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第5話「体外受精とは」

夜明けの工事の現場を地面すれすれから。生コンクリートの車が足場の前に入ってくる。青緑の作業着に白いヘルメットの男性が、腕を上げて誘導する。

ゴォォ

11月13日、金曜。6時50分。

夫・建設会社の現場監督(40)藤枝 晴人

足場の下。白いヘルメットに白髪の先輩が、腕組みで男性を見る。男性はバインダーの紙をめくって目を落とす。

現場の先輩(62)柴田

柴田:おい
晴人

柴田:打設は
明日じゃ
なかったか

藤枝 晴人:1日
早めたんです

〈晴人の段取りの紙〉生コン工場:13日に変更(了承)ポンプ車:13日 7:00配筋の検査:12日に済み天気:13日 晴れ/14日 雨の見込み14日 10:00:説明会(美咲と)

柴田:ほう

藤枝 晴人:段取り
組み直し
ました

先輩の顔の寄りを少し下から。目を細め、口の端だけで笑う。

柴田:おまえの
言い方じゃ
ねえな

藤枝 晴人:家の
口ぐせ
です

第5話「体外受精とは」

土曜の朝のクリニックの小さな説明会の部屋を、後ろの高い所から。並んだ椅子に夫婦が何組か座り、前の白い板の前に看護師。後ろの列に、珊瑚色のカーディガンの女性と、ジャケットの男性が並ぶ。

翌日︑10時︒

藤枝 美咲(ささやき):間に
合ったね

藤枝 晴人:5分前

前に立つ看護師を、座った人の目の高さから。赤いペンで白い板に階段の形の線を描く。

クリニックの看護師(47)笠原 環

笠原 環:難しい
言葉が
続くので

笠原 環:図で
描きますね

〈笠原の図〉一般不妊治療:タイミング法・人工授精生殖補助医療:体外受精・顕微授精

人工授精(じんこうじゅせい)と体外受精(たいがいじゅせい)の違いの解説

現実の事実人工授精は、精液を注入器で直接子宮に入れる一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)です。体外受精は、卵子を体の外に取り出して精子と受精させ、育った胚を子宮に戻す生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)です。どちらも保険がききますが、生殖補助医療には年齢と回数の要件があり、一般不妊治療にはありません。

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〈図の続き〉体外受精:検査 → 排卵誘発 → 採卵 → 受精 → 胚移植

体外受精(たいがいじゅせい)の流れの解説

現実の事実体外受精は、検査・排卵誘発・採卵(卵子を取り出す)・受精・胚移植(はいいしょく)(育った胚を子宮に戻す)と進みます。こども家庭庁によると、2022年4月から「採卵・採精」から「胚移植」までの基本的な治療が保険の対象です。どの段に進むか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。

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女性が横から、男性の手元をのぞきこむ。黒いジャケットの男性が太い指でペンを持ち、小さな黒い手帳に書き込む。青緑のしおりが枠の外へはみ出す。

食品メーカーの商品企画(38)藤枝 美咲

藤枝 美咲:それ︙︙

藤枝 晴人(ささやき):買った

〈晴人の手帳〉工程:検査→誘発→採卵→受精→移植段取り八分

笠原 環(画面の外の声):1回の
治療は

〈笠原の図の下〉1回の治療の期間:最短で約3か月、一般的には約6か月

1回の治療の期間の解説

現実の事実厚生労働省のハンドブックでは、体外受精(たいがいじゅせい)の1回の治療は、検査・排卵誘発・採卵・凍結・胚移植(はいいしょく)を経て、最短で約3か月、一般的には約6か月程度としています。これを何回か行う人もいます。一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)は、タイミング法・人工授精(じんこうじゅせい)がそれぞれ約3か月かかる事が多いとしています。

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藤枝 晴人(ささやき):工期は
3か月から
か

女性の顔の寄り。笑いをこらえて、口元を手帳で隠す。

藤枝 美咲:工期って

〈笠原の図 通院の目安〉体外受精などの段:1回1〜3時間の通院が月に4〜10日+半日〜1日の通院が1〜2日男性:0〜半日(手術を伴う時は1日)

藤枝 晴人:え︙︙
月に
10日?

藤枝 美咲:朝8時の
枠が
あれば

女性が手を挙げて質問する。机の向かいの看護師が、ペンを持ったままほほえむ。奥に座る夫婦たち。

藤枝 美咲:あの
ちらしの
裏の

藤枝 美咲:先進医療って

〈先進医療〉保険の基本の治療に、組み合わせて受けられる技術生殖補助医療の技術は10件(2026年4月1日時点)その技術の分は全額自己負担。ほかの診察・検査などは保険のまま

先進医療(せんしんいりょう)の解説

現実の事実保険の外の先進的な技術として国が認めたもので、保険の診療と組み合わせて受けられます。その技術の費用は全額自己負担(じこふたん)で、ほかの診察・検査・投薬などは普通の保険の診療と同じ扱いです。生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)に関する技術は、2026年(令和8年)4月1日時点で10件です。

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藤枝 美咲:あ︙︙
そこは
自分で

笠原 環:受けるか
どうかも

笠原 環:決めるのは
先生と
お2人です

黒いジャケットの男性の顔の寄り。手帳から目を上げ、口を結んで前の方を見る。

どの段に進むかは︑
先生と2人で
決める︒

昼のクリニックの前の歩道を高い所から。並んで歩く2人。黒いジャケットの男性が手帳を開いたまま歩く。

説明会の帰り道。

藤枝 美咲:先生に
聞く事
書こう

藤枝 晴人:2人で
な

〈2人の手帳 先生に聞く事〉今の段を続けるか、次の段に進むか通院の日が決まるのは、いつ頃か保険の回数の数え方(治療計画の日の年齢)先進医療は、うちに要るのか

胚移植(はいいしょく)の回数と年齢の解説

現実の事実体外受精(たいがいじゅせい)・顕微授精(けんびじゅせい)の胚移植の回数の上限は、初めての胚移植のための治療計画を作った日の年齢で決まります(40歳未満なら1子ごとに6回まで、40歳以上43歳未満なら3回まで)。保険がきくのは、治療を始める日に女性の年齢が43歳未満の時です。

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聞く事は︑
2人で
4つになった︒

11月19日︑木曜︒

相談の部屋。看護師が月のカレンダーの紙(字は読めない線)を指して、2人に見せる。並んで座る2人。男性は黒いジャケット。

先生と2人で話して︑
体外受精の段に
進む事にした︒

笠原 環:日にちは
体の
様子で

笠原 環:前の日に
決まる事も
あるんです

藤枝 晴人:え
前の日?

藤枝 晴人:その日

藤枝 晴人:俺も
行きます

女性の顔の寄り。横の男性を見上げ、目を見開いて唇が少し開く。右の端に男性の肩。

藤枝 美咲:︙︙うん

同じ日の夕方︒

夕方の現場の詰所。男性がスマホを耳に当て、もう片方の手で工程表の板を押さえる。白い蛍光灯。同じ時刻、会社の廊下。女性が立ち止まってスマホの画面を見下ろす。

〈役所の電話 晴人の工程表〉11月25日(水)9:00 役所の中間検査(立ち会い)

クリニックから 17:40採卵の日の見込み:11月25日(水)の朝(日にちは前の日に決まります)

藤枝 晴人:水曜の
9時

藤枝 美咲:水曜の
朝

男性の顔の寄り。スマホを耳から離し、工程表の水曜の欄を見つめる。眉が寄る。
その夜の家の食卓を少し高い所から。向かい合って座る2人。Tシャツの男性と珊瑚色のカーディガンの女性。真ん中に、大小2冊の手帳が並んで開いている。天井の白い灯り。

同じ水曜の朝に︑
2つの立ち会いが
並んだ︒

第5話「体外受精とは」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

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次の通院は、明後日です

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この話で分かること

体外受精(たいがいじゅせい)とは?

卵子を体の外に取り出して精子と受精させ、育った胚を子宮に戻す治療で、顕微授精(けんびじゅせい)とあわせて生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)と呼びます。2022年4月から、「採卵・採精」から「胚移植(はいいしょく)」までの基本的な治療に保険がききます。

条件・例外

治療を受けるか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。個別の判断は医師に確かめてください。

人工授精(じんこうじゅせい)と体外受精(たいがいじゅせい)の違いは?

人工授精は、精液を注入器で直接子宮に入れる一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)です。体外受精は、卵子を取り出して体の外で受精させる生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)です。一般不妊治療には保険の年齢・回数の制限がなく、生殖補助医療は治療を始める日の女性の年齢が43歳未満で、胚移植(はいいしょく)の回数に上限があります。

条件・例外

治療を受けるか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。個別の判断は医師に確かめてください。

体外受精(たいがいじゅせい)の1回の治療の期間は?

厚生労働省のハンドブックでは、検査・排卵誘発・採卵・凍結・胚移植(はいいしょく)を経て、最短で約3か月、一般的には約6か月程度です。これを何回か行う人もいます。

条件・例外

期間は目安で、体の様子や医師の判断で変わります。治療を受けるか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。個別の判断は医師に確かめてください。

体外受精(たいがいじゅせい)の通院は、月に何日くらい?

目安は、女性は1回1〜3時間ほどの通院が月に4〜10日と、半日〜1日ほどの通院が1〜2日、男性は0〜半日(手術を伴う時は1日)です。治療日は前の日に決まる事もあります。

条件・例外

日数(にっすう)は目安で、医師の判断や体の様子で増えたり減ったりします。

不妊治療(ふにんちりょう)の先進医療(せんしんいりょう)とは? 費用は?

保険の外の先進的な技術として国が認めたもので、保険の診療と組み合わせて受けられます。その技術の費用は全額自己負担(じこふたん)で、ほかの診察・検査などは保険の扱いです。生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)に関する技術は、2026年4月1日時点で10件です。

条件・例外

治療を受けるか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。個別の判断は医師に確かめてください。

この話の用語

人工授精(じんこうじゅせい)と体外受精(たいがいじゅせい)の違い漫画の中で見る
現実の事実人工授精は、精液を注入器で直接子宮に入れる一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)です。体外受精は、卵子を体の外に取り出して精子と受精させ、育った胚を子宮に戻す生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)です。どちらも保険がききますが、生殖補助医療には年齢と回数の要件があり、一般不妊治療にはありません。
体外受精(たいがいじゅせい)の流れ漫画の中で見る
現実の事実体外受精は、検査・排卵誘発・採卵(卵子を取り出す)・受精・胚移植(はいいしょく)(育った胚を子宮に戻す)と進みます。こども家庭庁によると、2022年4月から「採卵・採精」から「胚移植」までの基本的な治療が保険の対象です。どの段に進むか・どの治療にするかは、医師と相談して決めます。
1回の治療の期間漫画の中で見る
現実の事実厚生労働省のハンドブックでは、体外受精(たいがいじゅせい)の1回の治療は、検査・排卵誘発・採卵・凍結・胚移植(はいいしょく)を経て、最短で約3か月、一般的には約6か月程度としています。これを何回か行う人もいます。一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)は、タイミング法・人工授精(じんこうじゅせい)がそれぞれ約3か月かかる事が多いとしています。
先進医療(せんしんいりょう)漫画の中で見る
現実の事実保険の外の先進的な技術として国が認めたもので、保険の診療と組み合わせて受けられます。その技術の費用は全額自己負担(じこふたん)で、ほかの診察・検査・投薬などは普通の保険の診療と同じ扱いです。生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)に関する技術は、2026年(令和8年)4月1日時点で10件です。
胚移植(はいいしょく)の回数と年齢漫画の中で見る
現実の事実体外受精(たいがいじゅせい)・顕微授精(けんびじゅせい)の胚移植の回数の上限は、初めての胚移植のための治療計画を作った日の年齢で決まります(40歳未満なら1子ごとに6回まで、40歳以上43歳未満なら3回まで)。保険がきくのは、治療を始める日に女性の年齢が43歳未満の時です。

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あなた水曜の前の晩の、美咲と晴人を考えたい

AI美咲が会社に時差出勤の連絡を入れた後、クリニックから届く「日にちが決まりました」の知らせを、2人が食卓でスマホを伏せずに待つ形にすると、前の日に決まる事の重さが出ます。

あなた待つ間の会話を

AI晴人「……寝るか」。美咲「寝られないでしょ」。2人とも、スマホを伏せられない夜です。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

11月13日、金曜の6時50分。晴人は、翌日の説明会と重なっていたコンクリートの打設を、生コン工場とポンプ車と天気を組み直して1日早めていた。「段取り、組み直しました」。先輩の柴田は「おまえの言い方じゃねえな」と笑い、晴人は「家の口ぐせです」と返す。翌日10時、2人は体外受精(たいがいじゅせい)の説明会に5分前に並ぶ。看護師(かんごし)の笠原は、一般不妊治療(いっぱんふにんちりょう)(タイミング法・人工授精(じんこうじゅせい))と生殖補助医療(せいしょくほじょいりょう)(体外受精・顕微授精(けんびじゅせい))、体外受精の流れ(検査・排卵誘発・採卵・受精・胚移植(はいいしょく))、1回の治療は最短で約3か月・一般的には約6か月、通院は月に4〜10日と半日〜1日が1〜2日、を図で描く。晴人は自分の手帳を買っていて、「工期は3か月から」と書く。美咲がちらしの裏の先進医療(せんしんいりょう)をたずねると、その技術の分は全額自己負担(じこふたん)で、受けるかどうかも「決めるのは、先生とお2人です」。帰り道、2人は先生に聞く事を4つ書く。11月19日、先生と2人で話して体外受精の段に進む事にした。日にちは前の日に決まる事もある。晴人は「その日、俺も行きます」と言う。夕方、晴人に役所から、11月25日(水)9時の中間検査の立ち会いの電話。同じ時刻、美咲に届いた採卵の日の見込みも、11月25日の朝だった。

作者

カルテの余白

診察室や相談の部屋、家族の居間で、治療や検査を決める前の人と、その話を聞く人を描いています。

この作品について

不妊治療で保険がきく範囲と、急に決まる通院を仕事の予定にどう入れるかが、妻と夫それぞれの職場の1日を通して見えてきます。言い出しにくい事を2人で言葉にする順番も。

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