第2話ログイン

第2話「調査まで、あと11日」

翌朝︒

朝の台所。割烹着で機嫌よく味噌汁を作る老婦人と、卓袱台で目の下にくまを作った若い男性。

花岡 キヨ:圭
よく寝たかい

花岡 圭:ねえ
ばあちゃん
夜中
銭湯に
いなかった?

花岡 キヨ:何言ってんだい
あそこは
閉めたよ
5年前に

花岡 圭:︙︙覚えて
ないんだ

細い路地の植木鉢の前で、スマホを耳に当てて話す若い男性。うしろに家の勝手口。

有馬 さやか(電話の声):調査ではね
こんな事を
聞かれます

〈認定調査で聞かれること〉・体の動き(立ち上がり・歩く・寝返り)・暮らし(食事・トイレ・お風呂・着替え)・物忘れ(日付・季節・今いる場所)・気持ちや行動の変化・薬・お金の管理・買い物(主に、調査の日から過去1週間の様子)

全国で同じ調査票︒
基本調査は74項目︒

認定調査(にんていちょうさ)の基本調査(きほんちょうさ)(74項目)の解説

現実の事実認定調査で、全国共通の調査票に沿って体の動き・暮らし・物忘れなどを確かめる74の項目です。厚生労働省の資料では、この結果から「介護にかかる時間」(要介護認定等基準時間(ようかいごにんていとうきじゅんじかん))をコンピュータで推計(すいけい)し、一次判定(いちじはんてい)を出すと説明しています。

調査はどのくらいかかる?
刈谷市の案内では45分〜1時間程度、十日町市の案内では1時間〜1時間半とされています。
いつの様子を聞かれる?
刈谷市の案内では、主に調査の日から過去1週間の状況を聞くとしています。

出典

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有馬 さやか(電話の声):調査の日は
みんな
「できます」
って
言うんですよ

白目をむいて汗を飛ばす若い男性の、デフォルメされた顔の寄り。

花岡 圭:︙︙言う
すごい
言いそう!

有馬 さやか(電話の声):だから
普段の様子が
分かる方が
一緒にいて
くださいね

第2話「調査まで、あと11日」

夜の和室の机。ノートパソコンに動画の編集の画面。画面の光に照らされ、腕を組んで考える若い男性の横顔。

花岡 圭:そうか
普段の様子を
見せれば
いいんだ

花岡 圭:俺の仕事は
編集だ

昼の台所。スマホのカメラを向ける若い男性と、気づいて片手で顔を隠し、もう片方の手を突き出して怒る老婦人。

花岡 キヨ:こら!
撮るんじゃ
ないよ!

花岡 キヨ:人の暮らしを
勝手に
見世物に
すんじゃないよ

流しに向かう老婦人の小さな背中。肩が少し震えている。

正しかった︒
撮るのは︑やめた︒

夜、スタンドの明かりの下で、大学ノートに鉛筆で書き込む若い男性の手元。

代わりに︑
書くことにした︒
時刻と︑
起きたことだけ︒

〈圭の記録〉10/16 7:10 朝の薬を飲んでいない(カレンダーに残る)10/16 11:30 同じ話を3回(ひばり湯の煙突の修理)10/16 18:05 ガスの火を消し忘れ。鍋が空だきに10/17 2:40 番台に座る。「いらっしゃい」

家の小さな浴室。浴槽の縁をつかみ、片足を上げようとして上がらない、寝間着の老婦人。

52年︑
町じゅうを
風呂に入れてきた人が︒

浴室の外の廊下。すりガラスの戸の前で立ち止まり、気づいて息をのむ若い男性。

自分の家の
浴槽を︑
またげない︒

花岡 キヨ:今日は
寒いからね
シャワーで
いいや

10/18 20:15 浴槽をまたげず、シャワーだけで出る。「今日は寒いからね」

主治医の意見書も︑
頼まなきゃ
いけない︒

昼の下町の古い小さな医院の前。よそ行きのコートの老婦人の腕を取って歩く若い男性。老婦人は口をとがらせている。

花岡 キヨ:医者なんか
行かないって
言ったろ!

花岡 圭:でもさ
伊吹先生
ひばり湯の
常連だった
んだって

花岡 キヨ:︙︙伊吹?
あの坊やかい

診察室。白衣で大きく笑う白髪の年配の医師と、たじろぐ老婦人。

伊吹医院 院長伊吹 誠一

伊吹 誠一:キヨさん!
いやあ
番台で
怒られて
以来だ!

花岡 キヨ:あんたが
湯船で
泳いでた
からだよ

伊吹 誠一:よし
意見書
書きましょう
ちゃんと
診てからね

その夜︒

夜の茶の間。卓袱台でノートを読み返す若い男性。うしろの戸口に、湯のみを持った老婦人が立ち、ノートをのぞいている。

花岡 キヨ:︙︙あんた
あたしのこと
書いてた
のかい

ノートを両手で持って読む老婦人の寄り。指先が震え、顔がこわばっている。

花岡 キヨ:あたしは
ボケて
ないよ!

花岡 圭:わわかってる
でも
夜中に――

花岡 キヨ:今日は
もう寝るよ

夜の縁側に一人で座る若い男性。膝の上に閉じたノート。庭の向こうに銭湯の煙突。

それから︑
祖母は記録の話を
しなかった︒

俺も︑書くのを
やめなかった︒

10/21 3:05 番台。「大人1人ね」10/23 9:40 郵便受けの前で家の鍵を探す(手に持っていた)10/25 16:00 「明日は大事な日だから」と、着物を出す

10月26日︑朝︒

鏡に映る、赤い口紅を唇に引く老婦人の口元と手の細い帯の寄り。朝の和室の鏡台の前で、藍の着物を着て背筋を伸ばす老婦人。戸口に立つ若い男性がぼけて入る。

花岡 キヨ:今日は
番台に
座る日だよ

古い家の玄関。引き戸の外に、肩掛けの鞄とクリップボードを持った、白髪まじりの穏やかな年配の男性が会釈している。

さくら区 認定調査員真壁 伸夫

真壁 伸夫:こんにちは
区の
認定調査で
まいりました

花岡 キヨ:まあまあ
遠いところ
どうぞ
おあがり
ください

玄関の上がり框に正座し、両手をついて完璧なお辞儀をする着物の老婦人。訪ねてきた人の目の高さから。
老婦人のうしろで冷や汗をかく若い男性。ズボンの後ろのポケットから大学ノートがのぞいている。

花岡 圭:︙︙完璧だ
完璧に
元気な
ばあちゃんだ

縁側から見た茶の間。調査員の男性と向かい合い、にこやかに座る着物の老婦人。秋の光。

調査の日︒
祖母は元気だった︒

調査の日︑
だけ︒

第2話「調査まで、あと11日」

つづく

次の話 10月29日(木)更新

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あなた夜中に番台に座るキヨの場面の続きを考えたい

AI圭が客のふりをして「大人1人」と答え、キヨの話に合わせる形にすると、怖さより切なさが出せます。翌朝キヨが何も覚えていない事で、次の話へつなげられます。

あなた客のふりの線で、台詞を

AI圭「……熱いの、苦手なんだけど」キヨ「なら、うめていきな」。絵:番台の前の小銭の皿と、それに手を伸ばす圭の手。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話で分かること

介護認定(かいごにんてい)の調査では何を聞かれる?

全国共通の調査票で、体の動き(立ち上がり・歩行など)、暮らし(食事・トイレ・入浴・着替え)、物忘れ(日付・季節・今いる場所など)、気持ちや行動の変化、薬やお金の管理などを確かめます。基本調査(きほんちょうさ)は74項目です。

条件・例外

刈谷市の案内では、危険の無い範囲で実際に体を動かしてもらう項目と、聞き取りの項目があり、主に調査の日から過去1週間の状況を聞くとしています。

認定調査(にんていちょうさ)に家族は同席したほうがいい?

自治体の案内では、普段の様子を正しく知るために、日常の様子が分かる人の同席をできるだけ求めています。家族への聞き取りが必要な項目もあると説明する自治体もあります。

認定調査(にんていちょうさ)の前に準備しておく事は?

刈谷市の案内では「準備していただくものはありません。いつもの様子を教えてください」としています。主に過去1週間の様子を聞かれるので、気になる出来事を日付と時刻つきでメモしておくと、当日に伝えやすくなります。

条件・例外

刈谷市の案内では、調査の撮影・録音は控えるよう求めています。

物語との違い

時刻つきの記録のノートは、作中で圭が考えたやり方です。

認定調査(にんていちょうさ)はどのくらい時間がかかる?

自治体によって違い、刈谷市の案内では45分〜1時間程度、十日町市の案内では1時間〜1時間半とされています。平日の日中に、家(入院中なら病院)で行います。

この話の用語

認定調査(にんていちょうさ)の基本調査(きほんちょうさ)(74項目)漫画の中で見る
現実の事実認定調査で、全国共通の調査票に沿って体の動き・暮らし・物忘れなどを確かめる74の項目です。厚生労働省の資料では、この結果から「介護にかかる時間」(要介護認定等基準時間(ようかいごにんていとうきじゅんじかん))をコンピュータで推計(すいけい)し、一次判定(いちじはんてい)を出すと説明しています。

出典

更新日:

この話のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

この話の内容をそのまま持って、AI に聞けますGemini だけは、開いたら貼り付けてください(内容はコピーしておきます)

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この話のあらすじ

夜中の番台のことを、キヨは覚えていない。圭は有馬に電話で、認定調査では体の動き・暮らし・物忘れなどを聞く事と、本人ががんばって「できます」と言う事がよくあると聞く。動画編集者の圭はスマホで撮ろうとするが、キヨに「人の暮らしを見世物にすんじゃない」と怒られ、時刻と出来事をノートに書く事にする。薬の飲み忘れ、同じ話、ガスの消し忘れ、そして浴槽をまたげない祖母。52年、町じゅうを風呂に入れてきた人だった。常連だった伊吹医師の医院で主治医意見書を頼むが、ノートを見つけたキヨは「ボケてない」と怒る。10月26日の朝、キヨは口紅をひき、着物で調査員を迎える。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

要介護認定の流れ(申請・認定調査・主治医意見書・一次判定と二次判定)、申請の窓口と代わりに出せる所、結果が出るまでの日数、認定調査で聞かれる事と家族の同席、本人の前で言いにくい事の伝え方、特記事項を、介護保険法と厚生労働省・自治体の資料で確かめて描いています。「ひばり町」「さくら区」「ひばり湯」「伊吹医院」は架空です。

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