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第2話「同じ時間に、5社」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

縦に長い絵。上に、住宅街の道に並んで止まった5台の白や銀の小さな車(どれも字や印は無い)。真ん中に、家の門の前に立って、並んだ車を見ている40代の女性。下に、縁側に座って、それを見ている年配の男性。

土曜の朝10時。

査定は︑5社とも
同じ時間にしてもらった︒

1社ずつ会うのは︑
怖かったから︒

家の車庫の前。ポロシャツや作業着の査定員が5人、白いセダンのほうへ歩いてくる。手前に、小さく見える40代の女性の後ろ姿。

笠井 奈緒:うわ︙︙
5人も来ると
こんなに
圧があるんだ

車庫の前で、4人の査定員がそれぞれ名刺を差し出し、40代の女性を半円に囲んでいる。差し出された名刺と手が、絵の枠の下の線を越えて手前へはみ出している。

ほかの店の査定員:今日中に
お返事なら
いちばん高く
出しますよ!

車庫の端。ほかの査定員の後ろで、クリップボードを持って1人だけ離れて立つ20代の男性の査定員。

笠井 奈緒:今日は
見てもらう
だけです

三浦 拓海:車を
見ても
いいですか

笠井 奈緒:どの会社とも
今日は
契約しません
から!

訪問購入(ほうもんこうにゅう)と、四輪の自動車の解説

現実の事実特定商取引法(とくていしょうとりひきほう)の「訪問購入」は、事業者が家に来て物を買い取る取引に、書面やクーリング・オフ(書面を受け取った日から8日以内)の決まりを置いています。ただし、四輪の自動車は、訪問購入の決まりの対象から外れています(特定商取引法施行令 第34条。二輪は外れていない)。家で車を査定(さてい)してもらって売っても、この8日間のクーリング・オフは使えません。国民生活センターも「車の売却は、特定商取引法によるクーリング・オフの対象外(たいしょうがい)です」と案内しています。

出典

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査定員が見るのは︑
色や傷だけじゃない︒

細い横の帯の寄り。白い車のボンネットと前のフェンダーのすき間を、そっとなぞる男性の指先。白いセダンの前にしゃがみ、ボンネットの合わせ目を顔を近づけて見る20代の男性の査定員。後ろで、ほかの査定員たちが車の写真を撮っている。

三浦 拓海:あれ
ここだけ
すき間が広い

縁側に座る年配の男性が、車の前のほうを見られているところから、ふっと目をそらす。

三浦 拓海:あの
お父さん

三浦 拓海:この車
前のほうを
直したこと
ありますか?

修復歴(しゅうふくれき)・事故歴(じこれき)の申告の解説

現実の事実国民生活センターは、売る車に修復歴や事故歴があると知っていた場合は、査定(さてい)の時に必ず買取の会社へ申告するよう呼びかけています。一方で、買取の会社は査定のプロとして買取の額を出しているので、契約の後に「修復歴や事故歴を見落とした」として減額や解約を求められても、応じる必要はないとも案内しています。

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笠井 寛治:︙︙さあな
覚えてねえ

車庫の前で、40代の女性が4枚の査定の紙を両手に持って見比べている。去っていく査定員たちの背中。

〈置いていった査定の紙(5社のうち4社)〉1社目:38万円(今日決めていただければ)2社目:35万円3社目:41万円(本日中なら)4社目:36万円

クリップボードを閉じて、40代の女性に頭を下げる20代の男性の査定員。クリップボードの紙は白いまま。

笠井 奈緒:三浦さん
の所は?

三浦 拓海:すみません
今日は
紙に
書けなくて︙︙

笠井 奈緒:えっ
どうしてですか

三浦 拓海:お父さんに
聞きたいことが
あって

家の前の道に止めた白い軽のバンを、斜め前の低い所から見る。右ハンドルの運転席で、スマホを耳から少し離して顔をしかめる20代の男性。

権藤 誠一(電話の声):おい三浦!

権藤 誠一(電話の声):ほかの4社は
もう紙を
置いてったろ
なんで
書かないんだ

三浦 拓海:でも
お父さんが
まだ何も
言ってなくて

権藤 誠一(電話の声):売るのは
娘さんだろ
夕方までに
戻ってこいよ

夕方︒

夕日の縁側。年配の男性と20代の男性の査定員が、少し離れて並んで座り、車庫の白いセダンを見ている。

笠井 寛治:あんた
ほかの人と
見る所が
違ったな

三浦 拓海:あはは︙︙
店長には
見すぎだって
言われます

夕日の縁側。白いセダンを見つめたまま、ゆっくり話しだす年配の男性の横顔の寄り。

笠井 寛治:前のほうの
あの直しはな

笠井 寛治:この車で
最後に
妻を病院へ
送った夜のだ

色のあせた思い出。雨の夜、白いセダンのヘッドライトの光の中、助手席の年配の女性の横顔と、ハンドルを握る男性の手。ヘッドライトの光が、絵の枠の上の線を越えて外へ伸びている。
縁側の奥の障子の陰。4枚の査定の紙を持ったまま立ち止まり、2人の話を聞いている40代の女性。

その話を︑
私は知らなかった︒

第2話「同じ時間に、5社」

つづく

お気に入りから外しますか?

今日決めてくれたら、この値段で。

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あなた父が直しの跡の話をした後を考えたい

AI奈緒が車を売るのをやめる話と、話を知った上で売る話で、家族の決め方が変わります。三浦が査定の紙に何を書くかを最後に見せると、仕事の話にも戻れます。

あなた知った上で売る方で

AI奈緒「お父さん、売るのはやめない。でも、売る相手は、この話を聞いた人がいい」

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話で分かること

車の出張査定(さてい)では、何に気をつける?

消費者(しょうひしゃ)庁は、中古車の売却について、査定の場では契約しないよう、事前に契約書を確かめるよう呼びかけています。国民生活センターは、査定の時に強引に契約させられた、帰ってもらえずに契約してしまった、という相談の例を公表しています。

条件・例外

いくつかの会社を同じ時間に呼ぶか、1社ずつにするかに決まりはありません。どちらでも、その場では契約しないと先に決めておきます。

家で車を査定(さてい)してもらって売ったら、クーリング・オフできる?

できません。四輪の自動車は、特定商取引法(とくていしょうとりひきほう)の「訪問購入(ほうもんこうにゅう)」の決まりの対象から外れているので、8日間のクーリング・オフは使えません。国民生活センターも、車の売却は特定商取引法によるクーリング・オフの対象外(たいしょうがい)だと案内しています。

条件・例外

二輪のバイクは、この対象外に入っていません。契約した後の取り消し・解約は、契約書の条項と事情で決まるので、契約の前に読みます。

車の修理の跡や事故のことは、査定(さてい)の時に言うべき?

知っているなら言います。国民生活センターは、売る車に修復歴(しゅうふくれき)や事故歴(じこれき)があると知っていた場合は、査定の時に必ず買取の会社へ申告するよう呼びかけています。

条件・例外

同じ注意の中で、買取の会社が査定の後・契約の後に「見落とした」として減額や解約を求めてきても、応じる必要はないと案内しています。

この話の用語

訪問購入(ほうもんこうにゅう)と、四輪の自動車漫画の中で見る
現実の事実特定商取引法(とくていしょうとりひきほう)の「訪問購入」は、事業者が家に来て物を買い取る取引に、書面やクーリング・オフ(書面を受け取った日から8日以内)の決まりを置いています。ただし、四輪の自動車は、訪問購入の決まりの対象から外れています(特定商取引法施行令 第34条。二輪は外れていない)。家で車を査定(さてい)してもらって売っても、この8日間のクーリング・オフは使えません。国民生活センターも「車の売却は、特定商取引法によるクーリング・オフの対象外(たいしょうがい)です」と案内しています。
修復歴(しゅうふくれき)・事故歴(じこれき)の申告漫画の中で見る
現実の事実国民生活センターは、売る車に修復歴や事故歴があると知っていた場合は、査定(さてい)の時に必ず買取の会社へ申告するよう呼びかけています。一方で、買取の会社は査定のプロとして買取の額を出しているので、契約の後に「修復歴や事故歴を見落とした」として減額や解約を求められても、応じる必要はないとも案内しています。

出典

更新日:

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この話のあらすじ

土曜の朝、奈緒は5社の出張査定(さてい)を同じ時間にまとめた。4社の査定員は名刺を差し出し、「今日中に返事をくれれば、いちばん高い額を出す」と奈緒を囲む。奈緒は「今日は、どの会社とも契約しません」と言う。三浦は1人だけ、ボンネットとフェンダーのすき間をなぞり、「前のほうを直したことはありますか」と父の寛治に聞く。寛治は「覚えてない」と目をそらす。4社は額を書いた紙を置いて帰り、三浦だけは「お父さんに、聞きたいことがある」と紙に書かない。店長の権藤からは電話で叱られる。夕方、縁側で三浦と並んだ寛治は、前の直しの跡のことを話しだす。「この車で、最後に妻を病院へ送った夜のだ」。奈緒は、その話を知らなかった。

作者

あいみつ舎

比べて選ぶ人と、比べられる人。申込みの向こう側の両方を描いています。

この作品について

査定の電話の断り方、車を売る時に要る書類、契約の後で取り消せるかどうかを、手放す家族の気持ちと買い取る店の事情を行き来しながら確かめられます。

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