第1話「大丈夫です、と言った」

ピアノの
〈相手の
木津 奏太:この金額で
ええんか
事故のあと︑
知らないことばかり
だった︒
その慰謝料、この金額でいいの?
第1話
始まりは︑
日曜の昼の
赤信号だった︒

木津 奏太:来週の土曜
初めての
ホールや

ドンッ

追突した
塚越 安治:ほんまに
すんません!
塚越 安治:孫の家に
急いでて︙︙
木津 奏太:いや
あの


警察官:おけがは
ありませんか
木津 奏太:︙︙はい
木津 奏太:大丈夫です
この一言を︑
僕はあとで
何度も思い出す︒
翌朝︒

木津 奏太:っ︙︙
首が
木津 奏太:回らへん
奏太のスマホ

姉・
木津 環奈:あんた
首
回ってへんやん
木津 奏太:寝違えた
だけや
木津 環奈:きのう
追突された
人が?
木津 環奈:病院は?
木津 奏太:︙︙まだ
木津 環奈:警察には
何て言うたん
木津 奏太:大丈夫です
って

木津 環奈:アホか
木津 環奈:今から
整形外科
行くで

整形外科の医師:事故の
次の日に
痛みが出るのは
整形外科の医師:珍しく
ないですよ
木津 環奈:ほらな
木津 奏太:2週間︙︙

木津 環奈:それ
警察に
持って行き
木津 奏太:なんで?
木津 環奈:物損のまま
やったら
木津 環奈:事故の詳しい
記録が
作られへんねん
木津 奏太:えっ
そうなん?

木津 奏太:区役所で
そんなん
習うん?
木津 環奈:窓口に
毎週
来はるねん
木津 環奈:あとから
痛くなった人
姉は︑
区役所の窓口で
毎日︑人の話を
聞いている︒
病院の帰りに︑
店へ寄った︒

釜谷楽器の
釜谷 忠雄:その首で
土曜
行けるんか
木津 奏太:行けます
木津 奏太:たぶん
大丈夫です

木津 奏太:あと少し
前に︙︙
釜谷 忠雄:もうええ

釜谷 忠雄:土曜は
わしが行く
釜谷 忠雄:音は
嘘つかん
木津 奏太:え︙︙
待ってください
僕まだ
釜谷 忠雄:首が治ったら
また頼む
木津 奏太:︙︙はい
初めて︑
1人で任された
仕事だった︒
午後︑電話で
聞いた物を持って
警察署へ︒

警察官:診断書
お預かりします
警察官:事故の場所を
もう一度
見に行きます

木津 奏太:ありがとう
姉ちゃん
木津 環奈:礼は
治ってから
木津 環奈:焼肉な
木津 奏太:︙︙高いとこ
やめてな

着信
木津 奏太:︙︙はい
木津です
桐谷 涼子(電話の声):夜分に
恐れ入ります
桐谷 涼子(電話の声):塚越様の
保険会社で
木津 奏太:あ︙︙
保険の
桐谷 涼子(電話の声):木津様の
おけがの件を
担当いたします

相手の
桐谷 涼子(電話の声):桐谷と
申します
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