第1話「雨の閉門前」

金曜の深夜。
雨。
配車センター 待ちの依頼未配車 218件

タクシー会社・配車センターの配車係(34歳)真柴 千景
千景:駅の北口、空車ゼロ。
南の車庫から
三台、回して!
雨の夜は、
誰もが車を呼ぶ。
走っている車の数は、
晴れの夜と同じなのに。


目を開けると、
石の街に、
雨が降っていた。

灰馬組・帳付け(前世:タクシー会社の配車係)チカ
チカ:……十七歳の、
手だ。

灰馬組・組頭ベルタ
ベルタ:チカ、帳面は閉じな。
今夜も、
客は来やしないよ。
灰馬組。
辻馬車が六台の、
小さな組。

灰馬組・御者(流し二十五年)ガロ
ガロ:市場を三周した。
客なんか、
一人も歩いちゃいねえ。
チカ:雨の日に、
市場を流した……?

〈配車盤〉を開きます登録:灰馬組 六台空車 6 実車 0 迎車 0
チカ:……私の、
配車の画面だ。
〈配車盤〉は、今と過去だけを映す。先のことは、映さない。
チカ:先を読むのは、
配車係の仕事、か。
【灰馬組 乗車の記録(過去30日)】雨の日は、六の鐘から九の鐘の乗車が一日の半分行き先:東門が七割
閉門は、夜の九の鐘。
壁の外の外町に
住む人は、それまでに
門を出なければならない。
チカ:――終電だ。

チカ:ガロさん、
市場じゃない。
劇場の裏口と、
大神殿の階段へ。
チカ:八の鐘の前に、
六台とも。

ガロ:帳付けの小娘が、
御者に指図か?
チカ:雨だと、歩いて
帰れない人が出ます。
閉門の前の一刻は、
みんな同じ方向へ動く。
チカ:客は、流して
探すんじゃない。
出てくる所で、
待つんです。
需要の山(記録からの見立て)八の鐘〜九の鐘 劇場・大神殿 → 東門雨:歩く人が減り、馬車を呼ぶ人が増える台数:晴れの日と同じ六台

劇場の客:馬車はないのか!
門が閉まっちまう!


空車 0 実車 6 迎車 0
ガロ:……おい。
全部、埋まったぞ。

九の鐘が鳴るまでに、
六台は二度ずつ、
東門を往復した。

ベルタ:晴れの日の、
四日分だよ……。
ガロ:勘じゃねえな。
あれは。
チカ:記録です。
雨と、閉門。
客が出る時間と場所は、
毎回、だいたい同じ。

御者ギルド 通達実車率が三割に満たない組は、月末をもって営業札を返すこと。
灰馬組 今月の実車率 18%月末まで 30日

チカ:三割。
――配車係の、
仕事だ。
空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜
第1話「雨の閉門前」終


