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読み切り「引き算が、へった」

この物語はフィクションです。会社・図書館・人物は架空です。料金と制度の説明は2026年10月30日時点の東京電力エナジーパートナー・東北電力・資源エネルギー庁の発表によります。

10月の終わりの昼休み、文具の卸の会社の事務所の総務の机。スマホの画面を見せる50代の女性と、弁当の袋を提げて立ち止まる若い男。机の上に電気の検針票の紙。

文具の卸の会社 総務の係(51)宮地 しのぶ

同じ会社 営業事務 2年目(26)乙部 航平

宮地 しのぶ:ねえ
電気代
また
上がるんだって

ニュースの見出し12月分の電気代標準家庭で9,738円に

乙部 航平:燃料が
高いから
でしょ

宮地の顔の寄り。検針票の紙を胸の前で持ち、眉を下げて口をとがらせる。紙は線と枠だけ。

宮地 しのぶ:寒いのは
いやだけど

宮地 しのぶ:冬は
暖房
がまん
しようかな

宮地 しのぶ:下の子
受験
なのよ

乙部 航平:国の補助が
また出る
でしょ

宮地 しのぶ:それ
いつから?

宮地 しのぶ:金曜に
家族会議
なのよ

乙部 航平:調べて
きます

読み切り「引き算が、へった」

市立図書館の
調べもの相談の窓口︒
その日の︑夕方︒

市立図書館の閲覧の階。新聞の束を台車で縛っていた司書の女性が、手を止めて振り向く。大きな窓の明るい光の中を、スマホと紙の束を持った若い男が小走りで来る。

市立図書館 調べもの相談の司書(43)吉住 ふみ

乙部 航平:燃料が
高くて
また値上げ
ですよね

吉住 ふみ:見出しの
数字
ですね

吉住 ふみ:元の発表を
見て
みましょう

カウンター横の調べもの用の PC を、2人の背中越しに斜め上から。青く光る画面の表の1行を司書の指が指し、男は身を乗り出す。画面は線と枠だけ。

東京電力エナジーパートナーの発表(2026年10月29日)2026年12月分の燃料費調整単価(1kWhにつき)▲4円65銭(11月分 ▲5円33銭)低圧平均モデル 9,738円(11月分 9,561円)

燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)の解説

現実の事実火力発電の燃料(原油・LNG・石炭)の値段の動きを、毎月の電気代に自動で反映させるための、1kWhあたりの額です。東京電力エナジーパートナーの関東の低圧は、2026年12月分が▲4円65銭、11月分が▲5円33銭。▲はマイナスで、電気代から差し引かれます。

プランで単価は違う?
東京電力エナジーパートナーの2026年12月分は、従量電灯などの規制料金のプランも、スタンダードなどの自由料金のプランも、関東の低圧は同じ▲4円65銭です。燃料が大きく高くなった時、規制料金のプランには足す額の上限があり、自由料金のプランにはありません。

出典

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乙部 航平:この▲
って︙︙

吉住 ふみ:マイナスで
電気代から
引かれてる
んですよ

乙部 航平:え
引かれて
るの?

上から見たカウンター。印刷した別紙の表の、まだ空いた欄を司書の鉛筆の先が指す。別の欄には青い丸。紙の見出しの帯だけ青。

〈別紙1 関東エリア〉7月〜9月の平均燃料価格 60,700円/kl(前の期より+3,700円)基準燃料価格 86,100円/kl→ 基準より安い分は、差し引く

基準燃料価格(きじゅんねんりょうかかく)の解説

現実の事実料金を決めた時に前提にした燃料の値段です。東京電力エナジーパートナーの規制料金のプランは原油に換算して1klあたり86,100円。直近3か月の平均燃料価格がこれより高ければ電気代に足し、安ければ差し引きます。2026年12月分は平均60,700円で、基準より安いので差し引きです。

平均燃料価格は、どう決まる?
原油・LNG・石炭の3か月間の貿易統計の価格を、決まった係数で原油1klあたりに換算して足します。2026年12月分は2026年7月〜9月の価格で60,700円/kl、11月分(6月〜8月)は57,000円/klでした。

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乙部 航平:燃料は
上がった
のに

吉住 ふみ:まだ
基準より
安いんですよ

吉住 ふみ:引かれる額が
へった
だけで

吉住 ふみ:引き算が
へった

乙部の顔の寄りを少し下から。目を丸くして口を開け、メモの数字を指でなぞる。指先とメモの角が枠の外へ出る。

〈吉住のメモ〉▲5円33銭 → ▲4円65銭 差 68銭燃料費調整額の差 68銭 × 260kWh = 176.8円→ 発表の 177円

燃料費調整額(ねんりょうひちょうせいがく)の解説

現実の事実燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)に、その月に使った電力量(kWh)を掛けた額で、電気代に足すか差し引きます。260kWhの家の2026年12月分は▲4円65銭×260kWhで、11月分より差し引く額が68銭×260kWh分へり、東京電力エナジーパートナーの発表では177円の増えです。

東北電力では?
東北電力の2026年12月分は1kWhにつき▲5.84円(前の月より0.45円上がる)で、30A・260kWhの平均的なモデルは9,807円(117円増え)。燃料費等調整額は▲1,518円です。

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乙部 航平:へえ
上がった
んじゃ
なくて

乙部 航平:引かれ方が
へった︙︙

乙部 航平:じゃあ
9,738円は?

吉住 ふみ:30A・260kWhの
家の
例なんですよ

〈低圧平均モデル(従量電灯B・30A・260kWh)〉基本料金 1,176円18銭電力量料金 120kWhまで29円85銭・次の140kWh 36円45銭燃料費調整額 ▲4円65銭×260kWh再生可能エネルギー発電促進賦課金 1,086円= 9,738円

再生可能(さいせいかのう)エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)の解説

現実の事実電気代に、使った電力量に応じて上乗せされる額で、明細では「再エネ賦課金」と略されることもあります。東京電力エナジーパートナーの30A・260kWhの計算例では1,086円。東北電力の発表では、1kWhあたり4.18円で数えています。

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吉住 ふみ:乙部さんちの量は
スマホの
検針票でも
見られますよ

カウンターでスマホの電気の使用量の画面を開き、のぞきこむ乙部を斜め上から。横で司書が画面を指す。スマホの使用量の画面の寄り。欄の1行だけが青い枠で囲まれている。字の無い線だけ。

乙部 航平:あ︑うちは
180kWh︙︙

吉住 ふみ:同じ量なら
11月分より
約122円

乙部 航平:宮地さんちは
4人だから
もっと
使ってるかも

乙部 航平:あ
国の補助は?

吊り灯りの下のカウンター。司書が、印刷した国のページの紙を乙部の前へすべらせる。乙部はあごに手を当て、眉を寄せて紙をのぞく。

〈資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援〉値引き:2026年7月〜9月使用分家庭(低圧)1kWhにつき3.5円・8月使用分は4.5円申し込みは要らない

電気・ガス料金支援(りょうきんしえん)の解説

現実の事実国が電気・都市ガスの会社に値引きの元手を渡し、会社が毎月の料金から使用量に応じて値引く仕組みです。2026年は7月〜9月使用分で、家庭の電気(低圧)は1kWhにつき3.5円、8月使用分は4.5円。申し込みは要りません。2026年10月30日時点、冬の値引きは資源エネルギー庁のページに載っていません。

値引きの期間がずれる時は?
8月使用分から値引きを始めた会社は、10月使用分までが対象です(資源エネルギー庁のよくある質問)。
プロパンガスは?
今回の対象ではありません。

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乙部 航平:えっ
12月分は
入って
ない?

吉住 ふみ:期間の後の
分ですね

乙部 航平:冬の補助は?

吉住 ふみ:このページには
まだ
載っていません

〈燃料の値段と、料金の月〉7月〜9月の燃料 → 12月分の燃料費調整8月〜10月の燃料 → 1月分(まだ発表されていない)

燃料費調整(ねんりょうひちょうせい)の時期の解説

現実の事実燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)は、3か月間の燃料の値段から決まり、2か月後の電気代に使われます。2026年7月〜9月の値段は12月分に、8月〜10月の値段は1月分に。1月分の単価は、10月の貿易統計が出た後に発表されます。

「12月分」は、いつ使った分?
東北電力の発表では、2026年12月分は「2026年11月使用分」(11月の検針日から12月の検針日の前の日まで)と書かれています。区切り方は電力会社と契約で違うことがあるので、検針票の使用期間で確かめます。

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2枚の紙を片手に重ねて持ち、もう片方の手で頭をかく乙部の横顔。カウンターの向こうで、耳に鉛筆を挟んだ司書が静かに見ている。窓の外は夕方の暗い青。

乙部 航平:補助も
1月分も
言い切れ
ない

吉住 ふみ:言い切れない
所は

吉住 ふみ:言い切らない
のが
いいです

吉住 ふみ:決まってる
所だけ
持って
帰りましょう

総務の机︒
次の日の昼休み︒

昼の事務所の総務の机。乙部が印刷した発表の紙を2枚並べる。紙をのぞきこむ宮地の手に、検針票。

乙部 航平:燃料のせい
というより

乙部 航平:引かれる額が
へった
分でした

宮地 しのぶ:うちは
400kWh
くらいよ

乙部 航平:同じ量なら
11月分より
約272円です

宮地 しのぶ:えっ
それだけ?

宮地の顔の寄り。検針票の使用量の欄を指でとんとん叩きながら、目を落として考える。

宮地 しのぶ:で
補助は?

乙部 航平:9月の分で
終わってて

乙部 航平:冬の分は︙︙
言い切れ
ません

乙部 航平:1月分の
単価も
まだで

宮地 しのぶ:よかった
それなら
がまんは
しないで

宮地 しのぶ:毎月の量を
見ることに
する

笑って検針票を机の引き出しにしまう宮地と、照れて首の後ろに手をやる乙部。後ろに事務所の窓。

宮地 しのぶ:で
乙部くんちは?

乙部 航平:検針票
きのう
初めて
見ました

見出しの177円は︑
引き算が
へった分だった︒

〈この話の決まり〉2026年10月30日時点の、東京電力エナジーパートナー・東北電力・資源エネルギー庁の発表によります。決まりが変わった時は、この話に追記します。

読み切り「引き算が、へった」

おわり

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「12月分の電気代が上がる」って、燃料が高いから?

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この話で分かること

2026年12月分の電気代は、いくら上がる?

東京電力エナジーパートナーの低圧平均モデル(従量電灯B・30A・1か月260kWh)は9,738円で、11月分の9,561円より177円高くなります。東北電力の30A・260kWhのモデルは9,807円で、117円高くなります。どちらも再生可能(さいせいかのう)エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)と消費税等を含みます。

物語との違い

見出しの「標準家庭」は、東京電力エナジーパートナーの発表では「低圧平均モデル」です。使う量・プラン・電力会社で、家ごとの額は変わります。

燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)とは?

火力発電の燃料(原油・LNG・石炭)の値段の動きを電気代に反映させるための、1kWhあたりの額です。3か月間の燃料の値段から決まり、2か月後の電気代に使われます。東京電力エナジーパートナーの関東の低圧は、2026年12月分が▲4円65銭(11月分は▲5円33銭)です。

燃料が高くなったのに、なぜマイナス?

2026年7月〜9月の平均燃料価格は60,700円/klで、前の期(57,000円/kl)より3,700円高くなりましたが、料金の前提の基準燃料価格(きじゅんねんりょうかかく)86,100円/klより安いからです。基準より安い分は電気代から差し引くので単価はマイナスのままで、差し引く額が68銭へった分だけ高くなります。

自分の家の電気代は、いくら増える?

東京電力エナジーパートナーの関東の低圧なら、燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)の差は1kWhあたり68銭なので、11月分と同じ量を使った時の増えは「使用量(kWh)×68銭」が目安です。使用量は検針票か電力会社の使用量の画面で確かめます。

物語との違い

作中の約122円(180kWh)と約272円(400kWh)は、11月分と同じ量を使った時の、燃料費調整額(ねんりょうひちょうせいがく)の差だけの計算です。使う量が変われば電力量料金・再生可能(さいせいかのう)エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)も変わり、東北電力など他の電力会社は単価の差が違います。

電気代の国の補助は、12月分もある?

資源エネルギー庁の電気・ガス料金支援(りょうきんしえん)の値引きは2026年7月〜9月使用分(家庭の電気は1kWhにつき3.5円、8月使用分は4.5円。8月使用分から始めた会社は10月使用分まで)で、12月分の電気代はこの期間の後の使用分です。2026年10月30日時点、冬の値引きは同庁のページに載っていません。

この話の用語

燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)漫画の中で見る
現実の事実火力発電の燃料(原油・LNG・石炭)の値段の動きを、毎月の電気代に自動で反映させるための、1kWhあたりの額です。東京電力エナジーパートナーの関東の低圧は、2026年12月分が▲4円65銭、11月分が▲5円33銭。▲はマイナスで、電気代から差し引かれます。
基準燃料価格(きじゅんねんりょうかかく)漫画の中で見る
現実の事実料金を決めた時に前提にした燃料の値段です。東京電力エナジーパートナーの規制料金のプランは原油に換算して1klあたり86,100円。直近3か月の平均燃料価格がこれより高ければ電気代に足し、安ければ差し引きます。2026年12月分は平均60,700円で、基準より安いので差し引きです。
燃料費調整額(ねんりょうひちょうせいがく)漫画の中で見る
現実の事実燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)に、その月に使った電力量(kWh)を掛けた額で、電気代に足すか差し引きます。260kWhの家の2026年12月分は▲4円65銭×260kWhで、11月分より差し引く額が68銭×260kWh分へり、東京電力エナジーパートナーの発表では177円の増えです。
再生可能(さいせいかのう)エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)漫画の中で見る
現実の事実電気代に、使った電力量に応じて上乗せされる額で、明細では「再エネ賦課金」と略されることもあります。東京電力エナジーパートナーの30A・260kWhの計算例では1,086円。東北電力の発表では、1kWhあたり4.18円で数えています。
電気・ガス料金支援(りょうきんしえん)漫画の中で見る
現実の事実国が電気・都市ガスの会社に値引きの元手を渡し、会社が毎月の料金から使用量に応じて値引く仕組みです。2026年は7月〜9月使用分で、家庭の電気(低圧)は1kWhにつき3.5円、8月使用分は4.5円。申し込みは要りません。2026年10月30日時点、冬の値引きは資源エネルギー庁のページに載っていません。
燃料費調整(ねんりょうひちょうせい)の時期漫画の中で見る
現実の事実燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)は、3か月間の燃料の値段から決まり、2か月後の電気代に使われます。2026年7月〜9月の値段は12月分に、8月〜10月の値段は1月分に。1月分の単価は、10月の貿易統計が出た後に発表されます。

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この話のあらすじ

10月の終わりの昼休み、文具の卸の会社の総務の係の宮地 しのぶが、ニュースの見出し「12月分の電気代、標準家庭で9,738円に」を見せ、受験の子がいる冬に暖房をがまんしようかと迷う。営業事務2年目の乙部 航平は「燃料が高いから」「国の補助がまた出る」と言いかけ、金曜の家族会議までに調べてくると約束する。市立図書館の調べもの相談で、司書の吉住 ふみと東京電力エナジーパートナーの発表を読むと、12月分の燃料費調整単価(ねんりょうひちょうせいたんか)は1kWhにつき▲4円65銭で、まだ電気代から差し引かれていた。7月〜9月の平均燃料価格は前の期より上がったが、基準燃料価格(きじゅんねんりょうかかく)の86,100円より安いので、引かれる額が11月分より68銭へっただけで、260kWhの家で177円の増えになる。9,738円は30A・260kWhの家の例で、乙部の家は180kWhなら同じ量で約122円の増え。国の電気・ガス料金支援(りょうきんしえん)の値引きは2026年7月〜9月使用分で、冬の値引きは資源エネルギー庁のページにまだ無く、1月分の単価もまだ発表されていない。言い切れない所は言い切らず、決まっている所だけを持ち帰った乙部の話を聞き、宮地は暖房をがまんせず、毎月の使用量を見ることにする。

作者

漫画でわかるニュース

仕事と暮らしに関わるニュースを、1つの話の読み切りの漫画にしています。トゥーンエルのニュース編集部が作っています(運営・編集はトゥーンエル編集部)。

この作品について

ニュースの見出しの「12月分の電気代、標準家庭で9,738円」を、東京電力エナジーパートナーの元の発表から読み解く読み切り。燃料費調整単価がまだマイナスである訳、177円の増えの計算、9,738円がどんな使い方の家の額か、国の電気・ガス料金支援の期間が、物語の流れで分かります。

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