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第1話「あと30秒」

縦に長い絵。上に冬の朝の道路の中継所、白い線の前に並ぶ走者と係員と人だかり。真ん中に、白いたすきを肩に掛けて走り出す走者の背中。下に、遠くの坂を必死に下ってくる、赤いたすきを握った細い走者。色鉛筆の荒い線、白い息。

今年の1月2日。武蔵野路大学駅伝、第3中継所。

先頭が通ってから、10分。

ハッ ハッ

「朝霧大学︑
繰り上げ」の声︒

繰り上げ(くりあげ)スタートの解説

作中の世界の決まりこの作品の「武蔵野路大学駅伝」は架空の大会。1月2日に8区間でたすきをつなぐ。この大会の決まりでは、中継所(ちゅうけいじょ)で先頭のチームが通ってから10分たつと、まだ前の走者が来ていないチームの次の走者は、白い繰り上げのたすきを掛けて走り出す(繰り上げスタート)。

作中の世界の決まり駅伝で、前の走者が中継所に決まった時間までに着かない時、次の走者が待たずに走り出すことです。時間や扱いは大会ごとの決まりで、例えば埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)の注意事項は、各中継所で先頭のチームから15分たったら繰り上げて出発し、その時は白いたすきを肩に掛けて走るとしています。

チームのたすきはどうなる?
繰り上げになると、前の走者のたすきは次の走者に渡らず、次の走者は大会が用意した繰り上げ用のたすきで走ります(埼玉県の大会では白いたすきで、大会の後に回収するとしています)。

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中継所の白い線の上に、両手と両膝をついて崩れる細い走者。赤いたすきを握ったまま。前には誰もいない。足元に汗と白い息。

赤い襷が届いたのは︑
30秒後だった︒

11月︒

まだ青い冬の夜明けの川沿いの土手を、一人で走る細身の若い男性。白い息が後ろへ流れる。走る脚の線が何本も重なって残る。

朝霧大学 陸上競技部 主将(4年)篠田 透吾

箱根駅伝(はこねえきでん)に出られる回数の解説

現実の事実箱根駅伝の予選会に出られるのは、関東学生陸上競技連盟に登録した男子の学生で、予選会と本大会に出た回数が合わせて4回未満の人です(エントリーした時点で出たと数えます)。1年生から毎年エントリーされた選手は、4年生が最後の年になります。予選会のエントリーは1校10〜16人、走るのは10〜12人で、各校の上位10人の合計タイムで本大会に出る10校が決まります。

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篠田 透吾:あと30秒
あの日
俺が
届かなかった
30秒

宗像 誠一:おい透吾!
最初から
飛ばし
すぎだぞ

古い自転車で走者の横を並んで走る、毛糸の帽子とジャンパーの年配の男性。首からストップウォッチ。

陸上競技部 監督宗像 誠一

篠田 透吾:︙︙はい

部室︒

陸上競技部 マネージャー(3年)浅井 ちさと

狭い部室の机。ストップウォッチとぶ厚いノートを前に、ペンを持つショートカットの若い女性。壁にたくさんの記録の紙。

〈前回の記録 第3中継所〉先頭の通過:10:02:15繰り上げ:10:12:15朝霧大学:10:12:45(30秒後)

中継所(ちゅうけいじょ)の解説

現実の事実駅伝で、走ってきた走者が次の走者にたすきを渡す場所です。埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)の注意事項は、たすきを、中継線から進む向きに20メートルの「引継ぎ(ひきつぎ)ゾーン」の中で、手から手へ確実に渡すと決めています。次に走る人は、中継線より前に立って待ちます。

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浅井 ちさと:よし︙︙
この30秒
1年かけて
調べて
きました

篠田 透吾:1年も
かけたのか

浅井 ちさと:はい
1キロずつ
全部

部室の壁の釘に掛けた、すり切れた赤いたすき。朝の光が当たる。人はいない。

篠田 透吾:おい
その襷
しまっとけよ

襷(たすき)の解説

現実の事実駅伝で、走者が肩から掛けて次の走者へつなぐ布の帯です。大会の要項の例では、埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)は、たすきは肩から斜め脇下(わきした)へ掛けて走り、肩に掛けていない走者は失格(しっかく)の対象になるとし、中継所(ちゅうけいじょ)の前後だけは手に持って走ってもよいとしています。

たすきはどこで渡す?
同じ注意事項は、中継線から進む向きへ20mの「引継ぎ(ひきつぎ)ゾーン」の中で、手から手へ確実に渡すとしています。決まりの細かい所は大会ごとに違います。

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浅井 ちさと:いやです
本番まで
しまいません

スポーツバッグを肩に掛けた、つんとした髪の若い男性が、戸口から一歩入ってくる。口の端だけで笑っている。部室の古い引き戸が開き、外の朝の光が差しこむ。机の女性と、壁ぎわの主将が戸口を見る。

御影 迅:ちわっす
今日から
入部します

御影 迅:1月の映像
見ましたよ

まっすぐこちらを見る1年の男性の顔の寄り。鋭い目、色鉛筆の荒い影。

朝霧大学 1年御影 迅

御影 迅:この30秒
俺が
縮めます

篠田 透吾:︙︙お前に
何が
分かる!

同じ朝。
1,000メートルの
試しの走り。

朝のトラックを前のめりに走る1年の男性。脚の動きの線が何本も残り、地面から砂が跳ねる。

浅井 ちさと:うそ……
1,000メートル
2分41秒

宗像 誠一:ほう
速いな

ストップウォッチを止めたまま、目を見開き口を開ける女性の寄り。髪が横へなびく。後ろに、主将がぼけて見える。

篠田 透吾:速すぎる
20キロは
もたないぞ

大学駅伝の区間の距離の解説

現実の事実箱根駅伝(はこねえきでん)(東京箱根間往復大学駅伝競走)は、往路5区間・復路5区間の10区間で、公式サイトの案内では、1区間の距離は20.8キロ(5区・6区)から23.1キロ(2区・9区)です。区間ごとに長い上り坂や平らな直線など道の形も違うので、どの走者をどの区間に置くかで結果が変わります。

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夕方︒土手︒

御影 迅:ねえ先輩
なんで
走るん
ですか

夕方の土手。体を伸ばす1年の男性と、少し離れて立つ主将。2人の影が長い。

篠田 透吾:︙︙あの30秒を
取り返す
ためだ

御影 迅:取り返すって
先輩
一人で
っすか

篠田 透吾:俺が
落とした
30秒だ

その夜︒

細い横の帯の寄り。前回の大会のプログラムの名簿の行を、指先がなぞって一つの名前で止まる。机のライトの下で、プログラムを持ったまま固まる主将。窓の外は暗い。

前回の大会の︑
名簿︒

帝都学院大学の
欄に︑
その名前があった︒

御影 迅︒
前回︑優勝した大学の
1年︒

第1話「あと30秒」

つづく

原作・脚本
たすき坂

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

利用ガイド

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

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繰り上げまで、あと30秒

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この話で分かること

駅伝の繰り上げ(くりあげ)スタートとは?

前の走者が中継所(ちゅうけいじょ)に決まった時間までに着かない時、次の走者が待たずに走り出すことです。例えば埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)の注意事項は、各中継所で先頭のチームから15分たったら繰り上げて出発し、白いたすきを肩に掛けて走るとしています。

条件・例外

繰り上げになる時間や扱いは、大会ごとの要項で決まります。

物語との違い

作中の「先頭から10分」は、架空の「武蔵野路大学駅伝」の決まりです。

たすきの掛け方に決まりはある?

大会の要項の例では、埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)は、たすきは肩から斜め脇下(わきした)へ掛けて走り、肩に掛けていない走者は失格(しっかく)の対象になるとしています。中継所(ちゅうけいじょ)の前後は手に持って走ってもよいとしています。

駅伝の30秒は、どのくらいの差?

30秒を区間の距離で割ると、1キロごとの差になります。20キロの区間なら1キロあたり1.5秒で、1キロ3分の速さなら約8メートルです。

物語との違い

作中の区間の距離は架空の大会の決まりです。

この話の用語

繰り上げ(くりあげ)スタート漫画の中で見る
作中の世界の決まりこの作品の「武蔵野路大学駅伝」は架空の大会。1月2日に8区間でたすきをつなぐ。この大会の決まりでは、中継所(ちゅうけいじょ)で先頭のチームが通ってから10分たつと、まだ前の走者が来ていないチームの次の走者は、白い繰り上げのたすきを掛けて走り出す(繰り上げスタート)。
作中の世界の決まり駅伝で、前の走者が中継所に決まった時間までに着かない時、次の走者が待たずに走り出すことです。時間や扱いは大会ごとの決まりで、例えば埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)の注意事項は、各中継所で先頭のチームから15分たったら繰り上げて出発し、その時は白いたすきを肩に掛けて走るとしています。
箱根駅伝(はこねえきでん)に出られる回数
現実の事実箱根駅伝の予選会に出られるのは、関東学生陸上競技連盟に登録した男子の学生で、予選会と本大会に出た回数が合わせて4回未満の人です(エントリーした時点で出たと数えます)。1年生から毎年エントリーされた選手は、4年生が最後の年になります。予選会のエントリーは1校10〜16人、走るのは10〜12人で、各校の上位10人の合計タイムで本大会に出る10校が決まります。
中継所(ちゅうけいじょ)漫画の中で見る
現実の事実駅伝で、走ってきた走者が次の走者にたすきを渡す場所です。埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)の注意事項は、たすきを、中継線から進む向きに20メートルの「引継ぎ(ひきつぎ)ゾーン」の中で、手から手へ確実に渡すと決めています。次に走る人は、中継線より前に立って待ちます。
襷(たすき)漫画の中で見る
現実の事実駅伝で、走者が肩から掛けて次の走者へつなぐ布の帯です。大会の要項の例では、埼玉県駅伝競走大会(2019年度の一般等の部)は、たすきは肩から斜め脇下(わきした)へ掛けて走り、肩に掛けていない走者は失格(しっかく)の対象になるとし、中継所(ちゅうけいじょ)の前後だけは手に持って走ってもよいとしています。
大学駅伝の区間の距離漫画の中で見る
現実の事実箱根駅伝(はこねえきでん)(東京箱根間往復大学駅伝競走)は、往路5区間・復路5区間の10区間で、公式サイトの案内では、1区間の距離は20.8キロ(5区・6区)から23.1キロ(2区・9区)です。区間ごとに長い上り坂や平らな直線など道の形も違うので、どの走者をどの区間に置くかで結果が変わります。

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あなた名簿で迅の名前を見つけた後の、透吾の朝を考えたい

AI透吾が誰にも聞かず、いつもより10分早く土手に出て、迅が来るのを待つ形にすると、言葉より走りで確かめる主将の性格が出せます。白い息と、まだ暗い空の青で、冬の朝の冷たさも見せられます。

あなたその線で、台詞を

AI透吾(つぶやき)「……5時30分」。迅「先輩、早いっすね」透吾「お前に、聞きたいことがある」。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

今年の1月2日、武蔵野路大学駅伝の第3中継所(ちゅうけいじょ)。先頭が通ってから10分で、朝霧大学の4区の走者は白い繰り上げ(くりあげ)のたすきで走り出した。3区の篠田 透吾が赤いたすきを持って着いたのは、その30秒後だった。11月、4年で主将になった透吾は、毎朝5時40分に土手を走る。マネージャーの浅井 ちさとは、あの日の30秒を数え続けてきた。そこへ1年の御影 迅が入部し、「この30秒、俺が縮めます」と言う。1,000メートルを2分41秒で走る迅に、透吾は速すぎると思う。その夜、前回の大会の名簿を開いた透吾は、優勝した帝都学院大学の欄に、御影 迅の名前を見つける。

作者

たすき坂

走る・跳ぶ・つなぐ。体を動かす人の物語を描いています。

この作品について

たすきの受け渡しの決まり、繰り上げスタート、1キロあたりのペースの考え方を、走る人と中継所で待つ人の両方の目で味わえます。

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