第1話ログイン
一覧

第1話「損害賠償、と言われた」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

朝の小さな印刷会社の営業部。机の島と、壁にかかった大きな月めくりのカレンダー。カレンダーの月末の日にだけ、赤いペンの丸。

10月1日、朝9時。ヨツカド印刷の営業部。

大門 義彦:筧!

営業部の奥の部長の席。太い眉で白髪まじりの角刈りの男性の部長が、白い封筒を机に叩きつけて、けわしい顔でにらむ。机の右に立つ若い男性社員が、目を見開いて部長を見る。封筒には字が無い。

ヨツカド印刷 営業部長(55)大門 義彦

大門 義彦:なんだ
これは

筧 隼人:退職の︙︙
願い
です

大門 義彦:認めん

大門 義彦:引き継ぎも
せずに
辞めるなら

大門 義彦:損害賠償
請求する
からな

青ざめて立ち尽くす若い男性社員の寄り。少し長めの前髪、ゆるめたネクタイ、手にした営業の手帳。

ヨツカド印刷 営業(26)筧 隼人

筧 隼人:損害︙︙
賠償?

筧 隼人:辞める
だけで?

〈筧 隼人の予定〉10月31日:今の会社を辞める(希望)11月1日:次の会社に入る退職の日まで あと30日

筧 隼人(つぶやき):次の会社
もう
決まってる
のに

夜︒駅前の居酒屋︒

楢崎 志保:で
なんて
書いたの?

社会保険労務士。筧の大学の先輩(32)楢崎 志保

駅前の居酒屋のカウンター。左にショートボブでジャケットの女性が、ジョッキを片手に横目で見る。右に若い男性社員が、うなだれて枝豆を見ている。白い明かり。

筧 隼人:退職願
です

楢崎 志保:願
かあ

楢崎 志保:あー︙︙

筧 隼人:えっ
だめでした?

楢崎 志保:だめじゃ
ないけど

楢崎 志保:願と届って
中身が
違うんだよ

カウンターの上の紙のおしぼりの袋に、女性がボールペンで四角を2つ描き、矢印を引いている手元の寄り(字は読めない線だけ)。

〈退職願と退職届〉退職願:辞めてもいいかを会社に聞く(会社が承諾すると、辞める事が決まる)退職届:辞める事を会社に知らせる(届いた時から、取り消せない)どちらか分からない時は、聞く方(退職願)と見られる

退職届(たいしょくとどけ)と退職願(たいしょくねがい)の解説

作中の世界の決まり作中の会社「ヨツカド印刷」と人物は架空です。

現実の事実厚生労働省の解説では、会社の承諾を求めるものを「合意退職の申込み」、承諾が無くても辞める意思を知らせるものを「辞職」と分けています。名前は「退職願」「退職届」と混ざって使われる事もあり、どちらか区別がつかない時は、合意退職の申込みと考えられます。

出した後で、取り消せる?
合意退職の申込み(退職願)は、会社の承諾が届くまでは撤回できます。辞職(退職届)は、会社に届いた時に効き目が生じ、その後は撤回できません。会社が撤回を認めれば、それでもかまいません。

出典

この言葉のこと、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

筧 隼人:知らな
かった︙︙

筧 隼人:でも
部長が
認めないって

楢崎 志保:隼人
期間の
決まってない
正社員
でしょ

カウンターに肘をつき、指を2本立ててみせる女性の寄り。少しいたずらっぽく、でも真剣な目。

楢崎 志保:なら
会社が
うんって
言わなくても

楢崎 志保:伝えてから
2週間で
終わるの

期間の定めのない雇用の退職(民法 第627条)の解説

現実の事実期間の決まっていない雇用では、働く人はいつでも辞める申し入れができ、申し入れの日から2週間で雇用が終わる、と民法の第627条が定めています。会社の同意は要りません。

就業規則に「退職は1か月前までに」とあったら?
厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例の解説では、2週間を超える解約の予告の期間の決まりや、退職を許可制にする決まりは、辞める自由を制限するので無効になる、とされています。引き継ぎのために早めに伝える事は、それとは別に大事です。

出典

この言葉のこと、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

筧 隼人:2週間︙︙

筧 隼人:じゃあ
損害賠償は?

カウンターに身を乗り出し、すがるような目で隣を見る若い男性社員の寄り。手に握ったおしぼり。

筧 隼人:払えないっす
そんなの

楢崎 志保:それね

楢崎 志保:辞めたら
罰金
みたいな
約束は

楢崎 志保:法律で
禁止なの

賠償予定(ばいしょうよてい)の禁止(労働基準法(ろうどうきじゅんほう) 第16条)の解説

現実の事実会社は、労働契約が守られなかった時のために、違約金を決めたり、損害賠償の額を前もって決めたりする契約をしてはいけない、という決まりです(労働基準法 第16条)。「辞めたら○万円」のような約束で、辞める人の足を止めないためです。

それなら、辞める時に損害賠償を請求される事は無い?
前もって額を決める事は禁止ですが、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例の解説では、退職の仕方や手続きによっては損害賠償の責任が生じる事がある、とされています。入社してすぐ突然辞めた人に賠償が命じられた裁判例もあります。

出典

この言葉のこと、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

筧 隼人:よかった︙︙

楢崎 志保:ただ︙︙

ジョッキを置き、少し目を伏せて言いにくそうにする女性の横顔。

楢崎 志保:言いにくい
けど

楢崎 志保:辞め方に
よっては
損害の話に
なる事も
あるの

筧 隼人:えっ

楢崎 志保:だから
引き継ぎは
やろ

楢崎 志保:それ
隼人を
守る事にも
なるから

楢崎 志保:退職届は
届いた日が
残る形でね

楢崎 志保:順番に
いこ

夜のアパートの小さな机。白い机の灯りの下で、若い男性が便箋にペンで書いている(字は読めない線だけ)。横に、付箋の付いた分厚いファイルの山。壁のカレンダーに赤い丸。

退職願を︑
退職届に
書き直した︒

机の上の寄り。書き終えた便箋をたたむ手と、字の無い白い封筒。そばに、手書きの表(引き継ぎの表。読めない線だけ)。

カリカリ

翌朝︒

夜明けの後の駅前の歩道。通勤の人の流れの中で、白い封筒を胸の前で両手に持ち、深く息を吸う若い男性社員。朝の白い光。

筧 隼人(つぶやき):届いた日が
残る形で︙︙

人事部︒

筧 隼人:これ
お願いします

人事部の窓口。若い男性社員が、白い封筒と分厚いファイルを両手で差し出す。窓口の向こうで、カーディガンの年配の女性の人事の担当が受け取る。朝の白い光。

筧 隼人:引き継ぎの表も
作り始め
ました

人事の人:受け取り
ました

人事の人:日付
控えて
おきますね

筧 隼人:通った︙︙

〈退職の日まで あと29日〉退職届:人事が受け取った(日付を控えた)引き継ぎの表:作り始めた

その日の昼︒

営業部の自分の席でスマートフォンを見る若い男性社員。机の上の手が止まり、スマートフォンの通知の震えの線が枠の外へはみ出す。画面は白い光だけ。

〈社内のチャット:大門 部長〉有給は使わせない。最後の日まで、毎日出社しろ。

年次有給休暇(ねんじゆうきゅうきゅうか)(有給(ゆうきゅう))の解説

現実の事実6か月続けて働き、決まった日の8割以上出た人に、会社が与えなければならない、給与の出る休みです(労働基準法(ろうどうきじゅんほう)第39条)。会社は、働く人が求めた時季に与えなければならず、その時季だと仕事の正常な運営を妨げる時に限って、別の時季に変えられます。

辞める前の有給は使える?
使えます。時季を変えられるのは別の日がある時の話なので、退職の日までに残りの日が無い時は、変える先がありません。

出典

この言葉のこと、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

筧 隼人:えっ

筧 隼人:有給
18日
残ってる
のに︙︙

営業部の奥。部長の席から、こちらを見もせずに電話をかける部長の背中。手前に、ぼうぜんとする若い男性社員の肩。壁のカレンダーの赤い丸。

〈退職の日まで あと29日〉有給の残り:18日部長:「使わせない」

スマートフォンを握りしめ、うつむいたまま歯を食いしばる若い男性社員の寄り。後ろの壁のカレンダーの赤い丸だけがくっきり見える。

筧 隼人:18日︙︙
捨てるの?

第1話「損害賠償、と言われた」

つづく

この作品を読んだあなたへ

この作品を評価する

ログイン

ログインして、★で評価してみてください。

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

評価を外しますか?

評価を下げますか?

続編が待てないあなたへ。違う話を考えたいあなたへ。

第1話の続き、いつもの AI で作ってみてください。

  1. 1ボタンを押すいつもの AI を選んで
  2. 2AI が開く作品の設定とあらすじつきで
  3. 3一緒に考える展開・台詞・絵の指示まで
例:AI との相談

あなた次の話で、隼人が部長に有給の事を言いに行く場面を考えたい

AI隼人が1人で行くか、楢崎に教わった言い方のメモを持って行くかで、隼人の成長の段が変わります。部長が引き継ぎの表をもう見ているかどうかで、部長がただの敵でない事も見せられます。

あなたメモを持って、1人で行く形で、最初の台詞を

AI隼人「部長、5分だけ、いいですか」。大門「……引き継ぎの表、あれ、お前が作ったのか」。絵:昼の営業部、部長の机の上に、付箋だらけの分厚いファイル。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

無料の Google ログインで使ってみてください

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

Gemini は、開いたら貼り付けてください。

AI の答えは、作品の公式の続きではありません。作った物を出す時は、利用ガイドを見てください。

この話の感想・こうなったらいい

感想や「こういう展開が読みたい」をお送りください。編集部の励みになります。いただいた声は、お名前を出さずに、作品の紹介(レビュー)として使わせていただくことがあります。

この話で分かること

退職届(たいしょくとどけ)と退職願(たいしょくねがい)の違いは?

厚生労働省の解説では、会社の承諾を求めるもの(合意退職の申込み)と、承諾が無くても辞める意思を知らせるもの(辞職)に分けています。名前は混ざって使われる事もあり、区別がつかない時は合意退職の申込みと考えられます。

条件・例外

合意退職の申込みは会社の承諾が届くまで撤回できます。辞職の意思表示は会社に届いた時に効き目が生じ、その後は撤回できません。

物語との違い

作中の筧が最初に出した「退職願」と、書き直した「退職届」は作中の物です。

会社が認めないと、退職できない?

期間の定めのない雇用(正社員の多く)では、働く人はいつでも辞める申し入れができ、申し入れの日から2週間で雇用は終わります(民法 第627条)。会社の同意は要りません。

条件・例外

期間の定めのある雇用(契約社員など)は、別の決まりになります。2週間を超える予告の期間や、退職を許可制にする決まりは、裁判例の解説で無効とされています。

「辞めるなら損害賠償を請求する」と言われたら?

会社が違約金や損害賠償の額を前もって決める契約は、労働基準法(ろうどうきじゅんほう)の第16条で禁止されています。ただし、退職の仕方や手続きによっては損害賠償の責任が生じる事もあるとされるので、引き継ぎをして、やり取りを書いて残しておく事が大事です。

条件・例外

個別の事情でどうなるかは、総合労働相談コーナーなどで確かめられます。

物語との違い

作中の部長の「損害賠償、請求するからな」は作中の物です。

退職のことで困った時、どこに相談できる?

各都道府県の労働局や、全国の労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)の中などにある総合労働相談コーナーで、解雇・労働条件・いじめや嫌がらせ・パワハラなど、労働問題のあらゆる分野の相談を、働く人からも会社からも無料で受け付けています。予約は要らず、面談か電話で相談できます。

この話の用語

退職届(たいしょくとどけ)と退職願(たいしょくねがい)漫画の中で見る
作中の世界の決まり作中の会社「ヨツカド印刷」と人物は架空です。
現実の事実厚生労働省の解説では、会社の承諾を求めるものを「合意退職の申込み」、承諾が無くても辞める意思を知らせるものを「辞職」と分けています。名前は「退職願」「退職届」と混ざって使われる事もあり、どちらか区別がつかない時は、合意退職の申込みと考えられます。
期間の定めのない雇用の退職(民法 第627条)漫画の中で見る
現実の事実期間の決まっていない雇用では、働く人はいつでも辞める申し入れができ、申し入れの日から2週間で雇用が終わる、と民法の第627条が定めています。会社の同意は要りません。
賠償予定(ばいしょうよてい)の禁止(労働基準法(ろうどうきじゅんほう) 第16条)漫画の中で見る
現実の事実会社は、労働契約が守られなかった時のために、違約金を決めたり、損害賠償の額を前もって決めたりする契約をしてはいけない、という決まりです(労働基準法 第16条)。「辞めたら○万円」のような約束で、辞める人の足を止めないためです。
年次有給休暇(ねんじゆうきゅうきゅうか)(有給(ゆうきゅう))漫画の中で見る
現実の事実6か月続けて働き、決まった日の8割以上出た人に、会社が与えなければならない、給与の出る休みです(労働基準法(ろうどうきじゅんほう)第39条)。会社は、働く人が求めた時季に与えなければならず、その時季だと仕事の正常な運営を妨げる時に限って、別の時季に変えられます。

出典

更新日:

この話のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

トゥーンエルを、あなたの AI にMCP 対応無料読むだけ詳しい人向け

AI に追加して、ほかの話や用語も聞いてみてください。読むだけで、書き込みはしません。

https://tooneru.com/mcp

  1. 名前が「トゥーンエル」、URL が上の URL になっているのを見て、「続ける」を押してください。
  2. 認証は「サインインなし」のまま、「追加」を押してください。
  3. 「連携」か「連携させる」を押してください。
  4. 読み取り専用のツールを「常に許可」にしてください。

トゥーンエルを運営するH株式会社の道具です。

この話のあらすじ

小さな印刷会社「ヨツカド印刷」の営業・筧 隼人(26)は、11月1日から次の会社に入ると決め、月末に辞めるつもりで退職願(たいしょくねがい)を出した。翌朝、営業部長の大門 義彦は封筒を机に叩きつけ、「引き継ぎもせずに辞めるなら、損害賠償、請求するからな」と言う。夜、大学の先輩で社会保険(しゃかいほけん)労務士の楢崎 志保に相談すると、楢崎は「願と届って、中身が違うんだよ」と言う。退職願は辞めてもいいかを会社に聞くもの、退職届(たいしょくとどけ)は辞める事を知らせるもの。期間の決まっていない雇用なら、会社が認めなくても、伝えてから2週間で雇用は終わる(民法 第627条)。辞めたら罰金のような約束は法律で禁止されている(労働基準法(ろうどうきじゅんほう) 第16条)。ただ、辞め方によっては損害の話になる事もある。だから引き継ぎはやろう、それが隼人を守る事にもなる――。隼人は退職届を書き直し、引き継ぎの表を作り始め、翌朝、人事に出して日付を控えてもらう。退職の日まで、あと29日。その昼、社内のチャットに部長から「有給は使わせない。最後の日まで、毎日出社しろ」。有給は18日残っている。

作者

人事のすみ

採用の面接から転職・退職まで、働く人と会社の両方の側から描いています。

この作品について

「辞めるなら損害賠償」と言われた時、本当に払うのか。有給・残業代・失業保険まで、隼人と楢崎と一緒に退職の日まで数えてみてください。

人事のすみのほかの作品

この話を紹介する

話のバナー・サムネイル・紹介文・貼れる HTML素材を見る

通知

お気に入り(♡)と本棚の作品に新しい話が出た日に、1回だけお知らせが届きます。届く時刻を選んでください。

ログインは要りません。

届く時刻

お知らせ

お知らせの一覧

ホームに追加

    ログインは要りません。