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第6話「その投稿、PRですか」

法務部の午後の窓の光。背の高い男性社員の顔の寄り。得意げな笑顔のまま、目だけが手元のスマートフォンをのぞき込む。

浜崎 大吾:︙︙え

浜崎 大吾:せっかく
画面直して
電話も6件に
減ったのに

寄り。男性の手が持つスマートフォンの白く光る画面(字は読めない)に、親指をかける。手前で女性社員が赤ペンを持つ。

浜崎 大吾:PRは
入れてって
頼んだ!

投稿ミオさんの投稿(続きを読む)#化粧水 #夜のスキンケア#保湿 #乾燥肌 #ご褒美#毎晩の習慣 #うるおい#朝の肌 #スキンケア好き#30代 #夜ふかし#pr

背の高い男性社員の胸から上。目をつぶって大きく笑い、スマートフォンを前へ突き出して、画面を人差し指で指す。

浜崎 大吾:ほら!
あった
でしょ

眼鏡の若い女性社員の寄り。受け取ったスマートフォンを目の高さに上げ、赤ペンの先を画面へ近づけて、眉を寄せる。

来栖 文乃:あの︙︙
これ
見つけられ
ます?

来栖 文乃:PRは
ハッシュタグの
一番下
12個目です

PR の表示(広告だと分かる書き方)の解説

現実の事実会社が頼んだ投稿は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の言葉や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文で、広告だと分かるように書きます。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、たくさんのハッシュタグの中に埋もれさせる、文の末尾の見にくい所に置く、周りより小さい字で書く、などは分かりにくい例としています。

出典

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浜崎 大吾:でも
書いては
あるっしょ

奥の机の銀髪の課長の寄り。鎖のついた眼鏡ごしに、目だけを2人へ上げる。

乙部 澄香:で
根拠は?

来栖 文乃:消費者庁の
運用基準
です

〈ステマの決まり 消費者庁の運用基準〉広告と分かりにくい例たくさんのハッシュタグの中に PR を埋もれさせる分かりやすい例「広告」「PR」/「A社から商品の提供を受けて投稿」

背の高い男性社員の顔の寄り。笑いが消え、口が半分開いたまま止まる。

浜崎 大吾:ステマ︙︙
マジか

ステマの規制(ステルスマーケティング)の解説

現実の事実広告なのに、広告だと分からないようにした表示(ステルスマーケティング)は、2023年10月1日から景品表示法(けいひんひょうじほう)の違反です(消費者(しょうひしゃ)庁の告示(こくじ))。会社がインフルエンサーなどに頼んで書いてもらった投稿も、会社の広告に入ります。一方、本当に個人が自分で書いた感想は対象外(たいしょうがい)です。

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浜崎 大吾:でも
書いたのは
ミオさん
だし

机をはさんで、左の背の高い男性社員と、右の眼鏡の若い女性社員。女性は赤ペンを両手で握り、言いにくそうに男性を見上げる。

来栖 文乃:えっと
お金を
払って

来栖 文乃:頼んで
書いて
もらったら
会社の広告

眼鏡の若い女性社員の寄りを少し下から。赤ペンを握り直し、まっすぐ前を見る。

来栖 文乃:決まりの
相手は
広告主
頼んだ会社です

ステマの規制の対象(広告主(こうこくぬし))の解説

現実の事実ステマの規制で責任を問われるのは、商品やサービスを売る会社(広告主)です。会社から広告を頼まれたインフルエンサーなどの第三者(だいさんしゃ)は、この規制の対象にはなりません(消費者(しょうひしゃ)庁)。

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背の高い男性社員の胸から上を少し下から。スマートフォンを胸の前で握り、顔を横へそむける。後ろの窓の光。

浜崎 大吾:きのうから
申し込み
1,240件
なんだよ

化粧水の定期便 きのうからの申し込み1,240件(いつもの4倍)

来栖 文乃:直るまで
この投稿は
止めます

来栖 文乃:ミオさんに
一度
下げて
もらって

背の高い男性社員の顔の大写し。あごに力が入り、眉を寄せて、目をそらす。

浜崎 大吾:来栖さんは
止めるだけ
じゃん

眼鏡の若い女性社員の顔の寄り。口が小さく開いたまま、目が揺れる。赤ペンを持つ手が胸の前で止まる。

来栖 文乃:︙︙

法務部を少し引きで。左で背の高い男性社員がスマートフォンを握って背を向けかけ、右で女性社員が立ちつくす。奥の机で銀髪の課長が立ち上がる。

ハナノメ通販 法務部の課長(52)乙部 澄香

乙部 澄香:止めるのは
来栖さんの
仕事

乙部 澄香:直すのは
浜崎さんの
仕事よ

法務部の戸口を出ていく背の高い男性社員の背中。片手にスマートフォン。手前の右に女性社員の後ろ姿。

浜崎さんは︑何も言わずに
部屋を出ていった︒

第6話「その投稿、PRですか」

ほかの人が帰っても︑
席を立てなかった︒

夜の法務部を引きで。ほかの机の灯りは消え、窓の外は夜のビル。机の小さな灯りの下で、眼鏡の若い女性社員が1人、書類に目を落としてペンを持つ。

来栖 文乃:止める
だけ︙︙

寄り。机の上に紙のコーヒーカップを2つ置く、課長の手。カーディガンの胸ポケットに古い赤ペン。

乙部 澄香:まだ
いたの

女性社員の胸から上。眼鏡を少し上げて目をこすり、課長を見上げる。机の灯り。

来栖 文乃:乙部さん

来栖 文乃:審査って
売る人の
敵ですか

銀髪の課長の横顔の寄り。白いカップを両手で持ち、夜の窓の外を見る。胸ポケットに赤ペン。

乙部 澄香:昔ね
止めずに
出した広告が
あったの

乙部 澄香:謝りに
行ったのは
売った人
だった

女性社員の顔の寄り。目を見開いて、課長の方へ顔を向ける。

来栖 文乃:え︙︙

乙部 澄香:止めるのは
敵だから
じゃないわ

課長の背中を引きで。コーヒーを片手に、暗い通路へ歩いていく。手前の机に、湯気の立つもう1つのカップ。

乙部 澄香:コーヒー
冷めるわよ

翌朝︒

朝の白い光の法務部。女性社員の机の前に、背の高い男性社員が立ち、気まずそうに笑ってスマートフォンを差し出す。女性社員は椅子から顔を上げる。

浜崎 大吾:来栖さん

浜崎 大吾:ゆうべ
ミオさんに
電話した

浜崎 大吾:措置命令
って
調べたら
震えた

措置命令(そちめいれい)の解説

現実の事実景品表示法(けいひんひょうじほう)に反する表示をした会社に、国(消費者(しょうひしゃ)庁)が出す命令です。その表示をやめる事や、二度としない仕組みを作る事、違反だった事を知らせる事などを命じます(景品表示法 第7条)。

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背の高い男性社員の顔の寄り。眉を下げて苦く笑い、片手で自分の腕をさする。窓の朝の光。

投稿ミオさんの投稿(直した物)【PR】ハナノメ通販さんから化粧水をいただいて投稿していますこれ、毎晩使ってる化粧水。朝の肌が、ちょっと楽しみになる。

寄り。男性の手が持つスマートフォンの白く光る画面(字は読めない)の一番上の行に、女性社員の赤ペンの先が近づく。

来栖 文乃:頭に
書いて
ある︙︙

背の高い男性社員の胸から上。片手で頭をかき、目を伏せて唇をかむ。

浜崎 大吾:「自然な
感じで」って
俺が
頼んだから

浜崎 大吾:ミオさん
PRを
下に
隠したんだって

浜崎 大吾:お礼に
化粧水も
送ってたし

頼んだ投稿の「お礼」(対価(たいか))の解説

現実の事実会社が投稿を頼んで、お金や商品を渡したら、その投稿は会社の広告と見られやすくなります。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、お金だけでなく、商品をただで渡す事やイベントへの招待なども、お礼(対価)に入るとしています。

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ミオさんからのメッセージ相手:ほんとは、頭に書きたかったんです。相手:書いていいって言ってもらえて、楽になりました。

朝の法務部を縦に高く。女性社員の机の前で、背の高い男性社員が腰から深く頭を下げる。女性社員は椅子から半分立ち上がり、赤ペンを持ったまま固まる。奥の机で銀髪の課長が眼鏡ごしに見ている。窓の白い朝の光。

浜崎 大吾:ごめん

浜崎 大吾:止めてくれて
ありがとう

眼鏡の若い女性社員の顔の寄り。頬を赤くして目をつぶり、照れ笑いで両手を前に広げてぱたぱた振る。

来栖 文乃:あの︙︙
えっと
頭を
上げてください

奥の机の銀髪の課長の寄り。目を伏せたまま、眼鏡のつるに指を添えて、口の端だけで笑う。

乙部 澄香:ふうん

ミオさんの投稿のコメント「PR でも、本当に使ってるのが伝わる」「正直に書いてくれる人のなら、買う」

浜崎 大吾:申し込み
減ったけど
止まっては
ない

寄り。女性社員の机のノートパソコンの画面(字は読めない)が明るくなり、知らせの四角が開く。手前に赤ペン。

ピコン

審査の依頼 販促課 宮路口コミを書いてくれたら 次回半額「★5つで、もっとお得に」公開:今夜0時

公開まで あと15時間

眼鏡の若い女性社員の顔の寄り。画面の白い光が眼鏡に映り、赤ペンを持つ手が口もとで止まる。

来栖 文乃:口コミを︙︙
書いて
もらう?

朝の法務部を引きで。ノートパソコンの前で両手を口に当てて固まる女性社員の後ろから、背の高い男性社員が口を開けて画面をのぞき込む。奥の机で課長が顔を上げる。

第6話「その投稿、PRですか」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

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この話で分かること

ステマとは?

広告なのに、広告だと分からないようにした表示です。2023年10月1日から景品表示法(けいひんひょうじほう)の違反になりました。会社がインフルエンサーなどに頼んで書いてもらった投稿も、会社の広告に入ります。

#PR を付ければ、それでいい?

付ける場所と書き方によります。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、たくさんのハッシュタグの中に埋もれさせる・文の末尾の見にくい所に置く・周りより小さい字で書く、などを分かりにくい例にしています。「広告」「PR」の言葉や「A社から商品の提供を受けて投稿している」の文で、分かるように書きます。

ステマで責任を問われるのは誰?

商品やサービスを売る会社(広告主(こうこくぬし))です。会社から頼まれたインフルエンサーなどの第三者(だいさんしゃ)は、この規制の対象ではありません。違反した会社には、消費者(しょうひしゃ)庁が措置命令(そちめいれい)を出すことがあります。

条件・例外

頼まれた側も、PR の書き方を頼んだ会社と決めておくと、行き違いを防げます。

商品をただでもらって紹介するのも、広告?

会社が投稿を頼んで商品を渡したなら、広告と見られやすくなります。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、お金だけでなく、ただで渡す商品やイベントへの招待なども、お礼(対価)に入るとしています。

この話の用語

PR の表示(広告だと分かる書き方)漫画の中で見る
現実の事実会社が頼んだ投稿は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の言葉や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文で、広告だと分かるように書きます。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、たくさんのハッシュタグの中に埋もれさせる、文の末尾の見にくい所に置く、周りより小さい字で書く、などは分かりにくい例としています。
ステマの規制(ステルスマーケティング)漫画の中で見る
現実の事実広告なのに、広告だと分からないようにした表示(ステルスマーケティング)は、2023年10月1日から景品表示法(けいひんひょうじほう)の違反です(消費者(しょうひしゃ)庁の告示(こくじ))。会社がインフルエンサーなどに頼んで書いてもらった投稿も、会社の広告に入ります。一方、本当に個人が自分で書いた感想は対象外(たいしょうがい)です。
ステマの規制の対象(広告主(こうこくぬし))漫画の中で見る
現実の事実ステマの規制で責任を問われるのは、商品やサービスを売る会社(広告主)です。会社から広告を頼まれたインフルエンサーなどの第三者(だいさんしゃ)は、この規制の対象にはなりません(消費者(しょうひしゃ)庁)。
措置命令(そちめいれい)漫画の中で見る
現実の事実景品表示法(けいひんひょうじほう)に反する表示をした会社に、国(消費者(しょうひしゃ)庁)が出す命令です。その表示をやめる事や、二度としない仕組みを作る事、違反だった事を知らせる事などを命じます(景品表示法 第7条)。
頼んだ投稿の「お礼」(対価(たいか))漫画の中で見る
現実の事実会社が投稿を頼んで、お金や商品を渡したら、その投稿は会社の広告と見られやすくなります。消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)は、お金だけでなく、商品をただで渡す事やイベントへの招待なども、お礼(対価)に入るとしています。

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送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

浜崎が見せた人気の人・ミオの化粧水の投稿には、PR が見えない。続きを開くと、12個のハッシュタグの一番下に「#pr」があった。来栖 文乃は、消費者(しょうひしゃ)庁の運用基準(うんようきじゅん)では、たくさんのハッシュタグに埋もれさせた PR は分かりにくい例になると話す。会社が頼んで書いてもらった投稿は会社の広告で、ステマの規制で問われるのは頼んだ会社の側。文乃は「直るまで、この投稿は止めます」と言う。きのうからの申し込みは1,240件。浜崎は「来栖さんは、止めるだけじゃん」と言って部屋を出る。課長の乙部 澄香は「止めるのは来栖さんの仕事。直すのは浜崎さんの仕事よ」。その夜、乙部は文乃に、昔、止めずに出した広告で謝りに行ったのは売った人だった、とだけ話す。翌朝、浜崎は、ゆうべミオに電話したと言う。「自然な感じで」と頼んだせいで、ミオは PR を下に隠していた。投稿の頭に「【PR】ハナノメ通販さんから化粧水をいただいて投稿しています」。浜崎は初めて文乃に頭を下げる。その時、文乃のパソコンに新しい審査の依頼が届く。「口コミを書いてくれたら、次回半額」。公開は、今夜0時。

作者

ことわり帖

住宅ローンの審査や確定申告、役所の窓口のように、結果だけが届いて理由が見えにくい手続きの裏側を描いています。

この作品について

「消える」「治る」がなぜ広告で言えないのか、では何なら言えるのかを、書く人と止める人の赤ペンのやり取りで追えます。

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