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第4話「証紙は、どこですか」

同じ夜︒
閉店の後の帳場︒

閉店の後の帳場の奥。電気スタンドの光の下、右で紺の半纏の老人が腰を落とし、手元の白い布を握ったまま目を伏せる。左で、すずが柱のそばから祖父を見る。

久遠 すず:八代さんの
おばあさん
施設に
いるそうです

久遠 徳次:︙︙そうか

すずの顔の寄り。帳場の灯りの下で、唇に指を当てて祖父の方を見る。

久遠 すず:じいちゃん
春江さんを
知ってるの?

久遠 徳次:昔の
客だ

久遠 すず:時計の
刻印の人も?

老人の横顔。帳場の台で筆を持つ手を止め、目をそらす。

久遠質店の店主(質屋60年)久遠 徳次

久遠 徳次:︙︙

久遠 徳次:明日
店を閉めたら
話す

すずの横顔。左の手前に祖父の背中。立ち上がりかけて、祖父の背を見る。

久遠 すず:じいちゃん
腰 痛いの?

老人の寄り。目を伏せて顔をそむけ、半纏の胸元を片手で押さえる。光の輪の外の暗がり。

久遠 徳次:︙︙寝る

久遠 すず:明日
閉めたら︙︙

翌日の昼︒

〈今月の帳場〉すずが1人で値を付けた品:4件買い取った品:2件月末まで:あと4日10件に届かなければ、店を閉める

昼の帳場。ガラスのケースのそばで、背の高い30代の女性が、コートのまま大きな風呂敷の包みを両腕に抱えてうつむく。上に小さな鈴。

嵯峨 葉月:すみません
着物って
買い取って
もらえますか

すずの胸から上。帳場で口元に手を当て、奥を振り返る。

久遠 すず:着物︙︙
うちで
扱えたっけ

久遠 徳次(画面の外の声):許可の
『衣類』に
入っとる

古物の区分(衣類(いるい))の解説

現実の事実古物商(こぶつしょう)の許可を申し込む時は、営業所ごとに取り扱う古物の区分を届け出ます。区分は美術品類・衣類・時計・宝飾品類など13あり、着物などの和服は「衣類」に入ります。買い取ってもらう前に、その店がその品を扱っているかを確かめる目安になります。

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久遠 すず:は︑はい!

老人の横顔の寄り。奥の暖簾の陰から低く言う。
帳場のガラスのケースの上で、背の高い30代の女性が両手で風呂敷の結び目を解きながら、うつむいてひと息つく。包みの中に、白い畳紙に包んだ着物が何枚も重なる。

嵯峨 葉月:母の着物が
全部で
12枚
あって︙︙

客(会社員・38歳)嵯峨 葉月

すずの顔の寄り。指を立てて張り切り、すぐ肩を落とす手前。

久遠 すず:12枚なら︙︙
つまり12件!?

久遠 徳次(画面の外の声):1人の客で
1件だ

久遠 すず:ですよね︙︙

嵯峨 葉月:今日中に
全部
売りたくて

久遠 すず:今日中
ですか?

背の高い女性を横から。ガラスのケースのそばで、積んだ畳紙の束に手を置く。

嵯峨 葉月:日曜に
実家の鍵を
渡すんです

嵯峨 葉月:母は
うちに
越してきたので

マイホームを売ったときの特例の解説

現実の事実自分が住んでいた家を売って儲かった時、最高3,000万円までを儲けから差し引ける特例です。親が住まなくなった家を売る時は、住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売る場合に限られます。売る人(家の持ち主)が確定申告をして使います。

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すずの寄り。ガラスのケースの上で、重なった白い畳紙の1つの紐を解く(字は無い)。

売り場の頃は︑
いい所から先に︑
言っていた︒

少し上からすず。ケースに両手をつき、息を吸う。

久遠 すず:えっと
先に
言いますね

久遠 すず:値が
付かない物も
あります

背の高い女性の寄り。目を伏せて口の端だけで笑い、手は風呂敷の布をぎゅっと握る。

嵯峨 葉月:え︙︙

嵯峨 葉月:母 全部で
500万は
かけたって

すずの顔の寄り。言いにくそうに目を上げる。

久遠 すず:500万は
仕立てた時の
値段ですよね

嵯峨 葉月:はい︙︙

すずが、広げた着物の端を両手で押さえて寸法を見る。斜め上から。

久遠 すず:見せて
もらいますね

〈母の着物 12枚〉種類:訪問着・小紋・紬・喪服身丈(着物の長さ):ほとんど 150cm くらいしみ・カビ:5枚

久遠 すず:寸法が
小さめ
ですね

女性の横顔の寄り。目を伏せて、苦く笑う。

嵯峨 葉月:母 148センチ
しかなくて

嵯峨 葉月:私とは
全然

〈着物の買取の値が決まる所〉寸法:大きい方が、着られる人が多い状態:しみ・カビ・におい種類と産地:紬など、産地の織物か

〈買取の値(作中の店の値)〉値が付く:6枚 合わせて 7,200円値が付かない:5枚(しみ・カビ)紬の1枚:まだ

すずが計算の紙に書き込む。手元にそろばん(字は読めない)。
背の高い女性の寄り。目を見開いて口を大きく開け、畳紙の端を握りしめる。

嵯峨 葉月:7,200円……

嵯峨 葉月:あはは︙︙

嵯峨 葉月:いいんです
どうせ
片付けだし

すずの寄り。口元に手を当てて、手を止める。

久遠 すず:あの︙︙

久遠 すず:もう1枚
ありますよ

すずがルーペを片目に当てて、ケースの上の布をのぞき込む。手前に、ぼけた客の頭。

久遠 すず:この柄︙︙
大島紬?

本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)の解説

現実の事実鹿児島県で作られる紬(つむぎ)の織物で、法律にもとづいて経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)」の1つです。鹿児島県の国指定の伝統的工芸品は、本場大島紬・川辺仏壇(ぶつだん)・薩摩焼の3品目です。産地の組合(本場大島紬織物協同組合・本場奄美大島紬協同組合)があります。

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女性の胸から上。ケースに身を乗り出して、布をのぞく。

久遠 すず:この1枚だけ
寸法が
大きい

〈この1枚〉種類:大島紬身丈:165cm裄(背の真ん中から袖口まで):68cmほかの11枚より、ひと回り大きい

背の高い女性の寄り。うつむいて、紬の袖の端を両手の指でつまむ。

嵯峨 葉月:母のなのに︙︙?

すずの顔の寄り。ルーペを目に当て、息をのむ。

久遠 すず:大島紬なら︙︙

久遠 すず:あの
証紙は
どこですか

着物の証紙の解説

現実の事実産地の組合などが、検査に通った反物や製品に付ける紙です。国の伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)の証紙(伝統証紙)が付いた物は、産地の組合などが行う検査に合格した品です。証紙が無くても値が付く事はありますが、売る時に一緒に出すと、店が品を確かめる材料になります。

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嵯峨 葉月:しょうし︙︙?

〈証紙〉産地の組合が、検査に通った反物に付ける紙国の伝統的工芸品なら:伝統証紙証紙があると:店が品を確かめる材料になる

伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)の解説

現実の事実「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」にもとづいて経済産業大臣が指定する工芸品です。日常の暮らしで使う・主な工程が手作業・100年以上続く技術と原材料・一定の地域に産地がある、などが要件です。新潟県の案内では、2024年11月時点で全国243品目です。

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少し上から女性。箱の中の畳紙を探る。

嵯峨 葉月:箱に
一緒に
あったかも

畳紙の内側の折り返しを、長い指が開く。斜め上から。中に、細長い証紙(字は読めない線)と、白い控えの紙。

〈畳紙の中〉証紙:1枚(本場大島紬)仕立て直しの控え:1枚寸法:身丈 165cm・裄 68cmお名前:嵯峨 葉月 様

女性の腰から上を横から。ケースの上の紙に手を置いたまま、止まる。

嵯峨 葉月:︙︙私の
名前

嵯峨 葉月:仕立て直し
って︙︙

片付けを頼まれた日︑
母は言った︒

回想。灰色のカーディガンの袖から出た母の手が、畳紙に包んだ着物の束に風呂敷を結ぶ。顔は写らない。段ボールの積まれた、片付けの途中の実家の居間。

嵯峨 京子(回想の声):あんたは
着物なんか
着ないでしょ

女性の横顔。あごに手を当てて、曇りの窓を見る。

嵯峨 葉月:着るなんて
言った事
ないのに

久遠 すず:あの
羽織って
みませんか

背の高い女性が、焦げ茶の大島紬を肩に羽織り、袖口に目を落とす。左の手前で、すずが息をのんで見上げる。女性の手の寄り。焦げ茶の紬の袖口から、手首がのぞく。

久遠 すず:ぴったり︙︙

少し上から老人。暖簾の前で腕を組み、女性の方を見る。

久遠 徳次(画面の外の声):その寸法の
着物はな

帳場の奥の戸口で、紺の半纏の老人が柱に片手を掛けて立ち、細めた目で女性を見る。背後の窓の白い光。

久遠 徳次:着る者が
おる時が

久遠 徳次:一番
値が高い

すずの腰から上。祖父をのぞき込んで少し笑う。

久遠 すず:じいちゃん
値段の話?

久遠 徳次:︙︙値段の
話だ

背の高い女性が、焦げ茶の紬を両腕で胸に抱きしめ、うつむく。

嵯峨 葉月:これは
私が
着ます

嵯峨 葉月:ほかのは
売ります

すずの胸から上。女性の顔を見て目を細める。

嵯峨 葉月:値が付かない
5枚は
母と決めます

久遠 すず:では
身分証を︙︙

女性がガラスのケースの上で、買取の紙に書き込む(字は読めない)。

嵯峨 葉月:7,200円でも
要るん
ですか?

少し上からすず。奥を振り返って助けを求める。

久遠 すず:えっと︙︙

久遠 徳次(画面の外の声):1万円に
届かん買取なら
法律では要らん

本人確認(ほんにんかくにん)が要らない買取(1万円未満)の解説

現実の事実古物商(こぶつしょう)が品を買い取る時は、相手の住所・氏名・職業・年齢を確かめる決まりですが、代金の合計が1万円未満なら、この確認をしなくてよいとされています。ただし、バイク・家庭用ゲームソフト・CD や DVD・書籍などは、1万円未満でも確認が要ります。店の決まりで身分証(みぶんしょう)を見せてもらう店もあります。

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老人を少し下から。帳場の台に両手を重ねて言う。

久遠 すず:でも
うちは
見せて
もらってます

曇りの夕方、ガラス戸のそばで、背の高い女性が畳紙の包みを胸に抱え、振り返って笑う。

嵯峨 葉月:はい
これで

嵯峨 葉月:母に
見せてきます

〈今月の帳場〉すずが1人で値を付けた品:5件買い取った品:3件(着物 6枚)月末まで:あと4日

帳場の机で、すずが帳面に筆ペンで書き込みながら、小さく笑う(帳面の字は読めない線)。

久遠 すず:あと
5件

同じ時、奥の部屋の戸口で、紺の半纏の老人が柱に手をつき、もう片方の手で胸元を押さえて顔をしかめる。

久遠 徳次(画面の外の声):︙︙ふん

老人の腰から上。夕方の帳場で台に手をつき、目を伏せる。

久遠 すず:じいちゃん
今日
腰は?

久遠 徳次(画面の外の声):︙︙平気だ

店を︑閉めた︒

すずの胸から上。シャッターを下ろした店で、奥へ声をかける。

久遠 すず:じいちゃん
閉めたよ

久遠 すず:約束の
話︙︙

奥の畳の部屋を、戸口のすずの肩越しに見下ろす。散らばった帳面のそばで、畳に崩れた紺の半纏の老人が、苦しげに目を伏せて倒れている。上に「ガタン」の描き文字。

久遠 すず:じいちゃん!

老人のしわの深い手の寄り。古い紙を1枚、固く握る。紙の端は、刃物で切ったようにまっすぐ(字は読めない線)。

久遠 すず:この紙︙︙
切られた
頁︙︙?

つづく

第4話「証紙は、どこですか」

つづく

原作・脚本
地番堂
作画
地番堂

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

利用ガイド

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

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この話で分かること

着物の買取の値は、何で決まる?

寸法(身丈・裄)、状態(しみ・カビ・におい)、種類と産地(証紙があるか)で決まる事が多いです。仕立てた時の値段とは別の物で、寸法の小さい物・しみのある物は値が付かない事もあります。

条件・例外

値の付け方は店と時期で違います。何軒かで聞いてから決める人もいます。

物語との違い

作中の「6枚で7,200円」は作中の店と品の値です。

着物の証紙とは?

産地の組合などが、検査に通った反物や製品に付ける紙です。国の伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)の証紙(伝統証紙)は、産地の組合などが行う検査に合格した品に貼られます。

条件・例外

証紙が無くても値が付く事はあります。あれば、売る時に一緒に出すと、店が品を確かめる材料になります。

着物の寸法(身丈・裄)は、なぜ値に効く?

寸法の大きい着物は着られる人が多く、次に着る人を見つけやすいため、値が付きやすい事が多いです。身丈は着物の長さ、裄は背の真ん中から袖口までの長さです。

条件・例外

寸法をどう見るかは店ごとに違います。

1万円未満の買取でも、身分証(みぶんしょう)は要る?

法律では、代金の合計が1万円未満なら、店が相手の住所・氏名・職業・年齢を確かめなくてよいとされています。ただし、バイク・家庭用ゲームソフト・CD や DVD・書籍などは、1万円未満でも確認が要ります。

条件・例外

店の決まりで、金額にかかわらず身分証を見せてもらう店もあります。

親が住んでいた家を売る時、税金の特例はある?

住んでいた家を売って儲かった時は、最高3,000万円までを儲けから差し引ける特例があります。住まなくなった家は、住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売る場合に限ります。

条件・例外

使えるのは家の持ち主(売る人)で、確定申告が要ります。迷う時は税務署(ぜいむしょ)で聞けます。

この話の用語

古物の区分(衣類(いるい))漫画の中で見る
現実の事実古物商(こぶつしょう)の許可を申し込む時は、営業所ごとに取り扱う古物の区分を届け出ます。区分は美術品類・衣類・時計・宝飾品類など13あり、着物などの和服は「衣類」に入ります。買い取ってもらう前に、その店がその品を扱っているかを確かめる目安になります。
マイホームを売ったときの特例漫画の中で見る
現実の事実自分が住んでいた家を売って儲かった時、最高3,000万円までを儲けから差し引ける特例です。親が住まなくなった家を売る時は、住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売る場合に限られます。売る人(家の持ち主)が確定申告をして使います。
本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)漫画の中で見る
現実の事実鹿児島県で作られる紬(つむぎ)の織物で、法律にもとづいて経済産業大臣が指定した「伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)」の1つです。鹿児島県の国指定の伝統的工芸品は、本場大島紬・川辺仏壇(ぶつだん)・薩摩焼の3品目です。産地の組合(本場大島紬織物協同組合・本場奄美大島紬協同組合)があります。
着物の証紙漫画の中で見る
現実の事実産地の組合などが、検査に通った反物や製品に付ける紙です。国の伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)の証紙(伝統証紙)が付いた物は、産地の組合などが行う検査に合格した品です。証紙が無くても値が付く事はありますが、売る時に一緒に出すと、店が品を確かめる材料になります。
伝統的工芸品(でんとうてきこうげいひん)漫画の中で見る
現実の事実「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」にもとづいて経済産業大臣が指定する工芸品です。日常の暮らしで使う・主な工程が手作業・100年以上続く技術と原材料・一定の地域に産地がある、などが要件です。新潟県の案内では、2024年11月時点で全国243品目です。
本人確認(ほんにんかくにん)が要らない買取(1万円未満)漫画の中で見る
現実の事実古物商(こぶつしょう)が品を買い取る時は、相手の住所・氏名・職業・年齢を確かめる決まりですが、代金の合計が1万円未満なら、この確認をしなくてよいとされています。ただし、バイク・家庭用ゲームソフト・CD や DVD・書籍などは、1万円未満でも確認が要ります。店の決まりで身分証(みぶんしょう)を見せてもらう店もあります。

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あなた徳次が倒れているのを見つけた後、すずが最初にする事を考えたい

AI救急車を呼ぶ電話をかけながら、すずが徳次の手の紙をどうするかで、話の向きが変わります。紙を開かずに半纏の懐へ戻すと、すずが祖父の秘密より祖父を先にした事が、台詞より先に伝わります。

あなた紙を懐へ戻す形で、最初の台詞を

AIすず「じいちゃん、聞こえる? 今、救急車、呼んだから」。徳次の指が、すずの袖を弱くつかむ。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

「春江さんは、昔の客だ」。徳次は、時計の刻印の事は「明日、店を閉めたら、話す」と言って奥へ下がる。次の日、背の高い会社員の嵯峨 葉月(38)が、母の着物12枚を「日曜に実家の鍵を渡すので、今日中に全部売りたい」と持ち込む。すずは売り場の頃と違い、値が付かない物もある事を先に伝える。母は「500万はかけた」と言っていたが、寸法が小さく、しみもあり、値が付くのは6枚で7,200円。最後の1枚の大島紬だけ寸法が大きく、すずが「証紙は、どこですか」と聞くと、畳紙の中から証紙と、葉月の名前の仕立て直しの控えが出てくる。「あんたは着物なんか着ないでしょ」と言っていた母が、娘の寸法に直していた。葉月はその1枚を自分で着ると決め、ほかの6枚を売る。すずの5件目。その夜、約束どおり店を閉めて奥へ声を掛けると、徳次が畳の上に倒れていた。手には、折りたたんだ古い紙が1枚。

作者

地番堂

土地と建物の値の決まり方、質の品の値付け、賃貸の退去の費用の分け方を、異世界やダンジョン、商店街の物語にして描いています。

この作品について

持ち込まれた品の値がどこで決まるのか、質に入れるのと売るのでは何が違うのかを、品と持ち主の事情の両方から味わえます。

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