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第1話「月、14万円」

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。

日曜の昼の実家の居間。ちゃぶ台の上で、年金の封筒が湯のみの下にコースターのように敷かれている。左で60代の父が新聞を広げ、右で30代の娘が封筒を指さして身を乗り出す。

日曜の昼。実家の居間。

三枝 ほのか:ちょ
待って
それ
年金請求書
じゃん

年金請求書(ねんきんせいきゅうしょ)(事前送付用(じぜんそうふよう))の解説

現実の事実年金を受け取り始める年齢になる人に、日本年金機構がその年齢になる3か月前から送る請求書です。名前・生年月日・年金の加入の記録などが印字されています。年金は請求しないと受け取れず、この請求書を出せるのは、受け取り始める年齢になってからです。

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三枝 昭一:65に
なったら
開ける

胸の前に新聞を下げ、太い眉をしかめてこちらを見る60代の父の寄り。額に老眼鏡を上げている。

ほのかの父(再雇用・64)三枝 昭一

三枝 昭一:まあ
なんとかなる

あきれた顔でため息をつく30代の娘の寄り。肩にかけたトートバッグの口から、開けていない青い封筒の角がのぞく。

調味料の会社の営業事務(35)三枝 ほのか

三枝 ほのか:︙︙って
私も
開けてない

私のかばんにも︑
3か月前の封筒が
1通︒

三枝 節子(画面の外の声):もう2か月
そこに
あるのよ

三枝 節子:はいはい
今日こそ
開けましょ

ほのかの母(クリーニング店のパート・62)三枝 節子

居間に入ってくる60代の母。藍のエプロン、手首に輪ゴム。片手にお茶の盆、脇に分厚い家計簿をはさむ。
父の太い指が封筒をびりびりと破る寄り。ちぎれた封筒の細い紙の帯が舞い、絵の枠の右の線を越えて外へ飛び出す。

父が65歳になるのは︑
来月︒

三枝 節子(画面の外の声):金額は
去年の
ハガキよ

〈父のねんきん定期便(去年のハガキ)〉老齢年金の見込額:年168万円→ 月14万円

老齢年金(ろうれいねんきん)(老齢基礎年金(ろうれいきそねんきん)と老齢厚生年金(ろうれいこうせいねんきん))の解説

現実の事実国民年金や厚生年金(こうせいねんきん)に入っていた人が、決まった年齢になると受け取る年金です。全員が受け取る老齢基礎年金(1階)と、会社員などとして働いた時の給与に応じて上乗せされる老齢厚生年金(2階)の、2階建てになっています。

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三枝 昭一:ほら
14万あれば
十分だろ

三枝 節子:じゃあ
これ
見て

ちゃぶ台の上に開いた家計簿の寄り。罫線と数字の形だけで読めない。輪ゴムを手首にした母の指が、1つの列の下をなぞる。

〈三枝家の毎月〉出る:26万円入る:父の年金 14万円(65歳から)入る:母のパート 4万円足りない:8万円(母の年金は3年後から)

三枝 ほのか:8万!?

三枝 昭一:いや
まだ
働けるし

三枝 ほのか:ねんきん定期便
の額って
手取り?

ねんきん定期便(ていきびん)の解説

現実の事実日本年金機構が、年金に入っている人に毎年の誕生月に送る、年金の記録と額の知らせです。35歳・45歳・59歳は封書で全部の期間の記録、ほかの年はハガキで届きます。50歳以上の人には、今の加入の条件が60歳まで続くと見た老齢年金(ろうれいねんきん)の見込額、50歳未満の人には、これまでの加入の実績に応じた年金額が書かれています。

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〈年金から引かれる物〉介護保険料・国民健康保険料・住民税など(住む市区町村や所得で違う)

三枝 昭一:は?
もっと
減るのか

三枝 ほのか:私のは
大丈夫
だよね︙︙

ちゃぶ台の前で、娘が自分の青い封筒をおそるおそる開ける。後ろで父と母が首を伸ばしてのぞきこむ。

〈ほのかのねんきん定期便(35歳)〉これまでの加入実績に応じた年金額:年 約57万円→ 月 約4万7,000円

細い横の帯の寄り。丸い眼鏡の奥で、まん丸に見開いた娘の目。居間の畳の上に、紙を持ったまま後ろへひっくり返る娘。ちゃぶ台の向こうで父が吹き出し、母が湯のみを持ったまま目を丸くする。

三枝 ほのか:月5万!?

三枝 昭一:わはは
おれより
ひどいな

三枝 節子:笑ってる
場合じゃ
ないでしょ

畳に座り直し、紙の小さな字を指で確かめながら眉を寄せる娘の寄り。

三枝 ほのか:50歳未満は
これまでの
加入実績で
計算︙︙?

〈見込額の書き方〉50歳未満:これまでに払った分で計算50歳以上:今の条件で60歳まで続けると見た額

三枝 ほのか:あっ
今までの
分だけだ

三枝 ほのか:このコード
読むと
シミュレーター
だって

公的年金(こうてきねんきん)シミュレーターの解説

現実の事実厚生労働省の、将来の年金の額を簡単に試算できる道具です。ねんきん定期便(ていきびん)の二次元コードをスマホで読み、生年月日を入れると、これから働く年数・年収・受け取り始める年齢を変えて、年金の額の増え方を見られます。ID やパスワードは要りません。簡単な試算なので、実際の額と同じになるとは限りません。

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スマホの画面の寄り(光と目盛りの形だけで字は読めない)。娘の指が目盛りをすべらせる。後ろから、老眼鏡をかけた父がのぞきこむ。

〈公的年金シミュレーター(ほのか)〉60歳まで、今の年収で働く65歳から:月 約13万円(目安)

三枝 ほのか:えっ
13万!?

三枝 ほのか:見えて
なかった
だけか

老眼鏡を外し、ちゃぶ台の上の自分の破れた封筒を黙って見下ろす父の寄り。

三枝 昭一:毎年
ちゃんと
見て
なかったな

三枝 昭一:年金だけで
暮らせると
思ってたよ

ちゃぶ台を囲む3人。母が家計簿に新しい行を書き足し、娘が笑って母の肩に手を置く。父は照れて新聞を広げかける。

三枝 ほのか:だよね
一緒に
計算しよ

三枝 昭一:よし
おれも
増やすぞ

三枝 昭一:受け取りを
70まで
遅らせる

三枝 節子:70まで
って

静かに顔を上げ、半目でこちらを見る母の寄り。目だけが鋭い。

三枝 節子:会社
来月で
終わり
でしょ

居間。目を見開いて固まった父の手から新聞がすべり落ち、絵の枠の左の線を越えて外へ出る。右で娘が父を見る。

三枝 ほのか:ちょ
待って
え?

〈70歳まで〉年金:0円給料:0円あと5年

父の再雇用は︑
来月の誕生日で
終わる︒

第1話「月、14万円」

つづく

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あなた父が「70まで待つ」と言って母に止められた後の、夕ごはんの場面を考えたい

AI誰も年金の話をしないまま、母が父の茶碗にだけ多めにご飯をよそうと、母が怒っていない事が伝わります。ほのかが自分のスマホでもう一度シミュレーターを開き、父の分を入れられるか聞く形にすると、次の話の繰下げにつながります。

あなた父の最初の一言を

AI昭一「……70まで、何して食うんだろうな、おれ」。絵:箸を止めたまま、居間の隅の緑の封筒を見る父。

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この話で分かること

ねんきん定期便(ていきびん)の見方は? どこを見ればいい?

50歳以上の人は「老齢年金(ろうれいねんきん)の見込額」を見ます。今の加入の条件が60歳まで続くと見た額です。50歳未満の人の額は「これまでの加入実績に応じた年金額」で、これまでに払った分だけで計算した額なので、これから働く分は入っていません。35歳・45歳・59歳には封書で全部の期間の記録が届くので、抜けている期間が無いかも見ます。

条件・例外

見込額は、受け取り始める年齢・これからの働き方・制度の改正で変わります。

ねんきん定期便(ていきびん)の年金額は、手元に入る額?

年金からは、介護保険(かいごほけん)料・国民健康保険料(75歳からは後期高齢者医療(こうきこうれいしゃいりょう)保険料)・住民税などが引かれる(特別徴収)ことがあり、手元に入る額は少なくなります。暮らしの計算は、引かれた後の額で考えます。

条件・例外

引かれる物と額は、住んでいる市区町村・年金の額・所得で違います。

物語との違い

作中の「月14万円」は、三枝家の父の、引かれる前の見込額です。

50歳未満の人が、将来の年金の目安を知るには?

厚生労働省の公的年金(こうてきねんきん)シミュレーターが使えます。ねんきん定期便(ていきびん)の二次元コードをスマホで読み、生年月日を入れると、これから働く年数・年収・受け取り始める年齢を変えて試算できます。ID やパスワードは要りません。

条件・例外

簡単な試算なので、実際の額と同じになるとは限りません。詳しい記録と見込みは、日本年金機構の「ねんきんネット」で確かめられます。

物語との違い

作中の「65歳から月約13万円」は、ほのかの条件で出した作中の目安です。

年金は、いつ・どうやって受け取り始める?

年金は請求しないと受け取れません。受け取り始める年齢になる人には、その年齢になる3か月前から、日本年金機構が「年金請求書(ねんきんせいきゅうしょ)(事前送付用(じぜんそうふよう))」を送ります。請求書を出せるのは、受け取り始める年齢になってからです。

条件・例外

年金の記録に空白の期間や誤りがある時は、出す前に年金事務所で相談するよう案内されています。

この話の用語

年金請求書(ねんきんせいきゅうしょ)(事前送付用(じぜんそうふよう))漫画の中で見る
現実の事実年金を受け取り始める年齢になる人に、日本年金機構がその年齢になる3か月前から送る請求書です。名前・生年月日・年金の加入の記録などが印字されています。年金は請求しないと受け取れず、この請求書を出せるのは、受け取り始める年齢になってからです。
老齢年金(ろうれいねんきん)(老齢基礎年金(ろうれいきそねんきん)と老齢厚生年金(ろうれいこうせいねんきん))漫画の中で見る
現実の事実国民年金や厚生年金(こうせいねんきん)に入っていた人が、決まった年齢になると受け取る年金です。全員が受け取る老齢基礎年金(1階)と、会社員などとして働いた時の給与に応じて上乗せされる老齢厚生年金(2階)の、2階建てになっています。
ねんきん定期便(ていきびん)漫画の中で見る
現実の事実日本年金機構が、年金に入っている人に毎年の誕生月に送る、年金の記録と額の知らせです。35歳・45歳・59歳は封書で全部の期間の記録、ほかの年はハガキで届きます。50歳以上の人には、今の加入の条件が60歳まで続くと見た老齢年金(ろうれいねんきん)の見込額、50歳未満の人には、これまでの加入の実績に応じた年金額が書かれています。
公的年金(こうてきねんきん)シミュレーター漫画の中で見る
現実の事実厚生労働省の、将来の年金の額を簡単に試算できる道具です。ねんきん定期便(ていきびん)の二次元コードをスマホで読み、生年月日を入れると、これから働く年数・年収・受け取り始める年齢を変えて、年金の額の増え方を見られます。ID やパスワードは要りません。簡単な試算なので、実際の額と同じになるとは限りません。

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この話のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

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この話のあらすじ

35歳の三枝 ほのかは、日曜の実家で、来月65歳になる父・昭一が年金請求書(ねんきんせいきゅうしょ)の封筒を湯のみの下に敷いているのを見つける。母・節子にうながされて父が開けると、ねんきん定期便(ていきびん)の見込額は月14万円。母の家計簿では家の毎月の出る額が26万円で、65歳から毎月8万円足りない。しかも年金からは介護保険(かいごほけん)料や住民税なども引かれる。ほのかも3か月開けていなかった35歳の封書を開けると、年金額は月約4万7,000円。ひっくり返ったほのかは、50歳未満の額は「これまで払った分だけ」の計算だと気づき、公的年金(こうてきねんきん)シミュレーターで、60歳まで今の年収で働けば月約13万円の目安になると知る。父は「年金だけで暮らせると思ってたよ」とつぶやき、70歳まで待って増やすと言い出す。母は静かに言う。「会社、来月で終わりでしょ」。

作者

トゥーンエル編集部

トゥーンエルを運営する H株式会社の編集部です。ミステリーや家族の物語など、仕事の題材に限らない作品を作っています。

この作品について

父の年金は、月14万円。家の毎月は、26万円。届いた封筒を1通ずつ開けながら、三枝家と一緒に、自分の家の数字も数えてみてください。

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