第3話「改めの日」

改めの日の朝︒
5年分の申告は︑
もう出してあった︒

志乃:改め役︑榊︒
同じく見習い︑伊織︒
始める︒
まず︑聞き取り︒
商いの中身︑家の者︑
取引の相手︑
金の受け取り方︒

志乃:染めの代金は︑
どうやって受け取る︒
宗吉:︙︙反物を返す時に︑
現金で︒
控えの札は︑
娘が書いてる︒
次に︑帳簿と書付︒
控えの札︑
藍玉の受け取り︑
お糸の新しい帳︒

志乃:札は︑よく残してある︒
――だが︑
帳は5年のうち
2年分しかない︒
お糸:残りの3年は︑
染め上がりの
控えの札があります︒
最後に︑作業場︒

志乃:甕が12︒
これだけの甕を回す紺屋なら︑
年に1000万の
売上はある︒
志乃:申告は520万︒
倍︑隠している︒

お糸:待って︒
この4つは︑
藍を建てている
途中の甕︒
お糸:藍が育つまで
半月かかるの︒
その間は︑
一反も染められない︒

伊織:見立ては︑
甕の数から当てた︒
でも︑
甕は全部いつも
回ってるわけじゃない︒
志乃:なら︑
お前はどう出す︒
伊織:使った藍の量から︒

伊織:問屋の受け取りで︑
5年分︑
何貫の藍を
買ったか分かる︒
伊織:藍1貫で何反染まるかは︑
宗吉さんの
腕と手順で決まってる︒

珠の算盤|藍の量から出した1年の売上(5年の平均)藍玉の仕入れ 1年 平均 61貫藍1貫で染める反物 約12反(宗吉の手順)1反の染め代(控えの札の平均) 約8,300円1年の売上 約610万円申告した売上 約520万円差 約90万円
伊織:倍じゃない︒
でも︑
90万︑足りない︒
伊織:宗吉さん︒
控えの札に
書いていない仕事が︑
ありますね︒

宗吉:︙︙升屋の︑暖簾だ︒
宗吉:升屋の番頭が︑
札も書付も残すな︑
金は現金で渡す︑
と言った︒
その分︑高く払うと︒
宗吉:かかあが死んでから︑
その金で︑
やっと食えてた︒

お糸:お父っつぁんは︑
5年分︑自分から
出したんです︒
志乃:出していない売上がある事に︑
変わりはない︒

升屋︒
両替商で︑呉服の問屋︒
銭ヶ浦の金の半分が︑
この店を通る︒
改めの相手の取引先にも︑
問うことができる︒
前の世界で言う︑
反面調査だった︒

嘉平:どうぞ︑
心ゆくまで︒
うちは帳だけは
きれいでしてな︒

升屋の帳|染め・仕立ての払い(5年分)紺屋 宗吉 払い なし(暖簾の新調 5年で14枚)
志乃:暖簾は14枚︑
新しくしている︒
なのに︑
宗吉への払いが
一文も無い︒
嘉平:宗吉さんとは︑
取引はございません︒
暖簾は︑
古い物を洗っただけで︒

伊織:帳に無い金で︑
払った︒
伊織:――なら︑
帳に無い売上が︑
どこかにある︒
珠:宗吉の90万は︑
升屋の帳の外の金︒
その外の金は︑
どこから来たの?

改めが終わると︑
誤りがあれば︑
中身と理由を説明する︒
勘定改め所|改めの結果紺屋 宗吉 5年分申告に無い売上(升屋の暖簾) 1年 約90万円足りない本税 5年で75万円(1年 約15万円)帳の無い3年分 上乗せ 15%+10%帳のある2年分 上乗せ 15%
志乃:この額で︑
申告を直すか︒
直さないなら︑
改め所が額を決める︒
伊織:宗吉さん︑
一つだけ︒
申告の御定め(前の世界の国税通則法 第74条の11と同じ)改めで誤りがあれば、額と理由を説明する。申告を直すよう勧めることができる。直す申告を出したら、不服は申し立てられない。ただし、後で額を減らすよう求める事(更正の請求)はできる。この事は書付で渡す。
宗吉:︙︙直す︒
升屋の分は︑
おれの稼ぎだ︒

未納の帳|弓削 伊織(前世)未納(本税と加算税) 215万7千円改めで見つけた本税 75万円が納められたら −75万円
珠:やっと︑
あんたの帳が
減る番︒
志乃:見立てどおり倍で取っていたら︑
取りすぎだった︒
伊織:一円も多くも︑
少なくもない額で
なきゃいけないんです︒
︙︙俺の場合は︑特に︒

伊織:升屋を︑
改めましょう︒

志乃:升屋には︑
20年︑
改めが入っていない︒
志乃:入ろうとした改め役は︑
1人だけだ︒

志乃:――私の︑父だ︒
無申告、改めます。
第3話「改めの日」終





