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第6話「8時59分60秒」

この作品には、H株式会社のサービスが登場します

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。
作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。

壁の丸い時計の細い横長の寄り。細い秒針が、12の目盛りの真上に重なる。朝の開発部の机の島。鬼塚部長・宇佐美・ひげの年配の社員・短い髪の社員・律が、並んで画面を見つめる。画面は向こう向き。

7月1日 8:59:59

サーバーの時刻(日本時間)08:59:5908:59:6009:00:00

1秒だけ長い、
1分。

出荷の記録(本番)08:59:59 出荷の記録 OK08:59:60 出荷の記録 OK09:00:00 出荷の記録 OK

短い髪の社員:と︑通った︙︙

年配の社員:60秒を
受け取ったぞ!

椅子の背にもたれかけて、息を吐きかける宇佐美。肩の力が少し抜ける。

鬼塚:まだだ!

鬼塚:9時5分の
締めまで
誰も立つな

キーボードの上の律の手。画面の光が指に当たる。

律:締めの前に、ほかに見る所は?AI:①出荷の記録の時刻の並びが、前後していないか ②同じ時刻の記録が重なっていないか ③記録を作る端末の時計が、サーバーと同じ時計で動いているか。本日の残り:964

律:③︙︙
端末の時計か

7月1日 9:05:00

客先の物流倉庫の中。動き続けるベルトコンベアの上を、段ボールが流れていく。上の警告灯は消えたまま。

出荷の締め 開始

前の人生で、
止まっていたベルトが、
動いていた。

第6話「8時59分60秒」

09:05:12 出荷の締め:警告同じ時刻の出荷の記録が 37件、重なっています記録を作った端末:倉庫のハンディ端末(4台)

画面の警告の赤い光を顔に受け、椅子から腰を浮かせてキーボードに手を伸ばす宇佐美。

宇佐美:私
見ます――

宇佐美の手首を、横から軽く押さえる律の手の寄り。

律:一人で
やらない!

前の人生の、この朝。
宇佐美さんは、
一人で直して、
倒れた。

律:重なりは
倉庫の
端末です

律:端末だけ
別の時計で
動いてる

鬼塚:よし
客先には
俺が言う!

机の島で、それぞれに動き出す社員たち。受話器を取る鬼塚、ノートパソコンを抱えて立つひげの年配の社員、紙の表を広げる短い髪の社員。画面は向こう向き。

年配の社員:端末の番号は
俺が出す

短い髪の社員:じゃあ
重なった37件
並べます

宇佐美:37件は
端末の番号と
読み取った順

座ったまま、画面を指さして落ち着いて指示を出す宇佐美。ベージュのカーディガン。

宇佐美:それで
並べ直せる

宇佐美:あ︑締めは
止めないで

宇佐美:並べ直した
物から
流して

09:09:40 重なった記録 37件 → 並べ直し 37件09:11:58 出荷の締め 再開09:12:03 出荷の締め 完了

椅子に深く座ったまま、天井を見上げる宇佐美。机の上に、律が置いた温かい缶コーヒー。

7月1日 9:12

前の人生で、
宇佐美さんが倒れた朝。

宇佐美さんは、
椅子に、座っていた。

宇佐美:︙︙座った
まま
終わった

律:ほら
コーヒー
ぬるくなる前に

障害の記録(7月1日)起きてから、気づくまで:0分(締めの警告)起きてから、直るまで:7分(3月の障害:気づくまで 23日、直るまで 24日)

鬼塚:7分だ

受話器を置き、腕を組んで鼻で笑う鬼塚部長。まんざらでもない顔。

鬼塚:︙︙3月は
24日だった

黒川:出荷
止まって
ませんね

客先の物流会社の事務所。電話を耳に当て、手元の報告の紙に赤いペンで丸を付ける黒川課長。

黒川:報告
理由ごと
ください

朝の光が入る開発部の窓辺に立つ律。ガラスに、机の島で笑い合う皆が映り込む。

変えられた。

前の人生では、
うるう秒は、
やがて入れなくなる
方へ動いていた。

2022年に、世界の時刻の決まりの場で、
そう決まった。

うるう秒のこれから(2022年の国際度量衡総会(こくさいどりょうこうそうかい))の解説

現実の事実2022年11月の第27回 国際度量衡総会(CGPM)は、地球の自転に基づく時刻(UT1)と協定世界時(きょうていせかいじ)(UTC)の差の上限を、2035年までに大きくすると決めました。差の上限が大きくなれば、うるう秒を入れる回数は減ります。

出典

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おはようございます。 ――今日の残りの分も、使いますか?本日の残り:951

律:今日は
もういい

宇佐美:ねえ
律くん

開発部の机の横。缶コーヒーを両手で持った宇佐美が、律の顔をのぞき込むように首をかしげる。

宇佐美:なんで
7月1日だって
分かったの?

律:か︑勘です

宇佐美:ふふ
新人の勘
当たりすぎ

別の会社の暗い事務所。天井の赤い警告灯が回り、いくつもの画面が赤く光る。人影が走る。

同じ朝。
9:00。

同じ事務所の窓際。受話器を耳に当てたまま、表情を消して立ち尽くす辻堂。赤い光が顔に当たる。

辻堂:︙︙止まった?

辻堂:前の人生と
同じ所で――

辻堂の会社の客先 物流の基幹システム09:00 から 出荷が止まっています

律の机の上で、スマホが震えて光る。画面の名前は読めない。

着信:辻堂 慧

受話器を耳に当てる律の横顔。窓の朝の光が、半分だけ当たる。

辻堂:南雲

辻堂:︙︙手を
貸せ

第6話「8時59分60秒」

つづく

次の話 10月31日(土)更新

原作・脚本
H株式会社

制作に生成 AI を使用(生成 AI の使い方)

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あなた宇佐美の一言を足したい

AI宇佐美「今度は、私が一緒に行く」。絵:鞄を肩にかけ、律の机の横に立つ宇佐美。

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この話で分かること

うるう秒が入ると、システムには何が起きる?

うるう秒の日は、1分が61秒になり、時刻に「60秒」が現れます。総務省と NICT は2015年の発表で、通信のネットワークやコンピューターの運用は正確な時刻に頼っていて、時刻の扱いを誤るとシステムの不具合につながるおそれがあると知らせていました。

物語との違い

作中で問題になったのは、秒の値を0〜59だけで検査していた出荷の記録と、サーバーと別の時計で動いていた倉庫の端末です。どちらも物語の中の不具合です。

日本のうるう秒は、なぜ朝の8時59分60秒?

うるう秒は協定世界時(きょうていせかいじ)(UTC)の日付の変わり目に入ります。2015年は UTC の6月30日23時59分60秒で、日本時間は UTC より9時間進んでいるため、日本では7月1日の午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が入りました。

うるう秒は、なぜ入れる?

地球の自転は一定ではないため、原子時計(げんしとけい)に基づく時刻と、天文の観測に基づく時刻の差を約0.9秒以内に収めるように、1秒を入れて調整します。入れるかどうかは国際機関の IERS が決め、日本では NICT が標準時に入れます。

うるう秒は、なくなる?

2022年の第27回 国際度量衡総会(こくさいどりょうこうそうかい)は、地球の自転に基づく時刻(UT1)と UTC の差の上限を、2035年までに大きくすると決めました。上限が大きくなれば、うるう秒を入れる必要は減ります。

障害が起きてから直るまでの時間(MTTR)を短くするには?

Google の SRE の本は、障害への対応の良し悪しを見るのに最も関係の深い数字は、対応する人たちがどれだけ早くシステムを健全な状態に戻せるか(MTTR)だと書いています。

物語との違い

作中では、締めの警告ですぐに気づき、一人に任せず役割を分けて当たる事で、7分で戻しています。「7分」「37件」は物語の中の数字です。

この話の用語

うるう秒のこれから(2022年の国際度量衡総会(こくさいどりょうこうそうかい))漫画の中で見る
現実の事実2022年11月の第27回 国際度量衡総会(CGPM)は、地球の自転に基づく時刻(UT1)と協定世界時(きょうていせかいじ)(UTC)の差の上限を、2035年までに大きくすると決めました。差の上限が大きくなれば、うるう秒を入れる回数は減ります。

出典

更新日:

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この話のあらすじ

2015年7月1日の朝、開発部のチームは画面の前で8時59分60秒を待つ。直した出荷の記録の検査は「60秒」を受け取り、出荷は止まらない。鬼塚 部長は「9時5分の締めまで誰も立つな」。律が AI に締めの前に見る所を聞くと、答えの一つは「記録を作る端末の時計が、サーバーと同じ時計で動いているか」。9時5分12秒、締めの処理が、倉庫のハンディ端末の記録37件の時刻の重なりを警告する。前の人生のこの朝、宇佐美は一人で直して倒れた。腰を浮かせた宇佐美の手を律が止め、鬼塚は客先へ、ほかの2人は端末の番号と記録の並べ直しへ。宇佐美は座ったまま、端末の番号と読み取った順で並べ直す手順を出す。9時12分、締めは終わる。起きてから直るまで7分(3月の障害は24日)。宇佐美は倒れなかった。客先の黒川は「報告を、理由ごと」と言う。同じ朝の9時、辻(つじ)堂の会社の客先で、物流の基幹システムの出荷が止まる。律のスマホが鳴る。辻堂「南雲。手を、貸せ」。

作者

H株式会社

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この作品について

障害の振り返り方、残業の上限、うるう秒や日付の境目のバグまで、開発の現場で実際に起きる困り事と、AI に任せる所・人が決める所の線が見えてきます。

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