第3話ログイン
一覧

第3話「記録に無い2年」

朝の茶の間。ちゃぶ台に、がっしりした老人が分厚い古いアルバムを勢いよく置く。向かいで帽子の細長い顔の老人が、手を上げて身を引く。

ドン

祖父の家の茶の間。記録に無い2年を、知る人が来た。

元・凪浦船渠の配管工(80)瀬良 甚吉

瀬良 甚吉:電話で
話す事じゃ
ない

門脇 勝治:︙︙すまん

瀬良 甚吉:あんたが
孫か

茶の間。お茶を盆で運ぶ孫の女性に、がっしりした老人がにやりと笑いかける。孫は少し照れて笑い返す。

瀬良 甚吉:勝治に
似んで
よかったのう

門脇 汐里:よく
言われます

門脇 勝治:言われとらん

第3話「記録に無い2年」

上から見たちゃぶ台。開いた古いアルバムに、白黒の写真が何枚も貼ってある(字は無い)。3人の手がアルバムを囲む。

瀬良 甚吉:84年の
進水式じゃ

古い白黒の写真の寄り。造船所の船台から大きな船が滑り出し、手前に作業服の男たちが並んで手を振る。端に細長い顔の若い男。ヘルメットの線が周りの人と違う。

瀬良 甚吉:ここに
おるじゃろ

門脇 汐里:え︙︙
ヘルメットの
線が
違う

瀬良 甚吉:下請けの
印じゃ

1983年の春。

回想(セピア)。造船所の詰所。細長い顔の作業員が、紙を1枚持ったまま立ち尽くす。回想(セピア)。がっしりした先輩の作業員が、腕を組んで横を向き、悔しそうに口を結ぶ。

若い頃の勝治:下請けに
移れ
いうことか

若い頃の瀬良:同じ船じゃ

若い頃の瀬良:名札が
変わる
だけよ

回想(セピア)。船の機関室を見上げる。新しいヘルメットの細長い顔の作業員が、ひとりで管に保温材を巻く。上から吊られた鎖が絵の枠の左の線を越えて外へ出る。

名札は︑
下請けの牧原配管︒
仕事は︑
何も
変わらなかった︒

今の︑
茶の間︒

門脇 汐里:記録が
無いだけで
ずっと
同じ船に︙︙

瀬良 甚吉:おう
わしの隣でな

茶の間。がっしりした老人が、こぶしを口に当てて小さく咳をする。隣の孫が心配そうに顔を向ける。

門脇 汐里:あ︙︙
瀬良さんも
咳︙︙

瀬良 甚吉:わしは
手帳を
持っとる

ちゃぶ台の上の寄り。がっしりした手が、古びた小さな手帳(表紙に字は無い)を差し出す。手帳の角が絵の枠の右の線を越えて外へ出る。

瀬良 甚吉:ただで
胸を
診てもらえる

石綿健康管理手帳(いしわたけんこうかんりてちょう)の解説

現実の事実昔、石綿を扱う仕事をした人で、胸に石綿による所見がある人に、都道府県(とどうふけん)労働局が出す手帳です。手帳があると、決められた病院で健康診断(けんこうしんだん)を無料で受けられます。勤めていた会社が倒産などで今は無くても申請できます。

どこに申請する?
住んでいる所の都道府県労働局です(離職の時に申請する時は、勤め先の所在地の労働局)。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

瀬良 甚吉:胸に
板みたいな
影が
ある
そうな

胸膜(きょうまく)プラークの解説

現実の事実石綿を吸った人の胸膜(肺を包む膜)にできる、厚く硬くなった所です。石綿を吸った印の1つとされ、労災では、肺がんが石綿によるかを見る時の目安の1つになります(胸膜プラークがあり、石綿を扱う仕事が10年以上など)。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

門脇 汐里:影って︙︙
大丈夫なんですか

瀬良 甚吉:年寄りの胸は
みんな
こんなもんよ

門脇 勝治:瀬良さん
それは

瀬良 甚吉:昔の話は
ええ

祖父は黙って︑
裏の物置へ立った︒

昼の家の裏の物置を上から見る。老人が古い道具箱をあさり、孫がしゃがんで覗く。パイプレンチ・ペンチ・巻いた紐。

大学1年(19)・祖父の孫門脇 汐里

門脇 汐里:手帳
おじいちゃんも
書いてた?

作業の手帳(昔の仕事の手がかり)の解説

現実の事実その日の現場と作業を書き残した手帳です。厚生労働省は、石綿を扱った場所がよく分からない場合でも、労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)に相談すれば、監督署が詳しく聞き取り、必要な調べをするとしています。手帳や写真は、どこで何をしたかを話す時の手がかりになります。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

門脇 勝治:仕事の
手帳なら

家の裏の石垣の前。帽子の細長い顔の老人が、古い作業の手帳を開いて読む。黄ばんだページに鉛筆の細かい書き込み(字は読めない)。めくれたページの端が絵の枠の上の線を越えて外へ出る。

〈勝治の作業の手帳(1984年)〉4月 18番船 機関室 保温6月 18番船 進水9月 21番船 配管・保温(どの船の、どこで、何をしたかが毎日書いてある)

門脇 汐里:毎日
書いてる︙︙

門脇 勝治:段取りの
ためじゃ

門脇 汐里:あっ
じゃあ

茶の間に戻ると︑
汐里はスマホを開いた︒

茶の間。肩越しに見た孫の横顔。スマホで日本年金機構のページを開き、画面の光が顔に当たる(字は読めない)。

門脇 汐里:牧原配管が
年金に
入ってたなら

門脇 汐里:記録が
どこかに
あるはず

門脇 汐里:持ち主の
分からない
記録の
一覧

スマホの画面の寄り。事業所の名前の並ぶ一覧の1行に、指が止まる(字は読めない)。

持ち主不明記録がある事業所名一覧(凪浦市)牧原配管

持ち主不明記録(もちぬしふめいきろく)の解説

現実の事実年金の記録のうち、誰の物か分からなくなっている記録です。日本年金機構は、持ち主のお勤め先の情報を含む記録の事業所名の一覧を出しています。昔の勤め先が一覧にあれば、年金事務所(ねんきんじむしょ)で職員が自分の記録が無いかを確かめます。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

下から見上げた孫。スマホを両手で掲げ、目を輝かせて祖父の方へ振り向く。髪が揺れる。

門脇 汐里:あった!

門脇 汐里:おじいちゃんの
記録

門脇 汐里:迷子に
なってるかも

門脇 勝治:迷子?

茶の間の引き。目を丸くする細長い顔の老人と、湯のみを持ったまま固まるがっしりした老人。手前に孫のスマホ。

門脇 汐里:年金事務所で
確かめ
られる

年金事務所(ねんきんじむしょ)の解説

現実の事実日本年金機構の窓口です。自分の年金の記録を確かめたり、記録の「もれ」や「誤り」を相談したりできます。持ち主不明記録の中に自分の記録が無いかも、ここで職員が確かめます。

出典

この言葉の疑問、いつもの AI に

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

瀬良 甚吉:︙︙わしの
見とった
2年じゃ

瀬良 甚吉:確かに
おったよ

日が傾くまで︑
瀬良さんは
昔の船の話をしていった︒

夕方の家の門の前の引き。杖をついて帰る、がっしりした老人の背中に長い影。門のそばで孫が見送り、奥の戸口に細長い顔の老人が膝をつく。

瀬良 甚吉:勝治
今度は
ちゃんと出せ

門脇 汐里:瀬良さん

瀬良 甚吉:ん?

門の前の道。リュックを背負った孫が一歩踏み出し、杖の老人をまっすぐ見る。

門脇 汐里:瀬良さんは

門脇 汐里:請求
したんですか

がっしりした老人の顔の寄り。杖を握ったまま、笑いが消え、口を結んで目だけが揺れる。

瀬良 甚吉:︙︙

第3話「記録に無い2年」

つづく

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

お気に入りから外しますか?

昔の仕事が、今の病気に?

この続き、いつもの AI で作れます

この作品を読んだあなたへ

この作品を評価する

ログイン

ログインして、★で評価してみてください。

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

評価を外しますか?

評価を下げますか?

この話の感想・こうなったらいい

感想や「こういう展開が読みたい」をお送りください。編集部の励みになります。いただいた声は、お名前を出さずに、作品の紹介(レビュー)として使わせていただくことがあります。

この話で分かること

年金の記録に、働いていたはずの期間が無い時は?

日本年金機構は、持ち主が分からない年金の記録のうち、勤め先の情報を含む記録の事業所名の一覧を出しています。昔の勤め先が一覧にあれば、年金事務所(ねんきんじむしょ)で職員が自分の記録が無いかを確かめます。

条件・例外

本社の所在地で届け出られている場合もあるので、本社の所在地でも探すよう案内されています。

石綿健康管理手帳(いしわたけんこうかんりてちょう)とは?

昔、石綿を扱う仕事をした人で胸に石綿による所見がある人に、都道府県(とどうふけん)労働局が出す手帳です。決められた病院で健康診断(けんこうしんだん)を無料で受けられます。

条件・例外

勤めていた会社が倒産などで今は無くても申請できます(厚生労働省 Q&A)。

写真や手帳は、昔の仕事の手がかりになる?

厚生労働省は、石綿を扱った場所がよく分からない場合でも労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)に相談すれば、監督署が詳しく聞き取り、必要な調べをするとしています。写真や作業の手帳は、どこで何をしたかを話す時の手がかりとして持っていけます。

条件・例外

どの資料がどう使われるかは個別に判断されます。監督署に相談する時に持っていきます。

物語との違い

作中の会社・船・手帳の中身は創作です。

この話の用語

石綿健康管理手帳(いしわたけんこうかんりてちょう)漫画の中で見る
現実の事実昔、石綿を扱う仕事をした人で、胸に石綿による所見がある人に、都道府県(とどうふけん)労働局が出す手帳です。手帳があると、決められた病院で健康診断(けんこうしんだん)を無料で受けられます。勤めていた会社が倒産などで今は無くても申請できます。
胸膜(きょうまく)プラーク漫画の中で見る
現実の事実石綿を吸った人の胸膜(肺を包む膜)にできる、厚く硬くなった所です。石綿を吸った印の1つとされ、労災では、肺がんが石綿によるかを見る時の目安の1つになります(胸膜プラークがあり、石綿を扱う仕事が10年以上など)。
作業の手帳(昔の仕事の手がかり)漫画の中で見る
現実の事実その日の現場と作業を書き残した手帳です。厚生労働省は、石綿を扱った場所がよく分からない場合でも、労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)に相談すれば、監督署が詳しく聞き取り、必要な調べをするとしています。手帳や写真は、どこで何をしたかを話す時の手がかりになります。
持ち主不明記録(もちぬしふめいきろく)
現実の事実年金の記録のうち、誰の物か分からなくなっている記録です。日本年金機構は、持ち主のお勤め先の情報を含む記録の事業所名の一覧を出しています。昔の勤め先が一覧にあれば、年金事務所(ねんきんじむしょ)で職員が自分の記録が無いかを確かめます。
年金事務所(ねんきんじむしょ)漫画の中で見る
現実の事実日本年金機構の窓口です。自分の年金の記録を確かめたり、記録の「もれ」や「誤り」を相談したりできます。持ち主不明記録の中に自分の記録が無いかも、ここで職員が確かめます。

出典

更新日:

続編が待てないあなたへ。違う話を考えたいあなたへ。

第3話の続き、いつもの AI で作ってみてください。

  1. 1ボタンを押すいつもの AI を選んで
  2. 2AI が開く作品の設定とあらすじつきで
  3. 3一緒に考える展開・台詞・絵の指示まで
例:AI との相談

あなた瀬良の「昔の話はええ」の後、勝治が黙って物置へ立った場面を考えたい

AI勝治は言い返す代わりに、自分の手で2年の証を探しに立った、と読めます。道具箱の底から出た手帳を、汐里より先に勝治が開く形にもできます。

あなたその時の勝治の心の声を

AI勝治(心の声)「瀬良さんの胸の影まで、昔の話で済ませてたまるか」。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

無料の Google ログインで使ってみてください

ログインすると、トゥーンエルから新しい話のお知らせがメールで届きます。止めたい時はマイページから。

Gemini は、開いたら貼り付けてください。

AI の答えは、作品の公式の続きではありません。作った物を出す時は、利用ガイドを見てください。

この先のこと、自分のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

この話の内容ごと、AI へGemini は、開いたら貼り付けてください。

AI に渡すまとめをコピー

AI に貼って、この話のことを相談してみてください。

トゥーンエルを、あなたの AI にMCP 対応無料読むだけ詳しい人向け

AI に追加して、ほかの話や用語も聞いてみてください。読むだけで、書き込みはしません。

https://tooneru.com/mcp

  1. 名前が「トゥーンエル」、URL が上の URL になっているのを見て、「続ける」を押します。
  2. 認証は「サインインなし」のまま、「追加」を押します。
  3. 「連携」か「連携させる」を押します。
  4. 読者の操作:読み取り専用のツールは「常に許可」を選べます。

トゥーンエルを運営するH株式会社の道具です。

この話のあらすじ

朝、勝治の先輩の瀬良が古いアルバムを持って来た。1984年の進水式の写真の端に、下請けの印のヘルメットの勝治がいる。1983年の春、勝治は下請けの牧原配管に移されたが、同じ船で同じ保温の仕事を続けた。瀬良は咳をし、自分は石綿健康管理手帳(いしわたけんこうかんりてちょう)を持っていて、年に2回無料で胸を診てもらうと言う。胸には胸膜プラークがあるらしい。物置から出た勝治の作業の手帳には、1984年のどの船のどこで保温をしたかが毎日書いてあった。汐里は、牧原配管が年金に入っていたなら記録がどこかにあるはずと考え、日本年金機構の持ち主不明記録の事業所名一覧に「牧原配管」を見つける。記録は迷子になっているかもしれない。瀬良は「わしの見とった2年じゃ」と言う。帰り際、汐里が「瀬良さんは請求したんですか」と聞くと、瀬良は黙った。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

石綿の病気がなぜ何十年もたって出るのか、昔の会社が無くても労災を相談できるのか、どの制度が使えるかは「いつ・どこで・どんな仕事を」で変わる事が、祖父と孫が仕事の記録をたどる中で分かってきます。期限のある物は、話の中で必ず出します。

トゥーンエル編集部のほかの作品

この話を紹介する

話のバナー・サムネイル・紹介文・貼れる HTML素材を見る

通知

お気に入り(♡)の作品に新しい話が出た日に、1回だけお知らせが届きます。届く時刻を選んでください。

ログインは要りません。

届く時刻

お知らせ

お知らせの一覧

ホームに追加

    ログインは要りません。