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第5話「零点の答案」

学院の廊下の掲示板。真ん中に貼り出された答案に、赤い筆の大きな丸(零点の印)。前に人だかり。その真ん中に立つ、襟巻きの少年の後ろ姿。

3日後。小試験の答案が、貼り出された。

辺境ロウ村の奨学生(14)レン

一同(何人もの声):うわ
零点!
水が元素じゃ
ないって!

掲示板の前。襟巻きの少年が片手を広げて小さく肩をすくめ、隣の大柄な少年が汗をかいて頭をかく。

新入生・北の牧場の息子モルト

モルト:せんせ︙︙
だから
言ったのに

レン:うん
分かってて
書いた

人だかりの後ろ。紅の肩掛けの、淡い色の髪の少女だけが笑わず、古い革表紙の書を両手で開いて持つ。

火の家アルデントの次女イリス・アルデント

〈火の家の古い書〉閉め切った部屋で、火を焚くな。(なぜかは、書いていない)

イリス・アルデント:ふん
書いてある︙︙
あいつの言った通り

少年の横に、細い眼鏡の教師が立つ。肩ごしに少年を見下ろし、口元だけで笑う。

クラウス先生:奨学生さん

教師の顔の寄り。細い眼鏡の奥で目は冷たいまま、口元だけが笑う。

座学の教師・水の家の出クラウス先生

クラウス先生:零点ですか
それは
お困り
でしょうね

クラウス先生:教室へ
水が元素だと
見せて
あげましょう

座学の教室︒

段になった教室の教壇。丸いガラスの器の水が火皿の上で沸き、白い湯気が高く立つ。眼鏡の教師が金属の皿を挟んで湯気にかざし、後ろの段の生徒たちが見ている。
冷たい皿の裏に、湯気が水の粒になって付き、ぽたりと落ちる。教師の顔の寄り。眼鏡の奥で目を細め、勝ち誇った薄い笑い。

クラウス先生:ほら
湯気になっても
水に戻る

クラウス先生:分けられない
だから
元素です

レン:戻る?

少年が立ち上がり、机に片手をついて前を見る。下から見上げる角度。

レン:形が変わって
戻った
だけです

レン:中身は
変わって
いない

氷︑水︑水蒸気︒
姿が変わっても︑
中身は同じ水︒
前の世界では︑
状態変化と
呼んだ︒

状態変化(じょうたいへんか)の解説

現実の事実物質が温度によって固体・液体・気体の間で姿を変える事です。物質が別の物質に変わるのではなく、その物質の状態が変わるだけで、体積は変わっても質量は変わりません。

皿に付いた水の粒は、どこから来た?
湯がわく時に出る泡は水蒸気で、集めて冷やすと水に戻ります。空気中の水蒸気も、冷えると水になって現れます(結露(けつろ))。作中の皿の水の粒も、水蒸気が冷えて水に戻った物です。

出典

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教室を後ろの上から。段の席の生徒たちの真ん中で、襟巻きの少年が一人だけ立っている。

レン:中身が
別の物に
変わるのは――

物が燃えるような︑
別の物が
できる変化は︑
化学変化︒

化学変化(かがくへんか)の解説

現実の事実反応の前と後で、元とは別の物質ができる変化です。物が燃える、物質を分解すると別の物質ができる、が例です。状態変化(じょうたいへんか)との違いは「別の物質ができるかどうか」です。

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クラウス先生:ほう
では

クラウス先生:水を
二つに
分けてみなさい

分解(ぶんかい)の解説

現実の事実1つの物質が、2つ以上の別の物質に分かれる化学変化(かがくへんか)です。中学の理科では、物質を分解する実験で、できた物質が元の物質と違う事を確かめます。

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少年の顔の寄り。前髪の間で目を見開き、口を開きかけて止まる。机の縁をつかむ手。

レン:︙︙

レン:今は
できません

上から見た教室。段の席の生徒たちが机を叩いて笑う。
教壇の教師が指で眼鏡を押し上げ、満足げに目を細める。

クラウス先生:でしょうね

教師を下から。口元だけで笑い、冷たく見下ろす。

クラウス先生:分けられないなら
元素です
座りなさい

席でうつむく少年の肩を、隣の大柄な少年が指でつつき、歯を見せて笑う。

モルト(ささやき):せんせ︙︙
腹へったなあ

レン:え
今それ?

少年の横顔。口を結んで窓の外の曇り空を見上げる。雲の中を、白い稲光が細く走る。机の上で拳を握る。

レン:水を分けるには
雷が要る

雷(かみなり)の解説

現実の事実大気の中で、プラスとマイナスの電気が大量に分かれてたまり、一気に流れる(放電する)現象です。光が電光(稲光)、音が雷鳴です。上空高くまで育った積乱雲で起きます。

出典

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レン:でも
今じゃない

授業が終わった︑
回廊︒

夕方の石の回廊。歩いてくる襟巻きの少年を、柱にもたれて腕を組んだ紅の肩掛けの少女が待っている。
少女の横顔の寄り。強がる口とは逆に、目が少し揺れている。

イリス・アルデント:︙︙煤の話は
本当だった

イリス・アルデント:家の古い書に
あったわ
理由は
書いてなかった
けど

レン:うん
そっか

少年の顔の寄り。襟巻きに顎をうずめ、横を向いた静かな目。

イリス・アルデント:零点のくせに
平気な顔

レン:表は
減らないから

回廊。少年の目の前の空中に、青白い〈窓〉の表。升の並びのうち3つが灯る。少年は指を立てて見上げる。

〈学院の表〉灯った升:3/118零点でも、3つのまま

少年の横顔の寄り。目の前の青白い表の升を、静かに見つめる。

レン:世界の方は
知ってる

イリス・アルデント:明日の放課後
演習室へ
来て

少女の横顔の寄り。杖の先の紅い石を指でなぞり、目を伏せる。

イリス・アルデント:見てほしいの
私の
紅の火

紅の火(くれないのひ)の解説

作中の世界の決まりこの世界で、イリスの火だけが見せる深い紅の色の炎です。火の家では「精霊が娘に与えた誉れ」と言われていますが、父の火は橙色です。

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レン:紅の火?

その夜︒
寮︒

夜の二人部屋。机のろうそくの灯りで少年が答案の裏に書き、寝台の端に座った大柄な少年が干し肉をかじって笑う。窓に月。

モルト:せんせ
イリス様に
呼ばれたって?
決闘か?

レン:ちがう
明日
火を見るだけ

大柄な少年の顔の寄り。干し肉をくわえたまま、眉を下げて首をかしげる。

モルト:火を見て
何が分かるん
だあ?

レン:︙︙いい質問だ

答案の裏に︑
書き足す︒
重さを量れば︑
燃えた物の
行き先が分かる︒

質量保存(しつりょうほぞん)(化学変化(かがくへんか)と重さ)の解説

現実の事実化学変化の前と後で、関わった物全体の質量(重さ)は変わらない、という決まりです。フランスのラヴォワジエは、燃焼の前と後の質量を量る実験で、燃える物が空気の一部と結びつく事を確かめました。

出典

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窓辺の少年の横顔。窓ガラスに顔がうっすら映り、向かいの寮の窓に紅い光が一つ灯る。

レン:明日の
放課後

第5話「零点の答案」

つづく

原作・脚本
ka2uma
作画
ka2uma

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

利用ガイド

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

火・水・風・土、だけじゃない。

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この話で分かること

状態変化(じょうたいへんか)とは?

物質が温度によって固体・液体・気体の間で姿を変える事です。物質が別の物質に変わるのではなく、その物質の状態が変わるだけで、体積は変わっても質量は変わりません。氷が水に、水が水蒸気になるのが例です。

化学変化(かがくへんか)とは?

反応の前と後で、元とは別の物質ができる変化です。物が燃える・物質を分解すると別の物質ができる、が例です。

状態変化(じょうたいへんか)と化学変化(かがくへんか)の違いは?

状態変化は姿(固体・液体・気体)が変わるだけで物質は同じまま、化学変化は別の物質ができる変化です。水を熱して水蒸気にし、冷やして水に戻せるのは状態変化なので、それだけでは水が元素かどうかは分かりません。

物語との違い

作中のクラウス先生は「湯気が水に戻るから、水は分けられない元素だ」と教えます。

化学変化(かがくへんか)の前と後で、重さは変わる?

化学変化の前と後で、関わった物全体の質量は変わりません(質量保存(しつりょうほぞん))。ラヴォワジエは燃焼の前と後の質量を量る実験で、燃える物が空気の一部と結びつくことを確かめました。

この話の用語

状態変化(じょうたいへんか)漫画の中で見る
現実の事実物質が温度によって固体・液体・気体の間で姿を変える事です。物質が別の物質に変わるのではなく、その物質の状態が変わるだけで、体積は変わっても質量は変わりません。
化学変化(かがくへんか)漫画の中で見る
現実の事実反応の前と後で、元とは別の物質ができる変化です。物が燃える、物質を分解すると別の物質ができる、が例です。状態変化(じょうたいへんか)との違いは「別の物質ができるかどうか」です。
分解(ぶんかい)漫画の中で見る
現実の事実1つの物質が、2つ以上の別の物質に分かれる化学変化(かがくへんか)です。中学の理科では、物質を分解する実験で、できた物質が元の物質と違う事を確かめます。
雷(かみなり)漫画の中で見る
現実の事実大気の中で、プラスとマイナスの電気が大量に分かれてたまり、一気に流れる(放電する)現象です。光が電光(稲光)、音が雷鳴です。上空高くまで育った積乱雲で起きます。
紅の火(くれないのひ)漫画の中で見る
作中の世界の決まりこの世界で、イリスの火だけが見せる深い紅の色の炎です。火の家では「精霊が娘に与えた誉れ」と言われていますが、父の火は橙色です。
質量保存(しつりょうほぞん)(化学変化(かがくへんか)と重さ)漫画の中で見る
現実の事実化学変化の前と後で、関わった物全体の質量(重さ)は変わらない、という決まりです。フランスのラヴォワジエは、燃焼の前と後の質量を量る実験で、燃える物が空気の一部と結びつく事を確かめました。

出典

更新日:

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  1. 1ボタンを押すいつもの AI を選んで
  2. 2AI が開く作品の設定とあらすじつきで
  3. 3一緒に考える展開・台詞・絵の指示まで
例:AI との相談

あなたモルトが寝た後の、窓辺のレンの続きを考えたい

AI向かいの紅い窓を見ながら、レンがイリスの「理由は書いてなかった」を思い出し、明日は答えを先に言わず、彼女に自分で確かめさせようと決める、という筋が自然です。

あなたレンの心の声を一言

AIレン「答えは、渡さない。……一緒に、確かめる」

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

小試験(しょうしけん)の答案が返る日。レンの答案は大きな零点を付けて廊下に貼り出され、皆に笑われる。人だかりの後ろで、イリスだけが火の家の古い書を開いていた。クラウス先生は教室で、水を湯気にし、冷たい皿で水に戻して見せる。「湯気になっても、水に戻る。分けられない。だから、元素です」。レンは「形が変わって、戻っただけです。中身は、変わっていない」と返すが、「では水を二つに分けてみなさい」と言われ、「今は、できません」と答えるしかない。授業の後の回廊で、イリスが「煤の話は、本当だった」と一つだけ認め、明日の放課後、演習室(えんしゅうしつ)で自分の紅の火を見てほしいと言う。

作者

ka2uma

Web マーケター

Web 集客・SEO の仕事の考え方を異世界転生の物語に、AI と働く毎日の出来事や、そこから考えた話を読み切りにして描いています。

この作品について

燃える仕組み、空気と水の正体、炎の色、周期表。中学・高校の化学で習う事が、魔法の勝負の決め手になる面白さを味わえる物語です。

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