〈着信〉21:03 知らない番号21:03 知らない番号21:04 知らない番号

笠井 奈緒:えっ
もう?

居間で、震えるスマホを腕をのばして遠ざけるように持つ女性。廊下のふすまの陰から、寝間着の年配の男性がのぞいている。

笠井 寛治:さっきから鳴ってるの
だれからだ

笠井 奈緒:車の買取の会社
︙︙たぶん
全部

〈着信〉21:06 知らない番号21:07 知らない番号21:07 知らない番号21:08 知らない番号

笠井 奈緒:もう無理
電源
切るね

同じころ︒
駅の裏の︑小さな買取の店︒

夜の小さな車の買取の店の事務所。机でタブレットの通知を見て、困った顔をする20代の男性。

権藤 誠一:三浦
新しい申込みだ
すぐかけろ

同じ事務所。受話器を片手に、男性の机の横に立つ50代の店長。壁に、車のオークションの日の印の付いた暦。

三浦 拓海:もう夜の9時
ですよ

権藤 誠一:先にかけた店が
話を聞けるんだよ

小さな買取の店の、出張の査定員三浦 拓海

同じ店の店長権藤 誠一

事務所の机で、スマホを耳に当てたまま目を閉じる20代の男性。机の上に、何も書いていない査定の紙。

三浦は︑
電話をかけるのが苦手だった︒

三浦 拓海:︙︙電源
切られてます

権藤 誠一:じゃあ
明日の朝いちばんに
もう一回だ

翌朝︒
ならべる査定の窓口︒

白い蛍光灯の窓口の部屋。ヘッドセットで電話を受けながら画面を見る、長い髪を低く結んだ女性。隣の席で、黒いボブの若い女性が別の電話に出ている。

一括査定「ならべる査定」窓口の3年目。車と引越しの係小野寺 円

笠井 奈緒(電話の声):申し込んだら
7社から一度に
電話が来たんですけど

小野寺 円:驚かせてしまって
すみません

小野寺 円:お電話がつながる時間を
書いていただければ
会社へお伝えできます

笠井 奈緒(電話の声):そんな欄
ありました?

細い横の帯の寄り。画面の申込みの欄を指さす女性の指先。指の先の欄だけが空いている。窓口の机。ヘッドセットの女性が、画面を見たまま小さくため息をつく。隣の席の若い女性が受話器を手で押さえて、こちらを振り向いている。

芦田 真帆:小野寺さん
買取の店から
「つながらない」って

小野寺 円:うん
どっちも急いでるだけ
なんだけどね

小野寺 円:お店は
先にかけないと
選んでもらえない
お客さんは
それを知らない

その日の昼︒

昼休みの会社の廊下。窓ぎわで、スマホを耳に当てて眉をひそめる40代の女性。

三浦 拓海:ならべる査定から
お申込みの
笠井様でしょうか

買取の店の前に止めた白い軽のバン。運転席で、スマホを耳に当て、ハンドルの上のメモ帳を見る20代の男性。

笠井 奈緒:ほかの会社からも
もう電話が来てます
査定の日を決めるなら
︙︙

三浦 拓海:その前に
ひとつ聞いても
いいですか

白い軽のバンの運転席。スマホを耳に当て、まっすぐ前を見る20代の男性の寄り。

三浦 拓海:お父さんは
車を売りたいって
言ってますか

笠井 奈緒:︙︙え?

夕方の家の車庫。白いセダンの横に立つ年配の男性が、古い革の輪の付いた車の鍵を手のひらにのせて見つめている。鍵と革の輪が、絵の枠の右の線を越えて手前へはみ出している。

父は︑
まだ車庫にいた︒

第1話「電話が、鳴りやまない」

つづく

次の話 10月29日(木)更新

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あなた三浦に「お父さんは売りたいって言ってますか」と聞かれた後の、奈緒の返事を考えたい

AI奈緒がすぐに答えられず、昼休みの会社の廊下で、父の「お前に任せる」を思い出す形にすると、売ると決めたのが自分だけだった事に気づく場面になります。

あなたその線で、台詞を

AI奈緒「……任せるって、言われました」三浦「それは、売りたいって意味ですか」奈緒「分かりません」。絵:廊下の窓に映る、スマホを耳に当てたままの奈緒。

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この話で分かること

車の一括査定はやめたほうがいい?

決まった答えはありません。いくつもの会社へ一度に情報が送られるので、申込みの後に連絡が重なることがあります。一方で、何社かの査定額を比べられます。

条件・例外

申し込む前に、連絡先がどの会社へ送られるかと、連絡の方法・時間を選べるかを確かめます。消費者庁は、査定の場では契約しないよう注意を呼びかけています。

車の一括査定を申し込むと、何が起きる?

入れた車の情報と連絡先が、選んだ買取の会社へ送られ、各社から電話やメールで査定の連絡が来ます。頼んだ社数の分だけ、連絡が来ることがあります。

条件・例外

個人情報保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。同意の欄で、送り先と使い道を読みます。

車の査定の電話や訪問は、どう断ればいい?

国民生活センターは、強引に売却を迫る会社には「今回は査定をお願いしただけで、今は売らない」「他店の査定額と比べる」などと伝え、きっぱり断るよう呼びかけています。

条件・例外

困った時は、消費者ホットライン 188 で、近くの消費生活センターなどに相談できます。

免許を返した親の車を、家族が売れる?

運転免許を返すことと、車の持ち主(所有者)が変わることは別です。車検証の「所有者」が親なら、親本人が契約するか、親から頼まれた事を示す委任状などを用意して手続きします。

条件・例外

車検証の所有者が、ローンの会社や販売店になっていることもあります。その時は、所有者の手続きが先に要ります。

この話の用語

ならべる査定(さてい)(作中の一括査定(いっかつさてい)のサービス)漫画の中で見る
作中の世界の決まり「ならべる査定」は作中の架空のサービスです。売り主が入れた車や家の情報と連絡先を、売り主が選んだ買取の店・不動産会社へ届けます。作中では、売り主は無料で使え、窓口は売り主と会社の両方からの問い合わせを受けます。
作中の世界の決まり車の一括査定は、一度の申込みで、いくつかの買取の会社に車の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた車の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方や、料金の決まりは、サービスごとに申込みの画面で確かめます。
個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意漫画の中で見る
現実の事実個人情報保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。一括査定(いっかつさてい)の申込みで同意の欄にチェックを入れる時は、どの会社へ、何のために送られるかを読んでから入れます。

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この話のあらすじ

運転免許を返した父・寛治の白いセダンを売ることにした笠井奈緒は、その夜、一括査定のサービス「ならべる査定」で7社に査定を申し込む。送って3分後から、知らない番号の電話が次々に鳴り、奈緒は電源を切る。同じころ、駅の裏の小さな買取の店では、査定員の三浦拓海が店長の権藤に「先にかけた店が、話を聞ける」と急かされていた。翌朝、ならべる査定の窓口の小野寺円は、奈緒の苦情と、店からの「つながらない」という電話を同時に受ける。申込みの「連絡の希望」の欄は空いたままだった。昼、三浦から電話が来る。三浦は査定の日を決める前に「お父さんは、車を売りたいって言ってますか」と聞く。

作者

あいみつ舎

比べて選ぶ人と、比べられる人。申込みの向こう側の両方を描いています。

この作品について

車の一括査定を申し込んだ時に起きる事、断り方、売る時の書類やキャンセルの決まりを、法令(e-Gov)・消費者庁・国民生活センター・国土交通省の資料で確かめて描いています(確かめた出典は各話の解説に)。一括査定のサービス「ならべる査定」と、作中の買取の店・人物・車・査定額は架空です。実在のサービス・会社の仕組みや料金を示す物ではありません。個別の売買・名義・税の判断は、契約する会社・運輸支局・都道府県の税の窓口・消費生活センターに確かめてください。

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