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第4話「1番だってさ」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

通知の紙を両手で高く掲げ、得意げに胸を張る割烹着の小柄な老婦人。夕方の茶の間。卓袱台の前で、区役所の通知を広げて目を丸くする若い男性。うしろの障子に夕日。

ババン

花岡 キヨ:1番だって
番台と
同じだよ

花岡 圭:そういう1
じゃないって

認定の結果は︑
「要支援1」だった︒

仏壇の前で、通知の紙を額縁に入れようとする老婦人と、その額縁を両手で押さえて止める若い男性。少しデフォルメされた顔。

元・ひばり湯のおかみ(86)花岡 キヨ

フリーの動画編集者(27)花岡 圭

花岡 キヨ:よし
額に
入れとこう

花岡 圭:入れなくて
いいって!

第4話「1番だってさ」

その夜︑
包括センターの
有馬さんに電話した︒

夜の縁側。スマホを耳に当て、片手で頭を抱える若い男性。庭の向こうに銭湯の煙突。

花岡 圭:なんで︙︙

花岡 圭:夜中に番台へ
行く人が
一番軽い
要支援1?

有馬 さやか(電話の声):そっか︙︙
結果の紙
一緒に
見ましょう

有馬 さやか(電話の声):明日
伺いますね

翌日︒

昼の茶の間。卓袱台に通知と資料を広げて説明する、カーディガンのショートカットの女性。向かいに若い男性、その横で湯のみを持ちそっぽを向く老婦人。

ひばり町 地域包括支援センター 社会福祉士有馬 さやか

資料の紙を1枚持ち上げ、にこやかに指を2本立てて説明するショートカットの女性の寄り。

有馬 さやか:えっとですね
要支援と
要介護

似てますけど
別の枠なんです

要支援(ようしえん)と要介護(ようかいご)の解説

現実の事実介護保険(かいごほけん)法の定義では、「要介護」は入浴・排せつ・食事などで常に介護が要ると見込まれる状態、「要支援」は常に介護が要る状態にならないための支援や、日常生活の支えが要ると見込まれる状態です。区分は要支援1・2と要介護1〜5の7段階で、どちらにも当たらない時は非該当(ひがいとう)です。

要支援だと介護保険は使えない?
使えます。要支援の人は、介護予防(かいごよぼう)のサービスや、市区町村(しくちょうそん)の介護予防・日常生活支援総合事業(にちじょうせいかつしえんそうごうじぎょう)のサービスを使えます(厚生労働省の介護サービス情報公表システムの解説)。

出典

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〈認定の7段階〉要支援1・要支援2 → 介護予防のサービス・総合事業要介護1〜5 → 介護のサービス(どちらにも当たらない時は「非該当」)

非該当(ひがいとう)の解説

現実の事実要介護認定(ようかいごにんてい)で、要支援(ようしえん)にも要介護(ようかいご)にも当たらないと判定される事です。厚生労働省の解説では、相談の窓口で「基本チェックリスト」で状況を確かめ、認定を受けなくても総合事業(そうごうじぎょう)のサービスを使えるようにするとしています。

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湯のみを置き、勝ち誇ったように鼻を鳴らす割烹着の老婦人。少しデフォルメ。

花岡 キヨ:ほらね
あたしは
支援で十分さ

有馬 さやか:ふふ
でも
使えるものも
ありますよ

有馬 さやか:お風呂の
手すりの
相談とか

資料の束を真上から見た静物。地域の体操教室の案内、通いのサービスの案内、手すりの絵の資料。文字は読めない線だけ。

〈要支援1で使えるものの例〉・通いや訪問の、介護予防のサービス・区の総合事業(体操の教室・買い物の手伝いなど)・使う前に「介護予防ケアプラン」を作る

介護予防(かいごよぼう)・日常生活支援総合事業(にちじょうせいかつしえんそうごうじぎょう)(総合事業(そうごうじぎょう))の解説

現実の事実市区町村(しくちょうそん)が中心になって、要支援(ようしえん)の人などに、通い・訪問・生活の支えなどのサービスを地域の実情に合わせて用意する事業です。厚生労働省の解説では、相談の窓口の多くは地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターで、介護の事業所のほか住民が主体のサービスなども選べるとしています。

何があるかはどこで分かる?
サービスの中身は市区町村ごとに違います。住んでいる市区町村か、地域包括支援センターに聞きます。

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有馬 さやか:ケアプランは
うちで
一緒に
作りましょう

介護予防(かいごよぼう)ケアプラン(介護予防サービス計画)の解説

現実の事実どのサービスを、いつ、どれだけ使うかを決める計画です。厚生労働省の解説では、要支援(ようしえん)1・2の人の計画は地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターに相談して作り、要介護(ようかいご)1以上の人は居宅介護支援事業者(きょたくかいごしえんじぎょうしゃ)のケアマネジャーに頼むとしています。

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腕を組んで口をへの字にする老婦人の寄り。少しデフォルメ。うしろに小さな湯気の線。

花岡 キヨ:あたしは
人の世話に
ならない!

有馬 さやか:あ︑それに

有馬 さやか:初めては
原則6か月の
期限つき
なんです

認定の有効期間(ゆうこうきかん)の解説

現実の事実要介護(ようかいご)・要支援(ようしえん)の認定には有効期間があります。厚生労働省の解説では、新規と区分変更(くぶんへんこう)の申請は原則6か月(状態により3〜12か月)、更新の申請は原則12か月(状態により3〜48か月)です。

期限が切れたらどうなる?
有効期間を過ぎるとサービスが使えなくなるので、満了までに更新の申請をします。体の状態が変わった時は、期間の途中でも変更の申請ができます(同じ解説)。

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それから1日︑
祖母は「1番」を
言いふらして歩いた︒

下町の商店街の豆腐屋の前。店主の年配の男性に、指を1本立てて得意げに話す割烹着の老婦人。

花岡 キヨ:1番だって
区の
お墨付き

少し後ろで、買い物袋を提げて頭を下げて回る若い男性。

豆腐は︑
また2丁
買っていた︒

花岡 圭:すみません
すみません

夜の台所。梅干しの瓶のふたを両手でひねっても開けられず、そっと棚に戻す老婦人の背中。

見ていないふりをした︒

翌朝、戸棚の梅干しの瓶のふたが、少しだけゆるめてある。瓶の横に、小さく折った紙。文字は読めない。

花岡 圭:︙︙俺だって
番台から
見てるよ

入院中の母にも︑
電話で知らせた︒

病院の談話室で、松葉づえを横に置いてスマホで話す中年の女性。笑っているが目元が少しうるんでいる。

圭の母(56)花岡 典子

花岡 典子(電話の声):要支援1?
あはは
お母さんらしい

花岡 典子(電話の声):あの人
昔から
試験には
強いのよ

花岡 圭:いや
試験じゃ
ないって

〈圭の記録〉11/14 10:00 商店街で「1番」の話を5回11/14 19:20 梅干しの瓶が開かない。黙って戻す11/15 1:30 まだ起きている。番台の鍵の場所を聞かれる

11月15日︑
午前2時50分︒

暗い中、番台の木の縁から滑り落ちる、しわのある小さな手の細い帯の寄り。

ガタン

夜の閉じた銭湯の脱衣所。高い番台の下の板の間に、寝間着で横に倒れている老婦人。一つだけ灯る電球。

音は︑
一つだけだった︒

暗い廊下を寝間着のまま裸足で走る若い男性。手にスマホの明かり。動きの線。

花岡 圭:ばあちゃん!

番台の下の板の間で、老婦人を抱き起こす若い男性。老婦人は手首を押さえ、天井の電球を見上げている。
抱き起こされたまま、天井の裸電球を見上げる老婦人の顔の寄り。痛みより、さみしさの目。

花岡 キヨ:︙︙お客さん
来ないね

祖母の肩を抱いたまま、うつむいて唇をかむ若い男性の横顔。電球の光。

花岡 圭:来ないよ
もう
来ないんだよ

祖母は︑
要支援1だった︒

紙の上では︒

第4話「1番だってさ」

つづく

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調査の日だけ、祖母は元気になる

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あなた伊吹に電話する線で、台詞を

AI圭「先生、夜中に落ちました」伊吹「今から行く。番台の上には、もう上げるな」。

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この話で分かること

要支援(ようしえん)と要介護(ようかいご)の違いは?

介護保険(かいごほけん)法の定義では、要介護は入浴・排せつ・食事などで常に介護が要ると見込まれる状態、要支援は常に介護が要る状態にならないための支援や、日常生活の支えが要ると見込まれる状態です。区分は要支援1・2と要介護1〜5の7段階で、どちらにも当たらない時は非該当(ひがいとう)です。

要支援(ようしえん)1で使えるサービスは?

介護予防(かいごよぼう)のサービスと、市区町村(しくちょうそん)の介護予防・日常生活支援総合事業(にちじょうせいかつしえんそうごうじぎょう)(総合事業(そうごうじぎょう))のサービスを使えます。総合事業の中身(通い・訪問・生活の支えなど)は市区町村ごとに違います。

条件・例外

何が使えるかは、住んでいる市区町村か地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターで確かめます。

物語との違い

作中の「区の体操教室」「手すりの相談」は例です。

要支援(ようしえん)のケアプランは誰が作る?

厚生労働省の解説では、要支援1・2の人の介護予防(かいごよぼう)ケアプランは地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターに相談して作ります。要介護(ようかいご)1以上の人は、居宅介護支援事業者(きょたくかいごしえんじぎょうしゃ)のケアマネジャーに頼みます。

介護認定(かいごにんてい)の有効期間(ゆうこうきかん)はどのくらい?

厚生労働省の解説では、新規と区分変更(くぶんへんこう)の申請は原則6か月(状態により3〜12か月)、更新の申請は原則12か月(状態により3〜48か月)です。期間を過ぎるとサービスが使えなくなるので、満了までに更新の申請をします。

この話の用語

要支援(ようしえん)と要介護(ようかいご)漫画の中で見る
現実の事実介護保険(かいごほけん)法の定義では、「要介護」は入浴・排せつ・食事などで常に介護が要ると見込まれる状態、「要支援」は常に介護が要る状態にならないための支援や、日常生活の支えが要ると見込まれる状態です。区分は要支援1・2と要介護1〜5の7段階で、どちらにも当たらない時は非該当(ひがいとう)です。
非該当(ひがいとう)漫画の中で見る
現実の事実要介護認定(ようかいごにんてい)で、要支援(ようしえん)にも要介護(ようかいご)にも当たらないと判定される事です。厚生労働省の解説では、相談の窓口で「基本チェックリスト」で状況を確かめ、認定を受けなくても総合事業(そうごうじぎょう)のサービスを使えるようにするとしています。
介護予防(かいごよぼう)・日常生活支援総合事業(にちじょうせいかつしえんそうごうじぎょう)(総合事業(そうごうじぎょう))漫画の中で見る
現実の事実市区町村(しくちょうそん)が中心になって、要支援(ようしえん)の人などに、通い・訪問・生活の支えなどのサービスを地域の実情に合わせて用意する事業です。厚生労働省の解説では、相談の窓口の多くは地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターで、介護の事業所のほか住民が主体のサービスなども選べるとしています。
介護予防(かいごよぼう)ケアプラン(介護予防サービス計画)漫画の中で見る
現実の事実どのサービスを、いつ、どれだけ使うかを決める計画です。厚生労働省の解説では、要支援(ようしえん)1・2の人の計画は地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターに相談して作り、要介護(ようかいご)1以上の人は居宅介護支援事業者(きょたくかいごしえんじぎょうしゃ)のケアマネジャーに頼むとしています。
認定の有効期間(ゆうこうきかん)漫画の中で見る
現実の事実要介護(ようかいご)・要支援(ようしえん)の認定には有効期間があります。厚生労働省の解説では、新規と区分変更(くぶんへんこう)の申請は原則6か月(状態により3〜12か月)、更新の申請は原則12か月(状態により3〜48か月)です。

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この話のあらすじ

11月13日、キヨの認定の結果は「要支援(ようしえん)1」だった。キヨは「1番だってさ、番台と同じだよ」と喜び、通知を額に入れようとして圭に止められる。翌日、地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センターの有馬が来て、要支援と要介護(ようかいご)は別の枠であること、要支援1でも介護予防(かいごよぼう)のサービスや区の総合事業(そうごうじぎょう)を使えること、使う前に介護予防ケアプランを作ること、初めての認定は原則6か月の期限つきであることを話す。キヨは「人の世話にはならない」と言い、商店街に「1番」を言いふらして歩く。梅干しの瓶のふたを開けられず黙って戻す祖母を、圭は見ていないふりをする。11月15日の午前2時50分、閉めた銭湯の番台から、キヨが落ちた。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

申請から認定調査、結果が出るまでの流れと、本人の前で言いにくい事の伝え方を、家族の側から描きます。

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