第1話「三十一通目のお祈り」

大学4年・就職活動中早瀬 ことは
十月︒
夜の十一時︒
【選考結果のご連絡】株式会社くるみ座製菓 人事部慎重に選考を重ねました結果、誠に残念ながら、今回はご希望に添えない結果となりました。今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます。
ことは:三十一通目の︑
お祈り︒

最終面接まで︑行った︒
手応えも︑あった︒
ことは:何が︑
だめだったの︒
理由だけでも︑
教えてよ︙︙︒

ことは:御社の︑
人を笑顔にする
お菓子づくりに
共感して︙︙︒
あの時︑
真ん中の面接官は︑
一度も顔を上げなかった︒


目が覚めたら︑
知らない会社の
洗面所にいた︒

ことは:︙︙誰!?
私を落とした︑
真ん中の面接官だった︒
採用課長(中身:ことは)九条 透

人事部 採用担当柚木 まどか
柚木:課長︑九時半から
一次面接です︒
今日は三人︒
岩城部長が︑もう
お部屋でお待ちです︒
ことは:面接︙︙
する側!?

営業部長・面接官岩城 剛
岩城:九条くん︑遅いぞ︒
今年の一次は︑
三人に一人まで絞れと
社長のお達しだ︒

一次面接 評価票① 結論から話せるか② 自分で動いた事実があるか③ 入社後にしたい事があるかそれぞれ A・B・C・D で評価

応募者・理工学部4年日下部 樹
岩城:学生時代に
力を入れたことを︑
どうぞ︒
樹:は︑はい︒
大学祭で︑
みんなで協力して︑
模擬店を︑
成功させました︙︙︒

〈評価票〉岩城 剛 の手元② 自分で動いた事実:D「みんなで」ばかり。本人が何をしたか不明
ことは:見える︙︙︒
岩城部長が︑
いま書いてる評価が︒
〈評価票〉は、面接官が手元に書いた事だけを映す。書かれなかった事は、映さない。
ことは:「みんなで
協力して」︙︙︒
私も︑何十回も
言った︒

ことは:私が落ちた理由︑
これだったの︙︙?
〈評価票〉岩城 剛 の手元総合:D 次の面接へは上げない
ことは:待って︒
この人︑まだ
何も話してない︒

ことは:日下部さん︒
その模擬店で︑
あなたが自分の手で
やった事を︑
一つだけ︒

樹:︙︙仕入れの数を︑
決めました︒
去年までの売上の
記録を三年分さがして︑
天気と並べて︒
樹:雨の日は
半分しか売れないので︑
前の日に仕入れを
半分にして︙︙
売れ残りを︑
ゼロにしました︒

〈評価票〉岩城 剛 の手元② 自分で動いた事実:D → B「記録から数を決めた。売れ残りゼロ」
岩城:︙︙ほう︒
最初から
それを言え︒
同じ話でも︑
「自分が何をしたか」が
出てくるかどうかで︑
物差しの目盛りが変わる︒

夕方︒
合否の会議︒
一次面接 合否会議応募者 3名 → 二次面接へ 1名
岩城:日下部は︑
話が下手だ︒
ことは:でも︑②はBです︒
自分で記録を探して︑
数を決めて︑
結果を出してる︒
柚木:課長が学生の
肩を持つなんて︑
珍しい︙︙︒
岩城:︙︙いいだろう︒
二次へ上げる︒
日下部 樹 一次面接 通過

夜︒
誰もいない人事部︒
ことは:私の評価票も︑
ここにあるはず︒
最終面接 評価票 早瀬 ことは九条 透:① B ② B ③ ―総合:不採用理由:(消されています)

ことは:消されてる︙︙?

着信 早瀬 ことは
ことは:︙︙私の︑
番号︒

九条:俺の体で︑
余計な事は
していないだろうな︒
九条:︙︙それと︒
君を落としたのは︑
俺だ︒
お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜
第1話「三十一通目のお祈り」終





