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第1話「32台売れた月に、口座が減った」

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縦に長い絵。上に、晴れた昼の国道沿いの中古車の展示場。並んだ車のフロントガラスに黄色い値札。真ん中に、事務所の中のホワイトボードの前で、ジャンパーの男性がクラッカーを鳴らし、作業着の年配の男性と、エプロンの年配の女性が拍手している。下に、事務所の入口の自動ドアが開き、黒いリュックを背負い、ノートパソコンを小脇に抱えた眼鏡の若い男性が、拍手の輪をぽかんと見ている。

国道沿いの︑
大川モータース︒

今月︑32台売れた︒
店を開いてから︑
いちばん多い

一同:過去最高だー!

その日の午後︑
店に来た人がいた

細い横の帯の寄り。机の上の、記帳したばかりの開いた通帳。カーディガンの袖の年配の女性の手が置いたところを、向こうから眼鏡の若い男性がのぞき込む(字は読めない)。

〈通帳〉先月末の残高 4,812,000円今月末の残高 3,947,000円

事務所の机の横。ノートパソコンを抱えたまま、通帳をのぞいて固まる、短い黒髪に寝ぐせが1房はねた、銀縁の眼鏡の30歳ほどの男性。黒いリュックを背負っている。後ろに、黄色い値札を付けた展示場の車が並ぶ。

中古車店の仕組みを作る開発者車 健吾

車 健吾(つぶやき):︙︙減ってる

机の横から身を乗り出して笑う、日焼けした40代の男性。胸に白い名札の付いた、紺の作業ジャンパー。手のクラッカーから出た紙吹雪が、絵の枠の上の線を越えて舞い上がっている。奥の机で、作業着の年配の男性があきれ顔。

社長(2代目)大川 剛志

大川 剛志:車さん
だっけ?
車屋に車さん!
縁起がいいな!

車 健吾:よく言われます

島崎 修:社長
それ今日
3回目

大川 剛志:で!
店のテレビに
売れた台数を
でっかく出す
画面!

大川 剛志:作って
くれるんだろ?

車 健吾:あいえ
作る前に
仕事を
見に来ました

車 健吾:社長
32台売れて
口座は
86万5千円
減ってます

大川 剛志:はっはっ
売れてんだから
来月には
増えるって!

車 健吾:じゃあ
どの車で
いくら
残りました?

大川 剛志:そりゃ︙︙
島崎さん?

作業着のつなぎに首にタオルの、白髪まじりの角刈りの50代の男性が、ノートパソコンの表を指でたたいて見せる。胸ポケットに出品票の束。

仕入れ担当。毎週オートオークションへ島崎 修

島崎 修:ふん
粗利なら出てる
売値から
仕入れ値を
引くだけだ

粗利(売上総利益(うりあげそうりえき))の解説

現実の事実粗利は「売上総利益」のことで、売上から売上原価を引いた額です(財務諸表等規則 第83条)。中古車1台なら、売値から仕入れの代金を引くだけでなく、その車を仕入れるためにかかった費用と、売るために直接かけた費用も引いて出します。

売値から仕入れ値を引いた額は、粗利?
仕入れの代金のほかに、その車にかかった費用(オークションの手数料・陸送費(りくそうひ)・整備など)があれば、それも引かないと1台の粗利になりません。どの費用を原価に入れるかは、会社の会計の決め方と税理士に確かめます。

出典

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〈島崎さんの表〉白い SUV 売値1,980,000円 仕入れ値1,650,000円 粗利330,000円軽 売値580,000円 仕入れ値420,000円 粗利160,000円(32台、全部黒字)

車 健吾:じゃあ
この紙の束は?

事務所の隅の机。壁一面に白い付箋(黄色は1枚だけ)。机の上に、ひもで縛った紙の束がいくつも。老眼鏡を額に上げた花柄のエプロンの60代の女性が、束をぽんとたたく。横で、ノートパソコンを抱えた眼鏡の若い男性が束をのぞく。

パートの事務。20年目蓮見 和代

蓮見 和代:ああ
それはね
車の名前が
書いてない紙

蓮見 和代:オークションの
計算書でしょ
陸送屋さんの
請求書
整備工場のも

車 健吾:えっ
どの車の分か
誰か
分かります?

蓮見 和代:付箋に
書いてあるわよ

蓮見 和代:黄色は
「たぶん社長」
青は
「たぶん
島崎さん」

車 健吾:全部
たぶん
なんですね

その夜︒
事務所に残ったのは︑
健吾1人だった

夜の事務所。白い蛍光灯の下、机いっぱいに広げた請求書と計算書。開いたノートパソコンの横で、眼鏡の若い男性が小さなラベルプリンターから出た白いシールを、紙の隅に1枚ずつ貼っていく。窓の外は暗い。差し込みの小さな絵。オークションの計算書の1行を指でたどる手と、隅に白いシールを貼った陸送の請求書を重ねる、もう片方の手。

車 健吾:よし
まず1台
手でやる

計算書にある車台番号を︑
表の1行にする︒
同じ車の紙に︑
同じ番号を貼っていく

車 健吾(つぶやき):白い SUV
社長がいちばん
自慢してた車

〈白い SUV(2022年式)〉売値 1,980,000円仕入れ(オークションで落札) −1,650,000円落札料(オークションの手数料) −27,500円陸送費(会場→店) −33,000円陸送費(店→整備工場→店) −22,000円整備・板金 −198,000円仕上げの洗車・コーティング −66,000円この車に残ったのは −16,500円

陸送費(りくそうひ)と車の原価の解説

現実の事実陸送費は、車をトラックなどで運ぶ費用です。法人税法施行令第32条は、購入した棚卸資産の取得価額に、購入の代価と、引取運賃(うんちん)・購入手数料など購入のために要した費用、販売の用に供するために直接要した費用を含めると定めています。中古車店が仕入れた車を店まで運ぶ陸送費は、その車の取得価額に入る費用にあたります。

陸送費の請求書が、何台分かまとめて来たら?
1台ごとに分けて、その車の原価に入れます。どの車の分か書いていない請求書は、後から分けられなくなります。

出典

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昼の展示場。黄色い値札の付いた白い SUV。値札に字は無く、黄色だけがくっきり目立つ。

いちばん高く売れた車は︑
赤字だった

翌朝︒

朝の事務所の隅。壁一面の付箋の1枚ずつに、小さな白いシールが貼られている。老眼鏡を下ろしてそれを見つめる、花柄のエプロンの年配の女性。奥の机では、開いたノートパソコンの横に突っ伏して寝ている眼鏡の若い男性。

蓮見 和代:あらっ
付箋に
シールが
貼ってある!

車 健吾:車台番号の
下4桁です

朝の事務所。目を見開いて固まる社長。その横で、眉をひそめる作業着の年配の男性。社長の手から落ちた紙が、絵の枠の下の線を越えて手前へ舞う。

大川 剛志:赤字︙︙?

大川 剛志:あのSUVが?

島崎 修:板金は
俺が出したんだ

島崎 修:直さなきゃ
あの車は
売れなかった
ぞ

開いたノートパソコンの横に両手をついて、まっすぐ前を見る眼鏡の若い男性の寄り。後ろの壁に、シールの貼られた付箋。

車 健吾:はい
直したのは
正しいと
思います

車 健吾:ただ
その分が
数字に
入ってなかった
だけなんです

島崎 修:︙︙

社長が頭をかきながら、事務所のホワイトボードを見上げる。ジャンパーの背中。ボードの字は見えない。

大川 剛志:で
残りの
31台は?

車 健吾:それが
1台で
3時間
かかって︙︙

大川 剛志:うわ
まずい
月末に
信金の
面談があるんだ

大川 剛志:「車ごとの
利益の表を
持って来い」
ってさ

車 健吾:社長
テレビの画面
後回しに
しましょう

大川 剛志:︙︙はい

〈利益の見える車〉 1台/32台〈面談まで〉 21日

店の自動ドアが開き、首からストラップでタブレットを下げた、明るい茶のショートボブの30代の女性が、茶封筒を持って入ってくる。後ろに、国道沿いの展示場の車と、小さな事務所。

向井 美和:おはよ
菅野くんが
また
入れ違えてた

同じ女性が、机の前の椅子に腰かけ、茶封筒から請求書を1枚出して、机の上に置く。

向かいの店「向井オート」の社長向井 美和

向井 美和:これ
そっちの
SUV の分ね

車 健吾:えっ
どうして
どの車の分か
分かるんですか

封筒を軽く振って笑う、ショートボブの女性。胸のタブレットの画面は遠くて字が読めない。

向井 美和:ふふ
うちは
車1台ずつ
見えてるから

車 健吾:︙︙見せて
ください
どう作って
あるのか

開いたノートパソコンを胸に抱えて一歩前へ出た眼鏡の若い男性の背中ごしに、奥で立ち上がる社長が手を伸ばしている。画面は白く、字は読めない。

大川 剛志:車さん!
向かいに
見せるな!

第1話「32台売れた月に、口座が減った」

つづく

次の話 10月28日(水)更新

原作・脚本
H株式会社

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

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あなた社長に「うちの表を、向かいに見せるな」と止められた健吾が、その夜どうするか考えたい

AI健吾が向かいに行かず、残り31台の紙に車の番号のシールを貼りはじめる形にすると、社長への遠慮と、仕組みを作る人としての意地の両方が出せます。

あなたその線で、台詞を

AI健吾「1台3時間なら、31台で93時間……」蓮見「付箋、使う? 黄色はたぶん社長」健吾「シールで足ります」

送る質問あらすじを踏まえて、次の話の展開を一緒に考えて

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この話で分かること

中古車の粗利は、どう計算する?

粗利(売上総利益(うりあげそうりえき))は、売上から売上原価を引いた額です。中古車1台なら、売値から、仕入れの代金に加えて、その車を仕入れるためにかかった費用(オークションの手数料・陸送費(りくそうひ)など)と、売るために直接かけた費用を引いて出します。

条件・例外

どの費用を車の原価に入れるかは、会社の会計の決め方によります。税理士に確かめてください。

車が売れているのに、口座のお金が減るのはなぜ?

売れた台数や売上の額と、1台ごとに残った額(粗利)は別の数字です。この話では、陸送費(りくそうひ)や整備の請求書がどの車の分か分からないまま、売れた車の中に赤字の車が混ざっていました。

条件・例外

口座の残高は、入金と支払いの時期のずれでも動きます。残高だけでは、1台ごとの利益は分かりません。

物語との違い

作中の店・車・金額は架空です。

陸送費(りくそうひ)は、経費? それとも車の原価?

法人税法施行令第32条は、購入した棚卸資産の取得価額に、引取運賃(うんちん)・購入手数料など購入のために要した費用を含めると定めています。仕入れた車を店まで運ぶ陸送費は、その車の取得価額に入る費用にあたります。

条件・例外

売った車をお客さんへ届ける時の陸送費など、仕入れの後の費用は扱いが違うことがあります。決め方は税理士に確かめてください。

請求書が、どの車の分か分からない時は?

この話では、車1台を表の1行にして、計算書(けいさんしょ)にある車台番号を行の目印にしました。陸送や整備の請求書にも同じ番号を書き足して、同じ車の紙を集めてから、1台の数字を出しています。

条件・例外

請求書に何が書いてあるかは、取引先によって違います。車の名前も番号も無い請求書は、受け取った時に、どの車の分かを書き足しておかないと、後から分けにくくなります。

物語との違い

作中のやり方(シールを貼る)は、作中の店の例です。

この話の用語

粗利(売上総利益(うりあげそうりえき))漫画の中で見る
現実の事実粗利は「売上総利益」のことで、売上から売上原価を引いた額です(財務諸表等規則 第83条)。中古車1台なら、売値から仕入れの代金を引くだけでなく、その車を仕入れるためにかかった費用と、売るために直接かけた費用も引いて出します。
陸送費(りくそうひ)と車の原価漫画の中で見る
現実の事実陸送費は、車をトラックなどで運ぶ費用です。法人税法施行令第32条は、購入した棚卸資産の取得価額に、購入の代価と、引取運賃(うんちん)・購入手数料など購入のために要した費用、販売の用に供するために直接要した費用を含めると定めています。中古車店が仕入れた車を店まで運ぶ陸送費は、その車の取得価額に入る費用にあたります。

出典

更新日:

この話のこと、いつもの AI に聞いてみてください。

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この話のあらすじ

国道沿いの中古車店・大川モータースは、今月32台を売って過去最高。その日の午後、中古車店の仕組みを作っている開発者・車 健吾が、仕組みを作る前に現場を見るため店に来る。社長の大川が頼みたいのは「売れた台数を店のテレビに大きく出す画面」。けれど通帳の残高は、先月より86万5千円減っていた。健吾が「どの車で、いくら残りましたか」と聞くと、仕入れ担当の島崎の表では32台すべて黒字。けれど、パートの蓮見の机には、どの車の分か書いていない紙の束(オークションの計算書・陸送費・整備の請求書)が残っていた。健吾はその夜、計算書の車台番号を表の1行にし、同じ車の紙に同じ番号のシールを貼って、社長の自慢の白い SUV の数字を出す。売値198万円から、仕入れ・オークションの手数料・2回の陸送費・整備と板金・仕上げを引くと、残ったのは −1万6,500円。翌朝、大川は、月末の信用金庫の面談に「車ごとの利益の表」が要ると明かし、健吾はテレビの画面を後回しにさせる。そこへ向かいの店「向井オート」の社長・向井が、入れ違えた請求書を持って来て「そっちの白い SUV の分ね」と言い当てる。

作者

H株式会社

トゥーンエルを運営する会社です。H株式会社の「AXタスクフォース」は、AI で仕事の進め方を変える、現場の実行チームです。

この作品について

中古車1台の利益(粗利)の出し方と、陸送費・オートオークション(AA)の計算書・下取りなどが、どの車の数字になるかを、法令(e-Gov)と国税庁の資料で確かめて描いています(確かめた出典は各話の解説に)。作中の店(大川モータース・向井オート)・人物・車・金額は架空で、実在の会社・人物とは関係ありません。主人公の車健吾も架空の人物です。作中の仕組みの説明は、CARACT の公式サイト(caract.app)に書かれている範囲にとどめています。個別の会計・税の判断は、税理士や税務署に確かめてください。

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