第3話「神前査定」

リタ:勝てるの……?
ケイ:勝ち負けじゃない。
値の理由を、
見せに行くんだ。

神前査定。
神託に逆らった者が、
神の前で、
値の理由を問われる場。

グレゴール:神託は、値を告げる。
人が値を決めるなど、
思い上がりだ。

ケイ:俺は、値を
決めていません。
確かめた事を、
並べただけです。

グレゴール:ならば並べてみよ。
その宿の建物は、
いくらだ。
原価法今、同じ物を建て直すといくらかかるか(再調達原価)を出し、古くなった分・使いにくくなった分などの傷み(減価)を引いて値を出す。

ケイ:町の大工の親方に、
同じ宿を今建てたら
いくらか聞きました。
梁と柱も、
一緒に見てもらった。
査定書|月見鳥亭の建物(原価法)今建て直すと:銀貨300枚(大工の親方の見積もり)建って25年。梁と柱を見て、あと25年は使えると見た。→ 傷みは、およそ半分。建物:銀貨 約150枚

グレゴール:土地は。
神託は、
値なしと告げた。
ケイ:近所で売れた値と比べて、
約四百二十枚。
ケイ:では、伺います。
同じ通りの粉屋の跡、
神託の値は
いくらですか。

値帳|粉屋の跡(八十年前の大神託)値:銀貨120枚

ケイ:同じ土地が、半年前に
四百枚で売れています。
八十年の間に、
街道が通り、町が育った。
ケイ:神託が間違ったんじゃない。
八十年前の値のまま、
止まっているだけです。

グレゴール:師は言った。
神託は、
変わらぬ、と。
グレゴール:建物で百五十、
土地で四百二十。
宿として使えば、
また違う値になろう。
どれが本当の値だ!
ケイ:全部、本当です。
だから、三つ目も
出します。
収益還元法その不動産が毎年いくら稼ぐか(純収益)から値を出す。一年の純収益 ÷ 還元利回り = 収益価格
査定書|宿として(収益還元法)ドーラの宿の見込み:一年の売り上げから費用を引いた純収益は、銀貨54枚。この町の宿の還元利回り:9%(ギルドの帳の、売れた宿の値と稼ぎから)54 ÷ 0.09 = 約600枚
試算価格の調整出した値どうしを見比べ、どの値の理由がより確かかを考えて、一つの値に決める。積算価格:570枚(土地420+建物150)収益価格:600枚宿として売るので、稼ぎの値を重く見て:約590枚
ケイ:二つの値が近いのは、
どちらの理由も
確かめてあるからです。

グレゴール:神託は、値を告げる。
だが、理由は告げぬ。
グレゴール:……お前の札は、
理由しか
書かぬのだな。

グレゴール:この値、神殿の帳に
「神託の外の値」として
記す。

ドーラ:銀貨五百枚。
怖がる客の分は引いた。
文句は?

リタ:ありません……!

三十枚と言われた宿は、
理由を並べて、
五百枚になった。


王家の使者:測量見習いケイ殿。
王命である。
王命北の丘の〈ダンジョン付きの土地〉に、値を付けよ。――神託は、八十年、値を告げていない。

ケイ:ダンジョンに、
値を……?


ベルント:さて。
小僧は、いくらと
出すかな。
値なしの土地、査定します
第3話「神前査定」終


