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第6話「その写真、どこで撮った?」

朝の警察署の相談の窓口。小さな机をはさんで、左に紺のカーディガンの眼鏡の女性相談員、右にパーカーの青年と、私服のがっしりした中年の男性が並んで座る。窓の曇りの白い光。

宇佐見 晴彦:銀行の前で
#9110に
かけたよ

警察署の相談の窓口(相談員)三谷 千鶴

大学2年瀬名 陸斗

宇佐見 晴彦:店の改装の
300万は
通帳に残ってる

第6話「その写真、どこで撮った?」

相談員の顔の寄り。眼鏡の奥の目尻にしわを寄せて、やわらかく笑う。

三谷 千鶴:話してくれて
ありがとう

中年の男性の顔の寄り。短い白髪まじりの角刈りの頭をかき、照れて目をそらす。赤ら顔。

陸斗のバイト先の定食屋の店長宇佐見 晴彦

宇佐見 晴彦:女房にも言った
怒られたけどな

寄り。机の上で、青年の手がスマホを相談員の方へ押し出す。画面はマゼンタに光る(字は読めない)。手前に相談員の両手。

先生の投資グループアシスタント:駅の北口の大学の2年生、瀬名さん学費の12万円、ここで一緒に増やしましょう

瀬名 陸斗:12万は
あのアプリにしか
書いてないんす

相談員の顔の寄り。眼鏡の奥の目を細め、受け取ったスマホの画面を見つめる。

三谷 千鶴:大学の場所は?

少し上から青年。スマホを両手で持ち、自分の名前を検索する親指。眉を寄せる。

瀬名 陸斗:︙︙書いてない

三谷 千鶴:免許証にも
大学は無いわね

三谷 千鶴:瀬名くんの名前で
検索してみて

寄り。スマホの中の写真。学食の窓ぎわの席で、明るい茶色のボブの女子学生とパーカーの青年がピースをしている。後ろの大きな窓の外に、駅の看板と時計の塔の形(字は読めない)。

瀬名 陸斗:古賀の︙︙

三谷 千鶴:後ろの窓
見て

寄り。紺の袖の相談員の指2本が、スマホの写真の窓の外を広げる。大学の時計の塔と、駅の建物の看板の形が大きくなる(字は読めない)。

写真を広げると窓の外:駅の「北口」の看板大学の時計の塔

写り込みの解説

現実の事実写真の後ろに写った看板・電柱の字・窓の外の景色・目に映った物から、撮った場所や暮らす範囲が分かってしまう事です。位置情報(いちじょうほう)を切って撮った写真でも起きます。載せる前に、後ろに何が写っているかを見ます。

出典

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相談員の胸から上。指を1本立てて、静かに言い聞かせる。窓の白い光。

瀬名 陸斗:北口︙︙

三谷 千鶴:後ろの写り込みね

青年の顔の寄り。目を見開き、口がゆっくり開く。額に汗。

三谷 千鶴:看板
電柱の字
窓の外
目に映った物まで

瀬名 陸斗:古賀の家も︙︙?

三谷 千鶴:今日のうちに
古賀さんと話して

寄り。相談員の手が、書いたメモを1枚、青年の両手の前に置く。字は読めない。横に記録の紙の束と、光るスマホ。

三谷 千鶴:名前と
顔と
大学

三谷 千鶴:つながると
個人情報になるの

個人情報(こじんじょうほう)の解説

現実の事実生きている人の情報で、名前・生年月日などからその人だと分かる物です。1つだけでは分からなくても、ほかの情報と簡単に照らし合わせて人が分かる物も含む、と法律で決まっています。名前と顔と学校がつながると、その人が分かります。

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〈三谷のメモ〉違法・有害情報相談センター(ネットに書かれた事を、消す相談)

違法・有害情報相談センターの解説

現実の事実ネットに書かれた事に困った時に相談できる、総務省の支援事業の窓口です。書かれた所の管理者(かんりしゃ)に消してもらう頼み方などを教えてくれます。相談は Web のフォームから送ります。

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中年の男性が青年の肩を大きな手でつかむ。青年は少し驚いて振り向く。

宇佐見 晴彦:瀬名くん
今日のバイトは
休んでいいぞ

瀬名 陸斗:いや
行きます

大学の学食︒

昼の学食。窓ぎわの席で、明るい茶色のボブの女子学生がカレーの皿を2つのせたお盆を置き、得意げに笑う。隣でパーカーの青年がスマホを見ている。窓の外に時計の塔。

古賀 柚葉:はい
約束の
カレー

瀬名 陸斗:古賀
これ
見て

ゼミの友だち古賀 柚葉

女子学生の顔の寄り。スマホを受け取り、笑顔が消えて口元がこわばる。

古賀 柚葉:あたしの投稿︙︙

瀬名 陸斗:その写真
どこで撮った?

古賀 柚葉:どこって
ここ︙︙

2人の後ろの、学食の大きな窓を引いて。ガラスの向こうに、写真と同じ駅のホームの看板と大学の時計の塔が見える。手前に、振り返って窓を見る2人。曇りの白い光。

古賀 柚葉:うそ︙︙

青年の横顔の寄り。窓の外の時計の塔を見たまま、スマホを握る手に力が入る。

瀬名 陸斗:ほかのも
見ていい?

寄り。スマホの中の写真。夜の部屋のベランダからの夜景。コンビニの光る看板と、線路の高架。字は読めない。

投稿古賀 柚葉新しい部屋からの夜景位置情報:○○市△△町

投稿の位置情報(いちじょうほう)の解説

現実の事実SNS の投稿や写真に、撮った場所や今いる場所を付ける機能です。付けたまま誰でも見られる形で載せると、家や学校の場所を知られて、つきまといなどの被害のおそれがあると警察も注意しています。

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女子学生の顔の寄り。青ざめて、片手で口を押さえる。

瀬名 陸斗:場所
付いてる

SNSの公開範囲(こうかいはんい)(鍵をかける)の解説

現実の事実投稿を誰に見せるかの設定です。鍵をかける(非公開(ひこうかい)にする)と、許した相手だけが見られます。総務省は、公開範囲を絞り、載せる写真を確かめる事がいちばん大切だと案内しています。

消せば終わり?
一度誰でも見られる形で出た写真は、ほかの人に保存されている事があります。消したうえで、同じ写真を新しく載せない事と、気になる事が起きたら相談の窓口に話す事が大切です。

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真上から机。女子学生の両手の親指がスマホの設定を次々に押す。横で冷めていくカレーの皿2つ。

古賀 柚葉:消す
全部
消す

瀬名 陸斗:鍵も
かけて

古賀 柚葉:︙︙なんで
瀬名が
狙われてるの

青年の横顔の寄り。カレーの皿に目を落とし、口を結んで、言うと決める。

瀬名 陸斗:夏に
闇バイトに
応募した

瀬名 陸斗:免許証も
送った

女子学生の顔の寄り。目をそらし、唇をかむ。

古賀 柚葉:︙︙だから
「俺も
やらかした」
って

瀬名 陸斗:古賀の
せいじゃない
最初に送ったの
俺だから

女子学生がスプーンを止め、まっすぐ青年を見る。青年はスマホを手に、横目で見返す。窓の光。

古賀 柚葉:話してくれて
ありがと

青年の顔の寄り。困ったように眉を下げ、少しだけ笑う。冷めたカレーを一口すくう。

瀬名 陸斗:それ
三谷さんの口ぐせ

古賀 柚葉:うつった

その夜︒
母から︑電話︒

夜のアパートの部屋。カーテンを開けたままの窓、白い部屋の灯り。ベッドに腰かけた青年がスマホを耳に当て、少し笑っている。

瀬名 朋美(電話の声):陸斗?
ごはん食べた?

瀬名 陸斗:食べた
母さん
ばあちゃんは?

瀬名 朋美(電話の声):フサばあちゃんね
電話の横に
貼ったって

祖母の家の廊下。黒い電話機の横の壁に、マジックで書いた紙が貼ってある(字は読めない)。小柄な祖母が胸を張っている。

瀬名 朋美(電話の声):「一回
切る」って

青年の顔の寄り。笑っていた口が、母の次の言葉で止まる。部屋の白い灯り。

瀬名 陸斗:ばあちゃんらしい

瀬名 朋美(電話の声):学費
あと
6日でしょ
一人で
決めないでね

瀬名 陸斗:︙︙うん

寄り。部屋のベッドに裸足で座る青年の目の高さ。電話を切った手の中で、スマホがマゼンタに光り、指を染める。

消えるメッセージのアプリ写真が1枚、届きました

スマホに届いた写真そのもの。夜のアパートを外の駐車場から見上げる。2階の窓だけ白く明るく、カーテンは開いたまま、電話を耳に当てた青年の影が窓に映る。手前に自動販売機の光る角と駐車場の白線。縦に長い。

メッセージ「お母さんと、長電話だったね」

青年の目の寄り。スマホのマゼンタの光が、見開いた目に映る。

瀬名 陸斗:︙︙さっきの俺

寄り。青年の指2本が、写真の手前の自動販売機と駐車場の白線を広げる。

瀬名 陸斗:自販機︙︙
下の駐車場の

裸足の青年が部屋の窓へ飛びつき、カーテンを片手で引く。体を壁に寄せ、横から下をのぞく。部屋の白い灯りを背に。「シャッ」の描き文字。
2階の窓から見下ろした夜の駐車場。誰もいない。白く光る自動販売機だけ。駐車場の端の暗がりに、スマホのマゼンタの小さな光が1つ、遠ざかっていく。

メッセージ「その写真、どこで撮ったと思う?」

第6話「その写真、どこで撮った?」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

その副業、犯罪です。

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この話で分かること

写真から、住んでいる所が分かるの?

後ろに写った看板・電柱の字・窓の外の景色・目に映った物から、撮った場所や暮らす範囲が分かる事があります。位置情報(いちじょうほう)を切って撮った写真でも起きます。

条件・例外

自分の投稿だけでなく、友だちが載せた写真に自分が写っている時も同じです。

投稿の位置情報(いちじょうほう)は、なぜ危ないの?

撮った場所や今いる場所が付いたまま誰でも見られる形で載せると、家や学校を知られて、つきまといなどの被害のおそれがあると警察が注意しています。

条件・例外

位置情報を付けるかどうかは、スマホのカメラや SNS の設定で変えられます。

投稿の公開範囲(こうかいはんい)は、どうすればいい?

鍵をかける(非公開(ひこうかい)にする)と、許した相手だけが見られます。総務省は、公開範囲を絞り、載せる写真を確かめる事がいちばん大切だと案内しています。

条件・例外

一度誰でも見られる形で出た写真は、ほかの人に保存されている事があります。

ネットに自分の事を書かれたら?

名前・顔・学校などがつながると、その人が分かる個人情報になります。書かれた所の管理者(かんりしゃ)に消してもらう頼み方は、違法・有害情報相談センター(総務省の支援事業)に相談できます。

条件・例外

脅されている時や危ない時は110番、迷う時は #9110 です。

この話の用語

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現実の事実写真の後ろに写った看板・電柱の字・窓の外の景色・目に映った物から、撮った場所や暮らす範囲が分かってしまう事です。位置情報(いちじょうほう)を切って撮った写真でも起きます。載せる前に、後ろに何が写っているかを見ます。
個人情報(こじんじょうほう)漫画の中で見る
現実の事実生きている人の情報で、名前・生年月日などからその人だと分かる物です。1つだけでは分からなくても、ほかの情報と簡単に照らし合わせて人が分かる物も含む、と法律で決まっています。名前と顔と学校がつながると、その人が分かります。
違法・有害情報相談センター漫画の中で見る
現実の事実ネットに書かれた事に困った時に相談できる、総務省の支援事業の窓口です。書かれた所の管理者(かんりしゃ)に消してもらう頼み方などを教えてくれます。相談は Web のフォームから送ります。
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現実の事実SNS の投稿や写真に、撮った場所や今いる場所を付ける機能です。付けたまま誰でも見られる形で載せると、家や学校の場所を知られて、つきまといなどの被害のおそれがあると警察も注意しています。
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あなた学食を出た後の柚葉が、1人で何をするかを描きたい

AI柚葉は消した投稿の代わりに、ゼミのグループに「写真の後ろ、見てから載せよう」とだけ書きます。誰が何をしたかは書かず、陸斗の事を守ったまま、きのうの自分と同じ人を減らそうとする場面にできます。

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この話のあらすじ

学費の期限まで、あと6日。朝、陸斗と店長の宇佐見は警察署の三谷を訪ね、店長は銀行の前で #9110 にかけて300万円を入れずに済んだと話す。投資のグループが書いた「学費の12万円」は、陸斗が指示役のアプリにだけ書いた額。では「駅の北口の大学」はどこから。名前で検索すると、柚葉の投稿の写真の窓の外に、駅の北口の看板と大学の時計の塔が写っていた。昼、約束のカレーの席で、陸斗は柚葉に「その写真、どこで撮った?」と聞き、柚葉の夜景の投稿にも位置情報(いちじょうほう)が付いているのを見つける。柚葉は投稿を消し、鍵をかける。陸斗は初めて、夏に闇バイトに応募して免許証(めんきょしょう)を送った事を話す。夜、母と電話した後、消えるメッセージのアプリに、外の駐車場から撮った陸斗の部屋の窓の写真が届く。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

「受け取るだけ」のような誘い文句のどこが危ないのか、送ってしまった後に何ができるのかを、誘われる側の焦りと一緒に追えます。

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