第1話「午前四時十二分」

十月の︑木曜︒
午前四時十二分︒

電話の母:小春︙︙
お父さんが︑
ね︙︙
父が死んだと︑
電話で知った︒

始発の新幹線と︑
タクシーで︑三時間︒
海の町は︑
まだ眠っていた︒

イベント制作会社・進行管理(東京)篠原 小春(31)

小春の母篠原 澄江(62)
澄江:夜中に︑
胸が苦しいって︒
病院で︑手を
尽くしてもらった
けど︙︙
小春:︙︙お父さん︒
五年︑
会っていなかった︒
最後に話したのは︑
電話で三分︒

看護師:ご愁傷さまです︒
お迎えの葬儀社さんは︑
お決まりですか︒
看護師:こちらで︑
ご紹介もできます︒
お部屋は︑朝のうちに
空けていただけると
助かるのですが︙︙

小春:葬儀社︒
今?
何を︑どこに︑
どの順番で――?

父は︑葬儀屋だった︒
運動会にも︑
卒業式にも︑
来なかった︒
いつも︑
誰かのお葬式だったから︒

小春の父・つばめ葬祭の葬祭ディレクター篠原 守
父:行ってくる︒
ご家族が︑
待ってるんだ︒
澄江:小春︒
これ︑お父さんの
鞄に入ってたの︒

段取り帳 自分の分篠原 守
澄江:「小春に渡せ」って︑
表に︒

小春へ。俺が死んだら、一頁目から順に開け。先の頁は、書いてある時が来るまで開けるな。
小春:︙︙死んでも︑
段取りか︒

小春:︙︙もしもし︒
つばめ葬祭の︑
柏木さんですか︒
篠原守の︑
娘です︒


つばめ葬祭・葬祭スタッフ(守の後輩)柏木 蓮(26)
柏木:守さんを︑
お迎えに
上がりました︒
柏木:搬送と︑ご自宅での
安置まで︑まず
お引き受けします︒
柏木:葬儀をうちで
なさるかどうかは︑
見積もりを見てから
決めてください︒
小春:︙︙父の会社
なのに?
柏木:守さんの︑
教えです︒
「急がせて決めさせた
葬式は︑
一生︑後悔が残る」って︒

父は︑
父が三十八年
通った道を︑
家へ帰った︒

柏木:枕元は︑
このくらいで︒
お線香は︑
絶やさなくても
大丈夫です︒
澄江:そう︙︙
お父さん︑
夜通し番をしろって︑
よく人に
言われてたけど︒
柏木:今は︑
眠ってください︒
明日から︑
長いので︒

柏木:ここから先の︑
流れです︒
これからの流れ(つばめ葬祭)① 安置(今ここ)② 打ち合わせ 喪主・日程・葬儀の形・見積もり③ 死亡届を出し、火葬許可証を受け取る④ 納棺⑤ 通夜⑥ 葬儀・告別式⑦ 出棺・火葬
小春:進行表だ︒
父の仕事の︑
進行表︒
柏木:小春さんは︑
イベントの進行を
なさってるって︒
守さん︑
自慢してました︒
小春:︙︙知らない︒
そんな話︑
一度も︒

守の弟・漁協勤め篠原 勝(60)
勝:兄貴ぃ!
なんで先に
行っちまうんだよぉ!
勝:︙︙で︑
喪主は誰だ︒
篠原の家には︑
男がおらんだろ︒
澄江:勝さん︑
今それ︙︙
小春:喪主︒
――それも︑
誰かが決めるのか︒
段取り帳の︑
一頁目の終わりに︑
こう書いてあった︒
搬送が済んだら、二頁目を開け。

二頁目俺の葬式は、もう決めてある。つばめ葬祭に、生前の見積もりを預けてある。一般葬。参列、三百人。
澄江:︙︙三百人?
柏木:お預かり︑
しています︒
六年前に︒

小春:お父さん︒
あなたの葬式︑
誰が仕切るの︒
父の葬儀は、父が仕切る
第1話「午前四時十二分」終





