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第2話「ばくちと、どこが違う?」

朝の澄んだ光の古い家の庭を高い所から。柿の木の下に脚立とかご。大柄な男性が枝を落とし、くせ毛の小さな男の子が地面の柿を拾い集める。縁側に自由帳を抱えた女の子と、からし色のカーディガンの年配の女性。

パチン

土曜の朝。舟越さんの庭で、柿の手入れの続き。

お金の出張授業の講師(58)舟越 佐和子

小学6年(12)棚橋 実花

棚橋 実花:あのあと
お父さん
一晩しゃべら
なかった

舟越 佐和子:あらまあ
授業の日に
おうちで
話したのね

脚立の上の男性の背中の寄り。手を止めて、聞こえないふりで枝を見つめる。首の白いタオル。

植木職人(41)棚橋 洋平

棚橋 洋平:聞こえてるぞ

棚橋 実花:だって
「ばくちだ」
って
それしか
言わないもん

舟越 佐和子:じゃあ洋平さん
ばくちと
どこが違うか

舟越 佐和子:いっしょに
見てみない?

脚立を下りて縁側に座る男性。腕を組み、ふてくされた顔で年配の女性を横目で見る。

棚橋 洋平:︙︙少しなら

縁側の板の上に置いた1枚の紙(字は描かない)を、からし色の袖の手が指さす。紙には表の線。右から女の子と、くせ毛の小さな男の子がのぞきこむ。

〈金融庁の表:主な金融商品〉(安全性・どれくらい増えるか・すぐお金に換えられるか)預貯金:◎・△・◎株式:△・◎・◯債券:◯・◯・△投資信託:△〜◯・◯〜◎・◯

債券(さいけん)の解説

現実の事実国や会社が、お金を借りるために出す証書です。買った人は、決まった時期に利子を受け取り、期限(満期)が来ると元のお金が返ってきます。金融庁(きんゆうちょう)の表では、安全性と増える力は株式と預貯金(よちょきん)の間で、満期の前に売ると値段が変わる事があります。

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舟越 佐和子:これ国の表
お金の置き場所
比べっこ

棚橋 実花:投資信託って
なに?

投資信託(とうししんたく)の解説

現実の事実たくさんの人から集めたお金を1つにまとめ、運用の会社が株式や債券などに分けて投資する商品です。少ない額からでも、多くの会社や国に分けて投資できます。値段(基準価額)は毎日動き、買った時より下がる事もあります。

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舟越 佐和子:みんなのお金を
まとめて
たくさんの
会社に分ける物

棚橋 実花:へえ
給食みたい

舟越 佐和子:ふふ
そうかもね

棚橋 洋平:でも
減るんだろ

舟越 佐和子:減るよ

男性の顔の寄り。思っていたのと違う答えに、目が丸くなる。

棚橋 洋平:︙︙え

舟越 佐和子:減る年もある

舟越 佐和子:買った時より
下がる事を
元本割れって
言うの

元本割れ(がんぽんわれ)の解説

現実の事実投資した額(元本)より、今の値うちが少なくなる事です。金融庁(きんゆうちょう)は、株式や投資信託(とうししんたく)は預貯金(よちょきん)より高い利益を期待できる一方で、元本割れのおそれもあると書いています。投資信託は、銀行で買っても預金とは違い、元本は守られません。

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棚橋 実花:えっ
動画で見た人は
2倍に︙︙

舟越 佐和子:大きく
増えるって
言う物は

舟越 佐和子:大きく
減る事もある

女の子の顔の寄り。口をとがらせ、鉛筆の頭を顎に当てて考える。

棚橋 実花:︙︙ずるい
いいとこしか
言ってなかった

真上から、縁側の板の上の自由帳。女の子の手が鉛筆で、表の線と3つの行を書きこむ(字は描かない)。消しゴムのかす。

〈実花の自由帳〉投資信託=みんなのお金をまとめて、たくさんの会社に分ける元本割れ=買った時より下がること増えるって言う物は、減ることもある

舟越 佐和子:3つとも
◎の物は

舟越 佐和子:ないの

棚橋 洋平:じゃあ
ふつう預金で
いいだろ

舟越 佐和子:使う日が
近いお金なら
それがいいの

棚橋 実花:じゃあ
遠いお金は?

舟越 佐和子:それは
木に聞いてみて

年配の女性が庭へ下り、柿の木の幹に手を当てて見上げる。高い枝の橙の実が、絵の上の枠の線を越えて外へ伸びる。横で男性と女の子が並んで見上げる。

舟越 佐和子:この木
植えた年には
実が1つも
ならなかった

棚橋 洋平:桃栗三年
柿八年

舟越 佐和子:さすが
植木屋さん

棚橋 実花:えっ
8年も?

柿の木の全景を横から。太い幹から何本もの枝が四方へ広がり、それぞれに実がなる。根元に若い苗木も1本。年配の女性の顔と手の寄り。指を1本ずつ折って数える。

舟越 佐和子:長く
毎年
少しずつ

舟越 佐和子:それから
1本の枝に
全部
たよらない

舟越 佐和子:台風で
1本折れても
ほかの枝が
残るでしょ

棚橋 実花:授業で
言ってた
長く少しずつ
分けて

分散投資(ぶんさんとうし)(長期・積立・分けて持つ)の解説

現実の事実1つの会社や国に全部を入れず、いろいろな所に分けて投資する事です。金融庁(きんゆうちょう)は、長い期間続ける「長期」、決まった額を少しずつ買う「積立」、分けて持つ「分散」を組み合わせると、値動きの不安と付き合いやすくなると案内しています。分けても、全体が下がる時はあります。

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棚橋 洋平:︙︙木の話なら
分かる

舟越 佐和子:長く続けると
増えた分が
また増える

棚橋 洋平:ああ
複利ってやつか

複利(ふくり)の解説

現実の事実増えた分(収益)を元のお金に足して、また運用する事で、増えた分にも増える分が付く事です。長く続けるほど、この効果は大きくなります。ただし、投資では毎年同じだけ増えるわけではなく、下がる年もあります。

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女の子が地面から柿の実を1つ拾い、両手で高く持ち上げて木を見上げる。くせ毛の男の子がまねをして柿を掲げる。

年長(6)棚橋 碧

棚橋 実花:この木
来年も
実がなる?

舟越 佐和子:手入れを
続ければね

舟越 佐和子:やめたら
そこで
おしまい

男性の顔と手の寄り。首のタオルの端を握っていた指が、ゆっくり離れる。口もとが少しゆるむ。

棚橋 洋平:ばくちは
一回で
決まるもんな

舟越 佐和子:そうそう

舟越 佐和子:ただ︑ね
先に決める事が
あるの

縁側に戻り、年配の女性が女の子の自由帳に指を置く。首から老眼鏡を下げ、まっすぐ女の子を見る。

舟越 佐和子:実花ちゃん
その170万

舟越 佐和子:何のお金?

舟越 佐和子:いつ使うの?

女の子の顔の寄り。口を開けたまま止まり、目が横へ泳ぐ。手には自由帳。

棚橋 実花:え︙︙
わかんない

男性の顔の寄り。歯を食いしばり、首の白いタオルの端を、また強く握る。
男性の顔の寄り。娘を見て笑いかけるが、自分も答えられず、口の端が引きつる。

棚橋 洋平:お父さんも︙︙

舟越 佐和子:それが
決まったら
続きを
話しましょ

棚橋 碧:かき
とったー!

洋平の母(72)棚橋 トシ子

くせ毛の小さな男の子が、柿を持った腕を前へ伸ばして笑う。柿を持つ手が絵の左の枠の線を越えて外へ出る。後ろの庭の門の前に、えんじの割烹着の小柄な年配の女性が、腰に手を当てて立つ。

棚橋 実花:ばあちゃん!

門の前に立つ小柄な年配の女性を下から。白髪をきつく結び、への字の口。割烹着のすそで手をふく。

棚橋 トシ子:株なんて

棚橋 トシ子:うちは
二度と
やらん

第2話「ばくちと、どこが違う?」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

こどもNISA、わたしのお金でしょ?

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この話で分かること

投資信託(とうししんたく)とは?

たくさんの人のお金をまとめ、運用の会社が株式や債券などに分けて投資する商品です。少ない額でも多くの会社や国に分けて持てますが、値段は毎日動き、下がる事もあります。

投資と預金は、何が違う?

金融庁(きんゆうちょう)の表では、預貯金(よちょきん)は安全性とすぐお金に換えられる点が高く、増える力は低い物です。株式や投資信託(とうししんたく)は増える力が期待できる一方で、元本割れのおそれがあります。3つとも◎の物はありません。

NISAでも元本割れ(がんぽんわれ)はする?

します。NISAは利益に税がかからない仕組みで、買った投資信託(とうししんたく)の値段を守る仕組みではありません。こどもNISAも同じです。

条件・例外

長く・少しずつ・分けて持つと、値動きと付き合いやすくなりますが、下がらない事にはなりません。

この話の用語

債券(さいけん)漫画の中で見る
現実の事実国や会社が、お金を借りるために出す証書です。買った人は、決まった時期に利子を受け取り、期限(満期)が来ると元のお金が返ってきます。金融庁(きんゆうちょう)の表では、安全性と増える力は株式と預貯金(よちょきん)の間で、満期の前に売ると値段が変わる事があります。
投資信託(とうししんたく)漫画の中で見る
現実の事実たくさんの人から集めたお金を1つにまとめ、運用の会社が株式や債券などに分けて投資する商品です。少ない額からでも、多くの会社や国に分けて投資できます。値段(基準価額)は毎日動き、買った時より下がる事もあります。
元本割れ(がんぽんわれ)漫画の中で見る
現実の事実投資した額(元本)より、今の値うちが少なくなる事です。金融庁(きんゆうちょう)は、株式や投資信託(とうししんたく)は預貯金(よちょきん)より高い利益を期待できる一方で、元本割れのおそれもあると書いています。投資信託は、銀行で買っても預金とは違い、元本は守られません。
分散投資(ぶんさんとうし)(長期・積立・分けて持つ)漫画の中で見る
現実の事実1つの会社や国に全部を入れず、いろいろな所に分けて投資する事です。金融庁(きんゆうちょう)は、長い期間続ける「長期」、決まった額を少しずつ買う「積立」、分けて持つ「分散」を組み合わせると、値動きの不安と付き合いやすくなると案内しています。分けても、全体が下がる時はあります。
複利(ふくり)漫画の中で見る
現実の事実増えた分(収益)を元のお金に足して、また運用する事で、増えた分にも増える分が付く事です。長く続けるほど、この効果は大きくなります。ただし、投資では毎年同じだけ増えるわけではなく、下がる年もあります。

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  2. 2AI が開く作品の設定とあらすじつきで
  3. 3一緒に考える展開・台詞・絵の指示まで
例:AI との相談

あなたトシ子が門の前で「二度とやらん」と言った場面を、洋平の側から考えたい

AI洋平は、母がなぜ株を嫌うのかを詳しくは知りません。それでも、子どもの頃に台所で見た母の背中だけは覚えていて、思わずタオルを握る場面にできます。

あなたその時の洋平の心の声を

AI洋平(心の声)「……母さんが、なんで、ここに。あの話は、うちでは誰もしないはずだ」。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話のあらすじ

土曜の朝、洋平は舟越の庭の手入れの続き。実花は「あれからお父さん、一晩しゃべらなかった」と舟越に言う。舟越は洋平に「ばくちと、どこが違うか一緒に見てみない?」と金融庁(きんゆうちょう)の表を見せる。預貯金(よちょきん)・株式・債券・投資信託(とうししんたく)の安全性・増える力・すぐお金に換えられるか。「でも、減るんだろ」と言う洋平に、舟越は「減るよ」と答え、元本割れを説明する。動画の「1年で2倍」を信じていた実花には「大きく増えると言う物は、大きく減る事もある」。3つとも◎の物は無い。柿の木の下で、舟越は「長く・毎年少しずつ・1本の枝に全部たよらない」を話し、洋平は「木の話なら分かる」と言う。最後に舟越は「その170万、何のお金?いつ使うの?」と聞き、実花も洋平も答えられない。その時、門の外に祖母のトシ子が立っていた。「株なんて、うちは二度とやらん」。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

子どもの名前で始める NISA の決まり(いつから・いくらまで・いつ出せるか)と、増えも減りもするお金との付き合い方を、親と子の両方の目でたどれます。小学校の高学年なら、親と一緒に読めます。

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