第2話ログイン
一覧

第2話「姉の家の、押し入れ」

玄関の前の雪の中。小柄な年配の女性がりんごの入った紙袋を抱えて身をすくめ、少し後ろに緑のセーターの女性が腕を抱いて立つ。照代の吐く息が白い。

穂波の母(67)栗栖 照代

日曜の朝。10年ぶりの、伯母の家。

栗栖 照代:︙︙姉さん

下から見上げた古い農家の玄関。上がり口に、背の高い骨ばった年配の女性が若草色の雪かきのスコップを片手に立って見下ろしている。きつく結んだ灰色の髪。軒の雪。

照代の姉(72)越智 喜美江

越智 喜美江:帰んな

栗栖 照代:手帳を
探しに
来たの

越智 喜美江:手帳?

葛城 穂波:母の
母子手帳です

葛城 穂波:子どもの頃の
予防接種の
記録が要って

越智 喜美江:母さんの物なら
全部
押し入れだ

越智 喜美江:3月に
この家
壊すから

祖母の家は︑
3月に壊される︒

越智 喜美江:雪かき
するなら
上げてやる

玄関の前で、緑のセーターの女性が腰を落としてスコップで雪をすくい上げる。軒下で背の高い年配の女性が腕を組んで見ている。

ザッ

時計の修理職人(41)葛城 穂波

越智 喜美江:腰が
入ってない

葛城 穂波:時計屋
なんで

葛城 穂波:腕より
指先の
仕事で︙︙

越智 喜美江:知らん

葛城 穂波:伯母さん
毎日これを
1人で?

越智 喜美江:ほかに
誰がやるのさ

越智 喜美江:この家には
もう私しか
いない

栗栖 照代:姉さん
腰は︙︙

越智 喜美江:あんたに
心配される
筋合いは
ないね

冷えた畳の部屋を高い所から。仏壇と、壁の古い振り子の柱時計。小柄な年配の女性が仏壇の写真の前で正座し、背の高い女性が戸口で腕を組む。窓に雪明り。

栗栖 照代:母さん
来たよ

越智 喜美江:今さら
線香かい

祖母が亡くなって︑
10年︒

越智 喜美江:母さんの
最期に
来なかった
くせに

小柄な年配の女性の胸から上。目を伏せて口を結び、右手で自分の左の二の腕を強くつかんでいる。

栗栖 照代:︙︙

葛城 穂波:10年の
理由って
これ︙︙?

押し入れの中を肩越しに。布団の下に積まれた菓子の缶と段ボール。緑のセーターの女性が古い菓子の缶を引き出す。

〈今日さがす物(相談室で聞いた)〉1 母の母子手帳(満7歳までの予防接種の記録)2 なければ 市役所の予防接種台帳3 それもなければ 住民票か戸籍の附票などと、ほかの書類を合わせて示す道がある

予防接種台帳(よぼうせっしゅだいちょう)の解説

現実の事実市町村(しちょうそん)が、だれにいつ予防接種をしたかを記録する帳簿(ちょうぼ)です。昔の台帳が今も残っているかは市町村ごとに違い、厚生労働省は各市町村の保存の様子を調べて公表しています。母子手帳(ぼしてちょう)が無い時、満7歳までに集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)を受けた事を示す証拠になります。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

戸籍の附票の解説

現実の事実本籍のある市区町村(しくちょうそん)が、戸籍と一緒に作る、住所の移り変わりの記録です。給付金(きゅうふきん)の手続きでは、手帳や台帳が無い時に、陳述書(ちんじゅつしょ)・接種痕の意見書と合わせて出す書類の1つです(住民票(じゅうみんひょう)でもよい)。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

葛城 穂波:7歳までの
判子が
1つでも
あれば︙︙

越智 喜美江:なんで
7歳なのさ

畳の上を斜め上から。開けた缶と箱のまわりに3人が座り、古い手紙・写真・手帳が広がる。小柄な女性が1枚の写真を指さす。

葛城 穂波:えっと
小さい時に
うつると

葛城 穂波:ウイルスが
体に
残りやすい
って

満7歳になるまで(の集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう))の解説

現実の事実2006年(平成18年)の最高裁判所(さいばんしょ)の判決は、B型肝炎ウイルスに感染して体に住みつく(持続感染(じぞくかんせん))のは、免疫の働きが育ちきっていない幼い頃(遅くとも6歳頃まで)に感染した場合だとしました。給付金(きゅうふきん)の要件は、これをもとに「満7歳の誕生日の前日までに集団予防接種等を受けた事」としています。

生まれた年の決まりは?
この判決を受けて、対象は1941年(昭和16年)7月2日以降に生まれた人とされています(予防接種法による集団予防接種(しゅうだんよぼうせっしゅ)が始まった1948年7月1日に、満7歳の手前だった人)。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

越智 喜美江:ふうん

古い色あせた写真を、緑の袖の手が両手で持つ寄り(色鉛筆で写真らしく)。小学校の講堂に子どもたちが1列に並び、奥の机に白衣の大人が座っている。注射器は見えない。

栗栖 照代:あ︙︙
1年生の
講堂だ

栗栖 照代:ツベルクリンの
日かねえ

ツベルクリン反応検査(はんのうけんさ)の解説

現実の事実結核にかかった事があるか(免疫があるか)を、皮膚の反応で調べる検査です。B型肝炎訴訟では、予防接種と並んで「集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)」に入ります。学校などで子どもを集めて行われた時代がありました。

注射針はいつから1人ずつ替えた?
国は、ツベルクリン反応検査とBCGの注射針を1950年(昭和25年)から1人ごとに替えるよう指導しています。注射筒を1人ずつ替える指導は1988年(昭和63年)1月27日からです。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

越智 喜美江:あんた
泣きながら
並んでた

背の高い年配の女性の横顔の寄り。手にした写真を見たまま、口の端がほんの少しだけ上がりかける。

越智 喜美江:︙︙母さんが
後ろから
背中
押してた

葛城 穂波:あった︙︙

缶の底のほどけた風呂敷の上で、緑のセーターの女性が茶色の古い手帳を両手で高く持ち上げ、目を見開いている。
開いた古い手帳の寄り。予防接種の欄に、丸い判子と手書きの行が並ぶ(字は読めない)。緑の袖の人差し指が行をなぞる。

〈手帳の予防接種の欄〉種痘 昭和30年5月BCG 昭和31年10月ジフテリア 昭和33年4月

種痘(しゅとう)の解説

現実の事実天然痘を防ぐための予防接種です。B型肝炎訴訟では、手帳や台帳が無い時、種痘やBCGの接種の痕を医師が確かめた接種痕意見書(せっしゅこんいけんしょ)を、子どもの頃に集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)を受けた証拠の1つにします。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

葛城 穂波:どれも
7歳より前

葛城 穂波:期間の中!

小柄な年配の女性が、渡された古い手帳を片手に持ち、もう片方の手を口に当てる。目がうるんでいる。

栗栖 照代:よかった︙︙

小柄な年配の女性が古い手帳を胸に抱きしめ、目を閉じて上を向き、息をつく。窓の雪明りが髪に当たる。

栗栖 照代:なんもね︙︙
あったんだ
ちゃんと

小柄な女性が胸に抱えた古い手帳に、紺の袖の骨ばった手が伸び、表紙の名前の欄に親指を置く寄り(字は読めない)。

越智 喜美江:照代

越智 喜美江:表紙
よく見な

床すれすれから見上げた、背の高い年配の女性。古い手帳を顔の横にかかげ、まっすぐ見下ろす。後ろの窓に雪明り。

越智 喜美江:これ
照代のじゃ
ない

越智 喜美江:私のだよ

葛城 穂波:えっ︙︙

伯母は︑母より5つ上︒
どれも︑母が生まれる前の
日付だった︒

冷えた和室の全景。立って手帳を開いたまま口を開ける背の高い年配の女性、畳に手をついて見上げる小柄な女性、空の缶を抱えて座りこむ緑のセーターの女性。窓の外に雪。

越智 喜美江:あんたのは
嫁に行く時
持ってったろ

葛城 穂波:じゃあ
お母さんの
手帳は︙︙

栗栖 照代:︙︙

第2話「姉の家の、押し入れ」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

母のひと言から始まった、B型肝炎給付金の話

この続き、いつもの AI で作れます

この作品を読んだあなたへ

この作品を評価する

ログイン

ログインして、★で評価してみてください。

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

評価を外しますか?

評価を下げますか?

この話の感想・こうなったらいい

感想や「こういう展開が読みたい」をお送りください。編集部の励みになります。いただいた声は、お名前を出さずに、作品の紹介(レビュー)として使わせていただくことがあります。

この話で分かること

B型肝炎給付金(きゅうふきん)で、母子手帳(ぼしてちょう)は何の証拠になる?

満7歳になるまでに集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)(予防接種とツベルクリン反応検査(はんのうけんさ))を受けた事と、それが1948年7月1日〜1988年1月27日の間だった事を示す証拠になります。

条件・例外

二次感染(にじかんせん)(母から子へ)を主張する時は、子の手帳ではなく、一次感染者(いちじかんせんしゃ)である母親の接種の記録が要ります。

物語との違い

作中の手帳の日付・判子の数は創作です。

母子手帳(ぼしてちょう)が無い時は、どうする?

市町村(しちょうそん)に残っている予防接種台帳(よぼうせっしゅだいちょう)を使えます。それも無い時は、事情を書いた陳述書(ちんじゅつしょ)・接種の痕が確かめられる医師の意見書(接種痕意見書(せっしゅこんいけんしょ))・住民票(じゅうみんひょう)か戸籍の附票などで示します。

条件・例外

その時期の予防接種台帳を保存している市区町村(しくちょうそん)に住んでいた事があり、台帳に記載が無い時は、その証明書も要ります。

なぜ「7歳になるまで」なの?

2006年の最高裁判所(さいばんしょ)の判決が、B型肝炎ウイルスが体に住みつくのは幼い頃(遅くとも6歳頃まで)に感染した場合だとしたためです。給付金(きゅうふきん)の要件は「満7歳の誕生日の前日までに集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)を受けた事」です。

B型肝炎給付金(きゅうふきん)の対象になる人の生まれの範囲は?

一次感染者(いちじかんせんしゃ)は、1941年(昭和16年)7月2日から1988年(昭和63年)1月27日までに生まれた人が対象になりえます。

条件・例外

手帳や台帳が無く、陳述書(ちんじゅつしょ)と接種痕意見書(せっしゅこんいけんしょ)で示す時は、戸籍などでこの期間に生まれた事を確かめます。

この話の用語

予防接種台帳(よぼうせっしゅだいちょう)漫画の中で見る
現実の事実市町村(しちょうそん)が、だれにいつ予防接種をしたかを記録する帳簿(ちょうぼ)です。昔の台帳が今も残っているかは市町村ごとに違い、厚生労働省は各市町村の保存の様子を調べて公表しています。母子手帳(ぼしてちょう)が無い時、満7歳までに集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)を受けた事を示す証拠になります。
戸籍の附票
現実の事実本籍のある市区町村(しくちょうそん)が、戸籍と一緒に作る、住所の移り変わりの記録です。給付金(きゅうふきん)の手続きでは、手帳や台帳が無い時に、陳述書(ちんじゅつしょ)・接種痕の意見書と合わせて出す書類の1つです(住民票(じゅうみんひょう)でもよい)。
満7歳になるまで(の集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう))漫画の中で見る
現実の事実2006年(平成18年)の最高裁判所(さいばんしょ)の判決は、B型肝炎ウイルスに感染して体に住みつく(持続感染(じぞくかんせん))のは、免疫の働きが育ちきっていない幼い頃(遅くとも6歳頃まで)に感染した場合だとしました。給付金(きゅうふきん)の要件は、これをもとに「満7歳の誕生日の前日までに集団予防接種等を受けた事」としています。
ツベルクリン反応検査(はんのうけんさ)漫画の中で見る
現実の事実結核にかかった事があるか(免疫があるか)を、皮膚の反応で調べる検査です。B型肝炎訴訟では、予防接種と並んで「集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)」に入ります。学校などで子どもを集めて行われた時代がありました。
種痘(しゅとう)漫画の中で見る
現実の事実天然痘を防ぐための予防接種です。B型肝炎訴訟では、手帳や台帳が無い時、種痘やBCGの接種の痕を医師が確かめた接種痕意見書(せっしゅこんいけんしょ)を、子どもの頃に集団予防接種等(しゅうだんよぼうせっしゅとう)を受けた証拠の1つにします。

出典

更新日:

続編が待てないあなたへ。違う話を考えたいあなたへ。

第2話の続き、いつもの AI で作ってみてください。

  1. 1ボタンを押すいつもの AI を選んで
  2. 2AI が開く作品の設定とあらすじつきで
  3. 3一緒に考える展開・台詞・絵の指示まで
例:AI との相談

あなた手帳が喜美江のだと分かった後の、帰りの車の中を考えたい

AI助手席の照代が、嫁に行く時に持って出た荷物を1つずつ思い出していく場面にすると、手帳を探す次の手につながります。喜美江の「持ってったろ」が責める言葉でなく、妹の嫁入りを覚えていた言葉だと、穂波が気づく所も作れます。

あなた照代が思い出す所を

AI照代「嫁に行く時……あの手帳、どの箱に入れたんだったかねえ」

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

無料の Google ログインで使ってみてください

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

Gemini は、開いたら貼り付けてください。

AI の答えは、作品の公式の続きではありません。作った物を出す時は、利用ガイドを見てください。

この先のこと、自分のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

トゥーンエルを、あなたの AI にMCP 対応無料読むだけ詳しい人向け

AI に追加して、ほかの話や用語も聞いてみてください。読むだけで、書き込みはしません。

https://tooneru.com/mcp

  1. 名前が「トゥーンエル」、URL が上の URL になっているのを見て、「続ける」を押します。
  2. 認証は「サインインなし」のまま、「追加」を押します。
  3. 「連携」か「連携させる」を押します。
  4. 読者の操作:読み取り専用のツールは「常に許可」を選べます。

トゥーンエルを運営するH株式会社の道具です。

この話のあらすじ

日曜、穂波と照代は雪の峠を越え、照代の姉・越智 喜美江の古い家を訪ねる。喜美江はスコップを手に「帰んな」。祖母の家は3月に壊されるので、祖母の物は全部押し入れにある。雪かきをする条件で上げてもらうと、仏壇(ぶつだん)と止まった柱時計の部屋で、喜美江は「母さんの最期に来なかったくせに」と言う。押し入れの缶から、照代が1年生の時の講堂の写真が出て、喜美江は「あんた、泣きながら並んでた」と少しだけ笑う。缶の底から古い母子手帳(ぼしてちょう)が見つかり、予防接種の欄の日付はどれも7歳より前。照代は「ちゃんとあったんだ」と抱きしめる。けれど喜美江が表紙を見せる。「これ、照代のじゃない。私のだよ」。照代の手帳は、嫁に行く時に照代が持って出たはずだった。

作者

カルテの余白

診察室や相談の部屋、家族の居間で、治療や検査を決める前の人と、その話を聞く人を描いています。

この作品について

母のひと言から、昔の予防接種と家族の40年が少しずつほどけていく。B型肝炎の給付金を受け取るまでに何を集め、誰と話すのかを、穂波と一緒にたどれます。

カルテの余白のほかの作品

この話を紹介する

話のバナー・サムネイル・紹介文・貼れる HTML素材を見る

通知

お気に入り(♡)の作品に新しい話が出た日に、1回だけお知らせが届きます。届く時刻を選んでください。

ログインは要りません。

届く時刻

お知らせ

お知らせの一覧

ホームに追加

    ログインは要りません。