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第4話「糸を入れるだけです」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

少し上から見た、パールの白い待合室。ラベンダーのソファの端で茉莉がスマホを見る。奥に小さく、ほかの患者の後ろ姿と受付。

1回目の照射の日。

お母さん相手:茉莉の行ってる病院って、駅前のスミハ?相手:ちょっと聞きたいことがあって

槙野 茉莉:あとで
いいか

照射の︑あと︒

下から見上げた白い廊下。栗色のまとめ髪の相談の係が、タブレットを胸に、道をふさぐように立ってほほえむ。

美容クリニックの相談の係カウンセラー

カウンセラー:槙野さま
お疲れさま
でした

白い廊下の茉莉の胸から上。頬に片手を当て、相談の係を見て戸惑う。

文房具の会社の営業事務(29)槙野 茉莉

カウンセラー:ドクターから
お顔のたるみの
ご案内です

槙野 茉莉:通知にあった
たるみ
って︙︙

相談の係の顔の寄り。目を細めて、何かを隠すように静かに笑う。

カウンセラー:大丈夫
糸を
入れるだけ
ですから

糸のリフト︒
最初の相談の︑
見積書の1枚だ︒

カウンセラー:来週の会議にも
間に合いますよ

茉莉の顔の寄り。目を見開いて固まる。顔に驚きの縦線。

槙野 茉莉:なんで
会議のこと

さっき︑受付で
話していた︒
来週の木曜︑
初めての発表がある︒

カウンセラー:ダウンタイムも
ほとんど
ないんですよ

ダウンタイムの解説

現実の事実施術の後、腫れや内出血などで普段どおりに過ごしにくい期間を、美容医療(びよういりょう)の場でこう呼びます。長さや起きる事は施術と人によって違うので、施術の前に医師から、起こり得る事と、起きた時の連絡先(れんらくさき)、施術の後の過ごし方を説明してもらい、書面で受け取ります。

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槙野 茉莉:ほとんど?

相談の係の寄り。首を少しかしげ、笑顔のまま目をそらす。

カウンセラー:個人差は
ございますが

先週の電話の︑
沙耶さんの声︒

汐見 沙耶(回想の声):脱毛のほかを
勧められたら
先生に
聞いてね

下から見上げた茉莉。トートバッグの持ち手を握りしめ、右上の相談の係を見上げる。相談の係の顔の寄り。口元に笑みの形だけが残り、目は笑っていない。左の茉莉を見る。

槙野 茉莉:先生に
聞けますか

カウンセラー:︙︙
お呼びしますね

診察室︒

診察室の戸口。白衣にマスクの40代の男性の医師が、カルテを見ながら入ってくる。

茉莉が通う美容クリニックの医師担当医

担当医:糸のことですね

担当医:うーん
先に
説明させて
ください

医師の説明の解説

現実の事実医療法は、医師などが医療を提供する時は、適切な説明を行い、受ける人の理解を得るよう努めなければならない、と定めています。美容医療(びよういりょう)では、効果だけでなく、副作用や合併症(がっぺいしょう)、ほかの方法、費用についても医師の説明を受け、分からなければ聞き直します。

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肩越しに見た診察室の机。医師が白い紙に顔の輪郭の線を描きながら話す(字は読めない)。手前に茉莉の背中と髪が大きく写る。

〈先生の説明(茉莉のメモ)〉皮膚の下に糸を入れる施術。1回で終わる腫れ・内出血・つっぱる感じが出る事がある。どのくらい続くかは、人による起きた時の連絡先と、施術の後の過ごし方は、書面で渡す料金:14万円(1回)

糸(いと)リフト(糸のリフト)の解説

現実の事実皮膚の下に専用の糸を入れて、しわやたるみを目立たなくする事をねらう美容医療(びよういりょう)の施術です。効果やどのくらい持つかは人によって違い、言い切れません。厚生労働省は、糸リフトは医療の広告で広告できる事項に当たらないとしています。

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茉莉の顔の寄り。眉を寄せ、目をそらす。窓からの白い光。

槙野 茉莉:え︙︙
腫れたら
会議の顔
どうしよう

糸は︑1回で終わる︒
サインしたら︑
戻せないかもしれない︒

診察室の医師。顔の線を描いた白い紙を茉莉の方へ向け、指さして話す(字は読めない)。手前に茉莉の背中。

担当医:お値段は
自由診療で
14万円
ですね

自由診療(じゆうしんりょう)の解説

現実の事実公的な医療保険を使わない診療で、費用は全額を自分で払い、料金は医療機関(いりょうきかん)が決めます。美容を目的とする施術の多くは自由診療です。厚生労働省は、美容目的の自由診療で使う薬や材料、機器が、法律で承認されていない場合もあるとして、どんな物かを医師に聞くよう呼びかけています。

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担当医:合併症の
説明も
紙で
お渡しします

合併症(がっぺいしょう)の解説

現実の事実施術や治療がきっかけで起きる、別の病気や症状です。厚生労働省は、美容医療(びよういりょう)を受ける前に、効果だけでなく、副作用、合併症・後遺症の有無や起きる確率、術中の痛みなどのリスクの説明を聞いて納得するよう呼びかけています。

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少し上から茉莉。机の紙を見て、あごに手を当て、ペンを持つ手を止める。窓の外は昼の空と街。

先生の説明は︑
悪い事が先だった︒

槙野 茉莉:すみません
1つだけ

茉莉の顔の寄り。手前の医師の肩越しに、まっすぐ医師を見る、決めた目。

槙野 茉莉:これ
今すぐ
要りますか

医師の横顔。マスクの上の目が少しだけ和らぎ、間を置く。

担当医:︙︙

担当医:正直
急ぐものでは
ないですね

診察室の全景。座る医師と茉莉、その後ろの戸口に立つ相談の係。窓からの白い光。

槙野 茉莉:今日は
説明の紙だけ
ください

担当医:ええ
お渡し
しますね

少し上から見た白い廊下。封筒を抱えて帰る茉莉の背中に、相談の係が深くおじぎをする。

カウンセラー:また
ご相談
くださいね

受付︒
次の予約︒

受付のカウンター。説明の紙の入った封筒を胸に抱えた茉莉が、肩の力を抜いて小さく笑う。

沙耶さん自分:先生に聞けた。今日は帰る相手:えらい相手:照射のあと腫れとかで困ったら、相談できる所もあるからね。医療安全支援センター

医療安全支援(いりょうあんぜんしえん)センターの解説

現実の事実医療法にもとづいて都道府県(とどうふけん)などが置く、医療の相談の窓口です。患者や家族から、受けた医療についての苦情や相談を受け、必要な助言をします。美容医療(びよういりょう)の施術の後の体の心配はここ、契約や解約の相談は消費者(しょうひしゃ)ホットライン188が窓口です。

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最初の相談の日と
ちがって︑
トイレに逃げずに
済んだ︒

槙野 茉莉:木曜の発表
この顔で
出られる

受付(画面の外の声):槙野
久美子さま

受付の前で振り返る茉莉の顔の寄り。目を見開き、封筒を落としかける。

槙野 茉莉:え

槙野 茉莉:お母さんの
名前︙︙?

待合室。ラベンダーのソファから、白髪が少しまじる茶色い髪の50代の女性が立ち上がりながら振り向く。目じりのしわ、手に1枚の紙。

茉莉の母(58)槙野 久美子

槙野 久美子:茉莉

第4話「糸を入れるだけです」

つづく

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あなた待合室で久美子と目が合った後、茉莉が最初に言う一言を考えたい

AI茉莉が「なんでここに」と聞く前に、久美子が先に茉莉の封筒を見て「あんたも?」と言う形にすると、親子で言い出しにくい事がある感じが出ます。

あなた久美子は何をしに来たことにする?

AI久美子の手に、まだ字の見えない案内の紙を1枚持たせておくと、次の話の頭で中身を明かせます。

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話で分かること

糸リフトとは?

皮膚の下に専用の糸を入れて、しわやたるみを目立たなくする事をねらう美容医療(びよういりょう)の施術です。効果やどのくらい持つかは人によって違い、言い切れません。保険の使えない自由診療(じゆうしんりょう)で、厚生労働省は、糸リフトは医療の広告で広告できる事項に当たらないとしています。

条件・例外

特定商取引法(とくていしょうとりひきほう)の施行規則は、しわ・たるみを軽くするための糸の挿入を、特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)の方法の1つに挙げています。ただし、1回で終わり、期間が1か月を超えない契約はクーリング・オフや中途解約(ちゅうとかいやく)の決まりの対象になりません。

物語との違い

作中の糸のリフトは、1回・14万円です。

糸リフトのダウンタイムは、どう確かめる?

ダウンタイムは、施術の後、腫れや内出血などで普段どおりに過ごしにくい期間を、美容医療(びよういりょう)の場でこう呼ぶ言い方です。長さや起きる事は施術と人によって違うので、施術を決める前に医師の診察を受け、起こり得る副作用・合併症(がっぺいしょう)と、起きた時の連絡先(れんらくさき)、施術の後の過ごし方を医師から説明してもらい、書面で受け取ります。

条件・例外

厚生労働省は、資格の無い「カウンセラー」が、患者の希望(ダウンタイムの少ない処置がよい、など)を聞いて具体的(ぐたいてき)な治療の方法を選んで勧める事は、医師法(いしほう)第17条に反するとしています。

美容医療(びよういりょう)の施術を受ける前に、確かめる事は?

厚生労働省は、①使う薬などがどんな物か自分でも説明できるか ②効果だけでなくリスクや副作用も知って納得したか ③ほかの方法や選択肢(せんたくし)の説明も受けて自分で選んだか ④その施術は「今すぐ」必要か、の4つを施術の前に確かめるよう呼びかけています。説明を受けていなければ、医師に聞きます。

条件・例外

医療の心配は医療安全支援(いりょうあんぜんしえん)センター、契約や解約の相談は消費者(しょうひしゃ)ホットライン188が窓口です。

1回で終わる美容の施術は、クーリング・オフできる?

特定商取引法(とくていしょうとりひきほう)のクーリング・オフ(8日)は、期間が1か月を超え、5万円を超える、決まった方法の美容医療(びよういりょう)の契約に限られます。1回で終わる糸のリフトや手術は、多くの場合この対象になりません。決める前に、書面と説明を持ち帰って考えます。

この話の用語

ダウンタイム漫画の中で見る
現実の事実施術の後、腫れや内出血などで普段どおりに過ごしにくい期間を、美容医療(びよういりょう)の場でこう呼びます。長さや起きる事は施術と人によって違うので、施術の前に医師から、起こり得る事と、起きた時の連絡先(れんらくさき)、施術の後の過ごし方を説明してもらい、書面で受け取ります。
医師の説明漫画の中で見る
現実の事実医療法は、医師などが医療を提供する時は、適切な説明を行い、受ける人の理解を得るよう努めなければならない、と定めています。美容医療(びよういりょう)では、効果だけでなく、副作用や合併症(がっぺいしょう)、ほかの方法、費用についても医師の説明を受け、分からなければ聞き直します。
糸(いと)リフト(糸のリフト)漫画の中で見る
現実の事実皮膚の下に専用の糸を入れて、しわやたるみを目立たなくする事をねらう美容医療(びよういりょう)の施術です。効果やどのくらい持つかは人によって違い、言い切れません。厚生労働省は、糸リフトは医療の広告で広告できる事項に当たらないとしています。
自由診療(じゆうしんりょう)漫画の中で見る
現実の事実公的な医療保険を使わない診療で、費用は全額を自分で払い、料金は医療機関(いりょうきかん)が決めます。美容を目的とする施術の多くは自由診療です。厚生労働省は、美容目的の自由診療で使う薬や材料、機器が、法律で承認されていない場合もあるとして、どんな物かを医師に聞くよう呼びかけています。
合併症(がっぺいしょう)漫画の中で見る
現実の事実施術や治療がきっかけで起きる、別の病気や症状です。厚生労働省は、美容医療(びよういりょう)を受ける前に、効果だけでなく、副作用、合併症・後遺症の有無や起きる確率、術中の痛みなどのリスクの説明を聞いて納得するよう呼びかけています。
医療安全支援(いりょうあんぜんしえん)センター漫画の中で見る
現実の事実医療法にもとづいて都道府県(とどうふけん)などが置く、医療の相談の窓口です。患者や家族から、受けた医療についての苦情や相談を受け、必要な助言をします。美容医療(びよういりょう)の施術の後の体の心配はここ、契約や解約の相談は消費者(しょうひしゃ)ホットライン188が窓口です。

出典

更新日:

この先のこと、自分のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

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この話のあらすじ

1回目の照射の土曜。待合室で、茉莉のスマホに母から「茉莉の行ってる病院って、駅前のスミハ?」と届く。照射の後、相談の係が廊下で待っていた。受付で茉莉が話した、来週の初めての会議の発表。係は「糸を入れるだけです。来週の会議にも間に合いますよ」と言い、ダウンタイムは「ほとんど」ないという。茉莉は沙耶の「先生に聞いてね」を思い出し、「先生に、聞けますか」と言う。医師は、腫れや内出血などが出る事があり、どのくらい続くかは人によると説明し、起きた時の連絡先(れんらくさき)と施術の後の過ごし方を書面で渡すと言う。茉莉は、厚生労働省の「美容医療(びよういりょう)の施術を受ける前に」の4つめの問い「その施術は今すぐ必要か」を聞く。医師の答えは「急ぐものではないですね」。茉莉は説明の紙だけをもらって帰る。受付で次の予約を取っていると、名前を呼ばれる。「槙野 久美子さま」。待合室のソファから立ち上がったのは、母だった。

作者

カルテの余白

診察室や相談の部屋、家族の居間で、治療や検査を決める前の人と、その話を聞く人を描いています。

この作品について

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