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第4話「水の中の、二人」

夜の寮の二人部屋。大柄でまるい顔の少年が、黒い煙を噴く鍋を両手で持って慌てる。戸口で黒い制服の少年が口を押さえてむせる。上から見下ろす角度。

演習室の騒ぎの、その夜。

辺境ロウ村の奨学生(14)レン

新入生・北の牧場の息子モルト

レン:また
黒い煙!?

モルト:腹へったから
火の呪文で
煮たんだなあ

少年の顔の寄り。頬に煤をつけ、にかっと笑って鍋を持ち上げる。

モルト:強火の方が
早いだろ?

レン:︙︙いい質問だ

まるい顔の少年がきょとんとする顔の寄り。頬に煤。

モルト:いい質問?

レン:あ︑いや
前の︙︙癖で

鍋の底の寄り。真っ黒な焦げ。少年の匙がそれを削る。

レン:焦げは
炭だよ
演習室の煤と
同じ
炭素

モルト:えっ
炭にも
精霊が
いるのか!

レン:うん
焦げにも
いるよ

焦げる物(こげるもの)(有機物(ゆうきぶつ))の解説

現実の事実砂糖や小麦粉のように、炭素を含む物を有機物といいます。強く熱すると焦げて黒くなり、燃やすと二酸化炭素が出ます。食塩のような無機物は焦げません。中学の理科で、白い粉を見分ける実験として習います。

出典

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机の上の紙と、水の入ったコップ。そばにろうそくの火。紙は明日の小試験の知らせ(読めない字の形だけ)。

〈座学のお知らせ〉明日、小試験担当:クラウス先生(水の家)題:四元素を述べよ

小試験(しょうしけん)の解説

作中の世界の決まりこの世界の学院の、座学の短い筆記の試験です。30日後の実技の試験とは別で、点が悪いと奨学の審議に響きます。

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モルト:げっ
水の家の
先生だぞ

少年の顔の寄り。頬づえをつき、机の紙を指でたたいて、得意げに笑う。

モルト:水は四元素の
一つって書けば
満点だなあ

レン:クラウス先生って
どんな先生?

モルト:水の家の
えらい先生だぞ
水の悪口は
許さないなあ

水の家(みずのいえ)の解説

作中の世界の決まりこの世界の、水の魔法を受け継ぐ四つの家の一つです。学院の座学の教師に多く、「水は清らかな元素」と教えます。

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少年の腰から上。襟巻きに顎をうずめ、横目で静かに言い切る。

レン:水は
元素じゃない

元素(げんそ)の解説

現実の事実物を作っている原子の種類のことです。水素・炭素・酸素などがあり、周期表(しゅうきひょう)に多くの種類が並びます。水は電気で水素と酸素に分けられるので、元素ではありません。中学2年の理科で、水を分ける実験と一緒に習います。

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レン:確かめよう

少年の目の寄り。手に持ったコップの水をのぞきこむ。水の面に、升目の光が映る。
コップの水の中、〈窓〉ごしに見える小さな光。青白い大きな光の粒一つに、淡い小さな光の粒が二つ寄り添う形が、水いっぱいに並んでいる。

レン:水の精霊は
一人じゃない

レン:大きいのは
火の時の
酸素

少年の顔を少し下から。両手でコップを持ってのぞきこみ、目を見開く。

レン:小さいのは
すごく軽い︙︙

レン(ささやき):︙︙水素

寮の部屋の空中に開いた、青白い〈窓〉の表。段の付いた升の並びの、いちばん左上の端の升が新しく灯り、先に灯った2つの升も光る。手前に少年の驚いた横顔がぼける。

〈学院の表〉灯った升:3/1181番 H 水素

水素(すいそ)の解説

現実の事実1番の元素で、元素記号(げんそきごう)は H です。陽子1個と電子1個だけでできた、いちばん簡単な作りの元素で、燃えると酸素と結びついて水になります。酸素と混ぜて火花を飛ばすと爆発するので、家で作ったり火を近づけたりしてはいけません。

誰が見つけた?
イギリスのキャヴェンディッシュが、鉄などの金属に酸を反応させて「可燃性空気」を取り出しました。この気体を、後にフランスのラヴォワジエが水素と名付けました。

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水の精霊は︑
水素2つと︑
酸素1つの
組だった︒

分子(ぶんし)の解説

現実の事実原子がいくつか結びついてできた、物の性質をもつ一番小さな粒です。水の分子は、水素の原子2つと酸素の原子1つでできています。中学の理科で、物質は原子や分子からできていると習います。

この世界では?
レンが〈窓〉で見た「水の精霊の組」は、現実の水の分子に当たります。

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前の世界の
書き方なら︑
H2O︒

水の化学式(みずのかがくしき)(H2O)の解説

現実の事実水の分子1つが、水素の原子2つと酸素の原子1つでできている事を表す式です。H は水素、O は酸素、右下の 2 は水素の原子の数です。

水が元素でないと分かったのは?
1783年の夏、キャヴェンディッシュが水素と酸素を混ぜた気体に電気の火花を飛ばして水ができる事を見つけ、1784年の『空気に関する実験』で、水は酸素と水素の化合物だと示しました。

出典

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まるい顔の少年が横からコップを取り上げ、ごくごくと飲み干す。のぞいていた少年が手を伸ばして固まる。

モルト:ん?
ただの水
だろ

レン:あ︙︙
精霊が︙︙

まるい顔の少年が、お腹に手を当てて口を大きく開けて笑う。手に空のコップ。

モルト:腹の中で
元気にしてる
だろ

モルト:でもお前
先生みたいに
話すなあ
せんせ

まるい顔の少年が匙を振ってにかっと笑う。横で黒い制服の少年が額に手を当ててうなだれる。顔を崩した笑いの絵。

レン:せんせは
やめろって

夜更けの部屋を上から。大の字でいびきをかく大柄な少年と、机のろうそくの灯りで白い紙を見つめる細身の少年。窓の外は暗い。

モルト:ぐう︙︙
肉︙︙

翌朝︒
座学の教室︒

段になった石の教室。アーチの扉から、薄い色の髪をきっちり分けた細い眼鏡の教師が、紙の束を抱えて入ってくる。黒く長い衣に、肩から斜めの白い帯。頬はこけ、目じりと口元にしわ。

座学の教師・水の家の出クラウス先生

クラウス先生:四元素を
述べなさい

クラウス先生:簡単
でしょう?

レン:火・水・風・土
そう書けば
満点

少年の手元。白い答案の上でペンが止まる。隣の席の大柄な少年が、口に手を当ててささやく。机にインクの瓶とろうそく。

モルト(ささやき):せんせ
水は四元素って
書けよ

レン:本当を書けば
零点
四元素と書けば
嘘になる

回想。白衣の大人の男が一人で実験台に向かい、離れた席の高校生たちがつまらなそうに見ている。色の抜けた画面。

前の人生でも︑
危ない事は
教科書だけで
済ませた︒

少年の顔の寄り。ペンを持ったまま目を伏せ、白い答案を見下ろす。

レン:今度は
逃げない
嘘は
書かない

〈レンの答案〉火は元素ではない。燃える、という出来事だ。水は元素ではない。水素と酸素でできている。

モルト(ささやき):せんせ︙︙
本当に
書いたのか

集めた答案を︑
クラウス先生が
一枚ずつめくる︒

教師の顔の寄り。眼鏡の奥でにらみ、歯を食いしばって答案を握りつぶす。怒りで頬が赤い。
少年の目の寄り。前髪の間から、まっすぐ前を見ている。
教室の全景を後ろから。前で答案を一枚掲げて立つ教師と、立ち上がって振り向く生徒たち。手前のいちばん後ろの席に、一人だけ座ったままの少年の背中。

クラウス先生:︙︙奨学生さん

第4話「水の中の、二人」

つづく

原作・脚本
ka2uma
作画
ka2uma

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

利用ガイド

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

火・水・風・土、だけじゃない。

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この話で分かること

水素(すいそ)とは?

1番の元素で、元素記号(げんそきごう)は H です。陽子1個と電子1個だけでできた、いちばん簡単な作りの元素で、燃えると酸素と結びついて水になります。イギリスのキャヴェンディッシュが金属に酸を反応させて取り出した「可燃性空気」を、後にラヴォワジエが水素と名付けました。

水の化学式(みずのかがくしき) H2O の意味は?

水の分子1つが、水素の原子2つと酸素の原子1つでできている、という意味です。H は水素、O は酸素、2 は水素の原子の数です。

水が元素(げんそ)でないと分かったのはいつ?

1783年の夏、キャヴェンディッシュは水素と酸素を混ぜた気体に電気の火花を飛ばし、水ができる事を見つけました。翌1784年の『空気に関する実験』で、それまで元素と考えられていた水が酸素と水素の化合物だと示しました。

物語との違い

作中の学院では、水は今も四元素(しげんそ)の一つと教えられています。

焦げの正体は?

砂糖や肉のような有機物(ゆうきぶつ)(炭素を含む物)は、強く熱すると焦げて黒くなります。有機物は燃えると二酸化炭素を出し、燃え残りの黒い煤には炭素が多く含まれます。

この話の用語

焦げる物(こげるもの)(有機物(ゆうきぶつ))漫画の中で見る
現実の事実砂糖や小麦粉のように、炭素を含む物を有機物といいます。強く熱すると焦げて黒くなり、燃やすと二酸化炭素が出ます。食塩のような無機物は焦げません。中学の理科で、白い粉を見分ける実験として習います。
小試験(しょうしけん)漫画の中で見る
作中の世界の決まりこの世界の学院の、座学の短い筆記の試験です。30日後の実技の試験とは別で、点が悪いと奨学の審議に響きます。
水の家(みずのいえ)漫画の中で見る
作中の世界の決まりこの世界の、水の魔法を受け継ぐ四つの家の一つです。学院の座学の教師に多く、「水は清らかな元素」と教えます。
元素(げんそ)漫画の中で見る
現実の事実物を作っている原子の種類のことです。水素・炭素・酸素などがあり、周期表(しゅうきひょう)に多くの種類が並びます。水は電気で水素と酸素に分けられるので、元素ではありません。中学2年の理科で、水を分ける実験と一緒に習います。
水素(すいそ)漫画の中で見る
現実の事実1番の元素で、元素記号(げんそきごう)は H です。陽子1個と電子1個だけでできた、いちばん簡単な作りの元素で、燃えると酸素と結びついて水になります。酸素と混ぜて火花を飛ばすと爆発するので、家で作ったり火を近づけたりしてはいけません。
分子(ぶんし)漫画の中で見る
現実の事実原子がいくつか結びついてできた、物の性質をもつ一番小さな粒です。水の分子は、水素の原子2つと酸素の原子1つでできています。中学の理科で、物質は原子や分子からできていると習います。
水の化学式(みずのかがくしき)(H2O)漫画の中で見る
現実の事実水の分子1つが、水素の原子2つと酸素の原子1つでできている事を表す式です。H は水素、O は酸素、右下の 2 は水素の原子の数です。

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更新日:

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あなたモルトがコップの水を飲み干した後の、寮の部屋の続きを考えたい

AIモルトが空のコップをのぞいて「精霊、腹の中でけんかしてないか?」と急に心配になり、レンが笑いをこらえて答える、という筋が自然です。

あなたレンの返しの台詞を

AIレン「大丈夫。小さい二人と大きい一人で、ずっと組んでるから。……それが、水なんだ」

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

演習室(えんしゅうしつ)の騒ぎの夜。同室のモルトが火の呪文で煮込みの鍋を焦がし、部屋は煙だらけになる。焦げも煤と同じ炭素だと話すレンを、モルトは「せんせ」と呼び始める。明日は水の家のクラウス先生の小試験(しょうしけん)で、題は「四元素(しげんそ)を述べよ」。水は四元素と書けば満点だとモルトは言う。レンが〈窓〉でコップの水をのぞくと、大きな精霊一つに小さな精霊が二つ寄り添っていた。一つは火を燃やす酸素、もう一つはすごく軽い水素。〈学院の表〉の1番目の升が灯る。翌日、レンは答案に「水は元素ではない。水素と酸素でできている」と書く。答案を読んだクラウス先生の顔色が変わる。

作者

ka2uma

Web マーケター

Web 集客・SEO の仕事の考え方を異世界転生の物語に、AI と働く毎日の出来事や、そこから考えた話を読み切りにして描いています。

この作品について

燃える仕組み、空気と水の正体、炎の色、周期表。中学・高校の化学で習う事が、魔法の勝負の決め手になる面白さを味わえる物語です。

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