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第4話「向こう岸」

この物語はフィクションです。写真店・人物・作中の写真は架空で、花火大会は実在の大会です。

縦に長い古い写真。上に、低い所がまだ少し明るい夕方の空に、大きく開いた花火。真ん中に、花火の光が映って揺れる広い川。下に、川べりの草の斜面に座る浴衣の若い女性の横顔と、膝の上のうちわ。フィルムの粒子と光のにじみ。

「うちの前の土手よ」

祖母は、そう言い張る。

写真の中の川は、光っているのに。

第4話「向こう岸」

朝の写真店。カウンターで写真の袋を整えながら、肩越しに店の奥を振り返る遥(画面の左)。奥の畳の部屋で、背を向けて新聞を広げる祖父(画面の右の奥)。窓の朝の光。

ミツギ写真 2代目の店主三ツ木 遥

ミツギ写真の先代三ツ木 鉄郎

三ツ木 遥:おじいちゃん
昨日の
「知ってる」って

三ツ木 遥:あの船
誰の船なの?

三ツ木 鉄郎:︙︙

三ツ木 遥:聞いても
言わない人だ

店の入口。背の高い高校生の男の子(画面の右)が、古いアルバムを脇に抱えて戸を押さえ、小柄な白髪の祖母(画面の左)を先に通す。戸の上の小さな鈴が揺れる。

カラン

新太の祖母寺尾 君江

依頼人(高校2年)寺尾 新太

寺尾 新太:すみません
この写真の場所を
探してほしくて

寺尾 新太:じいちゃんが
撮った写真
なんです

カウンターの横の丸椅子に、背筋を伸ばして座る小柄な白髪の年配の女性。ハンドバッグを膝にのせ、あごを少し上げて、得意げな顔で遥の方を見る。

寺尾 君江:探すまでも
ないわよ
うちの前の土手

寺尾 君江:決まってる
じゃない

寺尾 新太:ばあちゃん
じいちゃんが
死んでから
花火に
行かなくて

寺尾 新太:この写真の所なら
行くって
言うから

寺尾 新太:今年の夏
その土手で
撮ってみたんです

寺尾 新太:土手の上は
止まっちゃだめで
下の河川敷から

花火大会(はなびたいかい)の観覧(かんらん)の決まり(江戸川区(えどがわく)花火大会)の解説

現実の事実江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)の主催者は、篠崎街道・土手の上・河川敷の中の道を緊急避難通路とし、通路に立ち止まっての観覧を禁止しています。車・自転車(じてんしゃ)での来場も禁止で、会場の近くに駐車場・駐輪場はありません。2026年は午後5時から交通規制もありました。

座って見られる所は?
主催者は、協賛席・有料席の外側を自由観覧エリアとしています。場所取りは解禁の日時より後だけです(2026年は7月31日17時)。
火やごみは?
火気の使用・騒音・物の販売は禁止で、ごみは会場の仮設トイレの隣のゴミステーションに捨てるよう求めています。

出典

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三ツ木 遥:お借りしますね

ルーペ越しの古い写真の寄り。開いた花火の真下に広い川があり、川面に花火の光が長く映って揺れている。花火の後ろの空の低い所が、少し明るい。男の子の手に持ったスマホの画面。今年の夏に撮った花火の写真。開いた花火の下は、暗い草の河川敷と、見物の人の頭の影だけで、川は写っていない。空は真っ暗。

三ツ木 遥:花火の大きさは
ほとんど
同じですね

三ツ木 遥:違うのは
花火の下

寺尾 新太:ほんとだ
昔のは
川が光ってて

寺尾 新太:今年のは
草と人の頭
だけでした

店の奥の戸口に、杖をついて立つ祖父。眉をひそめ、カウンターの2枚の写真を遠くから見ている。腰のベルトが見える。

三ツ木 鉄郎:ふん
江戸川はな
東京の側で上げる

江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)の解説

現実の事実東京都江戸川区(えどがわく)の江戸川の河川敷(都立篠崎公園先)で開く花火大会(はなびたいかい)です。2026年(第51回)は8月1日(土)19:15〜20:20に開かれ、主催者は、一会場の打ち上げ数が約1万4000発と紹介しています。1976年から続く大会で、2026年は有料席を1万8000人分設けました。

何が名物?
主催者は、高さを誇る仕掛け花火「富士の大仕掛け」を目玉としています。第50回(2025年)には山形の仕掛け花火が、高さ59.2メートルでギネス世界記録に認定されたと発表しています。

出典

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三ツ木 鉄郎:向こう岸の市川も
同じ晩に
大会をやる

市川市民納涼花火大会(はなびたいかい)の解説

現実の事実江戸川をはさんだ千葉県市川市の側で開く花火大会です。2026年(第42回)は、江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)と同じ8月1日(土)19:15〜20:20(予定)で、会場は江戸川河川敷(大洲三丁目地先)。主催者は、打上場所を「対岸の江戸川区(えどがわく)側の河川敷(篠崎公園地先)」と案内しています。

車で行ける?
主催者は、駐車場は用意しておらず、公共の交通機関で来るよう求めています。会場の中は禁煙です。
江戸川と市川は、どういう位置?
市川市は千葉県の北西部にあり、西は江戸川を隔てて東京都(江戸川区・葛飾区)に向き合っています(市川市の資料)。

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三ツ木 遥:え︑おじいちゃん
江戸川も
撮ってたの?

三ツ木 鉄郎:︙︙ふん

〈推理 4枚目の写真〉花火の下に川が映る:撮った人と、打ち上げる所の間に川がある打ち上げる所:江戸川区の側の河川敷(篠崎公園の先)なら撮った所は、川の向こう岸(市川の側)?

三ツ木 遥:寺尾さん
これ
向こう岸から
撮ったのかも

腕を組んで顔をそむける年配の女性(画面の左)。その横で、困った顔で祖母をのぞき込む男の子(画面の右)。

寺尾 君江:違うわよ
千葉の側なんて
行ってないもの

寺尾 君江:うちの前は
川が曲がってるの
だから映るのよ

寺尾 新太:ばあちゃん︙︙

三ツ木 遥:曲がっていたら
映ることも
あるかも︙︙

読み取りの機械の画面いっぱいに、写真の空を大きく映した所。開いた花火の後ろ、向こう岸の家並みの上の低い空だけが、うっすら橙と青に明るい。画面の光に照らされた遥の顔の寄り。目を見開き、片手の指先で画面の空の低い所をなぞる。

三ツ木 遥:あ︙︙
空が
明るい

三ツ木 遥:この空
西です!

三ツ木 遥:花火って
日が沈んでから
始まるでしょう?

日の入り(ひのいり)の解説

現実の事実太陽の上の端が地平線に沈む時刻です。国立天文台は各地の日の出・日の入りの時刻と方位を出していて、2026年8月1日の東京の日の入りは18時46分、方位は293度(北を0度として東回り。西より少し北)です。

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三ツ木 遥:始まってすぐは
沈んだ方の空だけ
まだ明るいの

薄明(はくめい)の解説

現実の事実日の入りの後や日の出の前に、空が明るく残る状態です。地上から太陽が見えなくなっても、上空には光が当たっているためです。国立天文台は、太陽が地平線の下6度になるまでを「市民薄明」(日常の作業ができるくらいの明るさの目安)としています。

薄明にはほかに何がある?
太陽が地平線の下12度までを「航海薄明」、18度までを「天文薄明」と呼びます。明るさは地形や天気、月によっても変わります。

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〈推理 空〉空の低い所が明るい:日の沈んだ西の方を向いて撮った江戸川のこのあたりは、東京が川の西、市川が川の東西を向いて、川の向こうの花火を撮れるのは、東の岸(市川の側)

三ツ木 遥:川は曲がっても
空の西は
動かないんです

年配の女性の顔の寄り。組んでいた腕がほどけ、口が少し開き、目が遠くを見る。ハンドバッグの留め金に、曲げた指を掛けている。

寺尾 君江:︙︙あ

寺尾 君江:あの年だけ
橋を
渡ったんだわ

色の抜けた古い記憶の絵。夕暮れの長い川の橋を、浴衣で歩いて渡る若い女性の後ろ姿。橋の向こうの端で、首からカメラを下げた若い男性が片手を上げて待っている。

結婚の前の夏︒

あの人の住む︑
向こう岸へ︒

寺尾 君江:あの人
市川の人だったの

寺尾 君江:「こっちから見る
花火もいいぞ」
って

寺尾 君江:次の年からずっと
うちの前で
見てたから︙︙

丸椅子の祖母の横にしゃがみ、見上げる男の子(画面の左)。祖母(画面の右)は笑いながら、指の関節で目尻をそっと押さえている。

寺尾 新太:じいちゃんの
岸だったんだ

寺尾 君江:忘れてたなんて
あの人に
怒られるわね

手前の新太の肩越しに見た、カウンターで写真をそっと差し出す遥の上半身。少しだけ笑っている。差し出す写真の端が、絵の枠の外へ出ている。カウンターのランプの暖かい光。

三ツ木 遥:見える
とは
言えません

三ツ木 遥:でも
向こう岸の
西を向ける場所
なら
探せます

三ツ木 遥:向こうの会場
場所取りは
だめなんですよ

場所取り(ばしょとり)(江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)・市川市民納涼花火大会(はなびたいかい))の解説

現実の事実江戸川区花火大会は、決められた解禁の日時(2026年は7月31日17時)より前の場所取りを禁止し、協賛席・有料席の中の場所取りもできません。市川市民納涼花火大会は、シートや杭・テープでの場所取りを一切認めないとしています。

場所取りで、してはいけない事は?
江戸川区花火大会は、杭を打つなど堤防を傷める場所取りを禁止しています。市川市民納涼花火大会は、場所取りを罰せられる行為だとしています。
市川の側で、すいている所は?
市川市民納涼花火大会の主催者は、打上場所から下流に少し離れた大和田5丁目地先や行徳会場などが、比較的すいていると案内しています(2026年)。

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寺尾 新太:よかった
来年は
早めに
歩いて行こう

寺尾 君江:あんたが
連れてくなら
行ってあげる

昼下がりの店の前の通り。腕を組んで並んで歩いていく祖母と男の子の小さな後ろ姿。男の子は古いアルバムを抱えている。低い所から見上げた電線と、秋の高い空。

その夜︒

閉めた後の暗い店。カウンターのランプの下に、横に立った祖父が、布張りの分厚い古い帳面を置く。ルーペを拭いていた遥の手が止まり、祖父を見る。

三ツ木 遥:これ
うちの︙︙?

三ツ木 鉄郎:︙︙昔の
客だ

開いた古い帳面の頁の寄り。かすれた手書きの行が並ぶ(字は読めない)。1つの行の上で、遥の指先が止まる。

昔の︑
受付の帳面︒

客の名前の横に︑
船の名前︒

夜の店の全景。手前のカウンターで、ランプの光の輪の中に帳面を広げてかがみ込む遥。奥の戸口の暗がりへ、背を向けて消えていく祖父の小さな後ろ姿。

第4話「向こう岸」

つづく

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その花火、どこから撮った?

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あなた祖父が受付の帳面を出した後の、遥と祖父の会話を考えたい

AI遥が帳面を1978年の頁までめくり、祖父は止めずに戸口で背を向けたまま立っている形にすると、言わないけれど見せる祖父の変わり目が出せます。

あなたその線で、台詞を

AI遥(つぶやき)「船の名前、ほかにもある」。祖父「……全部、客だ」。遥「おじいちゃんの字じゃない行がある」。

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この話で分かること

江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)の花火は、どこから見える?

打ち上げるのは、江戸川の東京都江戸川区(えどがわく)の側の河川敷(都立篠崎公園先)です。川の向こう岸の千葉県市川市の側でも、同じ日・同じ時刻に「市川市民納涼花火大会(はなびたいかい)」の会場(江戸川河川敷・大洲三丁目地先)があり、主催者は打上場所を「対岸の江戸川区側の河川敷」と案内しています。市川の側からは、川をはさんで花火を見ることになります。作中では、写真の花火の下に川が映っていることと、空の明るい方角から、撮った岸を割り出しました。

条件・例外

立ち止まってよい所・座ってよい所は、その年の主催者の案内で確かめます。

物語との違い

作中の写真と撮った場所は架空で、特定の場所から見えることを示す物ではありません。

2026年の江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)は、いつ? 何発?

第51回は2026年8月1日(土)19:15〜20:20に、江戸川河川敷(都立篠崎公園先)で開かれました。主催者は、一会場の打ち上げ数を約1万4000発と紹介しています。市川市民納涼花火大会(はなびたいかい)(第42回)も、同じ8月1日(土)19:15〜20:20(予定)でした。

条件・例外

2026年の大会はどちらも終わっています。次の開催は、主催者の発表を待って確かめます。

場所取り(ばしょとり)はできる?

江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)は、決められた解禁の日時(2026年は7月31日17時)より前の場所取りを禁止し、協賛席・有料席の中の場所取りもできません。市川市民納涼花火大会(はなびたいかい)は、シートや杭・テープでの場所取りを一切認めないとしています。

夜の花火の写真で、空の明るい方はどっち?

日の入りの後もしばらくは、空が明るく残ります(薄明)。2026年8月1日の東京の日の入りは18時46分で、方位は293度(西より少し北)でした(国立天文台)。日が沈んで間もない頃は、沈んだ方の低い空が明るく写ることがあり、作中ではそれを撮った向きの手がかりにしました。

この話の用語

花火大会(はなびたいかい)の観覧(かんらん)の決まり(江戸川区(えどがわく)花火大会)漫画の中で見る
現実の事実江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)の主催者は、篠崎街道・土手の上・河川敷の中の道を緊急避難通路とし、通路に立ち止まっての観覧を禁止しています。車・自転車(じてんしゃ)での来場も禁止で、会場の近くに駐車場・駐輪場はありません。2026年は午後5時から交通規制もありました。
江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)漫画の中で見る
現実の事実東京都江戸川区(えどがわく)の江戸川の河川敷(都立篠崎公園先)で開く花火大会(はなびたいかい)です。2026年(第51回)は8月1日(土)19:15〜20:20に開かれ、主催者は、一会場の打ち上げ数が約1万4000発と紹介しています。1976年から続く大会で、2026年は有料席を1万8000人分設けました。
市川市民納涼花火大会(はなびたいかい)漫画の中で見る
現実の事実江戸川をはさんだ千葉県市川市の側で開く花火大会です。2026年(第42回)は、江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)と同じ8月1日(土)19:15〜20:20(予定)で、会場は江戸川河川敷(大洲三丁目地先)。主催者は、打上場所を「対岸の江戸川区(えどがわく)側の河川敷(篠崎公園地先)」と案内しています。
日の入り(ひのいり)漫画の中で見る
現実の事実太陽の上の端が地平線に沈む時刻です。国立天文台は各地の日の出・日の入りの時刻と方位を出していて、2026年8月1日の東京の日の入りは18時46分、方位は293度(北を0度として東回り。西より少し北)です。
薄明(はくめい)漫画の中で見る
現実の事実日の入りの後や日の出の前に、空が明るく残る状態です。地上から太陽が見えなくなっても、上空には光が当たっているためです。国立天文台は、太陽が地平線の下6度になるまでを「市民薄明」(日常の作業ができるくらいの明るさの目安)としています。
場所取り(ばしょとり)(江戸川区花火大会(えどがわくはなびたいかい)・市川市民納涼花火大会(はなびたいかい))漫画の中で見る
現実の事実江戸川区花火大会は、決められた解禁の日時(2026年は7月31日17時)より前の場所取りを禁止し、協賛席・有料席の中の場所取りもできません。市川市民納涼花火大会は、シートや杭・テープでの場所取りを一切認めないとしています。

出典

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この先のこと、自分のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

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この話のあらすじ

高校生の寺尾 新太が、祖母の寺尾 君江と「ミツギ写真」に来る。祖父が撮った江戸川の花火の写真の場所なら、祖父が亡くなってから花火に行かなくなった祖母も行くという。祖母は「うちの前の土手」と言い張るが、新太が今年その土手で撮った写真には川が写っていない。遥は、昔の写真の花火の下に川が映っていることから、打ち上げる東京の側でなく、川の向こう岸から撮ったと見当をつける。川が曲がっているから映るのだと譲らない祖母に、遥は花火の後ろの空の低い所が明るいことを示す。日の沈んだ西を向いて撮れるのは、川の東の市川の側。祖母は思い出す。結婚の前の夏、市川の人だった祖父のいる向こう岸へ、橋を渡った。その夜、祖父は黙って古い受付の帳面(ちょうめん)をカウンターに置く。「……昔の客だ」。客の名前の横には、船の名前があった。

作者

ハナビミエル開発者

花火が見える可能性を地図で探すサービス、ハナビミエルを作っています。花火の見え方を調べる中で気づいた事を、漫画にしています。

この作品について

花火の大きさや重なり、手前の景色から撮った場所を絞り込む手がかりと、大会ごとの見え方の違いを、謎解きを追いながら覚えられます。

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