第2話「手が、遠い」
この

影山 透:お願いします
一滴でいいので
影山 ひかり(電話の声):お兄ちゃん
手のひら
上? 下?
影山 透:今
それ大事?
影山 ひかり(電話の声):自動ドアは
開いたんでしょ?
白い紙で
影山 透:開いたけど
紙は持って
手は洗えないよ

総務部有坂 真帆
有坂 真帆:わっ!
いたの!?
影山 透:朝から
いました
有坂 真帆:ごめんごめん
えーと
かげ︙︙かげ︙︙
影山 透:影山です
帰り道︒
ひかりから︑電話が来た︒

影山 ひかり(電話の声):わかった!

影山 ひかり:犯人は
その袖!
影山 ひかり:自動ドアの時と
同じだよ
灰色の袖が
光を返さないの
影山 透:測ったの?
影山 ひかり:測らなくても
わかるよ!
影山 透:じゃあ
白い手袋なら
土曜日︒駅ビルの
誰でも使える手洗い場︒


影山 透:出ない
影山 ひかり:えっ
影山 透:軍手の男が
手を洗えずに
立ってるだけだよ

影山 ひかり:あれ︙︙?

影山 ひかり:外した
影山 ひかり:測らないで
言っちゃった
理科部失格だ
影山 透:そこまで
言わなくても
影山 透:ほら
いつもの
巻き尺は?
影山 ひかり:︙︙うん

それから1時間︒
通る人の手を︑遠くから
目で測らせてもらった︒
影山 ひかり:お兄ちゃんも
いつもどおり
やってみて
影山 透:こう?
影山 ひかり:あ
影山 ひかり:手が
遠いよ!
影山 透:遠い?
影山 ひかり:センサーには
読める範囲が
あるの

影山 ひかり:なんで
そんな手前で
止めてるの?

影山 透:︙︙なんでだろ
影山 透:後ろから
人が来たら
すぐどける
ように

影山 透:自動ドアでも
端を歩くし
影山 透:ずっとそうだな
影山 ひかり:お兄ちゃん
影山 ひかり:もう20センチ
奥だよ
影山 ひかり:誰も
並んでないから


ジャー
影山 透:出た︙︙
手︑洗える
影山 ひかり:ノートに
書いとくね
影山 ひかり:犯人は袖じゃ
なかったって
影山 透:書かなくて
いいよ
影山 ひかり:書くの
外したのも
結果だから

影山 透:ずっと流して
たいなあ
影山 ひかり:離したら
止まるのが
いいんだよ

影山 透:それは
今度にして
週明けの月曜︒夜の8時︒
会社に残っているのは︑
僕だけだった︒

影山 透:奥まで
手を出せば
いいんだ
影山 透:手を洗えた
だけで
こんなに
うれしいなんて

パチッ
影山 透:え
今度は︑部屋に言われた︒
――誰も︑いませんよ︒
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