第1話「夜の紹介状」

夜10時︒
町の内科︒
診療は︑
7時に終わっている︒
院長は︑まだ
紹介状を書いていた︒

平賀 多恵(画面の外の声):先生
まだ書いてるんですか

遠野 修三:明日いちばんの
患者さんの分だ
町の内科の院長遠野 修三
受付の医療事務。12年目平賀 多恵
遠野 修三:手で書くと
どうしても遅くてな

院長の甥。家で働くエンジニア遠野 蒼介
遠野 蒼介:叔父さん
それ
AI に下書きさせたら
5分で終わるよ
遠野 修三:AI に?
遠野 蒼介:カルテの中身をコピーして
ネットの AI に
貼るだけだって

遠野 蒼介:外って︙︙
AI の会社のサーバーに
送るだけだよ
平賀 多恵:それを
外って言うんです

遠野 修三:平賀さんが嫌だと言うなら
うちではやらない
遠野 蒼介:︙︙じゃあ
外に出さなければ
いいんだね
その週末︒
蒼介の部屋︒

遠野 蒼介:ネットの線は
いらない
全部
この中で動かす
翌週の月曜︒
朝の受付︒


看護師浅見 沙織
浅見 沙織:平賀さん
3番の電話
また薬を飲む時間の
質問です
平賀 多恵:先生に聞いてから
折り返しますね

昼休み︒
奥の部屋︒

遠野 蒼介:これ
ネットに
つながってない AI
この箱の中だけで動くんだ

平賀 多恵:つながってないのに
AI なんですか?
遠野 蒼介:AI の中身ごと
この箱に入ってるんだよ

〈奥の箱〉この端末はインターネットに接続されていません。質問か、頼みたい作業を入力してください。

遠野 修三:それで
こいつは何ができるんだ
このAI、ネットにつながってません
第1話「夜の紹介状」
つづく
次の話 10月27日(火)更新
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あなた箱の画面に「この端末はインターネットに接続されていません」と出た後の、多恵の最初の一言を考えたい
AI多恵が画面より先に、箱の後ろの差し込み口をのぞいて、線が本当に抜けているかを自分の目で確かめる形にすると、多恵が「外に出さない」をどれだけ大事にしているかが、言葉より先に伝わります。
あなたその線で、台詞を
AI多恵(しゃがんで箱の後ろを見ながら)「……本当に、何も挿さってない」蒼介「だから、言ったじゃん」。絵:箱の後ろの、空いた差し込み口に向けた多恵の指先。
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