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第3話「写真は、変わる日に撮る」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

夜のワンルーム。スマホで押し入れの洞窟の入口、壁、床、窓を順に撮る若い女性。床に付箋の冊子と竜の子。

201号室。

ひのき住宅管理 退去の立ち会い担当(入社7か月)鷹取 栞

鷹取 栞:落ち着いて︙︙
湧いた日の
午前0時40分
壁︑床
窓︑傷なし

〈201号室 湧いた日の記録〉押し入れ:奥に迷宮の入口(0:12ごろ)壁・天井:傷なし(写真12枚)床:入口の前に霜。ほか傷なし窓・鍵:異常なし

鷹取 栞:いつか
私が出ていく日
今日の部屋が
基準になる

朝︒

アパートの外階段。帳面を抱えた年配の大家と、竜の子を頭に乗せた若い女性が向かい合う。

メゾン万代の大家万代 千鶴

万代 千鶴:おや
あんたの
部屋まで
湧いたのかい

鷹取 栞:はい︙︙
湧いた届けと
その夜の
写真です

万代 千鶴:へえ
仕事が
早いね

同じ日の午後︒
204号室の立ち会い︒

部屋の戸口で、杖を抱え、大きな帽子を目深にかぶった若い女性の魔法使い。目の下にくま。足元に荷造りの箱。

冒険者(魔法使い)水城 ルカ

水城 ルカ:あの
敷金って
返ってこない
って
聞きました

敷金(しききん)の解説

現実の事実家賃などの借りた人の支払いを担保(たんぽ)するために、借りた人が貸す側に預けるお金です。民法 第622条の2では、部屋を返した時に、敷金から未払いの家賃など借りた人の支払うべき額を引いた残りを、貸す側が返さなければならないとされています。

敷金は全部引かれる物?
違います。引けるのは、借りた人が払うべき額(未払いの家賃や、借りた人が負担する原状回復(げんじょうかいふく)の費用など)だけで、残りは返されます(民法 第622条の2)。

出典

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鷹取 栞:えっ
誰から
ですか?

水城 ルカ:ネット︙︙で

部屋の中。フローリングに走る長いひび、窓ぎわの壁の黒いカビ、床に霜の跡。大家が腕を組んで立っている。

万代 千鶴:床のひび
壁のカビ
鍵も
なくしたって?

水城 ルカ:ゆ︑床は
迷宮の冷気で
︙︙たぶん

鷹取 栞:じゃあ
入居の日の
写真は
ありますか?

入居の日の写真の解説

現実の事実国土交通省のガイドラインは、入居の時と退去の時に部屋の傷みをチェックリストで確かめるだけでなく、傷みの場所や程度を平面図に書いたり写真に撮ったりして、目で見て分かる形で残すことが大事だとしています。こうした記録は、後でもめて裁判になった時にも証拠の資料になり得ます。

出典

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帽子のつばを両手で引き下げて顔を隠す魔法使い。少しデフォルメ。

水城 ルカ:︙︙撮って
ないです

立ち会いには︑
宇津木さんも
来ていた︒

床のひびの寄り。ひびの縁に白い霜と、氷の結晶の模様。

宇津木 源:こいつは
霜の模様が
違う
冷気じゃねえ

鷹取 栞:じゃあ︙︙
氷の
魔法︙︙?

窓ぎわの壁の黒いカビの寄り。窓の下に水の筋。

鷹取 栞:それとカビは
結露を
ふかずに
放っておいた
所です

結露(けつろ)を放っておいてできたカビの解説

現実の事実国土交通省のガイドラインでは、結露は建物の構造の問題であることも多いとしつつ、結露が出ているのに貸す側に知らせず、ふき取るなどの手入れを怠って壁などを傷めた場合は、通常の使用による損耗(そんもう)を超えると判断されることが多いとしています。

結露に気づいたら?
民法 第615条では、借りた物に修繕が要る時は、借りた人は遅れずに貸す側に知らせなければならないとされています。

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泣きそうな顔で杖を握りしめる魔法使い。

水城 ルカ:だって
夜中に
迷宮から
冷たい風が
来るから︙︙

水城 ルカ:ちょっとだけ
氷の壁で
ふさいでた

鷹取 栞:︙︙床のひび
って
その氷の
重さ?

事務所の
書類の棚︒

縦に長い絵。上に事務所の天井まで届く書類の棚、真ん中に脚立に乗ってファイルを引き抜く若い女性、下に床に広げた古い紙の確認リストと、それをのぞく竜の子。

入居の日の︑
写真が無くても︒

会社には︑
入居の日の
リストが
残っている︒

鷹取 栞:あった!

〈入居時の確認リスト 204号室 2023年4月〉床(洋室):ひび 1か所(窓側・長さ約40cm)壁(窓側):異常なし鍵:2本 受け取り借りる人の署名・貸す人の署名

確認リストの署名の解説

現実の事実国土交通省のガイドラインの「入退去時の物件状況及び原状回復(げんじょうかいふく)確認リスト(例)」には、入居の時と退去の時のそれぞれに、借りる人・貸す人・管理会社(かんりがいしゃ)の確認担当者が名前を書いて印を押す欄があります。両方が同じ紙で確かめた事が残り、退去の時の話し合いの元になります。

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部屋の中で、古い確認リストを大家と魔法使いに見せる若い女性。大家が老眼鏡をずらして読んでいる。

鷹取 栞:見てください!

鷹取 栞:床のひびは
入居の前から
あります

鷹取 栞:水城さんの分は
氷で少し
広がった所
だけです

万代 千鶴:おや
あたしの字だね
このリスト

大家の手が、リストの署名の欄を指でなぞる寄り。字は読めない線だけ。
鍵穴の寄り。古いシリンダーの錠。

鷹取 栞:ただ︙︙
言いにくい
んですけど

鷹取 栞:鍵をなくした
分の交換
は
水城さんの
負担です

鍵をなくした時の交換の解説

現実の事実国土交通省のガイドラインでは、鍵の紛失(ふんしつ)や壊したことによる取り替えは借りた人の負担とし、紛失の場合は年数を考えず、交換の費用の分を全額借りた人の負担としています。紛失や破損が無い時の、次の入居者のための鍵の取り替えは、貸す側の負担としています。

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水城 ルカ:︙︙はい

〈退去の確かめ 204号室〉床のひび:入居の前から(リスト)。氷で広がった分を相談窓ぎわのカビ:結露を放っておいた → 借りる側鍵の交換:紛失 → 借りる側(年数は考えない)残り:敷金から引いて、返す

敷金の精算の紙を両手で持ち、目をうるませる魔法使い。紙の文字は読めない。

水城 ルカ:え︙︙
敷金って
返って
くるんだ

鷹取 栞:はい
引けるのは
払うべき
分だけです

夕方︒

夕方の事務所。窓の外に高いタワーマンションのシルエット。机でお茶を飲む職人の男と、書類を書く若い女性。

内装の職人(元・迷宮の盾役)宇津木 源

宇津木 源:入居の日の
リストな
書いたのは
万代さん
本人だ

鷹取 栞:︙︙全部の部屋
自分で
見てたんだ

鳴る事務所の電話の受話器を取る若い女性の寄り。

万代 千鶴(電話の声):ああ
鷹取さん
万代タワーの
話
聞いてるかい

タワーの上を旋回する、翼を広げた巨大な黒い竜の影。夜の東京の空に立つ30階建てのタワーマンション。最上階の窓という窓から、赤い光と黒い煙があふれている。

万代 千鶴(電話の声):120部屋
全部退去だよ
立ち会いは
1日で頼みたい

万代 千鶴(電話の声):建物ごと
迷宮が
深くなった
んだよ

迷宮(めいきゅう)が深くなるの解説

作中の世界の決まり湧き部屋(わきべや)の迷宮は、年を経ると奥が深くなり、強い魔物が出るようになることがある。建物の何部屋もの迷宮がつながると、建物ごと住めなくなる。

作中の世界の決まり現実にはありません。作中の世界の決まりです。

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受話器を持ったまま振り返る若い女性。うしろで、湯のみを持つ手を止めて固まる職人の男。

鷹取 栞:宇津木さん?

職人の男の顔の寄り。片目の上の古い傷あとに、窓の外の赤い光が映っている。

宇津木 源:︙︙あそこの
最上階にゃ
俺の盾が
残ってる

第一部︑
最後の立ち会いが
決まった︒

第3話「写真は、変わる日に撮る」

つづく

原作・脚本
地番堂
作画
地番堂

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

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あなた万代タワーの立ち会いの朝を考えたい

AI栞が120部屋分の入居の日の確認リストを台車で運ぶ形にすると、「写真とリストが武器」の作品の芯が山場でも生きます。宇津木が盾の代わりに道具箱を背負うと、昔との違いが一枚で見せられます。

あなた台車の線で、台詞を

AI栞「120部屋。全部、入居の日の紙があります」宇津木「戦う気か」栞「確かめる気です」。

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この話で分かること

敷金(しききん)は返ってくる?

返ってきます。民法 第622条の2では、部屋を返した時に、敷金から未払いの家賃など借りた人が払うべき額を引いた残りを、貸す側が返さなければならないとされています。

条件・例外

引かれるのは、未払いの家賃や、借りた人が負担する原状回復(げんじょうかいふく)の費用など、借りた人が払うべき額です。

入居の時の写真が無い時は?

国土交通省のガイドラインは、入居時と退去時にチェックリストを作り、貸す側と借りる側が立ち会って確かめることを勧めています。入居時のリストが管理会社(かんりがいしゃ)などに残っていれば、それも確かめる手がかりになります。

物語との違い

作中の「大家が自分で書いた入居時のリスト」は物語の中の事です。

結露(けつろ)でできたカビは、借りた人が払う?

ガイドラインでは、結露は建物の構造の問題であることも多いとしつつ、結露が出ているのに貸す側に知らせず、ふき取るなどの手入れを怠って壁などを傷めた場合は、通常の使用による損耗(そんもう)を超えると判断されることが多いとしています。

条件・例外

民法 第615条では、修繕が要る時は、借りた人は遅れずに貸す側に知らせなければならないとされています。

鍵をなくしたら、退去の時にいくら払う?

ガイドラインでは、鍵を紛失(ふんしつ)した場合は年数を考えず、シリンダーの交換の費用の分を全額借りた人の負担としています。紛失や破損が無い時の、次の入居者のための鍵の取り替えは貸す側の負担としています。

この話の用語

敷金(しききん)漫画の中で見る
現実の事実家賃などの借りた人の支払いを担保(たんぽ)するために、借りた人が貸す側に預けるお金です。民法 第622条の2では、部屋を返した時に、敷金から未払いの家賃など借りた人の支払うべき額を引いた残りを、貸す側が返さなければならないとされています。
入居の日の写真漫画の中で見る
現実の事実国土交通省のガイドラインは、入居の時と退去の時に部屋の傷みをチェックリストで確かめるだけでなく、傷みの場所や程度を平面図に書いたり写真に撮ったりして、目で見て分かる形で残すことが大事だとしています。こうした記録は、後でもめて裁判になった時にも証拠の資料になり得ます。
結露(けつろ)を放っておいてできたカビ漫画の中で見る
現実の事実国土交通省のガイドラインでは、結露は建物の構造の問題であることも多いとしつつ、結露が出ているのに貸す側に知らせず、ふき取るなどの手入れを怠って壁などを傷めた場合は、通常の使用による損耗(そんもう)を超えると判断されることが多いとしています。
確認リストの署名漫画の中で見る
現実の事実国土交通省のガイドラインの「入退去時の物件状況及び原状回復(げんじょうかいふく)確認リスト(例)」には、入居の時と退去の時のそれぞれに、借りる人・貸す人・管理会社(かんりがいしゃ)の確認担当者が名前を書いて印を押す欄があります。両方が同じ紙で確かめた事が残り、退去の時の話し合いの元になります。
鍵をなくした時の交換漫画の中で見る
現実の事実国土交通省のガイドラインでは、鍵の紛失(ふんしつ)や壊したことによる取り替えは借りた人の負担とし、紛失の場合は年数を考えず、交換の費用の分を全額借りた人の負担としています。紛失や破損が無い時の、次の入居者のための鍵の取り替えは、貸す側の負担としています。
迷宮(めいきゅう)が深くなる漫画の中で見る
作中の世界の決まり湧き部屋(わきべや)の迷宮は、年を経ると奥が深くなり、強い魔物が出るようになることがある。建物の何部屋もの迷宮がつながると、建物ごと住めなくなる。
作中の世界の決まり現実にはありません。作中の世界の決まりです。

出典

更新日:

この先のこと、自分のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

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この話のあらすじ

自分の部屋にも迷宮(めいきゅう)が湧いた栞は、その夜のうちに部屋を写真に撮り、記録を書く。いつか出ていく日の基準になるからだ。翌日、メゾン万代 204号室の魔法使い・水城 ルカの退去。床のひび、窓ぎわのカビ、なくした鍵。ルカは「敷金(しききん)は返ってこない」とネットで読んでいた。入居の日の写真も無い。宇津木は床のひびの霜が迷宮でなく氷の魔法だと見抜き、栞は会社の棚から、入居の日に大家の万代が自分で書いた確認リストを見つける。ひびは入居の前からあった。結露(けつろ)を放っておいたカビと、なくした鍵の交換は借りる側。敷金から引いた残りは返る。その夕方、万代から電話が来る。万代タワーの迷宮が建物ごと深くなり、120部屋が全部退去、立ち会いは1日。宇津木は「最上階に、俺の盾が残ってる」とつぶやく。

作者

地番堂

土地と建物の値の決まり方、質の品の値付け、賃貸の退去の費用の分け方を、異世界やダンジョン、商店街の物語にして描いています。

この作品について

壁の焦げ一つでも、貸す側と借りる側のどちらが直すかには筋道があります。退去の立ち会いで使える原状回復の考え方を、ダンジョン帰りの傷で笑いながら確かめられます。

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