第2話

第2話「流しか、付け待ちか」

晴れた朝の王都の大通り。何台もの空の辻馬車が、客を探してゆっくり行き交う。

晴れた朝。
王都の大通りを、
空の馬車が流れていく。

チカ:あの馬車の
ほとんどが、
空で走ってる。

辻馬車の車輪の軸に、木の数え木を取り付ける手。「カチ」の描き文字。

チカ:車輪が一回まわるごとに、
一つ進む数え木です。

チカ:客が乗っている間だけ、
こっちの目盛りに
切り替えます。

腕を組んで眉をひそめるガロと、数え木を指さして話すチカ。

ガロ:そんな物で、
何が分かる。

実車率客を乗せて走った距離 ÷ 走った距離の全部 × 100空で走った分だけ、下がる。

チカ:灰馬組は18%。
十里走って、
客を乗せてたのは
二里もないんです。

ガロ:流さなきゃ、
客は見つからねえ。
二十五年、
そうしてきた。

ぶかぶかの帽子をかぶったそばかすの少年が、手を挙げて前に出る。

灰馬組・見習い御者ピム

ピム:じゃあ、おれは
城門広場で
待ってみる!

一日だけ、比べる。
流すガロと、
付け待ちのピム。

流し:走りながら、手を挙げる客を探す付け待ち:乗り場に並んで、客が来るのを待つ

城門広場の馬車溜まり。辻馬車が列になって客を待っている。
人通りの多い市場の通りを、左右を見ながら馬車を走らせるガロ。

ガロ:乗るか!
東門まで行くぞ!

馬車溜まりの列で、御者台に座ったまま退屈そうに空を見上げるピム。日の影が長く伸びている。

ピム:……まだ、
三台前……。

色の抜けた記憶。夜の駅前のタクシー乗り場に、空車のタクシーが長い列を作っている。

駅の乗り場で、
一時間待って一人。
そんな夜もあった。

夕方の馬小屋。疲れた顔のガロとピムの前で、チカが帳面に数字を書き込む。
机に並べた二つの数え木。目盛りの位置が違う。

一日の比べ(数え木と帳面から)ガロ(流し) 実車率 21% 乗せた客 9組ピム(付け待ち) 実車率 46% 乗せた客 4組ピムが乗り場で待った時間 五刻

ピム:おれの勝ち!

ガロ:客は、
俺の方が倍だ。

顎に手を当て、帳面の数字をじっと見るチカの顔。

チカ:二人とも、
正しい。

チカ:実車率は、距離の割合。
待っている間は
走らないから下がらない。
でも、その間は稼げない。

チカ:だから、距離と時間の
両方を見るんです。

流しと付け待ちの使い分け人が道にあふれる時間・場所 → 流す人が一か所から出てくる時間・場所 → 待つ

馬小屋の壁に、チョークで描いた王都の地図。時間ごとの印が書き込まれている。

灰馬組の一日(チカの表)朝 大通りと市場を流す昼 施療院と宿の前で待つ夕〜閉門 劇場・大神殿で待ち、東門へ

朝の大通りで、手を挙げた商人を拾うガロの馬車。
施療院の入口で、杖の老婦人の手を取って馬車に乗せるピム。

灰馬組 実車率 18% → 24%月末まで 23日

ガロ:……ふん。
朝の大通りは、
悪くねえ。

城門広場に、金の獅子の紋の付いた立派な馬車の列が入ってくる。「ザッ」の描き文字。
金の刺繍の黒い外套を着た細身の男が、薄く笑ってこちらを見下ろす。

金獅子商会・配車頭(辻馬車二百台と飛竜便)ヴィクトル

ヴィクトル:本日より、
城門広場の馬車溜まりは、
金獅子商会の専用だ。
ギルドの許しもある。

ヴィクトル:小さな組は、
流していればいい。

夕暮れの影の中、唇をかんで前を見るチカの目。

チカ:いちばんの
待つ場所を、
取られた。

空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜

第2話「流しか、付け待ちか」終

この作品を読んだあなたへ

この話で分かること

タクシーの実車率とは?

走った距離のうち、客を乗せて走った距離の割合です。国土交通省の統計の用語では、実車キロ(実際に旅客を乗せて走った距離)÷走行キロ(旅客を乗せたかどうかを問わず走った距離)×100で表します。空で走るほど下がります。

流しと付け待ちとは? 違いは?

流しは、走りながら道で手を挙げる客を探す営業です。付け待ちは、駅や病院などの乗り場に並んで客を待つ営業です。流しは空で走る距離が増えやすく、付け待ちは走らない代わりに待つ時間が増えやすいので、距離の割合(実車率)と待つ時間の両方を見て、時間と場所で使い分けます。

出典

更新日:

あなたの AI で続きを調べる

この話の設定と用語を渡して、いつもの AI で質問できます。

どのボタンも、コンテキストセット(この話の設定・人物・あらすじ・用語・出典)を渡して開きます。

物語の続きを AI と考える

調べる問いとは別の、創作の相談です。答えは作品の公式の続きではありません。

創作キットを開くこの作品の設定・絵の指示・台本の形

コンテキストセットをコピー

この話のまとめ(作品の設定・登場人物・あらすじ・用語・出典)です。AI に貼ると、話を踏まえて相談できます。

この話のあらすじ

実車率は、客を乗せて走った距離を、走った距離の全部で割った割合(実車キロ÷走行キロ×100)。灰馬組は18%で、十里走って客を乗せていたのは二里に足りなかった。チカは車輪に回転の数え木を付け、流し一筋のガロと、城門広場で付け待ちをする見習いのピムを一日比べる。流しは走りながら手を挙げる客を探すので客の数は多いが、空で走る距離も増え、実車率は21%。付け待ちは乗り場に並んで待つので空で走る距離は少なく実車率は46%だが、待つ時間が長く、乗せた客はガロの半分以下だった。実車率は距離の割合なので、止まって待っている間は下がらないが、その間は稼げない。チカは距離と時間の両方を見て、人が道にあふれる時間と場所では流し、人が一か所から出てくる時間と場所では待つ、と一日の表を組む。実車率が上がり始めた朝、金獅子商会の配車頭ヴィクトルが現れ、城門広場の馬車溜まりを自分たちの専用にすると告げる。

作者

ka2uma

縦読み漫画の作者

仕事の現場を題材に、台本から縦読み漫画を作っています。

この作品について

タクシーの配車の仕事で使う「需要を読んで車を回す」考え方を、馬車と飛竜便が走る王都に置きかえて描いています。

制作に生成 AI を使用。企画・編集:H株式会社・利用ガイド

通知

お気に入り(♡)にした作品に新しい話が出た時に、毎週金曜(更新の日)の選んだ時刻に1回だけ知らせます。

届く時刻

iPhone・iPad は、ホーム画面に追加したアプリから開いた時だけ通知を受け取れます(Safari のままでは受け取れません)。