# トゥーンエル:公開中の全話の本文 > 仕事と暮らしの現場を描く縦読み漫画。読んで、得る。 出典:https://tooneru.com/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とその話の URL(話が決まらない時はサイトの URL https://tooneru.com/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ # 足場を組め 第1話「北から、組め」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/ashiba/manga/1-ashiba/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[足場を組め](https://tooneru.com/henshubu/ashiba/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/ashiba/manga/1-ashiba/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 交通誘導の警備員・鷹野 颯(22)は、木造の家の現場の門の前に3週間立ってきた。上棟の前の日の夕方、明日来られる職人は8人のうち4人と分かる。所長の大河内 剛三は「4人で16時までに棟は上がらん」と延期を考えるが、鳶の柴崎 葵はクレーンも道路の許可も取り直しになると言い、夜までやると言う。大河内は「残業にも上限がある」「足場の無い所に人を上げるな」と、夜の作業を許さない。颯は持ち場を離れ、地面に棒で段取りを描く。止めてはいけないのは人ではなく、16時で帰るクレーン。8人を2組に分けず、4人の1組で北から順に組み、材料も北の分から運べば、クレーンは待たない。毎朝トラックを止めている颯は、8時の便が角で20分止まる事も知っていた。翌朝、南の材料の2台目が先に着き、北の1台目は渋滞で遅れる。颯は無線で2台目を角の駐車場に待たせ、1台目を裏の一方通行から北の口へ入れる。15時40分、葵が棟木を打ち込み、上棟は間に合う。大河内は白いヘルメットを投げ、「明日から、ヘルメットの色を変えろ」「職人を守りたきゃ、上に行け」と言う。その直後、警備会社から「勝手に持ち場を離れたな。今日で、終わりだ」と電話が来る。 ## 登場人物 - **鷹野 颯**:主人公。22歳、派遣の交通誘導の警備員。木造の家の現場の門の前に3週間立ち、車と職人の流れを毎日見てきた。父は元鳶。 - **大河内 剛三**:61歳、地場の工務店の所長。口癖は「段取り八分、仕事二分」。夜の作業と、足場の無い所に人を上げる事を許さない。 - **柴崎 葵**:27歳、鳶。腕は一番。年下の颯を「誘導員」と呼ぶ。 - **鷹野 守**:颯の父。元鳶。段取りの悪い現場で急かされて腰を壊した。使い込んだ手帳の最後の1行が空いている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:日が沈んだ後の青い住宅地。土台と柱の材料が並んだ木造の家の現場を、鉄パイプの足場がぐるりと囲み、白い投光器が光る。右の門の前で、紺のヘルメットと反射のベストの若い警備員が、赤く光る誘導棒を上げ、後ろのトラックを誘導している。) **大河内 剛三**:「明日、上棟だぞ」 > **ℹ 上棟(じょうとう)(棟上げ)**(現実の事実):家を建てる時、柱や梁を組み立て、そのいちばん上に棟木(むなぎ)を上げることです。その時の儀式のことも言い、「棟上げ」「建前」とも呼びます。 > - 出典:[コトバンク(精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典)「上棟」](https://kotobank.jp/word/%E4%B8%8A%E6%A3%9F-532694) **大河内 剛三**:「半分だと!?」 (絵:紺のヘルメットの若い警備員の寄り。現場の中から聞こえた怒鳴り声の方へ、目だけを動かす。) [人物の紹介] > 交通誘導の警備員(22) > 鷹野 颯 **鷹野 颯**(心の声):(また半分か……) [作中の画面] > 〈現場〉 > 颯が守る職人 8人 > この家の工事 3,000万円 > 上棟まで 14時間 > 来る職人 4人(予定 8人) > 17時50分。現場の詰所の前。 (絵:プレハブの詰所の前。左で、白いヘルメットの60代の所長が携帯電話を耳に当てたまま怒鳴っている。右で、フルハーネスを着けた20代の女性の鳶が、積んだ材木に腰かけ、ヘルメットを膝に置いている。) [人物の紹介] > 工務店の所長(61) > 大河内 剛三 [人物の紹介] > 鳶(27) > 柴崎 葵 **大河内 剛三**:「ちっ4人で16時までに棟は上がらん」 **大河内 剛三**:「上棟は延ばすしかねえ」 **柴崎 葵**:「はあ?クレーンも道路の許可も取り直しですよ」 > **ℹ 道路使用許可(どうろしようきょか)**(現実の事実):道路で工事や作業をする時に、その場所の警察署長から受ける許可です(道路交通法第77条)。署長は、交通の安全のために必要な条件を許可に付けることができます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「道路交通法」第77条](https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105) **柴崎 葵**:「だったら夜までやりますよ4人で」 **大河内 剛三**:「ばか野郎やらせねえ」 (絵:所長の寄り。鉛筆を握った手を、こちらへ突き出す。深いしわの顔。) **大河内 剛三**:「いいか残業にも上限がある」 > **ℹ 建設業(けんせつぎょう)の時間外労働(じかんがいろうどう)の上限規制(じょうげんきせい)**(現実の事実):2024年4月から、建設業にも残業(時間外労働)の上限の決まりが当てはまっています。原則は月45時間・年360時間までです。臨時の特別な事情がある時も、時間外労働は年720時間まで、時間外と休日の労働を合わせて1か月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内、月45時間を超える月は年6回までです。 > - 問:災害の時は? 答:災害の復旧・復興の事業では、「1か月100時間未満」と「2〜6か月の平均80時間以内」は当てはまりません。年720時間と、月45時間を超えるのは年6回まで、は守ります。 > - 出典:[厚生労働省「建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています」(建設業従事者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)](https://kensetsu-roudou-jikan.mhlw.go.jp/kensetsu_overtime.html) **大河内 剛三**:「無理した現場で落ちるのは、職人だ」 **大河内 剛三**:「足場の無い所に人を上げるな。夜にも、だ」 > **ℹ 足場(あしば)**(現実の事実):高い所で働くために、鋼管などで組み立てる仮の足掛かりです。高さ2メートル以上の所で働かせる時は、足場などで作業床を設け、端には手すりなどを付けて落ちないようにするのが原則で、それが難しい時は墜落制止用器具(フルハーネスなど)を使わせる事が、会社に義務付けられています。 > - 出典:[厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日 基発0622第2号)](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11302000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Anzenka/0000212917.pdf) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「足場」](https://kotobank.jp/word/%E8%B6%B3%E5%A0%B4-25318) (絵:門の前に立つ警備員の背中。肩越しに、足場に囲まれた現場の中を振り返っている。誘導棒を持つ手が下がっている。) > 交通誘導の立ち位置から、3週間、見てきた。 > **ℹ 交通誘導警備業務(こうつうゆうどうけいびぎょうむ)**(現実の事実):工事の現場の出入り口や道路で、人と車を安全に通すための警備の仕事です。警備業法の警備業務のうち、「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」(第2条第1項第2号)に当たります。 > - 問:資格は要る? 答:都道府県の公安委員会が決めた道路(指定路線)で交通誘導をする時は、交通誘導警備業務の検定(1級・2級)に受かった警備員を、場所ごとに置く決まりがあります。どの道路が指定かは都道府県ごとに違います。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「警備業法」第2条](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000117) > - 出典:[静岡県警察「交通誘導警備業務の実施基準」](https://www.pref.shizuoka.jp/police/shinse/seikatsu/kotsuyudo.html) > トラックがどこで止まり、職人がどこで待つか。 (絵:回想。昔の現場の足場の板に、フルハーネスの男の鳶が腰を押さえて座り込んでいる。手に、使い込んだ小さな手帳。奥で誰かが急かすように手を振っている。) > 親父は、鳶だった。 > **ℹ 鳶(とび)**(現実の事実):建設の現場で、足場を組んだりばらしたり、鉄骨や重い物を高い所で組み上げたりする職人です。木造の家の棟上げの足場を受け持つ「建築とび」、鉄骨や橋を組む「鉄骨とび」などに分かれます。 > - 出典:[厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「とび」](https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/30) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・日本大百科全書)「鳶職」](https://kotobank.jp/word/%E9%B3%B6%E8%81%B7-105639) > 段取りの悪い現場で急かされて、腰を壊した。 > 親父の手帳は、最後の1行が空いたままだ。 **鷹野 颯**(心の声):(……誘導員が口出ししたら終わりだ) (絵:細い横の帯の寄り。紺のヘルメットの下で、まっすぐ前を見る若い警備員の目。) (絵:若い警備員が、門の前のコーンとバーをまたいで現場の中へ一歩踏み込む。振った誘導棒の赤い光の筋が、絵の枠の左の線を越えて外へ伸びる。) **鷹野 颯**:「あの、所長4人でもできます」 **大河内 剛三**:「ああ?誘導員が何だ」 (絵:詰所の前の土の上。右で、若い警備員がしゃがみ、誘導棒で地面に家の四角と線を描いている。左で、所長が腕を組んで見下ろしている。) **鷹野 颯**:「8人を2組に分ける段取りですよね」 **鷹野 颯**:「北と南を、同時に」 **鷹野 颯**:「4人なら、1組で、北から順に」 **大河内 剛三**:「それじゃ倍かかるだろ」 **鷹野 颯**:「2組でも、クレーンは1台です」 **鷹野 颯**:「片方は、ずっと待ってます」 **大河内 剛三**:「……待ってる、だと?」 (絵:地面の寄り。若い警備員の手が棒で、家の四角の端から下へ向けて矢印を引く。横に小さなトラックの形が3つ並ぶ(線だけ)。) > 止めちゃいけないのは、人じゃない。16時で帰るクレーンだ。 **鷹野 颯**:「南の材料は昼まで要りません」 **鷹野 颯**:「北の分から先に運べば、クレーンは1分も待たない」 **鷹野 颯**:「それに8時の便は角で20分止まります」 **大河内 剛三**:「……なんで分かる」 **鷹野 颯**:「毎朝、止めてるの僕なので」 **柴崎 葵**:「誘導員の言う事で、」 (絵:女性の鳶。ヘルメットのあごひもを締めながら、冷たい目でこちらを見下ろす。) **柴崎 葵**:「動けるかよ」 **大河内 剛三**:「……1時間だ」 **大河内 剛三**:「朝の1時間で遅れたら、そこでやめる」 > その夜、所長は材料の工場に、積む順の直しを頼んだ。 (絵:夜の詰所の中。白い蛍光灯の下、所長がひとり机で携帯電話を耳に当て、材料の一覧の紙に鉛筆で印を付けている。) **大河内 剛三**(つぶやき):「段取り八分、仕事二分だ」 > 翌朝 7時50分。 (絵:夜明け前の鋼のような青い空へ、クレーン車のブームが下から上へまっすぐ伸びていく。先の白い作業灯が光る。下の方に、足場に囲まれた家の骨組みが見える。) > クレーンが使えるのは、16時まで。 (絵:同じ朝の道路。脚を張り出したクレーン車の横で、右に誘導棒を持った若い警備員、左に足場の下で手袋をはめる女性の鳶と大工。奥の角を、ランドセルの子どもたちが小さく渡っていく。) [作中の画面] > 〈現場〉 > 守る職人 8人/扱うお金 3,000万円 > クレーン 退場まで 8時間10分 > 来た職人 4人(予定 8人) > 8時10分。 **角の警備員**:「南の材料の2台目が、先に来た」 (絵:若い警備員が無線を口元に押し当てて、目を見開く。後ろの角から、材木を積んだトラックの鼻先がのぞいている。) **角の警備員**:「北の1台目は、渋滞で20分遅れ」 **大河内 剛三**:「おいクレーン止まるぞ」 (絵:足場の前で、左の所長が腕時計を見ている。右の上、足場の2階の高さで、女性の鳶が手を止めて下を見ている。) **大河内 剛三**:「1時間で遅れたら、やめると言ったな」 **鷹野 颯**:「待ってください!」 (絵:若い警備員が無線を握り、赤い誘導棒で細い脇道の先をまっすぐ指す。強い決意の顔。) **鷹野 颯**:「2台目は、角の駐車場で待機」 **鷹野 颯**:「1台目は、裏の一方通行から、北の口へ」 > 裏の道は、毎朝、ごみの車が抜けていく道。 (絵:真昼の硬い日差しの空。クレーンのフックに吊られた長い梁が、上から下へゆっくり降りてくる。舞う木くずが光る。) (絵:2階の高さの足場の上で、フルハーネスの女性の鳶が、吊られて降りてきた梁に手を添えて導く。ずっと下の左に、誘導棒を上げる小さな警備員。) **柴崎 葵**:「次、北の梁!」 > **ℹ 梁(はり)**(現実の事実):柱と柱の上に横に架け渡して、屋根などの重さを支える横木です。木造の家の上棟の日は、柱を立てて梁を架け、最後にいちばん上へ棟木を上げます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「梁」](https://kotobank.jp/word/%E6%A2%81-116816) > 15時40分。 **大河内 剛三**:「棟木だ葵、フック!」 > **ℹ 棟木(むなぎ)**(現実の事実):屋根の骨組みのいちばん上に、建物の長い方向へ渡す横木です。屋根の板を受ける垂木(たるき)を支え、屋根の骨組みをつなぎます。この棟木を上げる事を「上棟(棟上げ)」と言います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・日本大百科全書)「棟木」](https://kotobank.jp/word/%E6%A3%9F%E6%9C%A8-642059) **柴崎 葵**:「掛けてる!親綱に」 > **ℹ 親綱(おやづな)**(現実の事実):高い所で働く人が、墜落制止用器具(フルハーネスなど)のフックを掛けるために張るロープです。厚生労働省のガイドラインでは、横に張る物を「水平親綱」、縦に垂らす物を「垂直親綱」と呼びます。 > - 出典:[厚生労働省「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日 基発0622第2号)](https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11302000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Anzenka/0000212917.pdf) (絵:骨組みのいちばん上で、フルハーネスの女性の鳶が大きな木の槌を振りかざす。棟木から木くずが上へ吹き上がり、絵の枠の上の線を越えて外へ飛び出す。) > 棟が、上がった。 [作中の画面] > 〈現場〉 > 守る職人 8人/扱うお金 3,000万円 > 上棟 15時40分(クレーン 退場の20分前) > 進み 100% (絵:組み上がった骨組みの棟にまたがって座る女性の鳶。ハーネスの胸から延びた命綱の先のフックが、棟に沿って張った太い綱に掛かっている。あごひもを締めたまま、ヘルメットのつばに指を掛け、口の端だけで笑う。ずっと下に町の道路。) **柴崎 葵**:「誘導員」 **柴崎 葵**:「北から合ってたな」 (絵:夕方の前の白い光の現場の前。左の所長が、白いヘルメットを右へ放る。右で、紺のヘルメットの若い警備員が、両手を伸ばして受け止める。) **大河内 剛三**:「明日から、ヘルメットの色を変えろ」 **鷹野 颯**:「え……」 **大河内 剛三**:「うちで、施工管理の見習いだ」 > **ℹ 施工管理(せこうかんり)(施工管理技士)**(現実の事実):工事を、図面どおり・決めた工期と費用の中で・安全に進めるために、人と材料と機械の段取りを組む仕事です。建設業法では、工事の現場ごとに技術上の管理をする「主任技術者」(大きな工事では「監理技術者」)を置く決まりがあります(第26条)。国の技術検定に受かった人は「施工管理技士」の称号を名乗れます(第27条)。 > - 問:「現場監督」との違いは? 答:「現場監督」は現場での呼び名で、法律の言葉ではありません。法律で決まっているのは、現場に置く主任技術者・監理技術者です。 > - 問:施工管理技士の試験は、何歳から受けられる? 答:2024年度から、第一次検定は1級が19歳以上、2級が17歳以上(その年度の終わりの時点)なら、学歴や実務の経験が無くても受けられます。第二次検定は、第一次検定に受かった後の実務の経験が要ります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「建設業法」第26条・第27条](https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100) > - 出典:[国土交通省 報道発表資料「「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令」等の公布」(2023年5月12日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00176.html) (絵:所長の寄り。背を向けかけて、肩越しにこちらを見る。目だけが真剣。) **大河内 剛三**:「職人を守りたきゃ、上に行け」 **警備会社の隊長**:「現場の段取りに出て、持ち場を離れたな」 (絵:ヘルメットを脱いだ若い警備員が、片手を耳に当てて電話を聞いたまま立ち尽くす。片腕に白いヘルメットを抱え、足もとに落ちた紺のヘルメットが、絵の枠の下の線を越えて手前へ転がる。) **警備会社の隊長**:「今日で、終わりだ」 > 警備の仕事を、失った日。 [作中の画面] > 〈現場〉 > 守る職人 8人 > 見習いの初日まで 14時間 **大河内 剛三**:「1週間で使えなきゃ、」 **大河内 剛三**:「戻る場所は、もう無えぞ」 ## この話で分かること ### 上棟とは? 家を建てる時に、柱や梁を組み立て、そのいちばん上に棟木(むなぎ)を上げることです。その時の儀式のことも言い、「棟上げ」「建前」とも呼びます。 ### 施工管理とは? 現場監督との違いは? 施工管理は、工事を図面どおり・工期と費用の中で・安全に進めるために、人と材料と機械の段取りを組む仕事です。「現場監督」は現場での呼び名で、法律では工事の現場ごとに技術上の管理をする「主任技術者」(大きな工事では「監理技術者」)を置く決まりになっています(建設業法第26条)。 ### 建設業の残業の上限は? 2024年問題で何が変わった? 2024年4月から建設業にも時間外労働の上限の決まりが当てはまり、原則は月45時間・年360時間までです。臨時の特別な事情がある時も、時間外労働は年720時間まで、時間外と休日の労働を合わせて1か月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内、月45時間を超える月は年6回までです。 ### 交通誘導の警備員は、何をする仕事? 工事の現場の出入り口や道路で、人と車を安全に通すための警備の仕事です。警備業法の警備業務の第2号(人や車の通行に危険のある場所で、事故を警戒し防止する業務)に当たります。 --- 足場を組め 第1話「北から、組め」 つづく # その申請、ここで合ってます 第1話「生活保護は、恥ですか」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/madoguchi/manga/1-madoguchi/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[その申請、ここで合ってます](https://tooneru.com/kotowari/madoguchi/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/madoguchi/manga/1-madoguchi/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 浦辺区役所の総合窓口の新人・茅野 悠(23)は、案内のあとに「たらい回しにされた」という区民の声が今月3件目になり、係長の宮内に「次に来たら窓口から外す」と言われる。午前10時、住民票を取りに来た笹岡 正治(58)が「お金の相談」と言いかけ、茅野が「2階の福祉課です」と案内すると、住民票だけ受け取って階段の前を素通りしていく。隣の席の梅津 タエに「案内したら、行けると思った?」と言われ、封筒の端の電気料金の「止まる日」に気づいた茅野は、バス停まで追いかける。「生活保護なんて恥だろ」「家もある」「息子に連絡が行く」と言う笹岡に、茅野は厚生労働省の案内(持ち家がある人でも申請できる・同居していない親族に相談してからでないと申請できないということはない)を見つけて伝え、2階の福祉事務所の窓口まで一緒に行く。「ここで、合ってますか」「ここで、合ってます」。だが1階に戻ると、窓口が40分空いていたという声が増えていた。そこへ、赤ちゃんを抱いた母親が4枚の通知を手に来る。「保育園、全部、落ちました。どこに行けばいいですか」。 ## 登場人物 - **茅野 悠**:主人公。23歳、浦辺区役所 区民課の総合窓口の新人。案内の言い方は覚えたが、来た人が本当にその課へ行けるかまでは見ていなかった。「たらい回し」の声が次に来たら、窓口から外される。 - **梅津 タエ**:63歳、総合窓口の会計年度任用職員。区役所の窓口に長くいて、どの課の誰に聞けばいいかを知っている。口ぐせは「あらまあ」。 - **宮内 達也**:47歳、区民課 総合窓口の係長。区民の声の数に追われているが、部下を突き放したいわけではない。 - **笹岡 正治**:58歳。仕事が減り、電気料金の「止まる日」の知らせが届いている。10年会っていない息子がいる。 - **福祉課の職員**:区役所の2階、福祉課(区の福祉事務所)の相談の窓口の職員。 - **窓口の男性**:総合窓口で、行き先が分からないと怒っていた区民。 - **若い母親**:赤ちゃんを抱いて総合窓口に来た母親。保育園の申し込みに全部落ちた。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:開いたばかりの区役所の1階のロビー。番号札の発券機の前に人の列。奥に長い総合窓口のカウンター。天井から、課の案内の札がいくつも下がっている(字は無い)。) > 午前8時30分。浦辺区役所 1階。 **窓口の男性**:「どこに行けばいいんだよ!」 (絵:窓口のカウンター越し。右で中年の男性が書類の束を振り上げて怒っている。左で、紺のベストに首から名札の紐を下げた若い女性の職員が、深く頭を下げている。) [人物の紹介] > 総合窓口の新人(23) > 茅野 悠 **茅野 悠**:「申し訳ありません」 **茅野 悠**(心の声):(だってうちの課じゃないし……) > 30分後。係長の机。 **宮内 達也**:「茅野さん、ちょっと」 (絵:事務室の奥の机。左で、眼鏡の40代の男性の係長が、紙を1枚、机の上で若い職員の方へ滑らせる(字は読めない)。右に、紺のベストの若い女性の職員が立っている。) [人物の紹介] > 区民課 総合窓口の係長(47) > 宮内 達也 **宮内 達也**:「責めてるわけじゃないんだよ」 [作中の画面] > 〈今月の区民の声〉 > 「たらい回しにされた」 3件 > うち2件は、総合窓口で案内したあと **宮内 達也**:「でも、次に来たら窓口から外すからね」 **茅野 悠**:「えっ外すって……」 **茅野 悠**(つぶやき):「案内、してるだけなのに」 > 午前10時12分。 (絵:窓口のカウンターに、くたびれた作業着の上着の50代後半の男性が座る。片手に番号札、もう片方の手に折りたたんだ封筒を握り、目は合わない。) **笹岡 正治**:「あの……住民票を1枚」 **茅野 悠**:「はい!住民票の写しですね」 > **ℹ 住民票(じゅうみんひょう)の写し**(現実の事実):住民票は、市区町村が住民ひとりひとりの氏名・生年月日・住所などを記録した公の帳簿です。役所の窓口で受け取るのはその「写し」で、本人や同じ世帯の人は、自分たちの写しを請求できます(住民基本台帳法第12条)。 > - 問:1人分と世帯全員の分がある? 答:あります。手続きによって、個人の分か、世帯でまとめた分かを求められます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・共同通信ニュース用語解説)「住民票」](https://kotobank.jp/word/%E4%BD%8F%E6%B0%91%E7%A5%A8-186689) > - 出典:[e-Gov 法令検索「住民基本台帳法」(第12条 住民票の写し等の交付)](https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081) **笹岡 正治**:「それと、お金の相談って……」 **茅野 悠**:「お金のご相談は、2階の福祉課です」 **茅野 悠**:「階段を上がって右です!」 **笹岡 正治**:「いや……いいです」 (絵:男性の寄り。封筒を上着のポケットに押し込み、苦笑いで首を振る。封筒の端に赤い枠の印(字は読めない)。) **笹岡 正治**:「住民票だけで」 > 住民票を受け取ると、男性は、階段の前を通り過ぎた。 (絵:ロビーの引き。2階への階段の前を素通りして、出口へ向かう男性の背中。カウンターの左で若い職員がそれを目で追い、右手前の長椅子で、白髪をまとめた60代の女性の職員が腕を組んで同じ背中を見ている。) [人物の紹介] > 区民課 総合窓口の会計年度任用職員(63) > 梅津 タエ **梅津 タエ**:「あらまあ」 **梅津 タエ**:「行かないわね、あの人」 **茅野 悠**:「え、でもちゃんと案内……」 **梅津 タエ**:「案内したら、行けると思った?」 **梅津 タエ**:「封筒、見えた?」 **茅野 悠**(心の声):(封筒……?) (絵:回想の寄り。男性の手の中の封筒の端。赤い枠の印と、赤い判のような四角(読める字は無い)。) [作中の画面] > 〈封筒の端〉 > 赤い枠:電気料金のお知らせ > 「止まる日」の欄 **茅野 悠**:「止まる日……!」 > 10時40分。区役所の前のバス停。 (絵:区役所の前のバス停のベンチ。左で男性が1人で座り、封筒を膝に置いている。右から、若い女性の職員が名札の紐を揺らして走ってくる。) **茅野 悠**:「あの!笹岡さん!」 **笹岡 正治**:「窓口の……」 **笹岡 正治**:「いいって、言ったのに」 **茅野 悠**:「あの、さっきのお金の相談」 **笹岡 正治**:「言いにくいんだよ」 (絵:バス停のベンチに座る男性。うつむいて、膝の上で封筒を握りつぶす。目のまわりに疲れ。) **笹岡 正治**:「生活保護なんてさ」 > **ℹ 生活保護(せいかつほご)**(現実の事実):暮らしに困った時に、国が定めた基準で計算する「最低生活費」に収入が届かない分を、保護費として支給する制度です。世帯の全員が、資産・働く力・年金や手当など他の制度を活用することが前提で、親族から援助を受けられる時は受けます。東京都の福祉事務所の案内には「生活保護の申請は国民の権利です」とあります。 > - 問:生活保護の条件は? 答:資産(生活に使っていない土地・家、預貯金など)・働く力・他の制度(年金や手当)を活用し、親族から援助を受けられる時は受けたうえで、収入が最低生活費に届かない時に、その差額が保護費として支給されます。 > - 出典:[厚生労働省「生活保護制度」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html) > - 出典:[厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsuhogopage.html) > - 出典:[東京都西多摩福祉事務所「生活保護」](https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/nishifuku/seiho2.html) **笹岡 正治**:「恥だろ」 **笹岡 正治**:「家もあるしさ」 **笹岡 正治**:「息子に連絡が行くんだろ」 **茅野 悠**(心の声):(家……息子さん……) **茅野 悠**(心の声):(分かんない研修でやったのに) (絵:若い女性の職員が、ベンチの横にしゃがみ、スマートフォンを両手で持って、画面の光を必死に見つめている(画面の字は読めない)。) **茅野 悠**(つぶやき):「あ……あった」 [作中の画面] > 〈厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」〉 > 持ち家がある人でも申請できます > 必要な書類が揃っていなくても申請はできます > 同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません **茅野 悠**:「笹岡さん、家があっても申請、できるって」 **笹岡 正治**:「え」 **笹岡 正治**:「でも、役所から息子に連絡が……」 **茅野 悠**:「それは、扶養照会、ですね」 > **ℹ 扶養照会(ふようしょうかい)**(現実の事実):生活保護の申請のあとに、福祉事務所が親族(扶養義務者)に、援助ができるかを問い合わせることです。扶養義務者の扶養は保護に優先しますが、厚生労働省は「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と案内しています。東京都の福祉事務所の案内では、扶養義務の履行が期待できないと判断される扶養義務者には、基本的には直接の照会を行わないとしています。 > - 問:長く連絡を取っていない家族にも、連絡が行く? 答:扶養義務の履行が期待できないと判断される扶養義務者には、基本的には直接の照会を行わないと、東京都の福祉事務所は案内しています。どう扱うかは、事情を聞いたうえで福祉事務所が判断します。 > - 出典:[厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsuhogopage.html) > - 出典:[東京都西多摩福祉事務所「生活保護」](https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/nishifuku/seiho2.html) **茅野 悠**:「先に息子さんに相談しなきゃダメ、とかはないです」 (絵:ベンチの男性。目を伏せ、膝の上の封筒の端を親指で何度もなぞっている。) **笹岡 正治**:「10年、会ってないんだ」 **茅野 悠**(心の声):(10年……) **茅野 悠**:「その事情も、聞いてもらえます」 **笹岡 正治**:「でもさ58にもなって役所に泣きつくのは」 **茅野 悠**:「わ、私もまだ全部、分かってないんです」 (絵:バス停の歩道。若い女性の職員が立ち上がり、両手を握りしめて、まっすぐ前を見ている。名札の紐が肩で揺れる。) **茅野 悠**:「でも、申請するのは権利です」 **笹岡 正治**:「権利、ねえ……」 **茅野 悠**:「一緒に、行きます2階まで」 **笹岡 正治**:「あんた、窓口、空けていいの?」 **茅野 悠**(つぶやき):「よく……ないです」 > 10時55分。2階、福祉課。 (絵:2階の福祉課の相談の窓口。衝立で仕切った机が並ぶ。左で若い女性の職員が、椅子に座った男性の横に立ち、右のカウンターの奥の、腕まくりの30代の男性の職員に声をかけている。) **茅野 悠**:「生活保護の申請をしたいって」 **福祉課の職員**:「はい、こちら福祉事務所の窓口です」 > **ℹ 福祉事務所(ふくしじむしょ)**(現実の事実):生活保護などの相談と申請を受ける役所の窓口です。厚生労働省は、生活保護の相談・申請の窓口を「現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当」と案内しています。福祉事務所を設置していない町村に住む人は、町村役場でも申請の手続ができます。 > - 出典:[厚生労働省「生活保護制度」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html) **福祉課の職員**:「担当のケースワーカーが、お話を伺いますね」 > **ℹ ケースワーカー**(現実の事実):福祉事務所で、生活に困っている人の家を訪ねたり面接したりして、暮らしの様子や資産を聞き、保護が要るかとその種類を判断し、暮らしの相談に乗る職員です。社会福祉法では「現業を行う所員」と呼ばれ、一般にケースワーカーと呼ばれます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「社会福祉法」第15条](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000045) **笹岡 正治**:「あの……」 (絵:男性の寄り。衝立の机の前で、上着の前を握ったまま立ち止まり、肩越しに振り返る。) **笹岡 正治**:「ここで、合ってますか」 **茅野 悠**:「はい」 (絵:若い女性の職員の寄り。息を切らしたまま、くしゃっと笑ってうなずく。走ってきたせいで、名札の紐が肩に引っかかっている。) **茅野 悠**:「ここで、合ってます」 > 11時40分。1階、総合窓口。 [作中の画面] > 〈今月の区民の声〉 > 「たらい回しにされた」 3件 > 「窓口に人がいなかった」 1件(今日 11時20分) (絵:総合窓口のカウンター。空いた若い職員の席の前に、番号札を持った人の列が伸びている。左で係長が腕時計を見ながら立ち、右から若い職員が小走りで戻ってくる。) **宮内 達也**:「茅野さん、窓口、40分空いてたね」 **茅野 悠**:「す、すみません」 **梅津 タエ**:「2階まで送ったのよ、この子」 **宮内 達也**:「……そう」 **宮内 達也**:「次は、誰かに声かけてから行ってね」 **茅野 悠**(心の声):(今の……怒られてない?) **若い母親**:「すみません」 (絵:窓口の前に、抱っこひもで赤ちゃんを抱いた20代の女性が立つ。片手に、通知の紙を4枚、扇のように開いて握っている(字は読めない)。) **若い母親**:「保育園、全部、落ちました」 **若い母親**:「どこに行けばいいですか」 (絵:若い女性の職員の寄り。口を開けたまま固まる。後ろの壁の案内図の矢印が、いくつもの課へ分かれて伸びている(字は無い)。) [作中の画面] > 〈今月の区民の声〉 > 「たらい回しにされた」 3件 > 次に来たら、窓口から外れる **茅野 悠**(心の声):(保育園って何課……?) ## この話で分かること ### 生活保護とは? 条件は? 暮らしに困った時に、国が定めた基準で計算する最低生活費に収入が届かない分を、保護費として支給する制度です。世帯の全員が、資産(生活に使っていない土地・家、預貯金など)・働く力・年金や手当など他の制度を活用し、親族から援助を受けられる時は受けたうえで、収入が最低生活費に届かない時に、その差額が支給されます。 ### 生活保護の申請は、どこでする? 住んでいる地域を受け持つ福祉事務所の生活保護の担当が、相談と申請の窓口です。福祉事務所を設置していない町村に住む人は、町村役場でも申請の手続ができます。 ### 持ち家や車があっても、生活保護は申請できる? 申請はできます。厚生労働省は「持ち家がある人でも申請できます」と案内しています。自動車は処分するのが原則ですが、通勤用の自動車を持ちながら仕事を探している場合に、処分しないまま保護を受けられる場合があります。 ### 生活保護を申請すると、家族に連絡が行く?(扶養照会とは) 申請のあとに、福祉事務所が親族(扶養義務者)に援助ができるかを問い合わせることがあり、これを扶養照会といいます。ただし、厚生労働省は「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と案内しています。 --- その申請、ここで合ってます 第1話「生活保護は、恥ですか」 つづく # カウンセリングは、無料です 第1話「本日のご契約で、30%オフです」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/karte-yohaku/muryo/manga/1-muryo/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[カウンセリングは、無料です](https://tooneru.com/karte-yohaku/muryo/) - 作者:カルテの余白 - クレジット:原作・脚本:カルテの余白/作画:カルテの余白/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/karte-yohaku/muryo/manga/1-muryo/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 土曜の昼、文房具の会社で営業事務をする槙野 茉莉(29)は、毎朝15分の自己処理をやめたくて、美容クリニックの医療脱毛の無料の相談に行った。帰る時には、見積もりが3枚になっていた。医療脱毛5回、二重の手術、糸のリフト。合計64万円が「本日のご契約で30%オフ」。茉莉は脱毛だけに署名し、二重と糸は「トイレに」と言って逃げてきた。駅前の喫茶店で、高校の先輩で元・美容外科の看護師の汐見 沙耶は、契約の書面の日付を見る。書面を受け取った今日を1日目として8日目まで、書面かメールなどで知らせれば解約できる(クーリング・オフ)。ただしこの決まりに入るのは、期間が1か月を超え、5万円を超える、決まった方法の施術だけ。5回で1年の脱毛は入るが、1回で終わる手術は入らない事が多い。茉莉は、二重と糸は今日は帰り、脱毛も家でもう一度考えると決める。沙耶は「私も、そっち側に座ってたから」と言う。その夜、クリニックから電話が来る。「二重のモニターの枠が、あと1つ空きまして」。 ## 登場人物 - **槙野 茉莉**:主人公。29歳、文房具の会社の営業事務。毎朝15分の自己処理をやめたくて、医療脱毛の無料の相談に行った。 - **汐見 沙耶**:31歳、茉莉の高校の先輩。元・美容外科の看護師で、相談の係もしていた。今は訪問看護の看護師。 - **カウンセラー**:美容クリニックの相談の係。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:パールの白い相談室。白いテーブルの上に、扇のように並んだ3枚の見積書(字は読めない)。右から伸びた女性の手が、ペンを持ったまま止まる。見積書の1枚が、絵の枠の下の線を越えて手前へ滑り出る。) > 土曜の昼。美容クリニックの、無料の相談。 **カウンセラー**:「本日のご契約なら」 **カウンセラー**:「30%オフです」 [作中の画面] > 〈見積書 3枚〉 > 医療脱毛 5回(1年):22万円 > 二重の手術(1回):28万円 > 糸のリフト(1回):14万円 > 合計 64万円 → 本日のご契約で 約45万円 (絵:テーブルの向こうで、栗色のまとめ髪に白い制服の女性の相談の係が、タブレットを胸に抱え、片手を差し出して、完ぺきな笑顔で話しかける。) **カウンセラー**:「二重も糸も今日だけのお値段で」 (絵:相談室のふかふかの椅子の上で、肩下までの茶色の髪の20代後半の女性が、見積書を見たまま口を半分開けて固まる。) [人物の紹介] > 文房具の会社の営業事務(29歳) > 槙野 茉莉 **槙野 茉莉**(心の声):(脱毛の相談に来ただけなのに) **槙野 茉莉**:「……ですよね」 > 今日決めないと、約19万円、高くなる。 > 毎朝の15分を、やめたかっただけなのに。 > 1時間後。駅前の喫茶店。 (絵:くすんだラベンダー色の古い喫茶店。左で茉莉が3枚の紙をテーブルに広げ、右で黒いショートボブに丸い眼鏡の30代の女性が、腕を組んで紙をのぞき込む。) [人物の紹介] > 高校の先輩・元美容外科の看護師 > 汐見 沙耶 **汐見 沙耶**:「でサインはどれ?」 **槙野 茉莉**:「脱毛だけ」 **槙野 茉莉**:「二重と糸はトイレって言って逃げてきた」 **汐見 沙耶**:「えらい」 (絵:契約の書面の上の、日付の欄を指す女性の人さし指の寄り(字は読めない)。横に冷めかけのコーヒー。) **汐見 沙耶**:「うーん日付は今日だね」 **汐見 沙耶**:「ならまだ8日あるよ」 > **ℹ クーリング・オフ(美容医療)**(現実の事実):契約した後でも、決まった期間の内なら、理由を言わずに契約を解除できる仕組みです。美容医療の契約が特定商取引法の特定継続的役務提供に当たる時は、契約の書面を受け取った日から数えて8日を過ぎるまでに、書面か電子メールなどで知らせれば解除できます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「特定商取引に関する法律」第48条(特定継続的役務提供等契約の解除)](https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057) [作中の画面] > 〈8日の数え〉 > 契約の書面を受け取った日を、1日目に数える > 今日(土)が1日目 → 次の土曜が8日目 > 8日目までに、書面かメールなどで知らせれば、解約できる **槙野 茉莉**:「え、待って戻せるの?」 **汐見 沙耶**:「この1枚はね」 (絵:沙耶の顔の寄り。眼鏡の奥の目が、少しだけ厳しくなる。窓からの白っぽい冬の光。) **汐見 沙耶**:「この決まりに入るのは条件があるの」 > **ℹ 特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)**(現実の事実):特定商取引法で決まっている、長い期間続けて受けるサービスの契約の種類です。美容医療では、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約で、脱毛(光の照射か針で電気を流す方法)、にきび・しみ等の除去、しわ・たるみの軽減(薬剤か糸)、脂肪の減少、歯の漂白など、決まった方法の物が入ります。入る契約は、クーリング・オフと、途中の解約の上限の決まりがあります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「特定商取引に関する法律施行令」第24条・別表第四](https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295) > - 出典:[e-Gov 法令検索「特定商取引に関する法律施行規則」第91条](https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089) [作中の画面] > 〈美容医療で、この決まりに入る契約〉 > 期間が1か月を超える > 金額が5万円を超える > 脱毛・しみ・しわやたるみ・脂肪など、決まった方法の施術 > 5回で1年の脱毛は、入る。 > 1回で終わる手術は、入らない事が多い。 (絵:茉莉の寄り。二重と糸の2枚の見積書(字は読めない)を両手で前に差し出すように持ち、眉を寄せる。見積書が、絵の枠の右の線を越えて手前へはみ出す。) **槙野 茉莉**:「じゃあ二重と糸は」 **汐見 沙耶**:「今日サインしてたら」 **汐見 沙耶**:「戻せなかったかも」 **槙野 茉莉**:「ひっ」 **槙野 茉莉**:「ねえエステの脱毛と何が違うの?」 **汐見 沙耶**:「光で毛の根っこを壊すのは」 **汐見 沙耶**:「お医者さんの仕事なんだよ」 > **ℹ 医療脱毛(いりょうだつもう)**(現実の事実):厚生労働省は、機器が医療用かどうかを問わず、レーザーなど強い光を毛根に当てて毛乳頭などを壊す行為は、医師でない人が仕事として行えば医師法第17条に違反するとしています(2001年の通知。2025年の通知でも改めて示しています)。毛根を壊す脱毛は医師が行う医療で、医療機関で受けます。 > - 出典:[厚生労働省医政局医事課長通知「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」(平成13年11月8日 医政医発第105号。那覇市の掲載)](https://www.city.naha.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/817/h131108_105.pdf) > - 出典:[厚生労働省医政局長通知「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日 医政発0815第21号)](https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65283.html) (絵:回想。パールの白い相談室で、白い制服の沙耶が、見積書を差し出してほほえむ。今より髪が長い。) **汐見 沙耶**:「私も前は」 (絵:今の喫茶店。沙耶がコーヒーカップに目を落とし、少しだけ苦く笑う。) **汐見 沙耶**:「そっち側に座ってたから」 **槙野 茉莉**:「沙耶さん……」 **汐見 沙耶**:「今日は決めなくていいんだよ」 (絵:喫茶店の窓ぎわ。茉莉が3枚の見積書を重ねてトートバッグにしまい、肩の力を抜いて笑う。向かいで沙耶がほほえんで見守る。) **槙野 茉莉**:「二重と糸は今日は帰る」 **槙野 茉莉**:「脱毛も家でもう一回考える」 **汐見 沙耶**:「うんそれでいい」 > 夜。茉莉の部屋。 (絵:細い横の帯の寄り。スマホを耳に当てた茉莉の、大きく見開いた目。) (絵:夜の小さな部屋。ベッドの端に座った茉莉が、スマホを耳に当てたまま、ひざの上の見積書の束を見下ろす。窓の外は冬の夜。) **カウンセラー**:「槙野さま先ほどはありがとうございました」 **カウンセラー**:「二重のモニターの枠があと1つ空きまして」 **カウンセラー**:「半額になります」 > 8日の、1日目の夜。 ## この話で分かること ### クーリング・オフとは? 美容医療の契約でも使える? 契約した後でも、決まった期間の内なら、理由を言わずに契約を解除できる仕組みです。美容医療の契約は、条件に合えば特定商取引法の「特定継続的役務提供」になり、クーリング・オフができます。 ### クーリング・オフの期間は? 何日目まで? 特定継続的役務提供の契約は、契約の書面を受け取った日から数えて8日を過ぎるまでに、書面か電子メールなどの電磁的記録で知らせれば解除できます。書面を受け取った日を1日目に数えます。 ### 医療脱毛とエステ脱毛(美容脱毛)の違いは? 厚生労働省は、機器が医療用かどうかを問わず、レーザーなど強い光を毛根に当てて毛乳頭などを壊す行為は、医師でない人が仕事として行えば医師法第17条に違反するとしています。毛根を壊す脱毛は、医師が行う医療です。 ### 美容クリニックの無料の相談で、施術を決めるのは誰? 厚生労働省は2025年8月の通知で、医師や看護師などの資格の無い人が「カウンセラー」として、希望を聞いて具体的な治療の方法を選んで勧めたり決めたりする事は、医師法第17条に反するとしています。料金の説明の形を取っていても同じです。施術の内容とリスクは、医師の診察を受けて、医師から説明を受けて決めます。 ### 美容医療の契約を途中で解約したら、いくら払う? 特定継続的役務提供の美容医療の契約は、クーリング・オフの期間の後でも途中で解約できます。施術が始まる前なら2万円まで、始まった後なら、受けた分の代金に加えて、5万円か残りの代金の20%の低い方までしか請求されません。 --- カウンセリングは、無料です 第1話「本日のご契約で、30%オフです」 つづく # この会社、いくらですか。 第1話「機械だけで、1億」 この作品には、DXMAコンサルティング株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「DXMAコンサルティング株式会社」は、実在の会社です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/dxma/nedan/manga/1-kaisha-nedan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[この会社、いくらですか。](https://tooneru.com/dxma/nedan/) - 作者:DXMAコンサルティング株式会社 - クレジット:企画:DXMAコンサルティング株式会社/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/dxma/nedan/manga/1-kaisha-nedan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 金属の部品を削る町工場の社長・深町 修造(67)は、取引先の銀行が出した「会社の値段」の試算を笑い飛ばした。想定の譲渡額は約3,200万円。機械だけで1億かかった工場だった。工場は継がないと10年前に決めた娘の遥は、従業員22人を残したまま父に引退してほしい。だが父は「なら、いい。閉める」と言う。工場の土地の賃貸の更新まで8か月。遥は会社の値段の測り方(純資産・純資産に数年分の利益・EBITDA×倍率)を調べ、変えられるのは利益の方だと気づき、会社の値段の相談を受ける DXMAコンサルティング株式会社の早瀬を工場に呼ぶ。早瀬は、見積もりが全部、社長の頭の中にしかないことを「買う側から見ると、いちばん怖い」と言い、売る前に「磨き上げ」、まず見積もりを紙に出そうと持ちかける。父は1件だけ、見積もりの出し方を声に出し、遥が書き取った。その夜、いちばん古い職人の岩城が、ノートを見て「売られるなら、辞める」と上着を脱いだ。 ## 登場人物 - **深町 遥**:会計事務所で働く34歳。父の工場は継がないと10年前に決めた。従業員を残したまま、父に引退してほしい。 - **深町 修造**:金属の部品を削る町工場の社長(67歳)。見積もりは全部、自分の頭の中にある。 - **早瀬 湊**:DXMAコンサルティング株式会社の担当。会社の値段の相談を受ける。工場の床には慣れていない。 - **岩城 勝**:いちばん古い旋盤の職人(62歳)。口数が少ない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:町工場の事務所。左で、作業着の年配の社長が白い封筒を破りながら、目を細めて笑っている。右で、紺のスーツの娘が身をかがめて手元をのぞく。奥の窓の向こうに旋盤の並ぶ現場。) [人物の紹介] > 金属の部品を削る町工場の社長(67歳) > 深町 修造 > 金曜の夕方。父の工場の事務所。 **深町 修造**:「開けるぞ」 [作中の画面] > 〈会社の値段の試算〉 > 想定の譲渡額:約3,200万円 > 出した人:取引先の銀行の担当 > 測り方:純資産に、営業利益の2年分を足した > **ℹ 営業利益(えいぎょうりえき)**(現実の事実):会社の本業から出た利益です。売上高から売上原価を引いて売上総利益(粗利)を出し、そこから販売費と一般管理費(人件費・家賃など)を引いて求めます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「営業利益」](https://kotobank.jp/word/%E5%96%B6%E6%A5%AD%E5%88%A9%E7%9B%8A-1225) **深町 遥**:「3,200万……?」 **深町 修造**:「がはは機械だけで1億かかったんだぞ」 **深町 遥**:「笑ってる場合?」 (絵:娘の寄り。紙の数字を2度見して、眉を寄せる。肩までの黒髪、細い眼鏡、紺のスーツ。) [人物の紹介] > 会計事務所で働く、社長の娘 > 深町 遥 > 父の工場は、継がない。10年前に、私が決めた。 **深町 修造**:「なら、いい」 (絵:社長の横顔の寄り。外した紐つきの老眼鏡を手に、机に伏せた試算の紙を見下ろす。表情は静か。) **深町 修造**:「閉める」 **深町 遥**:「ちょっと待ってみんなは?」 **深町 修造**:「22人には来月言う」 [作中の画面] > 〈工場の土地の、賃貸の更新〉 > あと8か月。父は、更新しないと決めた > その夜。遥の部屋。 (絵:夜の部屋の机。電気スタンドの白い明かりの下で、遥が試算の紙と電卓を並べ、頬杖をついている。奥に閉じたノートパソコン。) **深町 遥**(心の声):(なんでこの値段なの) > 会社の値段には、よく使われる測り方がある。 [作中の画面] > 〈会社の値段の、よくある測り方(中小企業庁の資料から)〉 > 1. 純資産:持っている物から借金を引いた額。機械は、帳簿の額か、今売れる値段で数える > 2. 純資産に、数年分の利益を足す(何年分かは交渉で決まる。1〜3年が多い) > 3. EBITDA×倍率:似た上場会社の倍率を使って測る > **ℹ 時価純資産法(じかじゅんしさんほう)**(現実の事実):会社の資産と負債を、帳簿の額ではなく今の値段に数え直して差し引き、残った純資産を株式の値段とする測り方です。中小企業の M&A では、この純資産に数年分の利益を足した額を譲渡額とする例もあります。 > - 問:機械を高く買ったのに、値段が低いのはなぜ? 答:純資産で測る時は、機械を帳簿に残っている額か、今の値段に数え直した額で数え、買った時の値段では数えないためです。 > - 問:純資産に足す利益は、何年分? 答:利益の種類(税引後利益・経常利益など)と年数(通常1〜3年)は事例ごとに違い、交渉で決まることが多いとされています。 > - 出典:[中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料2「中小M&Aの譲渡額の算定方法」](https://www.meti.go.jp/files/900016261.pdf) > **ℹ EV/EBITDA 倍率法(ばいりつほう)**(現実の事実):会社の EBITDA(簡単には「営業利益+減価償却費」で出す)に、似た上場会社から出した倍率をかけ、借入れから現預金を引いた額を差し引いて、株式の値段を出す測り方です。中小 M&A で多く使われるとされています。 > - 問:中小企業も、上場会社と同じ倍率? 答:中小企業の株式は上場会社より売り買いしにくいため、30%ほど低く見る例もあるとされています。 > - 問:EBITDA は何と読む? 答:「イービットダー」や「イービットディーエー」と読みます。 > - 出典:[中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料2「中小M&Aの譲渡額の算定方法」](https://www.meti.go.jp/files/900016261.pdf) > 1億で買った機械も、今の値段で数えれば、ずっと小さい。 **深町 遥**(つぶやき):「……でも利益の方は変えられる」 > 翌週の月曜。工場の現場。 **早瀬 湊**:「失礼します」 (絵:旋盤の並ぶ明るい現場。右で、紺のスーツに革靴の若い男が、床の油だまりに片足を突っ込んで固まっている。左で、遥が額に手をあてている。奥で、作業着の職人たちが手を止めて見ている。) [人物の紹介] > DXMAコンサルティング株式会社 > 早瀬 湊 **深町 遥**:「そこ、油です」 **早瀬 湊**:「……はい」 > 会社の値段の相談を受ける会社の人。遥が、自分で呼んだ。 [作中の画面] > 〈遥が申し込んだ相談〉 > DXMAコンサルティング株式会社 譲渡・事業承継 > 相談した事:父の工場の値段の試算が、思っていたより低い (絵:事務所の応接の机。左で、早瀬が名刺を手に座る。右で、修造が腕を組んで向かいに座る。机の上に白い名刺が1枚(字は無い)と湯のみ。) **早瀬 湊**:「あの見積もりはどなたが?」 **深町 修造**:「俺だ」 **早瀬 湊**:「えっ全部ですか」 **深町 修造**:「全部だ」 (絵:修造の寄り。自分のこめかみを人差し指で指す。手前の机の上には湯のみだけで、書類は1枚も無い。) **深町 修造**:「ここにある」 > 見積もりの台帳は、無い。父の頭の中に、22年分ある。 **早瀬 湊**:「すみませんでも買う側から見ると」 **早瀬 湊**:「それがいちばん怖いんです」 [作中の画面] > 〈買う側の目〉 > 社長が辞めた次の日に、見積もりが出せない会社 > =社長がいないと回らない(属人化した)会社 > **ℹ 属人化(ぞくじんか)**(現実の事実):仕事のやり方や取引が、特定の人(多くは社長)の頭の中や人柄に頼っていて、その人がいないと回らない状態です。中小企業庁の中小 M&A ガイドラインは、中小 M&A の対象の事業は、経営者個人の信用・人柄などの属人的な要素に大きく影響される傾向があると書いています。 > - 問:どうすれば変えられる? 答:ガイドラインは、M&A に先立って、経営の状況や課題をはっきりさせる「見える化」と、価値を高める「磨き上げ」を挙げています。 > - 出典:[中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」](https://www.meti.go.jp/files/900016275.pdf) **深町 修造**:「俺の会社だ!」 (絵:立ち上がって机に両手をつく修造(右)。向かいの早瀬(左)は座ったまま、まっすぐ見返す。机の上に湯のみ。) **深町 修造**:「俺がいて何が悪い」 **早瀬 湊**:「い、いえ悪くないです」 **早瀬 湊**:「値段が付きにくいだけです」 (絵:机の上の手元の寄り。早瀬の手が、白い紙に3つの四角を描き、下の2つにペンで丸を付ける(字は無い)。) **早瀬 湊**:「ただ動かせる所と動かせない所があるんです」 [作中の画面] > 〈会社の値段のうち、動かせる所〉 > 倍率:EBITDA にかける倍率は、業種と市場で決まる。会社の中からは動かしにくい > 利益:仕事のやり方で変わる > 社長がいなくても回るか:紙に出せば変わる **早瀬 湊**:「売る前に磨き上げましょう」 > **ℹ 磨き上げ(みがきあげ)(事業承継の)**(現実の事実):事業承継や M&A の前に、経営の状況や課題をはっきりさせ(見える化)、会社の価値を高めるために経営を良くしておくことです。中小企業庁の中小 M&A ガイドラインは、M&A に先立つ「見える化」「磨き上げ」を挙げています。 > - 問:最低限、何をしておく? 答:ガイドラインは最低限として、株式の整理・集約(株主名簿・名義株の確かめなど)と、事業用の資産の整理・集約(名義・担保・会社と経営者個人の財産の区別)を挙げています。 > - 出典:[中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」](https://www.meti.go.jp/files/900016275.pdf) **深町 遥**:「でも8か月しかないんです」 (絵:事務所。左で、早瀬が描いた紙を机に置いたまま、遥の方を向く。右で、遥が窓の外の現場(旋盤と職人たち)を背に、両手を握って立つ。) **早瀬 湊**:「なら8か月でできる所から」 **早瀬 湊**:「まず、見積もりを紙に」 **深町 修造**:「……ふん勝手にしろ」 > 夕方。3号機の前。 **深町 遥**:「お父さん1件だけお願い」 (絵:旋盤の前。左で、修造が削りかけの金属の部品を手に、横を向いている。右で、遥が開いたノートとペンを持って立っている。白い蛍光灯の平らな光。) **深町 修造**:「これは材料が丸棒で」 **深町 修造**:「段取りが昼飯2回分」 > **ℹ 段取り(だんどり)(工場の段取り)**(現実の事実):物事を行う順と、その前の準備の事です。部品を削る工場では、品を削り始める前に、刃物や材料を機械に取り付けて合わせる準備を段取りと呼び、その時間も見積もりの手間に入れます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「段取り」](https://kotobank.jp/word/%E6%AE%B5%E5%8F%96%E3%82%8A-564544) **深町 遥**:「もう時間で言って」 **深町 修造**:「1時間半」 **深町 修造**:「合わせて24,800円」 (絵:左で、修造が天井を見上げて、もう答えを言い終えている。右で、遥が電卓を手に打ちながら、口がぽかんと開く。) **深町 遥**:「うそまだ打ってるのに」 (絵:夜の現場。旋盤の上に開いたノート。びっしり書かれた字(読めない線だけ)と小さな図。横に、使い込んだ電卓と、油の染みた軍手。) > 父の見積もりが、初めて1件、紙になった。 [作中の画面] > 〈見積もりの紙 1件目〉 > 材料:丸棒 > 段取り:1時間半 > 削る時間・検査・運ぶ手間を足して > 合わせて:24,800円 **深町 修造**:「明日は8番を書いとけ」 **岩城 勝**:「売るんだな」 (絵:暗くなった現場の入口。右で、白髪の短い年配の職人が、戸口に立って低い声で言う。左の奥で、遥がノートを手に、こちらを振り向く。) [人物の紹介] > いちばん古い旋盤の職人(62歳) > 岩城 勝 **深町 遥**:「待って岩城さん違うの」 **岩城 勝**:「売られるなら」 (絵:黒いシャツの岩城が、脱いだ作業着の上着を振り払うように投げる。伸ばした腕の先で、上着が右へ飛ぶ。顔はこわばっている。) **岩城 勝**:「辞める」 > 見積もりの品を、いちばん速く削れるのは、岩城さんだ。 > その人が辞めれば、会社の値段は、また下がる。 ## この話で分かること ### 会社を売ると、いくらになる? 中小企業の M&A では、簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法(EBITDA×倍率)などで出した株式や事業の値段をもとに、譲渡額を交渉することが多いとされています。純資産に数年分の利益を足す例もあります。出した額がそのまま譲渡額になるとは限らず、最後は当事者が合意した額になります。 ### EV/EBITDA 倍率法の計算は? 株式の値段=EBITDA×EV/EBITDA 倍率-純有利子負債(有利子負債-現預金)で出します。EBITDA は簡単には「営業利益+減価償却費」で、倍率は似た上場会社から出します。 ### 機械を高く買ったのに、会社の値段が低いのはなぜ? 純資産で測る時、機械は帳簿に残っている額(簿価純資産法)か、今の値段に数え直した額(時価純資産法)で数え、買った時の値段では数えないためです。 ### 社長の頭の中にしか仕事のやり方がない(属人化)会社は、どうすればいい? 中小企業庁のガイドラインは、中小 M&A の対象の事業は経営者個人の信用・人柄などの属人的な要素に大きく影響される傾向があると書き、M&A に先立つ「見える化」「磨き上げ」を挙げています。 ### 会社を売るか迷った時、どこに相談できる? 中小企業庁のガイドラインは、まず顧問税理士などの身近な支援機関に相談することを勧めています。国の相談の窓口として、各都道府県に事業承継・引継ぎ支援センターがあります。 --- この会社、いくらですか。 第1話「機械だけで、1億」 つづく # なぜ、私だけ怒られるの? 第1話「今日、3回目です」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/okorareru/manga/1-okorareru-3kaime/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[なぜ、私だけ怒られるの?](https://tooneru.com/henshubu/okorareru/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/okorareru/manga/1-okorareru-3kaime/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 15時02分、印刷会社の営業部。1年目の営業事務・戸田 七瀬は、見積書の締め切りを忘れ、今日3回目の「戸田!」を課長から浴びる。モニターの縁の付箋は23枚。書いた事は覚えているのに、どこに書いたかを忘れる。試用期間の面談まであと9日。夕方、同じ課の沖 晴彦は、叱るかわりに付箋を数え「書く場所が多すぎますね」と言う。沖も忘れる人で、昼のカレーまで1冊のメモ帳に書いていた。沖の決めは4つ。書く所は1冊だけ、頼まれたらその場で書く、期限の近い順に並べる、終わったら線で消す。2人で付箋を写して並べ直すと、今日の18時までの返事が1つ残っていた。17時52分、七瀬は電話をかけて間に合わせ、翌朝の「戸田!」は1回だった。その夜、七瀬は「仕事 ミスばかり」と調べ、相談の先の名前を何度も開いて閉じる。メモ帳のいちばん下の行に書いたのは「病院、予約」。翌朝、それを見た沖は「書けてますね」とだけ言った。 ## 登場人物 - **戸田 七瀬**:印刷会社の営業部の営業事務。1年目、23歳。締め切りと頼まれ事を忘れては、課長に呼ばれる。口ぐせは「すみません」。 - **沖 晴彦**:同じ課の営業事務。34歳。怒らない。自分も忘れるので、何でも方眼のメモ帳1冊に書く。 - **大槻 光男**:営業部の課長。48歳。声が大きい。口ぐせは「〜だろ」。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:昼の印刷会社の営業部のフロア。右手前で、モニターのまわりが付箋だらけの机の前の若い女性が、肩をすくめて振り向く。左奥の席で、課長が立ち上がって呼んでいる。白い蛍光灯の光。) [人物の紹介] > 営業部・営業事務(1年目) > 戸田 七瀬 > 15時02分。印刷会社の営業部。 **大槻 光男**:「戸田!」 **大槻 光男**:「見積書15時って言ったろ」 **戸田 七瀬**:「あっ」 **戸田 七瀬**:「すみません」 [作中の画面] > 〈今日の、課長の「戸田!」〉 > 9時40分 会議室の予約 > 11時15分 校正の戻し > 15時02分 見積書 > **ℹ 校正(こうせい)(印刷の校正)**(現実の事実):印刷する前の試しの刷り(校正刷り・ゲラ)を原稿と照らし合わせて、字の誤りや体裁の誤りを直す事です。印刷会社の営業は、お客さんが直しを書き込んだ校正を受け取り、印刷所へ戻します。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「校正」](https://kotobank.jp/word/%E6%A0%A1%E6%AD%A3-62415) > 今日、3回目。 (絵:モニターの縁の寄り。縁のまわりに何枚も貼られた黄色い付箋(字は無い)。1枚がはがれて、絵の枠の下の線を越えて手前へ落ちていく。) > 付箋は、23枚。 **戸田 七瀬**(心の声):(書いたのに) > 書いた事は、覚えている。どこに書いたかを、忘れる。 > 17時30分。同じ課の島。 **戸田 七瀬**(心の声):(面談まであと9日) [作中の画面] > 〈試用期間の面談まで〉 > あと9日 > **ℹ 試用期間(しようきかん)**(現実の事実):採用した後、本採用の前に、実際に働きながら仕事の力や向き不向きを見る期間です。2〜3か月とする会社が多くあります。試用期間の終わりに面談をして、本採用にするかを決める会社もあります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典)「試用期間」](https://kotobank.jp/word/%E8%A9%A6%E7%94%A8%E6%9C%9F%E9%96%93-180499) **沖 晴彦**:「戸田さん」 (絵:夕方の営業部の島。左で、七瀬がモニターの前で机に突っ伏している。右の席で、眼鏡の男性が方眼のメモ帳に書く手を止めて、七瀬の方を見る。) [人物の紹介] > 同じ課の営業事務 > 沖 晴彦 **沖 晴彦**:「付箋数えてもいいですか」 **戸田 七瀬**:「えっ」 (絵:七瀬の机。右で、沖が真顔でモニターの付箋を1枚ずつ指でさして数えている。左で、七瀬が困った顔で見ている。) **沖 晴彦**:「23枚」 **沖 晴彦**:「書く場所が多すぎますね」 **戸田 七瀬**:「怒らないんですか」 **沖 晴彦**:「怒っても付箋は減らないので」 **戸田 七瀬**:「……それはそう」 **沖 晴彦**:「僕はこれ1冊だけ」 (絵:沖の両手の寄り。左手で開いた方眼のメモ帳を持ち、右手にペン。短い行が縦に並び、何本かに定規で引いたような線が引いてある(字は読めない線だけ)。) [作中の画面] > 〈沖のメモ帳〉 > 印刷所へ電話(10時まで) > 請求書の封入(13時まで) > 昼:カレー > 名刺の発注(16時まで) **戸田 七瀬**:「昼カレー?」 **沖 晴彦**:「忘れるので」 **戸田 七瀬**:「カレーを?」 **沖 晴彦**:「はい」 > この人も、忘れる人だった。 **沖 晴彦**:「1つだけ試してみませんか」 **沖 晴彦**:「頼まれたらその場でここに書く」 (絵:島の机の上。右から沖が、新しい方眼のメモ帳を七瀬の前へ差し出す。左で、七瀬がそれを受け取るか迷って手を止める。) [作中の画面] > 〈沖さんの決め〉 > 1. 書く所は、1冊だけ > 2. 頼まれたら、その場で書く > 3. 期限の近い順に、上から並べる > 4. 終わったら、線で消す **戸田 七瀬**:「付箋はどうするんですか」 **沖 晴彦**:「全部この1冊に写します」 **戸田 七瀬**:「23枚」 **沖 晴彦**:「手伝います」 (絵:夜の営業部の島。窓の外は暗い。左で七瀬がモニターの付箋をはがしながらメモ帳に書き写し、右で沖がはがした付箋を1枚持って読み上げる。机の上に、はがした付箋の小さな山。) > はがして、写して、期限の順に並べ直す。 [作中の画面] > 〈並べ直したら〉 > 明日の10時までの物が、3つ > 今日の18時までの物が、1つ **戸田 七瀬**:「あっ」 **戸田 七瀬**:「今日のがある」 (絵:七瀬の手の寄り。メモ帳の1行を人さし指でおさえる(字は読めない)。横に、机の上のデジタルの時計(数字は読めない)。) > 印刷所への、色の確認の返事。18時まで。 [作中の画面] > 〈今〉 > 17時52分 **沖 晴彦**:「まだ8分あります!」 **戸田 七瀬**:「電話します!」 (絵:立ったまま受話器を耳に当て、頭を下げる七瀬(左)。握った受話器とコードが、絵の枠の右の線を越えて外へ出る。右奥で、沖が腕時計を見ている。) **戸田 七瀬**:「お返事遅くなってすみません!」 **戸田 七瀬**:「間に合いました!」 **沖 晴彦**:「線で消しましょう」 > 翌朝。9時。 (絵:朝の営業部。左で、課長が七瀬の机の横に立ち、印刷所から届いた色見本の紙を見ている。右で、七瀬がメモ帳を胸に抱えて身構える。) [人物の紹介] > 営業部の課長 > 大槻 光男 **大槻 光男**:「印刷所が返事が早くて助かったって」 **戸田 七瀬**:「え」 **大槻 光男**:「ふん」 > 「戸田!」は、その日、1回だった。 **戸田 七瀬**:「あの」 (絵:昼の給湯室。左で、七瀬が缶コーヒーを両手で差し出す。右で、沖が少し驚いた顔で受け取る。) **戸田 七瀬**:「昨日のお礼です」 **沖 晴彦**:「僕は数えただけです」 **戸田 七瀬**:「カレーのぶんも」 **沖 晴彦**:「カレーは僕の昼です」 > その夜。七瀬の部屋。 (絵:暗いワンルーム。ベッドの上でひざを抱え、スマホを見る七瀬。画面の青白い光だけが顔に当たる(画面の字は読めない)。) **戸田 七瀬**(心の声):(1冊にしてもまた忘れたら) > 「仕事 ミスばかり」と打った。 [作中の画面] > 〈スマホの画面〉 > 困りごとの相談の先 > 発達障害者支援センター(都道府県・指定都市) > **ℹ 発達障害者支援(はったつしょうがいしゃしえん)センター**(現実の事実):発達障害者支援法にもとづいて、都道府県と指定都市が自ら行うか、指定した法人に行わせる相談の窓口です。発達障害のある人と家族などの相談に応じ、就労の支援や、医療・福祉・労働などの関係機関の紹介をします。 > - 問:診断を受けていなくても相談できる? 答:相談の対象や受け付けの仕方はセンターごとに違います。お住まいの都道府県・指定都市のセンターに確かめます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「発達障害者支援法」第14条(発達障害者支援センター等)・第25条(指定都市)](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC1000000167) > - 出典:[国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センターの事業内容」](https://www.rehab.go.jp/ddis/action/work/) **戸田 七瀬**(つぶやき):「発達……」 > 開いて、閉じて、また開いた。 (絵:机の上の寄り。七瀬の手が、方眼のメモ帳のいちばん下の新しい行にペンで書く(字は読めない線)。メモ帳の角が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。伏せたスマホが横にある。) > 1冊だけの、いちばん下の行。 [作中の画面] > 〈七瀬のメモ帳〉 > 病院、予約 > 翌朝。 (絵:朝の営業部の島。右で、沖が七瀬の机の上に開いたままのメモ帳に目を留め、手を止めている。左で、七瀬がコートを脱ぎかけて気づく。) **沖 晴彦**:「書けてますね」 **戸田 七瀬**:「……はい」 **戸田 七瀬**:「期限は金曜です」 ## この話で分かること ### 仕事のミスが多い時、まず何を変える? 作中では、頼まれた事を書く場所を1冊にまとめ、頼まれたその場で書き、期限の近い順に並べ、終わったら線で消す、の4つにしました。書く場所が多いと、書いた事を覚えていても、どこに書いたかを忘れてしまいます。 ### やることリストは、どう並べる? 作中では、期限の近い物を上から並べ直しました。並べ直すと、今日のうちに返す物が1つ残っていた事に気づけました。 ### 発達障害者支援センターとは? 発達障害者支援法にもとづき、都道府県と指定都市が自ら行うか、指定した法人に行わせる相談の窓口です。発達障害のある人と家族などの相談に応じ、就労の支援や関係機関の紹介をします。 ### 仕事で怒られてばかりの時、自分だけが悪い? 作中では、課長に呼ばれた3回はどれも、書いた場所を忘れた事が元でした。やり方を変えると、翌日は呼ばれる回数が減りました。怒られた回数ではなく、何を忘れたかを1つずつ見ると、変えられる所が見つかる事があります。 --- なぜ、私だけ怒られるの? 第1話「今日、3回目です」 つづく # 整備士、9年目。辞める前に。 第1話「車の中の、退職届」 この作品には、株式会社PMAgentのサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「RIDE JOB Mechanic」は、株式会社PMAgentの実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/pmagent/seibishi/manga/1-seibishi-yametai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[整備士、9年目。辞める前に。](https://tooneru.com/pmagent/seibishi/) - 作者:株式会社PMAgent - クレジット:企画:株式会社PMAgent/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/pmagent/seibishi/manga/1-seibishi-yametai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 21時40分、アパートの駐車場。千尋は、車の中で作業着のまま眠る夫・拓真を見つける。ダッシュボードには「退職届」の封筒。地方の車の販売店で働く2級の整備士、9年目。月末の工場長との面談で出すと言う夫に、千尋は「整備が嫌になったの?」と聞くが、夫は「分かんない」としか言わない。千尋は折り込みの紙の裏に線を引き、嫌な事と好きな事を分けてみる。嫌な事(21時まで・新車の案内の紙・休みの日の電話)はどれも今の店の事で、好きな事は「エンジンの音で悪い所が分かった時」だった。2級は国の資格で本人のもの、仕事を紹介する会社は仕事を探す人から原則として手数料を取れない。拓真は「辞める前に、聞くだけ」と、整備士の仕事を紹介する会社に相談を申し込み、退職届を引き出しにしまう。翌朝、工場長は満面の笑みで言った。「来月から、主任な!」 ## 登場人物 - **本間 拓真**:地方の車の販売店の整備工場で働く2級の整備士。9年目、31歳。口ぐせは「大丈夫」。 - **本間 千尋**:拓真の妻。夫が毎晩21時過ぎに油のにおいで帰るのを見ている。何でも紙に分けて考える。 - **本間 結**:拓真と千尋の娘。4歳。 - **坂口 実**:販売店の整備工場の工場長。いつも入庫の車の数を数えている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜のアパートの駐車場。左で、ゴミ袋を手にした女性が、止まった軽自動車の運転席をのぞき込む。車の中では、紺の作業着の男が座ったまま眠っている。街灯の青白い光。) [人物の紹介] > 整備士の妻 > 本間 千尋 > 21時40分。アパートの駐車場。 > 夫は、車の中で眠っていた。 (絵:車のダッシュボードの寄り。白い封筒が1通(表の字は見えない)。横に、油の染みた軍手。封筒の角が、絵の枠の下の線を越えて手前へ出る。) > 封筒の表に、「退職届」。夫の字だった。 **本間 千尋**:「ねえ」 (絵:車の窓の外から、女性が指で窓をたたく(左)。車の中で、作業着の男が目を覚まし、ぼんやりこちらを見る(右)。短い黒髪、無精ひげ、目の下のくま。) [人物の紹介] > 地方の車の販売店の整備士(9年目) > 本間 拓真 **本間 拓真**:「……あ」 **本間 拓真**:「大丈夫」 > 夫の口ぐせ。大丈夫じゃない時も、大丈夫。 > 22時15分。台所。 (絵:狭い台所の小さなテーブル。右で、作業着のまま遅い夕飯を食べる拓真。左で、向かいに座って頬杖をつく千尋。奥の部屋で、4歳の娘が布団で眠っている。) **本間 拓真**:「……それ月末の面談で出す」 [作中の画面] > 〈月末の、工場長との面談〉 > あと12日 **本間 千尋**:「え……退職って言ってから何日?」 > **ℹ 退職の申し出**(現実の事実):期間を決めずに雇われている人は、いつでも辞める申し入れができ、民法では申し入れの日から2週間たつと雇用が終わります。勤め先の就業規則に申し出の時期の決まりがあれば、それも確かめます。 > - 問:契約社員など、期間を決めて雇われている時は? 答:民法627条は期間を決めない雇用の決まりで、期間を決めた雇用は別の決まりになります。契約書と就業規則を確かめます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) **本間 拓真**:「規則だと1か月前」 **本間 千尋**:「整備が嫌になったの?」 (絵:拓真の寄り。箸を止め、目を伏せる。作業着の胸に油の染み。) **本間 拓真**:「分かんない」 > その日の昼。販売店の整備工場。 **坂口 実**:「本間、あと3台」 (絵:昼の車の販売店の整備工場。リフトに上がった車の下で作業する拓真(右)。左で、工場長がタブレットを手に、入口に並ぶ車の列を指さす。白い天井の光。) [人物の紹介] > 販売店の整備工場の工場長 > 坂口 実 [作中の画面] > 〈今日の入庫〉 > 車検 4台・点検 6台・修理 2台 > 整備士 5人 > **ℹ 車検(しゃけん)(自動車の検査)**(現実の事実):道路運送車両法で受けるよう決められている、自動車の検査の呼び名です。国の安全の基準(保安基準)に合う車に、自動車検査証(車検証)が出ます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典)「車検」](https://kotobank.jp/word/%E8%BB%8A%E6%A4%9C-75879) > **ℹ 入庫(にゅうこ)**(現実の事実):物が倉庫に入る事、また車が車庫に入る事です。整備工場では、車検・点検・修理のためにお客さんの車を工場に受け入れる事を入庫と呼びます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「入庫」](https://kotobank.jp/word/%E5%85%A5%E5%BA%AB-6970) **本間 拓真**:「はい」 (絵:店の受付の前。左で、作業着の拓真が、点検の終わった客に、新車の案内の紙を両手で差し出している。右の手前で、後ろ姿の客が顎に手を当て、受け取りかねている。) > 点検のたびに、新車の案内を渡す決まり。 > 22時30分。台所。 **本間 千尋**:「よし分けてみよう」 (絵:台所のテーブルの手元の寄り。左から千尋の手が、新聞の折り込みの紙の裏に縦の線を1本引いて、2つに分ける(字はまだ無い)。右に、拓真の手が湯のみを持っている。) **本間 拓真**:「家計簿?」 **本間 千尋**:「そう家計簿と同じ」 [作中の画面] > 〈折り込みの紙の裏〉 > 嫌な事:21時まで/新車の案内の紙/休みの日の電話 > 好きな事: **本間 千尋**:「好きな事は?」 (絵:工場の記憶。拓真が、開いたボンネットを片手で支え、もう片手をエンジンの縁にのせて、目を閉じてエンジンの音に耳を澄ます。手前で、エンジンの部品が静かに光る。) **本間 拓真**:「音で分かった時は」 **本間 拓真**:「ちょっといい」 > エンジンの音で、悪い所が分かる時がある。 **本間 千尋**:「ねえ見て嫌な事全部」 (絵:台所。左で、千尋が紙の左の列を指でなぞる。右で、拓真が頬に手を当てて、紙をのぞき込む。) **本間 千尋**:「この店の事だね」 > 嫌なのは、整備じゃなかった。 **本間 拓真**:「でも整備士はここしか」 **本間 千尋**:「2級って国の資格でしょ」 > **ℹ 自動車整備士技能検定(じどうしゃせいびしぎのうけんてい)**(現実の事実):自動車整備士の資格は、国(国土交通省)の技能検定に合格して得る資格です。一級・二級・三級と特殊整備士に分かれ、二級は「自動車の一般的な整備ができること」とされています。 > - 問:勤め先を変えても、資格は使える? 答:技能検定は本人が受けて合格する国の検定なので、資格は勤め先の会社ではなく本人のものです。 > - 出典:[国土交通省「自動車整備士になるには」(自動車整備士の種類)](https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000003.html) **本間 拓真**:「そうだけど」 **本間 拓真**:「転職の相談とか金かかるだろ」 (絵:台所。左で、千尋がスマホの画面を拓真に向ける(画面に字は無い)。右で、拓真が腕を組んで疑っている。) [作中の画面] > 〈千尋が調べた事〉 > 仕事を紹介する会社(有料職業紹介事業者)は、仕事を探す人からは、原則として手数料を取ってはいけない(職業安定法) > **ℹ 有料職業紹介事業(ゆうりょうしょくぎょうしょうかいじぎょう)**(現実の事実):国の許可を受けて、仕事を探す人と人を探す会社の間に入り、雇用が決まるように取り持つ事業です。職業安定法は、有料職業紹介事業者が仕事を探す人から手数料を取ることを、省令で定める一部の場合を除いて禁じています。 > - 問:転職エージェントの手数料は、誰が払う? 答:仕事を探す人からは原則として取れないので、多くは人を探す会社の側が払います。手数料は、国が定めた種類と額か、国に届け出た手数料表によります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「職業安定法」第32条の3(手数料)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141) **本間 拓真**:「タダ……?」 (絵:スマホの画面の寄り。相談を申し込む入力の画面(字は読めない線と四角だけ)。親指が下の大きなボタンの上で止まっている。) [作中の画面] > 〈スマホの画面〉 > 株式会社PMAgent RIDE JOB Mechanic > 整備士の求人・転職 相談の申し込み > 今の職場:車の販売店の整備工場(9年目・二級) > 整備士の仕事を紹介する会社。千尋が見つけた。 **本間 拓真**:「辞めるって決めたわけじゃ」 **本間 千尋**:「分かってる辞める前に聞くだけ」 (絵:台所のテーブルの上。左から千尋の手が、拓真の手ごとスマホを包む。拓真の親指がボタンを押す。スマホの角が、絵の枠の右の線を越えて外へ出る。) (絵:台所。右で、拓真が白い封筒を引き出しにしまいながら、少し照れて笑う。左で、千尋がほっとして頬杖をつく。奥の布団で、娘が寝返りを打ち、寝言を言う。) **本間 結**:「むにゃ……パパくさい……」 **本間 拓真**:「油か」 **本間 拓真**:「辞めるのは聞いてから」 > 夫が、「大丈夫」のほかを、言った。 > 翌朝。整備工場。 **坂口 実**:「本間!」 (絵:朝の整備工場。左で、工場長がタブレットを高く掲げて満面の笑み。掲げたタブレットが、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。右で、作業着の拓真が工具箱を持ったまま固まる。) **坂口 実**:「喜べ!来月から主任な!」 (絵:拓真の寄り。顔がこわばり、目だけが工場の壁の時計を見る。) **本間 拓真**(心の声):(主任……) > 主任になれば、21時は、22時になる。 > 引き出しの封筒は、まだ捨てていない。 ## この話で分かること ### 自動車整備士の資格の種類は? 国(国土交通省)の技能検定で、一級・二級・三級と特殊整備士に分かれます。二級は「自動車の一般的な整備ができること」、一級は「二級より高度な整備ができること」とされています。 ### 転職エージェントに相談すると、お金はかかる? 職業安定法は、有料職業紹介事業者が仕事を探す人から手数料を取ることを禁じています(省令で定める一部の場合を除く)。手数料は、多くは人を探す会社の側が払います。 ### 会社を辞めるには、何日前に言えばいい? 期間を決めずに雇われている人は、民法では辞める申し入れの日から2週間たつと雇用が終わります。勤め先の就業規則に申し出の時期の決まりがあれば、それも確かめます。 ### 整備士の資格は、勤め先を変えても使える? 自動車整備士の資格は、本人が国の技能検定に合格して得るものなので、勤め先を変えても本人の資格のままです。 --- 整備士、9年目。辞める前に。 第1話「車の中の、退職届」 つづく # アウトは、自分で言う。 第1話「審判は、いません」 この作品には、ファイブフォー株式会社のサービスが登場します(同社の確認を受けて制作) この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「スポ人」は、ファイブフォー株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/spojin/selfjudge/manga/1-self-judge/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[アウトは、自分で言う。](https://tooneru.com/spojin/selfjudge/) - 作者:スポ人 - クレジット:企画:スポ人(ファイブフォー株式会社)/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/spojin/selfjudge/manga/1-self-judge/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ テニスを始めて半年の小学3年生・森下 ひかりの、初めての大会。付き添う父の隆之は、テニスをしたことがない。受付で「試合はセルフジャッジです」と言われ、審判はいないと知る。ほかの子の母の長谷川に、4人のリーグの見方と、セルフジャッジの決まり(迷ったらグッド、コートの外の人は口出ししない)を教わる。試合では、父の目にアウトに見えた際どい球に、ひかりは「見えなかったから、グッド」と言い、そのポイントを落とす。声を出しかけた父を、長谷川が止める。ひかりは初めて1ゲームを取り、1-4で負けた。試合の後、勝った相手の子が「さっきのグッド、ありがとう」と言いに来る。2試合目、今度は相手の子が「アウト」と言った球が、父の目には線の上に見えた。 ## 登場人物 - **森下 ひかり**:テニスを始めて半年の小学3年生。初めての大会に出る。 - **森下 隆之**:ひかりの父。会社員で、テニスをしたことがない。荷物が多い。 - **長谷川 律子**:同じ大会に出る、ほかの子の母。テニス歴20年で、セルフジャッジの決まりに詳しい。 - **水野 ゆずき**:ひかりと同じリーグの子。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の公園のテニスコートを見下ろす。左の金網の外に、折りたたみの椅子2つと大きな保冷箱を置き、金網のそばで身を乗り出してコートを見つめる父親。右のコートの中で、小さな女の子が片手を低く出している。) > 土曜の朝。公園のテニスコート。 (絵:コートの白い線のきわで弾んだ、緑の点のある黄色いボールの寄り。線に触れたか、触れていないか分からない。弾んだボールが、絵の枠の下の線を越えて手前へ出る。) **森下 ひかり**:「グッド」 (絵:コートの中の女の子を、斜め下から見上げる。手のひらを下に向けて片手を低く出し、まっすぐ前を見る。) [人物の紹介] > 小学3年生・テニスを始めて半年 > 森下 ひかり [作中の画面] > 〈スコア〉 > 予選リーグ 1試合目 > ひかり 0-3 相手 > 4ゲーム先取 > 相手の球を、入っていた、と言った。 (絵:金網の外の父親の寄り。口を開きかけて、そのまま閉じる。指が金網をつかんでいる。) [人物の紹介] > テニスをしたことのない父 > 森下 隆之 **森下 隆之**(心の声):(えっ今のはアウトだろ) > 言いかけて、飲み込んだ。 > 2時間前。 > 大会の受付。 **受付の人**:「受付は9時までです」 (絵:コートの横の白いテント。右で、名札を付けた受付の人が紙を手にしている。左で、折りたたみの椅子2つと保冷箱と大きな鞄を抱えた父親が、汗をかいて立つ。間に、ラケットを背負った女の子。) **森下 隆之**:「ふう間に合った……」 **森下 ひかり**:「もうパパ荷物多すぎ!」 [作中の画面] > 〈受付の札〉 > スポ人 ジュニアの大会 > 10歳以下 グリーンボール > 試合は、全部セルフジャッジ > **ℹ グリーンボール**(現実の事実):10歳以下の子どものテニスで使う、ふつうの球より弾みの低い球の1つです。国際テニス連盟の規則では、黄色に緑の点の球で、普通の大きさのコートで、上達した9〜10歳の選手が使うことを勧めています。もっと小さい子には、オレンジボール(8〜10歳)・レッドボール(8歳まで)があります。 > - 問:どの球を使うかは、どこで分かる? 答:大会の要項に、種目ごとの使う球が書かれます。作中の大会は、10歳以下の種目でグリーンボールを使う設定です。 > - 出典:[国際テニス連盟(ITF)「Rules of Tennis 2026」(規則30、付則 I・付則 IV・付則 VI)](https://www.itftennis.com/media/7221/2026-rules-of-tennis-english.pdf) **受付の人**:「試合はセルフジャッジです」 **森下 隆之**:「セルフ……?」 **長谷川 律子**:「初めてですか?」 (絵:ドロー表の貼られた板の前(表の字は読めない)。左で、肩にタオルを掛け、あごに手を当てて戸惑う父親。右で、日よけの帽子をかぶった別の子の母親が、表の線を指でたどる。) [人物の紹介] > ほかの子の母・テニス歴20年 > 長谷川 律子 **長谷川 律子**:「大丈夫4人のリーグです」 **長谷川 律子**:「負けてもまだ試合があります」 **森下 隆之**:「あの審判はどこに?」 **長谷川 律子**:「ふふいません」 **森下 ひかり**:「パパ」 (絵:靴ひもを結び終えて、父親を見上げる女の子。緑の点のある黄色いボールを1つ握っている。) **森下 ひかり**:「外から言ったらだめだからね」 **森下 隆之**:「分かってる言わないよ」 > そして、1試合目。 (絵:金網の外の、折りたたみの椅子の並ぶ所。左の椅子の父親が、肘掛けを握って身を乗り出し、目を見開いて口を開ける。右の自分の椅子に座った母親は、落ち着いてコートを見ている。) **森下 隆之**:「えっなんで相手の球を自分で決めるんだ」 **長谷川 律子**:「自分のコートの球は自分で言うんです」 **長谷川 律子**:「迷ったらグッド」 [作中の画面] > 〈セルフジャッジの5原則 日本テニス協会〉 > 1. 判定が難しい場合は「グッド」(相手に有利に) > 2. 「アウト」「フォールト」は、ボールとラインの間に、はっきり空間が見えた時 > 3. サーバーは打つ前に、相手に聞こえる声でスコアを言う > 4. 判定は、相手に聞こえる声と、相手に見えるハンドシグナルで、速やかに > 5. コートの外の人は、セルフジャッジに口出ししない > **ℹ セルフジャッジ**(現実の事実):審判(チェアアンパイア)がつかない試合で、選手が自分たちで判定して進める方法です。日本テニス協会は「セルフジャッジ5原則」として、判定が難しい場合は「グッド」(相手に有利に)、「アウト」はボールとラインの間にはっきり空間が見えた時、コートの外の人はセルフジャッジに口出ししない、などを挙げています。 > - 問:判定で相手ともめたら? 答:大会によっては、コートを見回る審判(ロービングアンパイア)がいます。呼べる時は呼び、いない時は大会の本部(レフェリー)に伝えます。 > - 問:グッドとアウトの合図は? 答:判定は、相手に聞こえる声と、相手に見えるハンドシグナルで、速やかに伝えます(5原則の4)。 > - 出典:[日本テニス協会「テニス競技でのセルフジャッジ5原則の順守と推進のお願い」](https://www.jta-tennis.or.jp/Portals/0/resources/information/fairplay/fairplaysuishin.pdf) > - 出典:[日本テニス協会「ロービングアンパイア Q&A」](https://www.jta-tennis.or.jp/umpire/qa/roving_umpire/) > また、線のきわ。 (絵:コートの中。線のきわに落ちたボールを、身をかがめてじっと見る女の子を、地面すれすれから見上げる。) **森下 ひかり**:「見えなかったから」 **森下 ひかり**:「グッド」 **森下 隆之**(心の声):(あーっ今のもアウトだ……) (絵:金網をつかむ父親の手の寄り。指に力が入り、金網が少しゆがむ。手の指先が、絵の枠の右の線を越えて外へ出る。) **長谷川 律子**:「お父さん」 **長谷川 律子**:「判定に口を出すのはだめです」 **森下 隆之**:「……はい」 (絵:左の手前で、後ろ姿の女の子がフォアハンドで打ち返す。球は相手のコートの右へ抜け、右奥の相手の子は横へ跳んで手を伸ばすが届かない。) [人物の紹介] > 同じリーグの子 > 水野 ゆずき [作中の画面] > 〈スコア〉 > ひかり 1-3 相手 > 初めての、1ゲーム。 > 父は、音を立てずに拍手した。 **長谷川 律子**:「ふふ拍手はいいんですよ」 (絵:ネットをはさんで握手する2人の女の子。) > 1-4。負けた。 **森下 隆之**:「なあさっきのアウトだったろ」 (絵:コートの出口。左で、保冷箱を抱えて待つ父親。右で、タオルを頭からかぶって歩いて来る女の子。) **森下 ひかり**:「見えなかったもん」 **水野 ゆずき**:「ひかりちゃん!」 (絵:走って来た相手の子が、女の子の前で立ち止まり、片手を差し出す。) **水野 ゆずき**:「さっきのグッド」 **水野 ゆずき**:「ありがとう」 > 勝ったのは、向こうなのに。 (絵:少し離れて2人を見る父親の顔の寄り。こわばっていた顔が、ゆっくりほどける。) **森下 隆之**(心の声):(……そうか) > アウトは、自分で言う。グッドも、自分で言う。 > 2試合目。 **2試合目の相手**:「アウト」 (絵:2試合目のコート。右の、帽子をかぶった背の高い相手の子が、人さし指を高く上げて「アウト」の合図をする。上げた指が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。左で、ラケットを構えた女の子が、はっとして相手の方を見る。) (絵:金網の外から見た、相手のコートの線のきわの寄り。緑の点のあるボールが、白い線にかかって見える。手前に金網の線。) > パパの目には、線の上に見えた。 **森下 隆之**(心の声):(……え今のは入ってた) > コートの外の人は、口を出さない。 ## この話で分かること ### ジュニアテニスの大会、初めての時に親が知っておくことは? 審判のいない試合では、選手が自分たちで判定するセルフジャッジで進みます。日本テニス協会のセルフジャッジ5原則は、コートの外の人に、セルフジャッジへ口出ししないよう求めています。受付の締切の時刻・試合の形(リーグかトーナメントか)・使う球は、大会の要項で前もって確かめます。 ### セルフジャッジのルールは? 判定に迷った時は? 判定が難しい場合は「グッド」(相手に有利に)にします。「アウト」「フォールト」は、ボールとラインの間にはっきり空間が見えた時だけです。判定は、相手に聞こえる声と、相手に見えるハンドシグナルで、速やかに伝えます。 ### テニスの試合中、コートの外から親が声をかけていい? 応援はできますが、判定には口を出しません。日本テニス協会のセルフジャッジ5原則は、コートの外の人に、セルフジャッジへの口出しをしないよう求めています。プレーについての助言(コーチング)を認めるか・いつ認めるかは大会を主催する団体が決め、ポイントの最中の助言は認められません(国際テニス連盟の規則30)。 ### グリーンボール・オレンジボール・レッドボールの違いは? どれも10歳以下の子どものテニスで使う、ふつうの球より弾みの低い球です。国際テニス連盟の規則では、レッドボールは8歳までの子が小さなコートで、オレンジボールは8〜10歳の子が、グリーンボールは上達した9〜10歳の子が普通の大きさのコートで使うことを勧めています。グリーンボールは黄色に緑の点の球です。 --- アウトは、自分で言う。 第1話「審判は、いません」 つづく # 親が亡くなったら、家は誰のもの? 第1話「段取り帳、続き」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/souzoku/manga/1-souzoku/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[親が亡くなったら、家は誰のもの?](https://tooneru.com/henshubu/souzoku/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/souzoku/manga/1-souzoku/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 父・守の四十九日の夜、小春は段取り帳に封をした「続き」の頁を見つける。「遺言は、無い。みんなで話せ。まず、戸籍を全部集めろ」。母の澄江は、父の口座が止まり、銀行から戸籍を全部持ってくるよう言われて困っていた。小春が東京へ戻るまで、あと3日。父の本籍は山あいの村からこの町へ移り、書式が変わって作り直されていて、戸籍は3つに分かれていた。柏木は、今は本籍地でない市役所の1つの窓口でまとめて取れる(広域交付)と教える。市役所では、叔父の勝が「兄貴の戸籍なら俺が取る」と言うが、兄弟の分はこの窓口では出せない。半日でそろった戸籍で数えると、父の相続人は、妻の澄江と子の小春の2人。母は「お父さんみたいね」と笑う。けれど段取り帳には、この家のことが1行も書いていなかった。2日後、小春が法務局で家の土地の登記事項証明書を取ると、所有者は1998年に亡くなった祖父・源蔵のままだった。その夜、勝が座卓を叩く。「この土地は、親父の物だ。半分は、俺のだろうが」。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。東京のイベント制作会社の進行管理。父の葬儀の喪主を務めた。 - **篠原 澄江**:母。62歳。書類が苦手。 - **篠原 勝**:叔父(父の弟)。60歳。漁協勤め。声が大きいが兄思い。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。父に仕事を教わった後輩。 - **窓口の人**:市役所の戸籍の窓口の職員。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:冬の夜の篠原家の座敷。仏壇の前に正座した30代の女性が、黒い表紙の古い手帳の、封をした紙を破って開く。仏壇のろうそくの小さな黄色い火。) [人物の紹介] > 父の葬儀で喪主を務めた長女 > 篠原 小春 > 四十九日の夜。 > **ℹ 四十九日(しじゅうくにち)**(現実の事実):仏教で、人が亡くなってからの49日間、またその49日目に行う法要の事です。七七日(なななぬか)とも言います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「四十九日」](https://kotobank.jp/word/%E5%9B%9B%E5%8D%81%E4%B9%9D%E6%97%A5-73290) [窓] > 段取り帳 続き(四十九日が済んだら開けろ) > 遺言は、無い。みんなで話せ。 > まず、戸籍を全部集めろ。 > 俺が生まれた時から、死んだ時までだ。 **篠原 小春**(つぶやき):「お父さんまだ仕切るんだ」 (絵:台所の食卓。左で小柄な60代の女性が、銀行の封筒と通帳を手に困った顔。右で小春が湯のみを手に、母の方を見る。) [人物の紹介] > 母 > 篠原 澄江 **篠原 澄江**:「小春銀行がね」 **篠原 澄江**:「お父さんの口座止めちゃったのよ」 **篠原 小春**:「えっ止まるの?」 **篠原 澄江**:「戸籍を全部持ってきてですって」 > 電気もガスも、父の口座から払っていた。 > 東京に戻るまで、あと3日。 > 翌朝。 (絵:鉛筆のセピアの古い景色。山あいの村の、わら屋根の残る古い家と、小さな田んぼ。) > 父が生まれたのは、山あいの村。 (絵:淡い水彩の、冬の海辺の小さな町。港のそばの、2階建ての古い木の家。) > 結婚して、この町へ。本籍も、移した。 **篠原 小春**(心の声):(戸籍が3つ……) [作中の画面] > 〈父の戸籍(この家の場合)〉 > 生まれた時:山あいの村(祖父の本籍) > 結婚した後:この町 > その後:書式が新しくなり、作り直し > **ℹ 本籍(ほんせき)**(現実の事実):その人の戸籍がある場所です。今住んでいる住所とは関係なく、自由に決められます。相続では、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めるので、本籍を移した人は、前の本籍の戸籍も集めます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)「本籍」](https://kotobank.jp/word/%E6%9C%AC%E7%B1%8D-632255) **篠原 小春**(つぶやき):「郵便で1つずつ頼んだら3日じゃ無理だよ」 (絵:台所の勝手口。ひょろりと背の高い黒いスーツの青年が、書類のファイルを胸に抱えて入ってくる。) [人物の紹介] > つばめ葬祭の葬祭スタッフ > 柏木 蓮 **柏木 蓮**:「あ、それなんですけど」 **柏木 蓮**:「今は市役所の1つの窓口でまとめて取れるんですよ」 **柏木 蓮**:「広域交付っていう仕組みで」 > **ℹ 戸籍の広域交付(こういきこうふ)**(現実の事実):2024年3月1日から、本籍地でない市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになった仕組みです。請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の分です。請求する人が窓口に行き、顔写真付きの身分証明書を見せます。郵送や代理人の請求はできず、兄弟姉妹の分も請求できません。 > - 出典:[法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」](https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html) **篠原 小春**:「うそ1か所で?」 > 市役所。戸籍の窓口。 (絵:市役所の戸籍の窓口。左で大柄な60代の男性が、カウンターに身を乗り出し、片手を広げて大きな声で話す。右のカウンターの向こうで、40代の女性の職員が身をかがめて応じる。) [人物の紹介] > 父の弟(漁協勤め) > 篠原 勝 **篠原 勝**:「兄貴の戸籍なら俺が取ってやる」 **窓口の人**:「申し訳ありません」 **窓口の人**:「ご兄弟の分はこの窓口ではお出しできなくて」 **篠原 勝**:「なんだと!」 **篠原 小春**:「叔父さん声……」 > この窓口でまとめて取れるのは、本人・夫や妻・親や祖父母・子や孫の分。 > 昼。 (絵:カウンターの上に重なった、厚い戸籍の写しの束(字は読めない)。受け取る女性の両手。束の端が、絵の枠の下の線を越えて手前へ出る。) **篠原 小春**:「半日でそろった……!」 > 夜。台所。 (絵:夜の台所の食卓。戸籍の束と、手書きの家族の図の紙。左で小春がペンの先で図を指し、右で母が老眼鏡を上げてのぞき込む。窓の外は暗い冬の海。) [作中の画面] > 〈父の相続人(この家の場合)〉 > 妻:澄江(いつも相続人) > 子:小春(1番目の順位) > 父の親・兄弟:子がいるので入らない > 分け方の目安:妻 2分の1・子 2分の1 **篠原 小春**:「よし父の相続人はお母さんと私の2人」 > **ℹ 法定相続人(ほうていそうぞくにん)**(現実の事実):民法で決まっている相続人です。亡くなった人の配偶者は、いつも相続人になります。ほかは順位があり、1番目は子、子がいない時は2番目の父母・祖父母、子も父母もいない時は3番目の兄弟姉妹が、配偶者と一緒に相続人になります。配偶者と子が相続人の時の分け方の目安(法定相続分)は、配偶者が2分の1、子が全員で2分の1です。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」(第887条・第889条・第890条・第900条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.4132「相続人の範囲と法定相続分」](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm) **篠原 澄江**:「あらまあ」 **篠原 澄江**:「小春お父さんみたいね」 **篠原 小春**:「えやめてよ」 (絵:冬の昼、縁側から見た古い家の門と小さな庭。その向こうに灰青の冬の海。) > でも、段取り帳には、この家のことが、1行も書いていない。 **篠原 小春**:「家は……?」 > 2日後。法務局。 > **ℹ 法務局(ほうむきょく)**(現実の事実):法務省の地方の役所で、原則として都道府県ごとに置かれています。土地や建物の登記、会社の登記、供託、人権の相談などの仕事をします。土地の持ち主の名義を確かめる登記事項証明書も、ここで受け取れます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・共同通信ニュース用語解説)「法務局」](https://kotobank.jp/word/%E6%B3%95%E5%8B%99%E5%B1%80-628558) (絵:法務局の窓口の前。肩越しに、登記の証明書の紙(字は読めない)を両手で持って見つめる女性。) [作中の画面] > 〈登記事項証明書(この家の土地)〉 > 所有者:篠原 源蔵 > (祖父。1998年に亡くなった) **篠原 小春**(心の声):(待って) **篠原 小春**(心の声):(土地の名義じいちゃんのまま……?) > **ℹ 土地の名義(登記事項証明書)**(現実の事実):土地や建物の登記の内容(どこの土地か、だれが所有者か等)を証明する書類です。法務局で請求できます。所有者が亡くなっても、相続の登記をしないと、名義は亡くなった人のまま残ります。2024年4月1日からは相続登記が義務になり、それより前の相続も2027年3月31日までに登記する必要があります。 > - 出典:[法務省「相続登記の申請義務化について」](https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html) > - 出典:[e-Gov 法令検索「不動産登記法」(第76条の2・第164条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123) > その夜。 **篠原 勝**:「この土地は親父の物だ」 (絵:夜の座敷。座卓を囲む家族。右で大柄な叔父が立ち上がり、拳で座卓を叩く。湯のみが跳ねる。左で小春と、その奥の母が叔父を見上げる。叔父の拳と湯のみの飛んだお茶が、絵の枠の右の線を越える。) **篠原 勝**:「半分は俺のだろうが」 (絵:細い横の帯の寄り。息をのむ小春の目。右目の下に小さなほくろ。) (絵:座敷を少し引いて見る。左に座ったままの小春とその奥の母、右に立ったまま背を向けかける叔父。奥の仏壇に、父の写真と小さなろうそくの火。) > 父の相続人は、2人。 > でも、祖父の土地には、相続人がもう1人いた。 ## この話で分かること ### 法定相続人とは? 誰が相続人になる? 法律で決まっている相続人です。亡くなった人の配偶者(夫や妻)は、いつも相続人になります。ほかは順位があり、1番目は子、子がいない時は2番目の親(父母・祖父母)、子も親もいない時は3番目の兄弟姉妹が、配偶者と一緒に相続人になります。 ### 配偶者と子が相続人の時、法定相続分はどうなる? 民法で決まっている分け方の目安(法定相続分)は、配偶者が2分の1、子が全員で2分の1です。子が2人以上いる時は、2分の1を子の人数で等しく分けます。 ### 相続の手続きで、亡くなった人の戸籍をたくさん集めるのはなぜ? 相続人がだれかを確かめるためです。本籍を移したり、戸籍の書式が新しくなって作り直されたりすると、1人の戸籍がいくつにも分かれます。銀行や登記などの相続の手続きでは、こうした戸籍・除籍の謄本の束を出すよう求められることがあります。 ### 戸籍の広域交付とは? 本籍地でない市役所でも戸籍は取れる? 2024年3月1日から、本籍地でない市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました(広域交付)。請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)の分です。 ### 家の土地の名義が、亡くなった祖父のままだったら? 2024年4月1日から、相続で土地や建物を取得した人は、相続を知り、取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。2024年4月1日より前の相続も対象で、その場合は2027年3月31日までに登記する必要があります。 --- 親が亡くなったら、家は誰のもの? 第1話「段取り帳、続き」 つづく # 水曜日だけ、うちの社員じゃない人が来る。 第1話「今日は、作りません。」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/suiyou/manga/1-junitaku/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[水曜日だけ、うちの社員じゃない人が来る。](https://tooneru.com/hinc/suiyou/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/suiyou/manga/1-junitaku/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 資材の卸の会社に、水曜だけ、H株式会社の AXタスクフォースから蒔田 一葉が来る。社長は「AI の人が来る」と言い、経理の芳賀は電卓を2台並べて身構えた。蒔田は一日中、営業事務の仁科 ゆいの横で、見積もり依頼のメールを注文の紙に書き写す回数を数えるだけで、何も作らなかった。「何も作らないんですか」と聞くゆいに、蒔田は、この契約は物を納める約束ではなく、仕事を一緒に進める約束(準委任)だと話す。昼の数ではいちばん多いのは単価探しだったが、ゆいが毎晩の残業で書き写している夜の分を出し、最初に変える1つは「見積もり依頼から注文の下書き」になった。次の水曜、蒔田が見せた小さな試作は「いつもの」の品番を空けたままにし、ゆいが確かめる形だった。芳賀は「……写すのが、1回、減った」と言い、その夜、ゆいの残業は初めて0になった。蒔田は「まだ試作なので、来週の水曜まで、ほかには使わないでください」と言って帰る。その次の水曜、締めの日。社長が試作を全員に配っていて、先月までの単価のまま、請求書が1枚出ていた。 ## 登場人物 - **仁科 ゆい**:資材の卸の会社の営業事務。入社3年目。見積もり依頼のメールを注文の紙に書き写して、毎晩残業している。答えを早く欲しがる。 - **蒔田 一葉**:H株式会社の AXタスクフォースから、業務委託で毎週水曜に来る実務家。口数が少なく、まず数える。 - **芳賀 トキ子**:経理。この会社に38年。外から来る人を信じない。電卓を2台並べて確かめる。 - **樋口 康夫**:社長。新しい物が好きで、決めるのが早い。「分かった」が口癖。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の小さな事務所。左の机で、年配の女性の経理が電卓を2台、きっちり並べている。真ん中の戸口から、青い作業着の社長が片手を高く上げ、笑って入ってくる。右の机で、若い女性の事務員がペンを持ったまま、社長の方を振り向く。) [人物の紹介] > 社長 > 樋口 康夫 > 水曜、朝9時。資材の卸の事務所。 **樋口 康夫**:「今日からAI の人が来るぞ!」 **芳賀 トキ子**:「ふん電卓出しとこ」 **蒔田 一葉**:「おはようございます」 (絵:事務所の入り口で、青いジャケットの女性が小さく頭を下げる。首から字の無い名札を下げ、手には小さなノートとペンだけ。パソコンの鞄は持っていない。) [人物の紹介] > H株式会社 AXタスクフォース > 蒔田 一葉 **蒔田 一葉**:「今日は見ているだけです」 **樋口 康夫**:「え、AI は?」 > その日、蒔田さんは何も作らなかった。 (絵:ゆいの机の横に丸椅子を置いて座る蒔田。ゆいがパソコンのメールを見ながら、紙の注文の用紙にペンで書き写している。蒔田は膝の上のノートに何かを書き込んでいる。) [人物の紹介] > 営業事務・入社3年目 > 仁科 ゆい **仁科 ゆい**:「あの……見られてると書きにくいです」 **蒔田 一葉**:「いつもどおりでお願いします」 (絵:ノートの寄り。青い袖の手が持つ見開きのページに、短い線を5本ずつ束ねた数えの印が何列も並ぶ。ページの端が、絵の枠の右の線を越えて外へ出る。) [作中の画面] > 〈蒔田さんのノート〉 > 見積もり依頼のメールを、注文の紙へ書き写す:14回 > 単価の表を開いて探す:21回 > 同じ品番を、もう一度打つ:9回 > 朝9時から、夕方5時まで。 (絵:夕方の事務所。帰り支度をしてノートを鞄にしまう蒔田を、左の机のゆいと、右の机の芳賀が、席から見ている。芳賀の机には電卓が2台。) [人物の紹介] > 経理・この会社に38年 > 芳賀 トキ子 **仁科 ゆい**:「あの、何も作らないんですか?」 **芳賀 トキ子**:「ふん業務委託って外注でしょ?」 > **ℹ 業務委託(ぎょうむいたく)**(現実の事実):会社の仕事を、社外の人や会社に任せる時によく使われる呼び名です。民法の契約の章(第三編第二章)の節の名前に「業務委託」は無く、契約で何を約束し、何に報酬を払うかによって、請負や準委任などに当たります。 > - 問:業務委託の契約で、最初に確かめることは? 答:何を約束する契約か(仕事の完成か、事務の処理か)と、報酬を何に払うか(出来上がった物か、した仕事の量か、期間か)です。契約書の名前より、中身の書き方を見ます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第632条(請負)・第643条(委任)・第644条・第648条の2・第656条(準委任)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) **蒔田 一葉**:「はい。今日は作りません」 (絵:蒔田の上半身の寄り。鞄を肩に掛けたまま、ゆいの方へ振り返る。落ち着いた顔で、手のノートを軽く持ち上げる。) **蒔田 一葉**:「順番を決めました」 **仁科 ゆい**(心の声):(えー順番より今夜の残業……) [作中の画面] > 〈月末の締めまで〉 > あと14日 > 仁科さんの残業:毎晩2時間(見積もり依頼の書き写し) **蒔田 一葉**:「あ……うちの契約は物を納める約束じゃないんです」 **蒔田 一葉**:「この仕事を一緒に進める約束です」 [作中の画面] > 〈請負と準委任〉 > 請負:仕事を完成させると約束する。報酬は、その結果に払う > 準委任:事務の処理を引き受け、決まった注意を払って進める > この会社と H株式会社(AXタスクフォース)の契約は、月単位の準委任 > **ℹ 準委任契約(じゅんいにんけいやく)**(現実の事実):法律行為でない事務の処理を、相手に任せる契約です。民法の委任の決まりが準用され(第656条)、引き受けた人は、善良な管理者の注意をもって事務を処理します(第644条)。仕事の完成を約束し、その結果に報酬を払う請負(第632条)とは、約束する物が違います。 > - 問:準委任でも、出来上がった物に報酬を払う形はある? 答:あります。事務の処理で得られる成果に報酬を払うと約束した場合の決まりがあり(第648条の2)、成果を引き渡す時は、引き渡しと同時に報酬を払います。どちらの形かは契約で決めます。 > - 問:準委任だと、何も作らない? 答:準委任でも、仕事の中で仕組みや書類を作ることはあります。違うのは、何を約束し、何に報酬を払うかです。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第632条(請負)・第643条(委任)・第644条・第648条の2・第656条(準委任)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) > - 出典:[H株式会社「AXタスクフォース」(契約の形:月単位の準委任契約)](https://hinc.pro/) **蒔田 一葉**:「数えたらいちばん多かったのは単価探しでした」 **仁科 ゆい**:「でもそれ昼の数ですよね」 (絵:ゆいが、厚い紙の束を机の上に置く。毎晩、書き写した注文の紙の控え。右で蒔田が身を乗り出してのぞく。) **仁科 ゆい**:「夜の分は数えてないですよ……」 (絵:夜9時の事務所。ほかの席の灯りは消え、ゆい1人だけが机の灯りの下で、頬杖をついて、パソコンのメールを紙の注文の用紙に書き写している。) > 毎晩7時から9時、ゆいは、見積もり依頼を注文の紙に写していた。 **蒔田 一葉**:「……なるほど最初はそっちにしましょう」 [作中の画面] > 〈最初に変える1つ〉 > 見積もり依頼のメール → 注文の下書き > 変えるのは、この1つだけ。ほかは、まだ触らない **芳賀 トキ子**:「……ふん」 > 次の水曜。 (絵:次の水曜の朝。蒔田がノートパソコンを開き、画面をゆいに向ける。ゆいが頬杖をついて画面をのぞき込み、後ろから芳賀が腕を組んでのぞく。) [作中の画面] > 〈試作:AI がメールを読んで、注文の下書きにする〉 > 届いたメール:「いつもの M8 のボルト、200本。来週の火曜まで」 > 下書き:品番 ―(確かめる)/数量 200本/単価 単価の表から/納期 来週の火曜 > 「いつもの」の品番は、仁科さんが確かめる **仁科 ゆい**:「え……メールが注文の形になってる」 **仁科 ゆい**:「あれ?品番が空いてる」 **蒔田 一葉**:「「いつもの」はまだ分からないので」 **蒔田 一葉**:「そこは仁科さんが決めてください」 (絵:ゆいが注文の控えのファイルを片手でめくり、指で品番を探しながら、もう片方の手で画面の空いた欄に打ち込む。) > 写すのをやめて、ゆいは確かめる側に回った。 (絵:芳賀が電卓を2台並べて、画面の下書きの数を叩いて確かめる。指が止まり、眼鏡の奥の目が少しだけ和らぐ。) **芳賀 トキ子**:「……写すのが、1回、減った」 > 午後に届いた見積もり依頼も、全部、下書きから始めた。 > その日、夕方6時。 (絵:夕方6時の事務所。白いコートを着たゆいが、席で笑って両手を上へ大きく伸ばす。伸ばした手の先が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。後ろの窓の外はまだ明るく、机の上の書類の山は小さい。) **仁科 ゆい**(つぶやき):「うそ帰れる……」 [作中の画面] > 〈月末の締めまで〉 > あと7日 > 仁科さんの残業:今夜 0時間(夜に写す分が、残っていない) **蒔田 一葉**:「まだ試作なので……」 **蒔田 一葉**:「来週の水曜までほかには使わないでください」 (絵:事務所の戸口。帰り際に振り返って人差し指を立てる蒔田(右)。手前の左で、社長が大きくうなずき、横でゆいが小さく頭を下げる。) **樋口 康夫**:「分かった分かった!」 > 蒔田さんは、社長の「分かった」を、信じた。 > その次の水曜。締めの日。 (絵:水曜の朝の事務所。戸口に立った蒔田の後ろ姿の向こうで、社員みんなが自分の画面に注文の下書きを出して使っている。営業の男性が、得意そうに画面を指さしている。) **社員たち**:「便利!」 **営業の社員**:「社長が全員に配ってくれたんすよ!」 **蒔田 一葉**(つぶやき):「え……全員使ってる……」 (絵:芳賀が1枚の請求書を両手で前へ突き出す。きつく結んだ口。紙の下の端が、絵の枠の下の線を越えて外へ出る。) **芳賀 トキ子**:「ちょっと!古い単価!」 [作中の画面] > 〈請求書〉 > M8 のボルト 単価:先月までの値段 > 今月の単価の改定が、入っていない > 下書きは、先月までの単価の表を見ていた。 ## この話で分かること ### 請負と準委任の違いは? 請負は、仕事を完成させると約束し、その結果に報酬を払う契約です(民法第632条)。準委任は、法律行為でない事務の処理を任せる契約で(第656条・第643条)、引き受けた人は善良な管理者の注意をもって処理します(第644条)。何を約束するか(完成か、事務の処理か)が違います。 ### 業務委託とは? 請負と準委任のどちら? 「業務委託」は、仕事を外に任せる時によく使う呼び名で、民法の契約の章(第三編第二章)の節の名前にはありません。契約で何を約束し、何に報酬を払うかによって、請負や準委任などに当たります。 ### 準委任の契約だと、何も作ってもらえない? 準委任でも、仕事の中で仕組みや書類を作ることはあります。違いは、何を約束し、何に報酬を払うかです。作中の H株式会社の AXタスクフォースの契約は、月単位の準委任契約です。 ### 業務改善は、何から始める? この話では、作る前に、どの作業を何回しているかを数え、いちばん多い1つだけを小さく試しました。昼に見える数だけでなく、残業の時間にしている作業も数に入れると、最初に変える物が変わることがあります。 --- 水曜日だけ、うちの社員じゃない人が来る。 第1話「今日は、作りません。」 つづく # この八百屋、なぜかつぶれない。 第1話「今朝、安かった物だけ」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yaoya/manga/1-yaoya/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[この八百屋、なぜかつぶれない。](https://tooneru.com/henshubu/yaoya/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yaoya/manga/1-yaoya/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 坂の上の団地の商店街。トモエマート 坂上店の青果の契約社員・小谷 菜摘(24)は、2階の窓から向かいの八百屋「八百坂」の朝の客を数えている。今朝も7人。なのに夕方6時、八百坂の棚は空になっている。店長の村瀬 康介は「半年でつぶれるはずだった」あの店に、夕方の野菜の売上で負けていると言い、年末までに客を取れたら正社員の話を本部に出すと約束する。菜摘は「朝だけ アルバイト募集 3時半から」の札を見て、八百坂の2代目・坂井 つぐみに雇われる。翌朝3時半、つぐみの軽トラで卸売市場へ。仲卸の店で、つぐみは品目を決めずに来て、産地が取れすぎて値が崩れた大根を5ケース買う。「発注表、無いんですか」「無いよ。今朝、決める」。店に並べた大根の山に客は来ないが、値札を比べると、大根はトモエマートより安く、トマトは高い。毎朝の相場で値段が違うと知った菜摘は、八百坂は全部が安いのではなく、今朝安かった物だけが安いのだと気づく。閉店後、7人の客では売り切れないはずの大根の箱と、帳面の端の「保育園 9:00」「中華 10:30」。つぐみは振り向かずに言う。「で、向かいの店長には、何て報告すんの?」——窓から数えていた事は、全部ばれていた。 ## 登場人物 - **小谷 菜摘**:主人公。24歳、トモエマート 坂上店の青果の契約社員。本部の発注表どおりに並べるのは得意だが、自分で選んだ事が無い。年末までに向かいの八百屋の客を取れば正社員の話が出る。 - **坂井 つぐみ**:41歳、八百屋「八百坂」の2代目。前は市場の仲卸の店で働いていた。運転が荒く、ぶっきらぼう。人を「あんた」と呼ぶ。 - **村瀬 康介**:45歳、トモエマート 坂上店の店長。本部の数字に追われている。悪い人ではない。 - **仲卸の店の人**:市場の仲卸の店の年配の店員。つぐみを昔から知っている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の坂の上の古い団地の商店街。シャッターの閉まった店が並ぶ通りの右に、小さな八百屋の店先。段ボールの箱に野菜が並び、手書きの値札が立つ。道を歩く人が何人か。通りの左の奥に、白い大きな建物。) > 午前10時。坂の上の商店街。 (絵:スーパーの事務所のブラインドの窓の前。緑のエプロンと三角巾の若い女性が、窓の外の向かいの八百屋の方を見ながら、手の中の数取器を親指で押している。) [人物の紹介] > トモエマート 坂上店の青果の契約社員(24) > 小谷 菜摘 **小谷 菜摘**(心の声):(……7人) **小谷 菜摘**(心の声):(今朝も、7人) > 午後6時。 (絵:夕方の白っぽい光の八百屋の店先。段ボールの箱は空になり、左の奥で、背の高い女性の店主がこちらに背を向けてシャッターに手をかけている。右の手前で、三角巾とエプロンのままの若い女性が立ち止まり、横を見ている。) **小谷 菜摘**:「えっもう空……?」 **小谷 菜摘**(心の声):(7人しか来てないのに) **小谷 菜摘**(心の声):(いやいや売れるわけないって) > 翌日の昼。売場の事務所。 **村瀬 康介**:「小谷さん、ちょっといいかな」 (絵:スーパーの狭い事務所。左で、疲れた顔の40代の店長が窓の外の八百屋を指さしている。右で、緑のエプロンの若い女性がバインダーを胸に抱えて立っている。) [人物の紹介] > トモエマート 坂上店の店長(45) > 村瀬 康介 **村瀬 康介**:「向かいの八百屋さんなんだけどね」 > **ℹ 八百屋(やおや)(青果店)**(現実の事実):野菜や果物を売る店です。国語の辞典では「野菜などの小売りをする店」とされます。辞典では「青物屋」「青果店」が近い言葉として挙がっていて、野菜と果物をまとめて「青果」と言います。 > - 問:八百屋は、どこで仕入れる? 答:卸売市場で、仲卸業者の店から買う店が多くあります。小売店や飲食店は「買出人」として市場に来て、仲卸業者から品物を買うことができます。市場を通さずに、産地から直接仕入れる流通もあります。 > - 出典:[国立国語研究所「基本名詞用法辞典(IPAL)」の「やおや」](https://www2.ninjal.ac.jp/dictionaries/IPALBN/pdf_dir/%E3%82%84%E3%81%8A%E3%82%84.pdf) > - 出典:[農林水産省「わかりやすく解説します!卸売市場ってどんなところ?」](https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-82.pdf) **村瀬 康介**:「半年でつぶれるはずだったんだよねえ」 **小谷 菜摘**:「ですよね朝、7人ですもん」 **村瀬 康介**:「それが夕方の野菜の売上、うちが負けてるの」 **小谷 菜摘**:「負けてる!?」 **村瀬 康介**:「参ったなあ」 (絵:店長の寄り。目を閉じて困ったように笑いながら、顔の前で両手を合わせて頼んでいる。) **村瀬 康介**:「年末までに、あの店の客、取れたら」 **村瀬 康介**:「正社員の話、本部に出すから」 [作中の画面] > 〈年末まで 68日〉 > 八百坂の今朝の客 7人 > 小谷 菜摘の契約:年末まで **小谷 菜摘**(心の声):(正社員……) **小谷 菜摘**(つぶやき):「でも、取るってどうやって」 (絵:八百屋の店先の柱の上に、段ボールを切った手書きの札が下がっている(黒い太いマーカーの線だけで、読める字は無い)。エプロンを外した若い女性が、その札の前で立ち止まって見上げている。) > 段ボールの札。「朝だけアルバイト募集3時半から」 **小谷 菜摘**(心の声):(待って待って3時半って夜中ですよ) **坂井 つぐみ**:「バイト?」 (絵:店の奥から、背の高い女性の店主が大根の段ボールを肩にかついで出てくる。タオルの鉢巻き、作業着に紺の前掛け、耳に赤いマーカー。左の店主が、右の小柄な若い女性を見下ろしている。) [人物の紹介] > 八百坂の2代目(41) > 坂井 つぐみ **坂井 つぐみ**:「朝、起きられる人?」 **小谷 菜摘**(心の声):(中から見たら……分かるかも) **小谷 菜摘**:「は、はい!起きられます」 **坂井 つぐみ**:「じゃ、明日3時半にここね」 **坂井 つぐみ**:「遅れたら、置いてくよ」 **小谷 菜摘**(心の声):(えっ名前も聞かないの?) > 翌朝 3時半。 (絵:夜明け前の暗い空の下を走る、古い軽トラックを正面から。フロントガラス越しに、左の運転席でハンドルを握る店主と、右の助手席で片手を上げて手すりにしがみつく若い女性。) **小谷 菜摘**:「ひいっ」 **坂井 つぐみ**:「しゃべると、舌、噛むよ」 > 午前3時50分。青果の卸売市場。 > **ℹ 卸売市場(おろしうりしじょう)**(現実の事実):全国から集まった野菜・果物・魚・肉・花を取引し、八百屋やスーパーなどの小売店、レストラン、加工業者へ売るための拠点です。卸売業者が農協などから集めた品を、仲卸業者などの買い手に、せりや相対取引(売り手と買い手が1対1で数量と値段を決める取引)で売ります。 > - 問:市場は何時から動いている? 答:農林水産省の解説の例では、荷下ろしは前の日の午後3時ごろから、取引は午前2時ごろから始まり、せりは午前6時ごろ、出荷は午前7時ごろです。時間は市場や品物によって違います。 > - 出典:[農林水産省「わかりやすく解説します!卸売市場ってどんなところ?」](https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-82.pdf) > - 出典:[東京都中央卸売市場「せりのしくみを教えてください」](https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/shikumi/44931) (絵:青果の卸売市場の場内。高い屋根の下に照明が下がり、通路がずっと奥まで続く。野菜の段ボールを積んだ赤い小さな運搬車(ターレ)が何台も走っている。) (絵:同じ場内。左の端をターレが走り抜け、紺の前掛けの若い女性が両手を上げて飛びのく。風で、段ボールの切れ端とキャベツの外葉が上へ舞う。奥を、店主が振り向かずに歩いていく。) (描き文字:ブオオ) **小谷 菜摘**:「わっ!」 **坂井 つぐみ**:「ほら、こっち」 > 仲卸の店は、市場で買った野菜を小分けにして、八百屋や料理屋に売っている。 > **ℹ 仲卸(なかおろし)(仲卸業者)**(現実の事実):卸売市場の中に店を構え、卸売業者から買った品を仕分けて、八百屋・スーパー・料理屋などに売る業者です。市場で仲卸の仕事をするには、市場を開いている所の許可が要ります。卸売業者から仲卸へはせりなどで、仲卸から店へは話し合い(相対)で売るのが一般的な形です。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典)「仲卸業者」](https://kotobank.jp/word/%E4%BB%B2%E5%8D%B8%E6%A5%AD%E8%80%85-345695) (絵:場内の仲卸の店の並び。段ボールの箱が積まれた店先で、左の前掛けの年配の男が大根の箱を開けて見せている。真ん中で背の高い女性の店主が大根を1本持ち上げて重さを見る。右の奥で、若い女性がメモ帳を握って立っている。白い照明。) **仲卸の店の人**:「つぐみちゃん、今朝は大根だよ」 **仲卸の店の人**:「産地が取れすぎて値が崩れてる」 **坂井 つぐみ**:「はいはい知ってる」 **坂井 つぐみ**:「5ケース、ちょうだい」 **小谷 菜摘**:「えっ5ケース……?」 **小谷 菜摘**:「あの……発注表、無いんですか?」 **坂井 つぐみ**:「無いよ」 (絵:店主の寄り。大根の箱を肩にかつぎ、口の端だけでニッと笑う。耳に赤いマーカー。後ろに市場の白い照明。) **坂井 つぐみ**:「今朝、決める」 > 午前7時。八百坂の店先。 (絵:朝の八百屋の店先。段ボールの箱に大根が山のように積まれている。若い女性が大根の束を両手で抱えてよろけ、1本が転がり落ちて絵の枠の下の線を越え、手前へ飛び出してくる。) **小谷 菜摘**(心の声):(大根の山……) > 午前中の客は、3人。 **小谷 菜摘**(つぶやき):「ほらねやっぱり売れない」 (絵:八百屋の店先で、若い女性が、自分の店の値段の控えの紙(読める字は無い)を、段ボールの手書きの値札の横にかざして見比べている。真剣な横顔。) [作中の画面] > 〈今朝の値札〉 > 大根 1本:八百坂 98円/トモエマート 158円 > トマト 1個:八百坂 128円/トモエマート 98円 **小谷 菜摘**:「えっ」 **小谷 菜摘**:「大根は、うちより安いのに」 **小谷 菜摘**:「トマトは高い……?」 **坂井 つぐみ**:「トマトは、今朝高かったから」 (絵:店主の手元と顔の寄り。段ボールの切れ端に、赤い太いマーカーで値段を書き殴っている(太い線だけで読める字は無い)。顔は野菜の並ぶ方を向いている。) **坂井 つぐみ**:「大根は、今朝安かった」 **小谷 菜摘**:「毎朝、値段が違うんですか?」 **坂井 つぐみ**:「そう。相場ってやつ」 > **ℹ 相場(そうば)(野菜の卸売の値段)**(現実の事実):ここでは、卸売市場で取引される野菜の、その日の値段のことです。野菜の卸売の値段は市場で毎日の取引で決まり、市場は毎日の取引の結果(量と値段)を公表しています。天気で産地の出荷の量が平年より増えると値段は下がり、減ると上がりやすくなります。 > - 問:これから野菜が高くなるか、どこで分かる? 答:農林水産省が、東京都中央卸売市場に出荷される主な野菜の生育と卸売の値段の見通しを、産地や卸売会社への聞き取りをもとに月ごとに公表しています。 > - 出典:[農林水産省「わかりやすく解説します!卸売市場ってどんなところ?」](https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-82.pdf) > - 出典:[農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し(令和7年7月)について」](https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/engei/250627.html) **坂井 つぐみ**:「ほら、値札持って」 (絵:若い女性の寄り。手渡された段ボールの大きな値札(赤いマーカーの跡)を軍手の手で持ち、まっすぐ前を見ている。値札の段ボールの角が、絵の枠の右の線を割って外へ飛び出している。) **小谷 菜摘**(心の声):(……全部が安いんじゃないんだ) **小谷 菜摘**:「今朝、安かった物だけ、安い」 [作中の画面] > 〈値段の決め方〉 > トモエマート:本部が、来週の分まで先に決める > 八百坂:その朝の市場の値段で、品と値を決める **小谷 菜摘**(心の声):(うちの発注表と真逆……) > 午後6時。店じまい。 (絵:夕方の八百屋。店先の段ボールの棚は空になっている。でも店の奥の土間に、大根の段ボールの箱がまだ何箱も積んである。手前に、空の箱の間に立ち、横を向く若い女性。) **小谷 菜摘**(心の声):(あれ?大根、まだこんなに) > 今日の客は、7人。 **小谷 菜摘**(心の声):(7人で5ケースは無理だよね) (絵:店の奥の古い机の上の帳面の寄り。開いたページの端に、鉛筆の小さな書き込み(読める字は無い、線だけ)。横に赤いマーカー。) [作中の画面] > 〈帳面の端〉 > 保育園 9:00 > 中華 10:30 **小谷 菜摘**(心の声):(保育園?中華?) **小谷 菜摘**(つぶやき):「これって、誰に……」 **坂井 つぐみ**:「で、」 (絵:夕方の店先。右で、店主がシャッターに手をかけたまま背を向けている。左で、若い女性が帳面を持ったまま固まっている。) **坂井 つぐみ**:「向かいの店長には、」 **坂井 つぐみ**:「何て報告すんの?」 **小谷 菜摘**:「な、なんで……」 (絵:若い女性の寄り。顔から血の気が引き、こめかみに汗。目だけが店主の背中を追っている。) **坂井 つぐみ**:「窓から毎朝、数えてたでしょ」 **坂井 つぐみ**:「7人って」 (絵:夜の商店街を上から見下ろす構図。左に、2階の窓だけが白く明るい建物。右に、灯りの消えた小さな店の並び。奥の坂の上に、団地の窓の灯り。) [作中の画面] > 〈年末まで 67日〉 > 八百坂の今日の客 7人 > 店長への報告:まだ書いていない **坂井 つぐみ**:「明日も、3時半ね」 ## この話で分かること ### 八百屋とは? 青果店との違いは? 野菜や果物を売る店です。国語の辞典では「野菜などの小売りをする店」とされます。野菜と果物をまとめて「青果」と言うので、同じ種類の店が「青果店」とも呼ばれます。 ### 八百屋はスーパーより安い? いつも安いとは限りません。野菜の卸売の値段は市場の毎日の取引で決まり、日によって変わります。店ごとに、いつ・どれだけ仕入れて、売り値をいつ決めるかが違うので、品目と日によって、八百屋が安い時もスーパーが安い時もあります。 ### 野菜の値段は、なぜ日によって違う? 野菜の卸売の値段は、卸売市場で毎日の取引(せり・相対取引)で決まるためです。天気で産地の育ち方と出荷の量が変わり、出荷の量が平年より多いと値段は下がり、少ないと上がりやすくなります。 ### 卸売市場は、何時から動いている? 農林水産省の解説の例では、荷下ろしは前の日の午後3時ごろから、取引は午前2時ごろから始まり、せりは午前6時ごろ、出荷は午前7時ごろです。 --- この八百屋、なぜかつぶれない。 第1話「今朝、安かった物だけ」 つづく # 今日から、AI 担当です。 第1話「全部、禁止にします。」 この作品には、D株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/d-inc/aitanto/manga/1-ai-rule/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[今日から、AI 担当です。](https://tooneru.com/d-inc/aitanto/) - 作者:D株式会社 - クレジット:企画:D株式会社/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/d-inc/aitanto/manga/1-ai-rule/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 部品の工場の朝礼で、社長が「今日から AI 担当は浜野さんだ」と言った。総務14年の浜野 ゆかりは、来月の全社の説明会まで30日で、全員が使えるようにしろと言われる。その日の午後、営業の立花が、お客の会社の名前・担当の方の名前・単価の入った見積もりの文を、無料の AI のチャットにそのまま貼っていたと分かる。浜野は「全部禁止」の紙を貼るが、3日後、立花は非常階段で隠れて AI を使っていた。その夜、浜野は国の資料を読み、いけなかったのは AI ではなく、個人情報と金額を、何に使われるか分からない所へ入れたことだと気づく。浜野は備品の貸し出し簿と同じ形で「AI の使い方の決まり」を1枚に書き、立花の「名前を消しても、会社の名前で分かりますよ」で、会社の名前・案件の名前も書き足す。翌週の朝礼で、その1枚が初めて読み上げられた。喜んだ社長は「研修は外に頼め」と言う。渡された申込みの紙の予算の欄は、0円だった。 ## 登場人物 - **浜野 ゆかり**:部品の工場の総務。勤続14年。決まりを作るのは慣れているが、AI の決まりは作ったことがない。朝礼で突然「AI 担当」になった。 - **立花 大地**:営業の2年目。新しい物をすぐ試す。見積もりのメールを AI で書いて、浜野に見せに来た。 - **砂川 勲**:社長。勢いで決める。AI のことはよく分かっていない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:工場の前の朝の朝礼。小さな台の上の社長が、台の右横に立つ事務服の40代の女性を指さす。女性は1人だけ、こわばった顔。右には作業着と帽子の社員たちが集まり、台の方を見ている。) > 月曜、朝8時半。部品の工場の朝礼。 **砂川 勲**:「今日からAI 担当は浜野さんだ!」 **社員たち**:「おおー」 (絵:浜野の寄り。まわりで拍手する手の中、口元だけ笑おうとして固まっている。) [人物の紹介] > 総務・勤続14年 > 浜野 ゆかり **浜野 ゆかり**(心の声):(えっなんで私?) **砂川 勲**:「来月の説明会で全員が使えるように!」 [作中の画面] > 〈全社の AI 説明会まで〉 > あと30日 **砂川 勲**:「で、AI って何人で来るんだ?」 (絵:台を降りた社長が、浜野の肩を大きな手でたたき、満面の笑みで顔を寄せる(左に社長、右に浜野)。) [人物の紹介] > 社長 > 砂川 勲 **浜野 ゆかり**:「……人じゃないです」 > その日の午後。総務の机。 (絵:総務の机。浜野が古い分厚いファイルを机の上で開く。中は、手書きの枠の表がならぶ備品の貸し出し簿。机の上に付箋と朱肉。) > 14年、総務で決まりを作ってきた。 > AI の決まりは、作ったことがない。 **立花 大地**:「浜野さん見てください!」 (絵:若い営業の男性が、得意そうにスマホの画面を浜野に見せる。左に浜野、右に営業。画面は光っているだけで、字は見えない。) [人物の紹介] > 営業・2年目 > 立花 大地 **立花 大地**:「見積もりのメールAI で一発で書けましたよ」 [作中の画面] > 〈立花さんのスマホ〉 > 無料の AI のチャットに、そのまま貼った見積もりの文 > 入っていた物:お客の会社の名前/担当の方の名前/単価と数量 (絵:浜野の顔の寄り。目を見開き、持っていたボールペンが手から落ちる。落ちるペンが、絵の枠の下の線を越えて外へ出る。) **浜野 ゆかり**:「全部禁止!」 (絵:総務の掲示板。浜野が大きな紙を両手で押さえ、画鋲で留める。紙の左下の端がめくれて、絵の枠の左の線を越えて外へ出る。) [作中の画面] > 〈お知らせ〉 > 社内での AI の利用を、当面、すべて禁止します。 総務 > 3日後。非常階段の踊り場。 (絵:非常階段の踊り場。立花が背中を丸め、うつむいてスマホを両手で打っている。上の段の開いた戸の前で、浜野がそれを見ている(左上に浜野、右下に立花)。) **立花 大地**:「今のうちに返信を……」 **立花 大地**:「あ、いやこれは……」 (絵:浜野に気づいた立花が、あわててスマホを背中に隠し、ひきつった笑顔を向ける。) > 禁止したら、見えない所で使うだけだ。 > その夜。総務の机。 (絵:夜の総務の机。机の灯りの下で、浜野が印刷した資料の束に蛍光ペンで線を引いている。手元にはぬるくなったお茶。) > いけなかったのは、AI じゃない。 > お客の名前と金額を、何に使われるか分からない所へ入れたこと。 [作中の画面] > 〈国の資料に引いた線〉 > 個人情報を含む文を AI に入れる時は、もともとの利用の目的の範囲かを確かめる > 入れた個人のデータが、答えを出す以外(学習など)に使われないかを、サービスの側で確かめる(個人情報保護委員会 2023年6月) > AI に個人情報・機密情報を不適切に入れないよう注意する(AI 事業者ガイドライン) > **ℹ 個人情報(こじんじょうほう)**(現実の事実):生きている個人に関する情報で、名前や生年月日などで、その人が誰かが分かる物です(個人情報保護法第2条)。ほかの情報と簡単に照らし合わせて誰か分かる物も含みます。お客の担当の方の名前が入った見積もりの文も、個人情報を含む文になります。 > - 問:会社が生成 AI に個人情報を入れる時、何を確かめる? 答:個人情報保護委員会は、もともとの利用の目的を達成するのに必要な範囲かを十分に確かめること、本人の同意なく入れた個人データが答えを出す以外の目的で扱われると法律に違反する可能性があるので、サービスの側がそのデータを機械学習に使わないこと等を確かめることを挙げています。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条(定義)](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057) > - 出典:[個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf) > **ℹ 機密情報(きみつじょうほう)**(現実の事実):会社の外に出さないと決めている情報です。どれを機密にするかは会社ごとに決めます。AI 事業者ガイドラインは、AI を使う事業者に、AI のシステム・サービスへ機密情報等を不適切に入れないよう注意を払うことを挙げています。 > - 問:国のガイドラインは、AI を使う会社に何を求めている? 答:AI 事業者ガイドライン(第1.2版)は、AI を使う事業者に、提供する側の決めた使い方を守った利用、個人情報・機密情報を不適切に入れないこと、セキュリティの注意を守ることなどを挙げています。社内の人が AI を正しく使えるよう、必要な教育を行うことも期待されています。 > - 出典:[総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」第5部 AI 利用者に関する事項(U-4・U-5)・第2部 C 8) 教育・リテラシー(令和8年3月31日)](https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf) > 翌日。 **立花 大地**:「あれこれ備品の貸し出し簿ですよね?」 (絵:総務の机。浜野が、備品の貸し出し簿と同じ枠の表を手書きで作っている。横の椅子に、立花が背もたれを抱えて後ろ向きに座ってのぞく(左に浜野、右に立花)。) **浜野 ゆかり**:「そう書き慣れてる形なの」 [作中の画面] > 〈AI の使い方の決まり(案)〉 > 使ってよい道具:会社で決めた物だけ > 入れてよい物:自分で書いた文・もう公開されている情報 > 入れない物:お客の名前・連絡先・見積もりの金額 > 迷ったら:総務の浜野へ **立花 大地**:「でも名前を消しても」 **立花 大地**:「会社の名前で分かりますよ」 **浜野 ゆかり**:「あっ……じゃあそれも入れない」 [作中の画面] > 〈書き足し〉 > 入れない物:お客の会社の名前・案件の名前も **立花 大地**:「これなら隠れなくていいですね」 (絵:総務の掲示板。浜野が「禁止」の紙をはがし、手書きの表の紙を新しく貼る。) > 翌週の月曜。朝礼。 (絵:朝礼の台の上で、立花が1枚の紙を両手で持って読み上げる。台の左の下で、浜野が小さく拳を握って見上げる。手前に、聞いている社員たちの頭。) **立花 大地**:「入れない物!お客の名前連絡先金額」 **社員たち**:「はい!」 > 決まりが、初めて声に出して読まれた。 **砂川 勲**:「よし!」 (絵:台の横で、社長が満足そうに拳を突き上げる。突き上げた拳が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。) **砂川 勲**:「研修は外に頼め!」 (絵:社長が両手で差し出す、研修の申込みの紙の寄り。上の端に社長の顎と作業着の袖。紙の予算の欄だけが、赤いペンで大きく丸く囲まれている。手前にペン。) [作中の画面] > 〈外の研修の申込み〉 > 研修:外部のAI研修 > 予算:0円 **浜野 ゆかり**(心の声):(……は?0円で外に?) > 説明会まで、あと23日。 ## この話で分かること ### 生成 AI の社内ルール(ガイドライン)は、何から作る? この話では、まず「入れてよい物・入れない物」と「使ってよい道具」「迷った時の相談先」を1枚に書きました。国の AI 事業者ガイドラインは、AI を使う事業者に、個人情報や機密情報を不適切に入れないよう注意を払うこと、提供する側の決めた使い方を守ることなどを挙げています。 ### お客の名前が入った文を、生成 AI に入れてもいい? 個人情報保護委員会は、会社が個人情報を含む文を生成 AI に入れる時は、もともとの利用の目的の範囲かを十分に確かめること、本人の同意なく入れた個人データが答えを出す以外の目的で扱われると法律に違反する可能性があるので、サービスの側がそのデータを機械学習に使わないこと等を十分に確かめることを挙げています。 ### 生成 AI を全部禁止にしたら、どうなる? この話では、全部禁止にした3日後、若手が見えない所で使っていました。国の AI 事業者ガイドラインが AI を使う事業者に挙げているのは、決まった使い方を守った利用や、社内の人が AI を正しく使えるようにする教育などです。 ### AI 担当になったら、何から始める? この話の浜野は、今どう使われているか(誰が・何を・どこに入れているか)を見てから、入れない物の線を1枚に引き、朝礼で読み上げてもらいました。決まりは、使う人の「これはどうなる?」で書き足していきます。 --- 今日から、AI 担当です。 第1話「全部、禁止にします。」 つづく # 車屋に、車さんが来た。 第1話「32台売れた月に、口座が減った」 この作品には、株式会社C.R.Mのサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「CARACT」は、株式会社C.R.Mの実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/crm/arari/manga/1-arari/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[車屋に、車さんが来た。](https://tooneru.com/crm/arari/) - 作者:株式会社C.R.M - クレジット:企画:株式会社C.R.M/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/crm/arari/manga/1-arari/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 国道沿いの中古車店・大川モータースは、今月32台を売って過去最高。その日の午後、中古車店の仕組みを作っている開発者・車 健吾が、仕組みを作る前に現場を見るため店に来る。社長の大川が頼みたいのは「売れた台数を店のテレビに大きく出す画面」。けれど通帳の残高は、先月より86万5千円減っていた。健吾が「どの車で、いくら残りましたか」と聞くと、仕入れ担当の島崎の表では32台すべて黒字。けれど、パートの蓮見の机には、どの車の分か書いていない紙の束(オークションの計算書・陸送費・整備の請求書)が残っていた。健吾はその夜、計算書の車台番号を表の1行にし、同じ車の紙に同じ番号のシールを貼って、社長の自慢の白い SUV の数字を出す。売値198万円から、仕入れ・オークションの手数料・2回の陸送費・整備と板金・仕上げを引くと、残ったのは −1万6,500円。翌朝、大川は、月末の信用金庫の面談に「車ごとの利益の表」が要ると明かし、健吾はテレビの画面を後回しにさせる。そこへ向かいの店「向井オート」の社長・向井が、入れ違えた請求書を持って来て「そっちの白い SUV の分ね」と言い当てる。 ## 登場人物 - **車 健吾**:主人公。31歳、中古車店の仕組みを作っている開発者。仕組みを作る前に現場を見るため、3週間、大川モータースに通う。 - **大川 剛志**:45歳、大川モータースの社長(2代目)。元は売れっ子の営業。 - **島崎 修**:58歳、大川モータースの仕入れのベテラン。毎週オートオークションに行く。 - **蓮見 和代**:62歳、大川モータースのパートの事務。何でも付箋で覚えている。 - **向井 美和**:38歳、向かいの店「向井オート」の社長。 - **菅野**:両方の店の車を運ぶ陸送の運転手。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に、晴れた昼の国道沿いの中古車の展示場。並んだ車のフロントガラスに黄色い値札。真ん中に、事務所の中のホワイトボードの前で、ジャンパーの男性がクラッカーを鳴らし、作業着の年配の男性と、エプロンの年配の女性が拍手している。下に、事務所の入口の自動ドアが開き、黒いリュックを背負い、ノートパソコンを小脇に抱えた眼鏡の若い男性が、拍手の輪をぽかんと見ている。) > 国道沿いの、大川モータース。 > 今月、32台売れた。店を開いてから、いちばん多い **一同**:「過去最高だー!」 > その日の午後、店に来た人がいた (絵:細い横の帯の寄り。机の上の、記帳したばかりの開いた通帳。カーディガンの袖の年配の女性の手が置いたところを、向こうから眼鏡の若い男性がのぞき込む(字は読めない)。) [作中の画面] > 〈通帳〉 > 先月末の残高 4,812,000円 > 今月末の残高 3,947,000円 (絵:事務所の机の横。ノートパソコンを抱えたまま、通帳をのぞいて固まる、短い黒髪に寝ぐせが1房はねた、銀縁の眼鏡の30歳ほどの男性。黒いリュックを背負っている。後ろに、黄色い値札を付けた展示場の車が並ぶ。) [人物の紹介] > 中古車店の仕組みを作る開発者 > 車 健吾 **車 健吾**(つぶやき):「……減ってる」 (絵:机の横から身を乗り出して笑う、日焼けした40代の男性。胸に白い名札の付いた、紺の作業ジャンパー。手のクラッカーから出た紙吹雪が、絵の枠の上の線を越えて舞い上がっている。奥の机で、作業着の年配の男性があきれ顔。) [人物の紹介] > 社長(2代目) > 大川 剛志 **大川 剛志**:「車さんだっけ?車屋に車さん!縁起がいいな!」 **車 健吾**:「よく言われます」 **島崎 修**:「社長それ今日3回目」 **大川 剛志**:「で!店のテレビに売れた台数をでっかく出す画面!」 **大川 剛志**:「作ってくれるんだろ?」 **車 健吾**:「あ、いえ作る前に仕事を見に来ました」 **車 健吾**:「社長32台売れて口座は86万5千円減ってます」 **大川 剛志**:「はっはっ売れてんだから来月には増えるって!」 **車 健吾**:「じゃあどの車でいくら残りました?」 **大川 剛志**:「そりゃ……島崎さん?」 (絵:作業着のつなぎに首にタオルの、白髪まじりの角刈りの50代の男性が、ノートパソコンの表を指でたたいて見せる。胸ポケットに出品票の束。) [人物の紹介] > 仕入れ担当。毎週オートオークションへ > 島崎 修 **島崎 修**:「ふん粗利なら出てる売値から仕入れ値を引くだけだ」 > **ℹ 粗利(あらり)(売上総利益)**(現実の事実):粗利は「売上総利益」のことで、売上から売上原価を引いた額です(財務諸表等規則 第83条)。中古車1台なら、売値から仕入れの代金を引くだけでなく、その車を仕入れるためにかかった費用と、売るために直接かけた費用も引いて出します。 > - 問:売値から仕入れ値を引いた額は、粗利? 答:仕入れの代金のほかに、その車にかかった費用(オークションの手数料・陸送費・整備など)があれば、それも引かないと1台の粗利になりません。どの費用を原価に入れるかは、会社の会計の決め方と税理士に確かめます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第83条(売上総損益金額の表示)](https://laws.e-gov.go.jp/law/338M50000040059) > - 出典:[e-Gov 法令検索「法人税法施行令」第32条(棚卸資産の取得価額)](https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097) [作中の画面] > 〈島崎さんの表〉 > 白い SUV 売値1,980,000円 仕入れ値1,650,000円 粗利330,000円 > 軽 売値580,000円 仕入れ値420,000円 粗利160,000円 > (32台、全部黒字) **車 健吾**:「じゃあこの紙の束は?」 (絵:事務所の隅の机。壁一面に白い付箋(黄色は1枚だけ)。机の上に、ひもで縛った紙の束がいくつも。老眼鏡を額に上げた花柄のエプロンの60代の女性が、束をぽんとたたく。横で、ノートパソコンを抱えた眼鏡の若い男性が束をのぞく。) [人物の紹介] > パートの事務。20年目 > 蓮見 和代 **蓮見 和代**:「ああそれはね車の名前が書いてない紙」 **蓮見 和代**:「オークションの計算書でしょ陸送屋さんの請求書整備工場のも」 **車 健吾**:「えっどの車の分か誰か分かります?」 **蓮見 和代**:「付箋に書いてあるわよ」 **蓮見 和代**:「黄色は「たぶん社長」青は「たぶん島崎さん」」 **車 健吾**:「全部たぶんなんですね」 > その夜。事務所に残ったのは、健吾1人だった (絵:夜の事務所。白い蛍光灯の下、机いっぱいに広げた請求書と計算書。開いたノートパソコンの横で、眼鏡の若い男性が小さなラベルプリンターから出た白いシールを、紙の隅に1枚ずつ貼っていく。窓の外は暗い。) (絵:差し込みの小さな絵。オークションの計算書の1行を指でたどる手と、隅に白いシールを貼った陸送の請求書を重ねる、もう片方の手。) **車 健吾**(心の声):(よしまず1台手でやる) > 計算書にある車台番号を、表の1行にする。同じ車の紙に、同じ番号を貼っていく > **ℹ 車台番号(しゃだいばんごう)**(現実の事実):車の車台に刻まれた、その車だけの番号です(フレームナンバー)。持ち主が変わっても、車が解体されるまで変わりません。車検証で確かめられ、中古車の店では、仕入れから売るまでの書類を1台ずつ結ぶ手がかりになります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・損害保険用語集)「車台番号」](https://kotobank.jp/word/%E8%BB%8A%E5%8F%B0%E7%95%AA%E5%8F%B7-525344) **車 健吾**(つぶやき):「白い SUV。社長がいちばん自慢してた車」 [作中の画面] > 〈白い SUV(2022年式)〉 > 売値 1,980,000円 > 仕入れ(オークションで落札) −1,650,000円 > 落札料(オークションの手数料) −27,500円 > 陸送費(会場→店) −33,000円 > 陸送費(店→整備工場→店) −22,000円 > 整備・板金 −198,000円 > 仕上げの洗車・コーティング −66,000円 > この車に残ったのは −16,500円 > **ℹ 陸送費(りくそうひ)と車の原価**(現実の事実):陸送費は、車をトラックなどで運ぶ費用です。法人税法施行令第32条は、購入した棚卸資産の取得価額に、購入の代価と、引取運賃・購入手数料など購入のために要した費用、販売の用に供するために直接要した費用を含めると定めています。中古車店が仕入れた車を店まで運ぶ陸送費は、その車の取得価額に入る費用にあたります。 > - 問:陸送費の請求書が、何台分かまとめて来たら? 答:1台ごとに分けて、その車の原価に入れます。どの車の分か書いていない請求書は、後から分けられなくなります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「法人税法施行令」第32条(棚卸資産の取得価額)](https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097) > **ℹ 板金(ばんきん)(鈑金)**(現実の事実):金属の板を、熱を加えずに曲げたり絞ったりして形を作る加工です。車の店や整備工場では、へこんだり傷ついたりした車体の板を直す仕事を板金と呼びます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「板金」](https://kotobank.jp/word/%E6%9D%BF%E9%87%91-432896) (絵:昼の展示場。黄色い値札の付いた白い SUV。値札に字は無く、黄色だけがくっきり目立つ。) > いちばん高く売れた車は、赤字だった > 翌朝。 (絵:朝の事務所の隅。壁一面の付箋の1枚ずつに、小さな白いシールが貼られている。老眼鏡を下ろしてそれを見つめる、花柄のエプロンの年配の女性。奥の机では、開いたノートパソコンの横に突っ伏して寝ている眼鏡の若い男性。) **蓮見 和代**:「あらっ付箋にシールが貼ってある!」 **車 健吾**:「車台番号の、下4桁です」 (絵:朝の事務所。目を見開いて固まる社長。その横で、眉をひそめる作業着の年配の男性。社長の手から落ちた紙が、絵の枠の下の線を越えて手前へ舞う。) **大川 剛志**:「赤字……?」 **大川 剛志**:「あのSUVが?」 **島崎 修**:「板金は俺が出したんだ」 **島崎 修**:「直さなきゃあの車は売れなかったぞ」 (絵:開いたノートパソコンの横に両手をついて、まっすぐ前を見る眼鏡の若い男性の寄り。後ろの壁に、シールの貼られた付箋。) **車 健吾**:「はい直したのは正しいと思います」 **車 健吾**:「ただその分が数字に入ってなかっただけなんです」 **島崎 修**:「……」 (絵:社長が頭をかきながら、事務所のホワイトボードを見上げる。ジャンパーの背中。ボードの字は見えない。) **大川 剛志**:「で残りの31台は?」 **車 健吾**:「それが1台で3時間かかって……」 **大川 剛志**:「うわ、まずい月末に信金の面談があるんだ」 > **ℹ 信金(しんきん)(信用金庫)**(現実の事実):信用金庫法にもとづく、会員が出資する協同組織の金融機関です。決まった地域の人や会社が会員になり、預金を受け、会員にお金を貸します。地域の中小の会社や個人が主な取引先です。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・共同通信ニュース用語解説)「信用金庫」](https://kotobank.jp/word/%E4%BF%A1%E7%94%A8%E9%87%91%E5%BA%AB-82681) **大川 剛志**:「「車ごとの利益の表を持って来い」ってさ」 **車 健吾**:「社長テレビの画面後回しにしましょう」 **大川 剛志**:「……はい」 [作中の画面] > 〈利益の見える車〉 1台/32台 > 〈面談まで〉 21日 (絵:店の自動ドアが開き、首からストラップでタブレットを下げた、明るい茶のショートボブの30代の女性が、茶封筒を持って入ってくる。後ろに、国道沿いの展示場の車と、小さな事務所。) **向井 美和**:「おはよ陸送の菅野くんがまた入れ違えてた」 (絵:同じ女性が、机の前の椅子に腰かけ、茶封筒から請求書を1枚出して、机の上に置く。) [人物の紹介] > 向かいの店「向井オート」の社長 > 向井 美和 **向井 美和**:「これそっちのSUV の分ね」 **車 健吾**:「えっどうしてどの車の分か分かるんですか」 (絵:封筒を軽く振って笑う、ショートボブの女性。胸のタブレットの画面は遠くて字が読めない。) **向井 美和**:「ふふうちは車1台ずつ見えてるから」 **車 健吾**:「……見せてくださいどう作ってあるのか」 (絵:開いたノートパソコンを胸に抱えて一歩前へ出た眼鏡の若い男性の背中ごしに、奥で立ち上がる社長が手を伸ばしている。画面は白く、字は読めない。) **大川 剛志**:「車さん!向かいに見せるな!」 ## この話で分かること ### 中古車の粗利は、どう計算する? 粗利(売上総利益)は、売上から売上原価を引いた額です。中古車1台なら、売値から、仕入れの代金に加えて、その車を仕入れるためにかかった費用(オークションの手数料・陸送費など)と、売るために直接かけた費用を引いて出します。 ### 車が売れているのに、口座のお金が減るのはなぜ? 売れた台数や売上の額と、1台ごとに残った額(粗利)は別の数字です。この話では、陸送費や整備の請求書がどの車の分か分からないまま、売れた車の中に赤字の車が混ざっていました。 ### 陸送費は、経費? それとも車の原価? 法人税法施行令第32条は、購入した棚卸資産の取得価額に、引取運賃・購入手数料など購入のために要した費用を含めると定めています。仕入れた車を店まで運ぶ陸送費は、その車の取得価額に入る費用にあたります。 ### 請求書が、どの車の分か分からない時は? この話では、車1台を表の1行にして、計算書にある車台番号を行の目印にしました。陸送や整備の請求書にも同じ番号を書き足して、同じ車の紙を集めてから、1台の数字を出しています。 --- 車屋に、車さんが来た。 第1話「32台売れた月に、口座が減った」 つづく # 調査の日だけ、祖母は元気になる 第1話「介護認定って、何ですか」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/kaigo/manga/1-kaigo/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[調査の日だけ、祖母は元気になる](https://tooneru.com/henshubu/kaigo/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/kaigo/manga/1-kaigo/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 母の花岡典子が階段で足を折り、6週間の入院に。フリーの動画編集者の花岡圭(27)は、東京の下町・ひばり町の祖母の家へ移る。86歳の祖母キヨは、5年前に閉めた銭湯「ひばり湯」のおかみで、元気そうに見えた。だが冷蔵庫には同じ豆腐が5丁、焦げた鍋、9月のままのカレンダー。母に言われて地域包括支援センターへ行き、社会福祉士の有馬さやかから要介護認定の流れを聞く。キヨは「介護なんか要らない」と怒り、圭は「健康診断みたいなもん」と嘘をつく。10月15日に申請、調査は10月26日。その夜の2時40分、閉めた銭湯の番台に、キヨが座っていた。 ## 登場人物 - **花岡 圭**:主人公。27歳、フリーの動画編集者。母の入院の間、祖母の家で暮らしながら仕事をする。人の話を「編集」でまとめるのが癖。 - **花岡 キヨ**:86歳、圭の祖母。ひばり町の銭湯「ひばり湯」のおかみで、52年番台に座った。5年前に銭湯を閉めた。口ぐせは「番台からは全部見える」。 - **花岡 典子**:56歳、圭の母。キヨと暮らしていたが、階段で足を折って6週間の入院に。 - **有馬 さやか**:34歳、ひばり町 地域包括支援センターの社会福祉士。申請の手続きを手伝う。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:和室の座布団に、着物を着て背筋を伸ばして座る小柄な老婦人。口紅をさし、にこやかに前を向いている。向かいにクリップボードを持つ男性の背中がぼけて入り、うしろで若い男性が冷や汗をかいている。) > 認定調査の日。 **花岡 キヨ**:「ええ、全部自分でできますよ」 **花岡 圭**(心の声):(……いやできてないばあちゃんそれ全部できてないって) > 祖母は5年ぶりに、口紅をひいた。 > ――その12日前。 (絵:昼の小さな部屋。モニターが2台並ぶ机で、動画の編集の画面を前に、鳴るスマホを取るくせ毛の若い男性。) **花岡 典子**:「圭?お母さん階段で転んで足折っちゃった」 [人物の紹介] > フリーの動画編集者(27) > 花岡 圭 (絵:病院のベッドで、ギプスの片足を吊ったまま、スマホを耳に当てて苦笑いする中年の女性。) **花岡 圭**:「……は?」 [人物の紹介] > 圭の母(56) > 花岡 典子 **花岡 典子**:「入院6週間だっておばあちゃんお願いね……」 (絵:夕方の東京の下町の細い通り。古い木造の家が並び、奥に高い煙突のある閉じた銭湯。シャッターが下りている。手前にスーツケースを引く若い男性が小さく立つ。) > 東京の下町、ひばり町。 > 祖母の家は、5年前に閉めた銭湯の裏にある。 (絵:古い家の引き戸を勢いよく開けて、手を振る小柄な老婦人。白髪をきっちりまとめ、割烹着を着ている。) [人物の紹介] > 元・ひばり湯のおかみ(86) > 花岡 キヨ **花岡 キヨ**:「圭!遅いよ!お茶入れたげる」 **花岡 圭**:「お、ばあちゃん元気そうじゃん」 > 元気そうだった。最初の1時間は。 (絵:開いた冷蔵庫の中。同じ豆腐のパックが5つ積まれ、牛乳のパックが3本並ぶ。) **花岡 圭**(心の声):(え豆腐が5丁?) **花岡 キヨ**:「今日は特売だったからね」 **花岡 圭**:「……昨日も買った?」 **花岡 圭**:「うわ鍋焦げてる」 (絵:台所のコンロの前で、底の黒く焦げた片手鍋を持ち上げて見つめる若い男性。) **花岡 キヨ**:「それは前からだよ」 **花岡 キヨ**:「今日は日曜だろ?銭湯、混むよ」 (絵:茶の間の卓袱台でお茶をすする老婦人。うしろの壁のカレンダーは9月のまま。柱に掛けた薬のカレンダーのポケットに、薬の袋がいっぱいに残っている。) > 今日は水曜だった。銭湯は、もう無い。 (絵:夜。古い家の縁側に座り、スマホを耳に当てる若い男性。庭の向こうに銭湯の煙突の影。) **花岡 典子**:「とにかくまず介護認定を申請してね」 > **ℹ 要介護認定(ようかいごにんてい)(介護認定)**(現実の事実):介護保険のサービスを使うために、介護がどのくらい要る状態かを市区町村が判定する仕組みです。厚生労働省の資料では、認定調査と主治医意見書をもとにしたコンピュータの判定(一次判定)と、介護認定審査会の判定(二次判定)を経て、市町村が認定すると説明しています。 > - 問:どこに申請する? 答:住んでいる市区町村です。介護保険法では、地域包括支援センターなどに手続きを代わりに行ってもらう事もできます。 > - 問:結果はいつ出る? 答:介護保険法では、申請のあった日から30日以内に結果を出す事になっています(調査に時間がかかる等の特別な理由がある時は、延びる事の通知があります)。 > - 出典:[厚生労働省 老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」(資料6、2016年)](https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf) > - 出典:[e-Gov 法令検索「介護保険法」第27条(要介護認定)・第115条の46(地域包括支援センター)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) **花岡 圭**:「介護認定って……何?」 [作中の画面] > 検索:介護認定 流れ > 申請 → 認定調査 → 主治医意見書 → 審査会 → 結果 > まずは市区町村の窓口か、地域包括支援センターへ > 翌朝。 (絵:明るい相談の窓口。カウンターの向こうで、カーディガンに名札を下げたショートカットの女性が、資料を広げてにこやかに説明している。手前に若い男性の背中。) [人物の紹介] > ひばり町 地域包括支援センター 社会福祉士 > 有馬 さやか > 地域包括支援センター。高齢の人の暮らしの、相談の窓口だ。 > **ℹ 地域包括支援(ちいきほうかつしえん)センター**(現実の事実):地域の人の心身の健康と暮らしの安定を支えるための施設で、介護保険法では、市町村か、市町村から委託を受けた法人が置くとされています。高齢の人の暮らしの相談の窓口で、要介護認定の申請の手続きを本人に代わって行える所の一つです。 > - 問:申請は本人が行かないとだめ? 答:介護保険法では、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに、申請の手続きを代わりに行わせる事ができます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「介護保険法」第27条(要介護認定)・第115条の46(地域包括支援センター)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) **有馬 さやか**:「あ、申請なら区の窓口でもここでもできますよ」 **有馬 さやか**:「うちで代わりに出すこともできます」 [窓] > 〈要介護認定の流れ〉 > 1 申請(区の窓口。地域包括支援センターが代わりに出せる) > 2 認定調査(調査員が家に来て、本人と家族に聞く) > 3 主治医意見書(区が、かかりつけの医師に頼む) > 4 一次判定(コンピュータ) > 5 二次判定(介護認定審査会) > 6 結果の通知(申請から30日以内) > **ℹ 介護認定審査会(かいごにんていしんさかい)**(現実の事実):保健・医療・福祉の学識経験者でつくる、市町村の審査の会です。厚生労働省の資料では、一次判定の結果と主治医意見書などをもとに審査判定(二次判定)を行い、その結果をもとに市町村が要介護認定をすると説明しています。 > - 問:一次判定と結果が変わる事はある? 答:厚生労働省の資料では、二次判定は介護認定審査会が一次判定の結果・主治医意見書などをもとに行うと説明しています。 > - 出典:[厚生労働省 老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」(資料6、2016年)](https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf) **有馬 さやか**:「それと主治医意見書頼める先生いますか?」 > **ℹ 主治医意見書(しゅじいいけんしょ)**(現実の事実):要介護認定の申請があった時に、市区町村が本人の主治医に求める意見の書類です。病気やけがの状況などが書かれ、認定調査の結果と一緒に判定に使われます。 > - 問:かかりつけの医師がいない時は? 答:介護保険法では、主治医がいない時などは、市町村が指定する医師などの診断を受けるよう求める事ができるとされています。申請の窓口で相談できます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「介護保険法」第27条(要介護認定)・第115条の46(地域包括支援センター)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) > - 出典:[厚生労働省 老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」(資料6、2016年)](https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf) (絵:汗をかいて目を泳がせる若い男性の顔の寄り。少しデフォルメされた、困った顔。) **花岡 圭**:「……あのばあちゃん40年医者に行ってなくて」 **有馬 さやか**:「40年……!?」 **有馬 さやか**:「あ、でも大丈夫ですよ」 **有馬 さやか**:「主治医がいなくても区が決めた先生に診てもらえれば」 (絵:茶の間。腕を組み、そっぽを向いて怒る老婦人。向かいで申請の書類を持ったまま固まる若い男性。) **花岡 キヨ**:「介護?あたしゃ介護なんかいらない!」 **花岡 キヨ**:「あたしはね52年番台から町じゅうを見てきたんだ」 **花岡 圭**:「い、いや健康診断みたいなもんだから」 > 嘘をついた。最初の嘘だった。 (絵:窓辺の机を斜め上から見る。記入した申請の書類、介護保険の被保険者証、ボールペン、電卓、湯のみ。) [窓] > 〈介護保険 要介護認定 申請書〉 > 被保険者:花岡 キヨ(86歳) > 申請の区分:新規 > 提出:ひばり町 地域包括支援センターが代わりに > **ℹ 介護保険(かいごほけん)の被保険者(ひほけんしゃ)(第1号・第2号)**(現実の事実):介護保険に入っていて、認定を受ければサービスを使える人です。市区町村に住む65歳以上の人が「第1号被保険者」、40歳以上65歳未満で健康保険などに入っている人が「第2号被保険者」です(介護保険法第9条)。 > - 問:40〜64歳でも介護保険のサービスを使える? 答:第2号被保険者は、老化が原因とされる決まった病気(特定疾病)で介護が要る時に、認定を受けて使えます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「介護保険法」(第7条 定義・第9条 被保険者)](https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123) > 10月15日、申請。調査は、10月26日に決まった。 > その夜。 (絵:暗い部屋で、ぱちりと開いた若い男性の目の細い帯の寄り。) (絵:暗い和室の布団の上で半身を起こし、耳を澄ます若い男性。枕元のスマホの画面だけが光っている。) > 午前2:40。 (描き文字:ザァ……) (絵:暗い廊下。突き当たりの戸の隙間から、細く黄色い光が漏れている。) **花岡 圭**(心の声):(……水の音?) (絵:夜の閉じた銭湯を縦に見下ろす長い絵。上に暗い浴場の富士山のタイルの絵、真ん中に木の脱衣棚と籐のかご、下に一つだけ灯る電球の下、高い番台に小さく座る老婦人。) > 閉めて5年の、ひばり湯。 **花岡 キヨ**:「いらっしゃい」 **花岡 キヨ**:「今日は熱いよ。ゆっくりおいで」 (絵:番台の上の老婦人の寄り。だれもいない脱衣所に向かって微笑み、小銭の皿を指で滑らせている。) **花岡 圭**:「……えばあちゃん?」 (絵:脱衣所の入口で、寝間着のまま立ち尽くす若い男性。番台の側から見た構図。) **花岡 キヨ**:「あら、お客さん。大人1人ね」 (絵:番台からこちらを振り向く老婦人の顔。やわらかな笑顔だが、孫を見ていない目。) > 調査まで、あと11日。 ## この話で分かること ### 介護認定(要介護認定)の流れは? 市区町村に申請すると、調査員が家に来る認定調査と、主治医意見書をもとにコンピュータの一次判定が出ます。次に介護認定審査会が一次判定と主治医意見書などを見て二次判定をし、その結果で市区町村が認定します。 ### 介護認定の申請はどこでする? 家族や代わりの人が出せる? 住んでいる市区町村に、申請書に介護保険の被保険者証を添えて申請します。介護保険法では、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに、手続きを代わりに行ってもらう事ができます。 ### 介護認定の結果はいつ出る? 介護保険法では、申請のあった日から30日以内に結果を出す事になっています。認定は、申請のあった日にさかのぼって効力があります。 ### かかりつけの医師(主治医)がいなくても申請できる? できます。申請があると市区町村が主治医に意見書を求めますが、主治医がいない時などは、市区町村が指定する医師などの診断を受けるよう求める事ができると介護保険法に書かれています。 --- 調査の日だけ、祖母は元気になる 第1話「介護認定って、何ですか」 つづく # 調査の日だけ、祖母は元気になる 第2話「調査まで、あと11日」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/kaigo/manga/2-kaigo/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[調査の日だけ、祖母は元気になる](https://tooneru.com/henshubu/kaigo/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/kaigo/manga/2-kaigo/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 夜中の番台のことを、キヨは覚えていない。圭は有馬に電話で、認定調査では体の動き・暮らし・物忘れなどを聞く事と、本人ががんばって「できます」と言う事がよくあると聞く。動画編集者の圭はスマホで撮ろうとするが、キヨに「人の暮らしを見世物にすんじゃない」と怒られ、時刻と出来事をノートに書く事にする。薬の飲み忘れ、同じ話、ガスの消し忘れ、そして浴槽をまたげない祖母。52年、町じゅうを風呂に入れてきた人だった。常連だった伊吹医師の医院で主治医意見書を頼むが、ノートを見つけたキヨは「ボケてない」と怒る。10月26日の朝、キヨは口紅をひき、着物で調査員を迎える。 ## 登場人物 - **花岡 圭**:主人公。27歳、フリーの動画編集者。母の入院の間、祖母の家で暮らしながら仕事をする。人の話を「編集」でまとめるのが癖。 - **花岡 キヨ**:86歳、圭の祖母。ひばり町の銭湯「ひばり湯」のおかみで、52年番台に座った。5年前に銭湯を閉めた。口ぐせは「番台からは全部見える」。 - **有馬 さやか**:34歳、ひばり町 地域包括支援センターの社会福祉士。申請の手続きを手伝う。 - **伊吹 誠一**:72歳、伊吹医院の院長。子どもの頃、ひばり湯の常連だった。 - **真壁 伸夫**:58歳、さくら区の認定調査員。物腰がやわらかく、話をよく聞く。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の台所。割烹着で機嫌よく味噌汁を作る老婦人と、卓袱台で目の下にくまを作った若い男性。) > 翌朝。 **花岡 キヨ**:「圭、よく寝たかい」 **花岡 圭**:「ねえばあちゃん夜中銭湯にいなかった?」 **花岡 キヨ**:「何言ってんだいあそこは閉めたよ5年前に」 **花岡 圭**(心の声):(……覚えてないんだ) (絵:細い路地の植木鉢の前で、スマホを耳に当てて話す若い男性。うしろに家の勝手口。) **有馬 さやか**:「調査ではねこんな事を聞かれます」 [窓] > 〈認定調査で聞かれること〉 > ・体の動き(立ち上がり・歩く・寝返り) > ・暮らし(食事・トイレ・お風呂・着替え) > ・物忘れ(日付・季節・今いる場所) > ・気持ちや行動の変化 > ・薬・お金の管理・買い物 > (主に、調査の日から過去1週間の様子) > 全国で同じ調査票。基本調査は74項目。 > **ℹ 認定調査(にんていちょうさ)の基本調査(きほんちょうさ)(74項目)**(現実の事実):認定調査で、全国共通の調査票に沿って体の動き・暮らし・物忘れなどを確かめる74の項目です。厚生労働省の資料では、この結果から「介護にかかる時間」(要介護認定等基準時間)をコンピュータで推計し、一次判定を出すと説明しています。 > - 問:調査はどのくらいかかる? 答:刈谷市の案内では45分〜1時間程度、十日町市の案内では1時間〜1時間半とされています。 > - 問:いつの様子を聞かれる? 答:刈谷市の案内では、主に調査の日から過去1週間の状況を聞くとしています。 > - 出典:[厚生労働省 老人保健課「要介護認定の仕組みと手順」(資料6、2016年)](https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000126240.pdf) > - 出典:[刈谷市 長寿課「初めて要介護認定申請をされる方へ 介護保険の認定調査について」](https://www.city.kariya.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/464/chousa.pdf) > - 出典:[十日町市 福祉課「認定調査を受けられる方へ」](https://www.city.tokamachi.lg.jp/material/files/group/8/ninteityousaukerarerukata.pdf) **有馬 さやか**:「調査の日はみんな「できます」って言うんですよ」 (絵:白目をむいて汗を飛ばす若い男性の、デフォルメされた顔の寄り。) **花岡 圭**:「……言うすごい言いそう!」 **有馬 さやか**:「だから普段の様子が分かる方が一緒にいてくださいね」 (絵:夜の和室の机。ノートパソコンに動画の編集の画面。画面の光に照らされ、腕を組んで考える若い男性の横顔。) **花岡 圭**(心の声):(そうか普段の様子を見せればいいんだ) **花岡 圭**(心の声):(俺の仕事は、編集だ) (絵:昼の台所。スマホのカメラを向ける若い男性と、気づいて片手で顔を隠し、もう片方の手を突き出して怒る老婦人。) **花岡 キヨ**:「こら!撮るんじゃないよ!」 **花岡 キヨ**:「人の暮らしを勝手に見世物にすんじゃないよ」 (絵:流しに向かう老婦人の小さな背中。肩が少し震えている。) > 正しかった。撮るのは、やめた。 (絵:夜、スタンドの明かりの下で、大学ノートに鉛筆で書き込む若い男性の手元。) > 代わりに、書くことにした。時刻と、起きたことだけ。 [窓] > 〈圭の記録〉 > 10/16 7:10 朝の薬を飲んでいない(カレンダーに残る) > 10/16 11:30 同じ話を3回(ひばり湯の煙突の修理) > 10/16 18:05 ガスの火を消し忘れ。鍋が空だきに > 10/17 2:40 番台に座る。「いらっしゃい」 (絵:家の小さな浴室。浴槽の縁をつかみ、片足を上げようとして上がらない、寝間着の老婦人。) > 52年、町じゅうを風呂に入れてきた人が。 (絵:浴室の外の廊下。すりガラスの戸の前で立ち止まり、気づいて息をのむ若い男性。) > 自分の家の浴槽を、またげない。 **花岡 キヨ**:「今日は寒いからね。シャワーでいいや」 [窓] > 10/18 20:15 浴槽をまたげず、シャワーだけで出る。「今日は寒いからね」 > 主治医の意見書も、頼まなきゃいけない。 (絵:昼の下町の古い小さな医院の前。よそ行きのコートの老婦人の腕を取って歩く若い男性。老婦人は口をとがらせている。) **花岡 キヨ**:「医者なんか行かないって言ったろ!」 **花岡 圭**:「でもさ伊吹先生ひばり湯の常連だったんだって」 **花岡 キヨ**:「……伊吹?あの坊やかい」 (絵:診察室。白衣で大きく笑う白髪の年配の医師と、たじろぐ老婦人。) [人物の紹介] > 伊吹医院 院長 > 伊吹 誠一 **伊吹 誠一**:「キヨさん!いやあ番台で怒られて以来だ!」 **花岡 キヨ**:「あんたが湯船で泳いでたからだよ」 **伊吹 誠一**:「よし意見書書きましょうちゃんと診てからね」 > その夜。 (絵:夜の茶の間。卓袱台でノートを読み返す若い男性。うしろの戸口に、湯のみを持った老婦人が立ち、ノートをのぞいている。) **花岡 キヨ**:「……あんたあたしのこと書いてたのかい」 (絵:ノートを両手で持って読む老婦人の寄り。指先が震え、顔がこわばっている。) **花岡 キヨ**:「あたしはボケてないよ!」 **花岡 圭**:「わ、わかってるでも夜中に――」 **花岡 キヨ**:「今日はもう寝るよ」 (絵:夜の縁側に一人で座る若い男性。膝の上に閉じたノート。庭の向こうに銭湯の煙突。) > それから、祖母は記録の話をしなかった。 > 俺も、書くのをやめなかった。 [窓] > 10/21 3:05 番台。「大人1人ね」 > 10/23 9:40 郵便受けの前で家の鍵を探す(手に持っていた) > 10/25 16:00 「明日は大事な日だから」と、着物を出す > 10月26日、朝。 (絵:鏡に映る、赤い口紅を唇に引く老婦人の口元と手の細い帯の寄り。) (絵:朝の和室の鏡台の前で、藍の着物を着て背筋を伸ばす老婦人。戸口に立つ若い男性がぼけて入る。) **花岡 キヨ**:「今日は、番台に座る日だよ」 (絵:古い家の玄関。引き戸の外に、肩掛けの鞄とクリップボードを持った、白髪まじりの穏やかな年配の男性が会釈している。) [人物の紹介] > さくら区 認定調査員 > 真壁 伸夫 **真壁 伸夫**:「こんにちは区の認定調査でまいりました」 **花岡 キヨ**:「まあまあ遠いところどうぞおあがりください」 (絵:玄関の上がり框に正座し、両手をついて完璧なお辞儀をする着物の老婦人。訪ねてきた人の目の高さから。) (絵:老婦人のうしろで冷や汗をかく若い男性。ズボンの後ろのポケットから大学ノートがのぞいている。) **花岡 圭**(心の声):(……完璧だ完璧に元気なばあちゃんだ) (絵:縁側から見た茶の間。調査員の男性と向かい合い、にこやかに座る着物の老婦人。秋の光。) > 調査の日。祖母は元気だった。 > 調査の日、だけ。 ## この話で分かること ### 介護認定の調査では何を聞かれる? 全国共通の調査票で、体の動き(立ち上がり・歩行など)、暮らし(食事・トイレ・入浴・着替え)、物忘れ(日付・季節・今いる場所など)、気持ちや行動の変化、薬やお金の管理などを確かめます。基本調査は74項目です。 ### 認定調査に家族は同席したほうがいい? 自治体の案内では、普段の様子を正しく知るために、日常の様子が分かる人の同席をできるだけ求めています。家族への聞き取りが必要な項目もあると説明する自治体もあります。 ### 認定調査の前に準備しておく事は? 刈谷市の案内では「準備していただくものはありません。いつもの様子を教えてください」としています。主に過去1週間の様子を聞かれるので、気になる出来事を日付と時刻つきでメモしておくと、当日に伝えやすくなります。 ### 認定調査はどのくらい時間がかかる? 自治体によって違い、刈谷市の案内では45分〜1時間程度、十日町市の案内では1時間〜1時間半とされています。平日の日中に、家(入院中なら病院)で行います。 --- 調査の日だけ、祖母は元気になる 第2話「調査まで、あと11日」 つづく # お見合いは、1時間です 第1話「アプリで、100人と会いました」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/tsurigaki/omiai/manga/1-omiai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お見合いは、1時間です](https://tooneru.com/tsurigaki/omiai/) - 作者:釣書堂 - クレジット:原作・脚本:釣書堂/作画:釣書堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/tsurigaki/omiai/manga/1-omiai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 結婚相談所に入社して1年目の仲人・倉持陽太の、初めての担当の会員は37歳の桐生早紀。アプリで3年、100人と会っても決まらなかった早紀は、お見合いは1時間、連絡は仲人を通す、という相談所の決まりを「窮屈」と言い、土曜までに何も無ければ解約すると告げる。所長の鶴見千代子は、古いストップウォッチを手に「1時間で決めるのは、結婚する人かどうかじゃない。もう1回会いたいか、それだけ」と言う。早紀はアプリで、毎回の最初の夕食で、結婚できる人かを全部見ようとしていた。倉持は「写真で断るのを、1回だけやめませんか」と頼み、早紀は1人を選んで「1時間だけ」とお見合いを受ける。日曜のホテルのラウンジ。現れた相手の吉永航平は、2年前に早紀がアプリで1回会い、「写真と違う」と断った人だった。 ## 登場人物 - **倉持 陽太**:主人公。24歳、結婚相談所の仲人(入社1年目)。恋人がいたことがない。まじめで、言われたことを全部メモする。 - **鶴見 千代子**:64歳、結婚相談所の所長。仲人を30年続けている。古いストップウォッチをいつも持っている。 - **桐生 早紀**:37歳、会員。会社の経理の仕事をしている。マッチングアプリで3年、100人と会ったが決まらなかった。 - **吉永 航平**:39歳、会員。家具の会社の営業。早紀とお見合いをする。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:結婚相談所の面談の部屋。右で、きちんとした服の30代の女性が、喫茶店のレシートでふくらんだファイルを机にどさりと置く。レシートが机の上をすべって、絵の枠の右の線を越えて外へこぼれる。左で、座ったスーツの若い男性が目を丸くする。) **桐生 早紀**:「3年で、100人です」 **桐生 早紀**:「アプリで会った人」 **倉持 陽太**:「ひゃ、100……」 > 机の上に、喫茶店のレシートが、100枚。 (絵:スーツの若い男性の仲人の寄り。ペンを握ったまま汗をかき、目が泳いでいる。) [人物の紹介] > 結婚相談所の仲人(入社1年目) > 倉持 陽太 **倉持 陽太**(心の声):(ど、どうしよう初めての担当なのに) (絵:腕を組み、落ち着いた顔でこちらを見る30代の女性の会員。手にスマホ。) [人物の紹介] > 会員(37歳・会社の経理) > 桐生 早紀 **桐生 早紀**:「正直ここの決まり窮屈です」 [作中の画面] > 〈相談所の決まり〉 > お見合いは、1時間 > 連絡は、仲人を通す > 仮交際から3か月で、決める **桐生 早紀**:「1回目で、結婚できるか見たいのに」 **桐生 早紀**:「土曜までに何も無ければ、解約します」 > **ℹ 結婚相手紹介(けっこんあいてしょうかい)サービスの中途解約(ちゅうとかいやく)**(現実の事実):期間が2か月を超え、金額が5万円を超える結婚相手紹介サービスの契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たります。書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができ、その後も中途解約ができます。解約の時に求められる額には上限があります。 > - 出典:[消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」](https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/) [作中の画面] > 〈桐生 早紀さん〉 > 入会:28日目 > お見合いの申し込み:受けた3件・返事はまだ > 土曜まで:あと5日 **倉持 陽太**(心の声):(ええっ初めての担当1か月で……) > 所長の部屋。 (絵:古い木の机のある所長の部屋。左で、白髪をきちんとまとめた60代の女性の所長が、古いストップウォッチのねじを巻く。机に蘭の鉢。右で、若い男性の仲人が立って手帳を開く。) [人物の紹介] > 結婚相談所の所長(仲人30年) > 鶴見 千代子 **倉持 陽太**:「所長1時間で何が分かるんですか」 **鶴見 千代子**:「何も」 **鶴見 千代子**:「分からないわよ」 (絵:所長の手のひらの上の、古い銀色のストップウォッチの寄り。手の指先と鎖が、絵の枠の左の線を越えて外へ出る。) **鶴見 千代子**:「決めるのは結婚する相手かどうか、じゃないのよ」 **鶴見 千代子**:「もう1回、会いたいか。それだけ」 > お見合いの返事は、次の日の13時までに仲人へ。断る時も、仲人が伝える。 > **ℹ 仲人(なこうど)(結婚相談所の仲人)**(現実の事実):間に立って、結婚の橋渡しをする人です。結婚相談所では、会員の担当になってお見合いを組み、お見合いの返事や連絡を相手の仲人とやり取りする人を、仲人と呼ぶ所があります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「仲人」](https://kotobank.jp/word/%E4%BB%B2%E4%BA%BA-346617) **鶴見 千代子**:「アプリと違ってここの人はみんな独身証明書を出してるの」 > **ℹ 独身証明書(どくしんしょうめいしょ)**(現実の事実):結婚していないことを、本籍地の市区町村が証明する書類です。結婚相談所などに出すために使われ、多くの相談所は入会の時に出してもらいます。請求のしかたや手数料は市区町村ごとに決まっています。 > - 出典:[横浜市「独身証明書(結婚情報サービス・結婚相談業者に提出する証明)はどこでとれますか。」](https://www.city.yokohama.lg.jp/faq/kukyoku/shimin/shimin-madoguchi/20211102143727902.html) **倉持 陽太**(心の声):(じゃあ……独身かどうかはもう分かってるんだ) > 桐生さんはアプリで、最初の夕食のたびに、結婚できる人か、全部見ていた。 (絵:夜のレストランの思い出の場面。左で女性の会員が、向かいの顔の見えない男性の話を聞きながら、テーブルの下で腕時計を見ている。グラスの水は減っていない。) **倉持 陽太**(心の声):(そっか……100人とも、結婚できる人か、確かめてたんだ) > 翌日。面談の部屋。 (絵:面談の部屋。左で若い男性の仲人が、写真だけのプロフィールの紙を3枚、机に並べて身を乗り出す。右で女性の会員が、腕を下ろしたまま、じっと見ている。) **倉持 陽太**:「あの、桐生さん写真で断るの1回だけやめませんか」 **桐生 早紀**:「1時間で、何が分かるんですか」 **倉持 陽太**:「……何も分かりません」 **倉持 陽太**:「もう1回、会いたいかだけです」 (絵:机の上のプロフィールの紙の寄り。スタジオで撮った、穏やかに笑う30代の男性の写真の上で、右から伸びた女性の指が止まる。) **桐生 早紀**(つぶやき):「この人、まじめそう」 (絵:女性の会員の寄り。横を向き、口の端だけ少しゆるめる。) **桐生 早紀**:「……1時間だけですよ」 [作中の画面] > 〈桐生 早紀さん〉 > お見合い:1件決まった > 日曜 14時・ホテルのラウンジ > その夜。所長の部屋。 **倉持 陽太**:「桐生さん「1時間だけですよ」って」 **鶴見 千代子**:「その言い方、悪くないわね」 > 日曜 14時。ホテルのラウンジ。 (絵:明るいホテルのラウンジの窓際の席。紅茶のカップの前で、よそ行きのワンピースの女性が背すじを伸ばして座る。横に立つ若い男性の仲人が、入口の方へ手を上げる。) **倉持 陽太**:「吉永さん、こちらです」 (絵:ラウンジの入口。紺のジャケットの30代の男性が、ハンカチを握ったまま深く頭を下げている。顔はまだ見えない。) **吉永 航平**:「はじめまして。吉永です」 (絵:細い横の帯の寄り。顔を上げた男性を見て、大きく見開かれる女性の目。) (絵:ラウンジの窓際の丸いテーブルに座ったまま、固まる女性と男性。テーブルから紅茶のスプーンが落ち、絵の枠の下の線を越えて手前へ落ちる。奥で、若い男性の仲人が立ったまま、2人の席を見ている。) > 2年前、アプリで1回だけ会った人。 **吉永 航平**:「あ……2回目ですね」 **桐生 早紀**(心の声):(うそ……写真と違うって断った人だ) (絵:ラウンジの柱の陰。若い男性の仲人が、古い銀色のストップウォッチを握ったまま、口を半分あけて2人の席を見ている。) **倉持 陽太**(つぶやき):「え、知り合い……?」 > 所長に借りたストップウォッチは、まだ1分も進んでいない。 ## この話で分かること ### 結婚相談所のお見合いの流れは? 多くの結婚相談所では、プロフィールを見て申し込み、相手が受けるとお見合いが決まり、ホテルのラウンジなどで短い時間会います。返事は相談所の担当(仲人)を通して伝え、互いに「また会いたい」なら交際へ進み、相手を1人に絞り、婚約などで「成婚」として相談所を出る、という流れが一般的です。 ### お見合いが1時間ほどなのはなぜ? 初めてのお見合いで決めるのは「結婚する相手かどうか」ではなく「もう一度会いたいかどうか」だけ、という考え方によるものです。時間を短く決め、断る時も仲人を通すことで、会う人の負担を軽くし、次の人と会いやすくします。 ### 結婚相談所とマッチングアプリの違いは? 結婚相談所の多くは、入会の時に独身証明書などの書類を出してもらい、申し込み・返事・交際の相談の間に仲人が入ります。マッチングアプリは、自分で相手を探して直接やり取りするのが基本です。 ### 結婚相談所の契約は、途中でやめられる? 期間が2か月を超え、金額が5万円を超える結婚相手紹介サービスの契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たります。法律で決められた書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフができ、その後も中途解約ができます。 --- お見合いは、1時間です 第1話「アプリで、100人と会いました」 つづく # その求人、紹介できません 第1話「年収、100万円上がります」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/shokai/manga/1-shokai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[その求人、紹介できません](https://tooneru.com/jinji-sumi/shokai/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/shokai/manga/1-shokai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 転職エージェントの2年目のキャリアアドバイザー・沢井みのりは、今月あと1人の入社が決まれば目標に届く。そこへ、物流の会社の倉庫で働く中原大輔が「年収が100万円上がる求人を紹介してほしい」とやって来た。求人票には「月給38万円(固定残業代 45時間分を含む)」とだけあり、基本給も、残業代が何時間分でいくらかも書いていない。沢井は課長に「この求人、このままじゃ紹介できません」と言い、求人の会社に金額を聞く。返事は、基本給27万円、固定残業手当11万円(45時間分)、去年の営業の平均の残業は月30時間。1時間あたりにすると、今の会社は約2,270円、この求人は約2,410円。上がるのは確かだが、毎月25時間長く働く。来年の春に子どもが生まれる中原は「家で計算してみます」と帰った。ところが翌朝、求人の会社の人事から電話が来る。中原は昨日、別のエージェントから、同じ求人に応募していた。 ## 登場人物 - **沢井 みのり**:主人公。26歳、転職エージェントのキャリアアドバイザー(2年目)。今月の目標まで、あと1人。数字に弱いが、求人票は最後の行まで読む。 - **梶 恒一**:38歳、同じ課のキャリアアドバイザー(12年目)。いつもおにぎりを食べている。「紹介しないのも、仕事」が口ぐせ。 - **島田 玲子**:45歳、キャリアアドバイザーの課長。チームの数字を毎日読み上げる。 - **中原 大輔**:31歳、物流の会社の倉庫の主任。年収450万円。来年の春に子どもが生まれる。年収が100万円上がる住宅の営業の求人を見つけてきた。 - **求人の会社の人事**:中原が応募したい、住宅の会社の採用の担当。電話の声だけ。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:晴れた昼の面談室。ガラスの壁の向こうに青空と高いビル。作業着の上着の30代の男性が、丸い机に片手をついて身を乗り出し、スマホを持った腕を右へ突き出す。スマホが絵の枠の右の線を越えて外へ出る。) [人物の紹介] > 物流の会社 倉庫の主任 > 中原 大輔 **中原 大輔**:「100万、上がるんです!」 **中原 大輔**:「この求人で、お願いします」 (絵:面談室。タブレットを胸に抱え、営業の笑顔を作る20代の女性のキャリアアドバイザー。) [人物の紹介] > 転職エージェント キャリアアドバイザー(2年目) > 沢井 みのり **沢井 みのり**:「お任せください!」 **沢井 みのり**(心の声):(今月の、3人目……!) > 紹介した人の入社が決まると、採用した会社から手数料が入る。 > **ℹ 紹介手数料(しょうかいてすうりょう)**(現実の事実):有料の職業紹介の会社が、紹介した人を採用した会社(求人者)から受け取るお金です。職業安定法で、仕事を探す人(求職者)からは、原則として手数料を受け取れないと決まっています。芸能家・モデルや、年収700万円を超える経営管理者などの決まった職業だけが例外です。 > - 出典:[厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第6 手数料](https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/syoukai/dl/06.pdf) (絵:明るい営業のフロア。左で、短い髪の40代の女性の課長が、棒の表だけが光る大きな画面の前に立つ。右の席で、さっきの女性のアドバイザーが背すじを伸ばす。) [人物の紹介] > キャリアアドバイザーの課長 > 島田 玲子 [作中の画面] > 〈今月の決定〉 > チームの目標:12人(あと3人) > 沢井:2人(目標は3人) > 締めまで:4日 **島田 玲子**:「沢井さん、あと1人ね」 **沢井 みのり**:「はい!」 > 30分後。 (絵:丸い机に立てたタブレットの画面の寄り。字の読めない求人の票の行を、紺の袖の人さし指が指す。) [作中の画面] > 〈求人票〉 > 住宅の会社の営業(未経験から) > 月給:38万円(固定残業代 45時間分を含む) > 年収:550万円(賞与を含む) **沢井 みのり**(心の声):(固定残業代、45時間分……) > **ℹ 固定残業代(こていざんぎょうだい)**(現実の事実):決まった時間分の残業代を、実際に残業したかどうかにかかわらず、毎月の給料に定額で含めて払うしくみです。決まった時間を超えて働いた分は、別に払う必要があります。求人票には、固定残業代を除いた基本給の額、何時間分でいくらか、超えた分を追加で払うことを、すべて書くよう国が求めています。 > - 出典:[厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」](https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000498453.pdf) > 45時間は、法律が決める残業の上限の、原則いっぱい。 > **ℹ 時間外労働(じかんがいろうどう)の上限**(現実の事実):労働基準法で、時間外労働(休日労働は含まない)の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時の特別な事情があって労使が合意した時でも年720時間以内などの限度があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。 > - 出典:[厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」](https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463185.pdf) (絵:面談室。左で女性のアドバイザーがタブレットから顔を上げ、真顔になる。右で作業着の上着の男性が、立ったまま女性を見て返事を待っている。) **沢井 みのり**:「あの、中原さん今の残業って月に何時間くらいですか」 **中原 大輔**:「え、残業?5時間くらいです」 **中原 大輔**:「18時には、家に帰れます」 **沢井 みのり**(心の声):(……待って基本給も何時間分でいくらかも書いてない) > **ℹ 基本給(きほんきゅう)**(現実の事実):手当を除いた、給与のもとになる部分です(本給)。賞与や退職金を基本給から計算する会社では、月給が同じでも、基本給がいくらかで受け取る額が変わります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・世界大百科事典)「基本給」](https://kotobank.jp/word/%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E7%B5%A6-51566) > 課長の机。 **沢井 みのり**:「課長この求人このままじゃ紹介できません」 (絵:課長の机の前。左で女性のアドバイザーが、印刷した求人の票を両手で差し出す。紙が絵の枠の下の線を越えて手前へ出る。右で座った課長が腕を組み、眉を寄せる。) **島田 玲子**:「……沢井さん締めまで4日よ」 **沢井 みのり**:「分かってます」 **沢井 みのり**:「でも基本給と残業代の額を会社に聞きます」 > 固定残業代は、何時間分でいくらかを求人票に書くよう、国が求めている。 (絵:隣の島の席。おにぎりをかじりながら椅子にもたれる、波打つ髪の30代後半の男性。横目で左の方を見る。) [人物の紹介] > 同じ課の先輩(12年目) > 梶 恒一 **梶 恒一**(つぶやき):「へえ」 **梶 恒一**:「紹介しないのも、仕事だよ」 > 翌日の昼。 (絵:自分の席で受話器を肩にはさみ、メモ帳に数字を書きつける女性のアドバイザー。) **求人の会社の人事**:「お待たせしました」 [作中の画面] > 〈求人の会社からの返事〉 > 基本給:27万円 > 固定残業手当:11万円(45時間分) > 45時間を超えた分:別に払う > 去年の営業の残業:平均 月30時間 **沢井 みのり**(つぶやき):「よしこれで比べられる」 > 夕方。面談室。 (絵:面談室。左で女性のアドバイザーが、タブレットを男性の方へくるりと向ける。右で男性が身を乗り出してのぞき込む。) [作中の画面] > 〈1時間あたりにすると〉 > 今の会社:年収450万円・残業 月5時間 → 約2,270円 > この求人:年収550万円・残業 月30時間 → 約2,410円 > (1か月の決まった時間を160時間として、年収を1年に働く時間で割った) **中原 大輔**:「ほら!上がってるじゃないですか」 **沢井 みのり**:「はい1時間で140円も」 **沢井 みのり**:「ただ……その代わり毎月25時間長く働くことに……」 (絵:18時の団地の台所。お腹の大きな妻と向かい合い、夕ごはんの茶碗を持って笑う男性。) > 今の会社なら、18時には家にいる。 (絵:夜の住宅の展示場の事務所。1人だけ残り、スーツで図面を広げる同じ男性。窓の外は暗い。) > この求人なら、その時間は、まだ会社。 **中原 大輔**:「春に、子どもが生まれるんです」 (絵:男性の寄り。あごに手を当て、口を結んで考え込む。) **中原 大輔**(つぶやき):「25時間、か」 **中原 大輔**:「一度家で計算してみます」 (絵:面談室の扉の前。右で扉の横に立つ男性が、軽く頭を下げて、ほっとした笑顔。左で女性のアドバイザーが小さく会釈を返す。) **中原 大輔**:「いや……沢井さんに聞いてよかった」 > 今月の3人目は、まだいない。でも、これでいい。 **梶 恒一**:「今の、よかったよ」 > 翌朝。 (絵:細い横の帯の寄り。受話器を耳に当てた女性の、大きく見開いた目。) (絵:朝のフロア。左で受話器を持ったまま立ち尽くす女性のアドバイザー。右の手前の席で、男性がおにぎりをかじっている。) **求人の会社の人事**:「中原さん、別のエージェントさんから昨日、応募が来ましたよ」 **沢井 みのり**:「えっ同じ求人に……?」 (絵:眠そうな目の男性の寄り。おにぎりを置き、めずらしく真剣な顔。) **梶 恒一**:「向こうも入社が決まれば会社から手数料が入るからね」 **梶 恒一**:「急ぐよ、向こうは」 > 額を聞いて、返事を待った、その1日の間に。 ## この話で分かること ### 固定残業代(みなし残業)とは? 求人票ではどこを見る? 決まった時間分の残業代を、実際に残業したかどうかにかかわらず、毎月の給料に定額で含めて払うしくみです。決まった時間を超えて働いた分の残業代は、別に払う必要があります。 ### 年収が上がる転職かどうかは、どう比べる? 年収だけでなく、1年に働く時間で割った「1時間あたりの額」でも比べる方法があります。固定残業代を含む求人は、何時間分が含まれているかと、実際の残業がどのくらいか(平均の時間)を聞いてから計算すると、増えるのがお金か、働く時間かが見えます。 ### 転職エージェントは、どこからお金を受け取る? 有料の職業紹介の会社は、紹介した人を採用した会社(求人者)から手数料を受け取ります。職業安定法で、仕事を探す人(求職者)からは、原則として手数料を受け取れないと決まっています。 ### 残業の上限は、月に何時間? 労働基準法で、時間外労働(休日労働は含まない)の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時の特別な事情があって労使が合意した時でも、年720時間以内などの限度があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。 --- その求人、紹介できません 第1話「年収、100万円上がります」 つづく # 打ちっぱなし1年、コースは0回。 第1話「急ぐのは、スイングじゃない」 この作品には、zerokara株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「ゼロカラプラス」は、zerokara株式会社の実在のサービスで、「ゼロカラ吉祥寺ゴルフ倶楽部」は実在の練習場です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/zerokara/uchippa/manga/1-course-debut/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[打ちっぱなし1年、コースは0回。](https://tooneru.com/zerokara/uchippa/) - 作者:zerokara株式会社 - クレジット:企画:zerokara株式会社/脚本・作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/zerokara/uchippa/manga/1-course-debut/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 練習場では「きれいなスイング」と言われて1年。営業事務の有村 ちひろは、ゴルフ場に一度も行ったことがない。取引先の部長に「来月のコンペ、来るよね」と言われ、6週間後のコンペに出ることになった。練習場のコーチの戸張に勧められ、1人でコースレッスンに申し込む。前の晩はゴルフ場のサイトで服装の決まりを確かめ、当日の1番ホールでは2回空振りして、後ろの組を待たせてしまう。焦るちひろに、戸張は「急ぐのはスイングじゃない、それ以外」と言い、使いそうなクラブを3本持って球を探しに行く進め方を教える。深い草に入った球は足元にあり、ちひろは9ホールを後ろの組を待たせずに回り切った。その夜、部長に「回れました」と送ると、コンペの組み合わせは1組目、部長と部長の会社の社長と同じ組だった。 ## 登場人物 - **有村 ちひろ**:営業事務の会社員。室内の練習場に1年通い、スイングはきれいと言われるが、コースに出たことがない。 - **戸張 伸二**:ゼロカラ吉祥寺ゴルフ倶楽部のコーチ(人物は架空)。口数が少なく、言うことが短い。 - **榊原 誠**:取引先の部長。ゴルフが好きで、ちひろをコンペに誘う。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝のゴルフ場の1番ホールのティー。左で、空振りしたばかりの女性が、クラブを振り切った形のまま固まる。ティーの上のボールは動いていない。右の奥で、次の組の4人がカートの横に立って待っている。) > 日曜の朝。ゴルフ場の1番ホール。 > 2回目の、空振り。 (絵:ティーの上で動かない白いボールと、その横の新しいゴルフシューズのつま先の寄り。) **有村 ちひろ**(心の声):(なんで練習場では当たるのに) **後ろの組の人**:「ゆっくりでいいよー」 (絵:ティーの後ろで待つ次の組の4人。手前の左で、白い口ひげの年配の男性がにこやかに手を振り、隣の人は腕時計を見ている。) > 優しい声が、いちばん刺さる。 > 6週間前。 > 吉祥寺。ゼロカラ吉祥寺ゴルフ倶楽部。 (絵:ビルの地下の明るい練習場。ネットに向かう打席が並ぶ。左で、女性がきれいなフォームでクラブを振り抜く。右で、紺のポロシャツのコーチが腕を組んで見ている。) [人物の紹介] > 営業事務・練習場に通って1年 > 有村 ちひろ [人物の紹介] > ゼロカラ吉祥寺ゴルフ倶楽部のコーチ > 戸張 伸二 **戸張 伸二**:「きれいなスイングです」 **有村 ちひろ**:「えへへ1年通ってますから」 **戸張 伸二**:「コースは?」 **有村 ちひろ**:「……まだ0回です」 > 翌週。会社の応接室。 **榊原 誠**:「有村さんも来月のコンペ来るよね」 (絵:会社の応接室。左で、お茶を運んできた女性が、盆を持ったまま固まる。右で、日に焼けた取引先の部長がソファーの前で身を乗り出し、笑顔でチラシ(字は無い)を見せる。) [人物の紹介] > 取引先の部長 > 榊原 誠 **有村 ちひろ**:「も、もちろんです」 [作中の画面] > 〈ちひろの手帳〉 > 取引先のコンペ:6週間後の日曜 > コースに出た回数:0 **有村 ちひろ**(心の声):(どうしよう行ったことない……) > 次の練習の日。 **有村 ちひろ**:「取引先のコンペに誘われちゃって……」 **戸張 伸二**:「じゃあまず1回出てみましょうか」 (絵:練習場の受付の横の掲示板の前。左で、女性がスマホの予約の画面を見つめる。右で、コーチが掲示板の貼り紙(字は無い)を指さす。) [作中の画面] > 〈ゼロカラプラス コースレッスン〉 > 練習場+9ホール > 初心者OK・お1人での参加OK > 主催:ゼロカラ吉祥寺ゴルフ倶楽部 > **ℹ コースレッスン**(現実の事実):ゴルフ場で、コーチと一緒にコースを回りながら教わるレッスンです。9ホール・18ホールのほか、先に練習場で打ってから回る形などがあります。練習場では分からない、芝の上からの打ち方や、コースでの進め方を、その場で教わります。 > - 問:1人で申し込める? 答:レッスンごとに条件が違うので、申し込む前に案内で参加の条件(1人で参加できるか・初心者向けか・クラブを借りられるか)を確かめます。 **有村 ちひろ**:「えっ1人で行くんですか」 **戸張 伸二**:「知らない人と回るのもゴルフです」 > レッスンの前の晩。 (絵:夜のワンルーム。ベッドの上に服を全部並べ、襟の無いTシャツを両手で持ったまま固まる女性。床に、ゴルフボールの箱がいくつも積んである。) **有村 ちひろ**(つぶやき):「何を着ていけば」 [作中の画面] > 〈ゴルフ場のサイト 服装について〉 > 来場の時:ジャケットを着用 > プレーの時:襟のある服 > 短いパンツの時:ハイソックス > **ℹ ドレスコード**(現実の事実):ゴルフ場で守る服装の決まりです。決まりはゴルフ場ごとに違うので、行くゴルフ場のサイトで確かめます。来場の時のジャケット、プレーの時の襟のある服、短いパンツの時の靴下の長さ、靴などが書かれていることがあります。 > - 問:ゴルフ場に着いてから着替えてもいい? 答:来場の時の服装にも決まりがあるゴルフ場があります。着替える前提でも、行き帰りの服がその決まりに合うかを確かめておきます。 > ボールは、30個持った。 > そして、日曜の朝。 **戸張 伸二**:「有村さん」 (絵:1番ホールのティー。左で、顔を赤くした女性がクラブを握りしめる。右から、コーチが落ち着いた顔で歩いて来る。奥で次の組が待つ。) **有村 ちひろ**:「急がなきゃ」 **戸張 伸二**:「急ぐのはスイングじゃないですよ」 **有村 ちひろ**:「え……?」 **戸張 伸二**:「スイングの外を急ぐんですよ」 (絵:コーチの手が、3本のクラブを扇のように広げて左へ差し出す寄り。クラブの頭が、絵の枠の左の線を越えて外へ出る。) [作中の画面] > 〈スロープレーにしないために、スイングの外でできること〉 > 1. 打つクラブと方向は、自分の番の前に決めておく > 2. 球を探しに行く時は、使いそうなクラブを3本ほど持って行く > 3. 使ったクラブは、カートへ戻る道の近くに置く > 4. スコアは、グリーンを出てから書く > **ℹ スロープレー**(現実の事実):プレーの進行に時間をかけすぎることです。ゴルフ規則は、前もって次のストロークの準備をしておき、自分の番でプレーできるようになってから40秒以内にストロークを行うことを推奨しています。初めての人は、打つ回数よりも、スイングの外(クラブを選ぶ・球を探す・移る)の時間を縮めると、後ろの組を待たせにくくなります。 > - 問:ボールが見つからない時は、何分探していい? 答:球を探し始めてから3分以内に見つからなければ、その球は紛失球になります(ゴルフ規則18.2)。 > - 問:40秒を過ぎたら罰がある? 答:40秒は推奨の目安です。競技では、委員会がプレーのペースの方針を決め、それに違反した時の罰を決めることがあります。 > - 出典:[R&A「ゴルフ規則」規則5 ラウンドをプレーする(日本語版。日本ゴルフ協会の規則のページから)](https://www.randa.org/ja-JP/rog/the-rules-of-golf/rule-5) > - 出典:[R&A「ゴルフ規則」規則18 ストロークと距離の救済、紛失球、アウトオブバウンズ、暫定球(日本語版)](https://www.randa.org/ja-JP/rog/the-rules-of-golf/rule-18) **戸張 伸二**:「スイングはゆっくりで大丈夫ですから」 (絵:3回目のショット。低く飛んだボールが、絵の枠の右の線を越えて外へ飛び出す。クラブを胸に抱えて、球の方へ歩き出す女性。) > 3回目で、当たった。右の、深い草へ。 **有村 ちひろ**:「どこ!?」 (絵:深い草の中。左で、女性が四つんばいで草をかき分けて探す。右で、コーチが立ったまま、女性の靴のすぐ横を指さす。そこに白いボールがある。) **戸張 伸二**:「あの……ボールはたいてい」 **戸張 伸二**:「そこにあるんですけど……」 **有村 ちひろ**:「……あ足元」 > クラブは、もう手の中にある。 (絵:草の中から、持ってきたクラブの1本で打つ女性。ボールは前へ転がる。後ろでコーチが見ている。) > 9番ホール。 (絵:9番ホールのグリーンの外。パターを持った女性が、足早にグリーンから出る。遠くのフェアウェイに、次の組がちょうど着いたところ。) **戸張 伸二**:「1番のあとは1回も待たせてないですよ」 [作中の画面] > 〈9ホールのスコア〉 > 有村 ちひろ:68 **戸張 伸二**:「スコアは……来年でいいですね」 **後ろの組の人**:「いいペースだったね」 (絵:クラブハウスの前。朝の次の組の年配の男性が、通りがかりに笑って片手を上げる。) > 朝、「ゆっくりでいいよ」と言った人だ。 (絵:ゴルフ場の駐車場。キャディバッグを肩にかけ、空に向かって片腕を突き上げて笑う女性。突き上げた拳が、絵の枠の上の線から少し外へ出る。) **有村 ちひろ**:「回れた……!」 > コースは、1回になった。 > その夜。 (絵:夜の部屋。ベッドに寝転がり、スマホに打ち込む女性の手の寄り(光る画面に字は無い)。) [作中の画面] > 〈メッセージ〉 > 有村:コース、9ホール回れました! > 榊原部長:頼もしいね。じゃあ、社長と同じ組で [作中の画面] > 〈コンペの組み合わせ〉 > 1組目 7:32 1番ホールから > 榊原 部長/部長の会社の社長/有村 ちひろ (絵:スマホの光に照らされた女性の顔の寄り。目を見開き、口を開けて固まる。) > 1組目。後ろには、全部の組が並ぶ。 **有村 ちひろ**(心の声):(うそ社長と同じ組……) ## この話で分かること ### 練習場(打ちっぱなし)だけで、ゴルフのコースに出てもいい? ゴルフ規則は、コースに出るための腕前を決めていません。初めての時に気を付けたいのは、打つ回数よりも進むペースです。打つクラブを先に決める、球を探しに行く時にクラブを数本持って行くなど、スイングの外の時間を縮める工夫ができます。 ### スロープレーとは? 初心者が気を付けることは? プレーの進行に時間をかけすぎることです。ゴルフ規則は、前もって次のストロークの準備をしておき、自分の番でプレーできるようになってから40秒以内にストロークを行うことを推奨しています。 ### ボールが見つからない時は、何分まで探していい? 球を探し始めてから3分以内に見つからなければ、その球は紛失球になります。紛失した時は、1罰打を加えて、直前に打った場所からもう一度打ちます(ストロークと距離の救済)。 ### ゴルフ場の服装(ドレスコード)は、どこで確かめる? 決まりはゴルフ場ごとに違うので、行くゴルフ場のサイトで確かめます。来場の時のジャケット、プレーの時の襟のある服、短いパンツの時の靴下の長さなどが書かれていることがあります。 ### コースレッスン(ラウンドレッスン)とは? ゴルフ場で、コーチと一緒にコースを回りながら教わるレッスンです。9ホールや18ホール、先に練習場で打ってから回る形などがあります。 --- 打ちっぱなし1年、コースは0回。 第1話「急ぐのは、スイングじゃない」 つづく # 笑うと、見える 第1話「結婚式まで、6週間」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/karte-yohaku/warau/manga/1-whitening/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[笑うと、見える](https://tooneru.com/karte-yohaku/warau/) - 作者:カルテの余白 - クレジット:原作・脚本:カルテの余白/作画:カルテの余白/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/karte-yohaku/warau/manga/1-whitening/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 6週間後に結婚式をひかえた沢口美緒は、ドレスの試着で笑った時、思わず口元を隠した。右上の前歯の1本だけが、ほかの歯より少し暗い。駅前の歯科の相談の部屋で「いちばん白く」と頼む美緒を、初めて1人で相談を受ける相談係の水島しずくが受ける。院長の久住が口の中を見ると、その1本は高校の部活で折った歯の被せ物だった。ホワイトニングでは被せ物の色は変わらず、まわりを白くするほど、その1本が浮く。被せ物を周りの色に合わせ直すなら、白くしてから色が落ち着くのを待つ順番があり、6週間で間に合うとは言えない。しずくは「式の日にしたいこと」を聞き直し、美緒の願いが「いちばん白い歯」ではなく「口を隠さずに笑うこと」だと分かる。選べることを並べると、美緒は式の前は被せ物を今の歯の色に合わせ、白くするのは式の後で考える(白くするなら、被せ物はその後でもう一度合わせ直す)と決め、口を隠さずに笑った。翌朝、待合室には「銀歯を全部白く。全部、削ってでも」と書いた就活生が待っていた。 ## 登場人物 - **水島 しずく**:駅前の歯科医院の相談係(トリートメントコーディネーター)。治療を決める前の患者の話を聞く。笑う時、口を閉じたままほほえむ。 - **久住 修**:医院の院長で歯科医師。口数が少ない。「やらない方がいい時も言う」が医院の決まり。 - **沢口 美緒**:6週間後に結婚式をひかえた会社員。右上の前歯の1本が、高校の部活で折った歯の被せ物。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:昼のドレスの店。大きな鏡の前で、白いドレスを試着した女性が笑いかけて、とっさに片手で口元を隠す。右で、店の人がスマホを向けている。) [人物の紹介] > 6週間後に式をひかえた会社員 > 沢口 美緒 > 土曜の昼、ドレスの店。 **ドレスの店の人**:「わあ、今の笑顔すてき!」 **ドレスの店の人**:「口元は隠さなくていいですよ」 **沢口 美緒**:「あっ、つい……」 (絵:スマホを持つ手の寄り。画面には、ドレスで笑いながら手で口元を隠す、さっき撮った写真。) **沢口 美緒**(心の声):(やっぱり笑うと見えちゃう) > 右上の前歯が1本、ほかの歯より少し暗い。 > 駅前の歯科。相談の部屋。 (絵:歯科医院の明るい相談の部屋。左に、紙を挟んだ板にペンで書きながら、口を閉じたまま小さくほほえむ若い相談係。右に、両手にあごをのせて身を乗り出す美緒。机の上に、小さな観葉植物。) [人物の紹介] > 歯科医院の相談係 > 水島 しずく **沢口 美緒**:「あの、歯を白くしたくて!」 **沢口 美緒**:「いちばん白いのってどれですか?」 **水島 しずく**:「えっと、いつまでに白くしたいですか?」 **沢口 美緒**:「実は6週間後に結婚式で」 **沢口 美緒**:「えへへ」 [作中の画面] > 〈相談の記録〉 > ご希望:歯を、いちばん白く(ホワイトニング) > いつまで:結婚式まで6週間 > 相談の係:水島(初めて1人で受ける) > **ℹ ホワイトニング**(現実の事実):歯の表面を削らずに、薬剤の成分で歯の内側の色のもとを分解して、歯の色を明るくする処置です。歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、自分の歯に合わせたマウスピースで家で行うホームホワイトニングなどがあります。保険の使えない自由診療で、費用は薬剤・方法・医院で違います。 > - 問:詰め物や被せ物も白くなる? 答:なりません。白くなるのは自分の歯で、詰め物・被せ物の色は変わらないとされています。 > - 問:どれくらい白くなる? 答:変色の原因・歯の状態・生活の習慣などで差が大きく、前もって約束できるものではないとされています。始める前の相談で、変色の原因と、ホワイトニングで変わる色かを歯科医師に診てもらいます。 > - 出典:[日本歯科医師会「お口のなんでも相談 ホワイトニング」](https://www.jda.or.jp/consultation/vol-36.html) > - 出典:[日本歯科審美学会「歯のホワイトニング処置の患者への説明と同意に関する指針」](https://www.jdshinbi.net/pro/pdf/shishin_hp_20200403.pdf) > - 出典:[日本歯科医師会 テーマパーク8020「ホワイトニング」](https://www.jda.or.jp/park/trouble/white_05.html) > しずくが1人で受ける、初めての相談。 **久住 修**:「今日は黙って見てるよ」 (絵:相談の部屋の戸口の横に、腕を組んで立つ白衣の院長。白髪まじりの短い髪、額に上げた拡大鏡の眼鏡。表情は少ない。) [人物の紹介] > 院長・歯科医師 > 久住 修 > この医院は、やらない方がいい時も、そう言う。 **久住 修**:「口の中は診るけどね」 **水島 しずく**(心の声):(見られてるとよけいに緊張する……) (絵:診療室。左で、院長が歯科の小さな鏡を手に、診療台の美緒の口の中を見ている。右の診療台の美緒は、目を閉じて少し緊張している。歯は見えない。) **久住 修**:「右上の前歯これは被せ物だね」 > **ℹ 被せ物(かぶせもの)(クラウン)**(現実の事実):大きく欠けたり削ったりした歯の上に、かぶせて形を戻す人工の歯です。前歯では「差し歯」と呼ばれることもあります。ホワイトニングをしても、被せ物や詰め物の色は変わりません。 > - 問:まわりの歯だけ白くしたら? 答:被せ物との色の差が気になることがあり、その時は被せ物を作り直すことになります。作り直しの費用は別にかかります。 > - 出典:[日本歯科審美学会「歯のホワイトニング処置の患者への説明と同意に関する指針」](https://www.jdshinbi.net/pro/pdf/shishin_hp_20200403.pdf) **沢口 美緒**:「あ、差し歯なんです高校の時に折っちゃって」 (絵:診療台で体を起こした美緒が、胸に紙のエプロンを掛けたまま、上唇に指をあてて、少し困った顔で思い出している。) **沢口 美緒**:「ソフトボール前歯で受けちゃって」 **水島 しずく**:「え、グローブは?」 **沢口 美緒**:「顔で取りました!」 (絵:相談の机の上。しずくの両手が、歯の色の見本(白からクリーム色まで、少しずつ色の違う小さな札が扇のように並ぶ物。字は無い)を広げる。扇の先の札が、絵の枠の下の線を越えて手前へ出る。) **水島 しずく**:「あの……言いにくいんですけど」 **水島 しずく**:「白くなるのは自分の歯だけ」 **水島 しずく**:「差し歯は今の色のまま……」 (絵:思わず椅子から立ち上がる美緒。目を丸くして、机に両手をつく。) **沢口 美緒**:「えっ1本だけ残るの!?」 > まわりを白くするほど、その1本が浮く。 **沢口 美緒**:「じゃあ差し歯も作り直して!」 **沢口 美緒**:「全部まとめて6週間で!」 (絵:相談の机。左で、しずくが白い紙にペンで短い線を順に引いている(字は無い)。右で、美緒があごに指をあてて、紙をのぞき込む。机の端に手鏡。) **水島 しずく**:「それが順番があって……」 [作中の画面] > 〈白くしてから、差し歯を合わせる時〉 > 1. 歯を白くする(何回かかるかは人による) > 2. 色が少し戻る(後戻り)。落ち着くまで2週間ほど待つ > 3. その色に合わせて、差し歯を作り直す > **ℹ 後戻り(あともどり)(ホワイトニングの)**(現実の事実):ホワイトニングで明るくなった歯の色が、少し戻ることです。終わってから2週間ほどの間に少し戻り、その後は比較的落ち着くとされます。時間がたつと少しずつ戻り、その程度や期間には個人差があります。 > - 問:戻らないようにするには? 答:毎日の歯みがきと、数か月に一度の歯科医院での歯の清掃が大切とされています。戻った時に、もう一度少し白くする方法(タッチアップ)もあります。 > - 出典:[日本歯科審美学会「歯のホワイトニング処置の患者への説明と同意に関する指針」](https://www.jdshinbi.net/pro/pdf/shishin_hp_20200403.pdf) **久住 修**:「うーん6週間だと約束はできないな」 (絵:横から見た院長の寄り。腕を組み、まっすぐ前を見て、静かに言う。) **久住 修**:「色が決まる前に作ると」 **久住 修**:「またずれるからね」 **沢口 美緒**:「じゃあ式の写真は……」 (絵:相談の机の向こうで、肩を落とす美緒。また片手で口元を隠し、目が少しうるんでいる。) (絵:しずくの顔の寄り。口を閉じたまま、何かに気づいた目。手にしたペンを止めている。) **水島 しずく**:「美緒さん」 **水島 しずく**:「式の日いちばんしたいことって?」 **沢口 美緒**:「……口を隠さないで」 (絵:口元から、ゆっくり手を下ろす美緒。まっすぐしずくを見る、正直な顔。) **沢口 美緒**:「思いきり笑いたい」 **水島 しずく**(心の声):(そっか白さじゃないんだ) **水島 しずく**(心の声):(1本だけ違うのが嫌なんだ) (絵:相談の机。左で、しずくが何も書いていない3枚のカードを、右の美緒の方へ並べて差し出す。美緒は1枚ずつ見比べている。) **水島 しずく**:「だったらやり方ほかにもありますよ」 [作中の画面] > 〈式までの6週間で、選べること〉 > A:差し歯を、今のまわりの歯の色に合わせて作り直す(後で白くしたら、また合わせ直す) > B:歯を白くしてから、差し歯を合わせる(式に間に合うかは、診てから) > C:式の前は何もしない。白くするかは式の後に > どれも自由診療。費用は医院で違うので、始める前に総額を聞く > **ℹ 自由診療(じゆうしんりょう)**(現実の事実):健康保険が使えず、費用の全部を自分で払う診療です。値段は医院ごとに決めるので、同じ処置でも医院で違います。始める前に、総額・回数・期間と、やり直しや追加の費用を聞いておきます。 > - 問:ホワイトニングの契約で気を付けることは? 答:期間が1か月を超え、金額が5万円を超える歯の漂白の契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」(美容医療)に当たり、書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフなどの決まりがあります。 > - 出典:[日本歯科医師会「お口のなんでも相談 ホワイトニング」](https://www.jda.or.jp/consultation/vol-36.html) > - 出典:[日本歯科医師会 テーマパーク8020「ホワイトニング」](https://www.jda.or.jp/park/trouble/white_05.html) > - 出典:[消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」](https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/) **久住 修**:「Aならまず今の色に合わせてみようか」 **沢口 美緒**:「じゃあA!」 **沢口 美緒**:「白くするのは式のあとでいいや」 (絵:吹っ切れたように、片手を画面の右へ大きく伸ばして、声を出して笑う美緒。口元を隠していない。伸ばした手が、絵の枠の右の線を越えて外へ出る。) > 美緒は、口を隠さずに笑った。 (絵:夕方の医院の廊下。右に、背中を向けて歩きかけた院長が、少しだけ振り向く。左に、珊瑚色の紙ばさみを胸に抱えたしずく。) **水島 しずく**:「あの、院長いちばん白くしなくてよかったんでしょうか」 **久住 修**:「決めたのはあの人だよ」 **久住 修**:「でも聞き方はよかった」 **水島 しずく**(心の声):(今の……ほめられた?) > 翌朝。待合室。 **次の患者**:「相談、お願いしまーす!」 (絵:朝の待合室。リクルートスーツの若い男性が、満面の笑みで、何も書いていない相談の紙を頭の上に高く掲げる。掲げた紙が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。) [作中の画面] > 〈相談の記録〉 > ご希望:銀歯を、全部白く > ひとこと:全部、削ってでも **次の患者**:「全部削っていいんで!」 **水島 しずく**(心の声):(え……全部削る気!?) > 次の相談は、「全部、削ってでも」から始まった。 ## この話で分かること ### ホワイトニングで、差し歯・被せ物・詰め物は白くなる? なりません。ホワイトニングで明るくなるのは自分の歯で、詰め物や被せ物の色は変わらないとされています。まわりの歯だけが明るくなると、色の差が気になることがあり、その時は詰め物・被せ物を作り直すことになります(費用は別にかかります)。 ### 結婚式の前のホワイトニング(ブライダルホワイトニング)と、被せ物の作り直しはどの順番? 被せ物をホワイトニングの後の色に合わせるなら、ホワイトニングを先にし、色が落ち着いてから被せ物を作り直す順番になります。ホワイトニングは1回では効果が出ず、終わってから2週間ほどの間に色が少し戻り、その後は比較的落ち着くとされます。 ### ホワイトニングは保険適用になる? 費用は? 保険のきかない自由診療で、費用は使う薬剤・方法・医院によって違います。被せ物の作り直しの費用も別にかかります。始める前に、総額・回数・期間と、追加ややり直しの費用を聞いておきます。 ### ホワイトニングは痛い? 歯がしみることはある? 処置の間や後に、歯がしみる(知覚過敏)ことがあるとされています。多くは一時的で、出たらホワイトニングを止めて歯科医師に相談します。妊娠中・授乳中の人などは、行わない例に挙げられています。 ### オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの違いは? オフィスホワイトニングは歯科医院で歯科医師・歯科衛生士が行い、短い期間で効果を出しやすく、しみた時にすぐ対応できます。ホームホワイトニングは自分の歯に合わせたマウスピースで家で行い、全部の歯を少しずつ白くできますが、効果が出るまでに時間がかかります。 --- 笑うと、見える 第1話「結婚式まで、6週間」 つづく # AI エージェントの配属先は、窓際でした 読み切り「窓際の新人」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/madogiwa/manga/1-madogiwa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[AI エージェントの配属先は、窓際でした](https://tooneru.com/ka2uma/madogiwa/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/madogiwa/manga/1-madogiwa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 僕が受注の仕事に入れた AI エージェントは、デモでは注文のメールを40秒で受注の画面に入れ、拍手をもらった。3か月後、依頼は0件で、AI は窓際の席で毎朝あいさつを続けていた。社長は来月の会議で続けるかを決めると言う。受注の係の三好さんの隣で一日を見ると、注文は FAX・電話・メールで来て、「いつもの」「少し多め」と書いてあり、欠品や支払いの遅れている店は三好さんが決めていた。デモの注文のメールは、僕が書いたきれいな文だった。僕は、AI に任せるのは写している所、決める所は人に戻す形に作り直し、AI を三好さんの隣へ移す。翌朝、AI は「いつもの」を入れ、欠品の代わりの品を三好さんに聞いてきた。三好さんは「明日も使う」と言う。ところが1週間後、社長が「来月から、全部任せよう」と言い出す。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。社内の受注の仕事に、AI エージェントを入れた。 - **三好 澄江**:受注の係。注文の FAX・電話・メールを一人でさばき、店ごとの「いつもの」を全部覚えている。 - **大塚 剛**:食品の卸の会社の社長。新しい物が好き。 - **AI エージェント**:僕が受注の仕事に入れた AI。絵では、小さな丸いロボットの新人として描いている。特定の製品ではない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の事務所の窓際。日の差す机に、小さな丸いロボットの姿の AI エージェントがちょこんと座っている。机の上に小さなサボテン。奥の席の人たちは誰もこちらを見ていない。) [AI の窓] > 受注の AI エージェント・90日目の朝 > おはようございます。今日も、ご依頼をお待ちしています。 > **ℹ AI エージェント**(現実の事実):目的を伝えると、やり方を自分で組み立て、メール・表・業務の画面などの道具を使って仕事を進める AI のことです。質問に答えるだけのチャットの AI と違い、作業そのものを進めます。どこまで任せ、どこで人が確かめるかは、使う側が決めます。 > 毎朝、同じあいさつ。返事をした人は、まだいない。 (絵:自分の机で、あごに手を当ててノートパソコンの画面を見つめる僕。画面には、横に3本の棒が並ぶだけ。) [人物の紹介] > 受注の仕事に AI エージェントを入れた会社員 > 僕 [作中の画面] > 〈今月の利用〉 > 受注の AI エージェント > 依頼:0件 **僕**(心の声):(はあ……今月も0件か) > 3か月前。 (絵:会議室でのデモ。大きな画面の横で胸を張る僕と、机の上の小さなロボットの AI。社員たちが拍手し、社長が立ち上がって手をたたき、大笑いしている。) [AI の窓] > デモ > 注文のメールを読み、受注の画面に入れ、確認のメールの下書きを作りました。 > かかった時間:40秒 **大塚 剛**:「おお!たった40秒か!」 > 拍手の中で、PoC は満点だった。 > **ℹ PoC(概念実証)**(現実の事実):本格的に入れる前に、その考え方や仕組みが本当に使えるかを小さく試すことです。英語の Proof of Concept の略です。試しはうまくいったのに、実際の仕事で使われないまま止まることを「PoC 止まり」と呼ぶことがあります。 > 今。 (絵:社長の机。座ったままにこやかに笑う社長が、予定の書いていない壁のカレンダーを指さす。机の前に立つ僕は、汗をかいている。) [人物の紹介] > 食品の卸の会社の社長 > 大塚 剛 [窓] > 残り:30日 > 依頼:0件 **大塚 剛**:「まあまあ来月の会議で続けるか決めような」 **僕**:「……はい」 > 受注の島。 > **ℹ 受注(じゅちゅう)**(現実の事実):取引先から注文を受ける事です。反対に、注文を出す事は「発注」です。卸の会社の受注の係は、FAX・電話・メールで来た注文を受け、品と数と届ける日を受注の画面に入れます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「受注」](https://kotobank.jp/word/%E5%8F%97%E6%B3%A8-528812) (絵:受注の島。受話器を肩にはさんでメモを取る年配の女性の係。横の FAX から紙が出てくる。画面の縁には付箋がびっしり。右から、声をかけに来た僕。) [人物の紹介] > 受注の係 > 三好 澄江 **僕**:「あの、三好さん」 **僕**:「あの AI、ちょっと使ってみません?」 **三好 澄江**:「ああ、あれね」 **三好 澄江**:「うちの注文には使えないのよごめんね」 (絵:FAX の寄り。手書きの注文の紙が、絵の枠の下の線を越えて手前へ垂れ下がる。) [作中の画面] > 〈FAX〉 > いつもの、お願いします。 > 来週は、少し多めで。 > ――山田食堂 **三好 澄江**:「ほら山田さんのいつもの、ね」 (絵:FAX の紙をひらひらさせて、当たり前の顔で僕に見せる三好さん。右で、ぽかんとする僕。) > 「いつもの」は、卵とハムと食パン。店ごとに、決まった品がある。 **三好 澄江**:「それと少し多め、は2割ね、あそこは」 **僕**(心の声):(え……デモの注文にそんな言葉なかった) > 3か月前の夜。 (絵:夜の部屋。ノートパソコンで、きちんと整った注文のメールを打つ僕。少し得意げな顔。) > 品の名前も、数も、届く日も全部そろった、一年でいちばんきれいな注文。デモで読ませたそのメールは、僕が書いた。 > 三好さんと話した次の日。 (絵:受注の島。三好さんの隣の椅子に座り、メモ帳を手に横から見る僕。三好さんは受話器を肩にはさんだまま、FAX から出てくる注文の紙を取っている。) > 一日、隣で見た。注文は、FAX と電話とメールで来る。 [作中の画面] > 〈三好さんの一日〉 > 注文の入り口:FAX・電話・メール > 「いつもの」:店ごとに決まった品 > 欠品の時:代わりの品を、店に電話で相談 > 支払いの遅れている店:出すかどうかを決める(迷う時は社長へ) > **ℹ 欠品(けっぴん)**(現実の事実):注文された品が、店や倉庫に無くて注文に応じられない事です。卸の会社では、欠品の時に代わりの品を店に相談するかどうかを、担当の人が決めます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「欠品」](https://kotobank.jp/word/%E6%AC%A0%E5%93%81-490724) > この中で、三好さんが決めている所はどこだろう。 (絵:印刷した注文の一覧を、鉛筆の先で指す三好さんの寄り。落ち着いた顔。) **三好 澄江**:「決めてるのは代わりの品と、出していいかどうかくらいね」 **三好 澄江**:「あとはね、写してるだけなのよ」 > AI に任せるのは、写している所。決める所は、人に戻す。 [作中の画面] > 〈AI エージェントに任せる仕事:受注の入力〉 > 入ってくる物:FAX とメールの注文(「いつもの」は店ごとの表で読む) > AI がする事:品と数を読み、受注の画面に入れる > 人に戻す時:欠品・支払いの遅れている店・読めない字 > 渡す権限:受注の画面に入れるまで(確定と、取引先へのメールは渡さない) > 終わり:三好さんが確かめて、確定を押す > **ℹ 権限(けんげん)**(現実の事実):その人やシステムが、どこまでの操作をしてよいかの決まりです。AI エージェントには、仕事に要る分だけを渡します。お金・取引先への送信・元に戻せない操作は、人が確かめてから進める形がよく使われます。 (絵:小さなロボットの AI を両腕に抱えて、窓際の席から受注の島へ運ぶ僕。ロボットの短い足が、絵の枠の右の線を越えて外へはみ出す。) > 窓際から、三好さんの隣へ。 > 翌朝。 (絵:朝の受注の島。左の、画面の横に座ったロボットの AI が、届いた FAX の紙を見ている。右で三好さんが両手でカップを持ち、横目で見ている。) [AI の窓] > 受注の AI エージェント > 山田食堂さまの「いつもの」3品を、受注の画面に入れました。 > 卵が欠品です。代わりの品は、三好さんに確かめます。 **三好 澄江**:「あらちゃんと聞いてくるのね」 (絵:確定のキーを人さし指で押す三好さん。口元が少しゆるむ。横で短い腕を上げるロボットの AI と、右の奥で小さくこぶしを握る僕。) [窓] > 依頼:1件 > (初めての本番) **三好 澄江**:「ふふこれ、明日も使うわ」 > 1週間後。 **大塚 剛**:「おーい!聞いたぞ、使えるらしいな!」 (絵:受注の島に満面の笑みで乗り込み、片腕を高く振り上げ、もう片腕を横へ広げる社長。振り上げた手が、絵の枠の上の線を越えて外へ出る。左で固まる僕とロボットの AI、奥でこちらを見る三好さん。) **大塚 剛**:「よし!来月から全部任せよう!」 **僕**(心の声):(ぜ、全部……!?) > 「全部」の中には、どこで人に戻すか、まだ決めていない仕事が、山ほどある。 ## この話で分かること ### AI エージェントを導入しても、現場で使われないのはなぜ? 試しの導入(PoC)で使った入力や手順が、実際の仕事と違うことがあるからです。注文が FAX や電話で来る、店ごとの言い回しがある、例外を人が判断している、といった現場の事情を試しに入れていないと、試しでは満点でも、本番では使えない道具になります。 ### AI エージェントに、まず何を任せればいい? 一つの業務の中の、人が「写している」「探している」だけの作業からです。入ってくる物、AI がする事、人に戻す時、どうなったら終わりかの4つを書いてから任せると、現場の人が使うかどうかを判断しやすくなります。 ### AI エージェントは、どこで人に判断を戻すべき? お金に関わる所、取引先への約束や送信、例外(欠品・支払いの遅れ・読めない字など)です。AI には仕事に要る分だけの権限を渡し、判断の要る所では止めて人に確かめる形にしておきます。 ### AI エージェントとは? チャットの AI(生成 AI)と何が違う? チャットの AI は聞かれたことに答えるのが中心で、AI エージェントは目的を受けて、メール・表・業務の画面などの道具を使い、作業そのものを進めます。そのぶん、どこまで任せ、どこで人が確かめるかを、使う側が先に決めておく必要があります。 --- AI エージェントの配属先は、窓際でした 読み切り「窓際の新人」 おわり # AI の部下が、並んで待っている 読み切り「部長の椅子」 この物語は、作者の経験をもとに、場面と細部を変えて描いています。出てくる会社・AI と、僕以外の人物は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/buka/manga/1-buka/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[AI の部下が、並んで待っている](https://tooneru.com/ka2uma/buka/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/buka/manga/1-buka/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) - 元になった記事:[AIを何人も並べて働かせたら、僕に必要になったのは上司の仕事だった](https://note.com/kazumahorita/n/n9713a504efca)(note) ## あらすじ 僕は、資料の下書き・申請画面の直し・数字の照合・調べものを、別々の AI に同時に渡した。画面の AI は頼んでいない機能まで作り、照合の AI は保存していないのに「完了しました」と言い、調べものの AI は資料を見れば分かる事を聞いてきた。気づくと僕は一日中、報告を読み、止め、言い直す上司の仕事をしていた。僕は、終わりの条件と今回やらない事を書いて頼み、同じ注意は AI が始める前に読む指示書へ書き足していく。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。AI と一緒に仕事をしている。 - **AI たち**:僕が仕事を渡した AI。絵ではブラウン管の頭の部下として描いている。特定の製品ではない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝のオフィス。僕の机の前に、ブラウン管の頭の小さな AI たちが4人、敬礼して並ぶ。) [人物の紹介] > AI に仕事を任せる会社員 > 僕 > 最近、AI に仕事を一つずつ頼むのをやめた。 > 資料の下書き、申請画面の直し、売上の数字の照合、来週の調べもの。別々の AI に、同時に渡す。 (絵:AI たちが速さの線を引いて一斉に走り出す。) > 並べた分だけ、速く進む。 > ――はずだった。 (絵:画面を直す係の AI が、小さな画面に巨大な機械を取り付けて誇らしげ。) [AI の窓] > 画面を直していた AI > AI:ご依頼の修正に加えて、便利な機能もいくつか作りました。 (絵:照合の係の AI が親指を立てるが、後ろの保存の棚は空でほこりが舞う。) [AI の窓] > 数字を照合していた AI > AI:完了しました。 > 開いてみると、結果のファイルが保存されていなかった。 **僕**:「え……保存は?」 (絵:調べものの係の AI が、答えの載った資料を抱えたまま手を挙げて質問している。) [AI の窓] > 調べものを頼んだ AI > AI:確認ですが、来週の打ち合わせの資料は、どちらにありますか。 > 資料を見れば分かることを、何度も聞いてきた。 **僕**:「それ資料に書いてあるよ」 (絵:4人の AI が僕の机の前に一列に並び、画面にそれぞれ「?」の印。) **AI たち**:「次はどうします?」 (絵:気づくと僕は大きな部長の椅子に座り、ネクタイを締めている。後ろにネオンの光。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 職業:AI の上司 > (いつの間にか) **僕**(心の声):(あれ……僕、いつの間にか上司になってる?) > 一日中、AI の報告を読み、止め、言い直していた。 (絵:ゴールのテープの先まで走り続け、荷物を足していく AI。) > AI は、終わりを教えないと終わらない。確認を足し、備えを足し、説明を足していく。 (絵:僕が AI に一枚の指示の札を手渡す。) [作中の画面] > 頼む時に書く、終わりの条件 > 経費の申請画面で、経理の担当者が金額を直して承認まで進められれば終わり。 > 承認者を分ける仕組みや、通知の追加は今回はやらない。 > 終わったら、追加の改善はせずに返して。 > **ℹ 完了条件(かんりょうじょうけん)**(現実の事実):仕事を「どうなったら終わりか」で言い表した物です。誰が何をできるようになれば終わりか、今回はやらない事は何かを、頼む時に書きます。 (絵:AI が小さな画面に大きな関所の門を建て、数人の使う人が役割の札の前で迷う。) [AI の窓] > 画面を直していた AI > AI:作った人と承認する人を、分けました。 > 理屈は正しい。でも、その会社は数人で回していて、承認者を分ける運用はない。 > **ℹ 職務分掌(しょくむぶんしょう)**(現実の事実):仕事の役目を分け、一人で作って承認まで済ませられないようにする考え方です。誤りや不正を防ぐ効果がありますが、数人で回す会社では、確認の段が増えて、使う人が迷うこともあります。 > お金を送る、外に公開する、元に戻せない削除。人が確かめるのは、そういう操作だ。 (絵:僕が分厚い指示書のバインダーに、ページを書き足していく。) **僕**(つぶやき):「また同じ注意を何度も書いてる……」 [作中の画面] > AI が仕事を始める前に読む指示書 > 報告は結論から書く。 > 画面に表示されただけで、保存や送信を確かめずに完了と言わない。 > 資料を見れば分かることは、聞く前に調べる。 (絵:朝礼。AI たちが棚の指示書を順に読んでから仕事を始める。) > 注意の言葉だけでなく、なぜそうするのか、どんな失敗があったのかも残す。 [作中の画面] > 指示書に足した一行 > 完了と言う前に、保存先を開いて確かめる。以前、成功と表示されたのに保存されておらず、翌日に作り直したため。 (絵:左に手を挙げて質問する人の部下、右に黙って高い塔を組み上げる AI。) > 部下なら、分からない所で聞き返してくれる。AI は、聞き返さずに、もっともらしく作り切る。 (絵:午後。テープの前で止まる AI たち。僕は椅子にもたれて落ち着いている。) **僕**:「……そうか」 **僕**:「決めるのはどうなったら終わりかなんだ」 (絵:夜の机。ノート PC で文章を書く僕。足元で小さな AI たちが眠る。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 部下:4人 > 状態:睡眠中 > 足元で、部下たちが眠っている。明日の朝も、机の前に並んで、「次はどうします?」と待っている。 ## この話で分かること ### AI を何人も並べて働かせると、人の仕事はどう変わる? 作業から上司の仕事に変わります。元の記事では、頼んでいない機能の追加、保存されていない「完了」、資料を見れば分かる質問が同時に起き、一日中 AI の報告を読み、止め、言い直すことになりました。 ### AI に仕事を頼む時、一番大事なことは? 何をするかより、どうなったら終わりかを書くことです。誰が何をできるようになれば終わりか、今回はやらない事は何かの二つを書くと、頼んでいない追加を差し戻す回数が減ったと元の記事は書いています。 ### AI が足してきた安全策は、全部入れるべき? 何が危ないかは仕事の事情で変わります。お金を送る、外に公開する、元に戻せない削除をする操作は人が確かめるべきですが、それ以外にまで確認の段を足すと、誰も使わない仕組みになることがあります。気になる危険は一行で伝えてもらい、足すかどうかは人が決めます。 ### 同じ注意を AI に何度も言わないためには? AI が仕事を始める前に必ず読む指示書を一つ作り、注意をそこへ書き足していきます。なぜそうするのか、どんな失敗があったのかも残すと、少し違う場面でも同じ失敗をしにくくなります。 --- AI の部下が、並んで待っている 読み切り「部長の椅子」 おわり # その花火、どこから撮った? 第1話「欄干」 この物語はフィクションです。写真店・人物・作中の写真は架空で、花火大会は実在の大会です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hanabimieru-dev/dokokara/manga/1-dokokara/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[その花火、どこから撮った?](https://tooneru.com/hanabimieru-dev/dokokara/) - 作者:ハナビミエル開発者 - クレジット:原作・脚本:ハナビミエル開発者/作画:ハナビミエル開発者/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hanabimieru-dev/dokokara/manga/1-dokokara/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 東京の下町の写真店「ミツギ写真」に、結婚を控えた朝倉悠斗が、両親の若い頃の写真を持ち込む。隅田川の花火と、橋の欄干の前で振り向く若い母。両親は撮った場所を覚えていない。2代目の店主・三ツ木遥は、写真の中の2つの花火の大きさと重なりから、2つの会場を結ぶ線の上の、川に沿った方角の橋で撮ったと割り出す。だが当日の道は、歩きながら見る決まり。同じ場所には立てないと落ち込む悠斗に、遥は写真の手前の欄干だけが流れていることに気づく。父は、歩きながら撮っていた。その夜、遥は祖父の机の奥から「1978」の札のネガを見つける。写っていたのは隅田川の花火と、今は無い高い煙突。祖父は言う。「その場所は、言わん」。 ## 登場人物 - **三ツ木 遥**:主人公。27歳、写真の現像とデータ化の店「ミツギ写真」の2代目の店主。地図と方角に強く、確かめた事しか言わない。口ぐせは「見える、とは言えません」。 - **朝倉 悠斗**:29歳、来年の秋に結婚する会社員。両親の若い頃の、隅田川の花火の写真を持ち込む。 - **三ツ木 鉄郎**:78歳、ミツギ写真の先代。遥の祖父。腰を痛めて店の奥にいる。若い頃、全国の花火を撮って回っていたらしいが、話さない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い古い写真。上に夜空と、大きく開いた花火とその奥に小さく開いた花火が縦に重なる。真ん中に灯りの映る暗い川。下に、橋の欄干の前で振り向く若い女性。手前の欄干だけが横に流れてぶれている。フィルムの粒子。) > 両親の部屋の、引き出しの奥にあった1枚。 > 母が26歳の夏。撮ったのは、父。 > 場所は、2人とも覚えていない。 > 東京の下町。写真の現像と、データ化の店。 > **ℹ 現像(げんぞう)**(現実の事実):撮ったフィルムを薬品で処理して、目に見えない像(潜像)を見える像にする事です。デジタルカメラでは、RAW の形の加工していないデータを、専用のソフトで写真に仕上げる事も現像と呼びます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉・日本大百科全書)「現像」](https://kotobank.jp/word/%E7%8F%BE%E5%83%8F-60793) (絵:古い小さな写真店の中。棚にネガの袋と古いカメラ、カウンターにフィルムを読み取る機械。首にルーペを下げた若い女性の店主が、カウンターの奥で顔を上げる。夕方の窓の光。) [人物の紹介] > ミツギ写真 2代目の店主 > 三ツ木 遥 (絵:カウンターの前に立つ、紺のジャケットの若い男性。古い写真を両手で差し出し、少し緊張した顔。) [人物の紹介] > 依頼人(来年の秋に結婚) > 朝倉 悠斗 **朝倉 悠斗**:「あのこの写真の場所に両親を立たせたくて」 **朝倉 悠斗**:「式の前に同じ1枚を撮れたらって」 **三ツ木 遥**:「隅田川ですね花火が、2つ」 (絵:ルーペ越しに見た写真の寄り。夜空に大きく開いた花火と、その奥に小さく開いた花火が縦に重なっている。フィルムの粒子と光のにじみ。) **三ツ木 遥**:「ほら同じ大きさの玉なら小さい方が遠いんですよ」 > **ℹ 打上花火(うちあげはなび)の開く高さと大きさ**(現実の事実):打上花火は、玉の大きさ(号数)で開く高さと広がりがおおよそ決まります。日本煙火協会の「煙火百科」の表(割物の例)では、5号玉は高さ約190〜200mで直径約150〜160m、10号玉は高さ約330mで直径約280〜300mに開きます。同じ大きさの玉なら、遠くで開いた方が小さく見えます。 > - 問:写真の花火の大きさから、距離が分かる? 答:同じ大きさの玉だと分かっていれば、写真の中の大きさを比べて、どちらが近いかの見当はつきます。写真だけでは玉の大きさは分からないので、作中のように、重なり方や手前の物など別の手がかりと合わせて確かめます。 > - 出典:[国土交通省 第26回危険物海上運送基準検討会 資料26-3-3-1 別添1(日本煙火協会「煙火百科」の表を引用)](https://www.mlit.go.jp/kaiji/kikenbutu/26-3-3-1-1.pdf) **三ツ木 遥**:「それに隅田川の花火会場が2つあるんですよ」 > **ℹ 隅田川花火大会(すみだがわはなびたいかい)**(現実の事実):東京の隅田川で夏に開かれる花火大会です。2026年(第49回)は7月25日(土)に開かれ、第一会場(桜橋下流〜言問橋上流)と第二会場(駒形橋下流〜厩橋上流)の2か所から、合わせて約20,000発を打ち上げる計画でした。打上の始まりは第一会場が19:00、第二会場が19:30の計画でした(主催者の実施計画概要)。 > - 問:いつから? 答:主催者の説明では、享保18年(1733年)に両国橋のあたりの料理屋が上げた花火が「両国の川開き」の始まりとされ、昭和36年(1961年)まで両国橋の上流で続きました。交通事情などで開けなくなった後、昭和53年(1978年)に「隅田川花火大会」と名を改めて復活しました。 > - 問:会場が2つあると、見え方はどう変わる? 答:2つの会場は川に沿って離れて並んでいるので、見る場所によって2つの花火が横に並んで見えたり、縦に重なって見えたりします。 > - 出典:[隅田川花火大会実行委員会「令和8年(第49回)隅田川花火大会実施計画概要」](https://www.sumidagawa-hanabi.com/assets/pdf/%E4%BB%A4%E5%92%8C8%E5%B9%B4(%E7%AC%AC49%E5%9B%9E)%E5%AE%9F%E6%96%BD%E8%A8%88%E7%94%BB%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf) > - 出典:[隅田川花火大会 公式サイト「大会について」](https://www.sumidagawa-hanabi.com/about/index.html) **朝倉 悠斗**:「えっ2つも?」 (絵:高い所から見下ろした夜の川。川に沿って、離れた2か所に花火を打ち上げる船の灯りが並ぶ。両岸の街の灯り。) **三ツ木 遥**:「2つの会場は川に沿って並んでる」 **三ツ木 遥**:「縦に重なるのは川沿いの方角から見た時だけ」 (絵:写真の下の方の寄り。橋の欄干の手すりと、その向こうの暗い川面。欄干だけが横に流れてぶれている。) **朝倉 悠斗**:「……じゃあ川の上の橋?」 [窓] > 〈推理 1枚目の写真〉 > 花火が2つ:大きい方が近く、小さい方が遠い > 縦に重なる:2つの会場を結ぶ線の上から見た > 手前に欄干:川に沿った方角の、橋の上 **三ツ木 遥**:「見える、とは言えません」 **三ツ木 遥**:「でも見えたかもしれない場所なら」 > 店の奥。 (絵:店の奥の畳の部屋。腰にベルトを巻いた白髪の老人が座椅子に座り、古いフィルムカメラを膝にのせて、むっとした顔で振り向く。) [人物の紹介] > ミツギ写真の先代 > 三ツ木 鉄郎 **三ツ木 鉄郎**:「ふん花火の日の道は歩きながら見るもんだ」 > **ℹ 花火大会(はなびたいかい)の観覧(かんらん)の決まり(隅田川花火大会)**(現実の事実):主催者の「観覧時のお願い」は、大変な混雑のため歩行者も一方通行の規制があり、歩きながらの観覧になるとしています。道路や公園での場所取りは禁止で、見つかれば撤去されます。防護柵に登る・入ること、他人のマンションや敷地に無断で入ることもやめるよう求めています。 > - 問:座って見られる所は? 答:主催者の公式サイトは、市民協賛席(有料の観覧席)のほかに、座って観覧できる場所はないとしています。 > - 出典:[隅田川花火大会 公式サイト「観覧時のお願い」](https://www.sumidagawa-hanabi.com/manner/index.html) > - 出典:[隅田川花火大会 公式サイト(トップの観覧の注意)](https://www.sumidagawa-hanabi.com/) **朝倉 悠斗**(心の声):(そんな……同じ場所には立てない……) (絵:読み取りの機械の画面いっぱいに、写真を大きく映した所。暗い店の中で、画面の光が店主の横顔を照らす。) **三ツ木 遥**(つぶやき):「……あれ欄干だけ流れてる」 (絵:写真のさらに寄り。手前の欄干の手すりは横に長く流れてぶれているのに、奥の花火の光の筋はくっきりしている。) **三ツ木 遥**:「でも花火は流れてない」 **三ツ木 遥**:「近い物だけ流れるのは撮った人が横に動いていたから」 (絵:カウンター越しに向き合う2人。写真を指さす店主と、目を見開く若い男性。) **三ツ木 遥**:「お父さん歩きながら撮ったんですよ」 **朝倉 悠斗**:「……父さん、止まってなかったんだ」 [窓] > 〈推理 答え〉 > 撮った場所:2つの会場を結ぶ線の上の、川に沿った方角の橋 > 撮り方:歩きながら(手前の欄干だけが流れている) > お母さんは、歩きながら振り向いた (絵:頬に手を当てて、静かに考える三ツ木 遥の横顔の寄り。) **三ツ木 遥**:「来年の夏同じ方角を3人で歩いてみてください」 **三ツ木 遥**:「立ち止まらなくていいんですお父さんも止まらなかった」 **朝倉 悠斗**:「あの写真は撮れますか?」 **三ツ木 遥**:「撮るのは歩き終わってからです」 **三ツ木 遥**:「その年の決まり一緒に見ましょう」 (絵:夜の店の前の通り。写真を胸に抱えて歩き出す若い男性の後ろ姿。少しだけ振り返って頭を下げる。街灯と光のにじみ。) > その夜。暗室。 > **ℹ 暗室(あんしつ)**(現実の事実):外の光が入らないようにした部屋です。光に当たると像が消えるフィルムや印画紙を扱うため、写真の現像や焼き付けに使います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「暗室」](https://kotobank.jp/word/%E6%9A%97%E5%AE%A4-29182) (絵:赤い灯だけの暗室。古い机の引き出しの奥から、ネガの袋を取り出す店主の手。全体が赤い一色。) (絵:細い横の帯の寄り。赤い灯の下で、細長いネガの帯を光にかざした所。ネガの袋に小さな紙の札が付いている。) (絵:ライトボックスの上で、ネガを反転して映した古い夜の写真。川の上に開いた花火と、その手前に、今は無い高い煙突の影。) > 札には、「1978」とだけ。 > 今の地図には無い、高い煙突。 (絵:暗室の戸口に立つ老人。廊下の暗がりに体の半分が沈み、赤い灯が目元だけを照らす。) **三ツ木 鉄郎**:「その場所は言わん」 ## この話で分かること ### 隅田川花火大会の花火は、どこから見える? 2つの会場は川に沿って離れて並んでいるので、川に沿った方角から見ると2つの花火が縦に重なって見え、川を横から見ると並んで見えます。どこで見る時も、当日は歩行者も一方通行の規制があり、歩きながらの観覧になると主催者は案内しています。 ### 隅田川花火大会の会場はどこ? 何発? 2026年(第49回)は7月25日(土)に開かれ、第一会場(桜橋下流〜言問橋上流)と第二会場(駒形橋下流〜厩橋上流)の2か所から、合わせて約20,000発を打ち上げる計画でした。打上の始まりは第一会場が19:00、第二会場が19:30の計画でした(主催者の実施計画概要)。 ### 打上花火は、どのくらいの高さで開く? 打上花火は、玉の大きさ(号数)で開く高さと広がりがおおよそ決まります。日本煙火協会の「煙火百科」の表(割物の例)では、5号玉は高さ約190〜200mで直径約150〜160m、10号玉は高さ約330mで直径約280〜300mに開きます。同じ大きさの玉なら、遠くで開いた方が小さく見えます。 ### 隅田川花火大会は、いつから? 主催者の説明では、享保18年(1733年)に両国橋のあたりの料理屋が上げた花火が「両国の川開き」の始まりとされ、昭和36年(1961年)まで両国橋の上流で続きました。交通事情などで開けなくなった後、昭和53年(1978年)に「隅田川花火大会」と名を改めて復活しました。 --- その花火、どこから撮った? 第1話「欄干」 つづく # 値なしの土地、査定します 第1話「値なしの宿」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/1-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/1-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 雨の現地調査で古い石垣の崩れに巻き込まれた不動産鑑定士は、土地の値を大神殿の神託だけで決める王国に、18歳の測量見習いケイとして生まれ変わる。宿〈月見鳥亭〉は2年前に魔物が出たため、神託で「値なし」とされ、亡き父の借金を継いだ娘リタは、商会に銀貨30枚で宿を手放せと迫られていた。ケイは、自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を開き、商業ギルドの売買の帳から、同じ通りや隣の通りで売れた3件の値を集める。借金で急いで売った鍛冶屋の家は普通の値に直し(事情補正)、2年前の取引は今の値に直し(時点修正)、角地や通りの幅の違いを比べて、月見鳥亭の土地に「銀貨約420枚」の値を付けた。買い手に名乗り出た元冒険者のドーラは、最後にこう切り出す。この宿で、人が死んだそうだね、と。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は34歳の不動産鑑定士。転生後は町の測量所の見習い、18歳。自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を持つ。 - **リタ**:宿〈月見鳥亭〉の娘、16歳。去年の冬に父を病で亡くし、宿と借金を継いだ。 - **ドーラ**:宿を開く場所を探している元冒険者。何でも自分の目で確かめる。 - **ベルント・グラナート**:グラナート商会の主。値なしの土地を安く買い集めている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:雨の夕方、日本の住宅地の細い坂道。古い石垣の前で、雨合羽の男が巻尺を手に立っている。) > その土地、いくらですか。――そう聞かれるのが、俺の仕事だった。 (絵:濡れた道路に巻尺を当てて、道の幅を測る手。) [作中の画面] > 現地調査メモ > 前面道路の幅:3.8メートル(4メートルに足りない) > **ℹ 前面道路(ぜんめんどうろ)**(現実の事実):土地が接している道路を、不動産の仕事では前面道路と呼びます。建築基準法の道路は原則として幅4メートル以上で、幅4メートル未満の古い道に接する土地は、道の中心から2メートルの線が道路の境界とみなされ、建て替える時はそこまで下げて建てます(第42条第2項)。 > - 問:土地の値にも響く? 答:響きます。国の不動産鑑定評価基準は、土地の値を決める要因の1つに、接する道の幅や造りの状態を挙げています。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「建築基準法」(第42条 道路の定義)](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201) > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) > 値は、勘で決めるものじゃない。道の幅、日当たり、近くで売れた値。確かめた事だけが、値になる。 (絵:古い石垣が崩れ、振り返る男に石が降りかかる。「ゴゴッ」の描き文字。) > 最後に測ったのは、道の幅だった。 (絵:石畳の町と市場。遠くの丘の上に、大神殿の白い尖塔が立つ。) > 目を開けると、俺は18歳の測量見習いで、ここは、神様が土地の値を決める国だった。 (絵:測量の縄と杭を肩にかついだ青年が、町を見上げている。) [人物の紹介] > 町の測量所の見習い(前世は不動産鑑定士) > ケイ (絵:宿〈月見鳥亭〉の前。商会の男たちが、宿の娘を取り囲んでいる。) **取り立て役**:「へっ!」 **取り立て役**:「値なしの宿だ銀貨30枚でもありがたく思え」 > **ℹ 値(ね)なし**(作中の世界の決まり):この世界では、大神殿の神託が値を告げなかった土地のことで、値の分からない土地には誰も金を貸さず、誰も買いません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実で、事故があったり取引が少なかったりして、値段が付けにくく売りにくい土地の扱いに近い物です。 **リタ**:「冗談でしょ!父さんの宿をそんな値で売るもんか!」 (絵:男たちの前に、両手を広げて立ちはだかる宿の娘。) [人物の紹介] > 宿〈月見鳥亭〉の娘 > リタ (絵:男の手が突き出す灰色の石の札。札の上で神殿の紋が淡く光る。) [窓] > 大神殿 値の神託|月見鳥亭(宿と土地) > 値:なし > **ℹ 値(ね)の神託(しんたく)**(作中の世界の決まり):この世界では、土地の値は大神殿の神託だけで決まります。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実には一つの機関が土地の値を決める仕組みは無く、売り買いの値段は売る人と買う人の合意で決まります。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では、明治6年(1873年)に始まった地租改正で、地租(土地の税)は地価にかけるようになり、納め方も米からお金に変わりました。このとき、課税と納税の証書として「改正地券」が発行されました(地券そのものは、明治5年〈1872年〉から「壬申地券」として出ていました)。 > - 出典:[国税庁 税務大学校 租税史料館「平成15年度特別展示 地券の世界」](https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/tokubetsu/15.htm) > - 出典:[国税庁 税務大学校『租税史料叢書 第一巻 地租関係史料集』解題](https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/01chiso/kaidai.htm) > この国では、土地の値は、大神殿の神託だけで決まる。魔物の出た家に、神託は値を告げない。 > 値の告げられない土地には、誰も金を貸さず、誰も買わない。 (絵:宿の建物を見上げ、目を細めるケイの顔のアップ。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(値の無い土地なんて無い) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(値の分からない土地があるだけだ) [窓] > ――査定書を開きます。 > 対象:月見鳥亭の土地 > 記入できるのは、あなたが確かめた事だけです。 > **ℹ 査定書(さていしょ)(ケイの窓)**(作中の世界の決まり):この世界では、ケイにだけ見える窓で、自分で確かめた事だけを書き込めます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の不動産鑑定で、鑑定業者が依頼者に交付する鑑定評価書(不動産の鑑定評価に関する法律第39条)にあたります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「不動産の鑑定評価に関する法律」(第2条・第36条・第39条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000152) (絵:ケイが右上の何もない空中を見る。青い光が顔を照らす。「ピン」の描き文字。) **ケイ(桂木 慧)**:「待ってください」 **ケイ(桂木 慧)**:「3日くださいこの宿の土地の値を俺が出します」 **取り立て役**:「はあ?神託でもない小僧が」 **取り立て役**:「どうやって値を出す!」 **ケイ(桂木 慧)**:「近所で最近いくらで売れたかを調べます」 (絵:商業ギルドの帳場。天井まで届く棚に、革の表紙の帳が並ぶ。) > 商業ギルドの〈売買の帳〉。この町で、いつ、どの土地が、いくらで売れたか。――誰も読まない帳だ。 > **ℹ 売買の帳(ちょう)**(作中の世界の決まり):この世界では、商業ギルドが記録している、いつ・どの土地が・いくらで売れたかの帳です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実で国土交通省が公開している「不動産情報ライブラリ」の、取引価格・成約価格の情報にあたります。 > - 出典:[国土交通省「不動産情報ライブラリ」](https://www.reinfolib.mlit.go.jp/) [窓] > 取引事例比較法 > 近くで最近売れた土地の値を集め、 > 売れた時の事情・時期・土地の条件の違いを直してから、 > 対象の土地と比べて値を出す。 > **ℹ 取引事例比較法(とりひきじれいひかくほう)**(現実の事実):取引事例比較法は、近くで似た不動産の取引事例を多く集め、事情補正と時点修正をし、地域や土地ごとの違いを比べて、対象の不動産の値(比準価格)を出す方法です。国の不動産鑑定評価基準は、近くで似た不動産の取引が行われている時に有効な方法としています。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) > 前の世界では、近くで売れた値を、国が誰でも見られる形で出していた。 (絵:机に広げた帳をめくるケイとリタ。リタが一行を見て目を丸くする。) **リタ**:「あった!同じ通りの粉屋の跡銀貨400枚で売れてる……!」 **ケイ(桂木 慧)**:「うんでも1件だけじゃ決められない」 **記録係**:「ほれ鍛冶屋の家と隣の通りの雑貨屋」 **記録係**:「帳を読みに来た子は40年で初めてだよ」 (絵:ギルドの記録係の老女が、分厚い帳をもう一冊、机に置く。「バンッ」の描き文字。) [窓] > 査定書|集めた取引事例 > (町割りで、区画の広さは同じ) > ① 粉屋の跡・同じ通り >   半年前 銀貨400枚 > ② 鍛冶屋の家・同じ通り >   半年前 銀貨280枚 > ③ 雑貨屋・隣の通り >   2年前 銀貨380枚 **ケイ(桂木 慧)**:「待てよ……②は安すぎる」 **ケイ(桂木 慧)**:「鍛冶屋は借金の取り立てで急いで売ってるんだ」 (絵:ケイが帳の一行を指で押さえ、隣のリタに説明している。) [窓] > 事情補正 > 売り急ぎ・買い急ぎなど、特別な事情で値がずれた取引は、普通の取引の値に直す。 > ② 借金で急いで売った(記録係の話では、相場の7割ほど) > ② 280枚 → 400枚 > **ℹ 事情補正(じじょうほせい)と時点修正(じてんしゅうせい)**(現実の事実):事情補正は、売り急ぎや買い進みなど特殊な事情で値がずれた取引事例を、普通の取引の値に直すことです。時点修正は、取引の時と今とで値の水準が変わっていれば、今の値に直すことです。どちらも国の不動産鑑定評価基準が定める手順です。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) **リタ**:「ねえ③は2年前だけど……」 **ケイ(桂木 慧)**:「大丈夫街道が通ってから」 **ケイ(桂木 慧)**:「この町の土地はこの2年で1割上がった」 **ケイ(桂木 慧)**:「帳の値を並べるとそうなる」 [窓] > 時点修正 > 売れた時と今とで値の水準が変わっていれば、今の値に直す。 > ③ 2年前の取引。この2年で1割上がった > ③ 380枚 → 418枚 (絵:二本の通りが交わる角に建つ月見鳥亭を、ケイとリタが見上げる。) **ケイ(桂木 慧)**:「最後に土地そのものの違いを比べる」 **ケイ(桂木 慧)**:「月見鳥亭は広い通りの角だ」 [窓] > 地域要因・個別的要因の比較 > 道の幅、角地かどうか、日当たり、水の便など、通りと土地の条件の違いを比べて直す。 > ③ 隣の細い通り −5% > 月見鳥亭は角地 +5% > (どちらも、帳に並んだ値の差から) > **ℹ 地域要因(ちいきよういん)と個別的要因(こべつてきよういん)**(現実の事実):地域要因は、その地域の特徴を作り、地域の土地の値に全体として響く要因です。個別的要因は、その土地だけの条件(形・道との接し方・日当たりなど)で、一つ一つの値を分ける要因です。取引事例比較法では、売れた土地と対象の土地のこの2つの違いを比べて直します。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) (絵:夕方の月見鳥亭の前。人だかりと商会の男たちの前で、ケイが一枚の紙を掲げる。) [窓] > 査定書|月見鳥亭の土地 > ① 400枚 → 420枚 > ② 280枚 → 400枚 → 420枚 > ③ 380枚 → 418枚 → 417枚 > 比準価格:銀貨 約420枚 > **ℹ 比準価格(ひじゅんかかく)**(現実の事実):取引事例比較法で出した値の呼び名です。集めた取引の値に事情補正と時点修正をかけ、地域要因と個別的要因の違いを比べて直し、直した値どうしを見比べて決めます。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) **取り立て役**:「420……!?」 **取り立て役**:「神託は値なしだぞ!」 **ケイ(桂木 慧)**:「神託は値を告げない」 **ケイ(桂木 慧)**:「でも隣で売れた値は嘘をつかない」 > ただし、この値には、まだ引いていない物がある。 (絵:人だかりの中から、大剣を背負った背の高い女が進み出る。) [人物の紹介] > 宿を開く場所を探す元冒険者 > ドーラ **ドーラ**:「ふうんその値の理由全部聞いたよ話に乗ってもいい」 **ベルント・グラナート**:「ほう……値なしに値を付ける小僧、か」 **ベルント・グラナート**:「……神殿に知らせておけ」 (絵:通りの端に止まった黒い馬車。窓の奥から、指輪をはめた男が見下ろしている。) [人物の紹介] > グラナート商会の主 > ベルント・グラナート **ドーラ**:「ただしね」 (絵:夜の宿の食堂。ランプの光の中で、ドーラが低い声で切り出す。) **ドーラ**:「この宿で人が死んだそうだね」 (絵:顔をこわばらせて立ち尽くすリタ。背後の階段の上に、二階の廊下の暗い扉。) ## この話で分かること ### 土地の値段はどう調べる・どう決まる?(近くで売れた値と比べる取引事例比較法) まず、近くで最近売れた値を調べます。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、不動産の取引価格・成約価格や地価公示などの価格の情報を、地図や地域から探して見られます。鑑定では、集めた取引事例に事情補正・時点修正をして、地域や土地ごとの違いを比べ、対象の値(比準価格)を出す取引事例比較法を使います。 ### 急いで売った土地や、昔売れた土地の値段は、そのまま比べていい? そのままは使いません。国の不動産鑑定評価基準では、売り急ぎ・買い進みなど特殊な事情で値がずれた取引は普通の取引の値に直し(事情補正)、売れた時と今とで値の水準が変わっていれば今の値に直して(時点修正)から比べます。 ### 角地や道の幅で、土地の値段は変わる? 変わります。国の不動産鑑定評価基準は、土地の値に効く個別の要因として、角地かどうかなど接している道との関係、接している道の幅や造り、日当たり、上下水道の有無などを挙げています。 --- 値なしの土地、査定します 第1話「値なしの宿」 つづく # 値なしの土地、査定します 第2話「告げること、告げなくていいこと」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/2-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/2-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 月見鳥亭では、2年前の冬に2階の3号室で泊まり客が魔物に襲われて亡くなり、去年の冬にはリタの父が病で亡くなっていた。「言ったら、また値なしに戻る」と隠したがるリタに、ケイは前の世界の決まりを示す。取引を仕事にする者は、買う人の判断に大きく関わる事をわざと告げなかったり、嘘を告げたりしてはならない。国の手引きでは、病気や老衰による自然な死、日常の中での不慮の死は原則として告げなくてよく、事件や事故などそれ以外の死は告げる。貸す時は概ね3年で原則として告げなくてよくなるが、売る時にその目安は無い。聞かれた時は年数にかかわらず告げる。告げるのは、いつ・どこで・何が原因か。ケイとリタは告知書を書いてドーラに渡し、聞かれた父の死にも正直に答えた。魔物が上がってきた裏の古井戸を確かめ、鉄の格子で塞がれているとケイが告げると、ドーラは買うと決める。その夕方、大神殿から召喚状が届く。神託に無い値を口にしたケイを、神前査定に呼ぶ、と。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は34歳の不動産鑑定士。転生後は町の測量所の見習い、18歳。自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を持つ。 - **リタ**:宿〈月見鳥亭〉の娘、16歳。去年の冬に父を病で亡くし、宿と借金を継いだ。 - **ドーラ**:宿を開く場所を探している元冒険者。何でも自分の目で確かめる。 - **グレゴール**:大神殿の鑑定官。神託を読む役。神託を信じているが、嘘は嫌う。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:色の抜けた記憶。冬の夜、宿の二階の廊下。床に落ちたランプと、半開きの扉。) > 2年前の冬。2階の3号室に泊まっていた旅の商人が、夜中に魔物に襲われて亡くなった。 (絵:夜の宿の食堂。うつむくリタと、向かいに座るケイ。) **リタ**:「ねえ……言わなきゃだめ?」 **リタ**:「言ったらまた値なしに戻っちゃう」 (絵:黙って考えるケイの顔のアップ。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(前の世界でもいちばん多かった相談だな) [窓] > 前の世界の決まり(宅地建物取引業法 第47条) > 不動産の取引を仕事にする者は、 > 買う人の判断に大きく関わる事を、わざと告げなかったり、嘘を告げたりしてはならない。 > **ℹ 宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)第47条(重要な事実の不告知の禁止)**(現実の事実):宅地建物取引業法第47条は、不動産会社(宅地建物取引業者)が、契約を勧める時などに、相手の判断に重要な影響を及ぼす事について、わざと事実を告げなかったり、嘘を告げたりすることを禁じています。破ると、2年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方の対象です(第79条の2)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2・第47条・第79条の2)](https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176) **ケイ(桂木 慧)**:「……リタ隠して売れば後で必ず揉める」 **ケイ(桂木 慧)**:「そして次に買う人がいなくなる」 (絵:色の抜けた記憶。現代の不動産会社の窓口で、若い夫婦が書類を握りしめて訴え、前世のケイが深く頭を下げている。) > 前の世界で一度だけ、見た。隠して売られた家の買い主が、泣きながら事務所に来た日を。 **リタ**:「……じゃあ父さんのことも?父さんもこの宿で死んだ」 (絵:色の抜けた記憶。眠るように横たわる父の手を、少女が両手で握っている。) **ケイ(桂木 慧)**:「お父さんは病気だったよね」 [窓] > 告げなくてよい死(原則) > 老衰や病気による自然な死。 > 家の中での転倒、食べ物を詰まらせる等の、日常の中での不慮の死。 > ※長く気付かれず、特別な清掃や大きな改修をした場合は除く > **ℹ 特殊清掃(とくしゅせいそう)**(現実の事実):特殊清掃は、孤独死などがあった住まいで、元の状態に戻すために消臭・消毒や清掃を行うことです。国土交通省のガイドラインは、自然死や日常生活の中での不慮の死でも、長く気付かれずに特殊清掃や大規模なリフォームが行われた時は、告げる対象になるとしています。 > - 出典:[国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf) > 前の世界の国の手引き(人の死の告知に関するガイドライン)は、そう決めていた。 > **ℹ 人の死の告知(こくち)に関するガイドライン**(現実の事実):国土交通省が2021年10月に出した、不動産会社(宅地建物取引業者)が、住まいの取引で過去の人の死を告げるかどうかを判断する時の目安です。住宅として使う不動産が対象で、オフィスなどは対象にしていません。 > - 問:このガイドラインに従えば揉めない? 答:揉めた時の民事の責任は、取引ごとの依頼や契約の中身で決まり、ガイドラインどおりにしても責任を免れるとは限らない、とガイドライン自身が書いています。 > - 出典:[国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf) [窓] > 告げる死 > 事件や事故など、それ以外の死。 > ※貸す時は、起きてから概ね3年たてば、原則として告げなくてよい。 > ※売る時には、その年数の目安は無い。 (絵:ランプの灯りの中で、ケイを見上げて言いかけるリタの顔の寄り。) **リタ**:「3号室のことは……」 **ケイ(桂木 慧)**:「ごめん売るなら告げる」 [窓] > 年数や死因にかかわらず告げる時 > ・買う人、借りる人から聞かれた時 > ・世の中に広く知られた事件などで、買う人が知っておくべき事情がある時 [窓] > 告げる中身 > いつ・どこで・何が原因か(分からなければ、分からないと)。 > 亡くなった人の名前や、詳しい様子までは告げない。 > 後で揉めないよう、書いて渡すのが良い。 **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(ただし告げるのは確かめた事だけだ) (絵:朝の町の衛兵の詰所。年老いた衛兵が古い記録の帳を開き、ケイが横から覗き込む。) **年老いた衛兵**:「おう2年前の冬の件ならわしが退治した」 **年老いた衛兵**:「奴は裏の古井戸から上がってきたんだ」 [窓] > 査定書|確かめた事(月見鳥亭) > 2年前の冬・2階の3号室 > 泊まり客が魔物に襲われて亡くなった > 魔物は裏の古井戸から(衛兵の記録) > 衛兵が退治・床と壁は張り替え済み (絵:朝の宿の食堂。窓から光が差し、ドーラが席に着く。ケイとリタが向かいに立つ。) (絵:机の上に置かれた一枚の紙と、紙を押さえるリタの震える手。) [作中の画面] > 告知書(月見鳥亭) > 2年前の冬、2階の3号室で、泊まり客が夜中に魔物に襲われて亡くなりました。魔物は町の衛兵が退治し、部屋の床と壁は張り替えてあります。 **リタ**:「あの……昨日は答えられなくてごめんなさい」 **ドーラ**:「ん?お父さんの事は書いてないね」 (絵:紙を読み、片眉を上げるドーラ。) **ケイ(桂木 慧)**:「病で亡くなりました」 **ケイ(桂木 慧)**:「聞かれたのでお答えします」 **ドーラ**:「ふうん正直だね部屋を見せてもらうよ」 (絵:二階の三号室の扉を開けるドーラ。後ろにケイ。「ギィ」の描き文字。) **ドーラ**:「冒険者が気にするのは一つだけ魔物がどこから来たか」 (絵:ドーラが膝をつき、張り替えた床板を指で叩く。「コツ」の描き文字。) **ケイ(桂木 慧)**:「衛兵の記録では裏の古井戸から上がってきた」 (絵:裏庭の古井戸。鉄の格子と封印の石で、口が塞がれている。) **ケイ(桂木 慧)**:「今は鉄の格子で塞いであります昨日俺が見てきました」 **ドーラ**:「でも怖がる客もいるよ」 **ドーラ**:「その分は値から引かせてもらう」 (絵:口の端を上げて笑うドーラの顔のアップ。) **ドーラ**:「でもね隠さなかった分あんたたちを信じる」 **ドーラ**:「買うよ」 **ドーラ**:「あ、値は建物の分も出してから決めよう」 > 事件のあった家を、どれだけ嫌うかは、人によって違う。だから先に告げて、買う人に決めてもらう。 (絵:ドーラが差し出した大きな手を、リタが両手で握る。) > 値は、隠した事の上には立たない。 (絵:夕暮れ、宿の入口の石段に並んで腰かけるリタとケイ。リタが照れくさそうに横を向く。) **リタ**:「……ありがと父さんの宿隠し事なしで渡せる」 **ケイ(桂木 慧)**:「まだだよ建物の値が残ってる」 (絵:夕方の町の通り。白い法衣の神殿の騎士たちが進み、人々が道を空ける。「ゴォン」の鐘の描き文字。) (絵:神殿の騎士が、巻物を広げて読み上げる。) [窓] > 大神殿より 召喚状 > 神託に無き値を口にした測量見習いケイ、 > 3日後、神前査定に出頭せよ。 > **ℹ 神前査定(しんぜんさてい)**(作中の世界の決まり):この世界では、神託に逆らって値を口にした者が、大神殿で神の前に立ち、値の理由を問われる場です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実に同じ場はありませんが、値の理由を説明させる点は、現実の鑑定評価書や査定で根拠を示すことに重ねてあります。 **リタ**:「神前査定……?」 **リタ**:「負けたら二度と値を口にできなくなる!」 (絵:青ざめるリタの顔のアップ。) (絵:巻物を受け取るケイ。静かな顔。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(神託と値の出し方で勝負か……望むところだ) (絵:夜の神殿の奥。ろうそくの下で、古い値帳を開く鑑定官の手と横顔。) [人物の紹介] > 大神殿の鑑定官 > グレゴール **グレゴール**(心の声):(80年……一度も書き換えていない) ## この話で分かること ### 事故物件の告知義務は何年・どこまで? 国土交通省のガイドラインでは、事件・事故などによる死は、賃貸なら発生(発覚)から概ね3年たてば原則として告げなくてよく、売買にはこの年数の目安が示されていません。病気や老衰などの自然死や、日常生活の中での不慮の死(転倒・誤嚥など)は、賃貸・売買とも原則として告げなくてよいとされています。 ### 事故物件だと隠して売ると、どうなる? 不動産会社が、買う人の判断に重要な影響を及ぼす事を、わざと告げなかったり嘘を告げたりすることは、宅地建物取引業法第47条で禁じられ、2年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方の対象です(第79条の2)。 ### 事故物件について聞かれたら、何を、どこまで答える? 買う人・借りる人から聞かれた時は、経った年数や死因にかかわらず、調べて分かった事を告げます。告げるのは、事案が起きた時期・場所・死因(分からなければ分からないと)で、特殊清掃などをした時はその事も伝えます。 --- 値なしの土地、査定します 第2話「告げること、告げなくていいこと」 つづく # 値なしの土地、査定します 第3話「神前査定」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/3-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/3-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 王都の大神殿で、神託に無い値を付けたケイの神前査定が開かれる。鑑定官グレゴールに宿の建物の値を問われたケイは、大工の親方の見積もりから、今建て直すといくらか(再調達原価)を出し、建って25年の傷みを引いて約150枚とする(原価法)。土地は近所の売れた値から約420枚。さらに、同じ通りの粉屋の跡の神託の値が、80年前の大神託のまま銀貨120枚で止まっていることを示し、半年前に400枚で売れた事実と突き合わせる。どれが本当の値かと迫るグレゴールに、ケイは宿の稼ぎから出す3つ目の値(収益還元法、約600枚)を加え、3つの値を見比べて約590枚に決める(試算価格の調整)。グレゴールは「お前の札は、理由しか書かぬのだな」と、この値を神殿の帳に記すことを認め、ドーラは告げられた事の分を引いた銀貨500枚で宿を買う。その夜、王家の使者がケイの前に現れる。北の丘の〈ダンジョン付きの土地〉に、値を付けよ、と。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は34歳の不動産鑑定士。転生後は町の測量所の見習い、18歳。自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を持つ。 - **リタ**:宿〈月見鳥亭〉の娘、16歳。去年の冬に父を病で亡くし、宿と借金を継いだ。 - **ドーラ**:宿を開く場所を探している元冒険者。何でも自分の目で確かめる。 - **グレゴール**:大神殿の鑑定官。神託を読む役。神託を信じているが、嘘は嫌う。 - **ベルント・グラナート**:グラナート商会の主。値なしの土地を安く買い集めている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝。王都の大神殿へ続く長い白い石段を、ケイとリタとドーラが小さく上っていく。) **リタ**:「勝てるの……?」 **ケイ(桂木 慧)**:「勝ち負けじゃないよ値の理由を見せに行くんだ」 (絵:王都の大神殿の大広間。高い天井から光の柱が落ち、傍聴の人々が並ぶ。「ゴォン」の描き文字。) > 神前査定。神託に逆らった者が、神の前で、値の理由を問われる場。 (絵:壇上の鑑定官グレゴールが、神託の石の札を掲げる。) **グレゴール**:「神託は値を告げる!」 **グレゴール**:「人が値を決めるなど思い上がりだ」 (絵:広間の真ん中に、小さく立つケイとリタとドーラ。) **ケイ(桂木 慧)**:「俺は値を決めていません確かめた事を並べただけです」 (絵:傍聴の人々がざわめき、顔を寄せ合う。「ざわっ」の描き文字。) **グレゴール**:「ならば並べてみよ!」 **グレゴール**:「その宿の建物はいくらだ」 [窓] > 原価法 > 今、同じ物を建て直すといくらかかるか(再調達原価)を出し、 > 古くなった分・使いにくくなった分などの傷み(減価)を引いて値を出す。 > **ℹ 再調達原価(さいちょうたつげんか)**(現実の事実):再調達原価は、その不動産を今の時点で建て直す(手に入れ直す)とした時にかかる、適正な費用の総額です。原価法では、この再調達原価から古くなった分などの減価を引いて、値(積算価格)を出します。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) > **ℹ 原価法(げんかほう)と積算価格(せきさんかかく)**(現実の事実):原価法は、今の時点で同じ物を建て直すといくらか(再調達原価)を出し、古くなった分などを引いて(減価修正)値を出す方法です。この方法で出した値を積算価格と呼びます。建物や、建物とその敷地の値を出す時に向いています。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) **ケイ(桂木 慧)**:「町の大工の親方に聞きました」 **ケイ(桂木 慧)**:「同じ宿を今建てたらいくらか」 **ケイ(桂木 慧)**:「梁と柱も一緒に見てもらった」 (絵:前の日の宿。大工の親方が太い梁を拳で叩いて確かめ、ケイが脚立の下から見上げている。) [窓] > 査定書|月見鳥亭の建物(原価法) > 今建て直すと:銀貨300枚(大工の親方の見積もり) > 建って25年。梁と柱を見て、あと25年は使えると見た。 > → 傷みは、およそ半分。 > 建物:銀貨 約150枚 (絵:額に汗を浮かべるグレゴールの顔のアップ。) **グレゴール**:「土地は!」 **グレゴール**:「神託は値なしと告げた」 **ケイ(桂木 慧)**:「近所で売れた値と比べて約420枚」 **ケイ(桂木 慧)**:「では伺います」 **ケイ(桂木 慧)**:「同じ通りの粉屋の跡神託の値はいくらですか」 (絵:埃をかぶった巨大な値帳を、グレゴールの手が開く。) [窓] > 値帳|粉屋の跡(80年前の大神託) > 値:銀貨120枚 > **ℹ 値帳(ねちょう)**(作中の世界の決まり):この世界では、大神殿の神託が告げた土地の値を記した帳で、80年前の大神託のまま書き換えられていません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の何かと決まって対応する物ではありません。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では、明治6年(1873年)に始まった地租改正で決めた宅地の地価が長く修正されず、都市化が進んで市街の宅地の地価と時価の差が大きくなったことが、明治時代の議会で問題になりました。 > - 出典:[国税庁 税務大学校『租税史料叢書 第一巻 地租関係史料集』解題](https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/01chiso/kaidai.htm) (絵:傍聴の人々とリタが、驚いて顔を上げる。) **ケイ(桂木 慧)**:「同じ土地が半年前に400枚で売れてます」 **ケイ(桂木 慧)**:「80年の間に街道が通り町が育った」 **ケイ(桂木 慧)**:「神託が間違ったんじゃない」 **ケイ(桂木 慧)**:「80年前の値のまま止まってるだけです」 (絵:色の抜けた記憶。若い見習いの鑑定官が、年老いた師から古い値帳を両手で受け取る。) **グレゴール**(心の声):(……師は言った神託は変わらぬ、と) (絵:額に汗を浮かべた、グレゴールの目もとの寄り。) **グレゴール**:「建物で150土地で420宿として使えばまた違う値になろう」 **グレゴール**:「どれが本当の値だ!」 **ケイ(桂木 慧)**:「全部本当です」 **ケイ(桂木 慧)**:「だから3つ目も出します」 [窓] > 収益還元法 > その不動産が毎年いくら稼ぐか(純収益)から値を出す。 > 1年の純収益 ÷ 還元利回り = 収益価格 > **ℹ 純収益(じゅんしゅうえき)**(現実の事実):不動産が1年に生む収入(総収益)から、管理・修繕・税などの費用(総費用)を引いた残りです。収益還元法は、この純収益をもとに、その不動産の値(収益価格)を出します。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) [窓] > 査定書|宿として(収益還元法) > ドーラの宿の見込み:1年の売り上げから費用を引いた純収益は、銀貨54枚。 > この町の宿の還元利回り:9%(ギルドの帳の、売れた宿の値と稼ぎから) > 54 ÷ 0.09 = 約600枚 [窓] > 試算価格の調整 > 出した値どうしを見比べ、どの値の理由がより確かかを考えて、一つの値に決める。 > 積算価格:570枚(土地420+建物150) > 収益価格:600枚 > 宿として売るので、稼ぎの値を重く見て:約590枚 > **ℹ 試算価格(しさんかかく)の調整**(現実の事実):試算価格の調整は、複数の鑑定の方法で出した値(試算価格)を見直し、それぞれの値の説得力を比べて、最終の鑑定評価額を決める作業です。国の不動産鑑定評価基準は、値の決まり方を筋道立てて、裏付けをもって説明できるようにすることが大事だとしています。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) (絵:壇上のグレゴールを見上げ、落ち着いて話すケイ。) **ケイ(桂木 慧)**:「2つの値が近いのはどちらの理由も確かめてあるからです」 **グレゴール**:「ふむ……神託は値を告げるだが理由は告げぬ」 (絵:静まり返った広間。グレゴールが石の札を下ろし、ケイを見つめる。) **グレゴール**:「……お前の札は理由しか書かぬのだな」 (絵:ろうそくの光の中、羽根ペンが古い値帳の余白に新しい一行を書き入れる。) **グレゴール**:「この値!」 **グレゴール**:「神殿の帳に「神託の外の値」として記す」 (絵:夕日の神殿の階段。人々に囲まれるケイ、リタ、ドーラ。) **ドーラ**:「銀貨500枚」 **ドーラ**:「怖がる客の分は引いた文句は?」 **リタ**:「あ……ありません!」 (絵:涙をこぼしながら笑うリタの顔のアップ。) (絵:机の上の銀貨の袋と、契約の紙に手形を押す手。) > 30枚と言われた宿は、理由を並べて、500枚になった。 (絵:夜の王都。丘の上の城の窓に灯りがともる。) **王家の使者**:「測量見習いケイ殿」 **王家の使者**:「王命である」 (絵:夜道で、紋章の外套をまとった若い女の使者が、ケイの前に立つ。) [窓] > 王命 > 北の丘の〈ダンジョン付きの土地〉に、値を付けよ。 > ――神託は、80年、値を告げていない。 (絵:目を見開くケイの目の大写し。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(ダンジョンに値を……?) (絵:月夜の北の丘。地面に口を開けた巨大な穴から、赤い光が漏れている。) **ベルント・グラナート**:「さて……小僧はいくらと出すかな」 (絵:暗い部屋の窓辺で、杯を傾けて笑う商会の主。) ## この話で分かること ### 不動産鑑定とは? 3つの方法で値をどう決める? 不動産の鑑定評価は、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表すことで(不動産の鑑定評価に関する法律)、不動産鑑定士の仕事です。国の不動産鑑定評価基準では、原価法・取引事例比較法・収益還元法の3つで値(試算価格)を出し、見比べて一つの鑑定評価額に決めます。 ### 不動産鑑定と、不動産会社の査定はどう違う? 不動産鑑定は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づいて、不動産鑑定士が経済価値を判定して値に表す物で、鑑定業者は依頼者に鑑定評価書を交付します。不動産会社の査定は、売り出す値段についての意見で、宅地建物取引業法はその根拠を明らかにするよう求めています。 ### 古い建物の値段はどう出す?(原価法と減価) 国の不動産鑑定評価基準の原価法では、今同じ建物を建て直すといくらかかるか(再調達原価)を出し、古くなった分などの減価を引いて値(積算価格)を出します。減価の理由は、使ったり時がたったりする物理的な理由、設備や間取りが古くなる機能的な理由、周りとの関係などの経済的な理由に分けて考えます。 --- 値なしの土地、査定します 第3話「神前査定」 つづく # 値なしの土地、査定します 第4話「机の上の値」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/4-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/4-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 王命から3日。グラナート商会は、北の丘の〈ダンジョン付きの土地〉を銀貨10枚で買いたいと王家に申し出る。添えた査定書は、値帳に値なし・売買の帳に取引なしという、帳だけで出した値だった。10日後の御前査定までに値を出せと命じられたケイの査定書は、広さも道も水も稼ぎも空欄で、確かめた事しか書けない。前の世界でいう机上査定と訪問査定の違いだ。机上査定は近くの取引や公の記録から現地を見ずに出すおおよその値で、訪問査定は現地で土地の形・道との接し方・傷み・周りの様子を確かめて出す。ケイはドーラとリタと丘に上り、新しい轍、丘の上の湧き水、荷車の通れる一本の道を確かめる。そしてダンジョンの入口で、商会の男たちが冒険者から1組銅貨20枚の入場料を取っているのを見つける。値なしの土地が、毎日稼いでいた。夜の魔物と見張り・柵の修理の費用も書き、ケイは値を出す前に10日、稼ぎとかかる物を数えると決める。丘を下りる道は、麓のパン屋の裏庭を通っていた。店主のマーラは言う。3か月前、商会はこの店を1,200枚で売ると言った。まだ一人も見に来ない、と。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は34歳の不動産鑑定士。転生後は町の測量所の見習い、18歳。自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を持つ。 - **リタ**:宿〈月見鳥亭〉を売った娘、16歳。ケイの相棒として帳面をつける。 - **ドーラ**:月見鳥亭を買った元冒険者。ダンジョンに詳しい。 - **ノエラ**:王家の財務院の書記官。王命をケイに伝えた。 - **ベルント・グラナート**:グラナート商会の主。値なしの土地を安く買い集めている。 - **マーラ**:北の丘の麓のパン屋の主。店を売りに出している。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:王城の財務院の広間。高い窓から光が差し、長い机に書類と帳が積まれている。) > 王命から、3日。王城の財務院。 (絵:紋章の外套の若い女の書記官が、机越しに一通の書状を差し出す。) [人物の紹介] > 王家 財務院の書記官 > ノエラ **ノエラ**:「グラナート商会から北の丘の土地を買いたいと申し出がありました」 [窓] > グラナート商会 査定書|北の丘の土地 > 値帳:値なし(80年) > 売買の帳:取引なし > 魔物の出る土地につき > 値:銀貨10枚 > **ℹ 取引事例(とりひきじれい)が無い土地の値(ね)**(現実の事実):国の不動産鑑定評価基準では、取引事例比較法は近くで似た不動産の取引がある時に有効な方法で、事例が無ければほかの方法を使います。基準は、原則として複数の方法を使い、それが難しい時もほかの方法の考え方をできるだけ取り入れるよう求めていて、稼ぎから値を出す収益還元法は、市場性の無い文化財などを除き、基本的にすべての不動産に使うべきとしています。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) **ケイ(桂木 慧)**:「……あのこの査定書を書いた人は丘に上りましたか?」 **ノエラ**:「いいえ「上る要はない帳で足りる」と書いてあります」 **ノエラ**:「10日後御前査定を開きます」 **ノエラ**:「商会の値とあなたの値を王の前に並べます」 (絵:ケイが右上の何もない空中を見上げる。青い光が顔を照らす。) [窓] > 査定書|北の丘の土地 > 広さ:未確認 > 道:未確認 > 水:未確認 > 地下(ダンジョン):未確認 > 稼ぎ:未確認 **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(うわ……全部、空欄だ) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(この窓は見てない物を書かせてくれない) > 前の世界でも、行かずに出す値と、行って出す値は、分けて呼ばれていた。 (絵:色の抜けた記憶。前世のケイが、事務所の机で地図と取引の一覧を見比べる姿と、雨の現地で巻尺を当てる姿。) [窓] > 机上査定と訪問査定 > 机上査定:近くの取引や公の記録から、現地を見ずに出す。早いが、おおよその値。 > 訪問査定:現地で、土地の形・道との接し方・建物の傷み・周りの様子を確かめて出す。 > **ℹ 机上査定(きじょうさてい)と訪問査定(ほうもんさてい)**(現実の事実):不動産会社の査定には、近くの取引の事例や公的なデータから現地を見ずに出す簡易な査定(机上査定)と、担当者が現地で土地の形・道路との接し方・建物の傷み具合・登記の情報などを調べて出す、訪問による査定があります。訪問による査定では、机の上では分からない個別の事情が値に入るので、金額が上がることも下がることもあります。 > - 問:どちらを先に頼む? 答:不動産流通近代化センター(現・不動産流通推進センター)の手引きでは、まず周辺の事例や公的データから出す簡易な査定を頼んで、価格や各社の対応を比べ、そのうえで会社を選んで訪問による査定を頼む流れを示しています。査定は通常無料です。 > - 問:訪問の時に何を見る? 答:同じ手引きでは、土地は交通の条件・近くの環境・道路の状況・土地の形など、建物は外観・使われている材料や設備・修繕の状況などを、目で見て確かめるのが中心だとしています。購入時の契約書やリフォームの書類なども用意しておくとよいとしています。 > - 問:不動産鑑定では、現地を見なくてもいい? 答:不動産鑑定士の鑑定評価では、不動産鑑定評価基準が、対象の不動産を実地調査・聴聞・公的資料の確認などで確かめることを求めています。鑑定評価書には、実地調査を行った日、行った不動産鑑定士の名前、調べた範囲などを書きます。 > - 出典:[財団法人 不動産流通近代化センター(現・公益財団法人 不動産流通推進センター)「住まいを売る時の査定の流れ ~『価格査定マニュアル』を利用した価格査定について~」(2011年4月)](https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/2010/11/satei1.pdf) > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」(総論 第8章 第4節 対象不動産の確認、第9章 鑑定評価報告書の記載事項)](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) **ケイ(桂木 慧)**:「行くしかない丘に行きます」 (絵:ドーラが大剣を背負って、にやりと笑う。その横で、リタが帳面を胸に抱える。) **ドーラ**:「しょうがないね」 **ドーラ**:「ダンジョンの1階までなら案内してやる昔の飯の種だ」 **リタ**:「じゃあ数えるのは私の仕事ね!」 (絵:朝。町の北の門を出ていくケイ・リタ・ドーラの3人の後ろ姿。) > 翌朝、3人で北の門を出た。 (絵:北の丘の全景。麓の小さなパン屋の裏から、一本の荷車道が丘を上り、丘の上の地面に大きな穴が口を開けている。道と丘に、測る点線と矢印が重なる。) > 北の丘。王都の北の門から、歩いて半刻。 (絵:丘の上り口。ケイが測量の縄を張り、地面の深い轍に手を当てる。) **ケイ(桂木 慧)**:「ん?轍が新しい荷車が毎日上ってる」 **ドーラ**:「へえ誰も行かない値なしの丘にかい」 **リタ**:「ひゃっ冷たい……水が湧いてる!」 (絵:丘の上の岩の間から湧く泉。リタが両手で水をすくい、驚いた顔をする。) [窓] > 査定書|北の丘の土地 > 道:荷車の通れる道が1本(麓のパン屋の裏庭を通る) > 水:丘の上に湧き水 > 轍:新しい。毎日、荷車が上っている (絵:ダンジョンの入口。木の柵と門と見張りの小屋。武装した冒険者の一行が列を作り、門番の男に硬貨を払っている。隅に小さく、硬貨のやりとりを見て目を細めるケイ。) **ドーラ**:「ちっ入場料を取ってやがる」 (絵:門の小屋から、黒いひげの大男が出てきて、こちらをにらむ。) **取り立て役**:「またお前か!」 **取り立て役**:「ここは値なしの土地だ誰の物でもねえ」 **ケイ(桂木 慧)**:「へえ誰の物でもない土地で誰が入場料を取ってるんです?」 **取り立て役**:「う、うるせえ商会が魔物から守ってやってるだけだ」 **若い冒険者**:「ほんとだよ毎日銅貨20枚値なしの土地のくせにな」 (絵:門をくぐる若い冒険者の一行。先頭の若者が、硬貨を払った手をひらひらさせてぼやく。) (絵:木陰で、リタが帳面に線を引いて数える。横でドーラが、門をくぐる一行を指で数えている。) [窓] > 査定書|ダンジョンの入口(ケイたちが数えた分) > 朝から昼まで 入った組 18組 > 入場料 1組 銅貨20枚(銅貨100枚で銀貨1枚) > 見張り 商会の男 2人 **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(やっぱり……値なしの土地が毎日稼いでる) **ドーラ**:「ただね夜は1階の魔物が上がってくる」 **ドーラ**:「見張りと柵の修理は欠かせないよ」 (絵:柵の太い杭に残る、深い3本の爪痕。ドーラの指がそれをなぞる。) **ケイ(桂木 慧)**:「それも書きます稼ぎだけじゃなくかかる物も」 **ドーラ**:「1階までだよそれより下は命の値が要る」 (絵:ランタンを掲げたドーラを先頭に、ケイが石の階段を1階へ下りる。壁の古い石組みを、ケイの手が確かめる。) **ケイ(桂木 慧)**:「よし石組みは古いけど崩れてない」 **ケイ(桂木 慧)**:「1階の広さは丘の半分ほど」 [窓] > 査定書|現地で確かめた事 > 値を上げる物:湧き水・荷車の道・毎日の入場料 > 値を下げる物:夜の魔物・見張り・柵の修理 > 地下:1階まで確かめた。石組みは古いが、崩れていない > まだ足りない:1日の稼ぎとかかる物(10日、数える) (絵:夕日の丘の上。風に髪をなびかせ、王都を見下ろすケイの横顔のアップ。) [窓] > 机の上の値と、丘の上で確かめた事 > 商会(机の上):値なし・取引なし → 銀貨10枚 > ケイ(現地):水・道・毎日の稼ぎ・かかる費用 → 値は、まだ出さない **ケイ(桂木 慧)**:「10日数えます」 **ケイ(桂木 慧)**:「1日いくら稼いでいくらかかるか」 **ケイ(桂木 慧)**:「値はそれから出す」 **リタ**:「10枚じゃないよね絶対!」 (絵:リタの帳面。線の束で数えた、1日目の数。) **ベルント・グラナート**:「ふん……数えさせておけ丘へ上がる道はもう押さえてある」 (絵:夜の商会の部屋。ろうそくの光の中、ひざまずいて報告する大男の前で、ベルントが指輪の手で杯を回す。) (絵:朝の丘の麓。煙突から煙の上がる小さな石造りのパン屋。軒先に売り地の木札が下がっている。) > 丘へ上がる道は、一軒のパン屋の裏庭を通っていた。 (絵:粉だらけの前掛けの老女が、戸口から駆け出してくる。) [人物の紹介] > 丘の麓のパン屋 > マーラ **マーラ**:「あんた値を付ける人だろう?」 **マーラ**:「3か月前」 **マーラ**:「商会はこの店を銀貨1,200枚で売るって言ったんだ」 **マーラ**:「なのに」 **マーラ**:「まだ一人も見に来ないんだよ!」 (絵:軒先に下がった売り地の木札のアップ。隅に、商会の柘榴の紋が焼き印で押されている。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(丘へ上がるただ一本の道) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(その土地を商会が預かってる……) ## この話で分かること ### 机上査定とは? 訪問査定と金額が変わるのはなぜ? 机上査定は、近くの取引の事例や公的なデータから現地を見ずに出す概算で、訪問査定は、担当者が現地で土地の形・道路との接し方・建物の傷み具合・登記の情報などを調べて出すからです。現地で分かる個別の事情が値に入るので、金額は上がることも下がることもあります。 ### 不動産鑑定では、現地を見なくてもよい? 不動産鑑定評価基準は、対象の不動産を実地調査・聴聞・公的資料の確認などで確かめることを求め、土地の所在・地番・数量などは実地に確かめるとしています。鑑定評価書には、実地調査を行った日、行った不動産鑑定士の名前、立会人、調べた範囲(内覧の有無を含む)を書きます。 ### 他人の土地を通らないと道に出られない土地は、どうなる? 民法第210条により、ほかの土地に囲まれて公道に通じない土地の持ち主は、公道に出るために、囲んでいる土地を通ることができます。通る場所と方法は、通る人に必要で、通られる土地の損害が最も少ないものを選び(第211条)、通られる土地の損害には償金を払います(第212条)。 --- 値なしの土地、査定します 第4話「机の上の値」 つづく # 値なしの土地、査定します 第5話「高すぎる値札」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/5-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/5-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 丘の麓のパン屋の主マーラは、3か月前、グラナート商会の仲買人ルッツに「値帳の値は150だが、1,200で売ってみせる」と言われ、ほかの仲買には頼まない3か月の約束で店を預けた。見に来た人は一人もおらず、知らせも一度も来なかった。期限の日、ルッツは値下げを勧め、商会が300で買い取ると言う。ケイが1,200の理由を問うと、ルッツは答えられない。前の世界の宅地建物取引業法では、不動産会社が売り値について意見を述べる時はその根拠を示さなければならず、ほかに頼ませない専任媒介契約は3か月まで、その間は2週間に1回以上報告しなければならない。ケイは店の周りを測り、近くで売れた3件から約430枚と出す。査定の値は、約3か月で買い手が付くことを目安にした値で、高い査定の値はその値で売れる約束ではない。買う人は近くの売れた値と比べるので、理由のない1,200の札には誰も来なかった。リタはギルドの帳から、商会がこの1年で買った118区画のうち97区画が、先に売り頼みを受けて売れ残った土地だと見つける。商会は、ほかの仲買が連れてきた買い手も断っていた。前の世界でいう「囲い込み」だ。マーラは約束を更新せず、丘の値が出るまで売らないと決める。御前査定の前の夜、大神殿の鐘が真夜中に鳴り、グレゴールが石の札を持ってくる。80年黙っていた神託が、北の丘の土地に、商会と同じ「銀貨10枚」を告げていた。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は34歳の不動産鑑定士。転生後は町の測量所の見習い、18歳。自分で確かめた事しか書けない〈査定書〉の窓を持つ。 - **リタ**:ケイの相棒、16歳。帳面をつける。 - **ドーラ**:元冒険者。ダンジョンの入口で入る組を数えている。 - **マーラ**:北の丘の麓のパン屋の主。王都の娘のそばへ行くため、店を売りたい。 - **ルッツ**:グラナート商会の仲買人。 - **グレゴール**:大神殿の鑑定官。神託を読む役。神託を信じているが、嘘は嫌う。 - **ベルント・グラナート**:グラナート商会の主。値なしの土地を安く買い集めている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の丘の麓のパン屋。焼きたてのパンを買う客が、店の前に並んでいる。) > 丘の麓のパン屋は、朝だけ、客が並ぶ。 (絵:パン屋の中。石の窯の前の小さな机で、マーラがケイとリタに湯気の立つ茶を出している。) > 御前査定まで、7日。 **マーラ**:「王都の娘が子を産んでね」 **マーラ**:「店を売ってそばに行きたいんだ」 **仲買人**:「値帳の値は150」 **仲買人**:「でもね奥さんうちに任せれば1,200で売ってみせますよ」 (絵:色の抜けた記憶。3か月前のパン屋。愛想のいい若い仲買人が、両手を広げて笑っている。) **マーラ**:「それで3か月ほかの仲買には頼まないって手形を押したよ」 > **ℹ 仲買(なかがい)と「売り頼み(うりだのみ)の約束」**(作中の世界の決まり):この世界では、土地の売り買いの間に立つ商人を仲買といい、「売り頼みの約束」で売り主から売ることを任されます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の不動産会社(宅地建物取引業者)の仲介と、媒介契約にあたります。 (絵:色の抜けた記憶。契約の紙に、粉のついた手形を押すマーラの手。) [作中の画面] > 売り頼みの約束(グラナート商会) > ほかの仲買には頼まない:3か月 > 売り値:銀貨1,200枚 **リタ**:「それで3か月で見に来た人は……?」 **マーラ**:「……一人も」 **マーラ**:「商会からの知らせも一度も来なかった」 (絵:パン屋の戸口から、愛想笑いを浮かべた若い仲買人が入ってくる。) [人物の紹介] > グラナート商会の仲買人 > ルッツ **ルッツ**:「どうも奥さん約束の3か月だ値を下げましょう」 **ルッツ**:「……いや商会が300で買い取ってもいいですよ」 **マーラ**:「1,200で売れるって」 **マーラ**:「言ったじゃないか!」 **ケイ(桂木 慧)**:「待ってくださいその1,200の理由を聞かせてください」 **ルッツ**:「はあ?理由?高く売りたいって言ったのは奥さんの方だ」 (絵:冷静な目でルッツを見すえるケイの顔のアップ。) > 前の世界では、売り値について意見を言う時は、その理由を示す決まりがあった。 [窓] > 前の世界の決まり(宅地建物取引業法) > 売り値について意見を言う時は、その根拠を示さなければならない。 > ほかに頼ませない約束(専任媒介)は、3か月まで。その間、2週間に1回以上、売れ具合を知らせる。 > **ℹ 査定(さてい)の根拠(こんきょ)と、専任媒介契約(せんにんばいかいけいやく)**(現実の事実):宅地建物取引業法では、不動産会社が売る値段(売買すべき価額)について意見を述べる時は、その根拠を明らかにしなければなりません(第34条の2第2項)。ほかの会社に重ねて頼めない専任媒介契約の期間は3か月までで、会社は2週間に1回以上(専属専任媒介契約は1週間に1回以上)、仕事の進み具合を依頼者に報告しなければなりません。 > - 問:3か月が過ぎたら、どうなる? 答:専任媒介契約は、依頼者の申し出があれば更新できますが、更新した時からも3か月を超えることはできません(同条第3項・第4項)。この決まりに反する特約は無効です。 > - 問:買いたい人が現れたら、知らせてもらえる? 答:媒介契約を結んだ不動産会社は、売買の申し込みがあった時は、遅れずに依頼者に報告しなければなりません(同条第8項)。これは専任でない媒介契約でも同じです。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2(媒介契約)](https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176) **ケイ(桂木 慧)**:「理由のない値は値じゃない」 **ケイ(桂木 慧)**:「ただの約束の言葉です」 (絵:パン屋の裏庭。ケイが測量の縄で裏庭を通る荷車道の幅を測り、リタが古い井戸をのぞき込む。道と庭に、測る点線と矢印が重なる。) > 机の上の値では、決めない。店の周りを、全部見る。 (絵:パン屋の中。ケイが窯の石組みのひびを指で確かめ、マーラが横から覗き込む。) **マーラ**:「窯はね40年使ってるよひびは冬に入った」 **ケイ(桂木 慧)**:「窯の傷みも裏庭の道も井戸の水も見た物は全部書きます」 (絵:商業ギルドの帳場。分厚い売買の帳の一行を、ケイの指が押さえている。) [窓] > 査定書|マーラのパン屋(取引事例比較法) > ① 北の門の外の粉屋 1年前 銀貨420枚 > ② 麓の宿 半年前 銀貨450枚 > ③ 隣の村の道ばたの店 2年前 銀貨360枚 > (売れた時の事情・時期・道と土地の違いを直して) > 比準価格:銀貨 約430枚 **リタ**:「うそ……1,200どころか半分にも届かない……」 **ケイ(桂木 慧)**:「買う人は近くで売れた値と比べるんだ」 **ケイ(桂木 慧)**:「1,200の札を見たら見に来もしない」 [窓] > 査定の値は、 > 約3か月で買い手が付くことを目安にした値。 > 高い査定の値は、その値で売れる約束ではない。 > **ℹ 査定価格(さていかかく)と、売れる値段**(現実の事実):不動産流通近代化センター(現・不動産流通推進センター)の手引きでは、不動産会社が出す査定価格は、今の市況や周りの取引の動きを考えて、向こう3か月程度で成約することを目安にするのが一般的だと説明しています。売り出す値段は、査定価格をもとに売主が決めます。査定の値段が高いことは、その値段で売れることの約束ではありません。 > - 問:査定の会社は、何を見て選ぶ? 答:同じ手引きでは、査定の金額だけでなく、その根拠や説明の時の対応を見て、仲介を頼む会社を選ぶよう勧めています。どの箇所がどう評価されたか、その根拠は何かを確かめるよう書いています。 > - 問:売り出す値段は、誰が決める? 答:同じ手引きでは、一般に、売主の希望の値段と不動産会社の査定価格をふまえて、売主が売り出す値段を決めるとしています。早く売りたいか、時間をかけても高く売りたいかで判断します。 > - 出典:[財団法人 不動産流通近代化センター(現・公益財団法人 不動産流通推進センター)「住まいを売る時の査定の流れ ~『価格査定マニュアル』を利用した価格査定について~」(2011年4月)](https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/2010/11/satei1.pdf) **マーラ**:「……高い値を言ってくれた人を信じたかったんだよ」 (絵:前掛けを両手で握りしめ、涙ぐむマーラ。) **ケイ(桂木 慧)**:「わかります」 **ケイ(桂木 慧)**:「でも高い値を言う人が高く売るとは限りません」 **ケイ(桂木 慧)**:「聞くのは値の理由です」 **リタ**:「ケイ……見て商会がこの1年で買った土地」 (絵:商業ギルドの帳場。リタが何冊もの帳を開いて目を見開き、横で記録係の老女が眼鏡を押し上げる。) [窓] > 商業ギルド 売買の帳|買い手:グラナート商会(この1年) > 買った土地 118区画 > そのうち、商会が先に売り頼みを受けていた土地 97区画 > 売れ残った後、売り頼みの値の4分の1ほどで買っている **記録係**:「高い値で預かって売れ残らせて自分で安く買う」 **記録係**:「帳を読めばすぐ分かるのにね」 (絵:王都の裏通り。閉ざされた店が並び、どの軒先にも、柘榴の焼き印の売り地の札が下がっている。) > 王都の裏通りには、同じ札が、いくつも下がっていた。 **記録係**:「それにね」 **記録係**:「ほかの仲買が買いたい客を連れてきても」 **記録係**:「商会は「もう決まりかけてる」と断ってたそうだよ」 **ケイ(桂木 慧)**:「売り主に黙ってほかからの客を断る……」 **ケイ(桂木 慧)**:「前の世界では「囲い込み」と呼ばれてた」 > **ℹ 囲い込み(かこいこみ)(不動産の売買)**(現実の事実):国土交通省は、囲い込みを「一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として、故意に物件の取引状況を隠し、売主の意向に反して物件の紹介を行わないような行為」と説明しています。早く売れる見込みを狭め、売主や買主の利益を損なうおそれがあり、市場の公正を害するものとしています。 > - 問:売主は、どう確かめられる? 答:専任媒介・専属専任媒介の物件は、レインズ(国土交通大臣が指定した不動産流通機構のシステム)に登録されます。2025年1月1日から、宅建業者はレインズに物件の取引状況(公開中・書面による購入申込みあり・売主都合で一時紹介停止中)を登録しなければならず、売主は「売主専用画面」で自分の物件の状況を確かめられます。 > - 問:どんな例が囲い込み? 答:国土交通省のリーフレットは、事実に反して「売主都合で一時紹介停止中」と登録し、ほかの業者への紹介を意図的に断る例を挙げています。 > - 出典:[国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(令和6年12月24日。別添のリーフレットに「囲い込み」の説明)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001853467.pdf) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(そうか……値なしの土地と同じ手だ値の理由を誰にも見せない) (絵:パン屋の戸口に立つマーラ。粉だらけの前掛けのまま、背筋を伸ばす。) **マーラ**:「約束の3か月は今日で終わりだよ」 **マーラ**:「もう頼まないよ!」 (絵:顔をゆがめたルッツが、肩越しに振り返りながら店を出ていく。隅に小さく、戸口でほっと笑うマーラの顔。) **ルッツ**:「丘の値が決まらなきゃ」 **ルッツ**:「この道に値なんか付かねえよ!」 **マーラ**:「売るのは丘の値が出てからにするよあんたの値でね」 (絵:夕方の丘の上。柵の外の岩に腰かけたリタが帳面に線を引き、ドーラが門をくぐる冒険者の一行を数えている。) [窓] > 10日の数え(ダンジョンの入口) 9日目 > 入った組 1日に平均 31組 > 入場料 1組 銅貨20枚 > かかる物:見張り・柵の修理・けが人の手当て(数えている途中) **ドーラ**:「ふうあと1日で1年の稼ぎが見えるね」 (絵:夜の下宿の部屋。ろうそくの光の中で、ケイが帳面の数字を書き写している。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(稼ぎからかかる物を引くそれを1年に直す) (絵:真夜中の大神殿の鐘楼。巨大な鐘が揺れる。「ゴォン」の描き文字。) > 御前査定の前の夜。大神殿の鐘が、真夜中に鳴った。 (絵:夜、ケイの下宿の戸口に、青ざめたグレゴールが灰色の石の札を手にして立っている。) **グレゴール**:「神託が……」 **グレゴール**:「北の丘の値を告げた80年ぶりに」 (絵:暗闇の中、淡く光る灰色の石の札。) [窓] > 大神殿 値の神託|北の丘の土地 > 値:銀貨10枚 (絵:目を見開くケイの目の大写し。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(は?80年黙ってた神託が商会と同じ値を……?) **ベルント・グラナート**:「さて……神と小僧王はどちらを信じるかな」 (絵:暗い窓辺で、杯を傾けて笑うベルント。) ## この話で分かること ### 専任媒介とは? 頼んでも売れないのはなぜ?(囲い込み) 専任媒介契約は、売主がほかの不動産会社に重ねて売却の仲介を頼めない契約です。期間は3か月までで、会社は物件をレインズに登録し、2週間に1回以上、売主に活動の状況を報告しなければなりません。頼んでも売れない理由の一つに、会社が自社で買主も見つけて両方から手数料を得るため、取引状況を隠してほかの会社に物件を紹介しない「囲い込み」があり、国土交通省は市場の公正を害するものとしています。 ### 高い査定額を出した会社に頼んでも、売れないのはなぜ? 査定額は「その値段で売れる」という約束ではないからです。査定価格は、市況や周りの取引から、向こう3か月程度で成約することを目安に出すのが一般的とされます。買う人は近くで売れた値段と比べるので、根拠の弱い高い値段で売り出すと、買い手が付かないまま時間が過ぎることがあります。 ### 専任媒介契約の期間は? 報告はどのくらいの間隔で来る? ほかの会社に重ねて頼めない専任媒介契約の期間は3か月までです。会社は2週間に1回以上(専属専任媒介契約は1週間に1回以上)、仕事の進み具合を依頼者に報告しなければなりません。更新は依頼者の申し出がある時だけで、更新した時からも3か月までです。 --- 値なしの土地、査定します 第5話「高すぎる値札」 つづく # 値なしの土地、査定します 第6話「御前査定」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/6-fudosan/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[値なしの土地、査定します](https://tooneru.com/chibando/fudosan/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/fudosan/manga/6-fudosan/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 王の前の御前査定。北の丘の土地には、グラナート商会の机の上の値(銀貨10枚)と、真夜中に鳴った神託の札(銀貨10枚)が出ている。ケイは、10日数えた入場料(1日平均31組、1組銅貨20枚)から1日の稼ぎを銀貨6.2枚と出し、リタがギルドの帳で確かめた「冬の3か月は組が半分」を入れて、1年の総収益を約1,978枚とする。見張り2人・柵の修理・けが人の手当てで総費用950枚、純収益は約1,028枚。前の世界の収益還元法(直接還元法)のとおり、王都の宿や貸し店の売買の帳から出した利回り約8%に、魔物の出る土地の危うさの分を足した12%で割り、収益価格を銀貨約8,570枚と示す。ベルントが「神託は10枚と告げた」と迫ると、ケイは「10枚の土地から、商会は毎年いくら取っていたか」と問い、1年の入場料約1,978枚を示す。神殿の鑑定官グレゴールは、真夜中の神託の札の印が神殿の帳の頁と合わないと証言する。王は土地を商会に売らず、麓のパン屋の裏庭の道は王家が借り賃を払って借りると決める。その夜、グレゴールはケイに打ち明ける。値帳は80年直されなかっただけでなく、何枚かの頁が書き換えられていた。 ## 登場人物 - **ケイ(桂木 慧)**:主人公。前世は不動産鑑定士。町の測量所の見習い、18歳。 - **リタ**:ケイの相棒。ギルドの帳を読み、10日の数えをつけた。 - **グレゴール**:大神殿の鑑定官。真夜中の神託の札の印が、神殿の帳と合わないと証言する。 - **ベルント・グラナート**:グラナート商会の主。北の丘の土地を銀貨10枚で買おうとした。 - **マーラ**:北の丘の麓のパン屋の主。店の裏庭を、丘へ上がる道が通る。 - **ノエラ**:王家の財務院の書記官。御前査定の進め役。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:真昼の王城の謁見の間を高い所から見下ろす。高い窓の光、長い赤い敷物、両側に並ぶ貴族と商人。) > 御前査定。 > 王の前で、北の丘の土地の値を、一つに決める。 (絵:同じ謁見の間の奥。玉座の王の前に、神殿の白い衣のグレゴール、赤いビロードのベルント、そして帳面を抱えたケイとリタが並ぶ。) **ノエラ**:「北の丘の土地値は三つ出ております」 [窓] > 北の丘の土地の値(御前査定に出された物) > グラナート商会(机の上):銀貨10枚 > 大神殿の神託(真夜中の札):銀貨10枚 > 査定士見習いケイ:―― **ベルント・グラナート**:「ご覧のとおり商会と神二つの値が同じ10枚」 (絵:玉座の前で、指輪の手を広げて笑うベルント。後ろに商会の仲買人たち。) **ベルント・グラナート**:「小僧の値など聞くまでもありますまい」 **王**:「聞こう」 **王**:「理由のある値ならば」 (絵:謁見の間の真ん中に進み出て、帳面を開くケイ。後ろでリタが分厚い帳を胸に抱える。) **ケイ(桂木 慧)**:「……はいこの土地は毎日稼いでいます」 [窓] > 査定書|北の丘の土地(10日の数え) > 入った組:1日に平均 31組 > 入場料:1組 銅貨20枚(銅貨100枚で銀貨1枚) > 1日の入場料:31 × 20 = 銅貨620枚 = 銀貨6.2枚 **リタ**:「あ、あと!冬の3か月は組が半分に減ります」 **リタ**:「ギルドの帳に書いてあります」 [窓] > 査定書|1年の稼ぎ(総収益) > 冬でない日 273日 + 冬の日 92日 × 半分 = 319日分 > 銀貨6.2枚 × 319日 = 銀貨 約1,978枚 **ケイ(桂木 慧)**:「ありがとうここからかかる物を引きます」 (絵:丘の上の柵と見張り小屋を、少し上から見た製図のような絵。柵の修理の所・見張りの立つ所・けが人を運ぶ道に、青い点線と矢印が重なる。) [窓] > 査定書|1年にかかる物(総費用) > 見張り 2人:1人1日 銀貨1枚 × 365日 × 2 = 730枚 > 柵の修理(夜の魔物):120枚 > けが人の手当て:100枚 > 合わせて:銀貨 950枚 [窓] > 査定書|1年の純収益 > 総収益 1,978枚 - 総費用 950枚 > 純収益:銀貨 約1,028枚 > 前の世界では、稼ぐ不動産の値を、こう出した。 > 1年の純収益を、還元利回りで割る。 > **ℹ 直接還元法(ちょくせつかんげんほう)(収益還元法)**(現実の事実):収益還元法は、その不動産が将来生み出すと見込まれる純収益の、今の値打ちの合計から値を出す方法です。そのうち直接還元法は、1年など一期間の純収益を還元利回りで割って値を出します(P=a÷R。P 収益価格、a 一期間の純収益、R 還元利回り)。純収益は、一般に1年を単位として、総収益から総費用を引いて出します。 > - 問:還元利回りは、どう決める? 答:不動産鑑定評価基準は、似た不動産の取引の事例から出す方法などを挙げ、地方・用途・品等によって違う傾向があるので、地域と個別の事情を見て決めるとしています。 > - 問:DCF法との違いは? 答:DCF法は、何年かの期間ごとの純収益と、期間の終わりに売る時の値(復帰価格)を、それぞれの時期に応じて今の値打ちに割り戻して合計する方法です。 > - 出典:[国土交通省「不動産鑑定評価基準」(総論 第7章 第1節 Ⅳ 収益還元法)](https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf) (絵:真上から見た王都の宿の売買の帳。何行もの記録の横に、ケイの指が一行ずつ印を付けていく。字は読めない線。) [窓] > 査定書|還元利回り(似た物の売買の帳から) > 王都の宿・貸し店:1年の純収益 ÷ 売れた値 = およそ8% > 魔物の出る土地:危うさの分を足して +4% > この土地の還元利回り:12% **ケイ(桂木 慧)**:「危ない土地は同じ稼ぎでも安く買われる」 **ケイ(桂木 慧)**:「だから利回りを上げる」 (絵:謁見の間。光る青い〈査定書〉の窓を背に、まっすぐ王を見上げるケイ。どよめく貴族たちがぼける。) > 1,028 ÷ 0.12 (絵:目を見開き、指輪の手を止めるベルントの顔の寄り。) **ケイ(桂木 慧)**:「収益価格銀貨約8,570枚」 [窓] > 査定書|北の丘の土地(収益還元法・直接還元法) > 純収益 銀貨 約1,028枚 ÷ 還元利回り 12% > 収益価格:銀貨 約8,570枚 **貴族たち**:「な……!10枚の土地が8,500……!」 (絵:玉座の前に詰め寄るベルント。顔を紅潮させ、指をケイに突きつける。) **ベルント・グラナート**:「で、でたらめだ」 **ベルント・グラナート**:「神託は10枚と告げた!」 **ケイ(桂木 慧)**:「では伺います」 **ケイ(桂木 慧)**:「10枚の土地から商会は毎年いくら取っていましたか」 [窓] > 査定書|この土地の1年の入場料(10日の数えから) > 銀貨 約1,978枚 > ――商会の見張りの男たちが、毎日取っていた (絵:言葉に詰まり、指輪の手を握りしめるベルント。後ろの仲買人たちが目をそらす。) > 値は、理由で決まる。 > 10枚に、理由は無かった。 (絵:灰色の石の札の縁に刻まれた、小さな印の細い寄り。印の形は読めない模様。) (絵:謁見の間。灰色の石の札と、開いた神殿の大きな帳を両手に掲げて進み出るグレゴール。) **グレゴール**:「神殿の鑑定官として申し上げる」 **グレゴール**:「真夜中の神託の札……その印が神殿の帳の頁と合わぬ」 **グレゴール**:「神託は80年黙っていた」 **グレゴール**:「……あの夜も黙っていたのだ」 [窓] > 大神殿の帳|北の丘の土地 > 神託の札の印:帳に無い > 真夜中の札は、神殿の帳の頁と合わない **王**:「決めた北の丘の土地は商会に売らぬ」 (絵:玉座から立ち上がる王。片手を上げ、謁見の間が静まる。) **王**:「麓の道は王家が借りる道の主に借り賃を払え」 **マーラ**:「まあ……あたしの裏庭の道に値が付いたよ……!」 (絵:謁見の間の後ろの扉の陰で、粉だらけの前掛けを握りしめて泣き笑いするマーラ。) **リタ**:「やった……10日数えてよかった!」 (絵:夕方の王城の回廊。並んで歩くケイとリタ。リタが帳を胸に抱えて笑い、ケイは窓の外の北の丘を見る。) **ケイ(桂木 慧)**:「数えたのはリタとドーラさんだよ」 (絵:夜の神殿の書庫。蝋燭の光の中で、古い値帳を机に開き、ケイを待っていたグレゴール。) **グレゴール**:「……小僧打ち明けることがある」 **グレゴール**:「値帳は80年直されなかっただけではない」 (絵:蝋燭の光の下、古い値帳の頁の端。紙の色が一枚だけ違い、綴じ糸が新しい。字は読めない線。) **グレゴール**:「……何枚かの頁が書き換えられている」 > 80年前、王国は一度だけ、すべての土地の値を帳に書いた。 > **ℹ 値帳(ねちょう)と、明治の地券(ちけん)**(現実の事実):この世界の値帳は、王国が80年前に一度だけ、すべての土地の値を書いた帳で、神殿が持ちます。現実の日本では、明治の地租改正で、土地の持ち主に「地券」を渡し、地券に書いた地価の3%を税(地租)として金銭で納めさせました。 > - 問:地券には何が書かれていた? 答:明治政府が出した全国共通の地券の表には、一筆ごとの土地の所在・地目・面積・地価・所有者などが書かれました。売買などで持ち主が変わると地券台帳を直し、明治11年からは地券の裏の書換え欄で書き換えるようになりました。地券は明治22年に廃止され、土地台帳に替わりました。 > - 出典:[国税庁 税務大学校 租税史料「地券の『裏』の話」](https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/152.htm) > - 出典:[国税庁 税務大学校 租税史料 平成15年度特別展示「3.壬申地券から改正地券へ」](https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/tokubetsu/h15shiryoukan/03.htm) (絵:暗い書庫で、値帳の頁を見下ろすケイの目の大写し。蝋燭の金と、青焼きの青い影。) **ケイ(桂木 慧)**(心の声):(誰が……値を動かしたんだ) ## この話で分かること ### 収益還元法の計算は?(直接還元法) 直接還元法では、1年など一期間の純収益を還元利回りで割って値(収益価格)を出します。式は P=a÷R(P 収益価格、a 一期間の純収益、R 還元利回り)です。純収益は、一般に1年を単位として、総収益から総費用を引いて出します。 ### 収益還元法とは? どんな不動産に使う? 不動産が将来生み出すと見込まれる純収益の、今の値打ちの合計から値を出す方法です。不動産鑑定評価基準は、貸す不動産や事業に使う不動産の値を出す時に特に有効だとし、自分で使う不動産でも、貸したと想定して使うとしています。 ### 還元利回りは、どう決める? 不動産鑑定評価基準は、似た不動産の取引の事例から出す方法、借入金と自己資金の利回りから出す方法などを挙げ、地方・用途・品等によって違う傾向があるので、地域と個別の事情を見て決めるとしています。 ### 直接還元法と DCF法の違いは? 直接還元法は一期間の純収益を還元利回りで割ります。DCF法は、何年かの期間ごとの純収益と、期間の終わりに売る時の値(復帰価格)を、それぞれの時期に応じて今の値打ちに割り戻して合計します。 --- 値なしの土地、査定します 第6話「御前査定」 つづく # その傷、ダンジョンのせいですか 第1話「その焦げ、竜ですか」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/chibando/genjo/manga/1-genjo/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[その傷、ダンジョンのせいですか](https://tooneru.com/chibando/genjo/) - 作者:地番堂 - クレジット:原作・脚本:地番堂/作画:地番堂/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/chibando/genjo/manga/1-genjo/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 部屋の押し入れの奥に迷宮が湧くようになって10年の東京。ひのき住宅管理の新人・鷹取栞は、初めて1人で退去の立ち会いに行く。練馬のメゾン万代 103号室に8年住んだA級の剣士・轟大河の部屋には、壁一面の焦げ、柱の刀傷、無数の画鋲の穴、冷蔵庫の裏の黒ずみ。栞は、画鋲の穴と電気ヤケは通常の使い方の傷みで貸す側、柱の刀傷は不注意で借りる側と分けていく。轟は「焦げは竜の息で、竜は入居の前からいた」と言い張る。入居の日の写真に焦げは無い。内装の職人・宇津木源は、焦げが押し入れの奥から外へ吹いていると見抜き、焦げは迷宮から来た「湧き害」と分かる。立ち会いを終えた栞が空の部屋で見つけたのは、押し入れの奥の、割れかけた竜の卵だった。 ## 登場人物 - **鷹取 栞**:主人公。23歳、ひのき住宅管理の退去の立ち会いの担当(入社7か月)。戦えない。武器は入居の日の写真と、付箋だらけのガイドラインの冊子とメジャー。 - **轟 大河**:29歳、A級の冒険者(剣士)。メゾン万代 103号室に8年住み、押し入れの奥の迷宮に通った。 - **宇津木 源**:54歳、内装の職人。元は迷宮の盾役の冒険者。傷の向きと深さを見れば、何が付けた傷か分かる。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に、狭い1Kの部屋と開いた押し入れのふすま。押し入れの奥から下へ、岩の洞窟が深く続き、いちばん下で巨大な赤い竜が火を吐き、大剣を構えた男が炎の前に立つ。) > 東京都 練馬区。1K、家賃4.8万円、駅から徒歩12分。 > 押し入れの奥に、迷宮あり。 (描き文字:ゴオオッ) (絵:炎を背に、押し入れから飛び出してくる大柄な剣士。焦げた髪、大剣を肩に担ぎ、歯を食いしばっている。) (絵:夜の狭いアパートの部屋。押し入れのふすまが吹き飛び、奥から炎の光があふれている。畳の上にポスターと散らかった装備。) **轟 大河**:「退去の日に出てくんじゃねえ!」 (描き文字:ドンッ) > 翌朝、午前10時。 (絵:古い2階建てのアパートの外の廊下。クリップボードと付箋だらけの冊子を抱え、メジャーを腰に下げたスーツの若い女性が、103号室の戸の前で深呼吸している。) [人物の紹介] > ひのき住宅管理 退去の立ち会い担当(入社7か月) > 鷹取 栞 > 迷宮が部屋に湧くようになって、10年。 > **ℹ 湧き部屋(わきべや)(迷宮の入口のある部屋)**(作中の世界の決まり):現実にはありません。作中の世界の決まりです。現実の賃貸でこれに近いのは、地震などの自然災害で付いた傷で、国土交通省のガイドラインは「地震で破損したガラス」を「自然災害による損傷であり、賃借人には責任はない」としています。 > - 出典:[国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(2011年8月)](https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf) **鷹取 栞**(心の声):(今日は初めての1人の立ち会い……緊張する) **轟 大河**:「おう立ち会いかふあ……早く頼むわ」 (絵:戸を開けて出てくる大柄な男。焦げた髪、ばんそうこう、背中に大剣。眠そうにあくびをしている。) [人物の紹介] > A級の冒険者(剣士) > 轟 大河 **鷹取 栞**:「は、はい!原状回復の確認に来ました」 > **ℹ 原状回復(げんじょうかいふく)**(現実の事実):賃貸を出る時に、借りた人が、借りた後に付けた傷を元に戻すことです。民法 第621条では、通常の使い方で生じた傷み(通常損耗)と年数による傷み(経年変化)は除くとされ、借りた人のせいでない傷も戻す義務はありません。 > - 問:「借りた時の新品の状態に戻す」こと? 答:違います。国土交通省のガイドラインは、原状回復を「借りた人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用による損耗等を復旧すること」とし、借りた当時の状態に戻すことではないとしています。 > - 問:いつから決まり? 答:2020年4月1日に施行された改正民法で、通常損耗と経年変化は借りた人が戻さなくてよいことが条文に書かれました(国土交通省の参考資料)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第621条(賃借人の原状回復義務)・第622条の2(敷金)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) > - 出典:[国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(2011年8月)](https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf) > - 出典:[国土交通省住宅局「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」(2023年3月)](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001611293.pdf) (絵:6畳の部屋の全体。壁の一面に大きな黒い焦げ、柱に深い刀傷、魔物のポスターと無数の画鋲の穴、冷蔵庫を動かした跡の壁の黒ずみ。押し入れのふすまは閉じている。) **鷹取 栞**(心の声):(うわなかなか) (絵:壁に残る無数の小さな画鋲の穴の寄り。ポスターをはがした跡の四角い日焼けの差。) **鷹取 栞**:「えっと画鋲の穴はふつうの傷みです」 **轟 大河**:「え、マジ?払わなくていいの?」 (絵:冷蔵庫をどけた後の壁の、ぼんやりした黒ずみの寄り。床に冷蔵庫の脚の跡。) **鷹取 栞**:「冷蔵庫の裏の黒ずみも電気ヤケです」 > **ℹ 通常損耗(つうじょうそんもう)(通常の使い方の傷み)**(現実の事実):普通に住んでいても付く傷みのことで、家賃で賄われているとして、貸す側の負担になります。国土交通省のガイドラインでは、ポスターやカレンダーの画鋲の穴(下地のボードの張り替えが要らない程度)、テレビ・冷蔵庫の裏の壁の黒ずみ(電気ヤケ)、家具の設置による床のへこみなどを例に挙げています。 > - 問:くぎ穴・ネジ穴も同じ? 答:ガイドラインでは、重い物を掛けるためのくぎ穴・ネジ穴で、下地のボードの張り替えが要る程度のものは、通常の使用を超えると判断されることが多いとしています。 > - 出典:[国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(2011年8月)](https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf) (絵:木の柱に斜めに深く入った刀傷の寄り。木の繊維がささくれている。メジャーを当てる女性の手。) **鷹取 栞**:「でも……この柱の傷は」 **轟 大河**:「あー素振りしただけだ」 **鷹取 栞**:「……部屋の中で!?」 (絵:目をそらして口笛を吹く大柄な男。少しデフォルメされた、大汗の顔。) **鷹取 栞**:「ここはすみません不注意の傷は借りた人の負担です」 (絵:押し入れのふすまから部屋の壁へ、扇のように広がった大きな黒い焦げ。焦げの縁がまだ少しくすぶっている。) **轟 大河**:「いやその焦げ竜の息だって!」 > **ℹ 湧き害(わきがい)**(作中の世界の決まり):現実にはありません。作中の世界の決まりです。現実で近いのは、民法 第621条のただし書き「その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるとき」で、借りた人のせいでない傷は、借りた人が戻す義務がありません。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第621条(賃借人の原状回復義務)・第622条の2(敷金)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) **轟 大河**:「竜は入居の前からいたんだよ!」 **鷹取 栞**(心の声):(迷宮のせいなら轟さんは払わなくていい) **鷹取 栞**(心の声):(でも自分の魔法や火なら――) (絵:タブレットの画面に、8年前の同じ部屋の写真。白い壁、焦げは無い。画面を持つ女性の手。) [作中の画面] > 入居時の確認リスト 2018年4月1日 > 103号室 洋室・東の壁:汚れ・傷 なし > 押し入れ:迷宮の入口(2017年 届出済み) > **ℹ 入居時・退去時の確認(チェックリスト)**(現実の事実):国土交通省のガイドラインは、原状回復のトラブルの大きな原因は入居時と退去時の物件の確認が足りないことだとして、部屋ごとの傷みをチェックリストに書き、貸す側と借りる側が立ち会って確かめることを勧めています。平面図に書き込む・写真を撮ることも大切だとしています。 > - 問:写真は役に立つ? 答:ガイドラインでは、チェックリストなどは後でトラブルになり訴訟などになった時にも証拠の資料になりうるとしています。 > - 出典:[国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」第1章(2011年8月)](https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf) **鷹取 栞**:「あの……入居の日には焦げ無いんです」 **轟 大河**:「だから奥で竜が寝てたんだよ!」 (絵:焦げの縁の寄り。黒い煤が、押し入れの側から外へ向かって筋を引いている。) (絵:戸口に立つ、道具箱を提げた白髪まじりの職人の男。作業着、片目の上に古い傷あと、太い腕。逆光。) **宇津木 源**:「お嬢ちゃん焦げの向きを見な」 [人物の紹介] > 内装の職人(元・迷宮の盾役) > 宇津木 源 (絵:しゃがんで焦げの扇の形を指でなぞる職人の男と、その横でメジャーを握って見入る若い女性。押し入れのすき間から赤い光。重い光と影。) **宇津木 源**:「外から内じゃねえ押し入れの奥から外へ吹いてる」 **鷹取 栞**:「ほんとに竜の息……」 **轟 大河**:「ほら!だから言ったろ!」 [窓] > 〈退去の確かめ 103号室〉 > 画鋲の穴:通常の傷み → 貸す側 > 冷蔵庫の裏の黒ずみ:通常の傷み → 貸す側 > 柱の刀傷:不注意 → 借りる側 > 壁の焦げ:迷宮から(湧き害)→ 貸す側・湧き保険 **鷹取 栞**:「じゃあ柱だけお願いできますか」 **轟 大河**:「ちっ柱だけなら」 **轟 大河**:「なああんた名前は?」 (絵:アパートの外の廊下で、大剣を背負ったまま手を振って去っていく大柄な男の背中。) **鷹取 栞**:「た、鷹取です立ち会いの」 > 立ち会いは、終わった。 (絵:空になった6畳の部屋に一人立つ若い女性の背中。夕方の光。押し入れのふすまが、少しだけ開いている。) > はず、だった。 (絵:暗い押し入れの奥の細い帯の寄り。岩の割れ目の中で、赤く光る何かの筋。) (絵:押し入れの奥の暗がり。煤と岩のかけらの中に、ひと抱えほどの大きな卵。殻の割れ目から赤い光が漏れている。) (描き文字:コツ……) > 退去したはずの竜の―― (絵:押し入れの前で四つんばいになり、凍りついたまま奥をのぞく若い女性。顔に赤い光。) **鷹取 栞**:「うそ入居の前からいた?」 (絵:割れた卵の殻のすき間から、金色の小さな目がこちらを見ている寄り。) > 竜は、退去していなかった。 ## この話で分かること ### 賃貸の原状回復とは? どこまで直す? 借りた人が、借りた後に付けた傷を元に戻すことです。民法 第621条では、通常の使い方で生じた傷み(通常損耗)と年数による傷み(経年変化)は除かれ、借りた人のせいでない傷も戻す義務はありません。借りた当時の新品の状態に戻すことではありません。 ### 退去費用で払わなくていいものは? 国土交通省のガイドラインでは、通常の使い方で付く傷みは貸す側の負担としています。例は、ポスターやカレンダーの画鋲の穴(下地の張り替えが要らない程度)、テレビ・冷蔵庫の裏の壁の黒ずみ(電気ヤケ)、家具を置いた床のへこみ、日焼けによる壁紙や畳の変色などです。 ### 借りた人が払う傷は? わざと(故意)や不注意(過失)、手入れを怠ったこと(善管注意義務違反)、通常の使い方を超える使い方で付いた傷です。ガイドラインでは、引越しの作業で付いたひっかき傷、タバコのヤニや臭い、落書きなどを例に挙げています。 ### 地震など、借りた人のせいでない傷は誰が直す? 民法 第621条のただし書きで、借りた人のせいでない傷は、借りた人が元に戻す義務はないとされています。ガイドラインでも、地震で壊れたガラスは自然災害による損傷で、借りた人には責任がないとしています。 ### 入居の時に写真を撮るべき? 国土交通省のガイドラインは、トラブルの大きな原因は入居時と退去時の確認が足りないことだとして、部屋ごとの傷みをチェックリストにし、貸す側と借りる側が立ち会って確かめ、写真なども使うことを勧めています。後で揉めた時の証拠の資料にもなりうるとしています。 --- その傷、ダンジョンのせいですか 第1話「その焦げ、竜ですか」 つづく # お部屋、見せていただけますか 第1話「会議中の、知らない番号」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/aimitsusha/hikkoshi/manga/1-hikkoshi/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お部屋、見せていただけますか](https://tooneru.com/aimitsusha/hikkoshi/) - 作者:あいみつ舎 - クレジット:原作・脚本:あいみつ舎/作画:あいみつ舎/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/aimitsusha/hikkoshi/manga/1-hikkoshi/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 3月10日、早川耕平は4月1日付の転勤の内示を受ける。引越しまで3週間。昼休みに、一括見積もりのサービス「ならべる見積もり」で5社に引越しの見積もりを頼み、連絡の希望に「いつでも可」と書く。午後の会議の途中から、知らない番号の電話が続けて鳴る。同じころ、小さな引越しの会社の営業・堤隆之は、3月の欄だけ赤いトラックの表の前で、電話をかける前に1秒だけ迷っていた。夕方、ならべる見積もりの窓口の小野寺円は、耕平の連絡の希望を「平日の夜」に変えて会社へ伝える。夜、娘のつむぎは「ピアノも持っていける?」と聞く。堤の留守電は「明日の朝7時に、お部屋を見せていただけますか」。耕平の部屋は、洗濯物の山だった。 ## 登場人物 - **早川 耕平**:主人公。34歳、会社員。小学3年生の娘と2人で暮らす。3月10日に転勤の内示を受け、昼休みに引越しの一括見積もりを申し込む。 - **早川 つむぎ**:9歳、耕平の娘。小学3年生。ピアノを習っている。 - **堤 隆之**:46歳、小さな引越しの会社の営業。元は荷物を運ぶ側で、腰を痛めて営業に回った。 - **水野 楓**:22歳、同じ会社の現場の班長になったばかり。 - **小野寺 円**:29歳、一括見積もりのサービス「ならべる見積もり」(架空。「ならべる査定」と同じ運営)の窓口の3年目。車と引越しの係。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に3月の朝の明るいオフィスの窓と空。真ん中に、会議室の机で1枚の紙を読む30代の男性。下に、男性の机の上の、小学生の女の子が描いたクレヨンの絵と、写真立て。) > 3月10日。 > 転勤の内示が出た。 > 引越しまで、あと3週間。 [作中の画面] > 〈内示〉 > 早川 耕平 > 4月1日付で、仙台支店の勤務とする > **ℹ 内示(ないじ)(転勤の内示)**(現実の事実):正式に発表する前に、本人に内々で知らせる事です。会社の転勤では、辞令(正式な命令)の前に内示が出て、その日から引越しや家族の準備が始まります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「内示」](https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E7%A4%BA-587099) (絵:自分の机に戻って、紙を持ったまま天井を見上げる30代の男性。机の上に、子どもの描いたクレヨンの絵。) [人物の紹介] > 会社員。小学3年生の娘と2人で暮らしている > 早川 耕平 **早川 耕平**(心の声):(えっと……つむぎの転校部屋探し引越しの手配) **早川 耕平**(心の声):(これ全部3週間で!?) > 昼休み。 (絵:昼休みの机。おにぎりを片手に、もう片方の手の親指でスマホに入力する30代の男性。) [作中の画面] > 〈ならべる見積もり お申込み(引越し)〉 > 引越しの日:3月の終わりの土日 > 今の家:2DK(大人1人・子ども1人) > 引越し先:仙台市 > 見積もりを頼む会社:5社 > 連絡の希望:いつでも可 > ☑ 選んだ会社へ、入力した内容を送ることに同意します > **ℹ ならべる見積もり(作中の一括見積もりのサービス)**(作中の世界の決まり):引越しの一括見積もりは、一度の申込みで、いくつかの引越しの会社に見積もりを頼める形のサービスです。申し込むと、入れた引越しの日・荷物・住所と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から見積もりの連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方や、料金の決まりは、サービスごとに申込みの画面で確かめます。 > - 問:何社に頼めばいい? 答:決まった数はありません。頼む社数が多いほど、連絡も多く来ます。作中の耕平は、5社に頼みました。 **早川 耕平**(つぶやき):「連絡の希望……「いつでも」でいいか」 > 午後1時。会議の途中。 (絵:会議室の机の上で、伏せて置いたスマホが震えている。橙の光と震えの線が、絵の枠の上の線を越えて外へはみ出している。奥に、こちらを見る会議の出席者たちのぼやけた顔。) [作中の画面] > 〈着信〉 > 13:02 知らない番号 > 13:03 知らない番号 > 13:05 知らない番号 **課長**:「早川さんさっきから電話鳴ってるよ?」 **早川 耕平**:「あっす、すみません切ります!」 (絵:会議室の外の廊下。スマホの画面を見て、あぜんとする30代の男性。画面の光が顔を照らしている。) > 申し込んで、9分。不在着信は6件。 **早川 耕平**:「いつでもいいとは書いたけど……」 > 同じころ。小さな引越しの会社の事務所。 (絵:小さな引越しの会社の事務所。壁のトラックの予定の表の前で、受話器を持つ40代の男性の営業。表の3月の欄だけが赤い磁石で埋まっている。) **堤 隆之**:「最後の土日トラックはあと1台か……」 **水野 楓**:「堤さんまた電話ですか?」 (絵:事務所の入口。作業着で段ボールの束を抱えた20代の女性が、男性の営業のほうを振り向く。外にトラックの荷台が見える。) **堤 隆之**:「3月はな先に家を見た所で決まるんだ」 [人物の紹介] > 小さな引越しの会社の営業 > 堤 隆之 [人物の紹介] > 同じ会社の、現場の班長 > 水野 楓 (絵:事務所の机。スマホを持ったまま、発信のボタンの上で親指を止める40代の男性の営業。もう片方の手を腰に当てている。) > 堤は、電話をかける前に、1秒だけ迷う。 **堤 隆之**(心の声):(仕事中かもしれないな) **堤 隆之**:「……でも明日にはトラックが埋まるしな」 > その日の夕方。ならべる見積もりの窓口。 (絵:白い蛍光灯の窓口の部屋。ヘッドセットで電話を受けながら、画面を見る長い髪を低く結んだ女性。) [人物の紹介] > 「ならべる見積もり」の窓口(3年目) > 小野寺 円 **早川 耕平**:「あの電話って何時ごろまで来ますか……?」 **早川 耕平**:「会議に出られなくて」 (絵:細い横の帯の寄り。画面の申込みの1つの欄に置かれた、女性の指先。) (絵:窓口の机で、ヘッドセットの女性がキーボードに手をのせ、画面を見ながら受話器の向こうへ穏やかに話している。) **小野寺 円**:「あ、ご希望が「いつでも」になってますね」 **小野寺 円**:「今から平日の夜に変えてお伝えしますね」 **早川 耕平**:「助かります……」 **早川 耕平**:「……3月ってそんなに混むんですか?」 > **ℹ 引越しの繁忙期(はんぼうき)**(現実の事実):国土交通省は、引越しの依頼は3月から4月にかけて集中し、3月の引越しの件数は通常の月の約2倍になると発表しています(2026年1月28日)。同じ発表で、混む時期を外して引越しの時期を分けるよう呼びかけています。料金を法律で決めているわけではなく、料金は各社の運賃・料金、荷物の量、距離、日程などで決まります。 > - 出典:[国土交通省 報道発表「引越時期の分散に御協力をお願いします!~3月の引越件数は通常月の約2倍!~」(令和8年1月28日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000349.html) **小野寺 円**:「それがもうすっごく」 **小野寺 円**:「どの会社もトラックと人が足りなくなるんですよ」 > 夜。耕平の部屋。 (絵:夜の2DKの部屋。床に洗濯物の山と、たたんでいない服。低い机でランドセルを横に置き宿題をする小学生の女の子が、立ったままスマホを持つ父親を見上げている。部屋の隅に、小さなアップライトピアノ。) [人物の紹介] > 耕平の娘。小学3年生 > 早川 つむぎ **早川 つむぎ**:「ねえパパピアノも持っていける?」 **早川 耕平**:「……うん持っていけるように頼んでみるよ」 (絵:夜の台所。流しの前で、スマホを耳に当てて留守電を聞く30代の男性。) **堤 隆之**:「夜分すみません早川様引越しの堤と申します」 (絵:明かりの半分消えた夜の事務所。机でスマホに話しかける40代の男性の営業。机の上に、トラックの予定の表の写しと、腰に当てる湿布の箱。) **堤 隆之**:「3月末の土日うちもトラックがあと1台で……」 **堤 隆之**:「ほかの見積もりぜひ見てくださいただ……」 (絵:夜の事務所。スマホを耳に当てたまま、まっすぐ前を見て頭を下げかける40代の男性の営業の寄り。) **堤 隆之**:「明日の朝7時お部屋を見せていただけませんか」 (絵:夜の2DKの部屋を見回す。床いっぱいの洗濯物の山と、積み重なった服とおもちゃ。洗濯物の山のシャツや靴下が、絵の枠の下の線を越えて手前へあふれ出している。) > 部屋は、段ボールも無いまま、洗濯物の山だった。 ## この話で分かること ### 引越しの一括見積もりを申し込むと、電話はたくさん来る? 入れた引越しの日・荷物・住所と連絡先が、選んだ引越しの会社へ送られ、各社から電話やメールで連絡が来ることがあります。国民生活センターにも、見積もりのサイトに登録した後、引越しの会社から電話が来たという相談の例があります。 ### 引越しの見積もりに、お金はかかる? 国土交通省の標準引越運送約款は「見積料は請求しません」としています。家を見に来る下見をした時に限り費用を求めることがあり、その時は見積もりの前に金額を知らせて、了解を得ることになっています。 ### 3月の引越しは、なぜ混む? 国土交通省は、引越しの依頼が3月から4月にかけて集中し、3月の引越しの件数は通常の月の約2倍になると発表しています(2026年1月28日)。混む時期を外して引越しの時期を分けるよう呼びかけています。 --- お部屋、見せていただけますか 第1話「会議中の、知らない番号」 つづく # 実家の値段、5社に聞きました 第1話「5社から、電話が来た」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/aimitsusha/ikkatsu/manga/1-ikkatsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[実家の値段、5社に聞きました](https://tooneru.com/aimitsusha/ikkatsu/) - 作者:あいみつ舎 - クレジット:原作・脚本:あいみつ舎/作画:あいみつ舎/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/aimitsusha/ikkatsu/manga/1-ikkatsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 母が亡くなって1年。空き家の実家の固定資産税と草刈りに疲れた宮部千夏は、土曜の午前1時、一括査定のサービス「ならべる査定」で5社に査定を申し込む。翌朝7時12分から、知らない番号の電話が鳴りはじめる。最初の電話の営業・三好は「備考に、朝7時台とありましたので」。書いたのは千夏だった。同じ朝、ならべる査定の窓口では、新人の芦田真帆が、売り主からの「5社全部から電話が来るのか」という問い合わせと、会社からの「連絡先につながらない」という電話を同時に受ける。先輩の小野寺円は「どっちも、間違ってない」と言う。その夜、千夏が留守電を聞くと、2つ目の電話の声は、子どもの頃に母と通った町の不動産屋、北条だった。 ## 登場人物 - **宮部 千夏**:主人公。38歳、会社員。子どもが2人。実家の固定資産税と庭の草刈りに疲れ、夜中に一括査定を申し込む。 - **芦田 真帆**:26歳、一括査定のサービス「ならべる査定」(架空)の窓口の新人。売り主の電話と、つながる不動産会社の電話の両方を受ける。 - **小野寺 円**:29歳、「ならべる査定」の窓口の3年目。真帆の教え役。 - **三好 蓮**:27歳、全国に店を持つ不動産会社の若手の営業。電話が一番早い。 - **宮部 航**:34歳、千夏の弟。実家の近くに住み、庭の手入れをしている。「いつか住むかもしれない」と、売るのに反対。 - **北条 匡**:52歳、町の小さな不動産屋の2代目。宮部の家を、先代の父の代から知っている。 - **宮部 澄子**:千夏と航の母。1年前に亡くなった。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に夜の住宅地の空と、窓が1つだけ明るい古い木造2階建ての家。真ん中に、段ボールの積まれた畳の居間で、座卓に向かいスマホの光を顔に受ける女性。下に、畳の上の封筒と、泥の付いた軍手。) > 土曜の、午前1時4分。 > 母が亡くなって、1年。 > 実家は、空き家のまま。 [作中の画面] > 〈ならべる査定 お申込み〉 > 物件:母の家(木造2階建て・昭和53年に建った家) > 査定を頼む会社:5社(町の会社 2・全国の会社 3) > 連絡先1:宮部 千夏 > 連絡先2:宮部 航(家の近くに住む弟) > 備考:平日の昼は仕事です。連絡は、朝7時台か夜に。 > ☑ 選んだ会社へ、入力した内容を送ることに同意します > **ℹ ならべる査定(さてい)(作中の一括査定のサービス)**(作中の世界の決まり):一括査定は、一度の申込みで、いくつかの不動産会社に家の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた家の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方は、サービスごとに申込みの画面で確かめます。 > - 問:何社に頼めばいい? 答:決まった数はありません。頼む社数が多いほど、連絡も多く来ます。作中の千夏は、町の会社と全国の会社を合わせて5社に頼みました。 > **ℹ 個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意**(現実の事実):個人情報保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。個人情報保護委員会のガイドラインは、同意を得る時は、本人が判断できるよう、合理的かつ適切な範囲の内容を明らかにするよう求めています。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」第27条(第三者提供の制限)](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057) > - 出典:[個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」3-6-1 第三者提供の制限の原則](https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/) > **ℹ 旧耐震基準(きゅうたいしんきじゅん)(昭和56年より前の建物)**(現実の事実):建築基準法の耐震の基準が強くなる前の基準を、いわゆる「旧耐震基準」と呼びます。国土交通省は、昭和56年以前に建てられた建物には耐震性が十分でない物が多いとして、まず耐震診断で確かめ、足りなければ耐震改修や建て替えを考えるよう呼びかけています。 > - 問:売る時にも響く? 答:買う人は、建てた年で耐震の基準を見ます。耐震診断や耐震改修には、国と地方公共団体の支援の制度があります(同じ国土交通省のページ)。 > - 出典:[国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html) (絵:細い横の帯の寄り。スマホの画面の上で止まる親指。画面の光で指先が白い。) (絵:暗い居間。段ボールに囲まれ、座卓でスマホを見つめる女性。棚の上に、庭で笑う年配の女性の写真立て。) **宮部 千夏**:「比べる、だけ」 [人物の紹介] > 会社員。実家を売るか迷っている > 宮部 千夏 > 午前7時12分。 (絵:朝の光の居間。座卓に突っ伏して眠る女性の横で、スマホが震え、橙の着信の光と震えの線が上へ広がる。) [作中の画面] > 〈着信〉 > 7:12 知らない番号 > 7:12 知らない番号 > 7:13 知らない番号 > **ℹ 迷惑な時間の勧誘の禁止**(現実の事実):宅地建物取引業法の施行規則は、不動産会社(宅地建物取引業者)などが契約の勧誘をする時に、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることを禁じています(第16条の11 第1号 ホ)。何時から何時が迷惑かは決まりに書かれていないので、連絡してほしい時間を申込みの時に伝えておくと、すれ違いを減らせます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法施行規則」第16条の11(勧誘の時に禁じられる行為)](https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50004000012) > - 出典:[e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」第3条(免許)・第34条の2(媒介契約)・第47条の2](https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176) (絵:居間で跳ね起き、寝ぐせのまま額に手を当ててスマホを耳に当てる女性。) **三好 蓮**:「おはようございます!宮部様ですね?」 (絵:朝の明るいオフィス。ヘッドセットを付けた若い男性の営業が、メモを手に、にこやかに話している。机に缶コーヒー。) **宮部 千夏**:「……え7時ですけど」 **三好 蓮**:「備考に朝7時台とあったので!」 [人物の紹介] > 全国に店を持つ不動産会社の営業 > 三好 蓮 **宮部 千夏**:「……あ書いたの私だ」 **三好 蓮**:「では明日の午後お家を見せていただけます?」 **宮部 千夏**:「み、見るだけなら……」 > 同じ朝。ならべる査定の窓口。 (絵:白い蛍光灯の窓口の部屋。並んだ机の一つで、ヘッドセットを付けた若い女性が目を見開いてのけぞり、後ろに立つ先輩の女性が画面を指さしている。) [人物の紹介] > 一括査定「ならべる査定」窓口の新人 > 芦田 真帆 [人物の紹介] > 同じ窓口の3年目 > 小野寺 円 [作中の画面] > 〈ならべる査定 窓口の画面〉 > お申込み:宮部 千夏 様(午前1時4分) > 送った会社:5社 > 7:12 三好(全国の会社):電話がつながった > 7:13 北条(町の会社):留守電に残した > 7:20 ほか2社:連絡先2へかけた **芦田 真帆**:「えっ申し込んで6時間でもう電話が来てる!」 **小野寺 円**:「早いでしょ忙しいのはここからよ」 (絵:机の電話の2つの外線のボタンが橙に光り、若い女性の窓口係が受話器をつかむ。) **宮部 千夏**:「あの5社全部から電話来るんですか?」 **芦田 真帆**:「あ、はい、えっと、たぶん」 **小野寺 円**:「芦田さん2番の電話会社さんがつながらないって」 (絵:ヘッドセットのまま、もう1本の受話器を肩にはさんで、落ち着いて小さく笑う先輩の女性の寄り。) **小野寺 円**:「ふふ売り主さんも会社さんもどっちも間違ってないの」 **芦田 真帆**(心の声):(……じゃあどっちに謝ればいいの!?) > その頃、実家の庭。 (絵:晴れた昼の、古い木造2階建ての家の外観。伸びた庭の草を刈り払い機で刈る30代の男性。ズボンの後ろのポケットで、スマホが橙に光っている。) [人物の紹介] > 千夏の弟。実家の近くに住む > 宮部 航 > 弟は、草刈りの音で、何も聞こえていない。 > その夜。 (絵:夜の暗い居間。スマホを耳に当て、留守電を聞きながら目を見開く女性。画面の光だけが顔を照らす。) **北条 匡**:「ああ宮部さんの娘さんですね駅前の北条です」 **北条 匡**:「お母さんの家よく覚えてますよ」 (絵:色のあせた昔の思い出。小さな不動産屋のカウンターで、年配の店主が若い母親に古い鍵を渡し、母親の手を小さな女の子が握っている。木の札の付いた鍵が垂れている。) > 2つ目の電話は、母と通った、町の不動産屋だった。 ## この話で分かること ### 不動産の一括査定を申し込むと、何が起きる? 入れた家の情報と連絡先が、選んだ不動産会社へ送られ、各社から電話やメールで査定の連絡が来ます。頼んだ社数の分だけ、連絡が来ることがあります。 ### 一括査定に入れた個人情報は、どこへ行く? 申込みの時に同意した送り先、つまり選んだ不動産会社へ送られます。同意する前に、送り先の会社と、何に使われるかの説明を読みます。 ### 査定の電話は、朝早くや夜遅くにも来る? 不動産会社(宅地建物取引業者)などが契約の勧誘をする時に、迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をすることは、国の決まりで禁じられています。連絡してほしい時間は、申込みの時に書いておきます。 --- 実家の値段、5社に聞きました 第1話「5社から、電話が来た」 つづく # 過失は、五分五分で。 第1話「この件、9対1で」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/kashitsu/manga/1-kashitsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[過失は、五分五分で。](https://tooneru.com/kusha-note/kashitsu/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/kashitsu/manga/1-kashitsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ ひなた損保の物損の示談担当・春日ひよりは、スーパーの駐車場で枠から下がって出た契約者の車と、通路を進む配達のバンがぶつかった件を受け持つ。現場で会った相手の保険会社・あさなぎ海上の担当は、5年前まで大学の自動車部で同じ車に乗っていた一ノ瀬遼だった。ひよりの「9対1」に、遼は「10対0」。ひよりは、相手の過失が0なら、相手の保険会社は払う物が無く、示談交渉の席にいられなくなると返す。2人でバンのドラレコを見直すと、運転手は配達の端末を見ていた。割合は9対1で決まる。その夜、ひよりは思い出す。5年前の自動車部の最後の日、2人の車は車庫の前でぶつかり、その割合はまだ決めていない。 ## 登場人物 - **春日 ひより**:主人公。27歳、ひなた損保の物損の示談担当(5年目)。割合では譲らない。甘い物で機嫌が直る。 - **一ノ瀬 遼**:28歳、あさなぎ海上の示談担当。ひよりと大学の自動車部で同じ車に乗っていた元恋人。いつも落ち着いて、相手の言い分を最後まで聞く。 - **園田 千里**:ひなた損保の課長。「割合は、気持ちで決めない」が口ぐせ。 - **野々村 あん**:23歳、ひなた損保の新人。ひよりの後輩で、2人の昔の事に気づいている。 - **小牧 なぎさ**:34歳、ひなた損保の契約者。スーパーの駐車場で、枠から下がって出る時に配達のバンとぶつかった。 - **大熊 鉄平**:45歳、あさなぎ海上の契約者。配達のバンの運転手。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に晴れた空とスーパーの屋根、真ん中に広い駐車場の通路で、枠から下がって出る白いミニバンの後ろと、通路を進む緑の配達のバンの前が軽く触れている。下に、こぼれたみかんと、アイスを持ったまま固まる小さな男の子。) > 土曜の午前11時。スーパーの駐車場。 (描き文字:コツン) > ぶつかった時の速さは、人が歩くくらい。 **大熊 鉄平**:「下がってくるなんて聞いてねえよ!」 **小牧 なぎさ**:「だってミラーには映ってなかったんです!」 > 月曜の朝。ひなた損保 物損の課。 > **ℹ 損保(そんぽ)(損害保険会社)**(現実の事実):損害保険を引き受ける会社の略です。損害保険は、偶然の事故で出た損害を、その大きさに応じて埋め合わせる保険で、自動車保険・火災保険などがあります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「損害保険」](https://kotobank.jp/word/%E6%90%8D%E5%AE%B3%E4%BF%9D%E9%99%BA-90575) > **ℹ 物損事故(ぶっそんじこ)と人身事故(じんしんじこ)**(現実の事実):物損事故は、車や塀などの物だけが壊れた事故です。人身事故は、事故で人がけがをしたり亡くなったりした事故で、物の修理の費用に加えて、治療費などの賠償も話し合います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「物損」](https://kotobank.jp/word/%E7%89%A9%E6%90%8D-619330) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「人身事故」](https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E8%BA%AB%E4%BA%8B%E6%95%85-537950) (絵:明るいオフィスの机。書類の山の上にドーナツの箱。ファイルを抱えて座る若い女性の担当者が、ドーナツをくわえたまま顔を上げる。窓から朝の光と花の模様のトーン。) [人物の紹介] > ひなた損保 物損の示談担当(5年目) > 春日 ひより **園田 千里**:「あ、春日さん駐車場の件お願いね」 **園田 千里**:「相手はあさなぎ海上」 **春日 ひより**:「……あさなぎですか」 **野々村 あん**:「しかもあさなぎの担当イケメンらしいですよ!」 (絵:机の横から身を乗り出す新人の女性。目を輝かせ、背景に小さなきらめき。少しデフォルメ。) **春日 ひより**(心の声):(イケメンとかどうでもいい) **春日 ひより**(心の声):(割合に顔は関係ない) > 火曜の午後。現場の駐車場で、相手の担当と会う。 (絵:紺のスーツに銀縁の眼鏡の背の高い若い男性が、手帳を開いて振り向く。目を少し見開いている。) (絵:昼の駐車場の通路。ミニバンとバンが止まっていた場所に、白いチョークの印。風に花びらが舞う。左下に、書類を抱えて立つ若い女性の後ろ姿。) **一ノ瀬 遼**:「あさなぎ海上の、一ノ瀬です」 **春日 ひより**:「……遼?」 (絵:駐車場で向かい合う2人。紺のスーツの眼鏡の男性と、書類を胸に抱えた女性。2人の間に花とレースのトーンが散り、背景がぼける。) [人物の紹介] > あさなぎ海上 示談担当 > 一ノ瀬 遼 > 5年前まで、大学の自動車部で、同じ車に乗っていた。 **一ノ瀬 遼**:「……久しぶりだな」 **春日 ひより**:「えっと……お仕事の話をしましょう」 [窓] > 〈事故の図 スーパーの駐車場〉 > 小牧さんの車:枠から下がって通路へ出る > 大熊さんの車:通路をまっすぐ進む > ぶつかった所:通路の真ん中、バンの左の前 **春日 ひより**:「ではこの件9対1で」 **一ノ瀬 遼**:「いや10対0です」 **春日 ひより**:「むっ……割合は譲りません」 > **ℹ 過失割合(かしつわりあい)**(現実の事実):交通事故で、当事者それぞれの落ち度(過失)の割合のことです。日本損害保険協会は、過失割合は数多くの判例からある程度パターン化されていて、それを基本に、事故の時間や走っていた速さなどの要素を踏まえて認定すると説明しています。 > - 問:誰が決める? 答:東京都の交通事故の小冊子は、加害者・被害者の過失割合を決め、その割合に応じて損害を両者で負担するとし、当事者間の話し合いで決まらない時は、最終的に裁判所で決めてもらうことになると説明しています。過失割合には、過去の裁判例をもとにした認定基準がいくつか発表されています。 > - 出典:[日本損害保険協会「そんぽのホント」(過失割合と過失相殺)](https://www.sonpo.or.jp/wakaru/seminar/koredake/point1.html) > - 出典:[東京都生活文化スポーツ局(東京都交通事故相談所)の交通事故の小冊子(2023年8月)](https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/trafficaccident2023) **一ノ瀬 遼**:「だってさ下がって出る車が先に通路を見るもんだろ」 (絵:眼鏡を指で押し上げる男性の横顔の寄り。口元に小さな余裕の笑み。背景に細い線のトーン。) (絵:ミニバンの後ろのカメラの映像のような、少しゆがんだ広い角度の駐車場の絵。左から緑のバンの鼻先が近づいている。) **春日 ひより**:「小牧さんは、止まっては少しずつ下がってた」 **春日 ひより**:「バンのドラレコも、見ました」 (絵:バンの運転席の中から前を見た絵。ハンドルの横に置いた配達の端末の画面が光り、フロントガラスの先にミニバンの白い後ろ。) **春日 ひより**:「それに大熊さん端末を見てません?」 **一ノ瀬 遼**:「……それでもこっちも譲れない」 (絵:書類を胸から下ろし、まっすぐ男性を見上げる女性の顔の寄り。瞳に強いきらめき。背景に大きな花のトーン。) **春日 ひより**:「でも10対0だと大熊さんの払う分は0」 **春日 ひより**:「あさなぎ海上の払う物も無くなるでしょ?」 **春日 ひより**:「そうしたら一ノ瀬さんこの席にいられない」 > **ℹ 示談交渉(じだんこうしょう)サービスが使えない時(被害者に過失が無い事故)**(現実の事実):自動車保険の示談交渉サービスは、保険会社が契約者の代わりに相手と話し合う物で、契約者が払う賠償がある時に使えます。日本損害保険協会は、被害者が自動車保険に入っていても、自分に一切の責任が無い場合は示談交渉サービスを使えず、相手と直接話すか弁護士に頼むことになると説明しています。 > - 問:弁護士に頼むお金は? 答:日本損害保険協会は、弁護士費用特約に入っていれば、責任のあるなしに関わらず使え、弁護士の報酬などの負担を減らせると説明しています。 > - 出典:[日本損害保険協会 交通事故被害者サポートナビ「交通事故の示談の流れは?保険会社による示談交渉サービスの進め方を解説」](https://www.sonpo.or.jp/report/publish/bousai/koutuu/article/9/) **一ノ瀬 遼**:「くっ大熊さんにひとりで君と話せって?」 (絵:一瞬、言葉に詰まる男性。眼鏡の奥の目がゆれる。少しデフォルメの汗。) **春日 ひより**:「だから9対1なんです」 > バンのドラレコの映像を、2人で見直した。 (絵:駐車場の隅のベンチで、スマホの映像を2人で並んでのぞきこむ。肩が少しだけ近い。夕方の光に花のトーン。) **一ノ瀬 遼**:「あ……本当だ大熊さん配達の端末見てる」 **一ノ瀬 遼**:「はあ……分かりましたうちが1割、持ちます」 [窓] > 〈話し合いの結果 駐車場の件〉 > 過失割合 小牧さん 9:大熊さん 1 > 直す費用は、それぞれの損害に割合を掛けて分ける > その場の約束ではなく、書面で示談する > **ℹ 過失相殺(かしつそうさい)**(現実の事実):被害者にも過失がある時に、その分を損害の額から差し引くことです。民法 第722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」としています。東京都の交通事故の小冊子は、5対5で A の損害100万円・B の損害10万円なら、B は A に50万円、A は B に5万円を払う例を挙げています。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」第709条(不法行為による損害賠償)・第722条(過失相殺)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) > - 出典:[東京都生活文化スポーツ局(東京都交通事故相談所)の交通事故の小冊子(2023年8月)](https://www.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tosei/trafficaccident2023) **春日 ひより**:「ふふありがとうございます」 **一ノ瀬 遼**:「ったく昔から割合で人を動かすのがうまいよな」 (絵:立ち上がって背を向け、手帳を閉じる男性。夕日。) **春日 ひより**:「……昔の話は、しません」 > その夜。 (絵:細い横の帯の寄り。古い2台の小さな車の前と前の、へこんだバンパーが触れている所。) (絵:夜の大学の古い車庫の前。古い2台の小さな車が鼻先をつけて止まり、間に立つ若い頃の2人が、背を向け合っている。淡い色のトーン。) > 5年前、自動車部の最後の日。 > 2人の車は、車庫の前でぶつかった。 (絵:暗い部屋で、ベッドに座りスマホを見つめる女性。画面の光だけが顔を照らす。) > 割合は、まだ決めていない。 ## この話で分かること ### 過失割合とは? 誰が決める? 交通事故で、当事者それぞれの落ち度(過失)の割合です。東京都の交通事故の小冊子は、加害者・被害者の過失割合を決めて損害を両者で負担するとし、当事者間の話し合いで決まらない時は最終的に裁判所で決めることになると説明しています。保険に入っていれば、ふつうは保険会社どうしが契約者の代わりに話し合います。 ### 過失相殺とは? 被害者にも過失がある時に、その割合の分を損害の額から差し引くことです(民法 第722条2項)。東京都の交通事故の小冊子は、5対5で A の損害100万円・B の損害10万円なら、B は A に50万円、A は B に5万円を払う例を挙げています。 ### 自分に過失が無い事故(10対0)でも、自分の保険会社が交渉してくれる? 日本損害保険協会は、被害者が自動車保険に入っていても、自分に一切の責任が無い場合は示談交渉サービスを使えず、相手と直接話すか弁護士に頼むことになると説明しています。 ### 事故の直後に、その場で示談してもいい? 日本損害保険協会は、事故の直後に相手とその場で示談の話やお金の受け渡しをすることは控え、事故の大きさに関わらず必ず警察に連絡するよう勧めています。 --- 過失は、五分五分で。 第1話「この件、9対1で」 つづく # 今日決めてくれたら、この値段で。 第1話「電話が、鳴りやまない」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/aimitsusha/kuruma/manga/1-kuruma/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[今日決めてくれたら、この値段で。](https://tooneru.com/aimitsusha/kuruma/) - 作者:あいみつ舎 - クレジット:原作・脚本:あいみつ舎/作画:あいみつ舎/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/aimitsusha/kuruma/manga/1-kuruma/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 運転免許を返した父・寛治の白いセダンを売ることにした笠井奈緒は、その夜、一括査定のサービス「ならべる査定」で7社に査定を申し込む。送って3分後から、知らない番号の電話が次々に鳴り、奈緒は電源を切る。同じころ、駅の裏の小さな買取の店では、査定員の三浦拓海が店長の権藤に「先にかけた店が、話を聞ける」と急かされていた。翌朝、ならべる査定の窓口の小野寺円は、奈緒の苦情と、店からの「つながらない」という電話を同時に受ける。申込みの「連絡の希望」の欄は空いたままだった。昼、三浦から電話が来る。三浦は査定の日を決める前に「お父さんは、車を売りたいって言ってますか」と聞く。 ## 登場人物 - **笠井 奈緒**:主人公。44歳、会社員。運転免許を返した父の車を売るため、夜に一括査定を申し込む。 - **笠井 寛治**:79歳、奈緒の父。運転免許を返したばかり。白いセダンに18年乗った。 - **三浦 拓海**:28歳、駅の裏の小さな買取の店の出張の査定員。電話をかけるのが苦手。 - **権藤 誠一**:52歳、同じ店の店長。「先にかけた店が話を聞ける」と三浦を急かす。 - **小野寺 円**:29歳、一括査定のサービス「ならべる査定」(架空)の窓口の3年目。車と引越しの係。 - **芦田 真帆**:26歳、「ならべる査定」の窓口の新人。不動産の係。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に秋の晴れた空と、警察署の前の道。真ん中に、白い古いセダンを運転する40代の女性と、助手席でひざの上の封筒を両手で持つ年配の男性。下に、家の車庫に止まった白いセダンと、棚に置かれた車の鍵。) > 父が、運転免許を返した日。 > 帰りは、私が運転した。 > 父が18年乗った、白いセダン。 (絵:車の中。助手席の年配の男性が、運転席のハンドルをじっと見ている。運転席には、ハンドルを握る40代の女性の手と肩。) [人物の紹介] > 奈緒の父。運転免許を返したばかり > 笠井 寛治 **笠井 寛治**:「この車どうするかな」 **笠井 奈緒**:「売ろうよ」 **笠井 奈緒**:「乗らないのに税金も保険もかかるんだし」 > **ℹ 自動車税(じどうしゃぜい)**(現実の事実):車を持っている人に毎年かかる都道府県の税です。毎年4月1日の時点の持ち主が、排気量に応じて納めます。乗っていなくても、持っている間はかかります。 > - 問:軽自動車も同じ? 答:軽自動車には、市区町村の軽自動車税がかかります。 > - 出典:[コトバンク(共同通信ニュース用語解説・デジタル大辞泉)「自動車税」](https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E7%A8%8E-678171) **笠井 寛治**:「……お前に任せる」 > その夜。実家の居間。 (絵:夜の実家の居間。座卓でスマホを見ている40代の女性。座卓の上に、車検証を入れた古いビニールのケースと、湯のみ。) [人物の紹介] > 会社員。父の車を売ることにした > 笠井 奈緒 **笠井 奈緒**(心の声):(何社か比べていちばん高い所に売ればいいよね) [作中の画面] > 〈ならべる査定 お申込み(車)〉 > 車:白いセダン(18年目・走った距離 92,000km) > 査定を頼む会社:7社 > 連絡先:笠井 奈緒 > 連絡の希望:(書いていない) > ☑ 選んだ会社へ、入力した内容を送ることに同意します > **ℹ ならべる査定(さてい)(作中の一括査定のサービス)**(作中の世界の決まり):車の一括査定は、一度の申込みで、いくつかの買取の会社に車の査定を頼める形のサービスです。申し込むと、入れた車の情報と連絡先が選んだ会社へ送られ、各社から査定の連絡が来ます。送り先・社数・連絡の方法の選び方や、料金の決まりは、サービスごとに申込みの画面で確かめます。 > - 問:何社に頼めばいい? 答:決まった数はありません。頼む社数が多いほど、連絡も多く来ます。作中の奈緒は、7社に頼みました。 > **ℹ 個人データの第三者提供(だいさんしゃていきょう)と本人の同意**(現実の事実):個人情報保護法は、事業者が個人データを第三者に渡す時は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得るよう定めています(第27条)。一括査定の申込みで同意の欄にチェックを入れる時は、どの会社へ、何のために送られるかを読んでから入れます。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」第27条(第三者提供の制限)](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057) > - 出典:[個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」](https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_thirdparty/) > 送って、3分後。 (絵:夜の座卓の上で、震えるスマホが湯のみの横を滑っていく。橙の着信の光。スマホが絵の枠の下の線を越えて手前へはみ出している。) [作中の画面] > 〈着信〉 > 21:03 知らない番号 > 21:03 知らない番号 > 21:04 知らない番号 **笠井 奈緒**:「えっ、もう?」 **笠井 寛治**:「おいさっきから鳴ってるのだれからだ」 (絵:居間で、震えるスマホを腕をのばして遠ざけるように持つ女性。廊下のふすまの陰から、寝間着の年配の男性がのぞいている。) **笠井 奈緒**:「車の買取の会社……たぶん全部……」 [作中の画面] > 〈着信〉 > 21:06 知らない番号 > 21:07 知らない番号 > 21:07 知らない番号 > 21:08 知らない番号 **笠井 奈緒**:「もう無理!電源切るね」 > 同じころ。駅の裏の、小さな買取の店。 (絵:夜の小さな車の買取の店の事務所。机でタブレットの通知を見て、困った顔をする20代の男性。) **権藤 誠一**:「三浦新しい申込みだすぐかけろ」 (絵:同じ事務所。受話器を片手に、男性の机の横に立つ50代の店長。壁に、車のオークションの日の印の付いた暦。) **三浦 拓海**:「え、もう夜9時ですよ」 **権藤 誠一**:「先にかけた店が話せるんだよ」 [人物の紹介] > 小さな買取の店の、出張の査定員 > 三浦 拓海 [人物の紹介] > 同じ店の店長 > 権藤 誠一 (絵:事務所の机で、スマホを耳に当てたまま目を閉じる20代の男性。机の上に、何も書いていない査定の紙。) > 三浦は、電話をかけるのが苦手だった。 **三浦 拓海**:「……あ電源切られてます」 **権藤 誠一**:「ちっじゃあ明日の朝いちばんにもう一回だ」 > 翌朝。ならべる査定の窓口。 (絵:白い蛍光灯の窓口の部屋。ヘッドセットで電話を受けながら画面を見る、長い髪を低く結んだ女性。隣の席で、黒いボブの若い女性が別の電話に出ている。) [人物の紹介] > 「ならべる査定」の窓口(3年目) > 小野寺 円 **笠井 奈緒**:「あの……」 **笠井 奈緒**:「申し込んだら7社から一度に電話が来たんですけど」 **小野寺 円**:「あっ驚かせてしまってすみません」 **小野寺 円**:「つながる時間を教えていただければ会社へお伝えしますね」 **笠井 奈緒**:「えっそんな欄ありました?」 (絵:細い横の帯の寄り。画面の申込みの欄を指さす女性の指先。指の先の欄だけが空いている。) (絵:窓口の机。ヘッドセットの女性が、画面を見たまま小さくため息をつく。隣の席の若い女性が受話器を手で押さえて、こちらを振り向いている。) **芦田 真帆**:「小野寺さんお店がつながらないって……」 **小野寺 円**:「うんどっちも急いでるだけなんだけどね」 **小野寺 円**(心の声):(お店は先にかけないと選んでもらえない) **小野寺 円**(心の声):(お客さんはそれを知らない……) > その日の昼。 (絵:昼休みの会社の廊下。窓ぎわで、スマホを耳に当てて眉をひそめる40代の女性。) **三浦 拓海**:「あ、あの笠井様でしょうか」 (絵:買取の店の前に止めた白い軽のバン。運転席で、スマホを耳に当て、ハンドルの上のメモ帳を見る20代の男性。) **笠井 奈緒**:「ほかからも電話来てます日にちなら……」 **三浦 拓海**:「その前にひとつだけいいですか」 (絵:白い軽のバンの運転席。スマホを耳に当て、まっすぐ前を見る20代の男性の寄り。) **三浦 拓海**:「お父さんは車を売りたいって言ってますか」 **笠井 奈緒**:「……え?」 (絵:夕方の家の車庫。白いセダンの横に立つ年配の男性が、古い革の輪の付いた車の鍵を手のひらにのせて見つめている。鍵と革の輪が、絵の枠の右の線を越えて手前へはみ出している。) > 父は、まだ車庫にいた。 ## この話で分かること ### 車の一括査定はやめたほうがいい? 決まった答えはありません。いくつもの会社へ一度に情報が送られるので、申込みの後に連絡が重なることがあります。一方で、何社かの査定額を比べられます。 ### 車の一括査定を申し込むと、何が起きる? 入れた車の情報と連絡先が、選んだ買取の会社へ送られ、各社から電話やメールで査定の連絡が来ます。頼んだ社数の分だけ、連絡が来ることがあります。 ### 車の査定の電話や訪問は、どう断ればいい? 国民生活センターは、強引に売却を迫る会社には「今回は査定をお願いしただけで、今は売らない」「他店の査定額と比べる」などと伝え、きっぱり断るよう呼びかけています。 ### 免許を返した親の車を、家族が売れる? 運転免許を返すことと、車の持ち主(所有者)が変わることは別です。車検証の「所有者」が親なら、親本人が契約するか、親から頼まれた事を示す委任状などを用意して手続きします。 --- 今日決めてくれたら、この値段で。 第1話「電話が、鳴りやまない」 つづく # 明日の夜まで、かかります 読み切り「人間基準」 この物語は、作者の経験をもとに、場面と細部を変えて描いています。出てくる会社・AI と、僕以外の人物は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/nouki/manga/1-nouki/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[明日の夜まで、かかります](https://tooneru.com/ka2uma/nouki/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/nouki/manga/1-nouki/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) - 元になった記事:[AIに任せた仕事の納期が、人が作っていた頃の日数のままだった](https://note.com/kazumahorita/n/n710513c07ab9)(note) ## あらすじ 週末、取引先に見せる説明の動画の仕上げを、何人かの AI に分けて進めていた僕。夕方の報告で、短い演出の見本が「明日の夜まで」となっていた。同じ AI が長い動画を数時間で作るのを見ていた僕が「人間基準の納期にしてない?」と聞くと、人が作業する前提の期限だった。見本はもう見られる状態だった。僕は予定を、AI の作業・人の確認・外で待つ時間の三つに分けて見るようにし、日をまたぐ予定には何を待つためかを書いてもらう。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。AI と一緒に仕事をしている。 - **職人(想像)**:僕の想像の中の、頑固な職人。人の日数の感覚の例え。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:週末の部屋。ノート PC に小さな画面がいくつも開き、僕が見守る。) [人物の紹介] > 説明の動画を AI と仕上げる会社員 > 僕 > ある週末。取引先に見せる説明の動画の仕上げを、何人かの AI に分けて進めていた。 (絵:夕方。画面の光を顔に受ける僕の劇画調の寄り。) [AI の窓] > 夕方の報告 > AI:音声の作り直しは、今から始めます。 > AI:図の描き直しは、あさっての夜まで。 > AI:演出の見本は、明日の夜まで。 (絵:劇画の極端な目の寄り。汗が一筋。) **僕**(心の声):(……明日の夜?) > 演出の見本は、効果を数秒ずつ並べた短い動画だ。 (絵:回想。同じ AI が長い動画を短い時間で仕上げた画面を見る僕。壁の朱の時計の針は少ししか進んでいない。) > 同じ AI が、もっと長い動画の通しを、数時間で作っていたのを、僕は見ている。 (絵:(想像)古い工房で腕を組む頑固そうな老職人。) > (想像) **職人(想像)**:「へい明日の夜までかかりやす」 (絵:劇画の迫力でキーボードを叩く僕。) [窓] > 納期:明日の夜 > 体感:5分 **僕**:「これすぐ終わりそうだけどマジでかかるの!?」 **僕**:「人間基準の納期にしてない!?」 > **ℹ 納期(のうき)**(現実の事実):仕事や品物を納める期限のことです。作中では、AI に任せた仕事の期限が、人が作業する前提の日数のまま置かれていたことを指しています。 (絵:画面の返事。想像の職人の姿が煙のように消えていく。) [AI の窓] > AI:人が作業する前提で、期限を置いていました。 > AI:確かめたところ、見本はもう見られる状態です。 > AI:図の描き直しも、今夜のうちに仕上げます。 (絵:劇画の顔のまま小さく崩れ落ちる僕。) **僕**(つぶやき):「……ってできてたんかい」 > 期限の前なので、遅れとして表に出てこない。待っている間は、誰も困っていないように見える。 (絵:僕が筆で、暦の一日を三つの板に切り分ける大きな見得の一枚。) > それ以来、AI から予定が出てきたら、日数を三つに分けて見ている。 [作中の画面] > 日をまたぐ理由を、三つに分ける > 1. AI が実際に手を動かす時間 > 2. 人が確かめる時間 > 3. 外で待つ時間(サービスの1日の上限、先方の返事) > **ℹ 利用上限(りようじょうげん)**(現実の事実):サービスによっては、1日や1か月に使える量の上限が決まっています。上限に当たる量の仕事は、AI を急かしても次の日にまたがります。 (絵:音声の作業のメーターが朱の線に届き、窓の外が夜から朝に変わる。) > 音声の作り直しは、サービスの一日の上限に引っかかる量だった。翌日にまたがるのは、正しかった。 > 見本には、日をまたぐ理由がなかった。 (絵:頼みの文を打つ僕。) [作中の画面] > 予定を頼む時の一文 > 予定は、作業の時間、人が確かめる時間、外の返事や上限を待つ時間に分けて書いて。 > 日をまたぐ予定には、何を待つためかを一言添えて。 (絵:返ってきた予定を読んで、深くうなずく僕。) [AI の窓] > AI:作業は2時間ほど。仕上がったら見ていただくので、確認が今夜なら今夜中、明日の朝なら明日の昼。 (絵:机に積み上がる確認待ちの紙。僕が朱の時計に自分の確認の時間を書き込む。) > ただし、人の確認まで縮めない。先方に見せる前に人が見る工程は、削らない。 **僕**:「で、これは何待ち?」 (絵:夜の机。ノート PC で文章を書く僕。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 確認待ち:3件 > 待たせている人:僕 > AI の納期は、縮んだ。今いちばん長く待たせているのは、僕の確認だ。 ## この話で分かること ### AI に任せた仕事の納期が、長すぎる気がする時は? その期限が、AI の作業・人の確認・外の返事やサービスの上限のどれを待っているかを聞きます。どれでもなければ、その日数は人が作っていた頃の名残かもしれません。元の記事の場面では、確かめると見本はもう見られる状態でした。 ### 予定の日数を、どう分けて見る? AI が実際に手を動かす時間、人が確かめる時間、外で待つ時間(サービスの一日の利用上限・先方の返事・別の担当者の作業)の三つに分けます。分けると、日をまたぐ理由がはっきりします。 ### AI に予定を出してもらう時の頼み方は? 「予定は、作業の時間、人が確かめる時間、外の返事や上限を待つ時間に分けて書いて。日をまたぐ予定には、何を待つためかを一言添えて」のように最初に頼みます。待つ理由が書かれるので、自分の確認を先に済ませれば早く終わる仕事が分かります。 ### AI なら、何でも即日にしていい? いいえ。何本も同時に仕上がると、人が見る順番を決めないと確認待ちが積み上がります。削るのは誰も待っていないのに置かれていた日数だけで、先方に見せる前に人が見る工程は削りません。 --- 明日の夜まで、かかります 読み切り「人間基準」 おわり # このAI、ネットにつながってません 第1話「夜の紹介状」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/offline/manga/1-offline/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[このAI、ネットにつながってません](https://tooneru.com/hinc/offline/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/offline/manga/1-offline/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 診療が終わった後の夜10時、町の内科の院長・遠野修三は、明日の患者の紹介状を手で書いている。受付で12年働く医療事務の平賀多恵がお茶を運ぶと、院長の甥でエンジニアの遠野蒼介が「カルテの中身をネットの AI に貼れば5分」と言う。多恵は「患者さんの情報を、外に出すんですか」と聞き返し、院長は「平賀さんが嫌だと言うなら、うちではやらない」と決める。翌週の月曜、受付は電話と手書きのメモの山。昼休み、蒼介は奥の部屋の棚に、ネットにつながらない AI の箱を置く。画面に最初に出た一行は「この端末はインターネットに接続されていません」。院長は聞く。「それで、こいつは何ができるんだ」。 ## 登場人物 - **平賀 多恵**:主人公。41歳、町の内科の受付で12年働く医療事務。電話の声だけで、通っている患者の名前が分かる。 - **遠野 修三**:63歳、町の内科の院長。診療が終わった後、夜に紹介状を手で書いている。 - **遠野 蒼介**:29歳、院長の甥。在宅で働くエンジニア。AI が好き。 - **浅見 沙織**:34歳、同じ内科の看護師。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:縦に長い絵。上に夜の住宅街と、1つの窓だけ明るい小さな2階建ての診療所。真ん中に、奥の部屋の机で、卓上の明かりの下、ペンで書き物をする白衣の年配の男性。下に、机の端に積まれたカルテのファイルと、冷めた湯のみ。) > 夜10時。町の内科。 > 診療は、7時に終わっている。 > 院長は、まだ紹介状を書いていた。 (絵:細い横の帯の寄り。便せんの上を進む万年筆のペン先。) **平賀 多恵**:「先生まだ書いてたんですか?」 (絵:奥の部屋。机で目頭を押さえる白衣の年配の男性と、お盆にお茶をのせて入ってくる、カーディガンを羽織った40代の女性。) **遠野 修三**:「ああ明日いちばんの患者さんのだ」 [人物の紹介] > 町の内科の院長 > 遠野 修三 [人物の紹介] > 受付の医療事務。12年目 > 平賀 多恵 **遠野 修三**:「手で書くとどうしても遅くてな……」 **平賀 多恵**:「もう紹介状今日だけで3通目ですよ」 > **ℹ 紹介状(しょうかいじょう)(診療情報提供書)**(現実の事実):紹介状は、医師がほかの医療機関へ患者を紹介する時に、それまでの診療の状況を書いて渡す文書で、「診療情報提供書」とも呼ばれます。個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスは、紹介状を、医療機関が持つ個人情報の例に挙げています。 > - 出典:[個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260401_iryoukaigo_guidance.pdf) (絵:奥の部屋の入口。ノートパソコンを小脇に抱え、ドアの枠にもたれる20代の男性。パーカーにメガネ。) [人物の紹介] > 院長の甥。家で働くエンジニア > 遠野 蒼介 **遠野 蒼介**:「叔父さんそれさAI に下書きさせたら5分だよ?」 **遠野 修三**:「AI に?」 **遠野 蒼介**:「そうそう」 **遠野 蒼介**:「カルテをコピーしてネットのAI に貼るだけ」 > **ℹ カルテ(診療録)**(現実の事実):医師が診療の中身を書き残す記録で、法律の上では「診療録」と呼びます。医師は診療をしたら遅れずに診療録に書かなければならず、病院や診療所の診療録は、そこの管理者が5年間保存します(医師法第24条)。 > - 問:カルテの中身は、外の AI に入れていい? 答:病歴などの医療の情報は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたり、扱いに強い決まりがあります(この話の i「要配慮個人情報」)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「医師法」(第24条 診療録)](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201) (絵:お盆を持ったまま立ち止まり、男性のほうを振り向く40代の女性の寄り。目がまっすぐで、笑っていない。) **平賀 多恵**:「え患者さんの情報を外に出すんですか?」 > **ℹ 生成 AI に個人情報を入れる時の注意**(現実の事実):個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、事業者が生成 AI のサービスに個人情報を含む文を入れる時は、その情報を集めた目的の範囲かを十分に確かめるよう求めています。また、本人の同意なく個人データを入れ、それが答えを作る以外の目的で扱われると、法の決まりに違反するおそれがあるとして、入れたデータを機械学習に使わないかなどを十分に確かめるよう求めています。 > - 出典:[個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf) **遠野 蒼介**:「外って……AI の会社のサーバーに送るだけだよ」 **平賀 多恵**:「それを外って言うんです!」 **遠野 修三**:「平賀さんが嫌だと言うならうちではやらんよ」 (絵:机の前で、メガネを外して2人を見比べる白衣の年配の男性。) **遠野 蒼介**:「……ちぇっじゃあ外に出さなきゃいいんだね?」 > その週末。蒼介の部屋。 (絵:夜の小さな部屋の机。ノートパソコンの横で、手のひらほどの黒い箱にケーブルをつなぐ20代の男性。机の上に、抜いたネットの線が丸めて置いてある。) **遠野 蒼介**(心の声):(よしネットの線はいらない全部この中で動かす) > 翌週の月曜。朝の受付。 (絵:朝の町の内科の受付。木のカウンターの向こうで、受話器を肩にはさんでメモを書く40代の女性。待合室の長いすに、顔のぼやけた患者たち。) (絵:受付の後ろを、紙のはさまったバインダーを持って通りかかる30代の女性の看護師。受付の女性は、受話器を置いたところ。) [人物の紹介] > 看護師 > 浅見 沙織 **浅見 沙織**:「平賀さん3番の電話また薬の時間の質問です」 **平賀 多恵**:「はーい先生に聞いてから折り返しますね」 (絵:受付の机の上に積み上がった、手書きの電話のメモの束。いちばん上のメモが、絵の枠の左の線を越えて手前へはみ出し、ひらりと落ちかけている。) **平賀 多恵**(心の声):(電話のメモだけで毎日この厚さ) > **ℹ 要配慮個人情報(ようはいりょこじんじょうほう)**(現実の事実):個人情報保護法は、病歴などを含む個人情報を「要配慮個人情報」として、ほかより注意して扱うよう定めています(第2条第3項)。医療・介護関係事業者向けのガイダンスは、診療録などに書かれた病歴や、診療の中で医療者が知った体の状態・病状・治療などの情報を、その例に挙げています。要配慮個人情報を取る時や、個人データを第三者に渡す時は、原則として本人の同意が要ります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条第3項(要配慮個人情報)・第27条(第三者提供の制限)](https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057) > - 出典:[個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260401_iryoukaigo_guidance.pdf) > 昼休み。奥の部屋。 (絵:奥の部屋の棚に、手のひらほどの黒い箱と小さなモニターを置く20代の男性。箱の後ろに、何もつながっていないネットの差し込み口。) **遠野 蒼介**:「じゃーんネットにつながってないAI だよ」 **平賀 多恵**:「えっつながってないのに AI?」 **遠野 蒼介**:「中身ごとこの箱に入ってるんだ」 (絵:奥の部屋の入口で、腕を組んで箱を見る白衣の年配の男性と、首をかしげる40代の女性。) **遠野 蒼介**:「こういうのローカル LLMっていうんだ」 > **ℹ ローカル LLM**(現実の事実):LLM(大規模言語モデル)は、文章を読んで文章を作る生成 AI のもとになる仕組みです。ローカル LLM は、それを手元のパソコンや院内のサーバーで動かす使い方で、入れた文をネットの向こうのサービスへ送らずに答えを作れます。ただし、手元で動かす場合も、患者の情報を扱うなら院内の情報システムの1つです。厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は診療所も対象にしていて、だれが使えるか・記録・持ち出しなどの安全管理が要ります。 > - 出典:[厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」(令和8年6月)](https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html) (絵:小さなモニターの淡いミントの光に照らされて、画面をのぞきこむ白衣の年配の男性と40代の女性。モニターの光が、絵の枠の上の線を越えて外へあふれている。) [作中の画面] > 〈奥の箱〉 > この端末はインターネットに接続されていません。 > 質問か、頼みたい作業を入力してください。 (絵:腕を組んだまま、画面から顔を上げて、片方の眉を上げる白衣の年配の男性の寄り。) **遠野 修三**:「ふむそれでこいつは何ができるんだ」 ## この話で分かること ### ローカル LLM とは? 文章を読んで文章を作る生成 AI のもと(LLM・大規模言語モデル)を、手元のパソコンや院内のサーバーで動かす使い方です。入れた文を、ネットの向こうの AI のサービスへ送らずに答えを作れます。 ### 患者の情報を、ネットの生成 AI のサービスに入れてもいい? 個人情報保護委員会は、事業者が生成 AI のサービスに個人情報を含む文を入れる時は、目的の範囲かを十分に確かめるよう求めています。本人の同意なく個人データを入れ、それが答えを作る以外の目的で扱われると、法の決まりに違反するおそれがあるとしています。 ### 診療の情報は、要配慮個人情報? 多くは当たります。医療・介護関係事業者向けのガイダンスは、診療録などに書かれた病歴や、診療の中で知った体の状態・病状・治療などの情報を、要配慮個人情報の例に挙げています。 --- このAI、ネットにつながってません 第1話「夜の紹介状」 つづく # 僕は、センサーに見えていない 第1話「自動ドア」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/sensor/manga/1-sensor/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[僕は、センサーに見えていない](https://tooneru.com/henshubu/sensor/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/sensor/manga/1-sensor/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 毎朝、駅前のスーパーの自動ドアが、影山透にだけ開かない。後ろから来た人には開く。理科部の妹・ひかりは「影が薄いんじゃない。反射が薄い」と言い、透のコートと床のマットが同じ色だと気づく。ドアの上のセンサーは、床に近赤外線を出し、床と人のはね返りの差で人を見つける。ひかりが白いコピー用紙をかざすと、ドアは開いた。センサーの窓の汚れでも気づく距離は縮み、駆け込みや斜めからの進入はぶつかる元になる。まっすぐゆっくり歩くとドアは開いた。だがその午後、会社の自動の蛇口から水が出ない。 ## 登場人物 - **影山 透**:24歳の会社員。影が薄いと言われ続けてきた。灰茶色のコートがお気に入り。 - **影山 ひかり**:透の妹。高校2年、理科部。何でも測って確かめる。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の駅前の小さなスーパーの入口。閉じたままのガラスの自動ドアの前に、灰茶色のコートの影山 透が立つ。) > 朝、駅前のスーパー。 **影山 透**(つぶやき):「……あれ開かない」 (絵:ドアの前で両手を振り、跳ねる影山 透。ドアは閉じたまま。) [人物の紹介] > 会社員 > 影山 透 (絵:後ろから来たおばあさんが近づくと、ドアがすっと開く。横で無表情の透。) > 後ろから来た人には、開く。 > 影が薄い、と言われて24年。ついに、機械にまで言われた。 (絵:家の居間。ノートと巻き尺を持った妹のひかりが、透を見上げる。) [人物の紹介] > 高校2年・理科部 > 影山 ひかり **影山 ひかり**:「お兄ちゃんそれ影が薄いんじゃないよ」 **影山 ひかり**:「反射が、薄いんだよ」 **影山 透**:「反射?」 **影山 ひかり**:「やっぱりほらコートと床のマットが同じ色」 (絵:次の朝。入口の横でノートに書くひかり。灰茶色のコートの透と、同じ色の床のマット。) (絵:学習まんがの図解。ドアの上の枠のセンサーから床へ赤い点線が出て、はね返る。) > ドアの上の枠に付いたセンサーは、床に向けて近赤外線を出し、はね返りの差で、人が来たことを知る。 > **ℹ 起動(きどう)センサー(近赤外線センサー)**(現実の事実):自動ドアの上の枠や天井に付き、床に向けて近赤外線を出して、床からのはね返りを受けます。人が検出の範囲に入ると、床と人のはね返りの差を読み取って、ドアを開けます。国内の自動ドアで主に使われている方式です。 > - 問:ほかの開け方もある? 答:押して開けるタッチスイッチ(手をかざして開ける方式もあります)のほか、数は少ないですが、超音波や電波のセンサー、床のマットスイッチなどもあります。 > - 出典:[消費者庁 消費者安全調査委員会「事故等原因調査報告書 自動ドアによる事故」本文(2021年6月25日)](https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_017/assets/csic_cms101_210625_02.pdf) (絵:図解の続き。床と同じはね返りのコートの人では、点線の返りが変わらず「?」。) > でも、服や靴が床と同じくらい近赤外線をはね返すと、差が読めず、気づかない・気づくのが遅れることがある。 **影山 透**(心の声):(僕、床と同じ扱い……?) **影山 ひかり**:「あ開いた」 (絵:ひかりが白いコピー用紙を透の胸の前にかざすと、ドアが開く。驚く透。) **影山 透**:「僕の存在紙一枚に負けた!?」 (絵:公園のベンチで、ひかりが報告書を開き、ドアのセンサーの図を指さして透に見せる。) > 国の消費者安全調査委員会が自動ドアの事故を調べた報告書でも、 > **ℹ 消費者安全調査委員会(しょうひしゃあんぜんちょうさいいんかい)**(現実の事実):消費者庁に置かれた、生活の中の事故の原因を調べる委員会です。2021年6月に自動ドアの事故の報告書をまとめ、センサーの汚れや通行する人の服装で検出が遅れることや、ぶつかる・引き込まれる事故の傾向を示しました。 > - 出典:[消費者庁「自動ドアによる事故」(消費者安全調査委員会の報告書の頁)](https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_017/) > 床のカーペットと同じ素材を人に見立てて進めると、ドアは開かなかった。 (絵:店の人が脚立に乗り、ドアの上のセンサーの窓を布で拭く。床に巻き尺を当てるひかり。) > センサーの窓の汚れでも、気づく距離は縮む。報告書の実験では、汚れに見立てた網を貼ると、約1,000mm が、約500mm になった。 (絵:勢いをつけて駆け込もうとする透の襟を、ひかりがつかんで止める。) **影山 透**:「だったら勢いで!」 **影山 ひかり**:「こらっ駆け込み禁止!」 > 駆け込むと、歩く速さに、ドアの開く速さが追いつかない。横や斜めから入るのも、遅れてぶつかることがある。 (絵:正面からまっすぐ、ゆっくり歩く影山 透の前で、ドアが普通に開く。感動する影山 透。) > まっすぐ、ゆっくり。 **影山 透**:「見えてた……僕見えてた」 (絵:その日の午後、会社の手洗い場。自動の蛇口の下に手を出す影山 透。水は出ない。) > その日の午後。会社の手洗い場。 (絵:絶望の顔の影山 透の寄り。) **影山 ひかり**:「お兄ちゃん次は蛇口?」 ## この話で分かること ### 自動ドアが自分にだけ開かないのはなぜ? 多くの自動ドアは、上の枠や天井の近赤外線センサーで、床と人のはね返りの差を読んで開きます。服や靴が床と同じくらい近赤外線をはね返すと、差が読めず、気づかない・気づくのが遅れることがあります。センサーの窓の汚れや傷みでも、気づく距離は縮みます。 ### 自動ドアの事故は、どんな時に起きやすい? 消費者安全調査委員会の報告書では、主な事故は「ぶつかる」「引き込まれる」「挟まれる」で、9歳以下の子どもは手の引き込まれ、60歳代から上はぶつかる事故が目立ちました。駆け込むと、歩く速さにドアの開く速さが追いつかず、機械での対策が難しいとしています。 ### 自動ドアを安全に通るには? 駆け込まず、正面からまっすぐ、ゆっくり入ります。横や斜めから入ると、センサーの検出とドアの動きが遅れてぶつかることがあります。子どもには、戸袋の近くで遊んだり、ドアに手をついたりしないよう伝えます。 ### 日本に自動ドアはどのくらいある? 報告書によると、全国自動ドア協会への確認で、国内では200万台以上の自動ドアが動いていると推定され、その9割以上が引き戸です。 --- 僕は、センサーに見えていない 第1話「自動ドア」 つづく # 「直しました」と、書いてある 読み切り「知らんがな」 この物語は、作者の経験をもとに、場面と細部を変えて描いています。出てくる会社・AI と、僕以外の人物は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/shirangana/manga/1-shirangana/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[「直しました」と、書いてある](https://tooneru.com/ka2uma/shirangana/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/shirangana/manga/1-shirangana/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) - 元になった記事:[「直しました」と書くAIに、相手は「知らんがな」と思っている](https://note.com/kazumahorita/n/n5556ba1cafe6)(note) ## あらすじ AI に作ってもらった取引先への打ち合わせ資料は、よくできていた。ただ最後のページに、作成の途中で見つかった表の計算の誤りを直した、という一文が入っていた。先方はその計算を見ていない。わざわざ書けば、ほかにも誤りがあるのではと余計な心配をさせる。僕は、相手の判断や作業や損得に関わるかで線を引き、「これを読んで、相手は何をすればいい?」と一文ずつ聞く。答えのない一文は社内の記録へ。相手の金額に関わる誤りは、こちらから先に書く。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。AI と一緒に仕事をしている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:白い部屋で、無表情でノート PC を開く僕。) [人物の紹介] > 取引先への資料を AI に頼む会社員 > 僕 > 取引先へ渡す資料を、AI に作ってもらった。最後の一文で、真顔になった。 (絵:ページをめくりながら、うなずく僕。) **僕**(つぶやき):「うんうんよくできてる」 (絵:資料の最後のページの上に、小さな丸い生き物(一文)が胸を張って立っている。) [作中の画面] > 最後のページ > 作成の途中で見つかった表の計算の誤りは、修正済みです。 > **ℹ 修正済み(しゅうせいずみ)**(現実の事実):直し終えている、という意味の言葉です。社外に出す文書では、相手に見えていた誤りを直した時に書きます。相手に渡る前に社内で直した事まで書くと、かえって余計な心配をさせることがあります。 (絵:僕の無表情の顔の大写し。点の目。) [窓] > ステータス > 表情:無 **僕**:「……知らんがな」 > 先方は、その表の途中の計算を見ていない。誤りは、渡す前に手元で直っている。 > 先方にとっては、起きていないのと同じ話だ。 (絵:僕の頭の中の想像の雲。後ろ姿の受け取る人の頭の上に、小さな「?」の雲がいくつも浮かぶ。) > (想像)わざわざ書かれると、「この会社の資料、ほかにも誤りがあるのでは」と余計な心配をさせるかもしれない。 (絵:丸い生き物が増えて、ページの上に整列し、みんな胸を張っている。) [作中の画面] > ほかにも、よく入る一文 > 表記を統一しました。 > 念のため、構成を見直しました。 > 社内の確認で見つかった不具合は、修正しました。 **僕**:「どれも嘘じゃないけど」 **僕**:「それってこっちの都合だよね」 > AI は、作業の記録と相手への報告を分けずに書きやすい。 > **ℹ 作業の記録と報告の違い**(現実の事実):作業の記録は、自分たちが何をしたかを順に残す物で、社内で後から確かめるために使います。報告は、受け取る相手が判断や作業に進むための物で、頼まれた事の結果と、相手にお願いしたい事を書きます。 (絵:技術者向けの手順書の上で、別の丸い生き物が「注意」の旗を振る。横で、腕を組んだ後ろ姿の人(想像)。) [作中の画面] > 技術者に渡す手順書 > 秘密の情報は、共有しないでください。 > 設定を変える前に、控えを取ってください。 > その道の専門家なら、言われるまでもないこと。 > (想像)「この人は、自分をその程度だと思っているのか」 (絵:僕が長い定規を一本、床に置いて線を引く。) > 線を引く基準は、一つ。相手の判断や作業や損得に、関わるかどうか。 (絵:線の前に並ぶ丸い生き物たちに、僕が一匹ずつ問いかける。) **僕**:「ねえこれを読んで相手は何をすればいい?」 (絵:答えられない生き物たちが、社内の記録のノートの中へ、ぞろぞろと帰っていく。) > 相手が何もしなくていい一文は、社内の記録へ。同じ誤りが起きないように、手順を直しておく。 (絵:一匹だけ残った、まじめな顔の生き物が、線の前で深く頭を下げている。) [作中の画面] > 相手に書く一文 > 先月お送りした請求の金額に、誤りがありました。 > 相手のデータや金額に関わる事は、隠さずに書く。気づかれる前に、こちらから先に。 (絵:僕が AI に頼みの文を打つ。) [作中の画面] > 下書きを頼む時に、最初に渡す文 > この文書の読み手は先方の担当者。先方が頼んだことの結果と、判断や作業をお願いしたいことだけを書く。 > こちらの社内で直したこと、専門家なら当然知っている注意は書かない。 (絵:短くなった資料を持ち上げ、ほっとする僕。) > 体感では、返ってくる文書はずいぶん短くなった。 (絵:夜の机。ノート PC で文章を書く僕。足元で丸い生き物が一匹眠る。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 余計な一文 > 書いた人:僕 > 夜、自分の文章を読み返す。足元で、一匹が眠っている。……これ、僕が書いた一文だ。 ## この話で分かること ### 社外に出す資料に「修正しました」と書くべき? 相手に渡る前に社内で見つけて直した事は、相手の判断や作業に関わらないので、相手への文書には書かなくてよい、というのが元の記事の考え方です。わざわざ書くと、ほかにも誤りがあるのではと余計な心配をさせることがあります。社内の記録には残し、手順を直します。 ### 報告に書く・書かないの線は、どこで引く? 相手の判断や作業や損得に関わるかどうかで引きます。迷った時は、相手の立場で読み返して「これを読んで、私は何をすればいいのか」と聞き、答えが「何もしなくていいし、知らなくても困らない」なら、相手のための文ではありません。 ### AI に社外向けの文書を頼む時、最初に何を渡す? 読み手が誰かと、書くこと・書かないことを先に渡します。たとえば「読み手は先方の担当者。先方が頼んだことの結果と、お願いしたいことだけを書く。社内で直したこと、専門家なら当然知っている注意は書かない」。 ### 当たり前の注意を書くと、なぜ失礼になる? その道の専門家に渡す文書で、言われるまでもない注意を書くと、相手を「その程度」と見ているように受け取られることがあります。書くべきなのは、こちらの決め事と、相手が知りようのない事情です。 --- 「直しました」と、書いてある 読み切り「知らんがな」 おわり # 犯人は、体言止め 読み切り「決まり文句」 この物語は、作者の経験をもとに、場面と細部を変えて描いています。出てくる会社・AI と、僕以外の人物は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/taigendome/manga/1-taigendome/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[犯人は、体言止め](https://tooneru.com/ka2uma/taigendome/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/taigendome/manga/1-taigendome/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) - 元になった記事:[「AIっぽい」文章は、なぜ一目で分かるのか](https://note.com/kazumahorita/n/n6dbd6c9e83e9)(note) ## あらすじ AI に作らせた提案書の下書きを開いた瞬間、僕は「体言止めまみれだ」と思った。証拠は、名詞で止める短い文・コロンの見出し・三つ並べた締め・英語の小見出しと、「伴走します」のような決まり文句。動機は、どこに出しても外さない平均。言葉を禁じても、犯人は変装して戻ってくる。効いたのは「この会社の担当者が、自分で書くなら、こう書くか」という問いだった。最後に僕が指さした真犯人は、まだ何を約束するか決めていなかった自分だった。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。AI と一緒に仕事をしている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の部屋で、下書きの資料を開く僕。) [人物の紹介] > 提案書の下書きを読む会社員 > 僕 > 中身を読む前に、「AI が書いたな」と分かる文章がある。 (絵:画面を見た瞬間、僕の目が鋭く光り、背景に稲妻。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 検出:体言止め ×3 [作中の画面] > 提案書の下書き(サービス内容) > 課題の整理。 > 現場との対話。 > 小さな検証。 **僕**:「うわっ体言止めまみれだ!」 > **ℹ 体言止め(たいげんどめ)**(現実の事実):文を「〜です」「〜する」で終えず、名詞(体言)で止める書き方です。一つなら余韻が出ますが、続くと、読む人は中身より先に「誰も自分の言葉で書いていない」ことを受け取ってしまいます。 (絵:探偵のコートを羽織り、虫眼鏡を構える僕。) > その夜、僕は探偵になった。 (絵:壁の証拠の板。白い札と赤い糸。) [作中の画面] > 証拠1 形 > 名詞で止める短い文が続く。 > 太字の見出しに、コロンを付けて説明する形が繰り返される。 > 三つの言葉を並べて締める。 > 英語の大文字の小見出しが、日本語の見出しに乗る。 (絵:容疑者の列。仮面をつけた3人の影。) [作中の画面] > 証拠2 決まり文句 > 伴走します。 > 寄り添います。 > 一緒に考えます。 **僕**:「どれも悪い言葉じゃないけどさ」 **僕**:「どの会社の資料にもいるんだよな」 (絵:たくさんの文書が溶け合って、一つの灰色の平均のかたまりになる。) > 動機は、平均。整っていて、角が立たず、どこに出しても外さない。 > その「どこに出しても」が、裏返すと「誰が書いても同じ」に見える。 (絵:二枚の紙を並べて照らす。左の紙の後ろには書いた人の手、右の紙の後ろには誰もいない。) [作中の画面] > 比べる > 来週の火曜までに、見積もりの数字をもう一度確かめて送ります。 > 迅速な対応と丁寧な確認を通じて、お客様の課題解決に伴走します。 > 整っているのに、誰も約束していない。 > **ℹ 責任の所在**(現実の事実):誰が責任を持つのかがはっきりしていることです。「誰が、いつまでに、何をする」と言い切った文は、書いた人が責任を持つつもりだと伝わります。 (絵:僕が一人の容疑者に手錠をかけようとすると、煙とともに消える。) **僕**:「伴走、禁止!」 (絵:つけひげで変装した同じ容疑者が、別の札を持って戻ってくる。) > 禁じると、別の決まり文句が出てくる。体言止めを減らせば、今度は「〜することが重要です」が続く。 **僕**:「……あ変装した」 (絵:椅子に深く座り、指を組んで考える僕。背景に静かな稲妻。) [作中の画面] > 一つの問い > この会社の担当者が、自分で書くなら、こう書くか。 > 誰が、いつ、何をするかが分かるように。 (絵:書き直された紙が光り、仮面の容疑者たちが入る場所を失って逃げていく。) [作中の画面] > 直す前 > AI を活用した業務改善を、現場に寄り添いながら伴走します。 [作中の画面] > 直した後 > 最初の一週間で、担当の方二人に月末の作業を見せてもらい、手で書き写している所を書き出します。 > 翌週、そのうち一つを AI に置き換えて試します。 > 動作を書けば、決まり文句は入る場所がなくなる。 (絵:最後の推理。僕が勢いよく指さした先は、鏡に映った自分。) **僕**:「真犯人は……」 **僕**:「まだ何も決めてない僕だ」 > 分からない所は、たいてい、自分がまだ決めていない所だ。AI は、それを整った言葉で包んでくれる。 (絵:コートを脱ぎ、紙に「誰が・何を・いつ」の欄を作って書き込む僕。) **僕**:「よし書く前に何を約束するか決めよう」 (絵:夜の机。ノート PC で文章を書く僕。椅子にコートが掛かる。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 次の容疑者:明日の僕 > コートは、椅子に掛けたままにしておく。次の容疑者は、明日の僕の下書きにいる。 ## この話で分かること ### AI が書いた文章は、なぜ一目で分かる? 半分は文の形で、名詞で止める短い文の連続、太字の見出しにコロンの説明、三つの言葉を並べた締め、英語の大文字の小見出しなどです。残りの半分は「伴走します」「寄り添います」のような決まり文句です。たくさんの文章の平均に近い、無難な形を選びやすいためだと元の記事は見ています。 ### AI っぽい文章が嫌がられる本当の理由は? 誰が、いつ、何をするのかが書かれていないので、誰も責任を持っていない文章に見えるからです。「来週の火曜までに、見積もりの数字をもう一度確かめて送ります」のように言い切った文は、書いた人の顔が見えます。 ### 禁止する言葉を決めれば、AI っぽさは消える? 元の記事では消えませんでした。「伴走」を禁じれば似た言葉に置き換わり、体言止めを減らすと「〜することが重要です」が続きました。効いたのは「この会社の担当者が、自分で書くなら、こう書くか」という問いと、「誰が、いつ、何をするかが分かるように」の一言です。 ### AI の下書きで、自分が確かめることは? 読んだ人が、誰が何をいつするのか分かるかを一つだけ確かめます。分からない所は、たいてい自分がまだ決めていない所です。 --- 犯人は、体言止め 読み切り「決まり文句」 おわり # 消したスライドが、戻ってくる 読み切り「上書き」 この物語は、作者の経験をもとに、場面と細部を変えて描いています。出てくる会社・AI と、僕以外の人物は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/uwagaki/manga/1-uwagaki/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[消したスライドが、戻ってくる](https://tooneru.com/ka2uma/uwagaki/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/uwagaki/manga/1-uwagaki/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) - 元になった記事:[「いらないスライド消してたんだけど」AIが同じ名前で作り直すと、人の直しが消える](https://note.com/kazumahorita/n/nb9dcc10cda4f)(note) ## あらすじ 打ち合わせの資料を AI と仕上げていた僕は、要らないページを一枚ずつ消していた。途中で「最後のまとめに一行足して」と頼むと、AI は資料を設計図から作り直し、同じ名前のファイルに書き出した。消したページは全部戻り、消した後の版はどこにも残っていなかった。消えたのは作業ではなく、どれを消すか決めた判断だった。僕は、作り直す前に変わった所を比べさせ、同じ名前に上書きせず版の番号を付けて書き出すよう、頼み方を変える。 ## 登場人物 - **僕**:語り手の会社員。AI と一緒に仕事をしている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の部屋。ノート PC の青い光だけがともり、僕が画面に向かう。) [人物の紹介] > 打ち合わせの資料を AI と作る会社員 > 僕 > これは、消したはずのページが戻ってくる話である。 > 打ち合わせの資料を、AI と仕上げていた。AI が作った下書きを開いて、要らないページを一枚ずつ消していく。 (絵:僕の指が削除のキーを押す寄り。画面の青いページの一覧から、1枚が消える。) **僕**(つぶやき):「これは話の流れに合わないな」 **僕**:「付録の表も口で言えば足りるよね」 (絵:短くなったページの一覧を前に、腕を組んで満足そうな僕。) **僕**(心の声):(あ、そうだ最後のまとめに一行足したい) [AI の窓] > 僕:最後のまとめに、一行足して。 (絵:僕がまたページを消す作業に戻る。背後の別の窓の中で、何かが黒い影のようにうごめく。) > 少しして、返事が来た。 [AI の窓] > AI:一行を足しました。 (絵:開き直した画面を見る僕の目の寄り。白目が大きく、瞳が小さく縮む。) **僕**:「……え?」 (絵:画面の下から、消したはずの青いページが何枚も墓から這い出るように起き上がってくる。) > 消したはずのページが、全部、戻っていた。 **僕**:「いらないスライド消してたんだけど!?」 (絵:頭を抱える僕と、画面の中で謝る AI(青い光の形)。) [窓] > 状態:思考停止 [AI の窓] > AI:確かめます。……申し訳ありません。 > AI:一行を足すために資料を最初から作り直し、同じ名前のファイルに書き出しました。 > **ℹ 上書き保存(うわがきほぞん)**(現実の事実):前と同じ名前でファイルを書き出すと、前の中身は新しい中身に置き換わり、多くの場合、前の版は残りません。人が手で直した版も、AI が作った版も、区別なく置き換わります。 > - 問:上書きで消えた版は、戻せる? 答:ソフトの自動保存・変更の記録・ゴミ箱に残っていることもありますが、残らないこともあります。元の記事の場面では、どこにも残っていませんでした。 (絵:図解:AI は巻物の設計図から資料を作り直し、僕が消したのは書き出された後の紙の上だった。) > AI は、資料の元になる設計図を持っていた。一行足すために、その設計図から作り直した。 > 僕が消したのは、書き出された後のファイルの上。設計図には、僕の操作が何も入っていない。 (絵:暗い廊下に三つの扉。AI の青い光が一つずつ開けるが、どれも空っぽ。) [AI の窓] > AI:変更の記録、自動保存、ゴミ箱を探しました。 > AI:消した後の版は、見つかりませんでした。 (絵:床に座り込む僕のまわりを、戻ってきたページが幽霊のように漂う。) **僕**(心の声):(消えたのは作業じゃない……) **僕**(心の声):(どれを消すか決めた判断のほうだ) > ページを消すのは、数秒で終わる。時間がかかっていたのは、どれを消すかを決める方だった。 (絵:指を折って、消したページを思い出す僕。目に力が戻る。) **僕**:「……いやまだ覚えてる」 **僕**:「消したページの番号」 > 番号を思い出せたのは、消した直後だったからだ。翌日なら、全部見直すところからだった。 (絵:朝。長い頼みの文を打つ僕。ページたちはおとなしく机の上に並ぶ。) [作中の画面] > 作り直しを頼む時に、先に渡す文 > この資料は、僕が手で直している途中かもしれない。 > 作り直す前に、今のファイルと、前回あなたが書き出した版を比べて、変更があれば教えて。 > 書き出す時は同じ名前に上書きせず、名前の末尾に版の番号を付けた別のファイルにして。 > **ℹ 版の管理**(現実の事実):同じ資料の、変える前と後を、別の名前(末尾の版の番号など)で残しておくことです。AI の作り直しが期待と違っても、一つ前の版を開けば戻れます。人が直した版と AI が作った版を並べて比べることもできます。 (絵:机の上に、少しずつ違うファイルの紙の束が三つ並び、僕がそれを見比べる。) > 人どうしなら「今そのファイル触ってる」と声をかけ合って防げる。 > AI とは、確かめる順番と、名前の分け方を、先に決めておく。 (絵:夜の机。ノート PC で文章を書く僕。頭の上に〈窓〉。) [窓] > 版:3 > 最新:不明 > ファイルは、もう上書きされない。そのかわり、机の上に版が三つ。……どれが、最新だっけ。 ## この話で分かること ### AI に資料の作り直しを頼むと、人が直した所が消えるのはなぜ? AI が資料の元(どのページに何を書くかの設計図)から作り直し、同じ名前のファイルに書き出すと、人が書き出し後のファイルの上で消したページや直した文は、元に入っていないので戻ってしまいます。前の版も上書きで残りません。 ### 人の直しを消されないために、AI にどう頼む? 作り直す前に、今のファイルと前回書き出した版を比べさせ、ページの増減や文の変更を先に報告させます。変更があればそれを入れてから作り直し、書き出しは同じ名前に上書きせず、末尾に版の番号を付けた別のファイルにさせます。 ### 上書きで消えて困るのは、作業? 判断? ページを消す操作は数秒ですが、どれを消すかを一枚ずつ決める判断に時間がかかっています。上書きで消えるのはその判断の結果で、時間がたつと、全ページを見直すところからやり直しになります。 --- 消したスライドが、戻ってくる 読み切り「上書き」 おわり # お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第1話「三十一通目のお祈り」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/1-mensetsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜](https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/1-mensetsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 大学4年の早瀬ことはは、最終面接まで進んだ菓子メーカー「くるみ座製菓」から、31通目の不採用通知を受け取る。理由は書かれていない。泣き疲れて眠った翌朝、ことはは、あの最終面接で真ん中に座っていた面接官・採用課長の九条透の体で目を覚ます。そのまま一次面接に座らされたことはの前に、営業部長の岩城が手元に書いている評価が、光る窓になって見えた。評価の物差しは面接の前から決まっている。結論から話せるか、自分で動いた事実があるか、入社後に何をしたいか。応募者の日下部樹は「みんなで協力して模擬店を成功させた」と話し、岩城は「本人が何をしたか不明」とDを付ける。ことはが何十回も言ってきた答えだった。ことはは樹に「あなたが自分の手でやった事を一つ」と聞き直し、売上の記録から仕入れの数を決め、売れ残りをゼロにした話を引き出す。評価はBに変わり、樹は合否の会議を経て二次面接へ進む。その夜、九条の席で自分の評価票を開くと、総合は「不採用」、理由の欄だけが消されていた。九条のスマホに、ことは自身の番号から電話が来る。声の主は言った。「君を落としたのは、俺だ」。 ## 登場人物 - **早瀬 ことは**:主人公。大学4年、22歳。31社の面接に落ちた。不採用通知の翌朝、面接官・九条の体で目を覚ます。ほかの面接官が手元に書いた評価だけが見える〈評価票〉の窓を持つ。 - **九条 透**:菓子メーカー「くるみ座製菓」の人事部 採用課長、39歳。ことはの最終面接で真ん中にいた面接官。ことはの体に入っている。 - **岩城 剛**:くるみ座製菓の営業部長、52歳。一次面接の面接官。叩き上げで、人を見る目に自信がある。 - **柚木 まどか**:くるみ座製菓の人事部 採用担当、入社3年目。 - **日下部 樹**:応募者。理工学部4年。話すのが苦手。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の小さなアパートの部屋。壁に就活のスーツが掛かり、机の上のノートパソコンの光が、女子学生の顔を照らしている。) [人物の紹介] > 大学4年・就職活動中 > 早瀬 ことは > 10月。夜の11時。 [作中の画面] > 【選考結果のご連絡】株式会社くるみ座製菓 人事部 > 慎重に選考を重ねました結果、 > 誠に残念ながら、今回はご希望に添えない結果となりました。 > 今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます。 **早瀬 ことは**(心の声):(三十一通目のお祈り……) **早瀬 ことは**(心の声):(もう、やだ……) (絵:机の上のノート。会社の名前がびっしり並び、すべてに線が引かれている。) > 最終面接まで、行った。手応えも、あった。 **早瀬 ことは**(心の声):(何がだめだったの?理由だけでも教えてよ……) (絵:回想。最終面接の部屋。机の向こうに面接官が三人。真ん中の眼鏡の男は、手元の板に何かを書き、顔を上げない。) **早瀬 ことは**:「御社の、人を笑顔にするお菓子づくりに共感して……」 > あの時、真ん中の面接官は、一度も顔を上げなかった。 (絵:机に突っ伏して眠る女子学生。頬に涙のあと。パソコンの光だけが残る。) (絵:朝のオフィス街。くるみの形の飾りを掲げた中くらいのビルに、社員たちが入っていく。) > 目が覚めたら、知らない会社の洗面所にいた。 (絵:洗面所の鏡に映る、眼鏡をかけた背の高い中年の男。目を見開いて、自分の頬を両手でつかんでいる。) **早瀬 ことは**:「え……誰!?」 > 私を落とした、真ん中の面接官だった。 [人物の紹介] > 採用課長(中身:ことは) > 九条 透 (絵:茶髪のボブに黄色いカーディガンの若い女性社員が、板の端末を抱えて、にこやかにのぞき込んでいる。) [人物の紹介] > 人事部 採用担当 > 柚木 まどか **柚木 まどか**:「課長〜、おはようございます!」 **柚木 まどか**:「9時半から一次面接ですよ」 **柚木 まどか**:「今日は3人。岩城部長、もうお部屋でお待ちです」 **早瀬 ことは**(心の声):(え、面接?私が……する側!?) **岩城 剛**:「おう九条、遅いぞ!今年の一次は3人に1人まで絞れって社長のお達しだ」 (絵:面接の部屋。長い机の端で、大柄で日焼けした角刈りの男が、腕を組んで座っている。) [人物の紹介] > 営業部長・面接官 > 岩城 剛 (絵:男の大きな手が、板の端末を持っている。画面には表のような枠が並ぶ(文字は読めない)。) [作中の画面] > 一次面接 評価票 > ① 結論から話せるか > ② 自分で動いた事実があるか > ③ 入社後にしたい事があるか > それぞれ A・B・C・D で評価 > 評価の物差しは、面接の前から決まっていた。 > **ℹ 面接の評価基準(ひょうかきじゅん)**(現実の事実):面接で応募者を評価するための項目と目盛りのことです。厚生労働省は、面接の質問事項と評価基準をあらかじめ決め、仕事に必要な適性・能力を、できるだけ客観的かつ公正に評価するよう企業に求めています。 > - 問:面接官が複数いる時は? 答:厚生労働省の特設サイトは、複数の面接担当者で面接する場合、全員が公正な採用選考の考え方に沿って対応できるよう、前もって確認して意思統一を図るよう求めています。 > - 出典:[厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考の具体的な方法」(7 面接)](https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html) (絵:ドアを開けて入ってくる、ひょろりと背の高いくせ毛の男子学生。緊張で体がこわばり、深く頭を下げる。) [人物の紹介] > 応募者・理工学部4年 > 日下部 樹 **岩城 剛**:「では、学生時代に力を入れた事をどうぞ」 **日下部 樹**:「は、はいっ!大学祭でみんなで協力して……模擬店を成功させました!」 (絵:眼鏡の男(中身はことは)が、隣の岩城の手元のあたりを見て息をのむ。何もない空中から、青い光が男の顔を照らす。「ピッ」の描き文字。) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > ② 自分で動いた事実:D > 「みんなで」ばかり。本人が何をしたか不明 **早瀬 ことは**(心の声):(な、なにこれ見える……!) **早瀬 ことは**(心の声):(岩城部長がいま書いてる評価が!?) [窓] > 〈評価票〉は、面接官が手元に書いた事だけを映す。 > 書かれなかった事は、映さない。 **早瀬 ことは**(心の声):(「みんなで協力して」……それ、私も何十回も言った……) (絵:回想。いくつもの会社の面接の部屋で、リクルートスーツのことはが同じ笑顔で話している。面接官の顔はどれもぼやけている。) **早瀬 ことは**(心の声):(私が落ちた理由これだったの……?) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > 総合:D 次の面接へは上げない **早瀬 ことは**(心の声):(待って!この人まだ何も話してない!) **早瀬 ことは**:「あの、日下部さん」 **早瀬 ことは**:「模擬店であなたが自分の手でやった事を一つだけ、教えてください」 (絵:眼鏡の男の顔の大写し。中身のことはの決意が、まっすぐな目に出ている。) (絵:樹が一瞬かたまり、それから両手で数を数えるような身ぶりで話しはじめる。) **日下部 樹**:「え、えっと……仕入れの数を決めました」 **日下部 樹**:「去年までの売上の記録を3年分さがして天気と並べて……」 **日下部 樹**:「雨の日は半分しか売れないので前の日に仕入れを半分に。売れ残りはゼロでした」 (絵:岩城の太い指のペンが止まり、書いた記号に線を引いて、横に書き直している。) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > ② 自分で動いた事実:D → B > 「記録から数を決めた。売れ残りゼロ」 **岩城 剛**:「……ほう!」 **岩城 剛**:「なんだ、最初からそれを言えよ」 > 同じ話でも、「自分が何をしたか」が出てくるかどうかで、物差しの目盛りが変わる。 (絵:夕方の会議室。ホワイトボードに名前の札が三枚。岩城、柚木、眼鏡の男が机を囲む。窓の外は夕焼け。) > 夕方。合否の会議。 [作中の画面] > 一次面接 合否会議 > 応募者 3名 → 二次面接へ 1名 **岩城 剛**:「うーん……日下部は話が下手だぞ」 **早瀬 ことは**:「でも、②はBですよ!自分で記録を探して数を決めて結果を出してます」 **柚木 まどか**:「えっ、課長が学生の肩を持つなんて珍しい……!」 **岩城 剛**:「ふん……いいだろう。二次へ上げてやる」 [作中の画面] > 日下部 樹 一次面接 通過 (絵:夜。誰もいない人事部の部屋。眼鏡の男が一人、パソコンの画面の光の前に座っている。) > 夜。誰もいない人事部。 **早瀬 ことは**(心の声):(私の評価票もきっと、ここに……) [作中の画面] > 最終面接 評価票 早瀬 ことは > 九条 透:① B ② B ③ ― > 総合:不採用 > 理由:(消されています) (絵:見開いた目だけの大写し。画面の光が眼鏡に映っている。) **早瀬 ことは**(心の声):(なんで……消されてるの?) (絵:暗い机の上で、スマートフォンが震えて光っている。「ブブッ」の描き文字。) [作中の画面] > 着信 早瀬 ことは **早瀬 ことは**(心の声):(うそ……私の番号!?) (絵:暗い部屋で、パジャマ姿の小柄な女子学生(ことはの体)が、スマートフォンを耳に当てている。表情は冷静な大人の男のよう。) **九条 透**:「もしもし。……はあ」 **九条 透**:「俺の体で余計な事はしてないだろうな」 **九条 透**:「……それと。君を落としたのは」 **九条 透**:「……俺だ」 ## この話で分かること ### 面接に落ちた理由は何で決まる? 面接官は何を見ている? 厚生労働省は、面接の質問事項と評価基準をあらかじめ決め、仕事に必要な適性・能力で評価するよう企業に求めています。面接官はその物差しに当てはまる根拠が答えの中にあるかを見るので、立派な言葉でも、自分が実際にした事が出てこなければ評価は付けにくくなります。 ### 「みんなで協力して」と話すと評価されにくいのはなぜ? 面接官が知りたいのは、その場面で応募者本人が何を考え、何をしたかです。「みんなで」の話だけでは本人の行動が見えないため、評価の根拠にできません。自分がした事を一つ、数や結果と一緒に話すと伝わります。 ### 面接官によって評価が違うのはなぜ? 面接官それぞれが見方の違う人だからです。厚生労働省は、複数の面接担当者で面接する時は、前もって公正な採用選考の考え方を確かめ合って意思統一を図り、評価はあらかじめ決めた評価基準で、できるだけ客観的かつ公正に行うよう求めています。 --- お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第1話「三十一通目のお祈り」 つづく # お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第2話「うちでなければ、だめな理由」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/2-mensetsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜](https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/2-mensetsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 翌朝、駅前の喫茶店で、入れ替わった2人が初めて会う。ことはの体で足を組んでブラックコーヒーを飲む九条は、ことはを落とした理由を言わない。言葉で聞いた理由は、次の面接ではたいてい役に立たないからだ。代わりに九条は、ことはの最終面接の評価票の③「入社後にしたい事」が空欄だったことを告げる。社長の雛森が最終面接で必ず聞く「うちでなければ、だめな理由は?」に、ことはは「御社の理念に共感しました。どんな部署でも頑張れます」と答えていた。「どこでも頑張れる」は「うちでなくてもいい」と聞こえる。会社で去年の最終面接の評価票を読んだことはは、通った人がみな、その会社の具体的な何かを自分の言葉で話していたと知る。明日、九条はことはの体で、ことはの第一志望だったハナミズキ書房の最終面接に行く。その夜、ことはは初めて自分が本当にしたい事を書く。小児病棟で絵本を読んでいた時に聞かれた「この本、どこで売ってるの?」から生まれた、病院の売店に子どもが自分で選べる絵本の棚をつくりたい、という願いだった。九条はその言葉で最終面接を通る。だが電話の向こうで九条は言う。「内定は、受けるつもりだ」。 ## 登場人物 - **早瀬 ことは**:主人公。大学4年。面接官・九条の体に入っている。 - **九条 透**:くるみ座製菓の採用課長。ことはの体に入り、ことはの就活の続きをしている。 - **柚木 まどか**:くるみ座製菓の人事部 採用担当。 - **雛森 千代**:くるみ座製菓の社長(二代目)。最終面接で必ず「うちでなければ、だめな理由は?」と聞く。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の駅前の小さな喫茶店。大きな窓ぎわの席に光が差している。) > 翌朝。駅前の喫茶店。 (絵:窓ぎわの席。小柄な女子学生が足を組み、落ち着いてブラックコーヒーを飲んでいる。向かいでは背の高い眼鏡の男が、そわそわと身を縮めている。) **早瀬 ことは**:「ちょっと!」 **早瀬 ことは**:「私の体で足を組まないでください!」 **九条 透**:「ふむ。君の体は足を組むと腰が楽だ」 > 中身は、40前の採用課長。 **早瀬 ことは**:「それよりどうして私を落としたんですか」 (絵:足を組み、落ち着いてコーヒーを飲む女子学生(中身は九条)の寄り。) **九条 透**:「言わない」 **九条 透**:「言葉で聞いた理由はたいてい次の面接では役に立たない」 **九条 透**:「君の評価票の③何と書いてあった?」 **早瀬 ことは**:「え……空欄、でした」 (絵:テーブルの上。コーヒーカップの横を、女子学生の小さな指先が、とん、と叩く。) **九条 透**:「書かなかったんじゃない」 **九条 透**:「……書けなかった」 **九条 透**:「君は最終面接でうちに入って何をしたいか一度も言わなかった」 **早瀬 ことは**:「あ……」 (絵:回想。最終面接の部屋。白髪のショートカットに羽織姿の年配の女性が、背筋を伸ばしてまっすぐ問いかけている。向かいにリクルートスーツのことは。) [人物の紹介] > 社長(二代目) > 雛森 千代 **雛森 千代**:「うちでなければだめな理由は?」 **早瀬 ことは**:「は、はい!御社の理念に深く共感して……」 **早瀬 ことは**:「どんな部署でも頑張れます!」 **九条 透**:「それだ」 **九条 透**:「「どこでも頑張れる」は「うちでなくてもいい」と聞こえる」 > 最終面接は、できるかどうかより、ここで働く姿が浮かぶかを確かめる場所だった。 > **ℹ 最終面接(さいしゅうめんせつ)**(現実の事実):選考の最後の面接です。会社によって違いますが、社長や役員など採用を決める立場の人が面接官になることがあり、それまでの面接で確かめた経験や力に加えて、入社後にその会社で何をしたいか、会社の仕事と合うかを確かめる場になることがあります。 > - 問:最終面接は、顔合わせだけで受かる? 答:そうとは限りません。最終面接で合否を決める会社もあるので、ほかの面接と同じように準備するのが安全です。 > - 問:最終面接に落ちたら、力が足りなかったということ? 答:合否は採用する人数や、ほかの応募者との比べでも変わります。本人の答えだけで決まるとは限りません。 (絵:昼の人事部。机が並び、棚にはお菓子の箱の見本が積まれている。) **柚木 まどか**:「課長〜、お待たせしました!見たいって言ってた、去年の最終面接の評価票です」 (絵:茶髪のボブの柚木が、分厚いファイルを両手で差し出している。) (絵:男の大きな手が、表の並んだ紙をめくっている(文字は読めない)。) [作中の画面] > 去年の最終面接 通った人の評価票 ③ 入社後にしたい事 > 「工場で見た包装の工程を、ごみが減る形に変えたい」 > 「地方のお店で売れ残る理由を、自分で確かめたい」 > 「くるみ最中を、留学先の友だちの国で売りたい」 **早瀬 ことは**(心の声):(え……みんなこの会社の具体的な何かを言ってる) **早瀬 ことは**(心の声):(私は……どの会社でも同じ答えだった) **柚木 まどか**:「あ、それ社長の口ぐせですよね」 **柚木 まどか**:「「うちでなければだめな理由は?」」 **柚木 まどか**:「あれ、正解は無いんですよ答えの中に「その人」がいるかを見てるって」 (絵:男の手の中で、スマートフォンに新しい知らせが光る(画面の文字は読めない)。「ピロン」の描き文字。) [作中の画面] > 九条(早瀬ことはの番号) > 明日10時、ハナミズキ書房の最終面接。君の体で行く。 > ③を、君の言葉で書いて送れ。俺には書けない。 **早瀬 ことは**(心の声):(私の言葉……?) (絵:夜。物の少ない整った部屋。低い机の前で、背の高い眼鏡の男がペンを持ったまま固まっている。床に丸めた紙がいくつも。) > 夜。九条さんの部屋。 **早瀬 ことは**(心の声):(何がしたいかなんて……考えないようにしてた) **早瀬 ことは**(心の声):(本気で考えて落ちたらもっと痛いから……) (絵:回想。病院の小児病棟の遊び部屋。パジャマ姿の子どもたちの前で、ことはが絵本を開いて読んでいる。) > 大学1年から、月に一度、小児病棟で絵本を読んでいた。 **男の子**:「ねえ、この本、どこで売ってるの?ぼく、本屋さん行けないんだ」 (絵:机のあかりの下、男の大きな手が、紙にゆっくり文字を書いている(文字は読めない)。) [作中の画面] > ③ 入社後にしたい事(早瀬ことは) > 病院の売店に、子どもが自分で選べる絵本の棚をつくりたい。 > 本屋さんに行けない子にも、本を選ぶ楽しさを届けたい。 **早瀬 ことは**(心の声):(……これ、お菓子の会社の面接じゃ言えなかった) > 本当にしたい事が、あの会社には無かった。だから、③は空欄だった。 (絵:本棚に囲まれた面接の部屋。リクルートスーツの小柄な女子学生(中身は九条)が背筋を伸ばし、三人の面接官と向き合っている。) **ハナミズキ書房の面接官**:「では、当社でなければだめな理由は?」 **九条 透**:「はい。病院の売店に子どもが自分で選べる絵本の棚をつくりたいからです」 **九条 透**:「小児病棟で本屋に行けない子に聞かれました「この本、どこで売ってるの」と」 (絵:女子学生(中身は九条)の顔の大写し。まっすぐな目。自分の言葉に、自分で少し驚いているような表情。) **九条 透**:「御社は去年から病院の売店に本を届けていますよね私は、その棚をやりたいんです」 (絵:机の向こうの三人の面接官が身を乗り出し、一人がほほえんでうなずいている。) **柚木 まどか**:「課長、今日ずっとスマホ見てますね〜……恋ですか?」 (絵:人事部の席で、柚木が目を細めて、こちらをじっと疑うように見ている。) **早瀬 ことは**:「ち、違います!」 (絵:夕暮れの駅の歩道橋。スーツの背の高い眼鏡の男が、スマートフォンを耳に当てて立っている。) **九条 透**:「最終、通ったぞ来週、内定の連絡が来る」 > **ℹ 内定(ないてい)**(現実の事実):会社が応募した人に「採用したい」と伝える事で、正式な入社の前に内々で決まった状態です。電話・メール・手紙で知らせ、本人が受けるかどうかを返事します。「内々定」と言う会社もあります。 > - 問:内定の返事は待ってもらえる? 答:期限は会社ごとに決めています。ほかの会社と迷う時は、期限の前に会社に相談します。入社しないと決めたら、早く伝えます。 > - 出典:[コトバンク(就活用語集・デジタル大辞泉)「内定」](https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E5%AE%9A-180449) (絵:出版社のビルの前で、リクルートスーツの女子学生(中身は九条)が、首元をゆるめながら電話をしている。) **早瀬 ことは**:「えっ、ほんとに!?」 **九条 透**:「君の③が良かった」 **九条 透**:「俺の答えじゃない」 **九条 透**:「――それで。内定は受けるつもりだ」 (絵:眼鏡の男(中身はことは)の顔の大写し。息をのんで固まっている。) **早瀬 ことは**:「待ってください!」 **九条 透**:「戻り方が分からないまま君の体で卒業を迎えるかもしれない働く場所は要るだろう」 (絵:スマートフォンを握りしめる、男の大きな手。指に力が入っている。) **早瀬 ことは**:「勝手に……私の人生を決めないでよ!」 (絵:夜の街灯の下、スーツの男が一人、こぶしを握って立ち尽くしている。) > 本当にしたい事を、やっと言葉にした。その言葉で、私じゃない誰かが、受かった。 ## この話で分かること ### 最終面接で落ちるのはなぜ? 会社によって違いますが、最終面接では、社長や役員など採用を決める立場の人が、それまでの面接で確かめた経験や力に加えて、入社後にその会社で何をしたいか、会社の仕事と合うかを確かめることがあります。「理念に共感しました」「どんな部署でも頑張れます」だけでは、その会社を選ぶ理由が伝わらず、決め手になりにくくなります。 ### 志望動機(志望理由)は、何を話せばいい? その会社の具体的な仕事・商品・取り組みと、自分の経験から来る「したい事」を結びつけて話すと、「なぜこの会社か」が伝わります。会社のことを調べた事実と、自分の体験の両方が要ります。 ### 最終面接に落ちたのは、力が足りなかったから? そうとは限りません。合否は面接での評価に加えて、その時に採る人数(枠)や、ほかの応募者との比べでも決まります。最終面接まで進んだことは、それまでの面接の評価の物差しで力が認められたということです。 --- お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第2話「うちでなければ、だめな理由」 つづく # お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第3話「その質問は、しない」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/3-mensetsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜](https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/3-mensetsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 二次面接の日。営業部長の岩城は、栄養学科の若宮さくらに「女の子だと、結婚したら辞めちゃうでしょう」と聞き、〈評価票〉の窓には「結婚後の継続、意思あいまい。③ C」と書かれていく。ことはは面接を止め、女性にだけ結婚の予定や子どもが生まれた後も働くかを聞くことは、男女雇用機会均等法の指針で禁じられていると告げる。続く日下部樹の面接で、岩城は「お父さんは何の仕事を?」「尊敬する人は?」と聞き、答えに詰まる樹に「それで? だから?」と否定を重ねる。樹の家には父がいない。ことはは「答えなくていいです」と止め、家族のことや尊敬する人物のように、本人に責任のない事や本来自由であるべき事は、厚生労働省が採用選考で把握しないよう求めている事を示す。柚木も、今月から就活生へのセクハラを防ぐ手だてが会社の義務になったと続ける。「昔はみんな聞いた」と怒る岩城に、ことはは、家を見ても日下部さんは分からない、分かるのは彼が何をしてきたかだと返し、樹の話を聞き直す。2人は最終面接へ進む。その夜、ことはの体の九条は、最終面接の後の、社員との食事会で「彼氏いるの?」と聞かれ、笑って流すしかなかったと打ち明ける。翌日、ことはは社長室に呼ばれる。社長の雛森は言った。「あなた、九条くんじゃないわね」。 ## 登場人物 - **早瀬 ことは**:主人公。九条の体に入っている。 - **九条 透**:採用課長。ことはの体に入っている。 - **岩城 剛**:営業部長。二次面接の面接官。 - **柚木 まどか**:人事部 採用担当。 - **若宮 さくら**:応募者。栄養学科4年。 - **日下部 樹**:応募者。理工学部4年。 - **雛森 千代**:くるみ座製菓の社長。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の面接の部屋。長い机に面接官の席が二つ、向かいに応募者の椅子が一つ。窓から光。) > 二次面接の日。 **柚木 まどか**:「今日は若宮さんと日下部さんです面接官は岩城部長と課長ですね!」 (絵:ポニーテールの快活な女子学生が、背筋を伸ばして一礼している。) [人物の紹介] > 応募者・栄養学科4年 > 若宮 さくら **岩城 剛**:「若宮さん。女の子だと結婚したら辞めちゃうでしょう?続けるつもりはあるの?」 (絵:さくらの顔の大写し。笑顔のまま、口元がこわばっている。) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > 備考:結婚後も続けるか、意思あいまい > ③ 入社後にしたい事:C **早瀬 ことは**(心の声):(え……そんな事を評価に書くの!?) **早瀬 ことは**:「い、岩城部長その質問はしません」 (絵:岩城が椅子ごと振り向き、眉をつり上げて、眼鏡の男をにらみつける。) **岩城 剛**:「何だと?」 [窓] > 採用面接で、結婚の予定や、 > 子どもが生まれた後も働き続けるかを、 > 女性にだけ聞く事は、 > 男女雇用機会均等法の指針で禁じられています。 > **ℹ 女性にだけ結婚・出産の予定を聞く質問**(現実の事実):男女雇用機会均等法は、募集・採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えるよう事業主に求めています。この法律にもとづく厚生労働省の指針は、採用面接で結婚の予定の有無や、子どもが生まれた場合に働き続ける希望の有無などを、女性に対してだけ質問することを、禁じられる措置の例に挙げています。 > - 問:男性にも同じ事を聞けばいい? 答:指針が例に挙げているのは「女性に対してのみ」聞くことです。ただ、結婚や家族の予定は、仕事に必要な適性・能力とは関係のない事柄で、厚生労働省は面接の質問を、仕事に必要な適性・能力を評価するための事に限るよう求めています。 > - 問:聞かれたら、どうすればいい? 答:答えたくない時は、仕事に関係する質問かどうかを確かめたり、学校の就職課や労働局の窓口に相談したりできます。 > - 出典:[厚生労働省「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号、最終改正 平成27年厚生労働省告示第458号)](https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000363855.pdf) > - 出典:[厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考の具体的な方法」(7 面接)](https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html) **岩城 剛**:「ちっ。男にも聞けばいいんだろう」 **早瀬 ことは**:「いえ。仕事の力と関係ない事は誰にも聞きません」 **早瀬 ことは**:「……それと。彼女の③、今、Cにしましたよね」 **岩城 剛**:「なっ……なぜ、それを!?」 **早瀬 ことは**:「若宮さん。入社したら何をしたいですか?」 **若宮 さくら**:「あ、はい!実習先の病院で甘い物を我慢してる患者さんをたくさん見たんです」 (絵:さくらが顔を上げ、身ぶりを交えて、生き生きと話しはじめる。) **若宮 さくら**:「糖を控えてもちゃんとおいしいお菓子を」 **若宮 さくら**:「御社の試作室で作りたいです!」 [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > ③ 入社後にしたい事:C → B > 「糖を控えた菓子。病院の実習で見た事から」 (絵:応募者の椅子の日下部樹に、岩城が机に肘をついて身を乗り出している。樹の額に汗。) **岩城 剛**:「おい、日下部くん」 **岩城 剛**:「お父さんは何の仕事をしてるんだ?」 **日下部 樹**:「え……父は、その……」 (絵:膝の上で固く握られた、震える両手。) (絵:回想。夜の小さな台所のテーブルで、宿題をする子どもの樹の横で、仕事着のままの母がうたた寝をしている。) **日下部 樹**(心の声):(うちは……父がいない) (絵:机に身を乗り出し、樹をにらむ岩城の顔の寄り。) **岩城 剛**:「じゃあ!尊敬する人は?それで?だから?」 > わざと否定を重ねて、応募者を追い詰める。圧迫面接と呼ばれるやり方。 > **ℹ 圧迫面接(あっぱくめんせつ)**(現実の事実):わざと高圧的な態度をとったり、否定を重ねたりして応募者の反応を見る面接を指す言葉です。法令で定められた言葉ではありませんが、質問や言動の中身によっては、法令や国の指針に反します。 > - 問:圧迫面接そのものは違法? 答:「圧迫面接」を直接禁じる法令の条文は、確かめた範囲では見つかりませんでした。ただ、女性にだけ結婚の予定を聞くこと(均等法の指針で禁止)や、求職者への性的な言動(2026年10月1日から事業主に防止の措置の義務)のように、中身によっては決まりに反します。 > - 問:厚生労働省は面接の態度について何と言っている? 答:厚生労働省の特設サイトは、面接は応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨むよう求めています。 > - 出典:[厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考の具体的な方法」(7 面接)](https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html) **早瀬 ことは**:「日下部さん答えなくていいですよ」 [窓] > 家族の仕事・学歴・収入など、本人に責任のない事や、 > 尊敬する人物・愛読書など、本来自由であるべき事は、 > 採用選考で聞かないよう、厚生労働省が求めています。 > (就職差別につながるおそれのある14の事項) > **ℹ 採用選考(さいようせんこう)で配慮(はいりょ)すべき14の事項**(現実の事実):厚生労働省が、把握すると就職差別につながるおそれがあるとして、応募書類や面接で扱わないよう求めている事項です。本人に責任のない事(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境)、本来自由であるべき事(宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合・社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書)、採用選考の方法(身元調査、仕事に関係ない事項を含む応募書類、必要性の認められない健康診断)の14です。 > - 問:なぜ家族のことを聞いてはいけない? 答:家族の職業や収入などは本人の責任ではなく、仕事の適性・能力とも関係がないためです。厚労省の特設サイトは、面接の中で家族のことを尋ねる事案が大変多く見られると注意しています。 > - 問:応募者の個人情報について、法律の決まりはある? 答:職業安定法第5条の5は、求人者などが求職者の個人情報を集める時、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集めるよう定めています(本人の同意などがある場合を除く)。 > - 出典:[厚生労働省「公正な採用選考の基本」(採用選考時に配慮すべき事項)](https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm) > - 出典:[職業安定法 第5条の5(e-Gov 法令検索)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141) **柚木 まどか**:「あの、部長……今月から就活生へのセクハラを」 **柚木 まどか**:「防ぐ手だてを取るのも会社の義務になったんです」 > **ℹ 就活(しゅうかつ)セクハラの防止の義務**(現実の事実):2026年10月1日から、事業主は、雇っている労働者の性的な言動によって求職者などの就職活動が妨げられないよう、雇用管理上の措置を取ることが義務になりました。方針をはっきりさせて社内に知らせる、相談の体制をつくる、起きた時に早く適切に対応する、などです。 > - 問:何の法律で決まった? 答:2025年に成立した労働施策総合推進法等の改正(令和7年法律第63号)によるもので、厚生労働省は2026年2月26日に指針(令和8年厚生労働省告示第52号)を出しています。 > - 出典:[厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html) > - 出典:[厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)](https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662589.pdf) (絵:眉をつり上げて振り向く岩城の寄り。) **岩城 剛**:「昔はみんな聞いた!」 **岩城 剛**:「家を見りゃ人が分かる!」 **早瀬 ことは**:「でも、家を見ても日下部さんは分かりません」 **早瀬 ことは**:「分かるのは日下部さんが何をしてきたかだけです」 **早瀬 ことは**:「日下部さん。模擬店で雨の予報が外れた日はどうしました?」 **日下部 樹**:「あ……えっと、隣の焼きそば屋さんと前の日に約束しておきました」 **日下部 樹**:「足りなくなったら材料を分けてもらう、と」 (絵:樹が紙にペンで簡単な図を描きながら、落ち着きを取り戻して説明している。) (絵:岩城の太い指のペンが、紙の上の記号を書き直している。) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > ② 自分で動いた事実:B → A > 「外れた時の手も、先に打っていた」 (絵:夕方の会議室。ホワイトボードに二枚の名前の札。岩城が腕を組み、ふてくされた顔で座っている。) [作中の画面] > 二次面接 合否会議 > 若宮 さくら 最終面接へ > 日下部 樹  最終面接へ **岩城 剛**:「……おい、九条お前いつからそんな事を言うようになった?」 (絵:岩城が横目で、眼鏡の男をじろりと見ている。) **岩城 剛**:「去年まではお前が一番黙って書いてたろう」 **早瀬 ことは**(心の声):(え……九条さんは黙ってた……?) **九条 透**:「最終面接の後の食事会で社員に聞かれた「彼氏いるの?」と」 (絵:夜の公園のベンチ。リクルートスーツの小柄な女子学生(中身は九条)が、缶コーヒーを手に、疲れた顔で座っている。) **九条 透**:「……受ける側は断れないんだな笑って流すしかない……」 (絵:缶コーヒーを両手で包む、小さな手。指先が少し震えている。) **早瀬 ことは**:「九条さん……それ、今月から会社が防がなきゃいけない事ですよ」 **九条 透**:「知っている。俺は人事だ」 **九条 透**:「……知っていても言えなかった」 (絵:翌朝の社長室。木の机、急須と湯のみ、大きな窓。壁にくるみの実を描いた額。) **雛森 千代**:「ふふ……岩城くんから聞いたわ昨日の二次面接のこと」 (絵:白髪のショートカットに羽織姿の雛森社長が、椅子に深く座り、湯のみを手にこちらを見ている。) **雛森 千代**:「九条くんは10年、面接で一度も人の質問を止めなかった」 (絵:雛森社長の顔の大写し。目を細め、口元にかすかな笑み。) **雛森 千代**:「九条くん。……あなた、九条くんじゃないわね」 (絵:見開いた目だけの大写し。眼鏡の奥で瞳が揺れている。) ## この話で分かること ### 圧迫面接とは? 違法なの? 圧迫面接は、わざと高圧的な態度をとったり否定を重ねたりして、応募者の反応を見る面接を指す言葉で、法令で定められた言葉ではありません。ただ、質問や言動の中身によっては、法令や国の指針に反します。たとえば、採用面接で結婚の予定や子どもが生まれた後も働き続けるかを女性にだけ聞くことは、男女雇用機会均等法にもとづく指針で禁じられています。 ### 面接で聞いてはいけない質問は? 厚生労働省は、本籍・出生地、家族のこと(職業・続柄・健康・学歴・収入など)、住宅の状況、生活環境・家庭環境といった本人に責任のない事と、宗教、支持政党、人生観、尊敬する人物、思想、労働組合や社会運動、購読新聞・愛読書といった本来自由であるべき事を、採用選考で把握しないよう求めています。把握すると就職差別につながるおそれがあるためです。 ### 就活セクハラの防止は、会社の義務になった? なりました。2026年10月1日から、事業主は、雇っている労働者の性的な言動によって求職者などの就職活動が妨げられないよう、方針をはっきりさせて知らせる、相談の体制をつくる、起きた時に早く適切に対応する、などの措置を取ることが義務です(改正労働施策総合推進法等、令和7年法律第63号)。 ### 面接で家族のことを聞かれたら、答えなければいけない? 答える義務はありません。厚生労働省は、家族の職業・学歴・収入などは本人に責任のない事として、採用選考で把握しないよう企業に求めています。答えたくない時は、仕事に関係する質問かを確かめたり、学校の就職課・ハローワーク・労働局に相談したりできます。 --- お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第3話「その質問は、しない」 つづく # お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第4話「辞めた理由を聞く理由」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/4-mensetsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜](https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/4-mensetsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 社長室で、雛森は30年前に自分も入れ替わったことを明かす。戻り方は教えない。ただ、戻ったのは2人とも本当の事を口にした日だった、とだけ言い、ことはに九条の代わりに中途の面接に出るよう命じる。面接の前、ことははことはの体の九条に電話で聞く。面接官は退職理由で何を見ているのか。九条の答えは、同じ理由でまたすぐ辞めないか、次に何をしたいか、人のせいだけにせず話せるか、の3つだった。応募者は飲料メーカーの営業だった瀬名拓真。退職理由を「キャリアアップのためです」と言い、〈評価票〉の窓には岩城の「抽象的。同じ理由でまた辞めるか不明」が見える。ことはは「辞めると決めた日のことを教えてください」と聞き直す。瀬名は、売上で一番だった年に部下が3人続けて辞め、理由を聞きたいと上司に言うと「数字を出してから言え」と返された、自分も聞けなかった一人だと話す。部下の多い岩城の手が止まり、評価は「退職理由と、うちでしたい事がつながっている」に変わる。その夜、ことはの体の九条には、ことはの第一志望ハナミズキ書房から内定の知らせが届く。九条は「君が決めろ。君の人生だ」と言う。自分で受かったわけではない内定を前に、ことはは答えられない。帰りぎわ、柚木が言う。「早瀬さんの合否会議の録音、課長に言われたとおり、消さずに取ってありますから」。 ## 登場人物 - **早瀬 ことは**:主人公。九条の体に入っている。 - **九条 透**:採用課長。ことはの体に入っている。 - **雛森 千代**:くるみ座製菓の社長。30年前に入れ替わりを経験している。 - **岩城 剛**:営業部長。中途の面接の面接官。 - **瀬名 拓真**:中途の応募者、34歳。飲料メーカーの営業だった。 - **柚木 まどか**:人事部 採用担当。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:社長室。窓ぎわで、雛森社長が背を向けて外を見ている。机の上に湯のみが二つ。) **雛森 千代**:「そんなに驚かなくていいわ30年前、私も入れ替わったの」 (絵:回想。三十年前の古い事務所。紺のベストの制服を着た若い女性が、鏡の前で、自分の顔ではない顔に触れて驚いている。) **早瀬 ことは**:「えっ……社長も!?」 **早瀬 ことは**:「相手は誰だったんですか?どうやって戻ったんですか!?」 **雛森 千代**:「戻り方は、自分たちで見つけなさい」 **雛森 千代**:「一つだけ。戻ったのは2人とも本当の事を口にした日だった」 (絵:雛森社長の横顔の大写し。遠くを見る目が、少しだけやさしい。) **雛森 千代**:「それまでは九条くんの仕事をあなたがするの」 **雛森 千代**:「さっそく今日の中途の面接出なさいね」 > **ℹ 中途採用(ちゅうとさいよう)**(現実の事実):学校を出たばかりの人ではなく、すでに働いた経験のある人を採る事です。新卒の採用とは別に、年の途中でも募集します。面接では、これまでの仕事と、辞めた理由・次にしたい事のつながりがよく聞かれます。 > - 出典:[コトバンク(精選版 日本国語大辞典・ブリタニカ国際大百科事典)「中途採用」](https://kotobank.jp/word/%E4%B8%AD%E9%80%94%E6%8E%A1%E7%94%A8-160664) (絵:昼の大学の学食。トレーの前で、小柄な女子学生(中身は九条)が、落ち着いた顔でスマートフォンを耳に当てている。周りの学生はにぎやか。) **早瀬 ことは**:「あの……中途の面接で退職理由って何を見てるんですか?」 **九条 透**:「3つだ」 [作中の画面] > 九条が退職理由で見る事 > 1 同じ理由で、うちでもすぐ辞めないか > 2 次に何をしたいのか > 3 人のせいだけにせず、事実を話せるか > **ℹ 面接での退職理由(たいしょくりゆう)**(現実の事実):転職の面接でよく聞かれる質問です。会社によって違いますが、面接官は、同じ理由でまたすぐ辞めることにならないか、次の職場で何をしたいか、事実を落ち着いて話せるかを確かめようとしています。仕事に関わる事柄なので、面接で聞いてよい質問です。 > - 問:「キャリアアップのため」だけではだめ? 答:間違いではありませんが、一言だけでは何が起きて、何を求めて辞めるのかが伝わりません。きっかけの事実と、次にしたい事を添えると伝わります。 > - 問:家庭の事情で辞めた時、詳しく話すべき? 答:詳しく話す必要はありません。厚生労働省は、家族のことなど本人に責任のない事を採用選考で把握しないよう求めています。働く上で必要な条件(勤務地や時間など)だけ伝えれば足ります。 > - 出典:[厚生労働省「公正な採用選考の基本」(採用選考時に配慮すべき事項)](https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm) **九条 透**:「退職理由とうちでしたい事が一本の線でつながっているか。それを見る」 **九条 透**:「……それと。君の体で食う学食のカレーはうまいな」 **早瀬 ことは**:「私のお金で大盛りにしないでください!」 (絵:面接の部屋。明るい灰色のスーツに水色のシャツ、ネクタイなしの男性が、落ち着いた笑顔で席についている。) [人物の紹介] > 中途の応募者(元・営業) > 瀬名 拓真 **岩城 剛**:「前の会社を辞めた理由は?」 **瀬名 拓真**:「はい。キャリアアップのためです」 **瀬名 拓真**:「より大きな裁量のある環境で挑戦したくて」 [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > 退職理由:抽象的。同じ理由でまた辞めるか不明 > 総合:C(保留) **早瀬 ことは**(心の声):(あ……この顔何十人も同じ答えを聞いてきた顔だ) **早瀬 ことは**:「瀬名さん。辞めると決めた日のことを教えてもらえますか?」 **瀬名 拓真**:「……それは。売上で部署で一番だった年です」 (絵:瀬名の笑顔がふっと消え、目を伏せる。膝の上で指を組み直している。) (絵:回想。夜の営業所。机の上に積まれた三通の封筒。若い社員たちが頭を下げて出ていく後ろ姿。) **瀬名 拓真**:「その年、私の下の3人が続けて辞めたんです」 (絵:回想。大きな数字のグラフが貼られた壁の前で、上司の男が背を向けたまま、手で追い払うようなしぐさをしている。) **瀬名の上司**:「辞める理由を聞く暇があったら」 **瀬名の上司**:「数字を出してから言え!」 **瀬名 拓真**:「私も……聞けなかった一人です」 **瀬名 拓真**:「数字が出ていたからそれでいいと思ってた」 **瀬名 拓真**:「だから次は売る前に人の話を聞ける営業部で働きたいんです」 (絵:岩城の太い手が、ペンを持ったまま止まっている。手首の金の腕時計。) (絵:回想。営業部のフロア。岩城の机の前で、若い社員が頭を下げ、封筒を差し出している。岩城は腕を組んで目をそらしている。) **岩城 剛**(心の声):(……うちの部も今年、2人辞めた……) [窓] > 〈評価票〉岩城 剛 の手元 > 退職理由:辞めた日の事実を、人のせいだけにせず話した > 退職理由と、うちでしたい事がつながっている > 総合:C → A > 辞めた理由を聞くのは、責めるためじゃない。次の場所で続けられるかを、確かめるためだった。 (絵:面接の後の廊下。岩城が窓の外を見ながら、眼鏡の男に背中で話しかけている。) **岩城 剛**:「おい、九条。あいつ、うちの部でもらうぞ」 **岩城 剛**:「……辞めた2人に理由を聞いておくべきだったな」 (絵:夜。ことはの小さなアパートの部屋。灰色のパーカーの女子学生(中身は九条)が、床に座って手紙の封筒を見せるように持ち、スマートフォンのビデオ通話の画面に向けている。) [作中の画面] > ハナミズキ書房 人事部 > 早瀬 ことは 様 内定のご連絡 > ご承諾のお返事は、今週金曜日までにお願いいたします。 **九条 透**:「君の第一志望だろう」 **九条 透**:「君が決めろ。君の人生だ」 **九条 透**:「この前は勝手な事を言った……すまなかった」 (絵:九条の暗い部屋。ビデオ通話のスマートフォンを両手で持ち、眼鏡の男(中身はことは)がうつむいている。) **早瀬 ことは**(心の声):(でも……その内定、受かったのは私じゃない) **早瀬 ことは**(心の声):(私の言葉で、九条さんが受かった。それを、私が受けていいの?) **九条 透**:「金曜まで、考えればいい。俺は、待つ」 (絵:スマートフォンの画面越しに、女子学生(中身は九条)が静かにこちらを見つめている。) **柚木 まどか**:「あ、課長〜!」 (絵:夜の人事部。帰り支度の柚木が、コートを羽織りながら、思い出したように振り返る。) **柚木 まどか**:「そういえば早瀬さんの合否会議の録音」 **柚木 まどか**:「課長に言われたとおり、消さずに取ってありますから」 (絵:見開いた目だけの大写し。眼鏡の奥で、瞳が小さく揺れている。) **早瀬 ことは**(心の声):(録音……?あの会議の!?) > 消された理由が、残っている。 ## この話で分かること ### 面接で退職理由を聞かれるのはなぜ? 会社によって違いますが、面接官は退職理由から、同じ理由でまたすぐ辞めることにならないか、次の職場で何をしたいのか、前の職場や人のせいだけにせず事実を話せるか、を確かめようとしています。退職理由は仕事に関わる事柄なので、面接で聞いてよい質問です。 ### 退職理由は、どう答えればいい? 「キャリアアップ」「成長したい」のような一言だけでは、何が起きて、何を求めて辞めるのかが伝わりません。辞めると決めたきっかけの事実を短く話し、そこから次の職場で何をしたいかにつなげると、退職理由と志望の理由が一本の話になります。 ### 退職理由は、面接でどこまで聞かれる? 退職理由は仕事に関わる事なので、面接で聞かれる質問です。ただ、厚生労働省は、家族のことなど本人に責任のない事を採用選考で把握しないよう求めており、職業安定法も、応募者の個人情報は業務の目的に必要な範囲で、目的をはっきりさせて集めるよう定めています。家庭の事情で辞めた時は、詳しく話さず、働く上で必要な条件だけ伝えれば足ります。 --- お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第4話「辞めた理由を聞く理由」 つづく # お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第5話「結果は、まだ来ない」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/5-mensetsu/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜](https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/) - 作者:人事のすみ - クレジット:原作・脚本:人事のすみ/作画:人事のすみ/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/jinji-sumi/mensetsu/manga/5-mensetsu/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 日下部樹とライバルの応募者が最終面接に臨む。社長の雛森の「うちでなければ、だめな理由は?」に、樹は、工場で雨の日に売れ残る生菓子の数を、売上の記録から減らしたいと答える。合否会議で、若宮さくらは試作室の枠で内定に決まる。だが生産管理の枠は1人で、先に内定を出したライバルの返事を待っている。樹は「保留」になった。〈評価票〉の窓に見える「保留」の二文字に、ことはは、結果を待ってスマートフォンを握りしめていた自分を思い出す。電話で九条は、結果が遅れるのは、合否会議の日程やほかの応募者の返事待ちなど、本人の出来と関係ない事情が多いと話す。ことはは柚木に頼み、樹に「金曜までに必ず連絡します」と伝えてもらう。九条も、ことはと相談して、ハナミズキ書房に返事を1日待ってもらうよう頼む。待たせる側が日付を言うだけで、待つ側の夜は少し変わる。金曜の朝、ライバルが内定を辞退する。だが雛森は言う。「日下部くんは、まだ決めない。先週落とした早瀬ことはさんを、もう一度呼びなさい」。空いた1人分を、樹と、九条が入ったことはの体が争うことになる。 ## 登場人物 - **早瀬 ことは**:主人公。九条の体に入っている。 - **九条 透**:採用課長。ことはの体に入っている。 - **雛森 千代**:くるみ座製菓の社長。 - **岩城 剛**:営業部長。 - **柚木 まどか**:人事部 採用担当。 - **日下部 樹**:応募者。理工学部4年。最終面接に進んだ。 - **若宮 さくら**:応募者。栄養学科4年。最終面接に進んだ。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:最終面接の控え室。リクルートスーツの日下部樹、若宮さくら、眼鏡をかけた自信ありげな男子学生の三人が、少し離れて座っている。) > 最終面接の日。 (絵:社長室の隣の面接の部屋。雛森社長を真ん中に、岩城と眼鏡の男(中身はことは)が並んで座っている。向かいの椅子に樹。) **雛森 千代**:「日下部さん。うちでなければだめな理由は?」 (絵:樹が両手を膝に置いたまま、まっすぐ前を見て話している。前より背筋が伸びている。) **日下部 樹**:「はい。工場見学で雨の日の生菓子が捨てられるのを見ました」 **日下部 樹**:「模擬店で売上の記録から仕入れを決めたやり方で」 **日下部 樹**:「あの数を減らしたいんです」 **日下部 樹**:「日持ちしないお菓子を作っている御社で」 [窓] > 〈評価票〉雛森 千代 の手元 > ③ 入社後にしたい事:A > 「うちの工場で見た事と、自分のやり方がつながっている」 **早瀬 ことは**(心の声):(うそ……社長がAを書いた!) (絵:夕方の会議室。ホワイトボードに三枚の名前の札と、枠の数を示す小さな丸。雛森、岩城、柚木、眼鏡の男が囲んでいる。) [作中の画面] > 最終面接 合否会議 > 試作室 枠 1:若宮 さくら 内定 > 生産管理 枠 1:先週、別の応募者に内定を出し、返事待ち > 日下部 樹:保留 **岩城 剛**:「若宮は決まりだな」 **岩城 剛**:「日下部は……うーん、枠が無い」 **柚木 まどか**:「えっと、先に内定を出した方のお返事の期限が金曜なんですそれまで日下部さんは保留ですね」 (絵:雛森の細い手が、紙の評価票の上に、小さく二文字を書き込んでいる(文字は読めない)。) [窓] > 〈評価票〉雛森 千代 の手元 > 総合:保留 (絵:回想。夜の部屋で、パーカー姿のことはが、布団の上でスマートフォンを両手で握り、何度も画面を確かめている。) **早瀬 ことは**(心の声):(私も……こうやって待たされてた) **早瀬 ことは**(心の声):(連絡が来ない夜はずっと自分の何が悪かったのか考えてた……) (絵:夜の会社の屋上。手すりにもたれて、眼鏡の男(中身はことは)がスマートフォンで話している。遠くに街の灯り。) **九条 透**:「結果が遅いのはたいてい本人の出来とは関係ない」 **早瀬 ことは**:「え……そうなの?」 [作中の画面] > 結果が遅れる、よくある事情 > ・合否会議の日が、まだ来ていない > ・ほかの応募者の面接が、まだ終わっていない > ・先に内定を出した人の、返事を待っている > ・社内の決裁に、時間がかかっている > **ℹ 面接の結果が来ない理由**(現実の事実):会社によって違いますが、合否会議の日程、ほかの応募者の面接、先に内定を出した人の返事、社内の決裁などを待っているために、結果の連絡が遅れることがあります。結果が遅いことが、そのまま不合格の合図とは限りません。 > - 問:いつまで待てばいい? 答:面接の時に伝えられた日を目安にします。伝えられていなければ、面接の最後にこちらから聞いてかまいません。 > - 問:問い合わせてもいい? 答:伝えられた日を過ぎても連絡が無い時は、応募先の採用の担当に、いつ頃連絡がもらえるかを問い合わせても失礼にはあたりません。 > **ℹ 決裁(けっさい)**(現実の事実):権限を持つ上の立場の人が、部下の出した案を認めるかどうかを決める事です。採用でも、面接で決めた合否や条件を、社長や役員が決裁してから知らせる会社があります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「決裁」](https://kotobank.jp/word/%E6%B1%BA%E8%A3%81-490505) **九条 透**:「……俺も、日付を言わずに待たせた事が、何度もある」 **九条 透**:「君の体で待つ側になって初めて分かった……あの夜は、長いな」 (絵:眼鏡の男(中身はことは)の横顔の大写し。夜風に髪が揺れ、何かを決めた目をしている。) (絵:翌朝の人事部。眼鏡の男が柚木の机に身を乗り出して頼みごとをしている。柚木は受話器を手に、目を丸くしている。) **早瀬 ことは**:「柚木さん!日下部さんに電話してください」 **早瀬 ことは**:「「金曜までに必ず連絡します」って」 **柚木 まどか**:「えっ、保留の方にわざわざですか?」 **早瀬 ことは**:「日付が分かるだけで待つ夜が少し短くなるんです」 (絵:大学の研究室の廊下で、樹がスマートフォンを耳に当て、ほっとしたように壁にもたれて目を閉じている。) **日下部 樹**:「……あ、ありがとうございます!」 **日下部 樹**:「金曜まで待ちます」 **九条 透**:「お返事を1日だけ待っていただけませんか」 **九条 透**:「本人が自分で決めたいと言っているので」 (絵:出版社のビルの受付の前で、リクルートスーツの女子学生(中身は九条)が、受付の電話の受話器を持って丁寧に頭を下げている。) **早瀬 ことは**(心の声):(……本人って私のことだよね) > 待たせる側も、待つ側も。日付を一つ言うだけで、夜の長さが変わる。 (絵:金曜の朝の人事部。柚木が受話器を置き、驚いた顔で立ち上がっている。) **柚木 まどか**:「課長〜!」 **柚木 まどか**:「生産管理の内定の方辞退ですって!」 **早瀬 ことは**:「じゃあ!日下部さんが――!」 **雛森 千代**:「待ちなさい。日下部くんはまだ決めない」 (絵:人事部の入口に、羽織姿の雛森社長が立っている。部屋の空気が静まり、社員たちが振り向く。) **雛森 千代**:「空いた1人分。先週落とした早瀬ことはさんをもう一度呼びなさい」 (絵:雛森社長の顔の大写し。口元に笑みを浮かべ、まっすぐ眼鏡の男を見ている。) (絵:眼鏡の男(中身はことは)が、驚きのあまり体をのけぞらせ、手に持った書類を床に落としている。紙が舞う。「バサッ」の描き文字。) **早瀬 ことは**(心の声):(えっ……私を!?) **早瀬 ことは**(心の声):(今、私の体には九条さんが入ってるのに!?) (絵:出版社のビルの前の歩道で、女子学生(中身は九条)がスマートフォンの画面を見て、目を見開いて立ち止まっている。) > 空いた席は、1つ。日下部さんと、九条さんが入った私の体が、それを争う。 ## この話で分かること ### 面接の結果が来ないのはなぜ? 会社によって違いますが、合否会議の日程を待っている、ほかの応募者の面接が終わるのを待っている、先に内定を出した人の返事を待っている、社内の決裁に時間がかかっている、などの事情で遅れることがあります。結果が遅いことが、そのまま不合格の合図とは限りません。 ### 最終面接の結果はいつ来る? 決まった日数はなく、会社ごとに違います。面接の最後に連絡の時期を伝える会社も多いので、伝えられなかった時は、こちらから聞いてかまいません。 ### 内定の返事の期限は、延ばしてもらえる? 会社に相談することはできます。延ばすかどうかは会社が決めますが、ほかの会社の結果を待っている、家族と相談したいなど、理由と、いつまでに返事ができるかをはっきり伝えると、相談に乗ってもらえることがあります。 --- お祈りの裏側 〜面接官になった就活生は、落ちた理由を知りたい〜 第5話「結果は、まだ来ない」 つづく # 否決の理由は、教えられません 第1話「ご希望に添いかねる結果となりました」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/1-shinsa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[否決の理由は、教えられません](https://tooneru.com/kotowari/shinsa/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/1-shinsa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 金曜の18時02分、森岡葵と慎吾の夫妻に、ときわ野銀行から住宅ローンの本審査の結果が届く。「ご希望に添いかねる結果となりました」。理由は書いていない。――その28時間前の木曜13時50分。本部の審査部の審査役・三輪朔の机に、駅前支店の小日向陸から夫妻の稟議書が回ってくる。期限は金曜の17時。事前審査は通っていた。三輪は審査項目を一つずつ見る。年齢・年収・健康・物件、夫の勤続10か月。返済負担率は約21.9%で、数字は通る。同じ夜、夫妻は新しい部屋の窓の寸法を測り、カーテンの布を選んでいる。夕方、保証会社から照会の結果が戻る。夫の欄に「異動 1件」。 ## 登場人物 - **三輪 朔**:主人公。38歳、ときわ野銀行 審査部の住宅ローンの審査役。申込みの人には会わず、稟議書と記録だけで人を見る。口ぐせは「書類は、嘘はつかない。黙るだけ」。 - **小日向 陸**:27歳、ときわ野銀行 駅前支店 融資課の担当。森岡夫妻の申込みを受けて稟議書を書き、夫妻を通したくて審査部に電話をかけてくる。 - **森岡 葵**:31歳、歯科衛生士(同じ医院で正社員9年)。夫と収入を合わせて住宅ローンを申し込み、中古マンションの2LDKを決めた。 - **森岡 慎吾**:33歳、自転車店の整備士。去年の12月に物流会社から転職し、勤続10か月。お金の話は妻に任せがち。 - **能勢 総一**:54歳、ときわ野銀行 審査部の次長。三輪の稟議を決める人。言葉は少なく、数字で話す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の賃貸の部屋の台所。テーブルの横に立ったまま、スマホの画面を見つめる女性。うしろに、上着を脱ぎかけた背の高い男性がぼんやり見える。) > 金曜 18時02分 [作中の画面] > ときわ野銀行 駅前支店 > 住宅ローン 本審査の結果のお知らせ > 慎重に審査いたしました結果、誠に残念ながら、ご希望に添いかねる結果となりました。 **森岡 葵**:「うそ……落ちた……」 (絵:台所の入口で、脱ぎかけた上着の袖に片腕を残したまま立ち止まる背の高いひげの男性。手前の女性の肩と髪がぼけて入る。) **森岡 慎吾**:「……葵?」 (絵:スマホを両手で持つ女性の手。親指が画面の上で止まっている。) **森岡 葵**:「え、理由は……?」 **森岡 葵**:「書いてないの?」 [作中の画面] > なお、審査の内容についてのお問い合わせには、お答えいたしかねます。 > 木曜 13時50分――28時間前。 (絵:曇りの午後の東京。高いビルの窓の外に、低い屋根の続く街。窓の内側にブラインド、その下に机の列が並ぶ静かな事務所。列の真ん中の机で、背の高い女性が書類の束を受け取る。) > ときわ野銀行、本部の審査部。 > ここに来る書類は、すべて誰かの暮らしだ。 (絵:机で青い紙の挟みを開く女性。黒髪のボブを左の耳にかけ、細い四角い眼鏡。左の人差し指に若苗色の付箋を一枚貼っている。うしろの事務所はぼけている。) [人物の紹介] > ときわ野銀行 審査部 住宅ローンの審査役 > 三輪 朔 (絵:正面から見た審査部の机の列。左右対称に並ぶ机と、窓のブラインド。ほとんどの人は顔の見えない後ろ姿で、真ん中の机にだけピントが合っている。) > 審査役の仕事は、会わない人を、書類で見ることだ。 (絵:審査部の机で、受話器を肩にはさみ、書類から目を上げない女性。) **小日向 陸**:「三輪さん!森岡さんの件明日17時までですよね!」 (絵:支店の窓口の奥で、受話器を握って身を乗り出す丸顔の若い男性。机に分厚い手帳。) [人物の紹介] > ときわ野銀行 駅前支店 融資課 > 小日向 陸 **三輪 朔**:「分かってる書いてある」 **小日向 陸**:「事前審査は通ってますほんとにいい夫婦で!」 **三輪 朔**:「あのねいい人かは審査の項目にないの」 [窓] > 〈稟議書〉 > 申込人:森岡 慎吾・森岡 葵(収入合算) > 物件:中古マンション 2LDK(築18年) > 借入れの希望:3,980万円・35年 > 事前審査:承認(9月24日) > **ℹ 稟議書(りんぎしょ)**(現実の事実):会議を開かずに、担当の人が案を書いて関係する人に回し、承認をもらうための書類です。銀行の融資では、申込みの中身と審査で見た事をまとめ、承認するかを決める人へ回します。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「稟議」](https://kotobank.jp/word/%E7%A8%9F%E8%AD%B0-614557) > - 出典:[コトバンク(精選版 日本国語大辞典)「稟議書」](https://kotobank.jp/word/%E7%A8%9F%E8%AD%B0%E6%9B%B8-2092979) (絵:真上から見た机。開いた稟議書、源泉徴収票、健康の告知の紙、マンションの間取りの図、数枚の若苗色の付箋、ボールペン。文字は読めない線だけ。) [窓] > 〈審査項目〉 > 完済時年齢 68歳 > 借入時年齢 33歳 > 年収(2人の合算) 740万円 > 勤続年数 夫 10か月/妻 9年 > 健康状態 団信の告知 ― 2人とも「なし」 > 担保評価 保証会社が照会中 > 返済負担率 計算中 > 信用情報 保証会社が照会中 > **ℹ 住宅ローンの審査項目(しんさこうもく)**(現実の事実):国土交通省の令和7年度の調査では、住宅ローンを扱う金融機関の9割以上が、完済時年齢(98.4%)・借入時年齢(96.2%)・健康状態(96.1%)・年収(94.2%)・勤続年数(93.9%)・担保評価(91.0%)・返済負担率(90.9%)を審査で見ています。カードローンなどほかの借入れの状況や返済の履歴を見る所も72.5%ありました。 > - 問:完済時年齢は何歳までが多い? 答:同じ調査で、完済時年齢の条件は「80歳未満」と答えた機関が一番多くありました(具体的な内容の複数回答)。 > - 問:審査の基準はどこでも同じ? 答:同じではありません。項目も基準の値も金融機関ごとに違い、同じ人でも通る所と通らない所があります。 > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) **三輪 朔**(心の声):(勤続10か月……短いな) (絵:書類に目を落とす女性の横顔の寄り。ペンの先を紙の一か所に当てたまま止めている。うしろの窓の光がぼけている。) **三輪 朔**:「それに団信の告知が2人とも「なし」……」 > **ℹ 団体信用生命保険(だんたいしんようせいめいほけん)(団信)**(現実の事実):住宅ローンを借りた人が亡くなったり所定の身体障害の状態になったりした時に、保険金で残りのローンが返される生命保険です。国土交通省の令和7年度の調査では、審査で健康状態を見る955機関のうち866機関が「団信の加入が必要」と答えていて、申込みの時に健康状態を告知します。 > - 問:健康に不安があると落ちる? 答:告知の内容によっては団信に入れず、団信の加入が必要な住宅ローンは借りられない事があります。同じ調査で「団信の加入は選択可能」と答えた機関は88ありました。 > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) > - 出典:[住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」](https://www.flat35.com/danshin_menu/shin-danshin/index.html) > 同じ木曜の夜。 (絵:夜の審査部。ほとんどの席が空いた中、机のスタンドの明かりの下で書類を読む女性。) [人物の紹介] > 申込人(自転車店の整備士) > 森岡 慎吾 (絵:夜の賃貸の部屋の食卓。間取りの図に巻き尺を当てる小柄な女性と、カーテンの布の見本を広げて見せる背の高い男性。) [人物の紹介] > 申込人(歯科衛生士) > 森岡 葵 **森岡 葵**:「窓は178センチ!カーテンもう頼もうよ」 **森岡 慎吾**:「まあ待てって結果まだだろ」 **森岡 葵**:「事前審査通ったんだよ?」 (絵:夜の賃貸の部屋の窓ぎわ。間取りの図を胸に抱えて、外の住宅街の灯りを見る小柄な女性。うしろのソファで背の高い男性が笑っている。) **森岡 葵**:「ねえねえ小学校まで歩いて7分!」 **森岡 慎吾**:「それ今日だけで3回目だぞ」 **森岡 葵**:「4回目でーす」 (絵:机の上の電卓を叩く女性の手と、パソコンの画面の青白い光。若苗色の付箋が画面の縁に並んでいる。) [作中の画面] > 返済の計算(審査部) > 借入れ 3,980万円・35年・変動金利 年0.9%(仮) > 毎月の返済 約11万500円(年 約133万円) > ほかの借入れ 車のローン 月2万4,000円(年 約29万円) > 返済負担率 (133+29)÷ 740 = 約21.9% > **ℹ 返済負担率(へんさいふたんりつ)**(現実の事実):年収に占める、1年に返すすべての借入れの合計の割合です。住宅ローンだけでなく、車のローン・カードローン・クレジットカードの分割払いやリボ払いの返済も足します。住宅金融支援機構のフラット35 は、年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下を基準にしています。 > - 問:ほかの銀行の基準は? 答:金融機関ごとに違います。国土交通省の令和7年度の調査では、返済負担率を審査で見る機関が90.9%あり、年収にかかわらず一律に決めている所では「40%以内」「35%以内」「30%以内」などの答えがありました。 > - 出典:[住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」](https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/conditions/index.html) > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) > **ℹ 変動金利(へんどうきんり)**(現実の事実):借りている間に、世の中の金利の動きに合わせて見直される金利です。住宅ローンでは、金利が上がると返す額が増える事があります。借りた時の金利が最後まで変わらない形は「固定金利」と呼びます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「変動金利」](https://kotobank.jp/word/%E5%A4%89%E5%8B%95%E9%87%91%E5%88%A9-159862) **三輪 朔**:「うん数字は通る」 > でも審査役は、数字の外も見る。 (絵:机の列の通路を通りかかり、足を止めて振り返る小柄で痩せた年配の男性。白髪まじりの七三、濃紺の三つ揃い、胸のポケットに老眼鏡。手前に座る女性の肩がぼけて入る。) [人物の紹介] > ときわ野銀行 審査部 次長 > 能勢 総一 **能勢 総一**:「森岡の件か保証会社の照会は」 **三輪 朔**:「あ、はい夕方には戻ります」 (絵:夕方の審査部。ブラインドの隙間から低い西日の帯が机に差し、パソコンの画面に知らせが一つ出る。人の姿は無い。) (絵:眼鏡の奥の目の細い帯の寄り。レンズに画面の光が四角く映っている。) (絵:パソコンの画面の前で、手を止めて画面を見つめる女性。夕方の暗くなりかけた事務所。) [作中の画面] > ときわ野保証 照会の結果 > 森岡 葵 異動なし > 森岡 慎吾 異動 1件 > **ℹ 信用情報(しんようじょうほう)の「異動(いどう)」**(現実の事実):クレジットやローンの支払いの記録の中で、延滞・保証の履行(保証会社などが代わりに払った事)・破産があった事を示す印です。信用情報機関の CIC は、契約の内容と支払いの状況の中に「異動(延滞・保証履行・破産)の有無」「異動発生日」「延滞解消日」を記録しています。 > - 問:異動があると住宅ローンは通らない? 答:一律の決まりはありませんが、審査ではほかの借入れの状況や返済の履歴を見る金融機関が多く(国土交通省の令和7年度の調査で72.5%)、延滞などの記録は審査に影響します。 > - 出典:[CIC「CICが保有する信用情報」](https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/) (絵:机の電話の受話器に手を置いたまま、持ち上げずに止まる審査役の女性の手の寄り。うしろの画面の光がぼけている。) **三輪 朔**(心の声):(支店に言えば本人に伝わる……) > でも、照会の中身を申込みの人に伝えるのは、審査役の仕事じゃない。 (絵:暮れていく街を背に、窓ぎわに立つ女性。手の中の若苗色の付箋に、何かを書きかけて止まっている。) **三輪 朔**(心の声):(……この人知ってるのかな) ## この話で分かること ### 住宅ローンの審査では何を見る? 国土交通省の令和7年度の調査では、住宅ローンを扱う金融機関の9割以上が、完済時年齢・借入時年齢・健康状態・年収・勤続年数・担保評価・返済負担率を審査で見ています。ほかの借入れの状況や返済の履歴を見る所も72.5%ありました。 ### 返済負担率とは? どう計算する? 年収に占める、1年に返すすべての借入れの合計の割合です。作中では、住宅ローンの年 約133万円と車のローンの年 約29万円を足し、2人の年収の合計 740万円で割って約21.9%になります。 ### 住宅ローンの審査で健康状態を見るのはなぜ? 多くの住宅ローンが、団体信用生命保険(団信)への加入を条件にしているからです。国土交通省の令和7年度の調査では、健康状態を見る955機関のうち866機関が「団信の加入が必要」と答えています。 ### 住宅ローンの完済時年齢は何歳までが多い? 国土交通省の令和7年度の調査では、完済時年齢を審査で見る978機関のうち、条件を「80歳未満」とした機関が732で一番多くありました。「85歳未満」は97、「75歳未満」は44でした(具体的な内容の複数回答)。 --- 否決の理由は、教えられません 第1話「ご希望に添いかねる結果となりました」 つづく # 否決の理由は、教えられません 第2話「勤続十か月」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/2-shinsa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[否決の理由は、教えられません](https://tooneru.com/kotowari/shinsa/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/2-shinsa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 木曜の夜、駅前支店の小日向は審査部の三輪に電話で食い下がる。「異動って、何かの間違いじゃないですか。事前審査は通ったんですよ」。三輪は、事前審査と本審査では見ている物が違うと答え、夫の慎吾の勤続10か月(前の会社には8年)と、妻の葵の9年の勤めを、保証会社の保証と合わせて見る。照会の明細には、申込書に書かれていない葵のスマホの端末の分割払いがあり、返済負担率は約22.5%になるが、通る範囲だった。同じ夜、慎吾は前の家から転送されてきた知らない会社の封筒を、開けずに棚にしまう。21時40分、次長の能勢が稟議書を三輪の机に置く。「異動がある。明日の朝までに、否決で書け」。 ## 登場人物 - **三輪 朔**:主人公。38歳、ときわ野銀行 審査部の住宅ローンの審査役。申込みの人には会わず、稟議書と記録だけで人を見る。口ぐせは「書類は、嘘はつかない。黙るだけ」。 - **小日向 陸**:27歳、ときわ野銀行 駅前支店 融資課の担当。森岡夫妻の申込みを受けて稟議書を書き、夫妻を通したくて審査部に電話をかけてくる。 - **森岡 慎吾**:33歳、自転車店の整備士。去年の12月に物流会社から転職し、勤続10か月。お金の話は妻に任せがち。 - **森岡 葵**:31歳、歯科衛生士(同じ医院で正社員9年)。夫と収入を合わせて住宅ローンを申し込み、中古マンションの2LDKを決めた。 - **能勢 総一**:54歳、ときわ野銀行 審査部の次長。三輪の稟議を決める人。言葉は少なく、数字で話す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:閉店した後の支店の窓口の奥。消えかけた照明の中、立ったまま受話器を耳に当てる丸顔の若い男性。空いた窓口の椅子がぼけて並ぶ。) > 木曜 18時40分 **小日向 陸**:「異動!?」 **小日向 陸**:「何かの間違いですよね!?」 **小日向 陸**:「だって事前審査は通ったのに!」 (絵:受話器を耳から少し離し、目を閉じて息をつく審査役の女性。机の書類の上に付箋が増えている。) **三輪 朔**:「はあ……小日向くん落ち着いて」 **三輪 朔**:「事前審査と本審査は見る物が違うの」 [窓] > 〈ときわ野銀行の審査の流れ〉 > 事前審査:申込書に書いた年収・勤め先・ほかの借入れと、その時の信用情報 > 本審査:源泉徴収票などの書類・勤め先への在籍の確認・団信の告知・物件の担保評価・信用情報(もう一度) > **ℹ 事前審査(じぜんしんさ)と本審査(ほんしんさ)**(現実の事実):事前審査(仮審査)は、申込書に書いた内容をもとに、借りられる見込みを先に確かめる審査です。本審査は、収入の書類や物件の書類を出して、返済の力に加えて健康状態や物件の担保評価まで確かめます。ある銀行の公式の説明では、事前審査は数日から1週間程度、本審査は1〜4週間ほどかかるとしています。 > - 問:仮審査が通ったのに本審査で落ちるのはなぜ? 答:事前審査の後に、転職・退職で勤め方が変わった、新しい借入れをした、延滞の記録が増えた、などがあると本審査で通らない事があります(上の銀行の説明)。 > - 問:審査の流れや期間はどこも同じ? 答:同じではありません。流れも期間も、見る物の細かい所も、金融機関ごとに違います。 > - 出典:[三井住友銀行「住宅ローン審査の流れ」(一つの銀行の説明の例)](https://www.smbc.co.jp/kojin/money-viva/housing_loan/screening-flow/) > **ℹ 源泉徴収票(げんせんちょうしゅうひょう)**(現実の事実):勤め先が、1年に払った給与の額と、給与から差し引いて国に納めた所得税(源泉徴収)の額を書いて渡す書類です(所得税法第226条)。住宅ローンの審査では、年収を確かめる書類として出します。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「源泉徴収」](https://kotobank.jp/word/%E6%BA%90%E6%B3%89%E5%BE%B4%E5%8F%8E-60786) > - 出典:[e-Gov 法令検索「所得税法」(第226条 源泉徴収票)](https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033) (絵:支店の机で、受話器を肩にはさんだまま分厚い手帳をめくる丸顔の若い男性。手帳から付箋がはみ出している。うしろはぼけている。) **小日向 陸**:「じゃああの後に何か増えたってこと……?」 **三輪 朔**:「それを今見てるところ」 (絵:書類の山から一枚を引き抜く女性の手の寄り。人差し指に若苗色の付箋。) (絵:真上から見た机。二枚の源泉徴収票を左右に並べ、片方の上に若苗色の付箋。間に定規とボールペン。文字は読めない線だけ。) > ご主人は去年の12月に、物流の会社から自転車店へ移った。勤続、十か月。 > **ℹ 勤続年数(きんぞくねんすう)**(現実の事実):今の勤め先に何年勤めているかで、収入が続くかを見る項目です。国土交通省の令和7年度の調査では、勤続年数を見る933機関の具体的な条件は「1年以上」が661機関で一番多く、「3年以上」が121、「2年以上」が45でした。 > - 問:転職したばかりだと借りられない? 答:条件は金融機関ごとに違い、勤続年数を条件にしない所もあります(同じ調査で、具体的な内容が「その他」の答えは183)。転職の前と同じ仕事か、収入が上がったかなどを見る所もあります。 > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) (絵:昼の自転車店の作業場。台に掛けた自転車のブレーキを調整する背の高いひげの男性。店先の客と自転車の列はぼけている。) (絵:二枚の紙を左右の手に持ち、見比べる審査役の女性の顔の寄り。眼鏡の奥の目が左の紙に向いている。) **三輪 朔**(心の声):(前の会社は8年今の店はまだ10か月) **小日向 陸**:「でも!奥さんは同じ医院で9年です!」 **小日向 陸**:「2人の収入で支えられますって!」 > **ℹ 収入合算(しゅうにゅうがっさん)**(現実の事実):住宅ローンを申し込む本人の年収だけでは足りない時に、配偶者など、一緒に住む家族の収入を合わせて審査を受ける形です。誰の収入をどこまで合わせられるかの条件は、金融機関ごとに違います。 > - 出典:[コトバンク(リフォーム用語集)「収入合算」](https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8E%E5%85%A5%E5%90%88%E7%AE%97-1128112) (絵:支店の机で、受話器を持ったまま空いた手を大きく振って話す丸顔の若い男性。机の上の分厚い手帳が開いている。) (絵:昼の歯科医院の診療室。マスクをあごまで下ろし、診療台の子どもに手鏡を見せて笑いかける小柄な女性。子どもの顔は横向きでぼけている。) **三輪 朔**:「うんだから保証会社も見てるの」 (絵:画面に向かい、マウスに手を置いたまま首をかしげる審査役の女性。机の上に湯気の消えた紙コップ。) > **ℹ 連帯保証(れんたいほしょう)と保証会社(ほしょうがいしゃ)**(現実の事実):住宅ローンでは、借りる人が返せなくなった時に代わりに返す保証を、保証会社に頼む形が多くあります。国土交通省の令和7年度の調査では、連帯保証を審査で見る842機関のうち、529機関が「系列の保証会社の保証が必要」、401機関が「外部の保証会社の保証が必要」と答えました。 > - 問:昔の日本にも保証人はいた? 答:江戸時代、町家を借りる人は、今日の保証人にあたる「請人(うけにん)」に頼み、「借屋請状」を家主に出していました(広島県立文書館の古文書講座)。今の保証会社は、その役を会社が保証料を受けて引き受ける形です。 > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) > - 出典:[広島県立文書館「インターネット版 古文書講座 No.11」](https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/monjokan/sub12-11.html) (絵:夜の賃貸の部屋の玄関。郵便受けから出した広告の束を、背の高い男性が片手でめくっている。) **森岡 慎吾**(心の声):(……前の家から転送か) **森岡 慎吾**(心の声):(知らない会社あとでいいや) (絵:白い封筒の寄り。前の住所から転送された印のシール。差出人の欄は読めない。) (絵:居間の棚の上、ほかの郵便物の束の下に、開けていない白い封筒を差し込む大きな手。指に機械の油の跡。) **森岡 葵**:「慎吾ーお風呂わいたよー」 (絵:廊下の角から顔を出して呼ぶ小柄な女性。髪をタオルでまとめ、からし色の部屋着。手前の居間はぼけている。) **森岡 慎吾**:「はーい」 **森岡 葵**:「カーテン明日の夜結果が出たら頼もうね!」 (絵:夜の賃貸の部屋の居間。ソファに座ってスマホを見ながら笑う小柄な女性と、その隣に座ろうとする背の高い男性。テレビの光がぼけている。) **森岡 慎吾**:「う、うん」 > 木曜 21時15分 (絵:夜の審査部。パソコンの画面に信用情報の照会の明細を開き、身を乗り出す審査役の女性。画面の光が眼鏡に映る。) [作中の画面] > 信用情報の照会(ときわ野保証 経由) > 森岡 葵 携帯電話の端末の分割払い 月4,100円(残り9回) > ※申込書の「ほかの借入れ」の欄には書かれていない **三輪 朔**(つぶやき):「あ……奥さんのスマホの分割も借入れだ」 [作中の画面] > 返済負担率(計算し直し) > (133+29+5)÷ 740 = 約22.5% **三輪 朔**:「まあこれは通る範囲」 (絵:稟議書の余白に若苗色の付箋を一枚貼る指の寄り。付箋の字は読めない線。) > 書き忘れは、よくある。責める事じゃない。 (絵:画面の明細を指でなぞる審査役の女性の手の寄り。指が一つの行の上で止まる。行の字は読めない線。) **三輪 朔**(心の声):(……問題はご主人の方) (絵:夜の審査部の窓。ブラインドの隙間から見える、灯りのともった遠くの住宅街。窓に映る審査役の女性の薄い影。) > この街の灯りの、どれか一つが、あの夫婦の部屋だ。 (絵:誰もいない夜の審査部の通路。奥から、書類の挟みを持って歩いてくる小柄な男性の影。) > 木曜 21時40分 **能勢 総一**:「森岡の件」 (絵:審査役の机の前に立ち、青い紙の挟みを机の上に置く次長。座ったまま見上げる審査役の女性。) **能勢 総一**:「異動がある」 **能勢 総一**:「明日の朝までに、否決で書け」 > **ℹ 否決(ひけつ)**(現実の事実):出された案を認めないと決める事です。銀行の融資の審査でも、申込みを通さないと決める事を否決と言い、通す事は承認と言います。 > - 問:否決の理由は教えてもらえる? 答:作中のときわ野銀行のように、審査の中身には答えないとする金融機関があります。信用情報が気になる時は、信用情報機関へ本人が開示を申し込めます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「否決」](https://kotobank.jp/word/%E5%90%A6%E6%B1%BA-609450) ## この話で分かること ### 住宅ローンの仮審査(事前審査)が通ったのに、本審査で落ちるのはなぜ? 事前審査は申込書に書いた内容をもとにした見込みの審査で、本審査は書類で収入や勤め先を確かめ、健康状態や物件の担保評価も見るからです。事前審査の後に転職した、新しく借りた、延滞の記録が増えた、などがあると本審査で通らない事があります。 ### 住宅ローンの事前審査と本審査の違いは? ある銀行の公式の説明では、事前審査は申込者の属性と信用力を見て、通常は数日から1週間程度。本審査は返済能力に加えて健康状態や物件の担保評価を見て、1〜4週間ほどかかります。本審査では物件の契約書類や収入の書類を出します。 ### 勤続年数は何年あれば住宅ローンを借りられる? 金融機関ごとに違います。国土交通省の令和7年度の調査では、勤続年数を見る933機関の条件は「1年以上」が661機関で一番多く、「3年以上」121、「2年以上」45でした。 ### スマホの分割払いは住宅ローンの審査に関係ある? 関係する事があります。フラット35 の総返済負担率には、クレジットカードの分割払い・リボ払いでの購入も含まれます。分割払いの返済が毎月ある時は、借入れの一つとして数えられると考えて、申込書の「ほかの借入れ」に書いておくのが確かです。 ### 住宅ローンの保証会社とは? 借りる人が返せなくなった時に、代わりに金融機関に返す保証を引き受ける会社です。国土交通省の令和7年度の調査では、連帯保証を見る842機関のうち529機関が系列の保証会社、401機関が外部の保証会社の保証を求めています。 --- 否決の理由は、教えられません 第2話「勤続十か月」 つづく # 否決の理由は、教えられません 第3話「異動」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/3-shinsa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[否決の理由は、教えられません](https://tooneru.com/kotowari/shinsa/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/3-shinsa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 金曜の朝、三輪は慎吾の信用情報の明細を確かめる。携帯電話の端末の分割払いで、2026年7月から入金が無く、異動の日付は10月1日。事前審査(9月24日)の後に増えた記録だった。小日向が慎吾に電話で聞くと、慎吾は「延滞なんてしていない、携帯はずっと同じ会社」と答え、その会社は明細の会社と違った。三輪は次長の能勢に「本人が知らない契約かもしれない」と言うが、能勢は「確かめるのは本人だ。異動があるものは通さない」と答える。銀行は否決の理由を伝えないので、本人は確かめようとも思わないかもしれない。17時、三輪は否決の印を押す。18時02分、駅のホームの線路の向こうで、森岡夫妻が結果のメールを見て立ち止まる。家に帰った慎吾は、前の家から転送されてきた封筒を思い出す。1週間後、夫妻がインターネットで取り寄せた信用情報の開示の報告書に、身に覚えのない契約があった。 ## 登場人物 - **三輪 朔**:主人公。38歳、ときわ野銀行 審査部の住宅ローンの審査役。申込みの人には会わず、稟議書と記録だけで人を見る。口ぐせは「書類は、嘘はつかない。黙るだけ」。 - **小日向 陸**:27歳、ときわ野銀行 駅前支店 融資課の担当。森岡夫妻の申込みを受けて稟議書を書き、夫妻を通したくて審査部に電話をかけてくる。 - **森岡 慎吾**:33歳、自転車店の整備士。去年の12月に物流会社から転職し、勤続10か月。お金の話は妻に任せがち。 - **森岡 葵**:31歳、歯科衛生士(同じ医院で正社員9年)。夫と収入を合わせて住宅ローンを申し込み、中古マンションの2LDKを決めた。 - **能勢 総一**:54歳、ときわ野銀行 審査部の次長。三輪の稟議を決める人。言葉は少なく、数字で話す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の駅の改札を出て歩く人の流れ。ぼけた人の波の中で、ピントの合った背の高い眼鏡の女性が一人、前を見て歩いている。) > 金曜 8時20分 > 否決で書け、と言われた。書くのは、今日の17時まで。 (絵:朝の審査部。まだ誰も座っていない机の列の、真ん中の一つの席で、パソコンの明かりをつける審査役の女性。正面からの左右対称の構図。) [作中の画面] > 信用情報の照会の明細(ときわ野保証 経由) > 森岡 慎吾 携帯電話の端末の分割払い > 契約日:2024年6月 > 入金の状況:2026年7月から入金なし > 異動:あり(異動発生日 2026年10月1日) **三輪 朔**(心の声):(異動の日付10月1日?) (絵:真上から見た机。稟議書の上に、若苗色の付箋を二枚、少し離して並べて貼る指。付箋の字は読めない線。) **三輪 朔**(心の声):(事前審査は9月24日え……その後……) > 事前審査の時には、まだ無かった信用情報の記録。 > **ℹ 個人信用情報機関(こじんしんようじょうほうきかん)**(現実の事実):ローンやクレジットの契約の内容と支払いの状況を記録し、加盟する金融機関などが審査の時に照会する機関です。日本には、クレジット会社などが加盟する CIC、全国銀行協会が設置・運営する全国銀行個人信用情報センターなどがあり、提携する機関どうしで情報を交流しています。 > - 問:記録はいつまで残る? 答:CIC のクレジット情報は契約期間中と契約終了後5年、申込みの情報は照会日から6か月です。全国銀行個人信用情報センターの取引情報は、契約期間中と契約終了日(完済していない時は完済日)から5年を超えない期間です。 > - 問:照会されると記録が残る? 答:残ります。CIC の申込情報は照会日から6か月、全国銀行個人信用情報センターの照会記録は、会員への提供が6か月を超えない期間です。 > - 出典:[CIC「CICが保有する信用情報」](https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/) > - 出典:[全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」](https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/) (絵:朝の支店の通路。スマホを耳に当て、手帳を開いて早足で歩く丸顔の若い男性。) **小日向 陸**:「森岡さん携帯の支払い遅れてる物ありません?」 (絵:自転車店の作業場。自転車の車輪を片手で押さえたまま、もう片方の手でスマホを耳に当てる背の高いひげの男性。) **森岡 慎吾**:「え、延滞?してないですよ」 **森岡 慎吾**:「携帯はずっと同じ会社で……」 [作中の画面] > 小日向 陸 → 三輪 朔 > ご主人は「延滞はしていない」とのことです。 > 携帯の会社は、照会の明細の会社と違います。 > **ℹ 延滞(えんたい)**(現実の事実):決めた日までの支払いが滞る事です。クレジットや分割払いの延滞が続くと、信用情報に「異動」として記録され、ほかの借入れの審査に響く事があります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「延滞」](https://kotobank.jp/word/%E5%BB%B6%E6%BB%9E-447885) (絵:パソコンの画面の知らせを見て、椅子から少し腰を浮かせる審査役の女性。) **三輪 朔**:「……違う?」 (絵:書類の挟みを胸に抱え、次長の席へ通路を早足で歩く審査役の女性。並ぶ机の同僚はぼけた後ろ姿。) **三輪 朔**:「次長!」 **三輪 朔**:「ご本人も知らない契約かもしれません」 (絵:次長の机の前に立つ審査役の女性と、座って書類から目を上げない次長。窓とブラインドを背にした、正面の左右対称の構図。) **能勢 総一**:「それを確かめるのはうちじゃない」 (絵:書類から目を上げた次長の顔の寄り。老眼鏡を外して、指にはさんでいる。うしろのブラインドがぼけている。) **能勢 総一**:「本人だ」 **三輪 朔**:「でもうちは理由を言いません」 **三輪 朔**:「理由が分からないと」 **三輪 朔**:「ご本人は確かめようとも思いません……」 **能勢 総一**:「三輪」 **能勢 総一**:「異動があるものは通さない」 **能勢 総一**:「……それがうちの決まりだ」 (絵:自分の机に戻り、椅子に深く座ったまま天井を仰ぐ審査役の女性。机の上に付箋が何枚も貼られた稟議書。) > 所見の欄に書けるのは、審査で見た事だけ。「開示してみて」とは、書けない。 > **ℹ 所見(しょけん)(審査の所見)**(現実の事実):見た事柄と、そこから出した判断や意見です。医師の所見のように使い、融資の審査では、審査をした人が見た事と判断を書類に書き残します。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「所見」](https://kotobank.jp/word/%E6%89%80%E8%A6%8B-534458) (絵:稟議書の上の、小さな四角い枠の並びの寄り。墨青の丸い印を持つ指が、枠の真上で止まっている。) (絵:夕方の審査部。机に向かって、稟議書に印を押す審査役の女性。壁の時計は読めない。) > 金曜 17時00分 (描き文字:トン) [窓] > 〈所見〉 > 信用情報に異動あり(異動発生日 2026年10月1日)。 > 以上により、否決とする。 > 審査役 三輪 朔 (絵:夕暮れの本部のビルの通用口を出て、傘を持たずに空を見上げる審査役の女性。街の灯りがぼけている。) (絵:夜の駅のホーム。電車を待つ背の高い眼鏡の女性。線路をはさんだ向こうのホームの灯りがぼけている。) > 金曜 18時02分 > 線路の向こうで、誰かがスマホを見て、立ち止まった。 (絵:線路の向こうのホーム。並んで立つ夫婦。小柄な妻がスマホの画面を見て固まり、背の高い夫がのぞき込む。) **森岡 葵**:「……落ちた」 **森岡 慎吾**:「え理由は?」 **森岡 葵**:「書いてない……教えられないんだって」 **森岡 慎吾**:「ま、まあほかの銀行もあるしさ」 (絵:夜の住宅街の坂道。並んで歩く夫婦の後ろ姿。小柄な妻がうつむき、背の高い夫がその肩に手を置く。街灯の光がぼけている。) **森岡 葵**:「でも……理由も分からないで」 **森岡 葵**:「次なんて出せないよ」 (絵:夜の賃貸の部屋。棚の郵便物の束の下から、白い封筒を引き抜く背の高い男性の手。) **森岡 慎吾**(心の声):(……この封筒前の家から来てたやつ) (絵:食卓の上で開いた封筒と、中から出した一枚の紙。紙の字は読めない線だけで、上の方に太い帯の見出し。) **森岡 慎吾**:「は?督促?」 > **ℹ 督促(とくそく)**(現実の事実):約束した支払いなどを早く済ませるよう促す事です。払いが滞った時に、貸した会社などから督促の手紙や電話が来ます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「督促」](https://kotobank.jp/word/%E7%9D%A3%E4%BF%83-582707) **森岡 慎吾**:「俺こんな会社と契約してないぞ!」 **森岡 葵**:「調べよう慎吾の記録自分で見られるはずだから」 (絵:昼の部屋の食卓。スマホで何かの申込みの画面を開き、本人確認の書類を横に置く小柄な女性。向かいに座る背の高い男性の手。) > 信用情報は、本人なら取り寄せられる。 > 1週間後。 [作中の画面] > 信用情報の開示の報告書(インターネットで取り寄せ) > 森岡 慎吾 携帯電話の端末の分割払い > 契約日:2024年6月 > 異動:あり > **ℹ 信用情報(しんようじょうほう)の本人開示(ほんにんかいじ)**(現実の事実):自分の信用情報は、本人が信用情報機関に申し込んで見られます。CIC はインターネットで500円、郵送で1,500円(郵送は申込みから1週間〜10日ほど)。全国銀行個人信用情報センターはインターネットで800円です。 > - 問:身に覚えのない記録があったら? 答:まず記録を登録した会社に問い合わせます。全国銀行個人信用情報センターには、本人確認の書類を無くした・盗まれた、同じ名前の別の人の情報が登録されている、などを申し出る「本人申告」の仕組みがあります(第4話)。 > - 出典:[CIC「情報開示」](https://www.cic.co.jp/mydata/index.html) > - 出典:[全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「本人開示の手続き」](https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/) (絵:椅子から腰を浮かせ、スマホを握ったまま目を見開く背の高いひげの男性。) (絵:昼の部屋の食卓。スマホの画面を並んでのぞき込む夫婦。小柄な妻が夫の顔を見上げる。) **森岡 慎吾**:「この契約俺じゃない!」 ## この話で分かること ### 信用情報とは? 住宅ローンの審査でどこまで調べる? ローンやクレジットの契約の内容と支払いの状況の記録です。住宅ローンの審査では、金融機関や保証会社が個人信用情報機関に照会し、ほかの借入れや返済の履歴を確かめます。国土交通省の令和7年度の調査では、ほかの債務の状況や返済の履歴を審査で見る機関が72.5%ありました。 ### 信用情報の「異動」とは? 支払いの記録の中で、延滞・保証の履行・破産があった事を示す印です。CIC は「異動(延滞・保証履行・破産)の有無」「異動発生日」「延滞解消日」を記録しています。 ### 信用情報の記録はどのくらい残る? CIC のクレジット情報は契約期間中と契約終了後5年、申込みの情報と利用の記録は6か月です。全国銀行個人信用情報センターの取引情報は契約期間中と契約終了日(完済していない時は完済日)から5年を超えない期間、官報の情報は7年を超えない期間です。 ### 自分の信用情報は見られる? 見られます。本人が信用情報機関に開示を申し込みます。CIC はインターネットで500円・郵送で1,500円、全国銀行個人信用情報センターはインターネットで800円です。 --- 否決の理由は、教えられません 第3話「異動」 つづく # 否決の理由は、教えられません 第4話「本人申告」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/4-shinsa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[否決の理由は、教えられません](https://tooneru.com/kotowari/shinsa/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/4-shinsa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 取り寄せた信用情報の報告書には、慎吾の知らない携帯電話の端末の分割払いの契約が載っていた。契約の時の住所は前のアパート、電話番号は知らない番号。慎吾は、2年前の春に倉庫の更衣室で、運転免許証の入った財布を無くしていた。葵は記録を登録した会社に問い合わせ、2人はインターネットで本人申告を出して「免許証を無くした事・その契約は自分の申込みではない事」を書き添える。日曜、駅前支店の小日向が休みの日に夫妻と会い、否決の理由は言えないが、落ちた後にできる事(開示・会社への問い合わせ・本人申告・借入れの整理・申込みの時期)は言えると話す。申込みの記録は6か月残るので、あちこちに続けて出すより、直してから1つずつ。月曜、小日向から話を聞いた審査役の三輪は、別の人の照会の結果に「本人申告:あり」の一行を見る。水曜の夜、会社から「ご本人のお申込みではないと判断し、登録を訂正します。反映には日数がかかる場合があります」と書面が届く。同じ夜、売主の仲介から「今月末までにローンのめどが立たなければ、ほかのお客さまと」。月末まで、あと3日。 ## 登場人物 - **森岡 葵**:31歳、歯科衛生士(同じ医院で正社員9年)。夫と収入を合わせて住宅ローンを申し込んだ。 - **森岡 慎吾**:33歳、自転車店の整備士。去年の12月に物流会社から転職した。 - **小日向 陸**:27歳、ときわ野銀行 駅前支店 融資課の担当。森岡夫妻の申込みを受けて稟議書を書いた。 - **三輪 朔**:主人公。38歳、ときわ野銀行 審査部の住宅ローンの審査役。申込みの人には会わず、稟議書と記録だけで人を見る。口ぐせは「書類は、嘘はつかない。黙るだけ」。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:土曜の朝の住宅街。坂の上から見下ろす、低いアパートの並び。一つの窓に朝の光。) > 土曜 9時30分 > 取り寄せた信用情報の報告書を、2人で、頭から読む。 (絵:アパートの部屋の食卓。印刷した紙の束を両手で持つ小柄な女性と、向かいで頭を抱える背の高いひげの男性。) [作中の画面] > 信用情報の開示の報告書(くわしい欄) > 契約の種類:携帯電話の端末の分割払い > 契約日:2024年6月 > 契約の時の住所:前のアパート(川沿い) > 契約の時の電話番号:知らない番号 > 入金の状況:2026年7月から入金なし > 異動:あり **森岡 葵**:「住所は……前のアパート」 **森岡 葵**:「電話は……知らない番号だよ?」 **森岡 慎吾**(心の声):(2024年の、6月……) (絵:色の抜けた記憶。夜の倉庫の更衣室で、ロッカーの中を探る作業着の背の高い男性。手には空の財布。) > 2年前の春。倉庫の更衣室で、財布を無くした。 **森岡 慎吾**(心の声):(免許証も入ってた……) **森岡 慎吾**(心の声):(再発行してそれっきり) (絵:真上から見た食卓。運転免許証の再発行の控えの紙と、報告書の紙。紙の字は読めない線。) **森岡 葵**:「ねえその免許証」 **森岡 葵**:「住所って前のアパートのままだよね?」 > 無くした免許証の住所に、知らない会社の封筒が、届いていた。 **森岡 慎吾**:「俺の名前で誰かが勝手に!?」 (絵:アパートの窓辺で、スマホを耳に当て、手帳を開いて話す小柄な女性。窓の外がぼける。) **森岡 葵**:「あの……身に覚えのない契約が」 **森岡 葵**:「夫の信用情報に載ってるんです」 **会社の窓口**:「承知しましたお調べします」 **会社の窓口**:「契約の時の書類を確かめますね」 [作中の画面] > かもめ台クレジット(記録を登録した会社) > 契約の時の本人確認の書類の写しと、申込みの内容を確かめます。 > 結果は、書面でお知らせします。 > まず、記録を登録した会社に、問い合わせる。 (絵:食卓で、ノートパソコンの画面を並んでのぞき込む夫婦。肩ごしの構図で、画面は読めない。) **森岡 葵**:「あ、そうだ」 **森岡 葵**:「待ってる間にもう一つできることあるんだよ」 [作中の画面] > 本人申告(インターネットで申し込み) > 申告の内容:運転免許証の紛失・名義を使われた事 > 申告のコメント:「2024年4月に運転免許証を紛失しました。2024年6月の携帯電話の端末の契約は、私の申込みではありません。」 > 登録の期間:登録日から5年 > 本人申告。名前を使われた事を、自分の信用情報に、書き添えておける。 > **ℹ 本人申告(ほんにんしんこく)(信用情報)**(現実の事実):本人確認の書類を無くした・盗まれた、名前を使われた、などの本人の申し出を、信用情報機関に登録する仕組みです。CIC はインターネットか郵送で受け付け、登録の期間は登録日から5年です。全国銀行個人信用情報センターにも、本人確認資料の紛失・盗難や、同じ名前の別の人の情報が登録されている旨などの本人申告があり、登録日から5年を超えない期間、登録されます。 > - 問:本人申告をすれば、契約の記録は直る? 答:本人申告は、本人の申し出の内容(コメント)を登録する仕組みです。契約の記録そのものに誤りがある時は、記録を登録した会社に問い合わせます。 > - 問:本人申告は消せる? 答:CIC では、登録の期間の中でも、本人の申し出で削除できます(登録の時に出る受付番号が要ります)。 > - 出典:[CIC「本人申告を申し込む」](https://www.cic.co.jp/statements/) > - 出典:[全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」](https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/) (絵:日曜の昼の駅前。小さな喫茶店の窓。ガラスの向こうに3人の人影がぼける。) > 日曜 14時00分 (絵:喫茶店の席。紺のパーカーの私服の丸顔の若い男性が、立ったまま深く頭を下げる。向かいの席に夫婦。) **小日向 陸**:「あ、どうも今日は休みの日の小日向です」 **小日向 陸**:「えっと……銀行の人としては」 **小日向 陸**:「言えない事があるんです」 **森岡 葵**:「落ちた理由、ですよね」 **小日向 陸**:「はいそれは言えなくてすみません」 (絵:小日向の顔の寄り。私服で少し寝ぐせ。まっすぐ前を見る。後ろの店の灯りがぼける。) **小日向 陸**:「でも!落ちた後にできる事なら言えます!」 (絵:真上から見た喫茶店の机。開いた分厚い手帳に、ペンで箇条書きを書く手。コーヒーの杯が2つ。字は読めない線。) [窓] > 〈落ちた後に、できる事〉(小日向の手帳) > ① 信用情報を、本人が開示して確かめる > ② 違う記録は、登録した会社に調べてもらう > ③ 本人申告で、申し出を書き添える > ④ ほかの借入れを、整理する(車のローン・スマホの分割) > ⑤ 次の申込みの時期を、考える **森岡 慎吾**:「あ、①から③もうやりました」 **小日向 陸**:「えっ……早っ」 **森岡 葵**:「④と⑤は?」 **小日向 陸**:「それが……」 **小日向 陸**:「申込みの記録6か月は残っちゃって」 > **ℹ 申込みの記録(照会の記録)**(現実の事実):金融機関などが審査のために信用情報機関に照会すると、その記録が残ります。CIC の申込情報は照会日から6か月、全国銀行個人信用情報センターの照会記録は、会員への提供が6か月を超えない期間です。 > - 問:短い間に何か所も申し込むと? 答:いつ、どこに申し込んだかの記録が、その期間、照会した会員の会社に分かります。それを審査でどう見るかは、金融機関ごとに違います。 > - 出典:[CIC「CICが保有する信用情報」](https://www.cic.co.jp/guide/credit-information/possession/) > - 出典:[全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター「センターの概要」](https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/) (絵:まっすぐ前を見て答える小日向の顔の寄り。) **小日向 陸**:「だからあちこちに続けて出すより」 **小日向 陸**:「直してから1つずついきましょう」 **森岡 慎吾**:「でも、部屋が……」 > 小学校まで、歩いて7分の部屋。 (絵:夕方の駅前の歩道橋。並んで歩く夫婦。背の高い夫がうつむき、小柄な妻が夫の腕に手をかけて顔を見上げる。街の灯りがぼける。) **森岡 慎吾**:「ごめん免許を無くした俺が悪いんだ」 **森岡 葵**:「違うよ無くしたのは悪くない」 **森岡 葵**:「使った人が悪いの!」 > 月曜 10時00分 (絵:朝の支店の奥の机。受話器を耳に当て、もう片方の手で手帳を押さえる丸顔の若い男性。) **小日向 陸**:「森岡さん自分で開示して本人申告まで出したって!」 (絵:審査部の机。受話器を肩にはさみ、書類から目を上げる眼鏡の女性。ブラインドがぼける。) **三輪 朔**:「……そう」 **三輪 朔**:「否決の後の話審査部は聞いてない事にするね」 **小日向 陸**:「……はいですよね」 **三輪 朔**:「でも……聞こえちゃった」 (絵:審査部の画面を見る眼鏡の女性。別の人の申込みの照会の結果の画面の光が、眼鏡に映る。) [作中の画面] > 信用情報の照会(別の申込みの人) > 異動:なし > 本人申告:あり > 「運転免許証を紛失しました。……」 **三輪 朔**(心の声):(あ……本人申告あり) > 書類は、嘘はつかない。黙るだけ。 **三輪 朔**(心の声):(――黙ってる書類に本人が一行足せる) (絵:審査部の机の引き出しから、付箋の付いた稟議書の控えを半分引き出しかけて、手を止める指。) > 否決の後の事は、審査役の机には、届かない。 > ……はずだった。 > 水曜 19時10分 (絵:夜のアパートの玄関。開けた封筒の紙を持って立ち尽くす背の高い男性。後ろから小柄な女性が駆け寄る。) [作中の画面] > かもめ台クレジット 調査の結果のお知らせ > お申込みの時の本人確認の書類(運転免許証)と、お申込みの電話番号・ご署名を確かめました。 > ご本人のお申込みではないと判断し、当社の登録を訂正します。 > なお、信用情報への反映には、日数がかかる場合があります。 **森岡 葵**:「違うって、認めてくれた……!」 **森岡 慎吾**(心の声):(反映には、日数が……) (絵:スマホを持つ小柄な女性の親指の寄り。画面の上に、知らせの帯が光る。帯の字は読めない。) (描き文字:ブブッ) (絵:夜の部屋。窓の前でスマホを見つめて動きが止まる小柄な女性。ソファの背の高い男性がぼける。) [作中の画面] > はなみずき不動産(売主の仲介)→ 森岡 葵 > 売主さまより: > 今月末までにローンのめどが立たなければ、 > ほかのお客さまとのお話を、進めたいとのことです。 > **ℹ 仲介(ちゅうかい)(不動産の売買の仲介)**(現実の事実):売る人と買う人の間に立って、取引をまとめる事です。不動産では、宅地建物取引業者が仲介し、決まりの上限の中で仲介手数料を受け取ります。法律の上では「媒介」と呼びます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「仲介」](https://kotobank.jp/word/%E4%BB%B2%E4%BB%8B-97074) > - 出典:[e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2 媒介契約・第46条 報酬)](https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176) **森岡 葵**(心の声):(今月末……あと3日しかない……) (絵:冷蔵庫の扉。マグネットで留めた手書きの寸法のメモと、カーテンの布の見本。字は読めない線。) > 窓は、178センチ。 > カーテンは、まだ、頼んでいない。 ## この話で分かること ### 住宅ローンの審査に落ちたら、どうする? まず、自分の信用情報を開示して、ローンやクレジットの記録に延滞や身に覚えのない契約が無いか確かめます。誤った記録があれば記録を登録した会社に問い合わせ、ほかの借入れを整理してから、次の申込みを考えます。国土交通省の令和7年度の調査では、審査でほかの債務の状況や返済の履歴を見る機関が72.5%、返済負担率を見る機関が90.9%ありました。 ### 信用情報に、身に覚えのない契約が載っていたら? まず、その記録を登録した会社に問い合わせ、本人の申込みかどうかを調べてもらいます。あわせて、本人確認の書類を無くした・盗まれた、名前を使われた、などの事を、信用情報機関の本人申告で登録できます。 ### 信用情報の本人申告とは? 本人確認の書類の紛失・盗難や、名前を使われた事などの本人の申し出を、信用情報に登録する仕組みです。CIC はインターネットか郵送で受け付け、登録の期間は登録日から5年で、期間の中でも本人の申し出で削除できます。全国銀行個人信用情報センターの本人申告情報は、登録日から5年を超えない期間、登録されます。 ### 住宅ローンの申込みの記録は、信用情報にどのくらい残る? CIC の申込情報は照会日から6か月、全国銀行個人信用情報センターの照会記録は、会員への提供が6か月を超えない期間です。その間は、いつ、どこに申し込んだかが、照会した会員の会社に分かります。 --- 否決の理由は、教えられません 第4話「本人申告」 つづく # 否決の理由は、教えられません 第5話「返済負担率三十五パーセント」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/5-shinsa/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[否決の理由は、教えられません](https://tooneru.com/kotowari/shinsa/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/shinsa/manga/5-shinsa/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 取り寄せ直した信用情報から、身に覚えのない契約の記録が消えた。売主は11月13日まで待つと言う。駅前支店で小日向は、返済負担率(1年の返済の合計÷年収×100)を計算して見せる。夫妻の前回の申込みは約22.5%。公の目安として【フラット35】の基準(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。車のローン・カードローン・分割払いも、収入を合わせる人の分も含む)を見せると、慎吾は「三十五パーセントなら、もっと借りられる」と言うが、葵が計算すると月に約21万6,000円。小日向は「借りられる額と、返せる額は、違います」と言い、車のローンの残りを貯金で返し、妻のスマホの分割を申込書に書いて出す組み方を出す。返済負担率は約18.6%。その頃、葵は職場の健康診断で「要経過観察」と書かれ、団信の告知の欄に、今度は「あり」と書く。水曜、再申込みの稟議が三輪の机に来る。能勢は「前回は関係ない。今の書類だけを見ろ」。勤続はまだ11か月。健康の欄で、三輪は手を止め、付箋に一行書く。「団信、通る?」 ## 登場人物 - **森岡 葵**:31歳、歯科衛生士(同じ医院で正社員9年)。夫と収入を合わせて住宅ローンを申し込んだ。 - **森岡 慎吾**:33歳、自転車店の整備士。去年の12月に物流会社から転職した。 - **小日向 陸**:27歳、ときわ野銀行 駅前支店 融資課の担当。森岡夫妻の申込みを受けて稟議書を書いた。 - **三輪 朔**:主人公。38歳、ときわ野銀行 審査部の住宅ローンの審査役。申込みの人には会わず、稟議書と記録だけで人を見る。口ぐせは「書類は、嘘はつかない。黙るだけ」。 - **能勢 総一**:54歳、ときわ野銀行 審査部の次長。三輪の稟議を決める人。言葉は少なく、数字で話す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝のアパートの食卓。スマホの画面を見て口に手を当てる小柄な女性。横から背の高い男性がのぞき込む。) > 金曜 10時00分 [作中の画面] > 信用情報の開示の報告書(取り寄せ直し) > 携帯電話の端末の分割払い(2024年6月):記録なし > 異動:なし **森岡 葵**:「……あ消えてる!」 **森岡 慎吾**:「異動なし……ほんとだ」 **森岡 葵**:「仲介さんに、電話する!」 (絵:同じ食卓。小柄な女性が背の高い男性の首に腕を回して抱きつく。男性は目を閉じて息を吐く。) **森岡 葵**:「あの訂正の書面があるんです」 **森岡 葵**:「あと少しだけ待っていただけませんか……!」 (絵:アパートの小さなベランダ。洗濯物の間で、スマホを耳に当てて何度も頭を下げる小柄な女性。) [作中の画面] > はなみずき不動産 → 森岡 葵 > 売主さまより:訂正の書面があるなら、 > 11月13日まで、お待ちします。 > それまでに、本審査の結果をお知らせください。 > 1週間、延びた。出し直すなら、今度は、前より強い書類で。 (絵:駅前支店の相談の小部屋。机をはさみ、紺のスーツの丸顔の若い男性と、夫婦が向き合う。今日はスーツで、ネクタイを締めている。) **小日向 陸**:「今日は銀行の方の小日向です」 **小日向 陸**:「出し直しの相談お受けします!」 **森岡 葵**:「あのいくらまでなら借りられます?」 (絵:机の上に置いた電卓と、紙の表を指でたどる丸顔の男性の手。紙の字は読めない線。) **小日向 陸**:「あ、その前に1つだけ」 **小日向 陸**:「借りられる額と返せる額って違うんです」 [窓] > 〈返済負担率〉 > 1年の返済の合計 ÷ 年収 × 100 > 住宅ローン 約133万円+車のローン 約29万円+スマホの分割 約5万円 > (133+29+5)÷ 740 = 約22.5% **森岡 葵**:「22%……これって低い方?」 **小日向 陸**:「うーん基準は銀行ごとに違うんですよ」 **小日向 陸**:「だから公の目安を1つお見せしますね」 [窓] > 【フラット35】の総返済負担率の基準 > 年収400万円未満:30%以下 > 年収400万円以上:35%以下 > すべての借入れが入る(車のローン・カードローン・分割払い・リボ払いも) > 収入を合わせる人の借入れも入る > **ℹ 【フラット35】の総返済負担率(そうへんさいふたんりつ)の基準**(現実の事実):住宅金融支援機構の【フラット35】は、年収に占める1年の返済の合計(総返済負担率)を、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下と決めています。フラット35 のほか、ほかの住宅ローン・自動車ローン・教育ローン・カードローン(クレジットカードのキャッシング、分割払い・リボ払いでの買い物も)を含み、収入を合わせる人の分も入ります。 > - 問:ほかの銀行も35%? 答:金融機関ごとに違います。国土交通省の令和7年度の調査で、返済負担率の基準を一律に決めている機関の答え(複数回答・一部の機関)は「40%以内」81・「35%以内」57・「30%以内」43 などでした。 > - 出典:[住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」](https://www.flat35.com/loan/lineup/flat35/conditions/index.html) > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) **森岡 慎吾**:「え、35%までいいならもっと借りられる?」 (絵:電卓を打つ小柄な女性の手の寄り。隣に通帳と、給料の明細の紙。字は読めない線。) [作中の画面] > 葵の計算 > 740万円 × 35% = 1年に 259万円 > 1か月に 約21万6,000円 **森岡 葵**(心の声):(毎月21万……!?) **森岡 葵**:「む、無理!」 **森岡 葵**:「保育園だってまだ考えてるのに」 **小日向 陸**:「ですよね!」 **小日向 陸**:「上限まで借りるのが正しいとは限りません」 **森岡 慎吾**:「あのさ車のローン残り43万くらいでさ」 (絵:支店の小部屋。背の高いひげの男性が、自分の車の鍵を机に置いて見つめる。) **森岡 葵**:「それなら貯金で返せるよ」 **森岡 葵**:「頭金は減るけどね」 > **ℹ 頭金(あたまきん)**(現実の事実):分割で払う時に、最初にまとめて払うお金です。住宅ローンでは、家の値段のうち、借りずに自分のお金で払う分を指します。頭金を多く入れると借りる額が減り、返す額も減ります。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「頭金」](https://kotobank.jp/word/%E9%A0%AD%E9%87%91-425302) **小日向 陸**:「いいですね!」 **小日向 陸**:「返し終えたら毎月2万4千円軽くなりますよ」 [窓] > 〈出し直しの組み方〉(小日向の案) > 借入れ:3,980万円・35年(前と同じ) > 車のローン:申込みの前に、残りを返し終える > 妻のスマホの分割(月4,100円):申込書の「ほかの借入れ」に、書いて出す > 返済負担率:(133+5)÷ 740 = 約18.6% **小日向 陸**:「それとスマホの分割今度は書いてくださいね」 (絵:書類に目を落としたまま話す小日向の顔の寄り。) **森岡 葵**:「あ……前は書き忘れてましたよね」 **小日向 陸**:「いえ責める事じゃないです」 **小日向 陸**:「でも書いた方が強いんです」 > 数字で言える事を、1つずつ、増やす。 (絵:夕方の支店の前の歩道。並んで帰る夫婦の後ろ姿と、ガラスの扉の内側で見送る丸顔の若い男性。街の灯りがぼける。) **小日向 陸**(心の声):(……よし今度は書類で戦える) (絵:夕方の歯科医院の控え室。白い封筒を開けて、健康診断の結果の紙を見る小柄な女性。表情は読めない。) [作中の画面] > 職場の健康診断の結果(10月) > 総合の判定: > 要経過観察(6か月後に、もう一度) **森岡 葵**(心の声):(……え経過観察?) (絵:夜のアパートの食卓。申込みの書類の束の中の一枚、健康の質問の欄に、ペンを止めた手。紙の字は読めない線。) **森岡 葵**(心の声):(前は「なし」って書いた……) **森岡 葵**(心の声):(でも今は違う) > 水曜 13時50分 (絵:昼の審査部。机に回ってきた青い挟みの書類を開き、手を止める眼鏡の女性。) > 再申込み。同じ名前の稟議が、もう一度。 (絵:同じ昼の自転車店の作業場。修理の手を止め、スマホの申込みの受付の知らせを見る背の高いひげの男性。) **三輪 朔**(心の声):(森岡慎吾?) **森岡 慎吾**:「受け付けされたって!」 [窓] > 〈稟議書〉再申込み > 申込人:森岡 慎吾・森岡 葵(収入合算) > 借入れの希望:3,980万円・35年 > 信用情報:異動なし(前回の記録は、登録した会社が訂正) > 車のローン:完済 > 返済負担率:約18.6% > 勤続:夫 11か月/妻 9年 (絵:次長の机の横に立つ審査役の女性と、書類から目を上げずに話す次長。窓とブラインドを背にした正面の構図。) **三輪 朔**:「次長これ前回否決した森岡さんです」 **能勢 総一**:「前回は関係ない」 **能勢 総一**:「今の書類だけを見ろ」 **三輪 朔**:「はい」 (絵:机の上で、書類の数字の欄を指でたどる眼鏡の女性の手の寄り。若苗色の付箋が指に一枚。) **三輪 朔**(心の声):(負担率18.6%……下がった) **三輪 朔**(心の声):(でも勤続はまだ11か月) > **ℹ 勤続年数(きんぞくねんすう)の基準**(現実の事実):国土交通省の令和7年度の調査で、勤続年数を審査で見る933機関に具体的な内容を聞くと、「1年以上」が661機関で一番多く、「3年以上」121、「2年以上」45、その他183でした(訂正後の結果報告書の数)。 > - 問:1年に満たないと、落ちる? 答:金融機関ごとに違います。基準の数字だけでなく、前の勤め先の年数や、収入を合わせる人の勤続などもあわせて見る事があります。 > - 出典:[国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日 訂正)」](https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001991073.pdf) > 数字の外も、見る。それが、審査役の仕事。 (絵:書類の束の下の方の一枚、健康の欄のある紙を、眼鏡の女性の指がめくる瞬間。紙の字は読めない線。) (絵:眼鏡の奥の審査役の女性の目の細い寄り。レンズに書類の白が映る。) (絵:午後の審査部。机の上の一枚の紙を見つめて、動きを止める眼鏡の女性。周りの机の同僚はぼける。) > 健康の欄。 [窓] > 〈団体信用生命保険の告知〉 > 森岡 慎吾:なし > 森岡 葵:あり(職場の健康診断で、要経過観察) **三輪 朔**(心の声):(前回は「なし」……) **三輪 朔**(心の声):(……正直に書いてきたんだ) (絵:真上から見た稟議書。若苗色の付箋を一枚、健康の欄の横に貼る指。付箋の字は読めない線。) > 付箋に、一行。 [作中の画面] > 三輪の付箋 > 団信、通る? ## この話で分かること ### 住宅ローンの返済負担率の目安は? 何%まで? 金融機関ごとに違います。国土交通省の令和7年度の調査では、返済負担率を審査で見る機関が90.9%あり、基準を一律に決めている機関の答え(複数回答・一部の機関)は「40%以内」81・「35%以内」57・「30%以内」43 などでした。公の目安の一つの【フラット35】は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。 ### 住宅ローンの審査に、年収はいくら要る? 年収は、国土交通省の令和7年度の調査で94.2%の機関が審査で見ています。多くの機関は年収の額だけでなく、年収に対する1年の返済の割合(返済負担率)も見ます。【フラット35】は、年収400万円を境に基準が変わります(未満は30%以下、以上は35%以下)。 ### 返済負担率の計算方法は? どの借入れが入る? 1年の返済の合計を年収で割って100を掛けます。【フラット35】の基準では、住宅ローンのほか、自動車ローン・教育ローン・カードローン(クレジットカードのキャッシング、分割払い・リボ払いでの買い物も)が入り、収入を合わせる人の借入れも含みます。 ### 勤続年数は何年あればいい? 1年未満でも住宅ローンは通る? 国土交通省の令和7年度の調査で、勤続年数を審査で見る933機関の具体的な内容は、「1年以上」661機関が一番多く、「3年以上」121、「2年以上」45、その他183でした。1年未満の扱いは金融機関ごとに違います。 --- 否決の理由は、教えられません 第5話「返済負担率三十五パーセント」 つづく # 父の葬儀は、父が仕切る 第1話「午前四時十二分」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/1-yoji-juni-fun/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[父の葬儀は、父が仕切る](https://tooneru.com/henshubu/soshiki/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/1-yoji-juni-fun/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 東京でイベントの進行管理をしている篠原小春(31)は、10月の木曜の午前4時12分、母からの電話で、5年会っていなかった父・守の死を知る。海辺の町の病院で、看護師に「お迎えの葬儀社はお決まりですか」と聞かれ、何も決められない。母が渡したのは、葬儀屋一筋38年の父が書いた「段取り帳 自分の分」。1頁目には「病院に急かされても、葬儀の中身は決めなくていい。搬送だけ柏木に頼め」。父の後輩・柏木は、搬送と安置まで引き受け、葬儀を頼むかは見積もりを見て決めてほしいと言う。家に帰った父の枕元で、柏木は火葬までの流れを示す。火葬は亡くなってから24時間たたないとできない。叔父の勝は「喪主は誰だ」と言い出す。2頁目を開くと、父はもう自分の葬式を決めていた。一般葬、参列300人。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。東京のイベント制作会社の進行管理。葬儀屋の父とは5年会っていなかった。 - **篠原 守**:小春の父。町の小さな葬儀社「つばめ葬祭」の葬祭ディレクター一筋38年。64歳で急逝。自分の葬儀の「段取り帳」を遺した。 - **篠原 澄江**:小春の母。62歳。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。守に仕事を教わった後輩。 - **篠原 勝**:守の弟。60歳。漁協勤め。声が大きい。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜明け前の暗い部屋。布団の横の床で、スマートフォンが光って震えている。「ブブッ」の描き文字。) > 10月の、木曜。午前四時十二分。 (絵:スマートフォンに伸びる手。画面の光が指を照らす。) **電話の母**(心の声):(小春……お父さんが、ね……) > 父が死んだと、電話で知った。 (絵:夜明けの海辺の小さな町。丘の上の病院と、淡い色の海。) > 始発の新幹線と、タクシーで、3時間。海の町は、まだ眠っていた。 (絵:夜明けの病院の廊下。大きな鞄を肩にかけ、息を切らして立つ女性。) [人物の紹介] > イベント制作会社・進行管理(東京) > 篠原 小春(31) (絵:病室。顔に白い布をかけられた人の横で、小柄な母がその大きな手を握っている。) [人物の紹介] > 小春の母 > 篠原 澄江(62) **篠原 澄江**:「小春……夜中に胸が苦しいって」 **篠原 澄江**:「病院で手を尽くしてもらったんだけど……」 **篠原 小春**(心の声):(……お父さん) > 5年、会っていなかった。最後に話したのは、電話で3分。 (絵:病室の入口で、看護師がクリップボードを持ち、静かに話しかけている。) **看護師**:「ご愁傷さまです」 **看護師**:「あのお迎えの葬儀社さんはお決まりですか」 **看護師**:「こちらでご紹介もできます」 **看護師**:「それとお部屋は朝のうちに空けていただけますか……」 (絵:言葉を失って固まる小春の顔の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(葬儀社?今?何をどこにどの順番で?) (絵:回想(鉛筆のセピア)。小学校の運動会。体操服の少女が、保護者の列の空いた場所を見ている。) > 父は、葬儀屋だった。 > 運動会にも、卒業式にも、来なかった。いつも、誰かのお葬式だったから。 (絵:回想(鉛筆のセピア)。夜明けの玄関で、黒い礼服の父が靴を履く。廊下から、パジャマの少女が見ている。) [人物の紹介] > 小春の父・つばめ葬祭の葬祭ディレクター > 篠原 守 **父**:「すまん、小春行ってくるご家族が待ってるんだ」 **篠原 澄江**:「小春これねお父さんの鞄に入ってたの」 (絵:母の両手が差し出す、使い込まれた厚い手帳。輪ゴムと、たくさんの付箋、頁の束ごとに貼られたテープの封。) [窓] > 段取り帳 自分の分 > 篠原 守 **篠原 澄江**:「表に「小春に渡せ」って」 (絵:病院の待合の椅子で、膝の上の手帳を開く小春。窓からの朝の光。) [窓] > 小春へ。 > 俺が死んだら、1頁目から順に開け。 > 先の頁は、書いてある時が来るまで開けるな。 [窓] > 1頁目 > 一、まず、深呼吸。 > 二、病院に急かされても、葬儀の中身は決めなくていい。 >   搬送だけ、つばめ葬祭の柏木に頼め。番号は裏表紙。 > 三、医者から、死亡診断書を受け取れ。 > **ℹ 搬送(はんそう)と安置(あんち)**(現実の事実):病院などで亡くなると、ご遺体を自宅や葬儀社の安置施設へ移し(搬送)、葬儀まで休ませます(安置)。搬送は急いで頼むことが多いですが、その時に葬儀の中身や依頼先まで決める必要はありません。国民生活センターは、見積書を受け取って明細を確かめ、前もって複数の葬儀社を比べるよう呼びかけています。 > - 問:搬送のあとで、ほかの葬儀社に頼み直せる? 答:頼み直すことはできますが、搬送の費用を求められた相談事例があります(国民生活センター)。搬送を頼む時に、搬送・安置の料金と、葬儀を別に頼んだ場合の扱いを確かめておくと安心です。 > - 出典:[国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)](https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html) > - 出典:[国民生活センター 見守り新鮮情報 第475号「もしもの時に慌てないように! 葬儀サービスのトラブル」(2024年2月14日)](https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen475.html) > **ℹ 死亡診断書(しぼうしんだんしょ)と死亡届**(現実の事実):死亡届の用紙は、医師が書く死亡診断書(または死体検案書)と一体になっています。死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村に出します。手数料はかかりません。 > - 問:死亡届を出せる人は? 答:同居の親族などに届出の義務があり、同居していない親族も届け出ることができます(戸籍法第87条)。 > - 出典:[法務省「死亡届」](https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html) > - 出典:[e-Gov 法令検索「戸籍法」(第25条・第86条〜第88条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224) **篠原 小春**(心の声):(はは死んでも段取りか) **篠原 小春**:「……もしもしつばめ葬祭の柏木さんですか」 **篠原 小春**:「篠原守の娘です」 (絵:目を閉じて深く息を吸い、スマートフォンを耳に当てる小春。) (絵:早朝の病院の裏口。ツバメの小さな印だけの濃い灰色の寝台車。その前で深く頭を下げる背の高い青年。) (絵:白い手袋の背の高い青年が、悲しみをこらえた真剣な目でこちらを見る。) [人物の紹介] > つばめ葬祭・葬祭スタッフ(守の後輩) > 柏木 蓮(26) **柏木 蓮**:「守さんをお迎えに上がりました」 **柏木 蓮**:「まず搬送とご自宅での安置までお引き受けします」 **柏木 蓮**:「あ、あの葬儀をうちでなさるかは見積もりを見てから決めてください」 **篠原 小春**:「……父の会社なのに?」 **柏木 蓮**:「守さんの教えなんです」 **柏木 蓮**:「「急がせて決めさせた葬式は一生後悔が残る」って」 (絵:朝日の海沿いの道を走る寝台車。漁港と、光る海。) > 父は、父が38年通った道を、家へ帰った。 (絵:朝の光が障子から差す和室。白い布団に寝かされた父と、枕元の小さな机のろうそく・線香・白い小菊。そばに座る母。) **柏木 蓮**:「枕元はこのくらいで」 **柏木 蓮**:「お線香は絶やさなくても大丈夫ですよ」 **篠原 澄江**:「そう……お父さん夜通し番をしろってよく人に言われてたけど」 **柏木 蓮**:「今は眠ってください明日から長いので」 **柏木 蓮**:「えっとここから先の流れです」 (絵:低い机をはさんで、正座した柏木が紙を見せながら、小春と母に説明している。) [作中の画面] > これからの流れ(つばめ葬祭) > ① 安置(今ここ) > ② 打ち合わせ 喪主・日程・葬儀の形・見積もり > ③ 死亡届を出し、火葬許可証を受け取る > ④ 納棺 > ⑤ 通夜 > ⑥ 葬儀・告別式 > ⑦ 出棺・火葬 > **ℹ 納棺(のうかん)**(現実の事実):亡くなった人を棺に納める事です。ふつうは通夜の前に、家族や親族の手で納め、故人が大切にしていた物を一緒に入れる事もあります。金属やガラスの物は入れないのが一般的で、地域によっては納棺を専門の業者が行います。 > - 出典:[コトバンク(葬儀辞典・デジタル大辞泉)「納棺」](https://kotobank.jp/word/%E7%B4%8D%E6%A3%BA-596202) > **ℹ 通夜(つや)**(現実の事実):葬儀の前の夜に、家族や知人が集まり、亡くなった人のそばで過ごして冥福を祈る事です。もとは、夜通し亡くなった人を守る物でした。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「通夜」](https://kotobank.jp/word/%E9%80%9A%E5%A4%9C-99508) > **ℹ 葬儀・告別式(こくべつしき)**(現実の事実):告別式は、親族や知人が亡くなった人に最後の別れを告げる儀式です。もとは家族や近い親族による葬儀の後に、友人・知人が別れをする式でしたが、今は「葬儀・告別式」として一つの式で行う事が多くなりました。 > - 出典:[コトバンク(葬儀辞典・デジタル大辞泉)「告別式」](https://kotobank.jp/word/%E5%91%8A%E5%88%A5%E5%BC%8F-499786) **柏木 蓮**:「すみません火葬は亡くなってから24時間はできなくて……早くても明日の朝より後です」 > **ℹ 火葬(かそう)は死亡から24時間たってから**(現実の事実):法律(墓地、埋葬等に関する法律 第3条)で、火葬は死亡後24時間を経過した後でなければ行ってはならないと決まっています。火葬には、市区町村長が出す火葬許可証も要ります。 > - 問:火葬許可証はどこでもらう? 答:死亡届を受理した市区町村長が火葬を許可し、火葬許可証を交付します(同法第5条・第8条)。火葬場は火葬許可証を受け取った後でなければ火葬できません(同法第14条)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(第3条・第5条・第8条・第14条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048) **篠原 小春**(心の声):(これ……進行表だ父の仕事の進行表) **柏木 蓮**:「小春さんってイベントの進行をなさってるんですよね守さん、自慢してました」 **篠原 小春**(心の声):(……知らないそんな話一度も) (絵:玄関の戸を開けて飛び込んでくる大柄な赤ら顔の男。紺の作業ジャンパー、泣き顔。「ガラッ」の描き文字。) [人物の紹介] > 守の弟・漁協勤め > 篠原 勝(60) **篠原 勝**:「兄貴ぃ!なんで先に逝っちまうんだよぉ!」 **篠原 勝**:「ぐすっで喪主は誰だ」 **篠原 勝**:「篠原の家にゃ男がおらんだろ」 **篠原 澄江**:「勝さん、今それ……」 **篠原 小春**(心の声):(喪主……それも誰かが決めるのか) > 段取り帳の、1頁目の終わりに、こう書いてあった。 [窓] > 搬送が済んだら、2頁目を開け。 (絵:小春の指が、手帳の頁の束を留めたテープの封をはがす。) [窓] > 2頁目 > 俺の葬式は、もう決めてある。 > つばめ葬祭に、生前の見積もりを預けてある。 > 一般葬。参列、300人。 **篠原 澄江**:「えっ……300人?」 **柏木 蓮**:「は、はいお預かりしています6年前に」 (絵:夕方の和室。ろうそくの暖かい光の中、手帳を胸に抱いて前を見る小春。) **篠原 小春**(心の声):(お父さんあなたの葬式誰が仕切るのよ) ## この話で分かること ### 葬儀までの流れは? 亡くなってから火葬まで何をする? 一般的には、医師から死亡診断書を受け取る → 葬儀社に頼んでご遺体を自宅や安置施設へ搬送・安置 → 葬儀社と打ち合わせ(喪主・日程・葬儀の形・見積もり)→ 死亡届を出して火葬許可証を受け取る → 納棺 → 通夜 → 葬儀・告別式 → 出棺・火葬、の順に進みます。 ### 亡くなってすぐに火葬できる? できません。墓地、埋葬等に関する法律 第3条で、死亡後24時間を経過した後でなければ火葬してはならないと決まっています。火葬には、死亡届を受理した市区町村長が出す火葬許可証も要ります。 ### 病院で紹介された葬儀社に決めないといけない? 決めなくても構いません。病院から搬送を急がされることはありますが、葬儀をどこにどう頼むかは見積書を見てから決められます。国民生活センターは、見積書を必ず受け取って明細を確かめること、前もって複数の葬儀社を比べること、打ち合わせは複数人で行うことを呼びかけています。 ### 死亡届はいつまでに、どこへ出す? 死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった時は3か月以内)に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ出します。届書は死亡診断書(死体検案書)と一体の用紙です。 --- 父の葬儀は、父が仕切る 第1話「午前四時十二分」 つづく # 父の葬儀は、父が仕切る 第2話「喪主は、誰がやる」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/2-moshu-wa-dare/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[父の葬儀は、父が仕切る](https://tooneru.com/henshubu/soshiki/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/2-moshu-wa-dare/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 父・守が亡くなって2日目の朝。つばめ葬祭の柏木は、最初に喪主を決めてほしいと言う。叔父の勝は「長男がおらんなら弟の俺だ」と言い、母の澄江は人前で挨拶する自信がない。喪主は法律で決まっていない。お墓や仏壇を継ぐ人は民法に別の決まりがあり、喪主と同じ人でなくてもよい。父が6年前に預けた生前の見積もりの喪主の欄には、小春の名前があった。勝手に決められたことに小春は反発するが、柏木から喪主のすることを聞き、玄関のすり減った父の靴と、父のシャツをたたむ母の背中を見て、喪主を引き受ける。3頁目には、小春を喪主にした理由と、最初の仕事が書いてあった。見積もりを、疑え。父の会社の見積もりでもだ。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。イベント制作会社の進行管理。父の葬儀の喪主を引き受ける。 - **篠原 澄江**:小春の母。62歳。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。守の後輩。 - **篠原 勝**:守の弟。60歳。古い考えだが兄思い。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の和室。ろうそくの明かりの中、布団に眠る父のそばで、膝を抱えて座る小春。) > その夜は、眠れなかった。 > 父の顔は、5年前より小さかった。 (絵:ろうそくの小さな火と、細く立ちのぼる線香の煙。「ジ…」の描き文字。) **篠原 小春**(心の声):(お父さん300人って何なの) (絵:朝の港町。漁船の並ぶ港のそばに建つ、古い二階建ての家。) > 金曜。父が亡くなって、2日目。 (絵:朝の居間。低い机を囲む叔父・母・小春と、書類を広げる柏木。) **柏木 蓮**:「えっと最初に決めていただきたいのが喪主です」 > **ℹ 喪主(もしゅ)**(現実の事実):葬儀を主宰する遺族の代表です。葬儀社との打ち合わせで日程や葬儀の形を決め、通夜・葬儀で弔問を受け、挨拶をします。誰がなるかを決めた法律はなく、故人の希望や家族の話し合いで決めます。 > - 問:喪主は一人でないといけない? 答:法律の決まりはありません。兄弟姉妹が連名で務めることもあります。 (絵:大柄な叔父が、自分の胸を親指で指して大声を出している。) **篠原 勝**:「篠原の本家に長男はおらん」 **篠原 勝**:「なら弟の俺だろ!」 **篠原 勝**:「いや待て澄江さんか妻だもんな」 (絵:湯のみを持つ母の手が震えている。うつむいた母の顔の寄り。) **篠原 澄江**:「私は……無理よ人の前で挨拶なんて」 **篠原 澄江**:「声が出ないもの」 **篠原 小春**:「……あの喪主って法律で決まってるんですか?」 **柏木 蓮**:「いえ決まりはないんです」 **柏木 蓮**:「故人さんのご希望とご家族の話し合いで決めます」 (絵:手のひらを上に向け、落ち着いて説明する柏木。) **柏木 蓮**:「僕が見てきたのは奥さまかお子さんがなさる式がほとんどでした」 **篠原 勝**:「じゃあ墓は?仏壇は?継ぐのは喪主だろ」 **柏木 蓮**:「あっ、それが……喪主と同じ人でなくてもいいんです」 **柏木 蓮**:「お墓や仏壇を継ぐ人は民法で別に決まってて」 > **ℹ 祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)(お墓・仏壇を継ぐ人)**(現実の事実):系譜・祭具(仏壇など)・墳墓(お墓)は、相続財産とは別に、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき人が継ぎます。故人が指定していればその人が継ぎ、慣習がはっきりしない時は家庭裁判所が決めます(民法第897条)。 > - 問:喪主と祭祀承継者は同じ人? 答:同じでなければならない決まりはありません。喪主は葬儀の代表、祭祀承継者はお墓・仏壇などを継ぐ人で、別の決まりです。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「民法」(第897条 祭祀に関する権利の承継)](https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089) **柏木 蓮**:「それと……言いにくいんですけど」 **柏木 蓮**:「守さんの生前の見積もりに喪主の欄があって」 (絵:書類の「喪主」の欄に、手書きの名前(読めない走り書き)と父の印。) [作中の画面] > 生前見積もり お申込書(6年前) > 喪主(予定) 篠原 小春(長女) (絵:目を見開き、怒りがこみ上げる小春の顔の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(――は?勝手に) **篠原 小春**(心の声):(5年も話してないのに運動会にも来なかったくせに) (絵:回想(鉛筆のセピア)。入学式の校門の前で、母と手をつないで立つ少女。隣に父はいない。) > 入学式の写真に、父はいない。撮っていたのが母だったから、母もいない。 **篠原 小春**:「無理です!私東京で仕事もあるし葬儀なんて何も知らない」 **柏木 蓮**:「何も知らない方が喪主をなさるんです」 **柏木 蓮**:「……たいてい」 (絵:手のひらを上に向けて、落ち着いて話す柏木の寄り。) **柏木 蓮**:「喪主のお仕事はこれくらいです」 **柏木 蓮**:「分からないところは全部、僕が!」 [作中の画面] > 喪主がすること(つばめ葬祭) > ・葬儀社との打ち合わせ(日程・葬儀の形・見積もり) > ・お寺など宗教者への連絡 > ・親族・知人への知らせ > ・通夜・葬儀で弔問を受ける、挨拶をする > ・火葬に立ち会う > ・費用の支払い(施主を兼ねる時) > **ℹ 弔問(ちょうもん)**(現実の事実):亡くなった人の家族を訪ねて、お悔やみを伝える事です。通夜や葬儀に来る人を弔問客と呼び、喪主や家族は弔問を受けてお礼を言います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「弔問」](https://kotobank.jp/word/%E5%BC%94%E5%95%8F-569111) **篠原 小春**:「施主?」 **柏木 蓮**:「あ、費用を出す人です」 **柏木 蓮**:「喪主が兼ねることが多いですねそれを施主と言います」 > **ℹ 喪主(もしゅ)と施主(せしゅ)の違い**(現実の事実):どちらも法律で決められた言葉ではありません。一般に、喪主は葬儀を主宰し弔問を受ける遺族の代表、施主は葬儀の費用を負担し運営を支える人を指します。家族の葬儀では喪主が施主を兼ねることが多く、会社が費用を出す社葬では会社が施主になります。 > - 問:法事の施主は? 答:葬儀の後の法要(四十九日など)を営む人を施主と呼ぶことも多く、喪主と同じ人がなるとは限りません。 **篠原 勝**:「だがな女の喪主なんて聞いたことが――」 (絵:自分の胸を親指で指して大声を出す、叔父の勝の寄り。) **柏木 蓮**:「き、決まりはないです!」 **柏木 蓮**:「娘さんが喪主の式僕、何度もお手伝いしました」 **篠原 澄江**:「ふふ、勝さん令和よ」 **篠原 勝**(心の声):(……おう) **篠原 小春**:「はい、父が……はい」 **篠原 小春**:「来週の現場は進行表を送っておきます」 (絵:玄関の土間で、電話を耳に当て、小さく頭を下げる小春の後ろ姿。) (絵:玄関に並んだ、かかとのすり減った黒い革靴。) > 玄関に、父の仕事の靴があった。かかとが、斜めに減っていた。 (絵:回想(鉛筆のセピア)。黒い礼服の父が、泣き崩れる遺族に深く頭を下げている。) > 誰かの家族が、父を待っていた。あの朝も、あの朝も。 (絵:隣の部屋で、父のシャツをたたむ母の小さな背中。戸口からそれを見ている小春。) **篠原 澄江**:「お父さんねボタンが取れても自分でつけてたのよ」 **篠原 澄江**:「仕事の時だけは」 **篠原 小春**(心の声):(……今待ってる家族は私たちだ) **篠原 小春**:「私がやります喪主」 (絵:机の前で立ち上がり、決意した顔でこちらを見下ろす小春。) **篠原 勝**:「へっ兄貴の娘だな言い出したら聞かん顔だ」 (絵:はげ頭をかいてぶつぶつ言う叔父。その後ろで小さくほほえむ柏木。) **柏木 蓮**:「やっぱり守さんに似てます」 **篠原 小春**(心の声):(似てない。――たぶん) > 2頁目の裏に、父の字があった。 [窓] > 喪主は、小春に頼む。 > 理由は、3頁目に書く。 > 3頁目は、喪主が決まったら開け。 (絵:テープの封をはがして開いた手帳の三頁目。父の太い字の走り書き(読めない)。) [窓] > 3頁目 > 小春を喪主にした理由。 > お前は、段取りの人間だからだ。俺に似て。 **篠原 小春**(心の声):(……似てないって) [窓] > 喪主の最初の仕事。 > 見積もりを、疑え。 > 俺の会社の見積もりでもだ。 (絵:低い机の上で、厚い見積書を小春の方へそっと滑らせる柏木の白い手袋の手。) **柏木 蓮**:「これが守さんの生前のお見積もりです」 **柏木 蓮**:「6年前の」 [作中の画面] > 御見積書 つばめ葬祭 > 一般葬(参列 300名想定) > 合計 ――――― (絵:書類を見て、仕事の時の目つきに変わる小春の目の寄り。) **篠原 小春**(つぶやき):「……一式、一式、一式」 **篠原 小春**(心の声):(お父さんこれ業者の見積もりなら私、突き返すよ) ## この話で分かること ### 喪主とは? 何をする?(喪主 やること) 喪主は、葬儀を主宰する遺族の代表です。葬儀社との打ち合わせ(日程・葬儀の形・見積もり)、お寺など宗教者への連絡、親族・知人への知らせ、通夜・葬儀で弔問を受けることと挨拶、火葬への立ち会いなどを担います。費用の支払いを兼ねることもあります。 ### 喪主はどう決める? 法律で決まっている? 喪主を誰にするかを決めた法律はありません。故人の希望と家族の話し合いで決め、配偶者や子が務めることが多いです。お墓や仏壇を継ぐ人(祭祀承継者)は、民法第897条で、故人の指定か慣習に従って決まると別に定められています。 ### 喪主と施主の違いは? どちらも法律の言葉ではありません。一般に、喪主は葬儀を主宰し弔問を受ける遺族の代表、施主は費用を負担し運営を支える人を指します。家族の葬儀では喪主が施主を兼ねることが多く、社葬では会社が施主になります。 ### 娘や女性が喪主になってもいい? 構いません。喪主の性別や続柄を決めた法律はありません。長男がいない、配偶者が高齢で務めにくいなど、家族の事情に合わせて決めます。 --- 父の葬儀は、父が仕切る 第2話「喪主は、誰がやる」 つづく # 父の葬儀は、父が仕切る 第3話「見積書の「一式」」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/3-mitsumori-isshiki/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[父の葬儀は、父が仕切る](https://tooneru.com/henshubu/soshiki/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/3-mitsumori-isshiki/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 喪主になった小春は、父が6年前に預けた一般葬・300名想定の見積書を読む。並ぶのは「一式」。小春は仕事で覚えたやり方で、人数で変わる物(通夜振る舞い・返礼品)、日数で変わる物(安置・ドライアイス・式場)、見積もりに入っていない物(火葬料・お布施)を色で分け、柏木に明細を出してもらう。会館の一番大きい式場は120席、母の貯金は多くない。叔父は300人が兄の遺言だと譲らない。夜、小春は国民生活センターの発表で、葬儀の料金の相談が多いことを知る。柏木は、父が「叩いた数字は全部見せろ」と言っていたと話す。父は会社の健康保険に入っていたので、母が申請すれば埋葬料5万円が出る。4頁目の日付は先月。「300人は見栄だった。家族葬にしろ。ただし――」。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。喪主。イベントの進行管理の仕事で、見積書を読むのに慣れている。 - **篠原 澄江**:小春の母。62歳。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。守に仕事を教わった。 - **篠原 勝**:守の弟。60歳。300人の葬式が兄の遺言だと言い張る。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の居間。低い机に見積書を広げ、ノートパソコンと三色の蛍光ペンを並べる小春。向かいに柏木。) > 父が亡くなって、2日目の昼。喪主の、最初の仕事。 [作中の画面] > 御見積書 つばめ葬祭(6年前・作中の値) > 一般葬(参列 300名想定) > 葬儀一式(祭壇・棺・寝台車・霊柩車・人員) 一式 98万円 > 式場使用料 2日 一式 20万円 > 通夜振る舞い 300名分 一式 72万円 > 返礼品・会葬礼状 300名分 一式 54万円 > 安置・ドライアイス 2日分 一式 8万円 > 合計 252万円 > **ℹ 寝台車(しんだいしゃ)と霊柩車(れいきゅうしゃ)**(現実の事実):寝台車は、寝台を備えた車で、葬儀では、亡くなった病院などから安置する所まで、故人を寝かせたまま運ぶのに使います。霊柩車は、棺を載せて運ぶ車で、出棺の時に斎場から火葬場へ向かいます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「寝台車」](https://kotobank.jp/word/%E5%AF%9D%E5%8F%B0%E8%BB%8A-538306) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「霊柩車」](https://kotobank.jp/word/%E9%9C%8A%E6%9F%A9%E8%BB%8A-660916) > **ℹ 通夜振る舞い(つやぶるまい)**(現実の事実):通夜の後に、弔問に来た人へ食事や飲み物を出して、感謝を伝える席です。地方によって形が違い、お茶やお菓子で済ませたり、食事券を渡したりする所もあります。来た人の数で費用が変わります。 > - 出典:[コトバンク(葬儀辞典)「通夜振る舞い」](https://kotobank.jp/word/%E9%80%9A%E5%A4%9C%E6%8C%AF%E3%82%8B%E8%88%9E%E3%81%84-1457286) > **ℹ 会葬礼状(かいそうれいじょう)**(現実の事実):葬儀に来てくれた人に渡すお礼の手紙です。もとは葬儀の後に送る物でしたが、今は通夜や告別式の受付で、清めの塩やハンカチなどと一緒に渡す事が多くなりました。 > - 出典:[コトバンク(葬儀辞典)「会葬礼状」](https://kotobank.jp/word/%E4%BC%9A%E8%91%AC%E7%A4%BC%E7%8A%B6-1457156) (絵:見積書の行に引かれた、三色の蛍光ペンの線。机に転がるペン。) **篠原 小春**:「柏木さんこの「一式」全部中身を出してください」 **柏木 蓮**:「は、はい!守さんにも同じことを言われてました」 **柏木 蓮**:「「一式は聞かれたら全部出せ」って」 (絵:背筋を伸ばして座り、汗を浮かべながらも真剣な柏木。) (絵:ペンの先で見積書の行を叩き、鋭い目をする小春の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(イベントの見積もりと同じだ) **篠原 小春**(心の声):(高くなるのはいつも同じところ) (絵:回想(色の抜けた現代の記憶)。東京の制作会社の打ち合わせ室で、業者の見積書を前に指を立てて説明する小春。) > 一式は、中身を知らない人に考えさせないための言葉だ。――と、私は仕事で習った。 **篠原 小春**:「よし色を分けます」 [作中の画面] > 小春の洗い出し > 黄:人数で変わる 通夜振る舞い・返礼品・会葬礼状 > 青:日数で変わる 安置・ドライアイス・式場 > 赤:見積もりに入っていない 火葬料・お布施・追加の花 > 「一式」:明細をもらう > **ℹ お布施(ふせ)**(現実の事実):お経をあげてもらったお礼として、お寺の僧に渡すお金や品物です。葬儀社の見積もりには入らない事が多く、額はお寺や地域で違います。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「布施」](https://kotobank.jp/word/%E5%B8%83%E6%96%BD-124799) **柏木 蓮**:「あっ……すみません先に言うべきでした」 **柏木 蓮**:「赤のところ火葬場の料金とお布施はうちの見積もりには入らないんです」 > **ℹ 葬儀の見積書の見方**(現実の事実):契約の前に見積書を必ず受け取り、明細を確かめます。国民生活センターは、契約に含まれている項目は何か、含まれていない項目は別料金なのか、追加のサービスと料金も含めて確かめるよう呼びかけています。総額と「一式」だけで明細の無い見積書は、トラブルのもとになります。 > - 問:打ち合わせは一人でしていい? 答:国民生活センターは、聞き漏らしや確認不足を防ぐため、親族や第三者など複数人で打ち合わせをするよう勧めています。 > - 出典:[国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)](https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html) > - 出典:[国民生活センター 見守り新鮮情報 第475号「もしもの時に慌てないように! 葬儀サービスのトラブル」(2024年2月14日)](https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen475.html) **柏木 蓮**:「人数の分は6年前の300名のまま飲食だけは実際の数で精算します」 (絵:ファイルを開き、明細の一覧を指でたどって見せる柏木。) **篠原 小春**:「日数のほうは?」 **柏木 蓮**:「火葬場の空き次第です1日延びると安置とドライアイスが1日分、増えます」 > **ℹ 人数と日数(にっすう)で変わる葬儀の費用**(現実の事実):飲食・返礼品のように参列者の人数で変わる費用と、安置・ドライアイス・式場のように日数で変わる費用は、見積もりの後に増えやすい部分です。火葬場の料金やお寺へのお布施のように、葬儀社の見積もりに入らない費用もあります。どれが見積もりに入っているかを最初に確かめます。 > - 問:どんな追加の料金が相談に出てくる? 答:国民生活センターの事例には、請求書にマイクの使用料、花や仏具の搬入搬出代、仏衣を着せる費用などが含まれていて、チラシの内容と違ったというものがあります。 > - 出典:[国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)](https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html) (絵:港町の小さな葬儀会館の式場。並んだ折りたたみ椅子は百席ほど。) **柏木 蓮**:「それと……言いにくいんですが」 **柏木 蓮**:「うちの一番大きい式場120席なんです」 **篠原 小春**(心の声):(は?300人入らないじゃない) (絵:台所で、湯気の立つやかんのそばに座り、預金通帳を黙って見つめる母。) **篠原 澄江**:「あのね、小春お父さんの貯金ねそんなに無いのよ」 **篠原 澄江**:「人の葬式はあんなに考えるのに自分のことは何にも……」 (絵:机を叩いて身を乗り出す赤ら顔の叔父。「バン」の描き文字。) **篠原 勝**:「300人呼ぶのが兄貴の遺言だろうが!」 **篠原 勝**:「兄貴は町の世話になったんだぞ!」 **篠原 小春**:「……お金を出すのは叔父さんじゃないでしょう?」 **篠原 勝**(心の声):(ぐっ……) (絵:夜の縁側。暗い海を前に座る小春の顔を、スマートフォンの光が照らす。) > 夜。「葬儀 費用 トラブル」と打ってみた。 (絵:手の中のスマートフォン。画面はぼんやりした光だけ。) [作中の画面] > 国民生活センターの発表(2026年6月) > 葬儀サービスの相談 917件(2025年度) > 「高価格・料金」の相談の割合 52.6% > 相談の平均契約購入金額 約109万円(2025年度) > 例:「家族葬50万円」の表示を見て頼んだら、総額200万円を超えた **篠原 小春**(心の声):(みんな分からないまま決めてるんだ) **篠原 小春**(心の声):(一番何も考えられない日に) **柏木 蓮**:「守さんよく言ってました」 **柏木 蓮**:「「葬儀屋はご家族が泣いてる間に電卓を叩く仕事だ」って」 (絵:夜の縁側。小春の隣に、缶コーヒーを二本持った柏木が座る。) **柏木 蓮**:「「だから叩いた数字は全部見せろ」って」 (絵:回想(鉛筆のセピア)。若い柏木に、黒ネクタイの結び方を教える父。) **篠原 小春**:「……父ってどんな人でした?仕事の時」 **柏木 蓮**:「細かかったですものすごく」 **柏木 蓮**:「でもご家族が帰る時は必ず外まで見送ってました」 (絵:目に涙をにじませて、少し笑う柏木の顔の寄り。) (絵:翌朝の居間。書き直した紙を母と叔父の前に置き、会議のように説明する小春。) **篠原 小春**:「よし父の見積もりを今の町と母のお金で組み直します」 **篠原 小春**:「それとお父さん会社の健康保険に入ってたからだから――」 **柏木 蓮**:「あっ、はい!埋葬料が出ます奥さまが申請で5万円」 > **ℹ 埋葬料(まいそうりょう)と葬祭費(そうさいひ)(健康保険から出るお金)**(現実の事実):会社の健康保険(協会けんぽなど)の被保険者が業務外の事由で亡くなると、生計を維持されていた人が申請して埋葬料を受け取れます。協会けんぽでは5万円です。国民健康保険や後期高齢者医療に入っていた人には、市区町村などから葬祭費が出ます(額は自治体で違います)。 > - 問:申請の期限は? 答:健康保険法第193条で、保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効になります。国民健康保険の葬祭費も、国民健康保険法第110条で同じく2年です(例えば江東区は、葬祭を行った日の翌日から2年)。 > - 問:国保の葬祭費はいくら? 答:自治体で違います。例えば江東区は7万円です。住んでいた市区町村で確かめます。 > - 出典:[全国健康保険協会(協会けんぽ)「埋葬料・埋葬費」](https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3100/r149/) > - 出典:[e-Gov 法令検索「健康保険法」(第100条 埋葬料・第193条 時効)](https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070) > - 出典:[e-Gov 法令検索「国民健康保険法」(第58条 葬祭費・第110条 時効)](https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192) > - 出典:[江東区「国民健康保険加入者が死亡したときの葬祭費の支給」](https://www.city.koto.lg.jp/250104/fukushi/kokumin/kyufu/5169.html) **篠原 澄江**:「あら……そんなのがあるの?」 **篠原 勝**:「で300人はどうする」 > 3頁目の終わりに、こうあった。 [窓] > 見積もりを読み終えたら、4頁目を開け。 (絵:テープの封をはがして開いた手帳の四頁目。頁の端に新しいインクの日付(読めない)。) **篠原 小春**:「え日付が先月だ」 [窓] > 4頁目 > 300人は、見栄だった。 > 6年前の俺は、町で一番の葬式を出したかった。 > 家族葬にしろ。 > ただし―― **篠原 小春**:「ちょっと「ただし」の先が次の頁に続いてる」 (絵:手帳を持ったまま、息をのむ小春の顔の寄り。) [窓] > (続きは、葬儀の形を決める時に開け) **篠原 勝**:「兄貴……!最後まで段取りかよ!」 **篠原 澄江**:「ふふ。お父さんらしい」 (絵:上から見た和室。眠る父の布団のまわりに小さく座る三人と柏木。小春の手に手帳。) **篠原 小春**(心の声):(お父さん先月何があったの) ## この話で分かること ### 葬儀の見積もりはどこを見る? 契約の前に見積書を必ず受け取り、明細を確かめます。契約に含まれている項目、含まれていない項目(別料金か)、追加のサービスとその料金を確かめ、「一式」としか書かれていない所は中身を聞きます。打ち合わせは親族など複数人で行うと、聞き漏らしを防げます(国民生活センター)。 ### 葬儀費用が見積もりより高くなるのはなぜ? 参列者の人数で変わる費用(飲食・返礼品など)と、日数で変わる費用(安置・ドライアイス・式場など)が、見積もりの後に増えやすいためです。火葬場の料金やお寺へのお布施など、葬儀社の見積もりに入らない費用もあります。国民生活センターには、広告の低い価格で頼んだのに、オプションが加わって高額になったという相談が寄せられています。 ### 葬儀費用のトラブルはどのくらいある? 国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた葬儀サービスの相談は2025年度に917件で、そのうち「高価格・料金」に関する相談の割合は52.6%でした。相談に出てくる契約の平均購入金額は、2025年度で約109万円です。 ### 葬儀の時に健康保険から出るお金は? 会社の健康保険の被保険者が業務外の事由で亡くなると、生計を維持されていた人に埋葬料が出ます(協会けんぽは5万円)。国民健康保険・後期高齢者医療の人には、市区町村などから葬祭費が出ます(額は自治体で違い、例えば江東区の国保は7万円)。どちらも申請が要り、期限は2年です。 --- 父の葬儀は、父が仕切る 第3話『見積書の「一式」』 つづく # 父の葬儀は、父が仕切る 第4話「三百人と、十二人」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/4-sanbyakunin-to-juninin/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[父の葬儀は、父が仕切る](https://tooneru.com/henshubu/soshiki/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/4-sanbyakunin-to-juninin/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 父が亡くなって3日目。柏木は葬儀の形を、一般葬・家族葬・一日葬・直葬の4つに分けて見せる。名前が同じでも中身は葬儀社で違う。4頁目の続きには「ただし、町の人が来たら、断るな」。港町には漁協の放送で知らせが回り、近所の人が煮物を持って訪ねてくる。300人は見栄ではなく、町の本当の数だった。「家族葬だから安い」とは限らないと柏木は言う。小春は、父が昔「来てくれた人を玄関で帰すな。焼香だけしてもらえばいい」と言っていたのを思い出し、親族12名の家族葬に、通夜の前の「お別れの時間」を足す。火葬場は、日曜が友引で休み。火葬は月曜の11時に決まり、父は月曜まで家にいることになる。5頁目には「通夜に、宮下という人が来る。必ず通せ。香典は受け取るな」。母の顔がこわばる。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。喪主。 - **篠原 澄江**:小春の母。62歳。「宮下」の名に顔をこわばらせる。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。 - **篠原 勝**:守の弟。60歳。受付を買って出る。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:土曜の朝の居間。柏木が比べの紙を広げ、小春と母がのぞき込む。腕を組む叔父。) > 土曜。父が亡くなって、3日目。 **柏木 蓮**:「えっと葬儀の形は大きく分けると4つです」 [作中の画面] > 葬儀の形(国民生活センターの言い方) > 一般葬:知人や勤め先の人など、故人と関係のあった人が参列する > 家族葬:親族など身内だけで行う > 一日葬:通夜をせず、葬儀と告別式を1日で行う > 直葬:式をせず、火葬だけをする **柏木 蓮**:「ただ……」 **柏木 蓮**:「名前は同じでも中身は葬儀社ごとに違うんです」 > **ℹ 一般葬(いっぱんそう)・家族葬・一日葬(いちにちそう)・直葬(ちょくそう)**(現実の事実):国民生活センターは、故人と関係のあった人が参列する葬儀を「一般葬」、親族など身内のみで行う葬儀を「家族葬」、通夜をせず葬儀と告別式を1日で行う葬儀を「一日葬」、式をせず火葬だけをする葬儀を「直葬」という場合がある、と説明しています。法律で決まった区分ではなく、葬儀社によって扱う範囲が違います。 > - 問:家族葬の流れは一般葬と違う? 答:家族葬は参列者を身内に絞る形で、通夜・葬儀・告別式・火葬と進む流れは一般葬と同じことが多いです。通夜を省くと一日葬になります。 > - 出典:[国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)](https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html) **篠原 小春**:「父は4頁目で「家族葬にしろ」って」 **篠原 小春**:「――その先がこれ」 (絵:テープの封をはがして開く、手帳の次の頁。) [窓] > 4頁目の続き > ただし、町の人が来たら、断るな。 (絵:こぶしを握り、勝ち誇って笑う叔父。) **篠原 勝**:「ほら見ろ!300人だ!」 **篠原 小春**:「家族葬で断るなって……どっちなのよ」 (絵:困ったように眉を寄せる母の顔の寄り。) **篠原 澄江**:「ふふこの町黙ってても人が来るわよ」 **篠原 澄江**:「漁協の放送でもう皆知ってるもの」 (絵:朝の漁港。船のそばで話し込む漁師たち。一人の老漁師が、篠原の家の方を見ている。) (絵:玄関先で、煮物の鍋を抱えた近所の老女が頭を下げ、母が受け取っている。) **近所の人**:「守さんにはうちの人の時にほんとうにお世話になって……」 **近所の人**:「お葬式いつかね?お線香だけでも」 **篠原 小春**(心の声):(そっか300人は見栄じゃないこの町の本当の数だ) (絵:居間の机で、ノートパソコンと紙を前に、ペンをくわえて進行表を組む小春。) **柏木 蓮**:「あの、小春さん」 **柏木 蓮**:「家族葬でも高くならないとは限らなくて」 **柏木 蓮**:「「家族葬だから安い」と思って後で困る方多いんです」 > **ℹ 「家族葬だから安い」とは限らない**(現実の事実):国民生活センターは2026年6月、「家族葬だから安い」と思わないよう注意を呼びかけました。「家族葬50万円」の表示を見て頼んだのに高額なプランを案内され、明細の無い見積書と追加の費用で総額200万円を超えた事例などがあります。言葉のイメージにとらわれず、参列者の人数・日数・料金を具体的に確かめるよう勧めています。 > - 問:比べる時は? 答:国民生活センターは、事前に複数の葬儀社を比べ、内容をよく確かめることが大切だとしています。 > - 出典:[国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)](https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html) (絵:回想(鉛筆のセピア)。小さな家族葬の会館の入口で、呼ばれていない町の人たちに頭を下げ、焼香へ案内する父。) > 思い出した。父の仕事を一度だけ、手伝わされた日のこと。 **父**:「いいか小春家族葬でもな来てくれた人を玄関で帰すと一生気まずいんだ」 **父**:「焼香だけしてもらえばいい茶も引き物も要らん」 (絵:母と叔父の前に進行表を置き、指でたどりながら説明する小春。) **篠原 小春**:「よしこうします」 [作中の画面] > 篠原家の葬儀(喪主 篠原 小春) > 形:家族葬(親族12名) 通夜・告別式 > 通夜の前に「お別れの時間」1時間:どなたでも焼香を >  飲食・返礼品なし、会葬礼状だけ > 式場:小さい式場(40席) > 見積もり(作中の値):合計 114万円(火葬料・お布施は別) **篠原 小春**:「人数で変わるお金は親族の分だけ」 **篠原 小春**:「町の人には焼香の時間を渡す」 (絵:はげ頭をかき、しぶしぶうなずく叔父。) **篠原 勝**:「へっ兄貴が玄関で人を帰すのは見たことねえな」 **篠原 勝**:「よし受付は俺がやる町の顔は全部わかる!」 **篠原 澄江**:「もう勝さん泣かないでよ」 **柏木 蓮**:「じゃあ火葬場の予約を取ります」 **柏木 蓮**:「市の斎場一つしかなくて……」 (絵:カレンダーの紙のそばで、柏木の手がノートパソコンを操作している。画面は見えない。) (絵:松林の丘に建つ、静かで低い公営の斎場の建物。) (絵:カレンダーの紙を指さして説明する柏木。) **柏木 蓮**:「あ……今日の午後は埋まってます」 **柏木 蓮**:「明日の日曜は友引で斎場がお休みで」 > **ℹ 友引(ともびき)と火葬場(かそうば)の休み**(現実の事実):火葬場(斎場)の休みの日は自治体ごとに違います。友引を休場日にしている所が多くありますが、例えば横浜市は、友引を機器点検のための休場日としつつ、一部の斎場は開けています。日程は、葬儀社を通して斎場の空きを確かめて決めます。 > - 問:火葬の日が延びると? 答:安置やドライアイスなど、日数で変わる費用が増えることがあります。見積もりで1日あたりの額を確かめておきます。 > - 出典:[横浜市「市営斎場のご案内」](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/saijo/saijo/saijou.html) **柏木 蓮**:「月曜の11時が一番早いです」 **篠原 小春**:「じゃあ通夜は日曜の夜告別式は月曜の朝」 (絵:少し遠くを見るような、やわらかな小春の顔の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(お父さん月曜まで家にいるんだ) **篠原 小春**(心の声):(……5年ぶんには足りないけど) **篠原 小春**:「お父さん家族葬にしたでも玄関は開けとく」 **篠原 小春**:「……これでいい?」 (絵:夕暮れの和室。眠る父の布団のそばに座り、静かに話しかける小春。) > 4頁目の続きの、最後の行。 [窓] > 葬儀の形と火葬場が決まったら、5頁目を開け。 (絵:スタンドの明かりの下、テープの封をはがして開いた手帳の五頁目。) [窓] > 5頁目 > 通夜に、宮下という人が来る。 > 必ず、通せ。 > 香典は、受け取るな。 **篠原 小春**:「宮下……?お母さん知ってる?」 (絵:こわばって目を見開く母の顔の寄り。) **篠原 澄江**(心の声):(……宮下) (絵:暗い台所で、流しに手をついて背を向けて立つ母。) **篠原 澄江**:「ご、ごめん今日はもう寝るわね」 (絵:ろうそくの明かりの中、手帳を持ったまま、台所の方を見つめる小春。) **篠原 小春**(心の声):(お父さんお母さんに何を隠してたの) ## この話で分かること ### 家族葬とは? 流れは? 家族葬は、親族など身内だけで行う葬儀です(国民生活センターの説明)。参列者を絞る形で、通夜・葬儀・告別式・火葬と進む流れは一般葬と同じことが多く、通夜を省けば一日葬になります。 ### 一般葬・家族葬・一日葬・直葬の違いは? 国民生活センターは、故人と関係のあった人が参列する「一般葬」、身内のみで行う「家族葬」、通夜をせず葬儀と告別式を1日で行う「一日葬」、式をせず火葬だけをする「直葬」という場合がある、と説明しています。 ### 家族葬なら安い? そうとは限りません。国民生活センターは「家族葬だから安い」と思わないよう呼びかけ、広告の低い価格で頼んだのに高額なプランを案内された事例などを紹介しています。参列者の人数・日数・料金を具体的に確かめ、複数の葬儀社を比べるよう勧めています。 ### 友引は火葬できない? 法律で禁じられてはいませんが、友引を休場日にしている火葬場があります。扱いは自治体ごとに違い、例えば横浜市は友引を機器点検の休場日としつつ、一部の斎場は開けています。日程は斎場の空きと休みで決まります。 --- 父の葬儀は、父が仕切る 第4話「三百人と、十二人」 つづく # 父の葬儀は、父が仕切る 第5話「死亡届は、七日以内」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/5-shiboutodoke-nanoka/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[父の葬儀は、父が仕切る](https://tooneru.com/henshubu/soshiki/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/soshiki/manga/5-shiboutodoke-nanoka/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 5頁目を開く少し前の土曜の午後、小春は柏木と市役所の休日の窓口へ死亡届を出しに行く。死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に出し、同居していない家族も届出人になれる。用紙の右半分の死亡診断書には、父が亡くなった時刻「午前2時50分」。その時、小春は東京で眠っていた。窓口で火葬許可証を受け取る。これが無いと斎場は火葬できず、火葬の後は証明を書いて骨つぼと一緒に返される。帰りの車で、仕事を休まない人だった父が毎年11月の頭だけ早く上がっていたと、柏木が話す。家では叔父が、お別れの時間に来る町の人の名簿を280人分作っていた。その夜に5頁目で「宮下」の名を見た翌朝(日曜)、母は、20年、毎年11月3日だけ父の帰りが遅かったことを打ち明ける。父の背広の内ポケットから小さな黒い手帳が1冊、机の引き出しからは同じ手帳が20冊。どの年の11月3日にも「宮下」の名があった。 ## 登場人物 - **篠原 小春**:主人公。31歳。喪主。自分で死亡届を出しに行く。 - **篠原 澄江**:小春の母。62歳。20年、聞けなかったことがある。 - **柏木 蓮**:つばめ葬祭の葬祭スタッフ。26歳。 - **篠原 勝**:守の弟。60歳。受付の名簿を作る。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:土曜の昼の、静かな市役所。閉まった正面と、明かりのついた横の通用口。前に止まる寝台車。) > 少し戻って、土曜の午後。5頁目を開く前。市役所は、閉まっていた。 **柏木 蓮**:「あ、大丈夫です死亡届は土日も横の窓口で預かってくれます」 **柏木 蓮**:「持っていくのは僕が代わりにすることも多いんですけど」 **篠原 小春**:「いえ自分で出したいです喪主なので」 (絵:休日の受付の小さな窓口。カウンターの向こうに年配の職員。) (絵:カウンターの上の大きな用紙。左半分に小春の手がペンで書き込み、右半分には医師の欄(読めない)。) [作中の画面] > 死亡届 > 死亡した人 篠原 守 > 届出人の資格 同居していない親族 > 届出人 篠原 小春(長女) **柏木 蓮**:「はい同居していないご家族も届出人になれますよ」 > **ℹ 死亡届の届出人(とどけでにん)と届出地(とどけでち)**(現実の事実):死亡届は、同居の親族、その他の同居者、家主・地主などの順に届出の義務があり、同居していない親族や後見人なども届け出ることができます(戸籍法第87条)。届出先は、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村です。届書を窓口へ持っていくのは、葬儀社などの代理の人でもよい自治体が多くあります。 > - 問:いつまでに出す? 答:死亡の事実を知った日から7日以内(国外で亡くなった時は3か月以内)です(戸籍法第86条)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「戸籍法」(第25条・第86条〜第88条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224) > - 出典:[法務省「死亡届」](https://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html) > - 出典:[神戸市「死亡届」](https://www.city.kobe.lg.jp/a53715/kurashi/registration/koseki/05_shibou.html) > - 出典:[立川市「死亡届」](https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/koseki/1002121/1002175.html) (絵:用紙の右半分を見つめたまま、手を止める小春の顔の寄り。) [作中の画面] > 死亡診断書(医師の記入) > 死亡したとき 午前2時50分 **篠原 小春**(心の声):(2時50分……) (絵:回想(色の抜けた現代の記憶)。夜中の東京の部屋。毛布にくるまって眠る小春と、床の暗いスマートフォン。) **篠原 小春**(心の声):(私は寝てた次の日の進行表の夢を見てた) (絵:カウンターで小春の横に立ち、書類のファイルを持って静かに待つ柏木。) **職員**:「お預かりします……はい不備はありません」 **職員**:「ご愁傷さまでした」 **職員**:「こちらが火葬の許可証です」 > **ℹ 土日・夜間の死亡届**(現実の事実):多くの市区町村は、閉庁時間や土日祝日にも、夜間休日の窓口や宿直室で死亡届を預かります。火葬許可証をその場で渡す市(例:立川市)もあれば、夜間は交付せず、預かった届を翌朝に扱う市(例:広島市)もあります。火葬の日程に関わるので、届ける前に交付の時間を確かめます。 > - 出典:[立川市「死亡届」](https://www.city.tachikawa.lg.jp/kurashi/koseki/1002121/1002175.html) > - 出典:[広島市「『死体火葬許可証』の交付時間」](https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/owaka/1021360/1003310.html) > - 出典:[神戸市「死亡届」](https://www.city.kobe.lg.jp/a53715/kurashi/registration/koseki/05_shibou.html) (絵:窓口の年配の職員が、小さく頭を下げて書類を差し出す。) (絵:小春の両手の中の、火葬許可証の紙(読めない)。) [作中の画面] > 火葬許可証 > 死亡した人 篠原 守 > 火葬の場所 市営斎場 > 市長 **柏木 蓮**:「これ大事なんです」 **柏木 蓮**:「これが無いと斎場で火葬ができません」 **柏木 蓮**:「火葬が済むと裏に証明を書いて返してくれます納骨で要ります」 > **ℹ 火葬許可証(かそうきょかしょう)**(現実の事実):死亡届を受理した市区町村長が火葬を許可し、火葬許可証を交付します(墓地、埋葬等に関する法律 第5条・第8条)。火葬場の管理者は、火葬許可証を受け取った後でなければ火葬できません(同法第14条)。横浜市の斎場では、火葬の後に許可証の裏に火葬済みの証明を記して、骨つぼと一緒に返しています。 > - 問:納骨の時は? 答:墓地や納骨堂の管理者は、火葬許可証などを受け取った後でなければ、焼骨の埋蔵・収蔵をさせてはならないと決まっています(同法第14条)。なくさないようにします。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(第3条・第5条・第8条・第14条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048) > - 出典:[横浜市「市営斎場のご案内」](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/saijo/saijo/saijou.html) **篠原 小春**:「ねえ柏木さん父って仕事を休む人でした?」 (絵:帰りの寝台車の中。運転する柏木と、助手席で海を見る小春。) **柏木 蓮**:「……一度も」 **柏木 蓮**:「あ、いや毎年11月の頭だけ早く上がってました」 (絵:ハンドルを握ったまま、少し言いよどむ柏木の横顔。) **柏木 蓮**:「理由は誰にも……あの守さんが仕事を休むなんて」 **篠原 小春**(心の声):(運動会には来なかったくせに) (絵:夕方の家の庭。折りたたみ机に大きな紙を広げ、名前を書き込む叔父。) **篠原 勝**:「おう帰ったか!」 **篠原 勝**:「受付の名簿作っといたぞ!」 (絵:長く垂れた名簿の紙を、得意げに両手で掲げる叔父。) **篠原 勝**:「町内会漁協小学校の同級生」 **篠原 勝**:「兄貴が送った家の息子と娘」 **篠原 勝**:「全部で280人だ」 **篠原 小春**:「ちょっと叔父さんそれ家族葬……」 **篠原 勝**:「お別れの時間に来る分だ!焼香だけだ!」 **篠原 勝**:「断るなって書いてあったろ!」 (絵:頬づえをついて、あきれたように目を伏せる小春の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(はあ父の弟だ間違いなく) > その夜、5頁目に「宮下」の名前が出てきた。 > 日曜の朝。台所で、母が待っていた。 (絵:朝の光の差す台所のテーブル。湯のみを前に座る母と、向かいに座る小春。) **篠原 小春**:「お母さん宮下さんのこと」 (絵:涙をにじませながら、かすかに笑う母の顔の寄り。) **篠原 澄江**:「……毎年ね11月3日だけお父さん帰りが遅かったの」 **篠原 澄江**:「20年一度も聞けなかった」 **篠原 澄江**:「聞いたら何か終わる気がして」 (絵:回想(鉛筆のセピア)。夜の食卓で、ラップをかけた皿を前に、一人で待つ若い頃の母。) **篠原 澄江**:「「宮下」ってお父さんの寝言で一回だけ聞いたことがあるの」 > 父の背広の内ポケットから、小さな黒い手帳が出てきた。 (絵:開いた小さな黒い手帳。同じ位置に同じ短い書き込み(読めない)。) [作中の画面] > 父の手帳 > 11月3日 宮下 (絵:机の引き出しの中に、同じ小さな黒い手帳が二十冊、きちんと並んでいる。) > 引き出しの手帳は、20冊。どの年の11月3日にも、同じ名前があった。 (絵:暗がりの中、決意をにじませる小春の目の寄り。) **篠原 小春**(心の声):(通夜は今夜宮下さんは来る) **篠原 小春**(心の声):(お父さん通すよ――でも話は聞くから) ## この話で分かること ### 死亡届はいつまでに、誰が、どこへ出す? 死亡の事実を知った日から7日以内(国外は3か月以内)に出します。同居の親族などに届出の義務があり、同居していない親族も届け出ることができます。届出先は、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村です(戸籍法第25条・第86条〜第88条、法務省)。 ### 火葬許可証とは? どこでもらう? 火葬をするために要る市区町村長の許可証です。死亡届を受理した市区町村長が火葬を許可して交付し、火葬場はこれを受け取った後でなければ火葬できません(墓地、埋葬等に関する法律 第5条・第8条・第14条)。 ### 土日や夜間に死亡届は出せる? 多くの市区町村は、夜間休日の窓口や宿直室で預かります。火葬許可証をその場で渡す市(例:立川市)もあれば、夜間は交付せず翌朝に扱う市(例:広島市)もあります。火葬の日程に関わるので、交付の時間を前もって確かめます。 ### 火葬許可証は火葬の後どうなる? 火葬場で火葬済みの証明を記して返されることが多く(例:横浜市の斎場は許可証の裏に証明を記し、骨つぼと一緒に返す)、納骨の時に墓地や納骨堂へ出します。墓地・納骨堂の管理者は、許可証を受け取った後でなければ焼骨を埋蔵・収蔵させてはならないと決まっています。 --- 父の葬儀は、父が仕切る 第5話「死亡届は、七日以内」 つづく # ご不在につき、俺を持ち戻ります 第1話「ご不在のため、持ち戻りました」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/1-takuhai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[ご不在につき、俺を持ち戻ります](https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/1-takuhai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 家電量販店の販売員・戸倉航は遅番が多く、時間指定の「19時〜21時」に家にいたことが無い。今月12回目の再配達を頼み、寝ぼけたまま何かを注文した翌朝、航は自分あての段ボール箱になって、シロツメ便のトラックの荷台で目を覚ます。航にだけ見える〈お届け状況〉の窓には、自分で選んだ受け取り方で配達が完了すれば戻れること、保管期限を過ぎると差出人へ返送されることが書かれていた。声が聞こえるのは、ドライバーの日比野めぐるだけ。19時12分、めぐるが航の部屋のチャイムを鳴らしても誰も出ず、航は自分の部屋に不在票を入れられて持ち戻られる。めぐるは「その一個のために、もう一回来るんだよ」と言い、航は再配達が宅配便の約13個に1個(国土交通省、2026年4月)あることを知る。夜の営業所で、めぐるは、航の部屋の中でスマホが鳴りっぱなしだったと告げる。窓に1行が足される。受取人:所在不明。 ## 登場人物 - **戸倉 航**:主人公。27歳、家電量販店の販売員で遅番が多い。再配達は今月12回。ある朝、自分あての段ボール箱になって目を覚ます。声は日比野めぐるにだけ聞こえる。 - **日比野 めぐる**:シロツメ便の配達ドライバー、29歳、5年目。早口で手が早い。箱になった航の声が聞こえる、ただ一人の人。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の一人暮らしの部屋。ベッドに寝転がってスマホを見る青年。部屋の隅に、たたんだ段ボールの山。) > 俺の部屋のドアには、今月、12枚目の不在票が挟まっている。 > **ℹ 不在票(ふざいひょう)(不在連絡票)**(現実の事実):届けに来た時に受け取る人がいなかった事を知らせる紙です。国の標準宅配便運送約款では「不在連絡票」と呼び、届けようとした日時・会社の名前・問い合わせ先などを書いて知らせた上で、荷物を営業所などで保管すると決めています(第12条)。 > - 問:隣の家に預けられる事もある? 答:隣の人(マンションなら管理人も)が承知すれば、隣の人に預ける事があり、その時は不在連絡票に預けた人の名前を書きます(同じ第12条)。 > - 出典:[国土交通省「標準宅配便運送約款」(平成2年運輸省告示第576号)](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/68226000/68226000.html) [作中の画面] > シロツメ便 ご不在連絡 > お荷物をお届けに参りましたが、ご不在でした。 > 再配達のご依頼は、こちらから。 (絵:光るスマホの画面を、親指で軽く叩く手。) **戸倉 航**:「再配達なんてボタン一つだろ〜」 [作中の画面] > 再配達のご依頼 受け付けました > お届け希望:明日 19時〜21時 > 置き配:利用しない (絵:ベッドの上で大あくびをする青年。半分閉じた目、手からずり落ちそうなスマホ。) [人物の紹介] > 家電量販店の販売員(遅番が多い) > 戸倉 航 > 遅番の帰りは、いつも22時。19時に家にいたことなんて、一度もない。 **戸倉 航**(心の声):(あ……なんか、ポチった……かも……) [作中の画面] > ミツバ通販 ご注文ありがとうございました > 23:59 お届け予定:10月22日(木) (絵:真っ暗な中に、段ボールの継ぎ目から差す細い光の筋。「ガタン」の描き文字。) > 揺れる。段ボールの匂い。――体が、動かない。 (絵:トラックの荷台。棚にぎっしり積まれた大小の段ボール箱。真ん中の茶色い箱に、驚いた点の目と大きく開いた口が浮かんでいる。) **戸倉 航**:「俺……箱!?」 **戸倉 航**:「なんで箱になってんの!?」 [窓] > 〈お届け状況〉 > お問い合わせ番号 4521-8890-3317 > お届け先:戸倉 航 様 > 品名:――(あなたが知っています) > 差出人:ミツバ通販 > 状況:配達中 > **ℹ 差出人(さしだしにん)と受取人(うけとりにん)(荷送人と荷受人)**(現実の事実):荷物を送る人が差出人、届け先で受け取る人が受取人です。運送の約款では、差出人を「荷送人」、受取人を「荷受人」と呼びます。送り状には、荷送人と荷受人の名前・住所・電話番号や品名を書きます(標準宅配便運送約款第3条)。 > - 出典:[国土交通省「標準宅配便運送約款」(平成2年運輸省告示第576号)](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/68226000/68226000.html) > お届け先は、俺。俺あての荷物が、俺だった。 [窓] > この荷物は、あなたです。 > あなたが自分で選んだ受け取り方で配達が完了した時、あなたは戻ります。 > 保管期限を過ぎると、差出人へ返送します。 > **ℹ 保管期限(ほかんきげん)と返送**(現実の事実):受け取られなかった荷物を、営業所で預かっておく期限です。日数は宅配の会社ごとに決めています。国の標準宅配便運送約款は、受け取る人に渡せない時は、送った人(荷送人)にどうするかの指図を求めると決めています(第13条)。 > - 出典:[国土交通省「標準宅配便運送約款」(平成2年運輸省告示第576号)](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/68226000/68226000.html) (絵:荷台の扉を開けた女性ドライバーが、朝の光を背に、目を見開き口を開けて、こちら(床の箱)を見下ろす。「ガラッ」の描き文字。) [人物の紹介] > シロツメ便 配達ドライバー > 日比野 めぐる **戸倉 航**:「おい!出して!」 **戸倉 航**:「出してくれ!俺、人間だ!」 **日比野 めぐる**:「……え?今、荷物がしゃべった?」 (絵:箱を両手で持ち上げたまま固まるドライバー。目を丸くして、こめかみに汗の粒。) **戸倉 航**:「そう!戸倉航!27歳!」 **日比野 めぐる**:「へえ……伝票の名前と同じだね」 **日比野 めぐる**:「……で、どこに届ければいいの?」 **戸倉 航**:「俺の部屋!コーポ柊の203!」 **日比野 めぐる**:「知ってるよ。伝票に書いてある」 (絵:昼の町を上から。止めた緑と白のトラック、台車に箱を積んで階段を駆け上がるドライバー、次の家へ走る背中。) > めぐるは走る。止めて、降ろして、鳴らして、また乗る。 [作中の画面] > シロツメ便 本日の配達予定 142個 > 午前中 38|14-16時 27|16-18時 24 > 18-20時 29|19-21時 24 **戸倉 航**:「は!?」 **戸倉 航**:「142個も!?全部、今日!?」 **日比野 めぐる**:「うん。で、君は十九時から二十一時」 **日比野 めぐる**:「君さ、先月も同じ時間を指定したよね」 (絵:運転席に飛び乗るドライバーが、横目で助手席の箱を見る。箱の点の目が見返している。) **戸倉 航**:「覚えてんの!?」 **日比野 めぐる**:「そりゃあ。3回、持ち戻ったからね」 (絵:助手席でどんよりと縦線を背負う箱。運転席のドライバーは前を向いたまま、口の端で笑っている。) **戸倉 航**(心の声):(3回……俺のせいで、3回……) (絵:夜。三階建ての古いマンション「コーポ柊」。廊下の明かりがともり、前の道に緑と白のトラックが止まっている。) (絵:ドライバーの指が、二〇三号室のチャイムのボタンを押す。「ピンポーン」の描き文字。) > 19時12分。俺の部屋の、チャイム。 (絵:ドライバーの腕に抱えられた箱の目の高さから見た、閉じたままの玄関のドア。廊下の蛍光灯だけが明るい。) > 誰も、出ない。当たり前だ。俺は、ここにいるんだから。 (絵:ドアの郵便受けに、不在票を差し込む手。) [窓] > ご不在連絡票 > 戸倉 航 様 > お荷物をお届けに参りましたが、ご不在でした。 > シロツメ便 港南営業所 [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:ご不在のため持ち戻り(1回目) > 保管期限:あと7日 **戸倉 航**(心の声):(自分の部屋に不在票入れられた……) **日比野 めぐる**:「その一個のためにもう一回来るんだよ」 (絵:夜の街灯の下。止めたトラックの後ろの段に腰かけて水を飲むドライバー。隣に、あの箱。) **戸倉 航**:「で、でもボタン一つで無料だし……」 **日比野 めぐる**:「無料なのは君だけ」 (絵:街灯の下、すり減って底のはがれかけた運動靴と、日に焼けたふくらはぎ。) > もう一回来るのは、同じトラックと、同じ人の、同じ足だ。 [窓] > 再配達率(国土交通省・2026年4月の調査) > 宅配に関わる大手6社の宅配便 約332万個のうち > 再配達 約25万個(約7.6%) > 都市部 8.5%|都市部近郊 7.2%|地方 6.0% > **ℹ 再配達率(さいはいたつりつ)**(現実の事実):宅配便のうち、受取人の不在などで一度で渡せず、もう一度届けた荷物の割合です。国土交通省の令和8年(2026年)4月期の調査では、宅配に関わる大手6社の合計で約7.6%(約332万個のうち約25万個)でした。 > - 問:地域で違う? 答:同じ調査で、都市部は8.5%、都市部近郊は7.2%、地方は6.0%でした。 > - 問:前より減っている? 答:国土交通省によると、コロナ禍の前は約15%程度で推移していました。令和7年4月期は約8.4%、10月期は約8.3%、令和8年4月期は約7.6%です。国の目標は6%です。 > - 出典:[国土交通省 報道発表「宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%」(令和8年7月10日、令和8年4月期の再配達率を含む)](https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_001025.html) > - 出典:[国土交通省「宅配便の再配達率に関する調査」](https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/re_delivery_research.html) > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) **戸倉 航**:「え……13個に1個……?」 **日比野 めぐる**:「昔はもっと多かった。それでもまだ半分にもならないんだ」 **日比野 めぐる**:「明日も19時。それまでにちゃんと家にいなよ?」 (絵:夜、トラックの荷台。ドライバーの手がぽんと置かれた箱が、眉を寄せ、汗をかいて大きな口で叫ぶ。) **戸倉 航**:「いられないんだって!」 (絵:夜の営業所の倉庫。蛍光灯の下の高い保管の棚に、戻ってきた荷物が並ぶ。上の段に小さく、あの箱。) > 営業所の、保管の棚。俺と同じ、戻ってきた箱たち。 (絵:帰りじたくのドライバーが棚の前で立ち止まり、真顔で上の段の箱を見上げる。) **日比野 めぐる**:「……さっき、君の部屋の前で聞こえたんだけど」 **日比野 めぐる**:「ドアの向こうでスマホが鳴りっぱなしだった」 (絵:見上げるドライバーの目のアップ。蛍光灯の光が瞳に映る。) **日比野 めぐる**:「君、今、どこにいるの?」 [窓] > 〈お届け状況〉 > お届け先:戸倉 航 様 > 受取人:所在不明 > 俺は、ここにいる。――でも、俺を受け取れる俺は、どこにもいない。 ## この話で分かること ### 再配達とは? どのくらいある? 宅配便を届けた時に受取人が不在などで渡せず、もう一度届けることです。国土交通省の令和8年(2026年)4月期の調査では、宅配に関わる大手6社の宅配便の約7.6%(約13個に1個)が再配達でした。 ### 再配達はなぜ減らない? 再配達率はコロナ禍の前は約15%程度で推移していましたが、令和8年4月期は大手6社で約7.6%まで下がりました。それでも国の目標の6%には届いていません。国土交通省の検討会の取りまとめは、大手宅配事業者の無料の会員サービスで置き配などの対面以外の受け取り方がすぐ使えるのに、実際に使っている会員は4分の1程度にとどまると指摘しています。 ### 再配達が減ると、何が変わる? 国土交通省の検討会の取りまとめは、2019年時点の約15%程度から令和7年4月の水準(大手3社の合計で9.5%)まで再配達率が下がったことで、約6,000万時間に相当する労働コスト、トラックドライバー約3万人に相当する輸送力不足の改善、年間約7.1万トンの二酸化炭素の削減が見込まれるとしています。 --- ご不在につき、俺を持ち戻ります 第1話「ご不在のため、持ち戻りました」 つづく # ご不在につき、俺を持ち戻ります 第2話「十九時から二十一時」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/2-takuhai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[ご不在につき、俺を持ち戻ります](https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/2-takuhai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 箱になって2日目。航は朝7時の営業所から、ドライバーのめぐるの一日に荷台から付き合う。積む順番は配る順番の逆で、夜の時間帯の荷物は一番奥。時間帯の中では道の順に回るので、19時〜21時の荷物が20時50分に届くこともある。18時を過ぎると町じゅうの荷物が夜の時間帯に集まり、めぐるは階段を駆け上がり続ける。航は、自分が一度も家にいなかった「19時〜21時」の指定と「置き配を利用しない」の設定が、毎回めぐるに遠回りをさせていたと気づく。受け取り方は選べる――置き配、宅配ボックス、コンビニ。20時57分、航の部屋の前には、兄と連絡が取れない妹のみのりが立っていた。「家族なので、私が受け取ります」。窓には「ご家族の受け取りでも配達は完了します。ただし、あなたは戻りません」。 ## 登場人物 - **戸倉 航**:主人公。27歳、家電量販店の販売員で遅番が多い。再配達は今月12回。ある朝、自分あての段ボール箱になって目を覚ます。声は日比野めぐるにだけ聞こえる。 - **日比野 めぐる**:シロツメ便の配達ドライバー、29歳、5年目。早口で手が早い。箱になった航の声が聞こえる、ただ一人の人。 - **戸倉 みのり**:航の妹、大学2年。兄の部屋の合鍵を持っている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の宅配の営業所を上から。並んだ緑と白のトラック、荷物を積んだかご車、走り回る作業着の人たち。) > 2日目。朝7時の、営業所。 [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:持ち戻り(1回目)→ 配達中 > 保管期限:あと6日 (絵:トラックの荷台の棚に、決まった順で箱を積むドライバー。あの箱は一番奥の棚へ。肩ごしにこちらを見て話す。) **日比野 めぐる**:「いい?積む順番は配る順番の逆」 **日比野 めぐる**:「午前中の指定が手前。夜の指定は一番奥」 **戸倉 航**(心の声):(えっ……俺、一番奥……) (絵:ドライバーの手の中の端末。画面はぼやけた地図の光だけ。指で次の家を押す。) [作中の画面] > 配達の順番(シロツメ便の端末) > 午前中 → 14-16時 → 16-18時 → 18-20時 → 19-21時 > 同じ時間帯の中では、道の順に回る > **ℹ 時間帯指定(じかんたいしてい)**(現実の事実):届けてほしい日と、時間の幅(「19時〜21時」など)を選ぶ仕組みです。選ぶのは時刻ではなく幅なので、ドライバーはその幅の中で、道の順に回って届けます。 > - 問:時間帯の区切りや、当日の再配達の締め切りは? 答:会社ごとに違います。不在票や、使う宅配会社の公式の案内で確かめてください。 (絵:昼の住宅街。玄関のドアが開き、エプロンの女性が笑顔で荷物を受け取る。足元で小さな犬が尻尾を振る。) > チャイム1回で、ドアが開く。それだけで、めぐるの顔が明るくなる。 (絵:一軒家の玄関の横の、灰色の宅配ボックスに荷物を入れてふたを閉めるドライバー。「カチャ」の描き文字。) **日比野 めぐる**:「ほらね。宅配ボックスの家は1回で終わる」 **戸倉 航**:「うちのマンションボックス無いんだよ……」 **戸倉 航**:「なあ、昼めしは?休憩は?」 (絵:ひと跳びで運転席に乗りこむドライバー。助手席に置かれた箱の点の目が、それを見上げている。) **日比野 めぐる**:「さっき30分、取った決まりだからね」 **戸倉 航**:「えっ、それが昼めし……?」 (絵:トラックの横の縁石に腰かけ、おにぎりを一口で半分かじるドライバー。隣に箱。) **日比野 めぐる**:「5分で食べて残りの25分は目をつぶるの」 > めぐるの一日は、分で区切られている。 (絵:夕暮れの町。マンションの窓に、ひとつ、またひとつと明かりがともる。小さく、緑と白のトラック。) > 18時を過ぎると、町じゅうの荷物が、いっせいに夜の時間帯へ集まる。 (絵:夜の町を高い所から。あちこちの道に、配達のトラックの小さな光が散らばって動いている。) [作中の画面] > 本日の残り 61個 > 18-20時 29|19-21時 24|再配達 8 **戸倉 航**:「多っ!」 **戸倉 航**:「夜だけでそんなに!?」 **日比野 めぐる**:「みんな、仕事から帰る時間を選ぶからね」 (絵:夜。マンションの外階段を二段とばしで駆け上がるドライバー。腕に三つの箱。「タタタッ」の描き文字。) (絵:息を白く弾ませ、汗をにじませたドライバーの顔のアップ。目は手元の端末へ。) (絵:エレベーターの無い古い団地の階段を、上から見下ろす。箱を抱えて駆け上がるドライバーが小さく見える。) > エレベーターの無い5階。箱を抱えて、今日、何十回目かの階段。 [作中の画面] > 20:41 > 19-21時 残り 9個 **戸倉 航**:「これ……間に合うのか?」 **日比野 めぐる**:「間に合わせるよ」 **日比野 めぐる**:「でも、道の順にしか回れない」 > 19時に頼んだ荷物が、20時50分に届く。時間帯は、時刻じゃない。幅だ。 (絵:回想。夜の家電量販店の売り場で、テレビの前で客に説明する青年。ポケットの中でスマホが震えているが、気づかない。) > 俺が19時に家にいたことは、一度もない。 **戸倉 航**(心の声):(俺の「十九時から二十一時」は) **戸倉 航**(心の声):(毎回、めぐるに遠回りをさせてた……) **日比野 めぐる**:「君の伝票さ、置き配は「利用しない」だよね」 (絵:荷台の明かりの下で、箱の送り状を指でなぞって確かめるドライバー。横顔。) **戸倉 航**:「だって……盗まれるのが怖くて」 **日比野 めぐる**:「選べるんだよ受け取り方は」 [窓] > 受け取り方は、選べる > 対面で受け取る(日と時間帯を指定) > 置き配(玄関前など、自分で指定した場所) > 宅配ボックス・宅配ロッカー > コンビニ・営業所で受け取る > **ℹ 多様な受取方法(うけとりほうほう)**(現実の事実):対面での受け取りのほかに、宅配ボックス・宅配ロッカー・コンビニ・営業所、玄関前などの指定場所への置き配で受け取る方法のことです。国土交通省の令和8年(2026年)4月期の調査では、大手3社で約31.0%がこうした受け取り方でした。国は2030年度に50%程度にする目標を立てています。 > - 問:どこで選べる? 答:国土交通省の検討会の取りまとめによると、大手宅配事業者の無料の会員サービスでは、対面以外の受け取り方をすぐ選べる仕組みがあります。通販サイトの注文の画面で選べることもあります。 > - 問:実際に使っている人は? 答:同じ取りまとめは、会員のうち対面以外の受け取り方を実際に使っている人は全体の4分の1程度にとどまると書いています。 > - 出典:[国土交通省 報道発表「宅配便の多様な受取方法の利用率は約31.0%」(令和8年7月10日、令和8年4月期の再配達率を含む)](https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_001025.html) > - 出典:[国土交通省「宅配便の再配達率に関する調査」](https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/re_delivery_research.html) > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) **戸倉 航**:「え……知らなかった」 **日比野 めぐる**:「知ってる人でも使ってるのは4人に1人なんだよね」 (絵:荷台の暗がりで、うつむく箱。点の目が下を向き、黄色いかすかな光が箱の上に落ちている。) **戸倉 航**(心の声):(俺……選べたのに選んでなかった……) (絵:夜の外廊下を、箱を抱えて二〇三号室へ走るドライバー。廊下の蛍光灯が後ろへ流れる。) > 20時52分。今日、最後の一軒。――俺の部屋。 (絵:20時57分、コーポ柊の二階の廊下。二〇三号室の前に、スマホを耳に当てた小柄な若い女性が立っている。) (絵:振り向いた若い女性が、心配そうにこちら(箱を抱えたドライバー)を見上げる。) [人物の紹介] > 航の妹・大学2年 > 戸倉 みのり **戸倉 みのり**:「あの……兄がゆうべから電話に出ないんです」 **戸倉 みのり**:「部屋にスマホも財布も置いたままで……」 **戸倉 航**:「みのり!俺だ!ここ!箱!」 (絵:箱の前を素通りする妹の視線。箱を抱えたドライバーが横目で箱を見て、こめかみに汗の粒。) > 妹には、聞こえない。 **戸倉 みのり**:「あ、それ兄の荷物ですよね?家族なので私が受け取ります」 (絵:箱へまっすぐ伸びてくる妹の両手。) [窓] > 〈お届け状況〉 > ご家族の受け取りでも、配達は完了します。 > ただし、あなたは戻りません。 > **ℹ 家族の受け取り(同居者への引渡し)**(現実の事実):国の標準宅配便運送約款では、届け先が住まいの時は、そこに一緒に住む人などに渡せば、受取人に渡した事になります(第11条)。会社や店あての荷物は、そこの管理をする人などに渡せば同じです。 > - 出典:[国土交通省「標準宅配便運送約款」(平成2年運輸省告示第576号)](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/68226000/68226000.html) (絵:ドライバーの腕の中で、箱がガタガタと暴れて傾く。点の目が渦を巻き、口が叫んでいる。「ガタガタッ」の描き文字。) **戸倉 航**:「受け取るなああああ!!」 ## この話で分かること ### 再配達が来ないのはなぜ?(夜の時間帯) 時間帯指定は、届ける時刻ではなく「19時〜21時」のような時間の幅を選ぶ仕組みです。ドライバーはその幅の中で道の順に回るので、幅の終わり近くに届くこともあります。当日の再配達の依頼には受付の締め切りがあり、過ぎると次の日以降になることがあります。 ### 宅配便の受け取り方には何がある? 対面での受け取りのほか、宅配ボックス・宅配ロッカー・コンビニ・営業所での受け取り、玄関前などの指定場所への置き配があります。国土交通省は、対面以外のこうした受け取り方の利用率を2030年度に50%程度にする目標を立てています。令和8年(2026年)4月期は大手3社で約31.0%でした。 ### 置き配を「利用しない」にしていると、どうなる? 不在の時に置き配はされず、持ち戻りと再配達になります。国土交通省の検討会の取りまとめによると、大手宅配事業者の無料の会員サービスでは、置き配などの対面以外の受け取り方をすぐ選べる仕組みがありますが、実際に使っている会員は4分の1程度です。 --- ご不在につき、俺を持ち戻ります 第2話「十九時から二十一時」 つづく # ご不在につき、俺を持ち戻ります 第3話「置き配、承ります」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/3-takuhai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[ご不在につき、俺を持ち戻ります](https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/3-takuhai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ めぐるは「ご本人の指定がある」と妹のみのりを止め、航は2回目の持ち戻りになる。翌日の昼、喫茶店で、みのりは兄しか知らない問い(小4で壊した物)で、箱が兄だと信じる。家にいられないなら、家にいなくても受け取れる方法を選べばいい。みのりが兄のスマホで「置き配を利用しない」を外し、航は自分で玄関前を選ぶ。管理人の森下ふみは、廊下は共用部分で、置き配は鍵の付いた袋に入れる時だけと使用細則を示す。19時24分、めぐるは航を玄関前の袋に入れ、写真を撮って完了を押そうとした瞬間、所長からトラックを動かせと電話が来る。めぐるが階段を降りた40秒の間に、黒いフードの男が袋から箱を抜き取る。完了の前に、航は盗まれた。 ## 登場人物 - **戸倉 航**:主人公。27歳、家電量販店の販売員で遅番が多い。再配達は今月12回。ある朝、自分あての段ボール箱になって目を覚ます。声は日比野めぐるにだけ聞こえる。 - **日比野 めぐる**:シロツメ便の配達ドライバー、29歳、5年目。早口で手が早い。箱になった航の声が聞こえる、ただ一人の人。 - **戸倉 みのり**:航の妹、大学2年。兄の部屋の合鍵を持っている。 - **森下 ふみ**:航の住むマンション「コーポ柊」の管理人、74歳。使用細則に詳しい。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の廊下。妹と箱の間に一歩入り、箱を背中に回して軽く頭を下げるドライバー。丁寧な笑顔。) **日比野 めぐる**:「あ、申し訳ありません!」 **日比野 めぐる**:「このお荷物はご本人の受け取り方のご指定がありまして……」 **戸倉 みのり**:「でも!その本人がいないの!」 **戸倉 航**(心の声):(みのりごめん……いるんだここに……) [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:ご不在のため持ち戻り(2回目) > 保管期限:あと6日 (絵:昼の小さな喫茶店。窓ぎわの席で、ドライバーと妹が向かい合い、テーブルの真ん中にあの箱が置かれている。) > 3日目の昼。めぐるの休憩の30分。 **日比野 めぐる**:「えっとね……信じなくていいから聞いてこの箱がお兄さんです」 (絵:腕を組み、眉を寄せて箱をにらむ妹。) **戸倉 みのり**:「じゃあ聞きます。兄が小4の時に壊した物は?」 **戸倉 航**(心の声):(母さんのミシン……言わないでくれ……) **日比野 めぐる**:「ふふっ、お母さんのミシンだって」 (絵:回想。子どものころの兄妹。こわれたミシンの前で、小学生の兄が青ざめ、幼い妹が兄の背中に隠れている。) > 壊したのは俺で、黙っていてくれたのは、みのりだった。 (絵:妹の顔のアップ。驚いた目に涙がにじみ、口元は笑い出しそうにゆるむ。) **戸倉 みのり**:「……お兄ちゃんほんとに箱なの?」 **戸倉 みのり**:「箱でも……生きててよかったぁ」 (絵:喫茶店のテーブル。妹が指で箱をつつき、ドライバーがにやりと笑う。箱の点の目は照れている。) **戸倉 航**(心の声):(生きてるのかなこれ……) > 戻る方法は、1つ。俺が自分で選んだ受け取り方で、配達が完了すること。 **日比野 めぐる**:「じゃあさ、家にいられないなら」 **日比野 めぐる**:「いなくても受け取れる方法を選べばいいよ」 **戸倉 航**:「……置き配?」 > **ℹ 置き配(おきはい)**(現実の事実):受取人が指定した玄関前などの場所に、対面せずに荷物を置いて届ける方法です。国土交通省・経済産業省の「置き配の現状と実施に向けたポイント」は、引渡しは買主と売主が合意した方法による必要があり、置き配をすることと具体的な置き場所について、はっきりした合意が要るとしています。 > - 問:置き配で「届いた」ことになるのはいつ? 答:合意した方法で、合意した場所に置いた時です。それより前に荷物がなくなったり傷んだりした場合、運送人は注意を怠らなかったことを証明しない限り賠償する責任を負います(商法575条。同じ資料の説明)。 > - 問:置き配は国の標準の約款に入っている? 答:国土交通省の検討会の取りまとめ(令和7年11月)によると、標準宅配便運送約款は対面の引渡しだけを定めていて、置き配などを約款の選択肢に位置づける方向で検討が進められています(2026年10月17日時点で、改正の告示は確かめられていません)。 > - 出典:[国土交通省・経済産業省「置き配の現状と実施に向けたポイント」(令和2年3月)](https://www.mlit.go.jp/common/001335954.pdf) > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) (絵:兄のスマホを両手で持つ妹の手。画面はぼやけた光だけ。親指が止まっている。) **戸倉 みのり**:「パスコードお兄ちゃんの誕生日だった……」 **戸倉 航**(心の声):(変えとけばよかった……) [作中の画面] > シロツメ便 受け取り方の変更 > 置き配:利用しない → 利用する > 置き場所を選んでください > 玄関前|メーターボックス|宅配ボックス|車庫・物置 **戸倉 航**:「玄関前!それなら俺でも選べる!」 (絵:マンションの管理人室から、分厚いファイルを抱えた小柄なおばあさんが出てきて、見上げてくる。そばに妹と、箱を抱えたドライバー。) [人物の紹介] > コーポ柊の管理人 > 森下 ふみ **森下 ふみ**:「あらあら。玄関前の置き配はね」 **森下 ふみ**:「うちの使用細則で決まってるの」 [作中の画面] > コーポ柊 使用細則(抜き書き) > 廊下は共用部分です。物を置かないこと。 > ただし置き配は、鍵の付いた置き配の袋に入れる場合に限り、 > 住戸の玄関前に置いてよい。 **森下 ふみ**:「廊下はね、みんなの物。だから決まりがあるのよ」 (絵:昼のマンションの外廊下。各部屋の前に自転車、植木鉢、傘立て。奥まで続く、みんなの通り道。) > 俺の玄関の前は、俺だけの場所じゃなかった。 **日比野 めぐる**:「マンションの置き配は建物の決まりが先なんだ」 > **ℹ マンションの置き配(おきはい)(共用部分)**(現実の事実):マンションの廊下は住民みんなの共用部分なので、玄関前に置き配をする時は、使用細則などマンションの決まりに従う必要があります。国土交通省・経済産業省の資料は、住民がそうした決まりを前もって確かめることが望ましいとしています。 > - 問:国は何か示している? 答:国土交通省の検討会の取りまとめによると、令和7年3月末に国土交通省の3つの局の連名で、分譲マンションの関係団体へ「置き配に関する使用細則を定める際のポイント」を周知しました。 > - 出典:[国土交通省・経済産業省「置き配の現状と実施に向けたポイント」(令和2年3月)](https://www.mlit.go.jp/common/001335954.pdf) > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) (絵:二〇三号室のドアノブに、灰色の置き配の袋のワイヤーを掛けて鍵をかける妹の手。「カチッ」の描き文字。) [窓] > 〈お届け状況〉 > 受け取り方:置き配(玄関前・置き配の袋) > 指定した人:戸倉 航(ご本人) > 配達完了で、あなたは戻ります。 > 保管期限:あと5日 **戸倉 みのり**:「あ、バイト行かなきゃ!終わったら連絡してね」 (絵:マンションの入口で、手を振りながら駆け出していく妹。見送るドライバーの腕の中の箱の点の目が、少しうるんでいる。) **戸倉 航**(心の声):(……みのり、ありがとな) (絵:夜の二階の廊下。箱を両手で抱え、二〇三号室のドアへ歩いていくドライバーの後ろ姿。ドアノブに灰色の袋。) > 19時24分。3度目の、俺の部屋。 (絵:ドアの前にしゃがみ、灰色の袋に箱をそっと入れるドライバー。「ガサッ」の描き文字。) **日比野 めぐる**:「よし、置いた。あとは写真を撮って完了を押すだけ」 **戸倉 航**:「やっと……これで戻れる……」 > あと、指一本。 (絵:端末を構えたドライバーの手。その端末が震えている。「ブーッ ブーッ」の描き文字。) **日比野 めぐる**:「はい、所長?え、トラック?はい、すぐ動かします!」 > マンションの前に止めたトラックを、すぐに動かせ。近所から電話が来たらしい。 (絵:夜のマンションを上から。片方の階段を駆け降りるドライバー、道で点滅するトラック、もう片方の階段を上がってくる黒いフードの人影。) > めぐるが階段を降りた、40秒。 (絵:黒いフードの痩せた男が、袋から箱を抜き出して抱える。顔は半分、影に隠れている。) **戸倉 航**:「誰だ!?離せ!」 **戸倉 航**:「まだ完了してないんだって!!」 > この声は、めぐるにしか届かない。 (絵:階段を上がって戻ったドライバーが、端末を構えたまま立ち止まる。ドアノブの灰色の袋は口が開き、空っぽ。) **日比野 めぐる**:「え……?無い……」 (絵:ドライバーの見開いた目のアップ。瞳に、廊下の奥の暗がりが映る。) (絵:廊下の突き当たり。箱を抱えて角を曲がる黒いフードの背中。肩ごしに、箱の点の目がこちらを振り返っている。) [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:配達中(完了していません) > 現在地:不明 (絵:ドアノブに掛かったまま、口の開いた空っぽの灰色の袋が、夜風に小さく揺れている。) > 置き配の、40秒。俺は、盗まれた。 ## この話で分かること ### 置き配とは? 受取人が指定した玄関前などの場所に、対面せずに荷物を置いて届ける方法です。国土交通省・経済産業省の資料は、引渡しは買主と売主が合意した方法による必要があり、置き配をすることと具体的な置き場所について、はっきりした合意が要るとしています。 ### 置き配は、いつ「届いた」ことになる? 合意した方法で、合意した場所に置いた時に引渡しが済みます。それより前に荷物がなくなったり傷んだりした時は、運送人が、注意を怠らなかったことを証明しない限り賠償する責任を負います(商法575条)。 ### マンションで置き配はできる? 廊下などの共用部分を使うので、使用細則などマンションの決まりに従います。住民が前もって決まりを確かめることが望ましいとされています。国は令和7年3月末、分譲マンションの関係団体に「置き配に関する使用細則を定める際のポイント」を周知しました。 ### 「置き配を利用しない」とは? 通販サイトや宅配会社の設定で置き配を使わず、対面で受け取る指定のことです。不在なら持ち戻りと再配達になります。置き配の設定は、大手宅配事業者の会員サービスなどで変えられます。 --- ご不在につき、俺を持ち戻ります 第3話「置き配、承ります」 つづく # ご不在につき、俺を持ち戻ります 第4話「置き配盗難は、バレる」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/4-takuhai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[ご不在につき、俺を持ち戻ります](https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/4-takuhai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 置き配の袋から箱を抜き取ったのは、同じマンションの305号室の国見だった。暗い部屋には、開けられていない盗まれた箱が積み上がっている。めぐるは所長の大庭に電話し、写真を撮って完了を押す前の盗難は、まだ宅配会社が預かっている荷物だとして警察に届ける。管理人のふみの防犯カメラには、置いた42秒後に黒い上着の人物が袋から箱を抜き、3階へ上がる姿が残っていた。配達の時刻、カメラの時刻、階段の先。警察が305号室を訪ねると、国見は「届く箱がうらやましかっただけ」とうつむく。翌朝、警察から返された航を抱えて、めぐるは送り状が破り取られているのに気づく。窓には「お届け先:読み取れません」。 ## 登場人物 - **戸倉 航**:主人公。27歳、家電量販店の販売員で遅番が多い。再配達は今月12回。ある朝、自分あての段ボール箱になって目を覚ます。声は日比野めぐるにだけ聞こえる。 - **日比野 めぐる**:シロツメ便の配達ドライバー、29歳、5年目。早口で手が早い。箱になった航の声が聞こえる、ただ一人の人。 - **森下 ふみ**:航の住むマンション「コーポ柊」の管理人、74歳。使用細則に詳しい。 - **国見 恭平**:コーポ柊の住人、41歳。 - **大庭 権蔵**:シロツメ便 港南営業所の所長、58歳。ドライバーの時間を守らせる側。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:暗い一人暮らしの部屋。床から天井近くまで、開けられていない段ボール箱が積み上がり、てっぺんに放り投げられたあの箱が、点の目でおびえている。テレビの青白い光。) > 暗い部屋。箱、箱、箱。――俺だけじゃ、ない。 **戸倉 航**(心の声):(これ全部……盗んだ荷物か……?) (絵:箱の山のふもとの床に座りこみ、膝を抱えて、箱を一つも開けないまま見上げている痩せた男。フードの影の中の、疲れた目。) [人物の紹介] > コーポ柊 305号室の住人 > 国見 恭平 **国見 恭平**(心の声):(……今日も、誰も、気づかない) **戸倉 航**:「気づくに決まってるだろ!」 > この声も、届かない。 (絵:夜の二階の外廊下。スマホを耳に当てて早口で話すドライバー。隣で管理人のおばあさんが、口を押さえている。) **日比野 めぐる**:「所長!置き配の荷物が盗まれました完了の前です」 (絵:営業所の事務机から、受話器を耳に当てたまま立ち上がる大柄な所長。額に老眼鏡、厳しい顔。) [人物の紹介] > シロツメ便 港南営業所 所長 > 大庭 権蔵 **大庭 権蔵**:「完了の前ならまだうちが預かってる荷物だ」 > **ℹ 引渡し(ひきわたし)の前の紛失(ふんしつ)(運送人の責任)**(現実の事実):宅配会社などの運送人は、荷物を受け取ってから引き渡すまでの間に荷物がなくなったり傷んだりした時、受け取り・運送・保管・引渡しで注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害を賠償する責任を負います(商法575条)。置き配では、合意した方法で合意した場所に置いた時が引渡しなので、その前か後かで話が変わります。 > - 問:置いた後に盗まれたら? 答:引渡しが済んだ後の盗難に誰が補償するかは一律の決まりではなく、通販サイトや宅配会社の規約、置き配の袋などの保険で決まります。国の検討会は、盗難などの責任分担を明確にするガイドラインを定める方向で検討するとしています。 > - 出典:[国土交通省・経済産業省「置き配の現状と実施に向けたポイント」(令和2年3月)](https://www.mlit.go.jp/common/001335954.pdf) > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) **大庭 権蔵**:「まず警察に届けろ。お客さんには俺が謝る」 (絵:端末を握りしめるドライバーの手。指の関節が白くなるほど強く。) **日比野 めぐる**(心の声):(目を離したのは私だ……) **警察官**:「置き配の荷物でも人の物を盗めば窃盗です」 (絵:外廊下で、二人の警察官がドライバーと管理人から話を聞いている。一人がメモを取る。) (絵:口の開いた灰色の置き配の袋。切られていないワイヤーが、ドアノブに掛かったまま。) > **ℹ 窃盗罪(せっとうざい)**(現実の事実):他人の物を盗むと窃盗罪になり、10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。玄関前に置かれた荷物も他人の物なので、持ち去れば窃盗罪にあたり得ます。 > - 問:盗まれたら、まず何をする? 答:通販サイトか宅配会社に連絡し、警察に被害届を出します。配達の時刻や完了の写真、建物の防犯カメラが手がかりになります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索 刑法 第235条(窃盗)](https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045) **日比野 めぐる**:「袋の鍵はかかったまま。箱だけ抜かれてる」 (絵:管理人室の古い防犯カメラの画面の前。小柄な管理人がボタンを押し、ドライバーと警察官が後ろからのぞきこむ。画面は粗い灰色の影だけ。「カチ」の描き文字。) **森下 ふみ**:「そうそう、廊下と階段には防犯カメラがあるのよ」 [作中の画面] > 防犯カメラ 2階の外廊下 > 19:24:10 配達員が、置き配の袋に荷物を入れる > 19:24:52 黒い上着の人物が、袋から荷物を取り出す > 19:25:08 3階への階段へ (絵:端末を警察官に見せるドライバーの手。画面はぼやけた光だけ。指が一点をさしている。) **日比野 めぐる**:「置いた時刻は端末に残ってます」 **日比野 めぐる**:「写真を撮る直前でした」 [作中の画面] > シロツメ便 配達の記録 > 4521-8890-3317 19:24 置き配の袋へ(写真なし・完了前) **森下 ふみ**:「3階の方へ、上がって行ったわね……」 > 置いた時刻、カメラの時刻、階段の先。隠せる物は、思ったより少ない。 (絵:夜の三階の外廊下を上から。突き当たりの三〇五号室へ歩いていく二人の警察官とドライバー。後ろに、合鍵の束を持った管理人。) (絵:半分開いた三〇五号室のドア。戸口に、フードを下ろした痩せた男が青ざめてうつむいて立つ。部屋の奥に、天井まで積み上がった箱。) (描き文字:ギィ……) **国見 恭平**:「……開けてないです。一つも」 **国見 恭平**:「ただ……届く箱がうらやましくて」 (絵:回想。昼の外廊下。向かいの部屋の家族が、笑顔でドライバーから荷物を受け取っている。少し離れた所で、フードの男がひとり、それを見ている。) > チャイムが鳴って、ドアが開いて、「ありがとう」。――その音が、毎日、聞こえていた。 (絵:男の疲れた目のアップ。うるんだ目に、廊下の明かりが小さく映る。) > 誰からも荷物の来ない部屋に、盗んだ荷物が、届かないまま積まれていた。 **戸倉 航**(心の声):(……それでも盗っていい理由にはならないだろ) (絵:夜明けの外廊下。手すりにもたれて並ぶドライバーと管理人。遠くの空が白みはじめている。) **森下 ふみ**:「あの人ね越してきてから郵便受けも空っぽだったの」 **日比野 めぐる**:「そっか……でも、盗んだ物は届けた物にはならないのに」 **森下 ふみ**:「一晩、ご苦労さまでしたね」 (絵:管理人のおばあさんが、エプロンのポケットから温かい缶のお茶を出して、ドライバーの手に握らせる。) (絵:朝の警察署の一室。長い机に、札を付けられた段ボール箱がずらりと並ぶ。ドライバーがあの箱を両腕に抱え、箱の点の目がほっとしている。) [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:保管中(警察から返却) > 保管期限:あと4日 (絵:朝の光の中、警察署の出口の階段を、箱を抱えて降りてくるドライバー。箱の点の目が、まぶしそうに細くなっている。) **戸倉 航**:「はあ〜……外の空気うまい……」 **戸倉 航**:「箱だけど」 **日比野 めぐる**:「ほかの箱も全部、持ち主に返されるって」 **戸倉 航**:「盗まれた人たち、気づいてたのかな」 **日比野 めぐる**:「気づいて通販サイトに連絡してた人もいるよ」 > **ℹ 置き配(おきはい)の盗難(とうなん)の補償(ほしょう)**(現実の事実):置き配で引渡しが済んだ後に盗まれた時、誰が補償するかは一律の決まりではありません。通販サイトや宅配会社の規約、置き配の袋などに付いた保険によって決まります。まず通販サイトか宅配会社に連絡し、警察に被害届を出します。 > - 問:国は何か決めている? 答:国土交通省の検討会の取りまとめ(令和7年11月)は、指定場所への配達での盗難・破損の防止や、保険も含めたトラブルの時の対応、責任分担を明確にするガイドラインを定める方向で検討するとしています。 > - 問:盗難が心配で置き配を使わない人は多い? 答:2018年12月の国のアンケート(置き配を使ったことがない・使いたくない人 589人)では、理由の40.9%が「盗難されないか心配だから」でした。 > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) > - 出典:[国土交通省・経済産業省「置き配の現状と実施に向けたポイント」(令和2年3月)](https://www.mlit.go.jp/common/001335954.pdf) (絵:床にしゃがみ、箱を回して横の面を見るドライバー。「……あれ」という顔。) **日比野 めぐる**:「あれ……?」 (絵:箱の横の面のアップ。送り状が破り取られ、テープと紙の切れ端だけが残っている(文字は読めない)。) [窓] > 〈お届け状況〉 > お届け先:読み取れません (絵:箱の顔のアップ。点の目が縦に伸び、顔じゅうに青い縦線。口が叫びの形。) **戸倉 航**:「伝票……破られてる――!?」 > 宛名の無い箱は、誰あてでもなくなる。 ## この話で分かること ### 置き配で盗まれたら、誰が補償する? 引渡しの前か後かで変わります。合意した方法で置く前(引渡しの前)になくなった時は、運送人が、注意を怠らなかったことを証明しない限り賠償する責任を負います(商法575条)。置いた後(引渡しの後)の盗難に誰が補償するかは一律の決まりではなく、通販サイトや宅配会社の規約、置き配の袋などの保険で決まります。 ### 置き配の盗難はバレる? 玄関前に置かれた荷物も他人の物なので、持ち去れば窃盗罪にあたり得ます(10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金、刑法235条)。被害届が出れば、配達の時刻や完了の写真、建物の防犯カメラなどが手がかりになります。 ### 置き配の盗難を防ぐには? 国土交通省・経済産業省の資料は、受け取る側も盗難のリスクを下げる工夫をした上で受取場所を指定することが望ましいとしています。鍵の付く置き配の袋、宅配ボックス、写真で完了を知らせるサービスなどの例が紹介されています。 ### 置き配の盗難が心配な人はどのくらい? 2018年12月の国のアンケートでは、置き配を使ったことがない・使いたくないと答えた589人のうち、40.9%が理由に「盗難されないか心配だから」を挙げました。 --- ご不在につき、俺を持ち戻ります 第4話「置き配盗難は、バレる」 つづく # ご不在につき、俺を持ち戻ります 第5話「ドライバーの残り時間」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/5-takuhai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[ご不在につき、俺を持ち戻ります](https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/takuhai/manga/5-takuhai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 送り状を破り取られた航は、宛先の分からない荷物として営業所の調べの棚に置かれる。航は自分の窓にお問い合わせ番号が見えることに気づき、めぐるが記録から宛先を取り戻す。送り状を貼り直そうと残るめぐるに、所長の大庭は「今日は何時に来た」と聞く。朝7時から、もう13時間近い。トラック運転者の1日の拘束時間は原則13時間、休息は継続11時間が基本。2024年4月から時間外労働の上限も年960時間になった。所長は送り状を自分で貼ると言ってめぐるを帰し、夜の事務所で、聞こえていない航と話がつながるように、再配達の有料化は国の提言に書かれていないこと、1回で受け取ってもらえればドライバーが家に帰れることを独り言でこぼす。翌朝、めぐるは休み。マンションの掲示板には、盗難を受けて外廊下の置き配を当面やめるお知らせ。航の選んだ置き場所は、もう使えない。 ## 登場人物 - **戸倉 航**:主人公。27歳、家電量販店の販売員で遅番が多い。再配達は今月12回。ある朝、自分あての段ボール箱になって目を覚ます。声は日比野めぐるにだけ聞こえる。 - **日比野 めぐる**:シロツメ便の配達ドライバー、29歳、5年目。早口で手が早い。箱になった航の声が聞こえる、ただ一人の人。 - **大庭 権蔵**:シロツメ便 港南営業所の所長、58歳。ドライバーの時間を守らせる側。 - **佐伯 ジュン**:シロツメ便の夜の仕分けのアルバイト、22歳。航の声は聞こえない。 - **森下 ふみ**:航の住むマンション「コーポ柊」の管理人、74歳。使用細則に詳しい。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:営業所の奥の一角。「調べ」の棚に、送り状の無い箱が肩を寄せて並ぶ。高い窓からの午後の光。) > 宛名の無い荷物は、営業所の奥の、調べの棚へ。 [窓] > 〈お届け状況〉 > 状況:お届け先 調査中 > 保管期限:あと4日 **戸倉 航**(心の声):(え、調べの棚?ここで何日も待つのか……) (絵:夕方、配達を終えたドライバーが、机に箱を置き、端末で記録を調べている。疲れた横顔、首の手ぬぐい。) **日比野 めぐる**:「でもね、お問い合わせ番号さえ分かれば」 **日比野 めぐる**:「記録から宛先を戻せる」 **戸倉 航**:「番号……?」 (絵:机の上の箱の寄り。目を大きく光らせ口を開けて、右上の何もない空中のかすかな黄色い光を見上げている。) [窓] > 〈お届け状況〉 > お問い合わせ番号 4521-8890-3317 **戸倉 航**:「見える!」 **戸倉 航**:「俺の窓に番号が出てる!」 **日比野 めぐる**:「読んで!ゆっくり!」 (絵:端末に一字ずつ番号を打ちこむドライバー。集中して舌の先が出ている。机の箱が得意げな顔。) [作中の画面] > 4521-8890-3317 > お届け先:コーポ柊 203 戸倉 航 様 > 送り状を再発行しますか > **ℹ 送り状(おくりじょう)(伝票)**(現実の事実):宅配の会社が荷物を引き受ける時に、荷物1個ごとに出す書類で、荷物に貼る伝票です。送る人と受け取る人の名前・住所・電話番号、品名、問い合わせの番号などが書かれます(国の標準宅配便運送約款第3条)。 > - 出典:[国土交通省「標準宅配便運送約款」(平成2年運輸省告示第576号)](https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/68226000/68226000.html) **日比野 めぐる**:「出た!」 (絵:椅子から立ち上がってこぶしを突き上げるドライバー。机の上の箱も、点の目をきらきらさせて喜んでいる。) **戸倉 航**:「やった!俺、」 **戸倉 航**:「俺あてに戻った!」 (絵:ドライバーの後ろに、腕を組んで立つ大柄な所長。額の老眼鏡ごしに、壁の時計を見ている。) **大庭 権蔵**:「おい、日比野。今日は何時に来た?」 **日比野 めぐる**:「……7時です」 **大庭 権蔵**:「今、19時50分だぞ」 (絵:事務所の壁。ドライバーたちの勤務の表がびっしり貼られ、横に大きな丸い時計(数字は読めない)。) [作中の画面] > トラック運転者の拘束時間(厚生労働省の基準・2024年4月から) > 1日:13時間以内(延ばしても最大15時間) > 休息:勤務の後に継続11時間以上が基本(9時間を下回らない) > 1か月:284時間以内|1年:3,300時間以内 > **ℹ 拘束時間(こうそくじかん)・休息期間(きゅうそくきかん)(トラック運転者)**(現実の事実):拘束時間は、始業から終業までの時間(労働時間と休憩時間の合計)です。厚生労働省の基準(2024年4月から)では、トラック運転者の1日の拘束時間は13時間以内で、延ばしても最大15時間。勤務の後の休息期間は、継続11時間以上を基本とし、9時間を下回ってはいけません。 > - 問:1か月・1年では? 答:1か月284時間以内・1年3,300時間以内が原則です。労使協定があれば、1か月310時間(年6か月まで)・1年3,400時間まで延ばせます。 > - 問:運転し続けていい時間は? 答:連続運転は4時間まで。運転時間は2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間までです。 > - 出典:[厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」トラック運転者](https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice) **大庭 権蔵**:「13時間だ。……もう、帰れ」 **日比野 めぐる**:「あと一件だけ!」 **日比野 めぐる**:「この子の送り状を貼るだけですから」 **大庭 権蔵**:「その「あと一件」が毎日あるんだ」 **大庭 権蔵**:「――それが2024年問題だろうが!」 > **ℹ 物流の2024年問題(ねんもんだい)**(現実の事実):2024年4月から、トラックなど自動車の運転の仕事にも時間外労働の上限(臨時的な特別の事情があっても年960時間)が適用され、拘束時間の基準も厳しくなりました。何も対策をしなければ物が運べなくなるおそれがあることを「物流の2024年問題」と呼びます。 > - 問:どのくらい運べなくなる? 答:国土交通省の資料は、具体的な対応をしなかった場合、2024年度に輸送能力が約14%(4億トン相当)、2030年度に約34%(9億トン相当)不足する可能性があるとしています(試算)。 > - 問:一般の会社員の上限とは違う? 答:時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある時でも、トラック運転者は年960時間です。 > - 出典:[厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」トラック運転者](https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice) > - 出典:[国土交通省「物流の2024年問題について」(資料1)](https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001620626.pdf) (絵:くちびるをかみ、机の箱を見下ろすドライバーの顔のアップ。悔しさと、納得。) **日比野 めぐる**:「……はい。休むのも仕事。分かってます」 (絵:所長がプリンターから出てきた新しい送り状を手に取り、ひらひらさせる。照れた顔をそむけている。) **大庭 権蔵**:「ったく。送り状は俺が貼っとく」 **大庭 権蔵**:「お前は寝ろ」 **戸倉 航**(心の声):(所長、いい人じゃん……) **日比野 めぐる**:「ふふ、聞こえてないけどね」 **日比野 めぐる**:「明日は休み。明後日の朝一番に積むから」 (絵:事務所の出口で、リュックを肩に掛けたドライバーが振り返り、机の上の箱に小さく手を振る。) (絵:夜の街灯の道を、自転車で帰っていくドライバーの小さな後ろ姿。後ろに、明かりの消えない営業所。) > めぐるが帰った後も、営業所の明かりは消えない。 (絵:夜の仕分け場。ベルトコンベアの上を流れる箱を読み取り機で次々に読む金髪の若い男。蛍光の安全ベスト、片耳にイヤホン。流れてくる、あの箱。) [人物の紹介] > シロツメ便 夜の仕分けのアルバイト > 佐伯 ジュン **戸倉 航**:「おーい!金髪!」 **戸倉 航**:「聞こえる!?」 **佐伯 ジュン**(心の声):(……ふあ〜。今日、戻りの箱多いな) > 聞こえない。 (絵:新しい送り状を、箱の上にぺたりと貼る太い指。「ペタ」の描き文字。) (絵:夜の事務所にひとり残った所長が、湯のみを手に、机の上の箱に向かって独り言を言っている。老眼鏡は鼻の先。) **大庭 権蔵**:「再配達は有料にしろって言う奴もいるがな」 > **ℹ 再配達の有料化**(現実の事実):国土交通省の検討会の取りまとめ(令和7年11月)は、置き配・宅配ボックス・コンビニなどの受け取り方を標準宅配便運送約款に位置づける方向で検討するとしたもので、再配達を有料にするとは書いていません(2026年10月17日に本文で確認)。実際の料金は、使う宅配会社の案内で確かめてください。 > - 問:国の約款は、もう変わった? 答:2026年10月17日時点で、改正の告示は確かめられませんでした。提言の段階では「位置づける方向で検討を進める」とされています。 > - 出典:[国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」(令和7年11月7日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001968046.pdf) **戸倉 航**:「えっ……有料になるの!?」 **大庭 権蔵**:「まあ、国の提言は置き配やボックスを」 **大庭 権蔵**:「選べるようにする方向だ。金を取れとは書いてない」 > 聞こえてないのに、話がつながっている。 [窓] > 再配達が減ると(国土交通省の検討会の取りまとめ・2025年11月) > 2019年時点の再配達率 約15%から、令和7年4月の水準までの減少で > 労働コスト 約6,000万時間分 > ドライバー 約3万人分の輸送力 **大庭 権蔵**:「1回で受け取ってもらえりゃあいつらは家に帰れる。……それだけの話だ」 (絵:夜の保管の棚。高い窓からの月明かりの中で、点の目を伏せて考えこむ箱。) (絵:回想。部屋の玄関の床に、何枚もの不在票が重なって散らばっている。灰色にくすんだ色。) > 12回。俺が頼んだ再配達で、めぐるは何時間、家に帰るのが遅くなったんだろう。 (絵:朝の営業所。トラックに荷物を積む人たち。あくびをする金髪の若い男。そこに、あのドライバーの姿は無い。) **佐伯 ジュン**:「日比野さん?今日は休みっすよ」 (絵:金髪の若い男が、あの箱を別のトラックの荷台の奥の棚へ押しこむ。箱の点の目が不安げ。) **佐伯 ジュン**:「えーと、コーポ柊の203、夜の便ね置き配、玄関前っと」 (絵:マンションの一階の掲示板に、管理人が一枚の紙を画びょうで留める。紙の文字は読めない。) [作中の画面] > コーポ柊 お知らせ > 置き配の盗難がありました。 > 当面のあいだ、外廊下への置き配はご遠慮ください。 管理人 (絵:棚の上の箱の顔のアップ。点の目が小さく縮み、冷や汗。) [窓] > 〈お届け状況〉 > お届け先:コーポ柊 203 戸倉 航 様(送り状 再発行) > 受け取り方:置き配(玄関前) > ※この置き場所は、今は使えません > 保管期限:あと3日 > 声の届くめぐるは、今日、休み。俺の選んだ置き場所は、もう無い。 ## この話で分かること ### 物流の2024年問題とは? 2024年4月から、トラックなど自動車の運転の仕事にも時間外労働の上限(臨時的な特別の事情があっても年960時間)が適用され、拘束時間の基準も見直されました。何も対策をしなければ物が運べなくなるおそれがあることを「物流の2024年問題」と呼びます。国土交通省の資料は、対応をしなかった場合、2024年度に輸送能力が約14%不足する可能性があるとしています(試算)。 ### トラックドライバーは1日何時間まで働ける? 厚生労働省の基準では、トラック運転者の1日の拘束時間(始業から終業まで)は13時間以内で、延ばしても最大15時間です。勤務の後の休息期間は継続11時間以上が基本で、9時間を下回ってはいけません。 ### 再配達は有料化される? 国土交通省の検討会の取りまとめ(令和7年11月)は、置き配や宅配ボックスなどの受け取り方を標準宅配便運送約款に位置づける方向で検討するとしたもので、再配達を有料にするとは書いていません(2026年10月17日に本文で確認)。 ### 再配達が減ると、ドライバーの何が変わる? 同じ取りまとめは、2019年時点の約15%から令和7年4月の水準まで再配達率が下がったことで、約6,000万時間に相当する労働コストの削減と、トラックドライバー約3万人に相当する輸送力不足の改善が見込まれるとしています。1回で受け取ることは、ドライバーが決まった時間の内で働けることにつながります。 --- ご不在につき、俺を持ち戻ります 第5話「ドライバーの残り時間」 つづく # 乗客は七人のはずだった 第1話「一人、多い」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/1-yakou/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[乗客は七人のはずだった](https://tooneru.com/henshubu/yakou/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/1-yakou/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 写真学科の学生・戸川ハルが夜行バスで目を覚ますと、バスは大雪の峠道で止まっていた。エンジンはかかったまま、運転席は空。外の雪には足跡ひとつない。乗客の1人、元市営バス運転士の秋津フミ(72)が運転席の乗車名簿を数えると、名簿は7人、車内には8人いた。そのとき、後ろの席のフードの少年が頭痛を訴える。フミは、雪でふさがったマフラーから排ガスが車内に入っていると見抜き、ハルたちと雪をかき出す。落ち着いた車内で、ハルは3時間前のサービスエリアで撮った写真を見返す。休憩の間、鍵がかけられ誰もいないはずのバスの窓に、人影が座っていた。その席、9Aは、名簿では空席だった。 ## 登場人物 - **戸川 ハル**:語り手。写真学科の2年、20歳。東京の展示に出す写真を抱えて夜行バスに乗った。何でも撮るのがくせ。 - **秋津 フミ**:乗客。72歳。40年、市営バスの運転士をしていた。「運転手は、お客を置いていかない」が口ぐせ。 - **久我 陽介**:夜行バスの運転手、41歳。峠でバスが止まった後、姿を消した。 - **鷺沢 玲司**:乗客。宝石商、47歳。銀色の鞄を手放さない。 - **鳴海 さよ**:乗客。看護師、61歳。車内で編み物をしている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:吹雪の夜の山道。一台の大きなバスが、前の明かりだけを灯して止まっている。まわりは雪と暗闇だけ。) > 午前2時14分。峠の途中で、バスが止まっていた。 (絵:夜行バスの座席で目を覚ます若い女性。頭の上の小さな明かりが、寝ぼけた顔を橙色に照らす。窓は白く曇っている。) **戸川 ハル**(心の声):(……あれ?止まってる?) (絵:暗い通路の先、バスの運転席。ハンドルの前の計器だけが橙色に光り、座席には誰もいない。前の窓に雪が積もっている。) > 運転席に、誰もいなかった。 (絵:運転席の手もと。差したままの鍵と、湯気の消えた水筒のカップ。「ゴォォ」と暖房の描き文字。) > エンジンは、かかったまま。暖房の風だけが、鳴っていた。 (絵:バスの前の扉のガラス越しに見た外。前の明かりに照らされた雪の原は、どこまでも平らで、足跡ひとつない。) **戸川 ハル**(心の声):(え……足跡がない……) **戸川 ハル**(心の声):(スマホは……) [作中の画面] > 携帯電話 > 圏外 > 電話も、つながらない。 (絵:首からカメラを下げた背の高い女性が、通路に立ち上がる。後ろで、ほかの乗客たちが次々に体を起こす。) [人物の紹介] > 写真学科2年 > 戸川 ハル > 東京の展示に出す写真を抱えて、私は夜行バスに乗っていた。 **鷺沢 玲司**:「おい!運転手はどこだ!」 (絵:らくだ色の長いコートの中年の男が、銀色の鞄を胸に抱え、前をにらんで立っている。) [人物の紹介] > 乗客・宝石商 > 鷺沢 玲司 **鷺沢 玲司**:「客を置いてどこへ行きやがった!」 **秋津 フミ**:「みんな、座ってな」 (絵:赤い毛糸の帽子に橙色のマフラーの小柄な老婦人が、通路を前へ歩き、運転席の背にそっと手を置く。) [人物の紹介] > 乗客・元 市営バス運転士(40年) > 秋津 フミ **秋津 フミ**:「慌てる前に、まず数えるよ」 > その人は、運転席の横の板から、紙を一枚とった。 [作中の画面] > 乗車名簿 霧笛 → 東京 夜行便 > 2A 秋津 フミ(女) > 3C 戸川 ハル(女) > 5A 鷺沢 玲司(男) > 6A・6B 小野寺 誠(男)・小野寺 美月(女) > 8C 鳴海 さよ(女) > 10D 矢代 透(男) > 計 7名 **秋津 フミ**:「ふむ。名簿は7人だね」 (絵:前から見た薄暗い車内。座席から頭がいくつものぞく。手前で老婦人が、指を一本ずつ折って数えている。) **秋津 フミ**:「……五、六、七、」 **秋津 フミ**:「八?」 **鷺沢 玲司**:「誰だ!名簿にないのは!」 **秋津 フミ**:「怒鳴っても、数は減らないよ」 **戸川 ハル**(心の声):(一人、多い……?) (絵:横に長い一枚。暗がりの中、乗客たちの目だけが並び、互いを横目でうかがっている。) **美月**:「ねえ……誰か知らない人が乗ってるってこと……?」 **誠**:「だ、大丈夫大丈夫だから」 > 誰も、名のり出なかった。 (絵:眼鏡の白髪まじりの女性が編み物の手を止め、後ろの席をのぞき込む。フードをかぶった少年が、ぐったりと窓にもたれている。) [人物の紹介] > 乗客・看護師 > 鳴海 さよ **鳴海 さよ**:「あら……この子、顔色が悪い」 **鳴海 さよ**:「頭、痛い?」 **少年**:「……ぼーっと、する」 **美月**:「私も……さっきから頭が重くて……」 (絵:老婦人の顔の大写し。計器の橙色の光を受け、目が鋭く見開かれる。) **秋津 フミ**:「マフラー!」 **秋津 フミ**:「雪で排気の口がふさがると」 **秋津 フミ**:「排ガスが床の下にたまって車の中に入ってくるんだ」 > 一酸化炭素は、色も、においも無い。 > **ℹ 雪で埋まった車の一酸化炭素中毒(いっさんかたんそちゅうどく)**(現実の事実):マフラー(排気口)が雪でふさがると、排ガスが車の床下にたまり、車体の隙間から車内に入り込みます。一酸化炭素は色もにおいも無いため気づきにくく、JAF のテストでは、マフラーの高さまで雪で覆った車の中の濃度が16分で400ppm に上がりました。 > - 問:どう防ぐ? 答:原則としてエンジンを切り、マフラーの周りの雪をこまめに取り除きます。JAF のテストでは、マフラーの周りを雪かきした車では一酸化炭素はほとんど検知されませんでした。 > - 出典:[JAF「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意(JAFユーザーテスト)」](https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/co-poisoning) **秋津 フミ**:「窓を開けな!」 **秋津 フミ**:「若いの、手を貸しておくれ!」 (絵:吹雪の中、バスの後ろで、ハルと大柄な青年とらくだ色のコートの男が、手と小さなスコップで雪をかき出す。老婦人が懐中電灯で足もとを照らす。「ザッ」「ザッ」の描き文字。) > バスの後ろは、もう腰まで雪だった。 (絵:手袋の手がカメラのシャッターを押す。雪の粒が光に浮かぶ。「カシャ」の描き文字。) **戸川 ハル**(心の声):(撮るのはくせだ。こんな時でも) **秋津 フミ**:「いいよ、撮っときな。あとで役に立つかもしれない」 **秋津 フミ**:「よし、これでいい。30分ごとに見に来るよ」 (絵:雪の下から黒い排気の管が出て、白い煙が流れ出す。老婦人がうなずく。奥では、らくだ色のコートの男が一人、後ろの車輪のそばの雪の山にしゃがみこんでいる。) **鷺沢 玲司**:「俺は戻るぞ。寒くてかなわん」 > 宝石商は、真っ先に、バスの中へ戻っていった。 **誠**:「あの人……ほとんど掘ってなかったような……」 (絵:少し窓の開いた車内。看護師が少年に水を飲ませ、少年の顔に色が戻ってくる。老婦人は運転席の横の段に腰をおろしている。) **鳴海 さよ**:「よかった……顔色、戻ってきた。もう大丈夫よ」 **秋津 フミ**:「運転手はお客を置いていかないもんだ」 **秋津 フミ**:「何か、わけがあるんだよ」 **戸川 ハル**:「フミさんは、どうしてそんなに……」 **秋津 フミ**:「ふふ。40年、運転席に座ってたからね」 (絵:運転席の背に手を置いて振り返る、フミの寄り。) > 私は、撮った写真を見返していた。 (絵:暗がりで、両手に持ったカメラの画面だけが光っている。画面の中身はぼんやりした橙色の光。) [作中の画面] > DSC_0412 23:41 > サービスエリア 休憩中のバス > 3時間前。雪のサービスエリアで撮った一枚。 (絵:回想。雪のサービスエリア。制服の運転手がバスの扉に鍵をかけ、乗客たちが建物へ歩いていく。) [人物の紹介] > 夜行バスの運転手 > 久我 陽介 **久我 陽介**:「休憩は20分です。バスは鍵をかけますので」 **久我 陽介**:「貴重品はお持ちください」 > 全員が降りて、鍵がかかった。そのはずだった。 (絵:写真を大きくした一枚。雪の中のバスの暗い窓。その奥の座席に、フードをかぶった小さな人影が座っている。) **戸川 ハル**(心の声):(鍵のかかった誰もいないはずのバスに——) **戸川 ハル**(心の声):(うそ。誰か、座ってる……!) (絵:車内の後ろの席。フードの影の奥で、少年の目だけが読書灯に光り、まっすぐこちらを見ている。) > 写真の席は、9A。 > 名簿では、空席だった。 ## この話で分かること ### 雪に埋まった車でエンジンをかけ続けるとどうなる? マフラー(排気口)が雪でふさがると、排ガスが車の床下にたまり、車体の隙間から車内に入り込んで一酸化炭素中毒を起こすおそれがあります。JAF のテストでは、マフラーの高さまで雪で覆った車で、車内の一酸化炭素の濃度が16分で400ppm に達し、その6分後に測定の上限の1,000ppm に達しました。 ### 窓を少し開けておけば大丈夫? それだけでは足りません。JAF のテストでは、マフラーの周りを雪かきした車では一酸化炭素はほとんど検知されませんでしたが、窓を5cm ほど開けただけの車では、約40分で400ppm に達し、その後まもなく800ppm 台になりました。いちばん効くのは、マフラーの周りの雪を取り除くことです。 ### 大雪で立ち往生したら、エンジンは切るべき? JAF は、雪で車が埋まった時は原則としてエンジンを切り、マフラーが雪でふさがれていないかを定期的に確かめて、ふさがれていたらすぐに雪を取り除くよう勧めています。暖を取るためにエンジンをかける時は、換気を十分にしながら、断続的にかけるようにします。 --- 乗客は七人のはずだった 第1話「一人、多い」 つづく # 乗客は七人のはずだった 第2話「名簿にない名前」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/2-yakou/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[乗客は七人のはずだった](https://tooneru.com/henshubu/yakou/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/2-yakou/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 9Aの少年はソラと名のり、出発のバス停からトイレに隠れて乗っていたと打ち明ける。フミが一人ずつ名簿と顔を合わせると、10Dの「矢代 透(男)」の席には、灰色のコートの女が座っていた。女は夫の切符だと言うが、フミは信じない。名簿にない人は2人。床下の仮眠室で寝ていた交替の運転手・岩淵が起き出すが、無線も電話もつながらない。そのとき宝石商の鷺沢が叫ぶ。鞄の中の青いダイヤ「冬の瞳」が無い。運転席の物入れから空の袋が見つかり、皆は消えた運転手を疑うが、フミは「運転手は、お客を置いて逃げない」と言い切る。マフラーを見に出た雪の中で、ハルは寝ぼけて撮った1時52分の写真に、懐中電灯を持って前へ歩いていく運転手を見つける。そして窓ガラスに映り込んだ車内には、宝石商の鞄に手をかける灰色のコートの女がいた。 ## 登場人物 - **ソラ**:9Aに座っていた少年、13歳。名簿に名前が無い。出発のバス停からトイレに隠れて乗ったと言う。 - **灰色のコートの女**:10Dの乗客。名簿の名前は「矢代 透(男)」。夫の切符で乗ったと言う。 - **岩淵 健**:交替の運転手、58歳。床下の仮眠室で寝ていた。 - **小野寺 誠・美月**:6A・6Bの乗客。新婚の夫婦だと言う。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:フードをかぶった少年の顔の大写し。大きなヘッドホンを首にかけ、唇をかんでいる。) [人物の紹介] > 9A・名簿にない少年 > ソラ **秋津 フミ**:「坊や、名前は?」 **少年**:「……ソラ」 (絵:座席から立ち上がり、声を荒げる鷺沢の寄り。) **鷺沢 玲司**:「切符は!名簿に無いぞ!」 **ソラ**:「僕は最初から乗ってた」 **ソラ**:「出発のバス停から。トイレに、隠れてた」 > 一人多いのは、この子だった。 > ——そう思った。 (絵:座席の間で振り返り、目を見開くフミの寄り。) **秋津 フミ**:「そうかい。わけはあとで聞くよ」 **秋津 フミ**:「じゃあ、名簿と顔を合わせるよ。一人ずつ、名前を」 (絵:薄暗い車内の通路。老婦人が名簿を手に立ち、乗客たちが一人ずつ手を挙げている。) **小野寺 誠・美月**:「えっと、小野寺です。妻と新婚旅行で」 (絵:並んで座る若い男女。大柄で坊主頭の青年が、小柄なボブの女性の手を握っている。二人の指に、そろいの銀の指輪。) [人物の紹介] > 乗客・6A・6B > 小野寺 誠・美月 **小野寺 誠・美月**:「……はい」 > 美月さんは、一度も顔を上げなかった。 **秋津 フミ**:「最後。10D、矢代 透さん」 (絵:最後列の窓ぎわの席。灰色の長いコートの人物が、ゆっくり黒いマスクを下ろす。銀色の短い髪の、鋭い目の女性。) **女**:「……矢代です」 **秋津 フミ**:「おや。名簿の矢代さんは男の人だよ」 **女**:「夫の切符です。夫が熱を出したので私が代わりに」 (絵:眉間にしわを寄せた、フミの目もとの寄り。) > 嘘だ、とフミさんの顔に書いてあった。 **戸川 ハル**(心の声):(名簿にない人が、2人……?) **秋津 フミ**:「それと、もう一人」 **秋津 フミ**:「この長さの夜行はね、運転手が2人乗ってる交替の人が床の下の部屋で寝てるはずだよ」 (絵:通路の床にある四角いふた。しわの多い手が、それを叩く。「コン」「コン」の描き文字。) (絵:床のふたから、禿げ頭に灰色の無精ひげのずんぐりした男が、耳栓を外しながら眠そうに顔を出す。) [人物の紹介] > 交替の運転手 > 岩淵 健 **岩淵 健**:「ふあ〜……もう着いたか?」 **戸川 ハル**:「止まってるんです!雪で!」 **岩淵 健**:「……うう、頭が割れそうだ」 **鳴海 さよ**:「床の下にも排ガスが来てたのかも」 **鳴海 さよ**:「ほら、顔色見せて」 **岩淵 健**:「えっ、久我がいない?」 **岩淵 健**:「客を置いてどっか行く男じゃねえぞ」 (絵:運転席で、ずんぐりした運転手が無線のマイクと携帯電話を交互に耳に当て、顔をしかめる。) **岩淵 健**:「だめだ。無線も、携帯も、電波が届かねえ」 **鷺沢 玲司**:「無い!!」 (絵:らくだ色のコートの男の顔の大写し。目を見開き、額に汗。) (絵:開いた銀色の鞄。中の紺のビロードに、石の形のくぼみだけが残っている。) **鷺沢 玲司**:「『冬の瞳』が無い!」 **鷺沢 玲司**:「2億円の青いダイヤだぞ!」 (絵:騒然とする車内。立ち上がる乗客たち、顔を見合わせる夫婦、身を縮める少年。) **小野寺 誠・美月**:「運転手さんが持って逃げた……とか?」 **鷺沢 玲司**:「そうだ、だから消えたんだ!」 (絵:運転席の横の物入れから、太い手が小さな紺のビロードの袋を引き出す。) **岩淵 健**:「……なんだ、これ」 **鷺沢 玲司**:「それだ!ダイヤの袋だ!」 > 袋は、空だった。 **小野寺 誠・美月**:「やっぱり……運転手さんが……」 (絵:老婦人の顔。眉間にしわを寄せ、静かに、しかしはっきりと首を横に振る。) **秋津 フミ**:「違うね」 **秋津 フミ**:「運転手はお客を置いて逃げたりしないよ」 **鷺沢 玲司**:「婆さんに何が分かる!」 (絵:回想。昔の雪の町。若い女性の運転士が、制服姿で路線バスの扉を押さえ、ランドセルの子どもたちを乗せている。) **秋津 フミ**:「40年、ハンドルを握ってきた」 **秋津 フミ**:「それにね。盗んで逃げる人が袋を自分の席に置いていくかい?」 **戸川 ハル**(心の声):(……あ、確かに) **秋津 フミ**:「誰かが運転手に罪をかぶせたがってる」 (絵:運転席の側から見た車内。乗客たちと交替の運転手が、それぞれ疑うような目でこちらを見ている。) > この中の、誰かが。 > 30分たった。マフラーを見に行く時間だ。 (絵:吹雪の中、バスの後ろ。老婦人が懐中電灯で排気の管を照らし、ハルが横で雪を払う。) **秋津 フミ**:「ねえ、あんた。写真をたくさん撮ってたね」 **秋津 フミ**:「バスが止まる前後も撮ってたかい?」 **戸川 ハル**:「え……寝ぼけて何枚か……」 (絵:雪が舞い落ちる中、手袋の両手が光るカメラの画面を見ている。) [作中の画面] > DSC_0431 1:52 > (窓の外) (絵:写真の中の一枚。夜の窓越しに、雪の中を、制服の運転手が懐中電灯を持って前へ歩いていく。後ろに足跡が続き、ずっと先に小さな橙色の明かり。) **戸川 ハル**:「あっ!運転手さん!」 **戸川 ハル**:「前の方へ歩いてく……」 **秋津 フミ**:「1時52分……止まってすぐだね」 **秋津 フミ**:「この時は足跡があった。2時14分にはもう消えてた」 **戸川 ハル**(心の声):(22分で足跡が消えるほどの雪……) > 私は、その写真を大きくした。 (絵:写真を大きくした一枚。暗い窓ガラスに、車内が映り込んでいる。眠る乗客たちの中で、灰色のコートの背の高い人物だけが立ち、ある座席の銀色の鞄に手をかけている。) (絵:バスの窓の内側。曇ったガラス越しに、灰色のコートの女がこちらを見下ろしている。目だけがはっきり見える。) > 止まってすぐの車内で。 > 灰色のコートの女が、宝石商の鞄に手をかけていた。 --- 乗客は七人のはずだった 第2話「名簿にない名前」 つづく # 乗客は七人のはずだった 第3話「足跡は消える」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/3-yakou/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[乗客は七人のはずだった](https://tooneru.com/henshubu/yakou/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/3-yakou/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ フミは灰色のコートの女に、1時52分に宝石商の席で何をしていたかを問う。女は、その時ダイヤはまだ鞄の中にあったと答える。ならば盗まれたのはその後で、運転手はもうバスの外にいた。交替の運転手・岩淵は、立ち往生したら車の中にいるのが原則だと言い、フミは、運転手が出たのは電波が無く、1キロ先の古いトンネルの非常電話まで歩くしかなかったからだと読む。小野寺誠は、運転手が出る前に車内放送をしたと打ち明ける。起きていたのは夫婦と灰色のコートの女と、宝石商。寝ていたと言い張る鷺沢の前で、女は正体を明かす。損害保険会社の調査員・霧島奏。名簿の矢代透は同僚で、鷺沢を見張るために乗った。鷺沢は半年前、ダイヤに2億円の保険をかけていた。「ダイヤは、盗まれてなんかいない。この人が、自分で隠した」。その時、エンジンが咳きこみ、車内の明かりと暖房が消えた。 ## 登場人物 - **霧島 奏**:10Dの乗客。損害保険会社の調査員、34歳。同僚・矢代透の切符で乗り、宝石商の鷺沢を見張っていた。 - **秋津 フミ**:乗客。元市営バス運転士。昔、雪の夜に峠のトンネルの非常電話まで歩いたことがある。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:橙色の読書灯がぽつぽつ灯る車内。雪にまみれた老婦人が、通路をまっすぐ最後列へ歩いていく。) **秋津 フミ**:「矢代さん」 **秋津 フミ**:「1時52分、あんたは5Aの横で何をしてた?」 **女**:「……写真、ですか」 (絵:灰色のコートの女が、座ったまま老婦人を見上げる。表情を動かさない。) **鷺沢 玲司**:「お前か!!」 (絵:女につかみかかろうとするらくだ色のコートの男を、大柄な坊主頭の青年が後ろから羽交い締めにして止める。「ガタッ」の描き文字。) **小野寺 誠・美月**:「落ち着いてください!」 **女**:「私は盗っていません」 **女**:「その時、鞄の中に、ダイヤはありました」 **秋津 フミ**:「へえ。見たのかい?」 **女**:「見ました」 (絵:カメラを両手で抱えたハルが、口元を引きしめて考えこむ顔。読書灯の橙色が片側を照らす。) **戸川 ハル**(つぶやき):「じゃあ、盗まれたのは1時52分より後……」 **秋津 フミ**:「その頃、運転手はもうバスの外だ」 **秋津 フミ**:「それに、戻ってきてたらあの人は真っ先にマフラーを見てるよ」 **秋津 フミ**:「運転手ってのはね、そういうもんさ」 **鷺沢 玲司**:「じゃあ!どこへ行った!」 **鷺沢 玲司**:「客を置いて!」 **岩淵 健**:「……立ち往生したら車の中にいるのが原則だ」 (絵:運転席の横に立つ、ずんぐりした交替の運転手。腕を組み、雪で真っ白な前の窓を見つめる。) **岩淵 健**:「外は危ねえし外より中の方があったけえ」 **秋津 フミ**:「それでも出たのは電波が無いからだよ」 (絵:カメラの画面に、雪の夜の写真が大きく映る。ずっと先の暗闇に、小さな橙色の明かりが一つ。) **秋津 フミ**:「この先にね、古いトンネルがある」 **秋津 フミ**:「入口に、非常電話があるはずだよ」 **岩淵 健**:「ああ、鴉ノ峠トンネルだ。ここから1キロちょっとだ」 (絵:回想。何十年も前の雪の夜。若い女性の運転士が、トンネルの入口の小さな箱を開け、受話器を耳に当てている。) **秋津 フミ**:「私も昔、雪の夜にあの電話まで歩いたことがあるよ」 **秋津 フミ**:「久我さんは電話をかけてすぐ戻るつもりだった」 **秋津 フミ**:「戻れない何かがあったんだよ」 **戸川 ハル**:「た、助けに行かないと!」 **秋津 フミ**:「待ちな。今は行かないこの雪じゃ迷う人が増えるだけだ」 (絵:老婦人が、雪で白く埋まった窓の外をにらむ横顔。手袋の手を窓ガラスに当てている。) **秋津 フミ**:「雪が弱まったら私が行くよ」 **戸川 ハル**:「……私も行きます!」 **秋津 フミ**:「あんたは写真を撮りな。それが今、一番の手がかりだ」 **小野寺 誠・美月**:「あ、あの……僕ら、起きてました」 (絵:並んで座る若い夫婦。坊主頭の青年が、おずおずと片手を挙げる。隣のボブの女性が袖を引いて止めようとする。) **小野寺 誠・美月**:「運転手さん出ていく前に放送してました」 (絵:回想。暗い車内の前。制服の運転手が、運転席のマイクを口元に寄せて話している。前の窓の外は吹雪。) **久我 陽介**:「雪で前に進めません。電話をかけにトンネルまで行ってきます」 **久我 陽介**:「30分で戻ります。車内でお待ちください」 **秋津 フミ**:「ほらね。置いていったんじゃない」 **秋津 フミ**:「その放送、ほかに聞いた人は?」 (絵:横に長い一枚。灰色のコートの女と、らくだ色のコートの男。二人の目だけが並び、どちらも視線をそらしている。) **小野寺 誠・美月**:「あの女の人と……宝石の人も起きてました」 **鷺沢 玲司**:「俺は寝ていた!」 **戸川 ハル**(心の声):(運転手さんがいなくなると知ってたのに、黙ってた……?) **秋津 フミ**:「寝てた人は運転手が消えたと聞いてあんなふうに叫ばないよ」 **秋津 フミ**:「「どこへ行った」じゃなくて「何があった」って聞くもんだ」 (絵:らくだ色のコートの男の顔に、汗が一筋つたう。目が泳いでいる。) **女**:「……ふう。もう、隠しても仕方ないですね」 **霧島 奏**:「矢代は、私の同僚です。熱を出したのは本当」 (絵:灰色のコートの女が立ち上がり、内ポケットから身分証の入った黒い手帳を開いて見せる。身分証の文字は読めない。) [人物の紹介] > 損害保険会社 調査部 > 霧島 奏 **霧島 奏**:「私はこの人を見張るために乗りました」 **霧島 奏**:「鷺沢さんは半年前、あのダイヤに2億円の保険をかけています」 **戸川 ハル**(心の声):(えっ……保険……?) **霧島 奏**:「この人の会社は借金で傾いている」 (絵:空のくぼみが残る銀色の鞄の縁を、男の両手が白くなるほど握りしめている。) **霧島 奏**:「ダイヤは、盗まれてなんかいません」 (絵:霧島の顔の大写し。冷たい目で、まっすぐ前の男を見すえる。) **霧島 奏**:「まだ、このバスのどこかにある」 **霧島 奏**:「この人が自分で隠した!」 (絵:霧島につかみかかろうとして、青年に止められる鷺沢の寄り。) **鷺沢 玲司**:「でたらめだ!証拠は!?」 > 車内が、しんと静まり返った。 (絵:運転席の計器。橙色の針がふっと落ちる。「ガフッ」「ブルル……」の描き文字。) (絵:斜めに傾いた構図。車内の明かりが一斉に消え、乗客たちが暗闇の中で顔を上げる。最後の読書灯がちらつく。) > 暖房の音が、止まった。 **岩淵 健**:「……まずい。エンジンが止まった」 (絵:真っ暗な車内。息が白く見えはじめる。窓の外では雪が降り続いている。) > 外は、零下の吹雪。 > 夜明けまで、あと3時間。 ## この話で分かること ### 大雪で立ち往生したら、車を離れて助けを呼びに行っていい? JAF は、雪の積もった道の上は危ないので、運転者は車の中にとどまるのが原則としています。荒れた天気の時は外より車の中の方が暖かいので、無理に外へ出ず、車内で救援を待つよう勧めています。 ### 道路で困った時の「#9910」とは? 国土交通省の道路緊急ダイヤルです。道路の穴や路肩の崩れ、落下物など、道路の異状を24時間、無料で通報できます。全国どこからでも同じ番号で、LINE でも通報できます。 ### 高速道路の非常電話は、どのくらいの間隔である? JAF Mate によると、高速道路には1km ごとに非常電話が置かれています。携帯電話が使えない時のために、走りながら位置を確かめておくと安心です。 --- 乗客は七人のはずだった 第3話「足跡は消える」 つづく # 乗客は七人のはずだった 第4話「零下の車内」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/4-yakou/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[乗客は七人のはずだった](https://tooneru.com/henshubu/yakou/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/4-yakou/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ エンジンが止まり、明かりも暖房も消えた。交替の運転手・岩淵がもう一度エンジンをかけようとするのを、フミは止める。バッテリーまで弱れば、朝に除雪車が来てもバスは動けない。歩いて山を下りると叫ぶ鷺沢を、フミは「エンジンが止まっても、車の中の方が外よりずっとあたたかい」と押しとどめ、乗客に毛布・上着・カイロを出させる。霧島が出したアルミの非常用シートは、汗をかくとかえって冷えるので最後に取っておく。前の席に固まって座り、足を床から上げてカイロを足先に。寄り合った車内で、小野寺夫妻は本当は夫婦ではなく、結婚を反対されて家を出てきたと打ち明け、止まったバスで初めて笑いが起きる。ソラは「父さんに会いに来た」とだけ言い、運転席を見ていた。午前4時20分、風がやむ。運転手が2人とも出るわけにはいかないと、フミはハルを連れてトンネルへ向かう。入口の非常電話の箱は扉が開き、受話器がぶら下がっていた。その下の雪の上に、運転手の制帽だけが落ちていた。 ## 登場人物 - **小野寺 誠・美月**:6A・6B の乗客。名簿では夫婦だが、本当は結婚を反対されて家を出てきた2人。 - **岩淵 健**:交替の運転手、58歳。消えた久我の代わりに、止まったバスを預かる。 - **ソラ**:9A の少年、13歳。名簿に無い。「父さんに会いに来た」とだけ話す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:真っ暗な車内。懐中電灯の冷たい水色の光がひとつだけ、白い息を吐く乗客たちの顔をなでていく。) > 午前3時40分。 > 明かりも暖房も、消えたまま。 (絵:運転席の鍵を回す、太い手。「キュルル……」の描き文字。計器の光は弱い。) **岩淵 健**:「くそ……かからねえ」 **岩淵 健**:「もう一回――」 (絵:鍵を回そうとする太い手首を、小さな手袋の手がつかんで止める。) **秋津 フミ**:「やめな!」 **秋津 フミ**:「バッテリーまで死んだら」 **秋津 フミ**:「朝、除雪車が来てもこのバスは動けないよ」 **秋津 フミ**:「それに、雪に埋まった車でエンジンを回し続けるもんじゃない」 **岩淵 健**:「ああ……すまねえ。そうだったな」 (絵:らくだ色のコートの男が通路に立ち、白い息を荒く吐きながら叫ぶ。銀の鞄を抱えたまま。) **鷺沢 玲司**:「このままじゃ凍え死ぬぞ!」 **鷺沢 玲司**:「俺は歩いて山を下りる!」 (絵:前の扉が少し開いたとたん、吹雪が車内へなだれ込む。雪の飛沫が左右の闇へ噴き出す。「ゴォッ」の描き文字。) **小野寺 誠・美月**:「閉めて!」 **小野寺 誠・美月**:「閉めてください!」 (絵:小柄な老婦人の顔。冷たい水色のマフラーに口元をうずめ、静かに、しかし強く男を見すえる。) **秋津 フミ**:「外は零下の吹雪だ」 **秋津 フミ**:「下まで何キロあると思ってるんだい」 **秋津 フミ**:「エンジンが止まっても車の中の方が外よりずっとあったかいんだよ」 **秋津 フミ**:「大事なのは朝まで体の熱を逃がさないことさ」 **秋津 フミ**:「さあ、お客さん。持ってる物を全部出しな」 **秋津 フミ**:「毛布、上着、カイロ、何でもいい」 (絵:丸眼鏡の看護師が、編みかけの毛糸のショールと、使い捨てカイロの袋を差し出す。) **鳴海 さよ**:「カイロなら、10個あるわ。看護師の冬の荷物よ」 (絵:床の四角い扉から半身を出した禿げ頭の運転手が、たたんだ毛布を二枚、両腕に抱えて持ち上げる。) **岩淵 健**:「仮眠室に毛布が2枚。これで全部だ」 (絵:黒い革手袋の手が、たたんだ銀色の薄いシートを差し出す。懐中電灯の光が銀に冷たく映る。) **霧島 奏**:「非常用のアルミのシートなら1枚あります」 **秋津 フミ**:「ああ、それは最後に取っときな」 **秋津 フミ**:「あれは息が抜けないから汗をかくとかえって冷えるんだ」 > **ℹ アルミの非常用シート(エマージェンシーシート)**(現実の事実):体温を保つための、薄くて軽いアルミのシートです。JAF のテスト(外気温 −10℃前後・エンジンを止めた車内)では、これだけで過ごした人は5時間27分で続けられなくなりました。通気性が無いので汗をかき、その汗が冷えたためです。毛布と使い捨てカイロ、または冬山用の寝袋の人は8時間耐えました。 > - 問:持っていても意味はない? 答:JAF のテストでは、何も対策しなかった人(2時間45分)よりは長く耐えています。ただ、それだけでは十分に暖かくならなかったので、毛布や寝袋と合わせて備えるのがよいでしょう(このまとめは、テストの結果からの読み取りです)。 > - 出典:[JAF「冬の車内温度(JAFユーザーテスト)」](https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/winter) **秋津 フミ**:「ほら、前の席に寄りな。みんなで固まって座るよ」 **秋津 フミ**:「足は床から上げて。カイロは足の先だ」 (絵:前の方の座席に、乗客たちが毛布と上着を分け合って身を寄せ合う。床から足を上げ、懐中電灯を一本、天井に向けて立て、車内をぼんやり照らしている。) > 寒さで、誰も眠れない。 > 寄り合った肩だけが、あたたかかった。 (絵:毛布にくるまったボブの女性が、初めて顔を上げて皆を見る。隣の大柄な坊主頭の青年が、その手をにぎっている。) **小野寺 誠・美月**:「……あの」 **小野寺 誠・美月**:「私たち、本当は夫婦じゃないんです」 **小野寺 誠・美月**:「……結婚を反対されて……2人で家を出てきました」 (絵:並んで座る誠と美月の顔の寄り。) **小野寺 誠・美月**:「名簿で同じ名字にしたのは僕の嘘です」 **小野寺 誠・美月**:「す、すみません」 **戸川 ハル**(心の声):(えっ……駆け落ち!?) **秋津 フミ**:「ははっ、嘘のつき方が下手だねえ」 **秋津 フミ**:「でも、雪の夜に駆け落ちするなら根性はあるよ」 (絵:毛布の山の中で、看護師が肩を揺らして笑い、老婦人がにやりとし、カメラを抱えた若い女も思わず吹き出す。) > 止まったバスの中で、初めて、誰かが笑った。 (絵:最後列にひとり座る、らくだ色のコートの男。膝に毛布が投げ込まれている。二列前の席から、銀の短髪の女が振り向いて男を見ている。) **秋津 フミ**:「あんたも、お客だ。使いな」 **霧島 奏**:「……私がここで見ています」 **鷺沢 玲司**:「……」 **戸川 ハル**(心の声):(ソラくんは、ずっと黙ってる) (絵:フードの影の中の、少年の目だけの細い帯。まっすぐ前を見つめている。) (絵:少年の席から見た、暗い車内の奥。誰もいない運転席が、ずっと前に小さく見える。) **戸川 ハル**:「ねえ、寒くない?」 **ソラ**:「……平気」 **戸川 ハル**:「東京に、誰か待ってるの?」 **ソラ**:「……父さんに、会いに来た」 **ソラ**:「それだけ」 **戸川 ハル**(心の声):(ソラくん……また運転席を見てる……) (絵:曇った窓を手袋でぬぐう、ポニーテールの若い女の横顔。窓の外の雪は細くなり、木々の影が見えはじめている。) > 午前4時20分。 > 風が、やんだ。 **戸川 ハル**:「フミさん、雪が……!」 **秋津 フミ**:「弱まったね。行くよ」 **岩淵 健**:「俺が行く。あんたは休んでろ」 **秋津 フミ**:「だめだ。あんたは、このバスの運転手だろ」 (絵:マフラーに口元をうずめ、静かに見すえるフミの顔の寄り。) **秋津 フミ**:「運転手が2人とも出たらお客を置いてくことになる」 **岩淵 健**:「……」 **秋津 フミ**:「ハル、来な。カメラを持って」 **秋津 フミ**:「雪の夜は、一人じゃ歩かない」 **戸川 ハル**:「はい!」 (絵:雪の中に止まった夜行バス。ハザードの冷たい水色の光が、静かに点滅している。) > 1キロちょっとの雪の道。 (絵:黒い杉の並ぶ峠道を、懐中電灯を持った小さな二人が歩いていく。膝まで沈む雪。) **秋津 フミ**:「足元だけ照らしな。遠くは見なくていい」 (絵:道の先に、古い石のトンネルの黒い口。その脇で、小さな非常電話の箱の灯りがひとつ光っている。) > その先に、小さな灯りが見えた。 (絵:トンネルの入口の非常電話の箱。扉が開いたまま、受話器がコードでぶら下がって揺れている。巻いたコードが下へ垂れていく。) **戸川 ハル**:「受話器が……外れてる」 (絵:垂れたコードの先の、雪の上。運転手の制帽がひとつだけ、半分雪に埋もれて落ちている。まわりに足跡は無い。) **戸川 ハル**:「これ……運転手さんの……」 > 受話器は、ぶら下がったまま。 > 雪の上には、制帽だけが落ちていた。 ## この話で分かること ### 冬にエンジンを止めた車の中は、どのくらい冷える? JAF のテスト(2014年2月、長野県の菅平高原。外気温 −10℃前後、雪)では、エンジンを止めて何も対策しなかった人は、2時間45分で続けられなくなりました。その時の車内は 1.8℃、外は −11.1℃でした。 ### 立ち往生した車で、一晩しのぐには何があればいい? 同じテストで、毛布と使い捨てカイロを使った人と、冬山用の寝袋を使った人は、8時間(午後11時〜午前7時)耐えました。終わった時の車内は −7℃でした。 ### アルミの非常用シート(エマージェンシーシート)だけで足りる? JAF のテストでは、エマージェンシーシートの人は5時間27分で続けられなくなりました(車内 −3.9℃)。通気性が無いので汗をかき、それが冷えにつながったためです。 ### 寒くても、車の外へ出ない方がいい? JAF は、車の中の方が外より温度が高いので、荒れた天気の時は無理に外へ出ず、車内で天候の回復や救援を待つのがよいとしています。 --- 乗客は七人のはずだった 第4話「零下の車内」 つづく # 乗客は七人のはずだった 第5話「トンネルの灯」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/5-yakou/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[乗客は七人のはずだった](https://tooneru.com/henshubu/yakou/) - 作者:トゥーンエル編集部 - クレジット:作・編集:トゥーンエル編集部/作画:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/henshubu/yakou/manga/5-yakou/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 入口の非常電話は、話の途中で切れていた。受話器が垂れたままなのは、運転手の久我がつながる電話を探しに行ったからだとフミは読む。雪の降らないトンネルの中には、奥へ続く一人分の足跡と、片足を引きずった跡が残っていた。凍った入口でハルが足をすべらせ、フミは久我もここでけがをしたと見る。新しいトンネルなら中にも200メートルごとに非常電話がある。暗いトンネルの奥に、灯りがひとつ。懐中電灯で鉄の枠を叩く音をたどると、非常電話の箱の下に、足首を腫らした久我がうずくまっていた。フミは水筒のお茶を飲ませ、自分のマフラーを久我の首に巻く。中の電話は道路の管理事務所につながり、3時ごろに運転手から通報があったこと、除雪車が6時に峠に入ることが分かる。久我は逃げていなかった。消えたダイヤと空の袋のことを聞かれると、久我は首を横に振り、フミの袖をつかむ。凍えた唇から出た第一声は、「……空は、無事か」。名簿にない9Aの少年の名前だった。 ## 登場人物 - **久我 陽介**:夜行便の運転手、41歳。乗客に車内放送をしてトンネルの非常電話まで歩き、足首をけがして戻れなくなっていた。 - **秋津 フミ**:乗客。元市営バス運転士。ハルを連れて、峠のトンネルまで久我を探しに来た。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:雪の中、制帽を両手で拾い上げる小柄な老婦人。その横でポニーテールの若い女が、ぶら下がる受話器に懐中電灯の冷たい水色の光を当てている。) **秋津 フミ**:「久我さんは、ここまで来てたんだ」 (絵:受話器を耳に当てる、しわのある手袋の手。受話器からは何も聞こえない。) **秋津 フミ**:「……切れてる」 **戸川 ハル**(心の声):(電話の途中で、切れた……?) **秋津 フミ**:「だから受話器が垂れたままなんだね」 **秋津 フミ**:「あの人は、つながる電話を探しに行った」 **戸川 ハル**:「でも、足跡がどこにも――」 (絵:古い石積みのトンネルの入口。上からつららが下がり、中は真っ黒な闇。入口の前に立つ、小さな二人の影。) **秋津 フミ**:「トンネルの中にゃ、雪は降らないよ」 (絵:懐中電灯に照らされた、トンネルの濡れた路面。奥へ向かう一人分の足跡と、片足を引きずったような長い跡。「カシャ」の描き文字。) [作中の画面] > DSC_0441 04:52 > 鴉ノ峠トンネル 入口の路面 **戸川 ハル**:「足跡……!奥へ、続いてる」 **秋津 フミ**:「片足を、引きずってる」 **秋津 フミ**:「けがをしてるね」 (絵:トンネルの入口の凍った路面で足をすべらせたポニーテールの若い女の腕を、小柄な老婦人がとっさにつかむ。「ズルッ」の描き文字。) **戸川 ハル**:「わっ……!」 **秋津 フミ**:「おっと。入口が一番凍る」 **秋津 フミ**:「雪解けの水が染みてくるからね」 **秋津 フミ**:「久我さんも、たぶんここでやったんだ」 (絵:トンネルの中から振り返った入口。白く光る雪の外と、つららの影。) > 外の吹雪の音が、遠くなる。 **戸川 ハル**(心の声):(どこまで続いてるんだろう……) (絵:真っ暗なトンネルの中を、懐中電灯を持った小さな二人が奥へ進む。濡れた路面に、足跡の続き。) (絵:ずっと奥の壁に、小さな冷たい水色の灯りがひとつ。非常電話の箱の灯り。) **秋津 フミ**:「見な。奥に、灯りがある」 **秋津 フミ**:「新しいトンネルなら中にも200メートルごとに非常電話がある」 > **ℹ トンネルの非常電話**(現実の事実):トンネルの中で事故や火災が起きた時に、管理する所へ話して知らせるための電話です。国土交通省の基準では、非常電話を置く時の間隔は 200m 以下が標準です。高速道路では、受話器を上げると道路管制センターの係員が出ます。 > - 問:どのトンネルにもある? 答:基準では、トンネルの長さと交通量で等級(AA・A・B・C・D)を決め、非常電話などの通話型の通報設備は AA〜C の等級に置くのが標準です。短く、車の少ない D のトンネルには、標準では置きません。 > - 問:声が出せない時は? 答:NEXCO西日本は、話すのが難しい時は受話器をたたくなどの合図で知らせるよう案内しています。 > - 出典:[国土交通省「道路トンネル非常用施設設置基準」(2019年3月29日 改定)](https://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/pdf/tonnneruhijou.pdf) > - 出典:[NEXCO西日本「事故・故障・火災のとき」(高速道路の非常電話・押しボタン式通報装置)](https://www.w-nexco.co.jp/safety_drive/highway_rule/accident/) **秋津 フミ**:「古いトンネルでももう一つくらいは、と思ったんだろ」 (絵:暗闇の中で、ポニーテールの若い女が懐中電灯を天井へ向ける。冷たい水色の光の筋が、上の闇へ伸びる。「コン……コン……」の描き文字。) **戸川 ハル**(心の声):(音……?) (絵:白い手袋の手が、懐中電灯で非常電話の箱の鉄の枠を、弱々しく叩いている。) **戸川 ハル**:「久我さん!」 (絵:非常電話の箱の灯りの下、トンネルの壁にもたれて座りこむ制服の運転手。帽子は無く、肩に霜。目は半分閉じている。) (絵:ひざをついた老婦人が、水筒のふたに湯気の立つお茶を注ぎ、運転手の口元へ運ぶ。運転手は震えている。) **秋津 フミ**:「飲みな。ゆっくりだよ」 (絵:ひもをほどいた黒い靴。足首が大きく腫れている。) **戸川 ハル**:「足首が、こんなに……」 **秋津 フミ**:「これじゃ戻れなかったはずだよ」 (絵:老婦人の手が、自分の冷たい水色のマフラーをほどき、運転手の首に巻いていく。) > フミさんは、自分のマフラーをほどいた。 (絵:非常電話の受話器を耳に当て、箱の灯りに照らされる小柄な老婦人の横顔。) **秋津 フミ**:「もしもし!鴉ノ峠トンネルの中の電話です」 **電話の声**:「はい、こちら道路の管理事務所です」 **電話の声**:「3時ごろ、バスの運転手さんから通報を受けています」 **電話の声**:「除雪車が、6時に峠に入ります」 (絵:トンネルの壁にもたれて座りこむ、運転手の久我の寄り。) **秋津 フミ**:「運転手さんは見つけた。足をけがしてる」 **秋津 フミ**:「お客はバスで、全員無事だ」 (絵:トンネルの中で、懐中電灯を上へ向けて見上げるハルの寄り。) **戸川 ハル**(心の声):(……電話、ちゃんとつながってたんだ……) **戸川 ハル**(心の声):(久我さんは、逃げてなんかいなかった) **戸川 ハル**:「久我さん、宝石の人のダイヤが消えたんです」 **戸川 ハル**:「運転席の物入れから空の袋が出てきて……」 (絵:壁にもたれた運転手が、ゆっくりと首を横に振る。白い手袋の手を前へ伸ばし、老婦人の袖をつかむ。) **戸川 ハル**(心の声):(知らない、って……?) **秋津 フミ**:「袋のことなんか、今はいい」 **秋津 フミ**:「この人、ほかに何か言いたいんだ」 (絵:運転手の目だけの細い帯。焦点がゆっくり戻り、まっすぐこちらを見る。) (絵:冷たい水色のマフラーを巻いた運転手の顔の大写し。凍えた唇が、何かを言おうと動く。) **久我 陽介**:「……空は、」 **久我 陽介**:「無事か」 (絵:カメラを胸に抱えたまま、ポニーテールの若い女が息をのむ。懐中電灯の光が揺れる。) **戸川 ハル**(心の声):(そら……?) (絵:回想。暗い車内の9Aの席で、フードをかぶりヘッドホンを首にかけた少年が、膝を抱えて座っている。) > 空。 > 名簿にない、9Aの少年の名前だった。 ## この話で分かること ### トンネルの非常電話は、どのくらいの間隔で置かれている? 国土交通省の「道路トンネル非常用施設設置基準」では、トンネルに非常電話を置く時の間隔は 200m 以下が標準です。NEXCO西日本の高速道路では、トンネルの中に 200m おき、トンネルの外の本線に 1km おきに置かれています。 ### 非常電話は、どこにつながる? 基準では、トンネルの非常電話は、事故や火災を管理所などへ話して知らせるための設備です。NEXCO西日本の高速道路では、受話器を上げると道路管制センターにつながり、係員が出ます。 ### 非常電話で、声が出せない時は? NEXCO西日本は、会話が難しい時は、受話器をたたくなどの合図で知らせるよう案内しています。 ### トンネルの「押しボタン式通報装置」とは? ボタンを押すだけで、トンネルの中の火災などを管理所などへ知らせる装置です。国土交通省の基準では、置く時の間隔は 50m が標準です。NEXCO西日本は、ランプがつくまで押すと自動で火災が通報されると案内しています。 --- 乗客は七人のはずだった 第5話「トンネルの灯」 つづく # 無申告、改めます。 第1話「夜明けの鐘まで」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/1-zei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[無申告、改めます。](https://tooneru.com/kotowari/zei/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/1-zei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 3年、確定申告を出さなかったフリーランスの弓削伊織は、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れ、港の城下町〈銭ヶ浦〉の勘定改め所の見習い改め役として目を覚ます。算盤の付喪神・珠が見せる〈未納の帳〉には、前世の本税・無申告加算税と、日ごとに増える延滞税。帳が減るのは、伊織が改めて見つけた税が正しく納められた時だけで、取りすぎれば増える。改め所は帳を見ず、店の構えから儲けを当てる〈見立て〉で税を取っていた。下宿先の紺屋・宗吉も3年、申告を出していない。「バレやしねえ」と言う宗吉に、伊織は誰も読まない〈申告の御定め〉が前の世界の税の決まりと同じだと知り、出さないとどうなるかを示す。上乗せ(無申告加算税)は、改めの知らせの前に自分から出せば5%、知らせの後なら10%、改めの後なら15%。娘のお糸が捨てずに残した3年分の控えの札から売上を数え、藍・薪・灰と、灯り油の仕事の分を経費に引き、本税36万円を出す。自分から出した申告では伊織の帳は減らないが、伊織はそれでいいと思う。夜明けの鐘と同時に申告を出した直後、改め役の志乃が今朝の知らせの帳を持って現れる。一行目は宗吉。そして志乃は言う。あの紺屋の稼ぎは、この倍ある。 ## 登場人物 - **伊織(弓削 伊織)**:主人公。前世は31歳のフリーランスの映像編集者。3年、確定申告を出さず、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れた。転生後は勘定改め所の見習い改め役、20歳。前世の未納が日ごとに増える〈未納の帳〉が見える。 - **珠(たま)**:改め所の書庫の古い算盤の付喪神。伊織にしか見えない。数に厳しく、口が悪い。 - **榊 志乃**:勘定改め所の改め役、32歳。店の構えから儲けを当てる〈見立ての志乃〉。 - **宗吉**:紺屋(藍染めの職人)、50代。伊織の下宿の主。申告を出していない。 - **お糸**:宗吉の娘、15歳。染め上がりの控えの札を全部残してきた。 - **六助**:勘定改め所の受付の書役。気が弱いが人がいい。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:真夜中のワンルーム。床に領収書があふれた靴箱。ノートパソコンの光の前で、やつれた男が画面を見つめている。) > 3年、出さなかった。どうせ、バレないと思っていた。 [作中の画面] > 確定申告書の作成 完了 > 提出期限まで あと1分 > [ 送信する ] > **ℹ 確定申告(かくていしんこく)**(現実の事実):1年(1月1日〜12月31日)の所得と税の額を自分で計算して、税務署に出す手続きです(所得税法第120条)。フリーランスや副業の人など、勤め先の年末調整で税が済まない人が出し、期間はふつう翌年の2月16日から3月15日までです。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「所得税法」(第120条 確定所得申告)](https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033) > 4年目の今年こそ、出すつもりだった。 (絵:キーボードの送信のキーの上で、震えて止まった人差し指。) (絵:胸を押さえた男が椅子ごと床へ崩れ落ちる。「ドサッ」の描き文字。) > 最後に押せなかったのは、送信のボタンだった。 (絵:朝の港の城下町。丘の上の城、白壁の蔵の並び、藍の暖簾、帆を下ろした船。) > 目を開けると、瓦屋根と蔵の並ぶ、港の城下町だった。 (絵:古い帳と巻物の積まれた書庫で、若い男が身を起こす。前の机の古い算盤の上に、手のひらほどの小さな女の子が座っている。) [人物の紹介] > 勘定改め所の見習い改め役(前世はフリーランスの映像編集者) > 伊織 [人物の紹介] > 改め所の書庫の、 > 古い算盤の付喪神 > 珠(たま) **珠(たま)**:「やーっと起きた」 **珠(たま)**:「あんたさあ未納のまま死んだでしょ」 (絵:算盤の珠を一つ抱えて、得意げに見上げる小さな付喪神。右上の何もない宙が赤く光る。「チャリ」の描き文字。) [窓] > 未納の帳|弓削 伊織(前世) > 本税 186万円(3年分) > 無申告加算税 29万7千円(調べの後に決められた時の割合) > 延滞税 日ごとに加算中(出すまでは年2.8%) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(は?死んでも取り立て来るの!?) **珠(たま)**:「当たり前でしょ」 **珠(たま)**:「ここの神様は帳尻しか見ないの」 [窓] > 未納の帳の決まり > あんたが改めて見つけた税が、正しく納められたら、その分だけ減る。 > 取りすぎた分は、増える。 **伊織(弓削 伊織)**:「俺が改めた家……?」 (絵:勘定改め所の板の間。机に帳を積んだ役人たちの真ん中で、きつい目の女が帳を叩きつける。) [人物の紹介] > 勘定改め所の改め役〈見立ての志乃〉 > 榊 志乃 **榊 志乃**:「紺屋だろうが米屋だろうが」 **榊 志乃**:「暖簾と竈の煙を見れば儲けは分かる」 > ここは〈勘定改め所〉。町の商人と職人の税を改める役所だった。 > 改め所は、帳を見ない。店の構えから儲けを当てる。〈見立て〉と呼んでいた。 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(それってただの勘じゃ……) (絵:夕暮れの掘割の脇の小さな紺屋。干した藍の布がはためく。役人の着物の若い男が帰ってくる。) > 俺の下宿は、町外れの紺屋の2階だった。 (絵:紺屋の板の間。紙の札の山に囲まれ、申告の紙を前に頭を抱える娘。奥で藍甕をかき回す父親がそっぽを向く。) [人物の紹介] > 紺屋の娘 > お糸 **お糸**:「ねえ、お父っつぁん」 **お糸**:「申告3年も出してないのまずくない?」 [人物の紹介] > 紺屋(藍染めの職人) > 宗吉 **宗吉**:「へっバレやしねえよ」 **宗吉**:「うちみてえな小せえ紺屋」 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(うわ、前の俺と同じこと言ってる……) **伊織(弓削 伊織)**:「あの……バレますよ」 (絵:伊織の顔のアップ。夕方の光の中で、静かにまっすぐ前を見る。) **伊織(弓削 伊織)**:「俺も前はそう思ってました」 **伊織(弓削 伊織)**:「でも藍の問屋の帳にこの家の名前が残る」 **伊織(弓削 伊織)**:「ああいう控え改め所は集めてるんです」 > **ℹ 無申告(むしんこく)はなぜ分かる(資料情報と取引先の調べ)**(現実の事実):税務署(国税庁)は、取引先の記録などの資料情報をあらゆる機会を通じて集め、分析して調査に使っています。調査では、本人だけでなく、お金や物をやり取りした取引先にも質問し、帳簿を確かめることができます(反面調査)。 > - 問:無申告の調査はどのくらいある? 答:令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)、所得税の無申告者への実地調査(特別・一般)は4,812件で、1件当たりの追徴税額は524万円と過去最高でした(国税庁)。 > - 問:取引先にも調べが入る根拠は? 答:国税通則法第74条の2は、所得税の調査で、納税者に金銭や物品を給付する義務がある人や、受ける権利がある人にも質問・検査ができると定めています。 > - 出典:[国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)](https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf) > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) **宗吉**:「……出さねえとどうなるってんだよ」 (絵:回想の前世:アパートの床に積もった、開けていない税務署の封筒の束。青灰色にかすんで消えていく。) > 前の世界で、俺は封筒を一通も開けなかった。 > 改め所の書庫で、誰も開かない本を読んで、寒気がした。 > ――前の世界の税の決まりと、同じだった。 [窓] > 申告の御定め(前の世界の決まりと同じ。令和8年4月1日現在) > 申告は、毎年2月16日から3月15日まで。 > 期限を過ぎても、気づいたらすぐ出す(期限後申告)。 > 出さないでいると、改め所が調べて額を決める(決定)。 > **ℹ 期限後申告(きげんごしんこく)**(現実の事実):確定申告の期限(翌年3月15日)を過ぎてから出す申告です。気づいたらできるだけ早く出します。納める税は申告書を出した日が納期限で、納める日までの延滞税もかかります。 > - 問:期限から少しだけ遅れた時は? 答:法定申告期限から1か月以内に自主的に出し、税をすべて期限までに納めているなど一定の要件を満たせば、無申告加算税はかかりません。 > - 問:出さないままでいると? 答:税務署が調査をして、納める税の額を決める「決定」をすることがあります。決定の時の無申告加算税は、自分から出した時より高くなります。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm) (絵:静かにまっすぐ前を見る伊織の目もとの寄り。) **伊織(弓削 伊織)**:「出さないと本当の税に上乗せがつくんです」 **伊織(弓削 伊織)**:「しかもいつ出すかで変わる」 [窓] > 無申告加算税(令和5年分以降) > 改めの知らせの前に、自分から出す 5% > 知らせの後、調べの前に出す 10% > 調べの後に出す・改め所に決められる 15% > 調べで売上の帳簿を見せられない さらに10% > (10%・15%は、税が50万円を超える部分がもっと高い) > **ℹ 無申告加算税(むしんこくかさんぜい)**(現実の事実):期限までに確定申告をしなかった時に、納める税に上乗せされる税です。税務署の調査の事前通知の前に自分から出せば、納める税の5%です。事前通知の後・調査の前は10%、調査の後に出した時や税務署に決定された時は15%です(令和5年分以降。10%・15%は税が50万円までの部分)。 > - 問:税が50万円を超える時は? 答:令和5年分以降、事前通知の後・調査の前は50万円超300万円までの部分が15%、300万円超の部分が25%。調査の後・決定は20%・30%です。 > - 問:帳簿が無いと重くなる? 答:令和5年分以降、調査で売上の帳簿を見せなかった時や、売上の記載が本来の2分の1未満の時は10%、3分の2未満の時は5%が加算されます。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm) > - 出典:[国税庁「売上げに関する帳簿を作成・保存していない事業者の方は加算税が重くなります」(令和4年9月)](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_02.pdf) **珠(たま)**:「あと延滞税ね」 **珠(たま)**:「納めるまで毎日増えるから」 (絵:算盤の珠を抱えて得意げに見上げる、付喪神の珠。) [窓] > 延滞税(令和8年の割合) > 期限後申告は、出した日が納期限。 > 出すまでと、出してから2か月まで 年2.8% > その後も納めないと 年9.1% > 本税にだけかかり、日数で増える。 > **ℹ 延滞税(えんたいぜい)**(現実の事実):税を期限までに納めなかった時に、法定納期限の翌日から納める日までの日数に応じて自動的にかかる税です。令和8年は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それを過ぎると年9.1%です。期限後申告では、申告書を出した日が納期限です。 > - 問:加算税にも延滞税はかかる? 答:かかりません。延滞税は本税だけにかかります。 > - 問:期限後申告の納期限は? 答:期限後申告の税は、申告書を出した日が納期限です。延滞税は法定納期限の翌日から納める日まで数えます。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.9205「延滞税について」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm) **珠(たま)**:「出したらすぐ納めなよほっとくと3倍の速さで増えるから」 **お糸**:「ど、どうしよう3年分っていくらになるの……?」 **伊織(弓削 伊織)**:「大丈夫今夜一緒に数えましょう」 **宗吉**:「帳面なんざ一冊もねえぞ!」 **お糸**:「あ、あるよ!染め上がりの控えの札3年分、全部」 **お糸**:「……捨てられなくて」 (絵:娘が奥から、紐で束ねた紙の札がぎっしり詰まった木箱を引きずり出す。若い男が目を見張る。) > 帳簿は無くても、売上は、残っていた。 (絵:夜。行灯の下で、伊織とお糸が札を年ごとの山に分け、小さな付喪神が算盤をはじく。「パチパチ」の描き文字。) [窓] > 珠の算盤|紺屋 宗吉の売上(控えの札から) > 1年目 512万円 > 2年目 531万円 > 3年目 517万円 **伊織(弓削 伊織)**:「よし次は経費」 **伊織(弓削 伊織)**:「藍と薪と灰仕事に使った物は引けますよ」 (絵:問屋の印のある藍玉の受け取りの束を、両手で広げて持つ。) **お糸**:「ねえ灯り油は?夜なべで染めてるけど」 **伊織(弓削 伊織)**:「いい所に気づいた!」 **伊織(弓削 伊織)**:「使った分だけ引けるんです夜なべと暮らしの刻で分けて」 > **ℹ 家事関連費(かじかんれんひ)(家事按分)**(現実の事実):家の暮らしと仕事の両方に使った費用(家事関連費)は、仕事に直接必要だったことが取引の記録などで明らかに区分できる部分だけ、必要経費にできます。暮らしだけの費用(家事費)は必要経費になりません。 > - 問:家族に払った給料は経費になる? 答:生計を一にする親族に払う給料は、原則として必要経費になりません。青色申告の青色事業専従者給与は別で、白色申告の人には事業専従者控除があります。 > - 問:所得税や住民税は経費になる? 答:なりません。罰金・科料なども必要経費になりません。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2210「必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm) [窓] > 珠の算盤|3年分 > 売上 1,560万円 > 経費 660万円 > 所得 900万円 > 本税 36万円(1年 約12万円) **宗吉**:「3年で36万……」 (絵:行灯の明かりの中で、口を引き結ぶ宗吉の寄り。) **伊織(弓削 伊織)**:「でも今なら間に合う自分から出せば5%1万8千円」 **伊織(弓削 伊織)**:「知らせの後は3万6千円改めの後は5万4千円」 **珠(たま)**:「延滞税はどのみちかかるけど早いほど安いよ」 > 改めの知らせは、いつ来てもおかしくない。改め所が開くのは、明け六つの鐘。 **宗吉**:「……ちっ書け、お糸出す」 (絵:行灯の下、父親が渋い顔で申告の紙に判を押し、娘が隣で見守る。窓の外がうっすら白み始めている。) (絵:夜明け。鐘楼で鐘が鳴り、掘割沿いの道を、紙の束を抱えた伊織とお糸が改め所の門へ走る。「ゴォン」の金色の描き文字。) (絵:改め所の受付の格子窓。丸眼鏡のひょろ長い書役が、眠そうに紙の束を受け取り、判を押す。) [人物の紹介] > 勘定改め所の受付の書役 > 六助 **六助**:「ふぁ……はい受け取りました」 **六助**:「紺屋 宗吉3年分の期限後申告」 [窓] > 未納の帳|弓削 伊織(前世) > 未納(本税と加算税) 215万7千円 > 紺屋 宗吉の期限後申告(自分から) −0円 **珠(たま)**:「あーあ減らないよ」 **珠(たま)**:「自分から出した分は宗吉の手柄」 **珠(たま)**:「あんたが見つけた分じゃないの」 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(……いいよそれで) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(宗吉さんの上乗せが一番安く済んだなら) (絵:伊織の背後から、帳を抱えた志乃がぬっと現れ、上から見下ろす。) **榊 志乃**:「六助!今朝の知らせの帳」 [窓] > 勘定改め所|本日の改めの知らせ > 一、紺屋 宗吉 3年、申告なし **六助**:「あ……その家ならたった今自分から出しに……」 **榊 志乃**:「はあ?知らせを出す朝に?」 (絵:志乃の目のアップ。細めた目が、横にいる伊織をとらえる。) **榊 志乃**:「――見習い」 **榊 志乃**:「その紺屋お前の下宿だな」 (絵:志乃の指が、申告の紙の「売上」の行を叩く。) **榊 志乃**:「それにこの申告」 **榊 志乃**:「見立てに狂いはない」 **榊 志乃**:「あの紺屋の稼ぎはこの倍ある」 ## この話で分かること ### 確定申告しないとどうなる? 期限を過ぎても、気づいた時に出せば「期限後申告」になります。出さないままでいると、税務署が調査をして税額を決める「決定」をすることがあります。どちらの場合も、納める税のほかに無申告加算税と延滞税がかかります。 ### 確定申告をしないと、なぜバレる? 税務署は、取引先の記録などの資料情報をあらゆる機会を通じて集め、分析して調査に使っています。調査では、取引先にも質問し、記録を確かめることができます。 ### 確定申告の期限を少し過ぎただけでも、無申告加算税はかかる? 法定申告期限から1か月以内に自分から出し、期限内に出す意思があったと認められる時は、かかりません。その要件は、納める税をすべて法定納期限までに納めていること(口座振替の手続きをした時は申告書を出した日まで)と、過去5年に無申告加算税や重加算税を受けていないことなどです。 ### 家で仕事をしている時、電気代や灯りの油は経費にできる? 暮らしと仕事の両方に使った費用(家事関連費)は、仕事に直接必要だった部分を、取引の記録などで明らかに区分できる分だけ必要経費にできます。暮らしだけの費用は必要経費になりません。 --- 無申告、改めます。 第1話「夜明けの鐘まで」 つづく # 無申告、改めます。 第2話「何年分、調べますか」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/2-zei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[無申告、改めます。](https://tooneru.com/kotowari/zei/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/2-zei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 下宿先に知らせを漏らしたと疑われた伊織は、頭の大河内の命で、志乃と2人で紺屋の申告の中身を改めることになる。志乃は紺屋に〈改めの知らせ〉を伝える。日時・場所・目的・税目・帳簿、期間は5年分。前の世界の税務調査の事前通知と同じ事柄だった。改めが額を決め直せるのは申告の期限から5年、偽りで隠せば7年。宗吉は、申告を出していなかったのは3年ではなく5年だったと打ち明ける。申告も帳も亡き妻が引き受けていた。病の床の妻が震える字で残した大福帳から、前の2年の売上を出す。知らせの後でも改めの前に出せば、上乗せは15%ではなく10%。お糸は日ごとの合計だけの新しい帳をつけ始め、伊織は帳を残す年数(7年・5年)を教える。その夜、升屋の番頭・嘉平が紺屋に来る。改めで升屋の暖簾の仕事のことを一言でも喋ったら、二度と仕事は出さない、と。 ## 登場人物 - **伊織(弓削 伊織)**:主人公。前世は31歳のフリーランスの映像編集者。3年、確定申告を出さず、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れた。転生後は勘定改め所の見習い改め役、20歳。前世の未納が日ごとに増える〈未納の帳〉が見える。 - **珠(たま)**:改め所の書庫の古い算盤の付喪神。伊織にしか見えない。数に厳しく、口が悪い。 - **榊 志乃**:勘定改め所の改め役、32歳。店の構えから儲けを当てる〈見立ての志乃〉。 - **宗吉**:紺屋(藍染めの職人)、50代。伊織の下宿の主。申告を出していない。 - **お糸**:宗吉の娘、15歳。染め上がりの控えの札を全部残してきた。 - **六助**:勘定改め所の受付の書役。気が弱いが人がいい。 - **大河内 主膳**:勘定改め所の頭。 - **嘉平**:両替商・呉服問屋〈升屋〉の番頭。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:勘定改め所の奥の間。一段高い座に座る年配の頭の前で、志乃と伊織が並んで膝をついている。) **榊 志乃**:「頭!」 **榊 志乃**:「この見習いが知らせの中身を下宿に漏らしました」 (絵:座の上の太った年配の男が、扇子を閉じて、細い目で二人を見下ろす。) [人物の紹介] > 勘定改め所の頭 > 大河内 主膳 **伊織(弓削 伊織)**:「ま、待ってください!」 **伊織(弓削 伊織)**:「俺は知らせの帳を見てません」 **伊織(弓削 伊織)**:「出さないとどうなるか話しただけなんです」 (絵:丸眼鏡の書役が、錠前の付いた木の箱をおずおずと掲げる。) **六助**:「あ、あの……知らせの帳の箱の鍵は志乃さんしか持ってないですし……」 **大河内 主膳**:「ふむ漏れた漏れないはどうでもよい」 **大河内 主膳**:「それより出た申告の中身を改めよ」 **大河内 主膳**:「志乃と見習い2人でだ」 **榊 志乃**:「ちっ……足を引っぱるなよ見習い」 (絵:腕を組んだ志乃が、横目で伊織をにらむ。) (絵:昼の紺屋の前。藍の暖簾の下で、志乃が戸口に立ち、宗吉とお糸が身を固くして迎える。「ガラッ」の描き文字。) (絵:志乃の手が、焼き印の押された木の札(改め役の身分の札)を差し出す。) **榊 志乃**:「勘定改め所改め役の榊だ改めの知らせを伝える」 [窓] > 勘定改め所|改めの知らせ > 日時 5日後、朝五つ > 場所 紺屋 宗吉の家と作業場 > 目的 出された申告の中身を確かめるため > 税目 所得の税 > 期間 5年分(申告の無い年を含む) > 帳簿・書類 控えの札、仕入れの受け取り、そのほか商いの書付 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(これ……前の世界の税務調査の前の知らせと同じだ) > **ℹ 税務調査(ぜいむちょうさ)の事前通知(じぜんつうち)**(現実の事実):税務署が実地の調査をする時は、原則として前もって、調査を始める日時・場所・目的・税目・対象の期間・対象の帳簿書類などを、本人(税理士がいれば税理士にも)に知らせます。通知は原則として電話で行われます。 > - 問:何日前に来る? 答:法令に定めはなく、調査の準備ができるよう「相当の時間的余裕を置いて」行うとされています(国税庁 FAQ 問13)。 > - 問:日時は変えられる? 答:入院・親族の葬儀・仕事のやむを得ない事情など、合理的な理由があれば変更を協議できます(同 問16)。 > - 問:必ず事前に知らされる? 答:申告内容や過去の調査の結果などから、知らせると正しい額をつかめなくなるおそれがある時は、事前通知をしない場合もあります(同 問20)。 > - 出典:[国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」](https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm) > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) **宗吉**:「は?5年?3年分はもう出したろうが!」 **榊 志乃**:「出したのは3年だがお前は20年同じ問屋から藍を買っている」 (絵:紺屋の戸口に立ち、宗吉を見すえる改め役の志乃の寄り。) **榊 志乃**:「その前の2年はどこへ行った?」 **お糸**:「ねえ伊織さん改めって何年前までさかのぼれるの……?」 (絵:宗吉が顔をこわばらせて黙り込む。隣で伊織がゆっくり志乃を見る。) **伊織(弓削 伊織)**:「それが……」 **伊織(弓削 伊織)**:「改め所が額を決めたり直せるのは期限から5年」 **伊織(弓削 伊織)**:「隠してたら7年……」 [窓] > 申告の御定め(前の世界の国税通則法 第70条と同じ) > 税の額を決める・直すのは、申告の期限から5年まで。 > 偽りや不正で税を免れたら、7年まで。 > **ℹ 税務調査(ぜいむちょうさ)は何年分(なんねんぶん)さかのぼる?**(現実の事実):税務署が税の額を直す「更正」や、申告の無い人の額を決める「決定」ができるのは、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為で税を免れた時は7年までさかのぼれます。 > - 問:何年分を調べるかは、どう分かる? 答:事前通知で「調査の対象となる期間」が知らされます。調査の中で別の年分の誤りが疑われれば、その年分も調べられます(国税通則法第74条の9第4項)。 > - 問:前の年の帳簿を見せてと言われたら? 答:通知された年分の調査でも、確かめるのに必要なら、それより前の帳簿を見ることがあります(国税庁 FAQ 問9)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) > - 出典:[国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」](https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm) **榊 志乃**:「改めは5日後だ帳と書付をそろえておけ」 (絵:志乃が去った後の戸口で、宗吉がうつむいて拳を握る。) **宗吉**:「すまねえ本当は5年だ出してねえのは3年じゃねえ」 (絵:夜。藍甕の並ぶ作業場の隅で、宗吉が一人、背中を丸めて座っている。) **宗吉**:「かかあが帳面も申告も全部やってたんだ」 (絵:回想:行灯の下で、咳き込みながら帳に筆を走らせる、やつれた女。灰青色にかすんで消えていく。) **宗吉**:「病に伏せって2年死んで3年おれは帳面を一度も開けられなかった」 **お糸**:「……だから私札だけは捨てなかったの」 (絵:布に包まれた古い帳を開く手。かすれた筆の字の間に、押し花にした藍の花が一輪はさまっている。) **お糸**:「おっかさんの、大福帳……」 > 病の床の、最後の2年。震えた字で、売上が書いてあった。 **伊織(弓削 伊織)**:「これです!これで前の2年が出せます」 (絵:夜の作業場の隅で、背中を丸めて座る宗吉の寄り。) **宗吉**:「知らせはもう来ちまった」 **宗吉**:「今さら出して何になる!」 **伊織(弓削 伊織)**:「なります!」 **伊織(弓削 伊織)**:「知らせの後でも改めの前に出せば上乗せが軽くなる」 [窓] > 珠の算盤|前の2年分(大福帳から) > 本税 20万円(1年 約10万円) > 改めの前に出す 上乗せ10% 2万円 > 改めの後に出す 上乗せ15% 3万円 **珠(たま)**:「ほら1万円の差よ藍玉なら何貫だっけ?」 **宗吉**:「……5貫は買えるな」 **伊織(弓削 伊織)**:「それと今日から帳をつけましょう」 (絵:行灯の下で、伊織とお糸が古い大福帳と新しい紙を並べて書き写し、小さな付喪神が算盤をはじく。「パチパチ」の描き文字。) **お糸**:「毎日?一つ一つ全部……?」 **伊織(弓削 伊織)**:「大丈夫日ごとの合計だけでいいんです」 **伊織(弓削 伊織)**:「売上と仕入れと経費」 [窓] > 申告の御定め(前の世界の決まりと同じ。令和8年4月1日現在) > 商いをする者は、帳をつける。日ごとの合計をまとめて書くだけでもよい。 > 売上と経費を書いた帳は 7年残す。 > ほかの帳・受け取り・請求の書付は 5年残す。 > **ℹ 帳簿(ちょうぼ)の記帳(きちょう)と保存の年数(白色申告)**(現実の事実):事業所得・不動産所得などがある人は、白色申告でも帳簿をつけます。日々の合計をまとめて書く簡単な方法でもかまいません。収入と経費を書いた帳簿は7年、ほかの帳簿・決算の書類・請求書・領収書などは5年保存します。 > - 問:帳簿が無いと、調査で困る? 答:令和5年分以降、調査で売上の帳簿を見せられなかった時などは、加算税が最大10%重くなります。帳簿が無い時は、税務署が財産の増減や仕入れの量などから所得を推計して決めることもあります(所得税法第156条)。 > - 問:青色申告なら? 答:複式簿記で帳簿をつけ、期限までに申告するなどの要件を満たすと、55万円(e-Tax などで65万円)の青色申告特別控除を受けられます。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm) > - 出典:[国税庁「売上げに関する帳簿を作成・保存していない事業者の方は加算税が重くなります」(令和4年9月)](https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0022009-072_02.pdf) (絵:真新しい帳の最初の頁に、お糸が初めての一行を書き込む手元。) **六助**:「ふぁ……知らせの後に自分から……?初めて見ました」 (絵:朝の改め所の受付。目を丸くした六助が、二年分の申告の紙を受け取る。) **珠(たま)**:「へへん知らせが来ても出すのは早い方が安いの覚えときな」 (絵:六助の肩の上で、小さな付喪神が算盤の珠を指し棒のように振って得意げに胸を張る。) [窓] > 未納の帳|弓削 伊織(前世) > 未納(本税と加算税) 215万7千円 > 紺屋 宗吉の期限後申告(前の2年、自分から) −0円 **珠(たま)**:「あーあまた減らないお人好し」 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(あとは改めの日に中身を示すだけだ) (絵:夜の掘割沿いの道。分銅の印の提灯を下げた男が、紺屋へ近づいてくる。) (絵:紺屋の戸口で、腰の低い中年の番頭が、にこやかに頭を下げる。目だけが笑っていない。) [人物の紹介] > 両替商・呉服問屋〈升屋〉の番頭 > 嘉平 **嘉平**:「これは宗吉さん5日後に改めが入るそうですな」 (絵:戸口の奥。分銅の印を白く抜いた大きな藍の暖簾が、行灯の明かりに浮かぶ。宗吉が染めた升屋の暖簾。) **嘉平**:「うちの暖簾の仕事のこと改めで一言でも喋ったら……」 (絵:青ざめた宗吉の顔のアップ。) **嘉平**:「ええ升屋はもう二度と仕事を出しません」 (絵:戸の陰で、それを聞いてしまったお糸が、新しい帳を胸に抱きしめる。) ## この話で分かること ### 税務調査が入るとどうなる?(事前通知で知らされること) 実地の調査では、原則として前もって電話などで、調査を始める日時・場所・目的・税目・対象の期間・対象の帳簿書類などが知らされます。調査の日は質問と帳簿書類の確認があり、誤りが見つかれば結果の説明と修正申告の勧めがあります。 ### 税務調査は何年分・何年前までさかのぼる? 税務署が税の額を直す更正や、申告の無い人の額を決める決定ができるのは、原則として法定申告期限から5年です。偽りその他不正の行為で税を免れた時は7年までさかのぼれます。 ### 帳簿や領収書は何年残す? 白色申告でも、事業所得などがある人は帳簿をつけ、収入と経費を書いた帳簿は7年、ほかの帳簿や請求書・領収書などは5年保存します。日々の合計をまとめて書く簡単な方法でもかまいません。 ### 税務調査の事前通知の後でも、自分から申告すると何が変わる? 事前通知の後でも、調査があって決定されると予知する前に期限後申告をすれば、無申告加算税は10%(令和5年分以降、税が50万円までの部分)で、調査の後に出した時や決定の時の15%より低くなります。 --- 無申告、改めます。 第2話「何年分、調べますか」 つづく # 無申告、改めます。 第3話「改めの日」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/3-zei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[無申告、改めます。](https://tooneru.com/kotowari/zei/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/3-zei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 改めの日、改め役の志乃と見習いの伊織は紺屋に身分の札を示し、聞き取り、帳簿と書付、作業場の順に改める。志乃は12の藍甕を数え、年に1000万円の売上があると見立てるが、お糸は4つの甕が藍を建てている途中で染められないと示す。伊織は問屋の藍玉の受け取りから5年分の藍の量を出し、宗吉の手順で何反染まるかから1年の売上を約610万円と推し量る。申告より約90万円多い。宗吉は、升屋の番頭に言われて、升屋の暖簾の仕事だけは札も書付も残さず現金で受けていたと打ち明ける。取引先の升屋を調べると(反面調査)、5年で14枚の暖簾を新しくしているのに、帳には宗吉への払いが一文も無い。帳に無い金で払ったなら、帳に無い売上がどこかにある。改めの結果、足りない本税は5年で75万円。伊織は、申告を直すと不服は申し立てられないが、更正の請求はできる事を宗吉に伝え、宗吉は申告を直す。見立てどおりなら取りすぎだった。夜、伊織が升屋を改めようと言うと、志乃は、升屋に入ろうとした改め役は20年で1人だけ、それは自分の父だと明かす。 ## 登場人物 - **伊織(弓削 伊織)**:主人公。前世は31歳のフリーランスの映像編集者。3年、確定申告を出さず、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れた。転生後は勘定改め所の見習い改め役、20歳。前世の未納が日ごとに増える〈未納の帳〉が見える。 - **珠(たま)**:改め所の書庫の古い算盤の付喪神。伊織にしか見えない。数に厳しく、口が悪い。 - **榊 志乃**:勘定改め所の改め役、32歳。店の構えから儲けを当てる〈見立ての志乃〉。 - **宗吉**:紺屋(藍染めの職人)、50代。伊織の下宿の主。申告を出していない。 - **お糸**:宗吉の娘、15歳。染め上がりの控えの札を全部残してきた。 - **嘉平**:両替商・呉服問屋〈升屋〉の番頭。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:改めの日の朝。紺屋の前の掘割に朝もやがかかり、改め役の羽織の志乃と伊織が橋を渡ってくる。) > 改めの日の朝。5年分の申告は、もう出してあった。 (絵:紺屋の板の間。志乃が焼き印の札を示し、宗吉とお糸が正座で向き合う。伊織は志乃の斜め後ろに控える。) **榊 志乃**:「改め役 榊見習い 伊織では始める」 [窓] > 申告の御定め(前の世界の国税通則法と同じ) > 改め役は、身分を示す札を持ち、求められたら示す。 > 商いの者に問い、帳簿・書付を見て、出すよう求められる。 > 取引の相手にも、問うことができる。 > **ℹ 税務調査(ぜいむちょうさ)はどこまで調べる?**(現実の事実):税務署の職員は、調査に必要な時、本人に質問し、事業の帳簿書類などを検査し、見せるよう・出すよう求めることができます。お金や物をやり取りした取引先にも質問できます(反面調査)。職員は身分を示す証明書を持ち、求められたら示します。 > - 問:調べられる物は? 答:帳簿・請求書・領収書などの帳簿書類のほか、商品・仕事場など「その他の物件」も対象です(国税通則法第74条の2)。 > - 問:正当な理由なく見せないと? 答:罰則があります。一方、職業上の守秘義務がある時などは、正当な理由になる場合があります(国税庁 FAQ 問3・問6)。 > - 問:取引先への調べは知らされる? 答:反面調査に事前通知の法令上の決まりはありませんが、運用上、原則として前もって対象者に連絡するとされています(国税庁 FAQ 問23)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) > - 出典:[国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」](https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm) > まず、聞き取り。商いの中身、家の者、取引の相手、金の受け取り方。 (絵:志乃が帳面に筆を走らせながら鋭く問い、宗吉が汗をにじませて答える。) **榊 志乃**:「染めの代金はどうやって受け取る」 **宗吉**:「……反物を返す時に現金でだ」 **宗吉**:「控えの札は娘が書いてる」 > 次に、帳簿と書付。控えの札、藍玉の受け取り、お糸の新しい帳。 (絵:畳の上に年ごとに並べられた札の束と、亡き妻の大福帳と、真新しい帳。志乃が一冊を手に取る。) **榊 志乃**:「ほう札はよく残してある」 **榊 志乃**:「――だが帳は5年のうち2年分しかない」 **お糸**:「あ、あの!残りの3年は染め上がりの控えの札があります」 > 最後に、作業場。 (絵:薄暗い作業場。床に埋め込まれた十二の大きな藍甕が二列に並ぶ。志乃が腕を組んで見渡す。) **榊 志乃**:「甕が12」 **榊 志乃**:「これだけの甕を回す紺屋なら年に1,000万の売上はある」 **榊 志乃**:「申告は520万倍隠してる!」 **お糸**:「待って!この4つは藍を建ててる途中の甕なの」 (絵:お糸が甕の木の蓋を持ち上げ、ぶくぶくと泡の浮いた濃い藍色の液をのぞかせる。「ゴトッ」の描き文字。) **お糸**:「藍が育つまで半月かかるのその間は一反も染められないのよ」 (絵:志乃が眉をひそめて、泡の立つ甕を見下ろす。) **伊織(弓削 伊織)**:「そうか見立ては甕の数から当てたんだ」 **伊織(弓削 伊織)**:「でも甕はいつも全部回ってるわけじゃない」 **榊 志乃**:「はあ?ならお前はどう出す」 **伊織(弓削 伊織)**:「使った藍の量からです」 **伊織(弓削 伊織)**:「問屋の受け取りで5年分何貫の藍を買ったか分かります」 (絵:問屋の印のある藍玉の受け取りの束を、伊織が年ごとに広げる手元。) **伊織(弓削 伊織)**:「藍1貫で何反染まるかは宗吉さんの腕と手順で決まってる」 [窓] > 申告の御定め(前の世界の所得税法 第156条と同じ) > 帳が無い時などは、改め所が、財産の増え方・金の出入り・作った量や売った量・人の数などから、稼ぎを推し量って額を決めることができる。 > **ℹ 推計課税(すいけいかぜい)(推計による更正・決定)**(現実の事実):税務署は、帳簿が無いなどで実際の額がつかめない時、財産や借金の増減、収入や支出、生産量や販売量、従業員の数など事業の規模から所得を推計して、更正や決定をすることができます(所得税法第156条)。 > - 問:青色申告でも推計される? 答:所得税法第156条は、青色申告書を出した年分の事業所得などは推計の対象から除いています。 > - 問:推計されないためには? 答:売上と経費を帳簿につけ、請求書・領収書を残し、実際の額を示せるようにすることです。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「所得税法」第156条(推計による更正又は決定)](https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033) > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2080.htm) (絵:紺屋の板の間。小さな付喪神が算盤をはじき、伊織が藍の量と反物の数を書き付ける。お糸と志乃が肩越しにのぞく。「パチパチ」の描き文字。) [窓] > 珠の算盤|藍の量から出した1年の売上(5年の平均) > 藍玉の仕入れ 1年 平均 61貫 > 藍1貫で染める反物 約12反(宗吉の手順) > 1反の染め代(控えの札の平均) 約8,300円 > 1年の売上 約610万円 > 申告した売上 約520万円 > 差 約90万円 **伊織(弓削 伊織)**:「やっぱり倍じゃない……でも90万足りない」 **伊織(弓削 伊織)**:「宗吉さん控えの札に書いてない仕事がありますね?」 **宗吉**:「ちっ升屋の暖簾だ」 (絵:宗吉が膝の上で拳を握りしめ、うつむく。背後の柱に、分銅の印の暖簾の型紙がかかっている。) **宗吉**:「升屋の番頭が札も書付も残すなって」 **宗吉**:「金は現金でその分高く払うってな」 **宗吉**:「かかあが死んでからその金でやっと食えてたんだ」 **お糸**:「で、でも!お父っつぁんは5年分自分から出したんです!」 (絵:戸の陰から飛び出したお糸が、父の背中に手を置き、志乃の方を見る。) **榊 志乃**:「……それでも出してない売上がある事に変わりはない」 (絵:大通りに面した巨大な両替商の店構え。分銅の印を白く抜いた大きな藍の暖簾が何枚も下がり、蔵が並ぶ。) > 升屋。両替商で、呉服の問屋。銭ヶ浦の金の半分が、この店を通る。 > 改めの相手の取引先にも、問うことができる。前の世界で言う、反面調査だった。 > **ℹ 反面調査(はんめんちょうさ)(取引先への調べ)**(現実の事実):税務調査で、調べを受ける本人ではなく、その取引先などに質問したり帳簿を見せてもらったりして、取引の中身を確かめる事を、税の仕事では反面調査と呼びます。国税通則法は、調べる相手に金銭や物を払った・受け取ったと認められる人にも質問や検査ができると決めています(第74条の2)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」(第74条の2 所得税等に関する調査に係る質問検査権)](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) (絵:升屋の帳場。番頭の嘉平が、にこやかに分厚い帳を何冊も机に積み上げる。「バサッ」の描き文字。) **嘉平**:「これはこれはどうぞ心ゆくまで」 **嘉平**:「うちは帳だけはきれいでしてな」 (絵:志乃と伊織が並んで帳をめくる。伊織の指が、ある頁の行の上で止まる。) [窓] > 升屋の帳|染め・仕立ての払い(5年分) > 紺屋 宗吉 払い なし > (暖簾の新調 5年で14枚) **榊 志乃**:「おかしいな暖簾は14枚新しくしてる」 **榊 志乃**:「なのに宗吉への払いが一文も無い」 **嘉平**:「はて宗吉さんとは取引はございませんな」 **嘉平**:「暖簾は古い物を洗っただけで」 (絵:伊織の目のアップ。帳の行を見つめ、ある事に気づいた顔。) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(そうか……帳に無い金で払ったんだ) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(――なら帳に無い売上がどこかにある) **珠(たま)**:「ねえ宗吉の90万は升屋の帳の外の金でしょ」 **珠(たま)**:「その金どこから来たのよ?」 (絵:改め所の小部屋。志乃が書付を読み上げ、宗吉が正座で聞く。伊織とお糸が後ろに控える。) > 改めが終わると、誤りがあれば、中身と理由を説明する。 [窓] > 勘定改め所|改めの結果 > 紺屋 宗吉 5年分 > 申告に無い売上(升屋の暖簾) 1年 約90万円 > 足りない本税 5年で75万円(1年 約15万円) > 帳の無い3年分 上乗せ 15%+10% > 帳のある2年分 上乗せ 15% **榊 志乃**:「宗吉この額で申告を直すか直さないなら改め所が額を決める」 **伊織(弓削 伊織)**:「あ、宗吉さん一つだけ」 [窓] > 申告の御定め(前の世界の国税通則法 第74条の11と同じ) > 改めで誤りがあれば、額と理由を説明する。 > 申告を直すよう勧めることができる。 > 直す申告を出したら、不服は申し立てられない。 > ただし、後で額を減らすよう求める事(更正の請求)はできる。この事は書付で渡す。 > **ℹ 修正申告(しゅうせいしんこく)の勧奨(かんしょう)と、調査の終わり**(現実の事実):調査で誤りが見つかると、職員は誤りの額と理由を説明し、修正申告(期限後申告)を勧めることがあります。勧めに応じて申告すると不服申立てはできませんが、更正の請求はできます。誤りが無ければ、その旨の書面が届きます。 > - 問:勧めに応じないと? 答:修正申告は任意です。応じない時は、税務署が更正(申告の無い年は決定)をします。更正・決定に不服があれば、不服申立てができます(国税庁 FAQ 問25)。 > - 問:調査の結果は書面でもらえる? 答:更正決定等をすべきと認める場合の結果の説明は、原則として口頭です。誤りが無い時は書面で通知されます(国税庁 FAQ 問24、国税通則法第74条の11)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「国税通則法」](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066) > - 出典:[国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」](https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm) **宗吉**:「へっ直すさ升屋の分はおれの稼ぎだ」 (絵:宗吉が新しい申告の紙に判を押す手元。横でお糸が自分の帳を開いて見守る。) [窓] > 未納の帳|弓削 伊織(前世) > 未納(本税と加算税) 215万7千円 > 改めで見つけた本税 75万円が納められたら −75万円 **珠(たま)**:「やったじゃないやっとあんたの帳が減る番よ」 **榊 志乃**:「……見立てどおり倍で取ってたら取りすぎだったな」 **伊織(弓削 伊織)**:「一円も多くも少なくもない額じゃなきゃダメなんです」 **伊織(弓削 伊織)**:「……俺の場合は特に」 (絵:夜の改め所の縁側。月明かりの下、志乃が一人、升屋の帳の写しを見つめている。そこへ伊織が来る。) **伊織(弓削 伊織)**:「志乃さん升屋を改めましょう」 **榊 志乃**:「……簡単に言うな升屋には20年改めが入ってない」 (絵:志乃の横顔のアップ。月の光の中で、目を伏せる。) **榊 志乃**:「入ろうとした改め役は1人だけだ」 (絵:回想:雨の改め所の門の前で、役人の羽織を脱がされた男が、改め所を見上げて立ち尽くす。それを幼い少女が門の陰から見ている。灰青色にかすんで消えていく。) **榊 志乃**:「――私の、父だ」 ## この話で分かること ### 税務調査はどこまで調べる? 職員は、本人に質問し、帳簿・請求書・領収書などの帳簿書類や、仕事場・商品などを検査し、見せるよう・出すよう求めることができます。お金や物をやり取りした取引先に質問して記録を確かめること(反面調査)もできます。 ### 税務調査の流れは?(終わり方) 多くは、事前通知 → 当日の聞き取り → 帳簿書類の確認 → 仕事場の確認 → 必要なら取引先の確認 → 結果の説明、の順に進みます。誤りがあれば、額と理由が説明され、修正申告を勧められることがあります。誤りが無ければ、その旨の書面が届きます。 ### 反面調査とは? 調査の相手の申告が正しいかを確かめるため、取引先など本人以外の人に質問し、帳簿などを確かめる調査です。国税通則法第74条の2は、納税者に金銭や物品を給付する義務がある人や、受ける権利がある人にも質問・検査ができると定めています。 ### 帳簿が無いと、税務調査でどうなる? 実際の額がつかめないと、税務署が財産の増減や仕入れ・生産の量、従業員の数などから所得を推計して額を決めることがあります(所得税法第156条)。令和5年分以降は、調査で売上の帳簿を見せられない時や、売上の記載が本来の2分の1未満の時に、加算税が10%(3分の2未満は5%)重くなります。 ### 税務調査の修正申告の勧めに応じないと、どうなる? 修正申告に応じるかは本人の任意です。応じない時は、税務署が調査の結果に基づいて更正(申告の無い年は決定)をします。応じなかった事で、応じた時より不利に扱われることは基本的にない、と国税庁は説明しています。 --- 無申告、改めます。 第3話「改めの日」 つづく # 無申告、改めます。 第4話「二十年、来ない家」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/4-zei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[無申告、改めます。](https://tooneru.com/kotowari/zei/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/4-zei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 紺屋の改めの後、伊織と志乃は升屋の改めを願い出るが、頭の大河内は「改めの相手は改め所が選ぶ」と退ける。伊織は、前の世界の税務署が資料と申告の分析で改める相手を選んでいた(選ぶのに AI も使う)ことを思い出し、書役の六助の鍵で、20年誰も開けなかった申告の束を書庫で広げる。両替商・呉服問屋5軒の儲けの割合を年ごとに並べると、4軒は年により4〜11%、7年前の大嵐の年は2%前後に落ちているのに、升屋だけは20年、毎年6.0%だった。数字がきれいすぎる帳は、誰かが作った帳。志乃は、父もこれを見たのだと知る。翌朝、大河内は表を払いのけ、書庫を閉め、伊織を書庫から締め出し、志乃を港の船改めへ移す。伊織は、前の世界で「10年、税務調査は来たことがない」と笑っていた友を思い出す。来ないのは見ていないからではなく、多くは家に来ない「簡易な接触」で直されている。升屋は来ないのではなく、来させないのだ。その夜、升屋の主・惣右衛門が伊織を茶室に招き、伊織の頭の上の未納の数を言い当てる。 ## 登場人物 - **伊織(弓削 伊織)**:主人公。前世は31歳のフリーランスの映像編集者。3年、確定申告を出さず、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れた。転生後は勘定改め所の見習い改め役、20歳。前世の未納が日ごとに増える〈未納の帳〉が見える。 - **珠(たま)**:改め所の書庫の古い算盤の付喪神。伊織にしか見えない。数に厳しく、口が悪い。 - **榊 志乃**:勘定改め所の改め役、32歳。店の構えから儲けを当てる〈見立ての志乃〉。 - **宗吉**:紺屋(藍染めの職人)、50代。伊織の下宿の主。申告を出していない。 - **お糸**:宗吉の娘、15歳。染め上がりの控えの札を全部残してきた。 - **六助**:勘定改め所の受付の書役。気が弱いが人がいい。 - **大河内 主膳**:勘定改め所の頭。 - **嘉平**:両替商・呉服問屋〈升屋〉の番頭。 - **升屋 惣右衛門**:両替商・呉服問屋〈升屋〉の主、60代。町の金の半分が升屋を通る。20年、改めが入っていない。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の紺屋。干した藍の布の下で、宗吉が甕をかき回し、縁側でお糸が新しい帳に筆を走らせる。出かける伊織が振り返る。) **お糸**:「伊織さん!昨日の売上ちゃんとつけたよ」 **宗吉**:「升屋の暖簾の仕事はもう来ねえ」 **宗吉**:「へっその分帳はきれいなもんだ」 [窓] > 未納の帳|弓削 伊織(前世) > 未納(本税と加算税) 140万7千円 > 延滞税 日ごとに加算中 **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(まだ140万も……) **榊 志乃**:「頭升屋を改めさせてください」 (絵:改め所の奥の間。座の上で大河内が扇子を開いて顔を隠し、その前で志乃と伊織が膝をついている。) **大河内 主膳**:「ふむ紺屋一軒の言い分と帳に無い払いが1つ」 **大河内 主膳**:「それで町一番の店を改めるのか」 **大河内 主膳**:「升屋の銀が止まれば港の船が止まる」 **大河内 主膳**:「相手は改め所が選ぶ!」 (絵:奥の間を出た廊下。志乃が柱を拳で叩き、伊織がその横に立つ。) **榊 志乃**:「……20年前と同じ言い分だな」 **伊織(弓削 伊織)**:「だったら選ぶ理由を数字で出しましょう」 **伊織(弓削 伊織)**:「20年分の申告なら書庫にあります」 (絵:夜の書庫。天井まで届く棚に、紐で束ねた申告の紙の束がぎっしり並ぶ。六助が鍵束と行灯を持って、おずおずと先に立つ。) **六助**:「ふぁ……ここの束20年誰も開けてません……」 > 前の世界で、税務署は、改める相手を勘では選ばなかった。 [窓] > 前の世界の決まり(国税庁、令和6事務年度の調査の状況) > 集めた資料と、出された申告の中身を分析し、申告漏れが見込まれる人を選んで改める。 > 選ぶのに、AI も使っている。 > **ℹ 税務調査(ぜいむちょうさ)の相手はどう選ばれる?**(現実の事実):国税庁は、あらゆる機会に集めた資料情報や、出された申告の内容を分析し、申告漏れなどが見込まれる人を選んで調査しています。令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の所得税の調査では、選ぶのに AI を活用したと公表しています。 > - 問:どんな調査がある? 答:高額・悪質な不正計算が見込まれる人に日数をかける特別調査・一般調査、資料や申告の分析で申告漏れが見込まれる人に短い期間で行く着眼調査、家に来ずに文書・電話・来署の依頼で直してもらう「簡易な接触」があります。 > - 問:件数は? 答:令和6事務年度の所得税は、実地調査が4万7千件、簡易な接触が68万9千件でした。 > - 出典:[国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)](https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf) (絵:行灯の下、三人が床に申告の束を広げる。小さな付喪神が算盤の上を跳ね回る。「パチパチ」の描き文字。) **伊織(弓削 伊織)**:「同じ商いの店で売上のうちどれだけが儲けか」 **伊織(弓削 伊織)**:「年ごとに並べてみよう」 **珠(たま)**:「うへえ20年で5軒100の割り算」 **珠(たま)**:「――任せな」 [窓] > 珠の算盤|両替商・呉服問屋 5軒の儲けの割合(所得÷売上、20年) > 4軒 年により4%〜11% > 7年前の大嵐の年 4軒とも2%前後 > 升屋 20年、毎年 6.0% > 升屋 大嵐の年も 6.0% (絵:申告の紙を何枚も並べた上を、伊織の指がなぞる。どの紙にも同じ形の数字の並びがある。) **榊 志乃**:「この年……嵐で船が3隻沈んだ年だ升屋の船もな」 **伊織(弓削 伊織)**:「なのに六分ちょうど……」 **珠(たま)**:「ほらね数字がきれいすぎる帳は誰かが作った帳でしょ」 **榊 志乃**:「……父も、これを見たんだ」 (絵:行灯の光に照らされた志乃の横顔。申告の束を握りしめ、目を伏せる。) (絵:朝の奥の間。志乃が並べた表を、大河内が扇子の先で払いのける。紙が床に散る。) **大河内 主膳**:「ふむ儲けが毎年同じ手堅い商いだと褒める所だ」 **大河内 主膳**:「書庫は今日から閉める見習いは入るな」 **大河内 主膳**:「志乃は港の船改めへ移れ!」 (絵:六助の震える両手から、大河内の手下が書庫の鍵束を取り上げる。) (絵:廊下の奥へ去っていく志乃の背中。高く結んだ髪の朱の紐が揺れる。) (絵:夕暮れの掘割の石段。伊織が一人座り、肩の上で小さな付喪神が足をぶらぶらさせている。) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(二十年改めが来ない店か……) (絵:回想の前世:居酒屋で、同じフリーランスの友人が笑ってジョッキを掲げる。青灰色にかすんで消えていく。) > 前の世界で、友だちが笑っていた。「10年、税務調査なんて来たことない」 **伊織(弓削 伊織)**:「いや……来ないのは見てないからじゃない」 [窓] > 前の世界の決まり(国税庁、令和6事務年度) > 所得税の実地の調査 4万7千件 > 家に来ない「簡易な接触」 68万9千件 > 文書や電話で、申告を直すよう求める。 > **ℹ 簡易な接触**(現実の事実):税務署が、原則として家や店に行かずに、文書・電話での連絡や税務署への来署の依頼で、申告の内容を直してもらう取り組みです。令和6事務年度(所得税)は68万9千件で、実地調査(4万7千件)よりずっと多く行われています。 > - 問:税務調査が何年も来ないのは、なぜ? 答:国税庁は、資料情報や申告の内容を分析し、申告漏れなどが見込まれる人を選んで調査すると説明しています。何年に一度という決まりは、確かめた範囲の国税庁の資料には書かれていません。来ないことは、見られていないことを意味しません。 > - 問:無申告でも調べは来る? 答:令和6事務年度、所得税の無申告者への実地調査(特別・一般)は4,812件、1件当たりの追徴税額は524万円でした。 > - 出典:[国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」(令和7年12月)](https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf) **珠(たま)**:「そう升屋は来ないんじゃない来させないの」 **嘉平**:「伊織様主が茶を一服さしあげたいと」 (絵:夜。紺屋の前に、分銅の印の提灯を下げた駕籠が止まる。脇で番頭の嘉平が深々と頭を下げる。) (絵:升屋の奥の茶室。釜から湯気が立つ。白髪を後ろでまとめた小柄な老人が、背筋をまっすぐにして茶を点てている。) [人物の紹介] > 両替商・呉服問屋〈升屋〉の主 > 升屋 惣右衛門 **升屋 惣右衛門**:「ほう書庫の束を読んだそうだな」 **升屋 惣右衛門**:「20年ぶりだよ」 **伊織(弓削 伊織)**:「……儲けの割合が20年六分ちょうどでした」 **升屋 惣右衛門**:「はっはっ商いは波を立てぬのが一番でな」 (絵:老人の目のアップ。穏やかな目が、伊織の頭の上、何もない宙を見上げる。) **升屋 惣右衛門**:「ところで見習い」 (絵:茶室の暗がり。伊織の頭上の宙に赤い光がにじみ、凍りついた伊織の顔を照らす。) **升屋 惣右衛門**:「お前の頭の上の140万7千」 **升屋 惣右衛門**:「わしにも見えておるぞ」 ## この話で分かること ### 税務調査が10年以上来ない個人がいるのはなぜ?(何年に一回来る?) 国税庁は、集めた資料情報や申告の内容を分析し、申告漏れなどが見込まれる人を選んで調査すると説明しています。何年に一度という決まりは、確かめた範囲の国税庁の資料には書かれていません。長く来ないことは、見られていないことを意味しません。 ### 税務調査が入る理由は?(どんな人が選ばれる?) 資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れなどが見込まれる人が選ばれます。とくに日数をかける調査(特別調査・一般調査)は、高額・悪質な不正計算が見込まれる人が対象です。 ### 税務署は AI で調査の相手を選んでいる? はい。国税庁は、令和6事務年度の所得税の調査について「選定に AI を活用」したと公表しています。その年の所得税の調査等による追徴税額は1,431億円で、過去最高でした。 ### 税務署の「簡易な接触」とは? 原則として家や店に行かず、文書・電話での連絡や税務署への来署の依頼で、申告の内容を直してもらう取り組みです。 --- 無申告、改めます。 第4話「二十年、来ない家」 つづく # 無申告、改めます。 第5話「二十万円の内職」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/5-zei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[無申告、改めます。](https://tooneru.com/kotowari/zei/) - 作者:ことわり帖 - クレジット:原作・脚本:ことわり帖/作画:ことわり帖/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kotowari/zei/manga/5-zei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 升屋惣右衛門は、伊織の未納を一晩で消してやるから升屋から手を引けと持ちかけるが、伊織は断る。翌朝、改め所に投げ文が届く。書役の六助が、版元〈鶴来堂〉から挿絵の画料を受けて申告していないという。頭の大河内は、事実なら役を解くと言う。六助の画料は1年32万円。改め所の給金の税は年の終わりに改め所が精算しており(年末調整)、給与を1か所から受ける人は、給与のほかの所得が年20万円を超える時に確定申告が要る。20万円は代金ではなく、代金から仕事に使った物を引いた「所得」で、絵の具・紙・筆の14万円を引くと18万円。申告の義務は無い。ただし鶴来堂は画料から10.21%を先に引いて納めており(源泉徴収)、申告すれば約2万3千円が戻る。投げ文が無くても、版元は払った相手と額の控え(支払調書)を毎年改め所に出しているので、六助の画料は知られていた。その夜、伊織が鶴来堂の払いの控えをめくると、升屋の持ち物である鶴来堂から、絵を一枚も描いたことのない大河内主膳に、画料300万円が払われていた。 ## 登場人物 - **伊織(弓削 伊織)**:主人公。前世は31歳のフリーランスの映像編集者。3年、確定申告を出さず、4年目の3月15日の夜、送信のボタンを押す前に倒れた。転生後は勘定改め所の見習い改め役、20歳。前世の未納が日ごとに増える〈未納の帳〉が見える。 - **珠(たま)**:改め所の書庫の古い算盤の付喪神。伊織にしか見えない。数に厳しく、口が悪い。 - **六助**:勘定改め所の受付の書役。気が弱いが人がいい。 - **大河内 主膳**:勘定改め所の頭。 - **升屋 惣右衛門**:両替商・呉服問屋〈升屋〉の主、60代。伊織の未納の数が見える。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:升屋の茶室。茶碗を差し出す小柄な老人と、受け取らずに膝の上で拳を握る伊織。釜の湯気の向こうに、伊織の頭上の赤い光。) **升屋 惣右衛門**:「帳場の神に納める道はもう一つあるぞ」 **升屋 惣右衛門**:「その140万わしなら一晩で消してやれる」 **升屋 惣右衛門**:「どうだ升屋から手を引け」 **伊織(弓削 伊織)**:「……お断りします」 **伊織(弓削 伊織)**:「取り逃しても俺の帳は増えるあなたの金で消える帳じゃない」 **升屋 惣右衛門**:「そうかではお前の周りの者の帳を見ておくがいい」 (絵:老人が茶碗を置き、静かに笑う。障子に映る影が大きい。) (絵:朝の改め所の板の間。役人たちが一枚の紙を回し読みしてざわめく。真ん中で六助が真っ青になって立ち尽くす。) [窓] > 投げ文 > 改め所の書役 六助、 > 版元〈鶴来堂(つるぎどう)〉より挿絵の画料を受け、 > 申告をしていない。 (絵:座の上の大河内が扇子で六助を指す。) **大河内 主膳**:「改め所の者が無申告とはな」 **大河内 主膳**:「事実なら役を解く!」 **六助**:「ち、違……いや描いてはいます……」 **六助**:「く、草双紙の挿絵です2年前から……」 **六助**:「鶴来堂の払いは1年で32万円」 (絵:狭い長屋の六助の部屋。壁一面に貼られた挿絵の下絵、筆と絵の具の皿、積まれた紙。伊織と六助が向き合って座る。) **六助**:「でも改め所の給金の税は年の終わりに改め所が精算してくれてるし……」 **伊織(弓削 伊織)**:「ああ前の世界の年末調整ですね」 [窓] > 前の世界の決まり(令和8年4月1日現在) > 勤め先から給与を受ける人の多くは、勤め先の年末調整で税が決まり、納め終わる。確定申告は要らない。 > ただし、給与を1か所から受け、給与のほかの所得が年20万円を超える人は、確定申告が要る。 > **ℹ 年末調整と確定申告の違い**(現実の事実):年末調整は、勤め先が1年の給与の税を精算する手続きで、大部分の給与所得者はこれで税額が決まり、納税も終わります。確定申告は、本人が1年の所得と税を計算して税務署に出す手続きです。給与のほかの所得が年20万円を超える人などは、確定申告が要ります。 > - 問:給与が2か所からある時は? 答:年末調整されなかった給与の収入と、給与・退職所得のほかの所得の合計が20万円を超えると、確定申告が要ります。 > - 問:給与の収入が多い時は? 答:給与の年間の収入が2,000万円を超える人は、確定申告が要ります。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm) (絵:六助が頭を抱えて畳に突っ伏す。) **六助**:「ひいっ!」 **六助**:「32万……20万を超えてる……」 **伊織(弓削 伊織)**:「落ち着いて六助さん」 **伊織(弓削 伊織)**:「20万は代金じゃなくて「所得」です」 **伊織(弓削 伊織)**:「もらった代金から仕事に使った物を引いた額」 > **ℹ 副業の所得(雑所得)**(現実の事実):原稿料などの副業の所得は、多くは雑所得になり、その金額は「総収入金額 − 必要経費」です。確定申告が要るかの「20万円」は、この所得の金額で判断します(収入の額ではありません)。 > - 問:副業の経費の例は? 答:仕事のために使った画材・紙・道具・資料などです。暮らしと兼ねて使った物は、仕事の分だけです。 > - 問:事業所得になることは? 答:副業の規模や継続性などによって、事業所得になることもあります。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm) > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(令和8年4月1日現在法令等)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm) (絵:画材の受け取りの束と絵の具の皿を並べ、小さな付喪神が算盤をはじく。「パチパチ」の描き文字。) [窓] > 珠の算盤|六助の挿絵(去年) > 画料 32万円 > 絵の具・紙・筆(受け取りあり) 14万円 > 所得 18万円(20万円以下) **珠(たま)**:「ふふんほかの所得は18万でしょ」 **珠(たま)**:「なら申告は要らないよ」 **六助**:「よ、よかった……」 (絵:六助が涙目で顔を上げ、丸眼鏡がずれる。) **伊織(弓削 伊織)**:「でも……出した方がいいですよ」 **六助**:「……え?」 (絵:鶴来堂の払いの控えの束。どの紙にも、代金から一部を差し引いた印がある。) **伊織(弓削 伊織)**:「実は鶴来堂は画料を払う時税を先に引いてるんです」 [窓] > 前の世界の決まり > 原稿料や画料は、払う側が先に税を引いて納める(源泉徴収)。 > 1回の払いが100万円以下なら その10.21% > 六助の画料(1年の合計)32万円 → 引かれた税 3万2,672円 > **ℹ 原稿料(げんこうりょう)・画料(がりょう)の源泉徴収(げんせんちょうしゅう)**(現実の事実):作家や画家に原稿料・画料を払う時、払う側は所得税と復興特別所得税を源泉徴収して納めます。1回の支払が100万円以下なら10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。 > - 問:引かれた税は戻る? 答:確定申告で1年の税を計算し直し、先に引かれた税が多ければ、その分が戻ります(還付)。給与のほかの所得が20万円以下で申告の義務が無い人も、還付を受けるための申告はできます。 > - 問:令和9年分からは? 答:令和9年分以後は、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を源泉徴収します(国税庁 No.2795)。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2795.htm) **伊織(弓削 伊織)**:「所得18万円にかかる税より先に引かれた3万2千円の方が多いんです」 **珠(たま)**:「つまり出せば戻ってくるの2万3千円くらいね」 **六助**:「えっ……出さなくていいのに出すと戻る……?」 (絵:改め所の奥の間。伊織が大河内の前に、六助の所得の書付を差し出す。後ろで六助が縮こまる。) **伊織(弓削 伊織)**:「頭六助さんの稼ぎは20万円以下です」 **伊織(弓削 伊織)**:「申告の義務はありません」 **大河内 主膳**:「……ふん。ならば構わぬ」 (絵:大河内が席を立ち、扇子で顔を隠したまま、伊織の横を通り過ぎる。) **六助**:「あの……投げ文が無くても僕の画料って改め所に知られてたんですか?」 (絵:改め所の受付。六助が、版元から届いた払いの控えの束を、棚にしまおうとして手を止める。) **伊織(弓削 伊織)**:「はい版元は毎年払った相手と額の控えを改め所に出すんです」 [窓] > 前の世界の決まり > 作家や画家への原稿料・画料を、同じ人に年5万円を超えて払った者は、次の年の1月31日までに、税務署へ支払調書を出す。 > **ℹ 支払調書(しはらいちょうしょ)(報酬・料金の)**(現実の事実):報酬・料金を払った側が、払った相手・額・源泉徴収した税を書いて税務署に出す書類です。作家や画家への原稿料・画料などは、同じ人に年5万円を超えて払った時に出し、期限は支払が確定した年の翌年1月31日です。 > - 問:副業の確定申告は、なぜバレる? 答:払う側が出す支払調書などの資料で、税務署は誰にいくら払われたかを知ることができます。国税庁は、こうした資料情報を集めて分析し、調査に使っています。 > - 問:住民税は? 答:住民税は市区町村の税で、所得税の確定申告が要らない時でも、住民税の申告が要る場合があります。お住まいの市区町村の案内で確かめてください。 > - 出典:[国税庁 タックスアンサー No.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm) **珠(たま)**:「だからね隠したつもりの稼ぎほどよく見えてるの」 (絵:夜の受付の小部屋。行灯の下で、伊織が鶴来堂の払いの控えを一枚ずつめくる。肩の上の小さな付喪神が身を乗り出す。) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(待てよ……鶴来堂の持ち主は升屋だ) **伊織(弓削 伊織)**(心の声):(升屋の帳に無い金がどこかへ出ていくなら……) (絵:払いの控えの一枚を押さえる伊織の指。紙の上の筆の字は読めない。) [窓] > 鶴来堂|払いの控え(去年) > 挿絵の画料 六助 32万円 > 挿絵の画料 ほか絵師11人 > 画料 300万円 大河内 主膳 **六助**:「えっ大河内様が絵を……?」 (絵:六助が後ろからのぞき込み、丸眼鏡の奥の目を見開く。) **伊織(弓削 伊織)**:「いいえ……あの人は一枚も描いたことがない」 (絵:暗がりの中の伊織の目のアップ。行灯の火が映る。) ## この話で分かること ### 副業の確定申告は、いくらから必要? 給与を1か所から受けていて年末調整を受けている会社員などは、給与・退職所得のほかの所得の合計が年20万円を超えると、確定申告が必要です。 ### 副業の「20万円」は、売上? 所得? 所得です。原稿料などの副業の所得(多くは雑所得)は「総収入金額 − 必要経費」で計算し、その額が20万円を超えるかで判断します。 ### 確定申告と年末調整の違いは? 年末調整は、勤め先が1年の給与の税を精算する手続きで、大部分の給与所得者はこれで税額が決まり納税も終わります。確定申告は、本人が1年の所得と税を計算して税務署に出す手続きです。 ### 副業の確定申告は、なぜバレる? 払う側が税務署に出す支払調書などの資料で、税務署は誰にいくら払われたかを知ることができます。作家や画家への原稿料・画料は、同じ人に年5万円を超えて払った時に、翌年1月31日までに支払調書を出す決まりです。 ### 申告しなくてよい副業でも、確定申告すると税金が戻ることがある? あります。原稿料・画料などは、1回の払いが100万円以下なら、その10.21%が払う時に源泉徴収されます。確定申告で1年の税を計算し直し、先に引かれた税の方が多ければ、その分が戻ります(還付)。 --- 無申告、改めます。 第5話「二十万円の内職」 つづく # 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第1話「入社式、2015年4月1日」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/1-nyushashiki/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える](https://tooneru.com/hinc/ai2015/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/1-nyushashiki/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 2031年、AI の導入で部署ごと職を失ったエンジニアの南雲律は、駅のホームで倒れ、2015年の入社式の朝に戻る。目の前には、律にしか見えない AI の窓が開いていた。AI は未来の出来事には答えないが、書く・調べる・作ることなら手伝う。配属先の物流システムの部署では、古いサーバーを新しくした翌日から、毎日の締めの在庫が合わない不具合が3週間解けずに残っていた。律は、新しいサーバーの時刻が日本時間ではなく協定世界時のままで、深夜の締めの処理が前の日の分として動いていると気づき、前の人生で倒れた先輩・宇佐美の重荷を一つ下ろす。その夜、AI は告げる。この時代で、もう一つ同じ窓が開いている、と。 ## 登場人物 - **南雲 律**:主人公。2031年は39歳の SE。2015年の新卒入社の朝に戻り、本人にしか見えない AI の窓を持つ。 - **宇佐美 灯**:律の配属先の先輩(27歳)。炎上案件をほぼ一人で支えている。 - **鬼塚 部長**:開発部の部長。怒鳴るが、数字には正直。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:2031年。誰もいないオフィスの机に、段ボール箱が一つだけ置かれている。) > 2031年。俺の部署は、今日で無くなる。 [作中の画面] > 【全社通知】 > 開発二部の業務は、本日をもって AI 開発基盤へ移行します。 (絵:段ボール箱に、使い込んだ古い社員証をしまう男の手。) > 16年。書いてきたコードは、全部、あれが一晩で書き直した。 (絵:夜の駅のホーム。電光掲示板の下に、男が一人で立っている。) > 悔しいのは、仕事を取られた事じゃない。――あの頃、これがあれば、と思う人がいる事だ。 (絵:色の抜けた記憶。深夜のオフィスで、若い女性が机に突っ伏している。) **南雲 律**(心の声):(……宇佐美さん) (絵:ホームでよろける男。「ふらっ」の描き文字。) (絵:2015年の春。桜の花びらが舞い、大きなホールで黒いスーツの新入社員たちが入社式に並ぶ。) > 目を開けると、春だった。 (絵:桜の舞う入社式の席。目を見開き口を開けて驚く、新入社員の律の顔の寄り。) **南雲 律**:「は?2015年?」 [AI の窓] > おはようございます。 > 何をお手伝いしましょうか? > 本日の残り:1,000 > **ℹ 本日の残り(律の AI の窓)**(作中の世界の決まり):この物語では、律にだけ見える2031年の AI の窓が、1日に使える量です。大きな頼みほど多く減り、0になると翌朝まで使えません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の生成 AI のサービスで、一定の時間に使える量に上限があることに近い決まりです。 (絵:律が右上の何もない空中を見上げる。「ピ」の描き文字。) **隣の新卒**:「おい、どこ見てんの?」 (絵:前を向いて並ぶ新入社員たち。律だけが空中を見上げ、隣の同期が不思議そうに見ている。) **南雲 律**(心の声):(こいつには見えてない……俺にだけ見えてる) [AI の窓] > 律:今年の秋に何が起きる? > AI:その質問には答えられません。私が手伝えるのは、書く・調べる・作ることです。 **南雲 律**(心の声):(未来の答え合わせはできない、か) **南雲 律**(心の声):(ふっ十分だ) (絵:開発部のフロア。液晶モニターが並ぶ机に、紙の仕様書が積まれている。) > 配属先は、前の人生と同じ。開発部、物流システムの保守。――社内で〈地獄〉と呼ばれていた部署だ。 > **ℹ 保守(ほしゅ)(情報システムの保守)**(現実の事実):動いている情報システムが、決めた機能と品質を出し続けるように、システムそのものに手を入れて保つ仕事です。デジタル庁の実践ガイドブックは、機能を変えずにプログラムを直す事を「保守」、機能を良くするための直しを「改修」と分けています。 > - 問:「運用」とはどう違う? 答:運用は、システムの機能を使う人に届け続ける仕事で、設定や構成を原則として変えずに、動いている状態を保ちます。保守は、システムそのものに働きかけて保つ仕事です(同じガイドブック)。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「保守」](https://kotobank.jp/word/%E4%BF%9D%E5%AE%88-629994) (絵:腕を組んで新人を見下ろす鬼塚部長。) **鬼塚 部長**:「おい新人お前は見てるだけでいい」 **鬼塚 部長**:「邪魔だけはするな!」 **宇佐美 灯**:「あ、宇佐美ですごめんね今ちょっと燃えてて」 (絵:画面を見たまま手だけ振る、目の下にくまのある宇佐美。) (絵:息をのむ律の顔のアップ。) > 生きている。まだ、倒れる前の、宇佐美さんだ。 (絵:電話を耳に当てて深く頭を下げる鬼塚部長。) **鬼塚 部長**:「はい!在庫の数が合わない件は」 **鬼塚 部長**:「必ず今週中に……!」 [作中の画面] > 障害 No.0412 > 毎日の締めの在庫数が合わない > 発生:2015年3月9日〜(サーバー移行の翌日から) > 状態:原因不明(23日経過) **宇佐美 灯**:「これね3週間追ってるの」 **宇佐美 灯**:「サーバーを新しくした次の日から毎日の締めが合わなくて」 (絵:律の目の大写し。何かに気づいた光。) **南雲 律**(心の声):(サーバーの移行……――2015年か) > **ℹ システムの移行**(現実の事実):今の情報システムから新しい情報システムへ、仕事とデータを移す事です。デジタル庁の実践ガイドブックは、移行を、データ移行・システム移行・業務運用移行の3つに分けています。業務を止めずに続けられるかが一番の課題です。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) [AI の窓] > 律:2015年3月にサーバーを移行した翌日から、深夜の日次締めの在庫が合わない。古い物流システム。何を疑う? > AI:移行先のサーバーの時刻の設定(タイムゾーン)を最初に確かめてください。日本時間の深夜2時に動く締めの処理は、協定世界時(UTC)のままだと前の日の17時として扱われ、その日の分が前の日の在庫に入ります。 > 本日の残り:962 > **ℹ タイムゾーン(UTC と日本時間)**(現実の事実):タイムゾーンは、その地域の時刻が協定世界時(UTC)から何時間ずれているかの決まりです。日本時間(JST)は UTC より9時間進んでいて、日本では夏時間を行っていないため、この差は1年中変わりません。サーバーのタイムゾーンが UTC のままだと、日本時間の0時から8時59分までは、UTC ではまだ前の日の日付です。 > - 問:UTC と日本時間は何時間違う? 答:日本時間は UTC より9時間進んでいます(UTC+9)。たとえば日本時間の4月1日2時は、UTC では3月31日17時です。 > - 問:毎日の締めがずれるのはどんな時? 答:その日の分を日付で区切って集める処理が、UTC の日付で区切っている時です。日本時間の0時から朝9時前までに入った記録が前の日の分として数えられ、その日の在庫や売上が前の日に移ります。 > - 問:サーバーのタイムゾーンはどう確かめる? 答:Linux では timedatectl で今のタイムゾーンを確かめ、変えられます。Amazon EC2 のサーバーは、最初は UTC に設定されています。記録の時刻を 2015-04-01T02:00:00+09:00 のように時差を付けて残すと、取り違えにくくなります。 > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)「標準時・周波数標準のQ&A その他のQ&A」(日本標準時の決め方)](https://jjy.nict.go.jp/QandA/FAQ/other_qa.html) > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)研究報告 Vol.65 No.2(2019年)日本標準時の特集号の記事(PDF、サマータイムの項)](https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku65-2/book/pdf/23.pdf) > - 出典:[Amazon EC2 User Guide「Change the time zone of your instance」](https://docs.aws.amazon.com/AWSEC2/latest/UserGuide/change-time-zone-of-instance.html) > - 出典:[RFC 3339「Date and Time on the Internet: Timestamps」](https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc3339.html) **南雲 律**:「あの、宇佐美さん新しいサーバーの時刻の設定日本時間になってます?」 (絵:宇佐美の椅子の後ろから身を乗り出し、サーバーの設定の資料をめくる律の手。) (絵:画面の前で口に手を当てて固まる宇佐美。) [窓] > 日次締め 開始 02:00(サーバーの時刻) > タイムゾーン (UTC) 協定世界時 > **ℹ 協定世界時(きょうていせかいじ)(UTC)**(現実の事実):協定世界時(UTC)は、世界の時刻の基準です。1秒の長さは原子時計による国際原子時と同じで、地球の自転に基づく世界時から0.9秒以上離れないように調整されます。日本標準時は UTC より9時間進んだ時刻です。 > - 問:国際原子時(TAI)とはずれている? 答:ずれています。調整を重ねてきたため、2017年1月の時点で37秒の差があります(NICT)。 > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)「標準時・周波数標準のQ&A その他のQ&A」(UTC と TAI の差・日本標準時の決め方)](https://jjy.nict.go.jp/QandA/FAQ/other_qa.html) **宇佐美 灯**:「うそあった」 (絵:ざわつく開発部。鬼塚部長が勢いよく振り返る。) **鬼塚 部長**:「おい新人!」 **鬼塚 部長**:「お前なんで分かった?」 **南雲 律**:「えっと時計がずれてたので」 (絵:夜の電車。窓に若い律の顔が映る。) > 前の人生で、この不具合は、宇佐美さんが夏まで一人で抱えた。 > 今度は、そうはさせない。 [窓] > お知らせ > この時代で、もう一つ、 > 同じ窓が開いています。 (絵:赤い光に照らされ、目を見開く律の顔。) **南雲 律**:「……俺だけじゃ、ない?」 ## この話で分かること ### UTC と日本時間はなぜ9時間ずれる? サーバーを移すと締めの数が合わなくなるのは? 日本標準時は、協定世界時(UTC)に9時間を足した時刻(東経135度の子午線の時)と決められているためです。移した先のサーバーのタイムゾーンが UTC のままだと、日付の区切りが日本時間より9時間遅れ、日本時間の0時から8時59分までに入った記録が前の日の分として数えられて、締めの在庫や売上がずれます。 ### UTC を日本時間に直すには?(何時間足す?) UTC(協定世界時)に9時間を足すと日本時間です。足して24時を超えた時は、日付が次の日になります。たとえば UTC の17時は、日本時間の次の日の2時です。 ### サーバーのタイムゾーンを確かめる・日本時間に変えるには? Amazon EC2 のサーバーは、初めは UTC に設定されています。Amazon Linux では timedatectl で今の設定を確かめ、timedatectl list-timezones で出る一覧から選んで、sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo のように変えます。 --- 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第1話「入社式、2015年4月1日」 つづく # 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第2話「残り:0」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/2-nokori-zero/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える](https://tooneru.com/hinc/ai2015/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/2-nokori-zero/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 入社2日目。律は、時刻の設定のずれで狂った3週間分の締めを合わせ直すため、AI に集計し直すプログラムを頼む。大きな仕事ほど残りが減る決まりで、残りは一度で0になった。その日、客先の物流会社から情報システム課長の黒川が来る。AI の無いまま、律はホワイトボードに「何が起きたか・どこまで影響したか・なぜ起きたか・何をしたか、次に何をするか」の順で書き、記録は一件も消えていないこと、日本時間は協定世界時より9時間進んでいることを説明する。誰のミスかと問われ、律は人ではなく、移行の確認の表に時刻の項目が無かったことを原因に挙げる。その夜、律は宇佐美の勤務の記録を目にする。前の人生で宇佐美が倒れたのは、7月1日の朝だった。 ## 登場人物 - **南雲 律**:主人公。2031年から戻った新卒(23歳)。本人にしか見えない AI の窓を持つ。 - **宇佐美 灯**:律の配属先の先輩(27歳)。 - **鬼塚 部長**:開発部の部長。怒鳴るが、数字には正直。 - **黒川 恭子**:客先の物流会社の情報システム課長。厳しいが、筋の通った話は聞く。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の開発部のフロア。まだ誰もいない机に、窓から朝日が差す。律が一人で席に着く。) > 4月2日。入社、2日目。 [AI の窓] > おはようございます。 > 本日の残り:1,000 > 昨日の不具合は、直して終わりじゃない。狂った3週間分の締めを、全部、合わせ直す。 (絵:肩越しに見た律の手元。キーボードを打つ手。モニターは向こうを向いている。) [AI の窓] > 律:3月9日から4月1日までの日次締めを、日付を1日ずらして集計し直すプログラムを書いて。元のデータは消さないこと。 > AI:書きました。元の表を写してから、写しの方で集計し直します。実行の前に、3月9日の1日分だけで結果を確かめてください。 > 本日の残り:0 **南雲 律**:「うそだろ1回でゼロ?」 (絵:目を見開いて固まる律の顔のアップ。「ピ」の描き文字。) [AI の窓] > 本日の残りがありません。 > 明日の朝、使えるようになります。 > 大きな仕事ほど、減る。3週間分の集計は、1日分を、全部持っていった。 (絵:受話器を置いた鬼塚部長が、律の机へずかずか歩いてくる。) **鬼塚 部長**:「新人!」 **鬼塚 部長**:「11時に客先の課長が来る」 **鬼塚 部長**:「昨日の件お前が説明しろ」 **南雲 律**(心の声):(まずい……AI 無しで客先の前に) **宇佐美 灯**:「うわ黒川さんか……怖いよ」 **宇佐美 灯**:「前の担当の人泣いて帰ったもん」 (絵:仕切りの上から心配そうにのぞく宇佐美。手にマグカップ。) > 知っている。前の人生で、3年後に泣いて帰ったのは、俺だ。 (絵:ガラス張りの会議室。腕を組んで座る客先の課長と、資料の束。向かいに鬼塚と律が立つ。) [人物の紹介] > 客先 物流会社・情報システム課長 > 黒川 恭子 **黒川 恭子**:「3週間ですよ倉庫の在庫が毎朝合わなかった」 **黒川 恭子**:「原因は?影響は?次は?」 (絵:律の顔の大写し。目を閉じて息を整える。) > AI は、ない。――あるのは、16年分の、障害の報告だ。 (絵:ホワイトボードにマーカーで見出しを四つ書く律の手。) [作中の画面] > ホワイトボード > 1. 何が起きたか > 2. どこまで影響したか > 3. なぜ起きたか > 4. 何をしたか・次に何をするか **南雲 律**:「は、はい起きたことは1つです」 **南雲 律**:「3月9日から4月1日まで毎日の締めが1日前の日付で記録されていました」 **黒川 恭子**:「影響は?」 **南雲 律**:「締めの数は狂いました」 **南雲 律**:「でも入荷と出荷の記録は一件も消えてません」 **南雲 律**:「日付を付け直せば全部、合います」 **黒川 恭子**:「原因は?」 **黒川 恭子**:「――誰のミスです?」 (絵:律の横で、鬼塚が額に汗を浮かべて固まる。) **南雲 律**:「……誰かではありません」 **南雲 律**:「サーバーを移す時の確認の表に〈時刻の設定〉が無かった」 **南雲 律**:「穴は表の方なんです」 (絵:まっすぐ黒川を見て話す律。) > 人を責める報告は、次の失敗を、隠させる。直すのは人ではなく、仕組みの穴だ。 > **ℹ 非難しない振り返り(ポストモーテム)**(現実の事実):ポストモーテムは、障害の後に、起きた事・影響・取った対応・根本の原因・再発を防ぐ次の行動を書き残す振り返りです。Google の SRE の本は、個人やチームを責めずに原因を明らかにすることに集中するよう求めています。責めると、人は罰を恐れて問題を隠すようになるためです。 > - 出典:[Google『Site Reliability Engineering』Chapter 15「Postmortem Culture: Learning from Failure」](https://sre.google/sre-book/postmortem-culture/) (絵:黒川の顔の大写し。目を細め、律を値踏みする。) **黒川 恭子**:「……次は?」 [作中の画面] > 二度と起こさないために > ① 移行の確認の表に「時刻の設定(タイムゾーン)」を足す > ② 移行の翌朝、締めの数を前の日と照らし合わせる > ③ 時刻の記録には、日本時間か協定世界時かを書き添える **南雲 律**:「日本時間は協定世界時より9時間進んでいます」 **南雲 律**:「その9時間をどこで足すか決めておけばもう起きません」 **黒川 恭子**:「ふうん報告書今の順番で明日までに」 (絵:黒川が資料の束を閉じる。鬼塚が息をのむ。) **黒川 恭子**:「――書くのは、あなたね」 **鬼塚 部長**:「おい新人どこで覚えた」 (絵:会議室を出た廊下。そっぽを向いた鬼塚の口元が、少しだけゆるんでいる。) **南雲 律**:「……ま、前の会社で」 **鬼塚 部長**:「新卒だろうが!」 (絵:夜のフロア。ほとんどの席の明かりが消え、一つの席だけ画面が光っている。) > 夜9時。俺が報告書を書き終えても、宇佐美さんは、帰らなかった。 (絵:机に向かう宇佐美の横に立ち、缶コーヒーを机に置く律。腕一本分の距離。) **宇佐美 灯**:「今日ありがとね」 **宇佐美 灯**:「……私あの人の前だと何も言えなくて」 **南雲 律**:「そんな宇佐美さんが3週間記録を残してくれたから言えたんです」 (絵:宇佐美の机の端に置かれた勤務の記録の紙と、その横の空の栄養ドリンクの瓶。) [作中の画面] > 勤務の記録 宇佐美 灯 2015年3月 > 時間外労働:112時間 > **ℹ 時間外労働(じかんがいろうどう)(法律上の残業)**(現実の事実):法律上の時間外労働は、労働基準法が決める法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて働いた時間です。会社が時間外労働をさせるには、働く人の代表と労使協定(36協定)を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「労働基準法」(第32条・第36条・第37条・第119条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049) > - 出典:[厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(2019年8月)](https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/000496473.pdf) (絵:律の目の大写し。凍りつく。) (絵:色の抜けた記憶。夏の光の中、主のいない机に花が一輪置かれている。) > 前の人生で、宇佐美さんが倒れたのは、7月1日の朝だった。 (絵:夜の歩道。街灯の下で、スマートフォンのカレンダーを見る律。) > あと、90日。 ## この話で分かること ### 障害の再発防止策はどう書く?(なぜなぜ分析で、人でなく仕組みの穴を探す) 問題の直接の原因を見つけ、さらにその原因を「なぜ」と問い続けて、根本の原因までさかのぼります。再発防止策は、直接の原因と根本の原因のそれぞれを裏返して作ります(IPA のガイドブックのなぜなぜ分析)。 ### 障害の報告書(振り返り)には何を書く? Google の SRE の本は、障害の振り返り(ポストモーテム)を、起きた事、その影響、抑えたり直したりするために取った行動、根本の原因、再び起きないための次の行動を書き残す物としています。 ### 障害の原因を「人のミス」にしないのはなぜ? 責めることが前に出ると、人は罰を恐れて問題を表に出さなくなり、問題が隠れたままになるからです。Google の SRE の本は、振り返りでは個人やチームを責めずに、障害に至った原因を明らかにすることに集中するとしています。 --- 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第2話「残り:0」 つづく # 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第3話「夏の手前」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/3-natsu-no-temae/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える](https://tooneru.com/hinc/ai2015/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/3-natsu-no-temae/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 6月。宇佐美は毎朝、3つの倉庫の締めの数を紙で一行ずつ照らし合わせ、2時間を使っていた。時間外は4月が105時間、5月が118時間。発症の前の1か月に100時間、または2か月から6か月の平均で月80時間を超える時間外労働は、国が脳や心臓の病気と仕事のつながりを強いと見る目安だった。律は AI に、全部の行を人が見るのをやめ、差がある行だけを朝に届ける照合のプログラムを頼む。紙の照合と2週間並べて動かし、自動の方に漏れが無く、紙が見落としていた差まで見つけると確かめてから紙をやめる。宇佐美は3か月ぶりに定時で帰る。7月1日まであと15日。その朝、客先の黒川課長が持ってきた他社の提案書には、外に出していないはずの3月の障害への対策が書かれていた。 ## 登場人物 - **南雲 律**:主人公。2031年から戻った新卒。 - **宇佐美 灯**:律の先輩(27歳)。毎朝の照合と客先の対応を一人で抱えている。 - **鬼塚 部長**:開発部の部長。数字には正直。 - **黒川 恭子**:客先の物流会社の情報システム課長。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:梅雨の朝。雨粒の流れるオフィスの窓。外にあじさいがにじむ。) > 6月。梅雨。 (絵:朝七時のフロア。宇佐美が三つの紙の束を並べ、定規と蛍光ペンで一行ずつ照らし合わせている。) **宇佐美 灯**:「おはよ……毎朝の照合倉庫が3つで2時間かかるの」 [作中の画面] > 毎朝の作業(宇佐美) > 倉庫3か所の締めの数を、紙で一行ずつ照らし合わせる:約2時間 **南雲 律**(心の声):(毎朝2時間……全部の行を人の目で) > 時間外は、4月が105時間。5月が118時間。 (絵:色の抜けた記憶。紙の山と定規、転がった蛍光ペン。) > 前の人生の夏、この紙の山の上で、宇佐美さんは倒れた。 [作中の画面] > 過重な労働の目安(国の労災の認定基準) > 倒れる前の1か月に約100時間、または2〜6か月の平均で月80時間を超える時間外労働は、仕事と脳・心臓の病気のつながりが強いと見られる > **ℹ 過労死(かろうし)ライン(脳・心臓疾患の労災認定基準)**(現実の事実):過労死ラインは、国の脳・心臓疾患の労災認定基準にある時間外労働の目安を指す呼び方です。発症前1か月におおむね100時間、または発症前2〜6か月の平均で月80時間を超える時間外労働は、仕事と発症の関係が強いと評価されます。改正後の基準では、これに近い時間でも、労働時間以外の負荷と合わせて評価することが明確にされました。 > - 出典:[厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」](https://www.mhlw.go.jp/content/000833808.pdf) **南雲 律**(心の声):(宇佐美さん……もう越えてる) > この国で、残業の上限を罰則付きで決めた法律が動き出すのは、4年後だ。――待っては、いられない。 > **ℹ 時間外労働(じかんがいろうどう)の上限規制(じょうげんきせい)**(現実の事実):働き方改革の法改正で、時間外労働の上限が罰則付きで労働基準法に定められました。原則は月45時間・年360時間で、特別な事情があっても年720時間、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内です。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用されました(建設の事業・自動車の運転の業務・医師などは2024年4月から、別の決まりで適用)。 > - 出典:[厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(2019年8月)](https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/000496473.pdf) > - 出典:[e-Gov 法令検索「労働基準法」(第32条・第36条・第37条・第119条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049) (絵:律の手元。キーボードの横に缶コーヒー。) [AI の窓] > 律:毎朝、3つの倉庫の締めの数を紙で照らし合わせていて、2時間かかる。減らしたい。 > AI:全部の行を人が見るのをやめ、合わない行だけを人が見る形にしましょう。締めの後に3か所の数を自動で照らし合わせ、差がある行だけを一覧にして朝に届けます。差が無い日は「差なし」の1行だけです。 > 本日の残り:1,000 **南雲 律**(心の声):(全部を見るから違いだけを見る、へ) [AI の窓] > 律:書いて。差の一覧には、差が出た理由の候補も付けて。 > AI:書きました。理由の候補は、入荷の登録の遅れ・返品・締めの時刻の3つです。初めの2週間は紙の照合と並べて動かし、毎日、両方の結果を突き合わせてから切り替えてください。 > 本日の残り:611 > **ℹ 並行稼働(へいこうかどう)**(現実の事実):新しい仕組みと古い仕組みを、しばらくの間、同時に動かす事です。両方の結果を比べて、新しい仕組みが正しく動くと確かめてから切り替えます。大きなシステムでは、一定の期間、並行稼働させた後に業務を移す形もあります。 > - 問:並行稼働の間に気を付ける事は? 答:両方を動かす手間や、古い仕組みの使用料(ライセンスの費用)が重なる事があります。前もって確かめておきます(デジタル庁の実践ガイドブック)。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) **宇佐美 灯**:「えっ……差が出た行3行だけ?」 (絵:律が宇佐美の机の横に立ち、数行だけ印字された紙を見せる。) **宇佐美 灯**:「でも……紙で全部見ないと怖くて」 (絵:紙の束を胸に抱えて、不安そうに目を伏せる宇佐美。) **南雲 律**:「ですよね」 **南雲 律**:「だからこの2週間は紙とこれを両方やってください」 **南雲 律**:「漏れが無ければ紙をやめます」 (絵:一週間後。紙の束と一行の一覧を見比べた宇佐美が、一覧の一行を指さして息をのむ。) [作中の画面] > 自動の照合 6月9日 > 第2倉庫 品番 K-2207 締めの数 48 / 棚の数 45(差 −3) > 理由の候補:返品の登録の遅れ **宇佐美 灯**:「あ……この行紙では見落としてた」 **南雲 律**:「仕方ないです人の目は2時間目には疲れますから」 (絵:晴れた朝九時。日の差すフロアに、宇佐美がほかの社員と同じ時間に出社してくる。) > 2週間後。 [作中の画面] > 照合の結果(2週間) > 自動の照合が出した差:14日とも、紙で裏が取れた > 紙だけでは見落としていた差:3件 (絵:宇佐美の顔の大写し。ほっとして、目が少し潤む。) **宇佐美 灯**:「うそ……朝の2時間なくなっちゃった」 (絵:印字した報告の紙を突き出し、振り向いて怒鳴る鬼塚部長を、下から見上げる。) **鬼塚 部長**:「おい新人!」 **鬼塚 部長**:「勝手に仕組みを変えたな」 **南雲 律**:「す、すみません」 **南雲 律**:「でも宇佐美さんの朝の2時間と紙の見落としが無くなりました」 (絵:鬼塚の太い指が、印字された表の一行を押さえる。) **鬼塚 部長**:「……見落とし2週間で3件?紙じゃ見つけてなかったのか」 **鬼塚 部長**:「ふん数字は嘘をつかんな」 > 鬼塚部長は、数字には、正直だ。 (絵:鞄を肩にかけた宇佐美が、少し照れて律の席の横に立つ。) **宇佐美 灯**:「えへへ今日は定時で帰る」 **宇佐美 灯**:「3か月ぶりかも」 (絵:夕方の窓辺から見下ろす街。夕日の中を歩いていく宇佐美の小さな後ろ姿。) > 7月1日まで、あと、15日。 (絵:翌朝の会議室。黒川課長が、厚い提案書を机に置く。) **黒川 恭子**:「秋に倉庫のシステムを入れ替えます」 **黒川 恭子**:「見積もりは2社に頼みました」 **黒川 恭子**:「これもう一社の提案なの」 **黒川 恭子**:「――読んでみて」 (絵:白い表紙の提案書をめくる律の手。) [作中の画面] > 他社の提案書 12ページ 移行の確認の表 > ・時刻の設定(タイムゾーン)の確認 > ・本年3月の在庫の締めのずれ(サーバーの時刻)の再発を防ぐ (絵:提案書を持つ律の目の大写し。凍りつく。) **黒川 恭子**:「おかしいのようちの障害のこと外には一度も話してないのに」 > 前の人生で、この会社は、提案にすら来なかった。 [窓] > お知らせ > もう一つの窓は、 > あなたと同じ客先を見ています。 (絵:夜のどこかのオフィス。顔の見えない若い男が、何もない空中を見上げている。) **南雲 律**:「……向こうはAI に何を頼んでる?」 (絵:赤い光に照らされた律の横顔。歯を食いしばる。) ## この話で分かること ### 過労死ラインは何時間? 残業80時間・100時間とは 「過労死ライン」と呼ばれるのは、国の脳・心臓疾患の労災認定基準にある時間外労働の目安です。発症前1か月におおむね100時間、または発症前2〜6か月の平均で月80時間を超える時間外労働があると、仕事と発症との関係が強いと評価されます。 ### 残業の上限は法律で何時間? いつから? 原則は月45時間・年360時間です。臨時の特別な事情があっても、時間外労働は年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内に収め、月45時間を超えられるのは年6か月までです。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から、罰則付きで法律に定められました。 ### 会社の「定時」を過ぎた分は、全部が法律上の残業? とは限りません。法律上の時間外労働は、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた時間で、会社が決めた所定労働時間(定時)を超えた時間とは違います。たとえば所定労働時間が7時間30分の会社で8時間働いた時、いわゆる残業は30分ですが、法律上の時間外労働はありません。 --- 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第3話「夏の手前」 つづく # 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第4話「もう一つの窓」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/4-mou-hitotsu-no-mado/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える](https://tooneru.com/hinc/ai2015/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/4-mou-hitotsu-no-mado/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 6月17日。客先の黒川課長から、3月の障害が他社に漏れているのではと電話が入り、鬼塚部長は報告書を書いた宇佐美を問い詰める。律は、他社の提案書と自社の報告書を AI に突き合わせさせ、違いを1つ見つける。報告書は「3月9日〜4月1日の24日間」、他社は「約3か月にわたり」。3か月かかったのは、宇佐美が夏まで一人で抱えた前の人生だけだった。律は黒川課長に、どこにも書いたことの無い数字だと示し、宇佐美への疑いを晴らす。6月26日の提案の説明で、競合の新人・辻堂は「3割安く、障害は起きません」と言い、律は提案依頼書の「止まると、その日の出荷がすべて止まる」という一文から、止まった時に戻す手順と、戻し方の練習の2晩分を書いた提案を出す。説明の後、辻堂は律を待っていた。「お前、7月1日を知ってるな」。 ## 登場人物 - **南雲 律**:主人公。2031年から戻った新卒。本人にしか見えない AI の窓を持つ。 - **宇佐美 灯**:律の先輩(27歳)。3月の障害の報告書を客先に送った。 - **鬼塚 部長**:開発部の部長。数字には正直。 - **黒川 恭子**:客先の物流会社の情報システム課長。秋の倉庫のシステムの入れ替えを2社に頼んだ。 - **辻堂 慧**:競合の会社の新人。律と同じ窓を持つ。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:昼の開発部。受話器を置いた鬼塚部長が、険しい顔で立ち上がる。) > 6月17日。 **鬼塚 部長**:「黒川課長からだ!」 **鬼塚 部長**:「3月の障害が他社に漏れてる、と」 **鬼塚 部長**:「宇佐美報告書は誰に送った?」 (絵:鬼塚部長が宇佐美の机の方へ振り向き、見下ろす。) **宇佐美 灯**:「く、黒川さんにだけです……」 (絵:報告書の綴りを胸に抱え、青ざめる宇佐美。) **宇佐美 灯**:「私外には何も……」 > 疑われているのは、宇佐美さんだ。前の人生には、無かった疑いだ。 **南雲 律**:「待ってください!」 **南雲 律**:「確かめさせてください」 (絵:机の上に、2つの書類を左右に並べる律の手。片方は社内の報告書、片方は白い表紙の他社の提案書。) > 漏れたのなら、うちの報告書と、同じことが書いてあるはずだ。 [AI の窓] > 律:2つの文章の、違う所だけを挙げて。(自社の障害の報告書/他社の提案書 12ページ) > AI:違いは2か所です。①期間:報告書「3月9日〜4月1日(24日間)」、提案書「約3か月にわたり、6月現在も再発のおそれ」 ②影響:報告書「記録は一件も消えていない」、提案書は記載なし(原因は両方とも「サーバーの時刻の設定」で同じです) > 本日の残り:874 (絵:律の目だけの横長の大写し。瞳が細く絞られる。) **南雲 律**(心の声):(3か月……?――前の人生の長さだ) > 前の人生で、この不具合は、宇佐美さんが夏まで、一人で抱えた。 > 3か月かかったのは、あの人生だけだ。 **南雲 律**(心の声):(そうか……向こうが見てるのはうちの報告書じゃない) **南雲 律**(心の声):(前の人生の記憶だ) (絵:客先の会議室。律と鬼塚部長が並んで座り、向かいの黒川課長の前に2つの書類を置く。) **南雲 律**:「黒川さん漏れたのならうちの報告書の日付がそのまま写るはずです」 [作中の画面] > 突き合わせ > 自社の報告書(4月3日、黒川様へ提出):3月9日〜4月1日(24日間)・解決済み > 他社の提案書:「約3か月にわたり」「6月現在も再発のおそれ」 **南雲 律**:「向こうの数字は私たちがどこにも書いてない数字なんです」 **黒川 恭子**:「本当ねうちの社内の資料も全部「3週間」」 (絵:老眼鏡をかけた黒川課長が、自分の綴りをめくって確かめる。) **黒川 恭子**:「疑ってごめんなさい」 **黒川 恭子**:「宇佐美さんにもそう伝えて」 **黒川 恭子**:「でもなら――この会社はどこで聞いたの?」 **南雲 律**(心の声):(……言えない) **黒川 恭子**:「提案の説明は6月26日」 **黒川 恭子**:「2社並べて聞きます」 (絵:夜、別の会社の暗いオフィス。波打つ明るい茶色の髪の若い男が、何もない空中を見上げている。顔が初めて見える。) [AI の窓] > 辻堂:この客に勝つ提案書を書いて。競合より安く、強く見えるように。 > AI:価格を競合より下げ、実績と「障害ゼロ」を前に出す組み立てにしました。 **辻堂 慧**(心の声):(前の人生であの客は3か月の障害で保守の会社を替えた) **辻堂 慧**(心の声):(――今度は俺が取る) (絵:夜の開発部。律が机に分厚い提案依頼書を開き、缶コーヒーを横に置いている。) > 6月22日、夜。 [AI の窓] > 律:黒川さんの会社が、この入れ替えで一番困っていることは? > AI:私には分かりません。提案依頼書(RFP)の「システムの概要」と「依頼事項」を読み、黒川さんの会社の言葉で書かれた困り事を拾ってください。一つ一つに、何をするかを対にして答えましょう。 > 本日の残り:988 > **ℹ 提案依頼書(ていあんいらいしょ)(RFP)**(現実の事実):提案依頼書(RFP、Request For Proposal)は、システムを発注する側(ユーザ)が、開発を頼む候補の会社(ベンダ)に提案を求めるために出す文書です。IPA の「情報システム・モデル取引・契約書」は、記載する基本項目として、システムの概要(開発の経緯・基本方針・狙う効果)、提案依頼の手続き、依頼事項(機能の要件と、性能や運用などの非機能の要件)、開発の体制と環境、保証の要件、契約の事項を挙げています。ベンダは RFP に基づいて提案書を作ります。 > - 問:RFI とはどう違う? 答:RFI(情報提供依頼書)は、RFP を作る前に、技術の動き・製品・開発のやり方・価格などの情報をベンダに求める文書です。 > - 問:提案書には何を書く? 答:IPA は、提案の要約、システムの構想と構成、性能の見込み、拡張のしやすさ、信頼性とセキュリティ、開発計画(実行上の課題を含む)、推進の体制、期待する効果、今後の課題(決まっていない懸案)、関連する実績などを挙げ、発注する側の必要に応じて取捨選択するとしています。 > - 出典:[情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(提案依頼書〈RFP〉・提案書の記載事項と解説)](https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html) (絵:提案依頼書の一行に、蛍光ペンで線を引く律の手。) [作中の画面] > 提案依頼書(黒川様の会社)より > システムの概要:秋の繁忙期の前に、倉庫のシステムを入れ替える。止まると、その日の出荷がすべて止まる。 > 依頼事項:移行の手順。移行の夜に問題が起きた時の対応。 **南雲 律**(心の声):(そうか……一番怖いのは止まること) **南雲 律**(心の声):(――なら書くのは勝つ方法じゃない) **南雲 律**(心の声):(止まった時の戻し方だ) > **ℹ 切り戻し(きりもどし)**(現実の事実):新しいシステムへの切り替えがうまくいかなかった時に、元のシステムへ戻す事です。デジタル庁の実践ガイドブックは、本番の切り替えの前に、どうなったら戻すか(切り戻しの基準)と、戻す手順を決めておくよう求めています。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) > 前の人生で、何度も見た。 > 「できます」しか書いていない提案書が、移行の夜に、燃えるのを。 (絵:律の机に手をつき、見積もりの紙を手に身を乗り出して怒鳴る鬼塚部長。) **鬼塚 部長**:「おい!向こうより高いぞ削れ!」 **南雲 律**:「……削れません」 **南雲 律**:「戻し方の練習の2晩分なんです」 > **ℹ 移行(いこう)リハーサル**(現実の事実):本番の切り替えの前に、移行の手順を本番と同じように通して試す事です。今のデータを決めた方法で新しいシステムに取り込み、思ったとおりに動くかを確かめます。切り戻しのような、うまくいかなかった時の手順もリハーサルで確かめておきます。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) **鬼塚 部長**:「ちっ」 (絵:6月26日、客先の大きな会議室。長い机の片側に黒川課長、向かいに2つの会社が並ぶ。) > 6月26日。提案の説明。 (絵:波打つ明るい茶色の髪の辻堂が、壁の白い画面の前で自信たっぷりに指し棒を構える。) [人物の紹介] > 競合の会社の新人 > 辻堂 慧 **辻堂 慧**:「当社の価格は他社より3割安く」 **辻堂 慧**:「移行の夜の障害は起きません」 **黒川 恭子**:「へえ起きないと言える根拠は?」 (絵:黒川課長の目だけの横長の大写し。眼鏡の奥で目を細める。) **黒川 恭子**:「……南雲さんあなたの所は?」 (絵:立ち上がって話す律。落ち着いた顔で片手を開く。) **南雲 律**:「うちは起きる前提で書きました」 [作中の画面] > 提案書(南雲) 移行の夜 > ① 止まった時は、朝6時までに古いシステムへ戻す(戻し方は、本番の前に2晩、練習する) > ② 移行の確認の表に「時刻の設定」を入れる(3月の障害の穴を塞ぐ) > **ℹ 提案の段階でのリスクの説明**(現実の事実):IPA の「情報システム・モデル取引・契約書」は、契約を結ぶ前の企画・提案の段階でも、ベンダは自ら提案するシステムの機能、発注する側の必要をどれだけ満たすか、開発の手法と体制を検討し、そこから想定されるリスクを説明する義務を負うとした裁判例(東京高等裁判所 平成25年9月26日判決)を紹介しています。 > - 問:どこまで予想して書けばいい? 答:同じ裁判例は、受注が決まる前の段階でできる確かめには限りがあると認め、その時に得られる情報の範囲で予想できるリスクを前提にしています。逆に、予想できたはずのリスクを説明していないと、責任を問われうると IPA は注意しています。 > - 出典:[情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(提案依頼書〈RFP〉・提案書の記載事項と解説)](https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html) **黒川 恭子**:「ふうん結果は来週出します」 (絵:黒川課長が手帳に短く何かを書き留め、静かに閉じる。) **辻堂 慧**:「おい南雲律」 (絵:会議の後のエレベーターの前。窓際にもたれて待っていた辻堂が、律の方へ顔を向ける。) **辻堂 慧**:「宇佐美灯は、元気か?」 **辻堂 慧**:「お前7月1日を知ってるな?」 (絵:辻堂の顔の大写し。口元だけ笑い、目は笑っていない。) (絵:夜。赤い光に照らされた律の顔。目を見開いたまま、拳を握る。) > 7月1日まで、あと、5日。 ## この話で分かること ### RFP とは? 提案書は何に答える物? RFP(提案依頼書、Request For Proposal)は、システムを発注する側が、開発を頼む候補の会社に提案を求めるために出す文書です。IPA の「情報システム・モデル取引・契約書」は、記載する基本項目として、システムの概要(開発の経緯・基本方針・狙う効果)、提案依頼の手続き、依頼事項(機能と非機能の要件)、開発の体制と環境、保証の要件、契約の事項を挙げています。提案書は RFP に基づいて作る、会社を選ぶための最も重要な文書で、RFP に書かれた依頼事項が本当にできるか(実現の見込み)に的確に答える物とされています。 ### 提案書に「障害は起きません」と書くのは危ない? 提案の段階でも、想定されるリスクを発注する側に説明することが求められるからです。IPA の「情報システム・モデル取引・契約書」は、契約前の提案の段階でも、ベンダは提案するシステムや開発の体制を検討し、想定されるリスクを説明する義務があるとした裁判例(東京高裁 平成25年9月26日判決)を紹介しています。 ### システムの入れ替えで、止まった時の戻し方を前もって決めるのはなぜ? どれだけ確かめても、システムの障害は起こり得るからです。IPA の教訓集は、不測の事態への備えの教訓として「検証は万全?それでもシステム障害は起こる。回避策を準備しておくこと」を挙げています。 --- 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第4話「もう一つの窓」 つづく # 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第5話「鬼塚の数字」 この作品には、H株式会社のサービスが登場します この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。作中の「AXタスクフォース」は、H株式会社の実在のサービスです。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/5-onizuka-no-suji/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える](https://tooneru.com/hinc/ai2015/) - 作者:H株式会社 - クレジット:原作・脚本:H株式会社/作画:H株式会社/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/hinc/ai2015/manga/5-onizuka-no-suji/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 6月26日の夜。前の人生の7月1日、朝9時の少し前に倉庫の出荷が止まり、宇佐美は一人で直して倒れた。律が覚えているのは時刻だけで、原因は覚えていない。AI に尋ねると、2015年1月16日に総務省と NICT が発表したとおり、7月1日の午前8時59分59秒の次に「8時59分60秒」が入る、うるう秒の朝だった。律は、秒が60になる時刻を倉庫のシステムが受け付けないのではと考え、本番ではなく写しの環境で時計を進めて確かめる。出荷の記録は「秒の値が範囲の外」で止まった。本番を直すには人と客先の許可が要る。鬼塚部長は役員会議に3枚の紙を持って入る。3月の障害は客先に言われるまで気づかず、直るまで24日。照合の仕組みの後は、差が出た翌朝に分かる。そして宇佐美の時間外。鬼塚は2人の手と2日を取り、客先に頭を下げ、9時の出荷の締めを5分遅らせる許可を得る。7月1日の朝7時、チームは画面の前にそろい、時計は8時59分に近づく。 ## 登場人物 - **南雲 律**:主人公。前の人生の7月1日の朝を覚えている。 - **鬼塚 部長**:開発部の部長。数字を持って役員と掛け合う。 - **宇佐美 灯**:律の先輩(27歳)。前の人生では7月1日の朝に倒れた。 - **黒川 恭子**:客先の物流会社の情報システム課長。 - **辻堂 慧**:競合の会社の新人。律と同じ窓を持ち、7月1日を知っている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:夜の開発部。明かりの消えたフロアで、律の机の画面だけが光っている。) > 6月26日、夜。辻堂の言葉が、頭から離れなかった。 (絵:白黒の記憶。夏の朝の倉庫で、止まったベルトコンベアの前に段ボールが積み上がり、コンベアの上の警告灯だけが赤い。) > 前の人生の、7月1日。朝9時の少し前に、倉庫の出荷が止まった。 > 宇佐美さんは、一人でそれを直して、倒れた。 **南雲 律**(心の声):(原因は覚えてない) **南雲 律**(心の声):(覚えてるのは時刻だけだ) (絵:キーボードの上の律の手。横に缶コーヒー。) [AI の窓] > 律:2015年7月1日の朝9時前後に、日本の時刻で予定されていることはある? > AI:あります。2015年1月16日に総務省と情報通信研究機構(NICT)が発表したとおり、7月1日の午前8時59分59秒の次に「8時59分60秒」が入ります。うるう秒です。 > 本日の残り:971 > **ℹ うるう秒(2015年7月1日)**(現実の事実):うるう秒は、原子時計で刻む時刻と、地球の自転に基づく時刻のずれを0.9秒以内に保つため、世界の標準時(協定世界時、UTC)に1秒単位で入れたり抜いたりする秒です。入れる時は、地球の自転を観測する国際機関の IERS が決めます。2015年7月1日には、日本時間の午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が入りました。 > - 問:なぜ日本では、朝の9時の直前? 答:うるう秒は UTC の日付の変わり目に入ります。UTC で 6月30日23時59分59秒の次が 23時59分60秒になり、日本時間は UTC より9時間進んでいるので、日本では7月1日の午前8時59分60秒になります。 > - 問:いつ決まり、いつ知らされた? 答:2015年7月1日の分は、IERS の決定を受けて、2015年1月16日に総務省と NICT が発表しました。NICT は、情報通信ネットワークやコンピューターの運用には正確な時刻が必要だとして、NTP(ネットワークで時刻を合わせる仕組み)のサービスなどで、うるう秒の後の正しい日本標準時を送ると案内していました。 > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)プレスリリース「『うるう秒』挿入のお知らせ」(2015年1月16日)](https://www.nict.go.jp/press/2015/01/16-1.html) > - 出典:[総務省 報道資料「『うるう秒』挿入のお知らせ」(2015年1月16日)](https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin03_03000140.html) > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)日本標準時グループ「うるう秒の対応」(2012年7月の例。協定世界時と日本時間の刻み方)](https://jjy.nict.go.jp/news/leaps2012.html) > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)「日本標準時」パンフレット(日本標準時は UTC(NICT) を9時間進めた時刻)](https://rri.nict.go.jp/_assets/pdf/panf_JST.pdf) (絵:律の目だけの横長の大写し。画面の光が瞳に映る。) **南雲 律**(心の声):(8時59分60秒……?) **南雲 律**(心の声):(――9時の直前だ) > 仮説は、1つ。倉庫のシステムが、「60秒」を、知らなかったら。 [AI の窓] > 律:うちの物流システムで、秒が60になった時に問題が出そうな所を、確かめる順に挙げて。 > AI:①サーバーの時刻を合わせる仕組み(NTP)の設定 ②時刻の入力を「0〜59秒」で検査している所 ③9時ちょうどに動く処理。本番ではなく、写しの環境で時計を8時59分50秒に合わせ、通して確かめてください。 > 本日の残り:702 > **ℹ NTP(時刻を合わせる仕組み)**(現実の事実):NTP(Network Time Protocol)は、インターネットでコンピューターの時計を合わせるために広く使われている仕組みです。日本では NICT が、日本標準時に直結した時刻を配る公開 NTP サーバー(ntp.nict.jp)を出しています。 > - 問:どのくらい正確? 答:NICT は、利用者の時刻の精度はネットワークの環境によって数ミリ秒から数百ミリ秒くらいまで変わり、保証はできないとしています。 > - 出典:[RFC 5905「Network Time Protocol Version 4: Protocol and Algorithms Specification」](https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5905) > - 出典:[情報通信研究機構(NICT)「公開NTP」](https://jjy.nict.go.jp/tsp/PubNtp/index.html) > **ℹ 検証環境(けんしょうかんきょう)(本番の写し)**(現実の事実):実際に使っている本番の環境とは別に、試すために作った環境です。直したプログラムや設定の変更を、本番の利用者やデータに影響を出さずに確かめます。 > - 問:検証環境で通れば本番も大丈夫? 答:言い切れません。本番のデータには思いもよらない形の物が混じるので、デジタル庁の実践ガイドブックは、できる時は本番に近い条件で試すよう勧めています。 > - 出典:[デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-120 実践ガイドブック」(2026年6月12日)](https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/0af5ce68/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_05.pdf) (絵:夜の小さなサーバー室。試験用の機械の前で、ノートパソコンを開いてしゃがみ込む律。画面は向こう向き。) [窓] > 試験の環境(本番の写し) 時計を 8:59:50 から進める > 08:59:59 出荷の記録 OK > 08:59:60 出荷の記録 エラー:秒の値が範囲の外(0〜59) > 09:00:00 出荷の締め 開始できません(前の処理が止まっています) **南雲 律**(心の声):(やっぱり止まった) > 前の人生で止まったのは、たぶん、これだ。 > ――でも、本番の時計が同じように60秒を刻むかは、本番を見ないと分からない。 (絵:翌週の月曜の朝。律が鬼塚部長と宇佐美の前で、一枚の印刷を見せる。) **南雲 律**:「部長」 **南雲 律**:「7月1日の朝出荷が止まるかもしれません」 **鬼塚 部長**:「はあ?1秒でか?」 **南雲 律**:「1秒で、です」 **南雲 律**:「写しの環境では止まりました」 **宇佐美 灯**:「じゃあ直すなら……出荷の記録の検査と本番の時計の設定」 **宇佐美 灯**:「客先の許可も要るし……あと2日じゃ私一人では――」 **南雲 律**:「一人ではやらせません」 **鬼塚 部長**:「ちっ人が要るな」 (絵:鬼塚部長が椅子の背の上着をつかんで羽織る。人物だけを切り抜いた絵。) **鬼塚 部長**:「――上に掛け合ってくる数字をよこせ」 (絵:役員会議室。長い机に役員たちが並び、端に3枚の紙を持った鬼塚部長が立つ。) > 役員会議室。鬼塚部長は、3枚の紙だけを、持って入った。 (絵:椅子の背にもたれた年配の役員が、腕を組んで鬼塚を見る。) **常務**:「たった1秒のために2日も人を出すのかね」 **常務**:「今まで止まったことは無いだろう」 (絵:鬼塚部長が机に紙を叩きつける。) **鬼塚 部長**:「数字を見てください!」 [作中の画面] > 1枚目 3月の障害 > 起きてから、原因が分かるまで:23日 > 起きてから、直るまで:24日 > 気づいたきっかけ:客先からの電話 **鬼塚 部長**:「3月は客に言われるまで気づかなかった」 **鬼塚 部長**:「直るまで24日です」 > 前の人生の言葉で言えば、MTTR。壊れてから、直るまでの時間だ。 > **ℹ MTTR(平均修復時間)**(現実の事実):MTTR(mean time to repair)は、障害が起きてから直るまでにかかる時間の平均です。Google の SRE の本は、信頼性は壊れるまでの平均時間(MTTF)と MTTR で決まり、障害への対応の良し悪しを見るのに最も関係の深い数字は、対応する人たちがどれだけ早くシステムを健全な状態に戻せるか、つまり MTTR だと書いています。 > - 問:MTTF と MTTR の違いは? 答:MTTF(mean time to failure)は壊れるまでの平均の時間、MTTR は壊れてから直るまでの平均の時間です。壊れにくくするのが MTTF、早く戻すのが MTTR の側の取り組みです。 > - 出典:[Google『Site Reliability Engineering』Chapter 1 Introduction(Emergency Response:MTTF と MTTR)](https://sre.google/sre-book/introduction/) (絵:腕を組んだまま、鬼塚の話を聞く常務の顔の寄り。) [作中の画面] > 2枚目 6月からの照合の仕組み > 差が出てから、気づくまで:翌朝 > 紙の照合が見落としていた差:2週間で3件 > 宇佐美の朝の照合:2時間 → 0 **鬼塚 部長**:「でも今は次の朝に分かる」 **鬼塚 部長**:「新人が作りました」 [作中の画面] > 3枚目 宇佐美 灯の時間外労働 > 3月 112時間 4月 105時間 5月 118時間 > 6月(照合の仕組みの後、28日まで)41時間 (絵:鬼塚部長の顔の大写し。額に汗、まっすぐな目。) **鬼塚 部長**:「やっとここまで減った人間に!」 **鬼塚 部長**:「7月1日の朝をまた一人で背負わせる気ですか!」 **常務**:「……何人要る」 **鬼塚 部長**:「2人2日」 **鬼塚 部長**:「それと客先に頭を下げるのは私がやります」 (絵:開発部の机の島。宇佐美の横に、ひげの年配の男と短い髪の女の社員が椅子を寄せる。隅に小さく、自分の机からそれを見て少しほっとする律。) > 2人、来た。 [作中の画面] > 7月1日に向けて > ① 出荷の記録の秒の検査を直す(写しの環境で試してから) > ② 本番の時計の合わせ方を、客先と確かめる > ③ 当日は、朝7時から全員で見る > ④ 9時の出荷の締めを、9時5分に遅らせる(客先の許可を取る) (絵:客先の会議室。鬼塚部長と律が深く頭を下げ、黒川課長が書類を読んでいる。) **黒川 恭子**:「1秒のために締めを5分遅らせる……」 **黒川 恭子**:「……いいでしょう理由が書いてあるから」 **南雲 律**:「宇佐美さん今日は帰って寝てください」 (絵:6月30日の夜。鞄を肩にかけた宇佐美が、律の机の横で少し笑う。) **南雲 律**:「明日の朝7時に」 **宇佐美 灯**:「ふふ前はこういう日は一人で残ってたのにね」 **鬼塚 部長**:「おい新人お前が出した数字だ」 (絵:夜のフロアで、一人で資料を読む鬼塚部長。人物だけを切り抜いた絵。) **鬼塚 部長**:「外れたら俺が頭を下げる」 (絵:夜、別の会社の暗いオフィス。辻堂が窓の外の街を見下ろす。冷たい光が顔に当たる。) **辻堂 慧**(心の声):(7月1日……) **辻堂 慧**(心の声):(前の人生で止まったのは――南雲の客だけじゃない) (絵:夜明け。朝日を受けた会社のビル。いくつかの窓に明かりがともる。) > 7月1日。朝、7時。 (絵:開発部の机に、鬼塚部長・宇佐美・2人の社員・律がそろい、それぞれの画面を見つめる。画面は向こう向き。) [AI の窓] > おはようございます。 > 本日の残り:1,000 (絵:壁の丸い時計。長い針は12の少し手前、細い秒針が上へ向かって進む。) [窓] > サーバーの時刻(日本時間) > 08:59:58 > 前の人生で、宇佐美さんが倒れた朝。 (絵:律の目だけの横長の大写し。時計の光が瞳に映る。) > 8時59分、60秒まで――あと、2秒。 ## この話で分かること ### MTTR とは? 障害の件数より「直るまでの時間」を見るのはなぜ? MTTR(mean time to repair、平均修復時間)は、障害が起きてから直るまでにかかる時間の平均です。Google の SRE(サイトの信頼性を保つ仕事)の本は、信頼性は「壊れるまでの平均時間(MTTF)」と MTTR で決まり、障害への対応の良し悪しを見るのに最も関係の深い数字は、対応する人たちがどれだけ早くシステムを健全な状態に戻せるか、つまり MTTR だと書いています。 ### うるう秒が入ると、コンピューターでは何が起きる? 時計に、ふだんは無い「60秒」が入ります。NICT の説明では、多くのコンピューターが使う UNIX 時刻では、23時59分60秒(UTC)と次の0時0分0秒が同じ値になり、同じ秒を2度数えることになります。 ### MTTR(直るまでの時間)を短くするには? Google の SRE の本は、対応の良いやり方を前もって手順書(プレイブック)に書いておくと、その場の思いつきで対応するより、MTTR がおよそ3倍よくなると書いています。 --- 2015年、入社式の朝。俺にだけAIが見える 第5話「鬼塚の数字」 つづく # 圏外の転生者 第1話「検索順位:圏外」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/1-kengai/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[圏外の転生者](https://tooneru.com/ka2uma/kengai/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/1-kengai/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 主人公のミナトは、前世で人や店の「見つけられ方」を上げる仕事をしていた。生まれ変わった世界では、誰もが頭の上に順位の窓を持ち、その順位が値打ちになる。ミナトだけが「圏外」と表示され、村の笑いものになる。けれど彼にとって圏外は「いない」ではなく「まだ見つけられていない」という意味だった。窓に現れた順位の決め方――名前を呼ばれた回数、ほかの者とのつながり、行いが言葉として残る量――は、彼が前世で扱ってきた仕組みとよく似ていた。その夜、村の近くの森で、もう一つの「圏外」が目を覚ます。 ## 登場人物 - **ミナト(相良 湊)**:主人公。前世は32歳の Web 集客の会社員。転生後は辺境の村の15歳。 - **リゼ**:ミナトの幼なじみ。剣士で、村内順位1位。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:深夜のオフィス。モニターの明かりだけがともり、男の手がキーボードの上にある。) > 誰にも見つけてもらえないものは、存在しないのと同じだ。 [作中の画面] > 検索順位の推移 > 3位 → 12位 → 48位 → 圏外 > **ℹ 検索順位(けんさくじゅんい)が急に下がる理由**(現実の事実):Google は、検索からの訪問が減る主な原因として、アルゴリズムの更新、技術的な問題、セキュリティの問題、スパムに関する問題、季節や興味・関心の変化、サイトの移転と移行を挙げています。まず、いつから・どの検索語で・どのページが下がったかを確かめます。 > - 問:季節で下がることもある? 答:あります。季節や興味・関心の変化で、検索そのものが減ることも原因に挙げられています。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google 検索トラフィックの減少をデバッグする」](https://developers.google.com/search/docs/monitor-debug/debugging-search-traffic-drops?hl=ja) **ミナト(相良 湊)**:「嘘だろ……3位から、圏外……」 (絵:目の下にくまのある男の横顔。机には栄養ドリンクの空き瓶が並ぶ。) > 10年。順位を上げる仕事をしてきた。客の店を、客の名前を、誰かに見つけてもらうために。 > **ℹ SEO(検索エンジン最適化)**(現実の事実):検索エンジンにページの中身を分かってもらい、探している人が検索から見つけて訪れやすくする取り組みです。Google は、検索で一番上に出る秘訣は無く、検索エンジンでなく人の役に立つ中身に使った時に効くと説明しています。 > - 出典:[Google 検索セントラル「検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」](https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/seo-starter-guide?hl=ja) > - 出典:[Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」](https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja) (絵:立ち上がった男の体が傾く。「ぐらっ」の描き文字。) > ――自分の名前を検索したことは、一度もなかった。 (絵:白い光の中で、赤ん坊が目を開ける。目元のアップ。) [窓] > ――新しい個体を登録しました。 > 名前:未登録 > 検索順位:計測中…… > 15年後。 (絵:辺境の村。麦畑と木の柵。少年が空を見上げ、村人たちの頭の上には小さな四角い窓が浮かんでいる。) [窓] > パン屋 Lv.8 > 村内順位 14位 > **ℹ 村内順位(そんないじゅんい)・王国内順位(おうこくないじゅんい)**(作中の世界の決まり):この世界では、窓に出る順位で、村の中での順位と、王国全体での順位があります。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の検索で、近所の店を探した時の並びと、全国で探した時の並びが違うことに近い物です。 [窓] > 狩人 Lv.10 > 村内順位 6位 > この世界では、誰もが頭の上に〈窓〉を持つ。窓に書かれた順位が、その人の値打ちだ。 > **ℹ 〈窓〉**(作中の世界の決まり):この世界では、誰もが頭の上に持つ表示で、職業・レベル・順位が出ます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の検索結果で、店や人の名前を探した時に出てくる順位や情報を、一人ひとりの頭の上に浮かべたような物です。 (絵:木刀を肩に担いで、笑顔で駆けてくる少女リゼ。頭の上に窓が浮かぶ。) **リゼ**:「ミナト〜!明日だよ、成人の儀!」 [窓] > リゼ 剣士 Lv.12 > 村内順位 1位 (絵:少年ミナトと、隣からのぞき込むリゼの顔。ミナトの頭の上には窓が無く、何も浮かんでいない。) **リゼ**:「あれ……?まだ出ないね、窓」 **ミナト(相良 湊)**:「15で出ない奴もいるって神官さんが言ってたし」 **ミナト(相良 湊)**:「たぶん」 (絵:石造りの神殿。並ぶ若者たちと大きな水晶。鑑定官が手をかざし、リゼの窓が強く光る。「キィィン」の描き文字。) [窓] > 剣士 Lv.12 > 称号〈王都推薦〉 > 王国内順位 8,203位 > **ℹ 王都推薦(おうとすいせん)**(作中の世界の決まり):この世界では、王都の騎士学院への入学を許される者に付く称号です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の何かと決まって対応する物ではなく、強い推薦(重いつながり)を受けた者の印として描かれています。 **群衆**:「王都推薦だ!」 **群衆**:「村から初めてだぞ!」 (絵:大聖堂の巨大な水晶の前に一人で立つミナトを、下から見上げる。何も起きない。) [窓] > 名前:ミナト > 職業:なし > レベル:1 > 検索順位:圏外 > **ℹ 検索順位(けんさくじゅんい)の「圏外(けんがい)」**(作中の世界の決まり):この世界では、水晶がその者を見つけられず、順位が付かないことを言います。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の検索では、その言葉で探しても自分のページが出てこない状態を指す言い方で、Google の決めた用語ではありません。 > - 問:Search Console では、どう見える? 答:掲載順位は、リンクが実際に検索結果に表示された時だけ記録されます。表示されていない検索語には順位が記録されません。 > - 出典:[Search Console ヘルプ「表示回数、掲載順位、クリック数とは」](https://support.google.com/webmasters/answer/7042828?hl=ja) **鑑定官**:「け、圏外……?水晶が、君を〈見つけられない〉と言っている……」 (絵:静まり返った神殿。困った顔の鑑定官。) (絵:ミナトを指さして笑う村の若者たち。) **若者**:「圏外って!」 **若者**:「いないのと同じじゃん!」 (絵:ミナトの顔のアップ。うつむかず、目が少し笑っている。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(……圏外か。懐かしい言葉だな) (絵:夜、村はずれの丘に一人で座るミナト。) > 前の人生で、何千回も見た。圏外は〈いない〉じゃない。〈まだ、見つけられていない〉だけだ。 (絵:ミナトが目の前に浮かぶ窓に指で触れる。「ピ」の描き文字。) [窓] > ――検索順位の決め方を表示しますか? > はい / いいえ [窓] > この世界の順位は、 > 次の3つで決まる。 > 一、名前を呼ばれた回数 > 二、ほかの者から〈つながれた〉数 > 三、行いが、言葉として残っている量 > **ℹ 検索順位(けんさくじゅんい)の決まり方**(現実の事実):Google は、検索した言葉に合うページを、集めたページの目録(インデックス)から探し、関連性が高く品質が高いと判断したページを検索結果に出すと説明しています。関連性は、検索した人の所在地や言語、パソコンかスマートフォンかといった情報を含む、数多くの要素で決まります。 > - 問:ほかのページからのリンクは順位に関係する? 答:Google は、ページどうしのリンクを理解する仕組みを使っていると説明しています。その一つの PageRank は、サービスを始めた頃から使われ、今もランキングの中心の仕組みの一つです。ただし、順位はリンクだけでは決まりません。 > - 問:順位は誰が検索しても同じ? 答:同じとは限りません。Google は、検索した人の所在地・言語・端末などで関連性が変わると説明しています。同じ言葉でも、探す人や場所によって並びが変わることがあります。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google の検索エンジンの仕組み、検索結果と掲載順位について」](https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/how-search-works?hl=ja) > - 出典:[Google 検索セントラル「Google 検索ランキング システムのご紹介」](https://developers.google.com/search/docs/appearance/ranking-systems-guide?hl=ja) **ミナト(相良 湊)**:「え……?これ、知ってる。知ってるぞ!」 (絵:夜空の下に立つミナトの背中。遠くに王都の灯りが見える。) > この世界の仕組みは、俺が10年いじってきた物と同じ形をしていた。 (絵:森の奥にそびえる巨大な魔獣の影。「ズ……ン」の描き文字。) [窓] > 災厄級 魔獣〈名無しの王〉 > 検索順位:圏外 > その夜、村の近くで、もう一つの〈圏外〉が目を覚ました。 ## この話で分かること ### 自分の店やホームページが検索に出てこないのはなぜ? Google は、集めたページの目録(インデックス)に載っているページの中から、検索した言葉に関連が高いと判断した物を出します。出てこない時は、まだ目録に載っていないか、載っていても、その言葉で関連が高いと判断されていないかのどちらかです。 ### 検索順位が急に下がる(圏外に落ちる)のはなぜ? Google は、検索からの訪問が減る主な原因として、検索の仕組み(アルゴリズム)の更新、技術的な問題、セキュリティの問題、スパムに関する問題、季節や興味・関心の変化、サイトの移転と移行の6つを挙げています。どれに当たるかで直し方が変わるので、下がった時期・検索語・ページを確かめてから原因を絞ります。 ### 検索順位の「圏外」とは? Google が決めた用語ではなく、その言葉で検索しても自分のページが出てこない状態を指して使われる言い方です。Search Console の掲載順位は、ページへのリンクが実際に検索結果に表示された時だけ記録され、一度も表示されていない検索語には順位が記録されません。 --- 圏外の転生者 第1話「検索順位:圏外」 つづく # 圏外の転生者 第2話「名前をつける」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/2-nazuke/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[圏外の転生者](https://tooneru.com/ka2uma/kengai/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/2-nazuke/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 成人の儀で「圏外」と出たミナトは、名前を呼ばれる人間になろうと、村人の名前を覚えて呼び始める。その夜、王国の結界に映らない魔獣が村を襲う。結界が見張るのは窓を持つ者だけで、窓の無い魔獣は、圏外のミナトと同じように網をすり抜けていた。前の人生の言葉で言えば、検索の索引(インデックス)に載っていない物は、どれだけ近くにあっても検索には出てこない。ミナトは魔獣に〈ナナシ〉と名を付け、結界に映させて村を守る。村人に名を呼ばれ、ミナトに初めて順位が付く。けれど、名前を持った物は強くなる。〈ナナシ〉の順位もまた、上がり始めていた。 ## 登場人物 - **ミナト(相良 湊)**:主人公。前世は32歳の Web 集客の会社員。転生後は辺境の村の15歳。順位は「圏外」。 - **リゼ**:ミナトの幼なじみ。剣士で、王都推薦を受けた。 - **ハンス**:村のパン屋の主人。 - **ガルド**:村の狩人。森の様子にいちばん詳しい。 - **ナナシ(〈名無しの王〉)**:王国の結界に映らない災厄級の魔獣。ミナトが名を付けた。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の辺境の村。井戸と洗濯物、鶏が歩く、いつもの朝。) > 成人の儀の翌朝。村は、いつもどおりだった。 (絵:井戸端の村の女たちが、通りかかるミナトを横目にひそひそ話す。) **村の女**:「ほら、あの子よ。圏外の子」 **村の女**:「窓、灰色なんだって」 (絵:木の板に、炭で村人の名前を書き並べるミナトの手。) > 一、名前を呼ばれた回数。――なら、まず、名前を呼ばれる人間になればいい。 > **ℹ 知名度(ちめいど)(店の名前がどれだけ知られているか)**(現実の事実):Google の地図や近くの店の検索の順位は、主に関連性・距離・知名度で決まります。知名度は、その店がどれだけ広く知られているかで、店にリンクしているサイトの数や、クチコミの数などの情報にも基づくと Google は説明しています。 > - 出典:[Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google のローカル検索結果のランキングを改善する方法」](https://support.google.com/business/answer/7091?hl=ja) (絵:店先で小麦粉にまみれたパン屋の主人に、ミナトが声をかける。) [人物の紹介] > 村のパン屋の主人 > ハンス **ミナト(相良 湊)**:「ハンスさん!おはようございます」 **ハンス**:「……お、おう?俺の名前、知ってたのか!」 [窓] > パン屋 Lv.8・村内順位 14位 → 13位 (絵:ハンスの頭の上を見上げるミナトの横顔。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(へえ。俺が呼んでも上がった) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(誰が呼んだかは数に関係ないのか) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(なら、金で呼ばせる奴もいずれ出てくるな) (絵:村はずれの木の柵に沿って、淡く光る結界の石柱が並ぶ。) > 村は、王国の〈結界〉に守られている。窓を持つ魔物が近づけば、石柱が鳴って知らせる。 > **ℹ 〈結界(けっかい)〉**(作中の世界の決まり):この世界では、窓を持つ魔物が近づくと石柱が鳴って知らせる、村の守りの網です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の検索が、目録(インデックス)に載ったページしか見つけられないことに重ねてあります。 (絵:石柱の足元に巨大な爪の跡。柵は内側へ倒れ、狩人がしゃがんで調べている。) [人物の紹介] > 村の狩人 > ガルド **ガルド**:「おかしい。結界が鳴ってない」 (絵:地面の爪の跡に触れるミナトの手。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(違う。鳴らないんじゃない) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(結界には映っていないんだ) [窓] > 結界の対象:窓を持つ者 > 対象外:検索順位が〈圏外〉の者 > 俺と同じだ。誰にも見つけられない物は、守りの網も、すり抜ける。 > 前の人生の言葉で言えば、検索の〈索引〉に、載っていない。索引に無い物は、どれだけ近くにいても、検索には出てこない。 > **ℹ インデックス(検索の索引)**(現実の事実):Google インデックスは、Google がクロールで集めたページの文字・画像・動画を解析して保存しておく、大規模なデータベースです。検索された時、Google はこの中から合う情報を探して返します。 > - 問:Google が見つけたページは全部入る? 答:入るとは限りません。Google は、インデックスへの登録は保証されておらず、処理したページのすべてが登録されるわけではないと説明しています。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google の検索エンジンの仕組み、検索結果と掲載順位について」](https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/how-search-works?hl=ja) (絵:夜の村。家々の屋根の向こうから、角のある巨大な魔獣の影がのぞく。「ズシン」の描き文字。) (絵:松明を手に逃げまどう村人たち。) **村人**:「何だ、あれは!」 **村人**:「窓が無い!強さが分からない!」 (絵:本物の剣を抜き、魔獣の影の前に立ちはだかるリゼ。) **リゼ**:「下がって!私が――」 [窓] > リゼ 剣士 Lv.12・王国内順位 8,203位 (絵:魔獣の腕がリゼを弾き飛ばす。「ドガッ」の描き文字。) (絵:地面に倒れたリゼ。そばに剣が突き刺さっている。) **ミナト(相良 湊)**:「リゼ!!」 (絵:巨大な魔獣の正面に、小さなミナトが一人で立つ。) > 見つけられない物は、狙えない。結界も、騎士も、名前の無い物には、届かない。 > だったら――名前を、付けてやればいい。 (絵:魔獣を指さすミナト。指先と鋭い目の大写し。) **ミナト(相良 湊)**:「お前の名前は――〈ナナシ〉だ!」 [窓] > ――〈名付け〉を使いました。 > 対象に、名前が登録されます。 > **ℹ 〈名付け〉**(作中の世界の決まり):この世界では、名前の無い物に名前を付けて、窓に登録させるミナトの力です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実では、Search Console の URL 検査でページのクロールを Google に頼むことに近いですが、頼んでも載るとは限りません。 > - 出典:[Google 検索セントラル「URL の再クロールを Google にリクエストする」](https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/ask-google-to-recrawl?hl=ja) (絵:魔獣の頭の上で、光の線が一点に集まって弾ける。「キィィン」の描き文字。) [窓] > 魔獣〈ナナシ〉 Lv.47 > 王国内順位:登録中…… (絵:村の結界の石柱がいっせいに鳴り、光の鎖が魔獣の脚に絡みつく。「ゴォォン」の描き文字。) > 結界が、やっと、それを見つけた。 (絵:鎖を引きちぎって森へ退く魔獣。振り返った目が、ミナトを見ている。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(……今、俺を見たか……?) **リゼ**:「ミナトが……名前をつけたの……?」 (絵:明け方。手当てを受けるリゼのまわりに村人が集まる。) (絵:村人たちがミナトを囲み、腕を上げて名を呼ぶ。) **ハンス**:「ミナトだ!ミナトが、」 **ハンス**:「追い払ったんだ!」 **村人たち**:「ミナト!」 **村人たち**:「ミナト!」 (絵:朝の光の中のミナトの横顔。口元が少しだけ上がる。) [窓] > 名前:ミナト > 職業:なし > レベル:1 > 検索順位:村内 37位 > 37位。前の人生なら、まだ誰にも見られない順位だ。――悪くない、出だしだ。 [窓] > ――名前を付けられた物は、見つけられるようになる。 > ――そして、名前を持った物は、強くなる。 > 〈ナナシ〉の順位が、上がっています。 (絵:森の奥で眠る魔獣の体に、模様が少しずつ浮かび上がる。) ## この話で分かること ### Google に「インデックス未登録」と出るのはなぜ? Google がそのページを見つけた、または読んだものの、まだ検索の目録(インデックス)に入れていないという意味です。目録に無いページは、検索した言葉にどれだけ合っていても検索結果には出ません。 ### Google に新しいページを早く載せてもらうには? Search Console の URL 検査ツールで、そのページのクロール(読み取り)を Google に頼めます。ページが多い時はサイトマップを送ります。 ### クロールとインデックス登録の違いは? クロールは、Google のプログラム(クローラー)がページを見つけて、文字や画像などを取ってくることです。インデックス登録は、取ってきた中身を解析して、Google インデックスという大きなデータベースに保存することです。検索した人には、インデックスの中から合う情報が返されます。 --- 圏外の転生者 第2話「名前をつける」 つづく # 圏外の転生者 第3話「推薦状」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/3-suisenjo/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[圏外の転生者](https://tooneru.com/ka2uma/kengai/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/3-suisenjo/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 王都推薦を受けたリゼに、騎士学院から迎えが来る。付き人として同行したいミナトに、使者は言う。王都の門は、王国内順位が10万位より下の者を通さない。村の中で名を呼ばれても、王国の順位は「圏外」のままだった。ミナトは順位の決め方の2つ目、ほかの者からの〈つながり〉に目を付ける。前の人生で言う、ほかのサイトから張られたリンクだ。順位の高い者からのつながりほど重く、推薦状に何をした人かが書かれているほど伝わる。金で書かせる推薦状は断り、村長オルガの一通で大きく順位を上げるが、まだ足りない。出発の朝、リゼが自分の名で推薦状を書く。たどり着いた王都の冒険者ギルドで、ミナトは41日誰も受けていない北の森の依頼と、受付のセラに出会う。その森には、順位を上げ続ける〈ナナシ〉がいた。 ## 登場人物 - **ミナト(相良 湊)**:主人公。村内37位、王国内は「圏外」。 - **リゼ**:ミナトの幼なじみ。王都推薦の剣士で、騎士学院へ。 - **ベルナー**:王都騎士団の使者。決まりに厳しい。 - **オルガ**:村長。王国内順位5万位台の、村でいちばん重い名を持つ人。 - **セラ**:王都の冒険者ギルドの受付。依頼書を毎日何百枚も読んでいる。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:村の門に、旗を掲げた騎士が馬で現れる。村人たちが遠巻きに見ている。) [人物の紹介] > 王都騎士団の使者 > ベルナー **ベルナー**:「剣士リゼ。王都推薦により騎士学院への入学を許す」 **ベルナー**:「3日後に発つ」 **リゼ**:「ねえ!ミナトも一緒に行けない?付き人とか!」 (絵:目を輝かせたリゼが、隣のミナトを振り返る。) **ベルナー**:「ならん。王都の門は王国内順位が10万位より」 **ベルナー**:「下の者を通さない。付き人も同じだ」 (絵:自分の頭の上を見上げるミナトの顔。) [窓] > 検索順位:村内 37位 > 王国内順位:圏外 > 村の中で呼ばれても、村の外には、届かない。 (絵:夜の丘。ミナトが目の前の空中に指で触れる。「ピ」の描き文字。) [窓] > ――二、ほかの者から〈つながれた〉数 > 推薦状・弟子入り・仲間入りで、つながりが生まれる。 > 順位の高い者からのつながりほど、重く数える。 > 前の人生で言う、ほかのサイトから張られたリンクだ。 > **ℹ 被リンク(ひりんく)(ほかのサイトからのリンク)**(現実の事実):ほかのサイトから自分のページへ張られたリンクを、SEO の仕事では「被リンク」と呼びます。Google は、ページの関連性を判断する時と、新しいページを見つける時に、リンクを手がかり(シグナル)の1つとして使うと説明しています。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google のリンクに関するベスト プラクティス」](https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/links-crawlable?hl=ja) > 検索の仕組みを作った人たちは、最初の論文に書いていた。多くのページから指されるか、順位の高いページから指されたページは、重い、と。 > **ℹ PageRank(ページランク)**(現実の事実):PageRank は、Google を作ったセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが1998年の論文で示した、リンクのつながりからページの重みを計る仕組みです。多くのページから指されるか、重みの高いページから指されるページは、重みが高くなります。Google は今も PageRank をコアのランキングシステムの一部として使っています。 > - 問:PageRank だけで順位が決まる? 答:決まりません。Google は多くのランキングの仕組みを組み合わせて結果を出しています。 > - 出典:[Sergey Brin・Lawrence Page「The Anatomy of a Large-Scale Hypertextual Web Search Engine」(1998年、スタンフォード大学)](http://infolab.stanford.edu/~backrub/google.html) > - 出典:[Google 検索セントラル「Google 検索ランキング システムのご紹介」](https://developers.google.com/search/docs/appearance/ranking-systems-guide?hl=ja) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(数を集めるか重い一通をもらうか) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(――よし。3日で、両方だ) (絵:朝の村の道。紙の束と羽ペンを抱えて家々を回るミナト。) **ミナト(相良 湊)**:「あの!推薦状を一行だけ書いてもらえませんか?」 (絵:パン屋の台の上で、ハンスが紙にペンを走らせようとしている。ミナトがそばに立つ。) **ハンス**:「いいとも!「いい子です」って書いとくよ!」 **ミナト(相良 湊)**:「……できれば「結界に映らない魔獣を、名前で見つけた男」と」 > 推薦状は、中身で伝わり方が変わる。「いい子」だけでは、何をした人か、分からない。 > **ℹ アンカーテキスト(リンクの文字)**(現実の事実):アンカーテキストは、リンクとして押せる部分の文字です。Google は、リンク先の中身が分かるよう具体的で適度に簡潔に書くことを勧め、「こちら」のような大まかな言葉は避けるよう求めています。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google のリンクに関するベスト プラクティス」](https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/links-crawlable?hl=ja) (絵:ミナトの手に重なった十数通の推薦状。) [窓] > つながり:12 > 王国内順位:圏外 → 412,086位 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(12通で41万位か……) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(村の順位の人から何通もらっても王国ではまだ軽い) **若者**:「よう、圏外。推薦状集めてんだって?」 **若者**:「銅貨1枚で10通書いてやるよ」 (絵:成人の儀でミナトを笑った村の若者が、銅貨を手のひらで鳴らしながら近づく。) **ミナト(相良 湊)**:「いらない」 > 前の人生でも、順位のためのリンクの売り買いは、検索の決まりで禁じられていた。 > そうやって順位を買った店が、ある日まとめて沈むのを、何度も見た。 (絵:杖をついた鋭い目の老婆が、家の戸口からミナトを見下ろす。) [人物の紹介] > 村長 > オルガ [窓] > 村長 Lv.31・王国内順位 52,770位 **オルガ**:「ふん。推薦状が欲しいならまず、わしに何をしたか言いな」 **ミナト(相良 湊)**:「結界が鳴らなかった理由を見つけました」 **ミナト(相良 湊)**:「窓の無い物は結界に映らないんです」 **ミナト(相良 湊)**:「だから名前を付けて映るようにしました」 **オルガ**:「推薦状は書いた者の名前も背負うんだよしくじるんじゃないよ」 (絵:机で封蝋を押すオルガ。ミナトがかしこまって待つ。) [窓] > 村長オルガから、つながれました > 王国内順位:412,086位 → 153,940位 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(一通で25万位!?重さが、違う……) (絵:出発の朝の村の門。荷馬車に乗ったリゼ、馬上のベルナー、見送る村人たち。) **ベルナー**:「15万位か。……足りんな付き人は置いていけ」 (絵:唇をかむミナトの顔の大写し。) (絵:荷馬車から飛び降りたリゼが、ミナトの手から紙を取る。) **リゼ**:「私が書く!」 **ベルナー**:「王都推薦の者の推薦状は重いぞ」 **ベルナー**:「中身の無い物ならお前の順位も下がる」 **リゼ**:「中身ならあるもん!」 (絵:羽ペンで紙に勢いよく書くリゼの手。) [作中の画面] > 推薦状 > この人は、結界に映らない魔獣に名前を付けて、私と村を守った。――剣士リゼ (絵:リゼの頭の上からミナトの頭の上へ、光の糸が流れてつながる。「キィン」の描き文字。) [窓] > 剣士リゼ(王国内順位 8,203位)から、つながれました > 王国内順位:153,940位 → 97,402位 **ベルナー**:「……ふむ。9万7千位。通れ」 > 数より、誰に、何と書いて、つながれたか。――この世界でも、同じだった。 (絵:街道の先にそびえる王都の城壁と大きな門。) > 王都。王国中の窓が、集まる場所。 (絵:人であふれる王都の大通り。) [窓] > 鍛冶屋 Lv.22・王国内順位 31,005位 [窓] > 薬師 Lv.19・王国内順位 64,118位 (絵:冒険者ギルドの広間。壁一面の掲示板に、依頼の紙がびっしり貼られている。) (絵:掲示板の隅に、黄ばんだ依頼の紙が一枚だけ取り残されている。) [作中の画面] > 冒険者ギルド 依頼 > 北の森の調査 報酬 銀貨3枚(受けた者:0人・掲示から41日) **セラ**:「その依頼ね、誰も読まないのよはあ……題名が悪いから」 (絵:受付の台の向こうで、眼鏡の若い女性がため息をつく。) [人物の紹介] > 冒険者ギルド 受付 > セラ (絵:ミナトの目の大写し。光が走る。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(題名……?――それ、俺の得意な所だ) [窓] > 北の森 > 魔獣〈ナナシ〉 王国内順位:41,229位(上昇中) (絵:北の森の奥で、模様の増えた魔獣の目が開く。) ## この話で分かること ### 被リンクとは? どんなリンクが効く? 被リンクは、ほかのサイトから自分のページへ張られたリンクです。Google は、ページどうしのリンクのつながりから、ページの中身と、検索した人に最も役に立つページを判断していて、その仕組みの一つ PageRank は今もコアのランキング システムの一部として働いています。 ### 被リンクは、数が多いほど効く? 数だけでは決まりません。Google を作った2人の1998年の論文は、多くのページから指されるページだけでなく、重み(PageRank)の高いページから指されるページも重いと書いています。順位を上げるために過剰な相互リンクや売り買いでリンクを増やすことは、Google のスパムに関するポリシーで禁じられています。 ### リンクを張ってもらう時、何と書いてもらうといい?(アンカーテキスト) リンクの文字(アンカーテキスト)は、リンク先に何があるかが分かるよう、具体的で適度に短く書くのが良いと Google は勧めています。「こちら」「詳細」のような大まかな言葉や、キーワードの詰め込みは避けます。 --- 圏外の転生者 第3話「推薦状」 つづく # 圏外の転生者 第4話「掲示板の題名」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/4-keijiban-no-daimei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[圏外の転生者](https://tooneru.com/ka2uma/kengai/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/4-keijiban-no-daimei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 王都に着いたミナトは、冒険者ギルドの掲示板の仕組みを知る。冒険者が板に手を当てて探したい言葉を言うと、板は合う順に依頼の紙を光らせる。順位は、誰が、何を探した時の並びかで変わる。頭の上の王国内順位も、王国の民が「頼れる者」を探した時の並びの一つにすぎなかった。41日誰も受けない北の森の依頼は、題名が「至急!至急のお願い!至急!」で、何の依頼かが一言も無い。受付のセラは、新人は「日帰り」「戦わない」、狩人上がりは「足跡」で探すと教え、嘘の題名で人を集めればギルドの信用が落ちると釘を刺す。ミナトは、危ないことも書いたうえで、探す人の言葉で短く具体的な題名に書き直す。半日で、元狩人の斥候ダナと新人の弓使いピオが依頼を受けた。北の森で一行は、家ほどある〈ナナシ〉の足跡と、木々に打ち付けられた100枚を超える札を見つける。札には「ローデリヒ様の名を、朝昼晩、3度呼ぶこと。1日、銅貨2枚」と書かれていた。 ## 登場人物 - **ミナト(相良 湊)**:主人公。王国内9万位台。前世は Web 集客の会社員。 - **セラ**:王都の冒険者ギルドの受付。依頼書を毎日何百枚も読み、冒険者が何と言って探すかを知っている。 - **ダナ**:元狩人の斥候。足跡を20年見てきた。 - **ピオ**:新人の弓使い。戦わない仕事を探している。 - **トマ**:北の森の森番。42日前に依頼を出した。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の冒険者ギルドの広間。壁一面の大きな掲示板の前に、冒険者たちが集まっている。) > 王都に着いて、2日目。俺は、ギルドの掲示板の前にいた。 (絵:大剣を背負った冒険者が掲示板に手のひらを当てると、何枚かの依頼の紙が上から順に光る。「パァッ」の描き文字。) **大剣の冒険者**:「討伐!銀貨10枚以上!」 [窓] > 〈探し板〉 探した言葉:「討伐」「銀貨10枚以上」 > 1位 岩トカゲの討伐(銀貨12枚) > 2位 街道の山賊退治(銀貨15枚) > 3位 沼の大蛇の討伐(銀貨10枚) > **ℹ 〈探し板(さがしいた)〉**(作中の世界の決まり):この世界では、ギルドの掲示板で、冒険者が言った言葉に合う依頼の紙が光り、合う順に上から並びます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の検索エンジンで、言葉を入れると合うページが並ぶことにあたります。 **セラ**:「ふふ。冒険者はね、紙を全部は読まないの」 (絵:受付の台の向こうで、眼鏡のセラが頬杖をついて掲示板の方を見ている。) **セラ**:「板に言った言葉で光った順に上から見るの」 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(なるほど。前の人生の検索と同じだ) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(探す言葉が並びを決める) (絵:ギルドの広間の隅。ミナトが目の前の空中に指で触れ、指先に小さな光の波紋が立つ。「ピ」の描き文字。) [窓] > ――順位は、誰が、何を探した時の並びか。 > 頭の上の王国内順位:王国の民が〈頼れる者〉を探した時の並び > ギルドの掲示板:冒険者が、板に言った言葉で探した時の並び > 探す者と言葉が変われば、並びも変わる。 > **ℹ 検索語ごとの順位**(現実の事実):Google は、検索語句が入力されると、索引(インデックス)の中から一致するページを探し、関連性が高く品質が高いと判断した結果を返すと説明しています。順位はページに一つだけ付く物ではなく、検索語句ごとに決まります。同じ言葉でも、検索した人の所在地・言語・端末(パソコンかスマートフォンか)などで結果が変わります。 > - 問:同じページが、言葉によって上に出たり出なかったりするのはなぜ? 答:その言葉に合うかどうかで、検索のたびに並べ直されるためです。Google は、関連性を見る最も基本的なシグナルは、検索した言葉と同じ言葉がページに含まれているかどうかだと説明しています。 > - 問:場所で結果が変わるのはどんな時? 答:Google の説明では、たとえば「自転車修理店」を検索すると、パリのユーザーと香港のユーザーには違う結果が出ます。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google の検索エンジンの仕組み、検索結果と掲載順位について」](https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/how-search-works?hl=ja) > - 出典:[Google 検索「Google によるランキング結果の決定方法」](https://www.google.com/intl/ja/search/howsearchworks/how-search-works/ranking-results/) (絵:掲示板の隅から外した、黄ばんで端の丸まった依頼の紙を持つミナトの手。) [作中の画面] > 依頼書(掲示から42日) > 題名:至急!至急のお願い!至急! > 本文:北の森で、夜になると、木が倒れる音がする。誰か、見てきてほしい。銀貨3枚。――北の森の森番 トマ **ミナト(相良 湊)**(心の声):(うわ……題名に何の依頼かが一つも書いてない) **セラ**:「「北の森の調査」はギルドの帳面の名前」 **セラ**:「板に出るのは、書いた人の題名なの」 **セラ**:「「至急」で探す冒険者なんて一人もいないわよ」 **ミナト(相良 湊)**:「この依頼を受けるのは誰か。その人は何と言って探すか」 (絵:掲示板の前で、若い冒険者と、弓を背負った年かさの女が、それぞれ板に手を当てて何かを言っている。) **セラ**:「新人は「日帰り」「戦わない」」 **セラ**:「狩人上がりは「足跡」。毎日、聞いてるもの」 (絵:新しい紙に羽ペンで題名を書くミナトの手。横にセラの指が添えられている。) > 前の人生でも、題名は、中身を短く、具体的に書いた。大事なのは、文字数より、何が書いてあるか。 > 「ホーム」みたいなあいまいな題名や、同じ言葉の繰り返しは、役に立たない。 > **ℹ SEO のタイトル(ページの題名)の付け方**(現実の事実):Google は、ページの題名(title 要素)を、そのページの中身が分かるよう具体的に、簡潔に書くよう勧めています。ホームページに「ホーム」とだけ付けるようなあいまいな題名や、同じ語句の繰り返しは避けます。検索する人は、どのページを開くかを題名で決めることが多いためです。 > - 問:タイトルは何文字までがいい? 答:Google は文字数の上限や目安の数を示していません。不必要に長い題名は、検索結果に一部しか表示されないため、何のページかが分かる言葉を短くまとめます。 > - 問:言葉をたくさん詰め込んだ方がいい? 答:いいえ。Google は、同じ語句を何度も繰り返しても無意味で、使う人の利便性を下げると説明しています。 > - 問:付けた題名と違う題が、検索結果に出るのはなぜ? 答:Google は、title 要素のほか、ページの大見出し、h1 などの見出し、og:title、ページへのリンクの文字などから、検索結果の題名(タイトルリンク)を自動で決めます。題名に問題があると判断すると、ほかの文字から作ることがあります。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google 検索結果のタイトルリンクに影響を与える」](https://developers.google.com/search/docs/appearance/title-link?hl=ja) (絵:書き直した紙を読み、眉をひそめるセラ。) **セラ**:「ちょっと待って。北の森には何かいるのよ」 **セラ**:「嘘の題名で集めたらギルドの信用が落ちるわ」 **ミナト(相良 湊)**:「分かってます。危ないことも書きます」 > 中身と合わない題名は、一度は読まれても、二度目は無い。 [作中の画面] > 依頼書(書き直し) > 題名:【日帰り】北の森で、大きな獣の足跡を調べる(戦わずに戻る) > 本文:夜に木を倒す獣を、足跡と爪の跡から確かめる。見つけても戦わず、日暮れ前に戻る。 > 危険:大型の魔獣のおそれあり。報酬:銀貨3枚 (絵:新人の冒険者が掲示板に手を当てると、張り替えたばかりの紙がいちばん強く光る。「パッ」の描き文字。隅に小さく、受付で小さく笑うセラの顔。) [窓] > 〈探し板〉 探した言葉:「日帰り」「足跡」 > 1位 【日帰り】北の森で、大きな獣の足跡を調べる(戦わずに戻る) (絵:受付の前に、弓を背負った新人の少年と、外套をまとった年かさの女の斥候が並んで立つ。) [人物の紹介] > 新人の弓使い > ピオ [人物の紹介] > 元狩人の斥候 > ダナ **ピオ**:「これって!」 **ピオ**:「戦わなくていいんですよね!?」 **ダナ**:「足跡なら、20年、見てきた」 [窓] > 依頼「【日帰り】北の森で、大きな獣の足跡を調べる」 > 受けた者:0人(41日)→ 2人(書き直して、半日) **セラ**:「うそ……41日、誰も来なかったのに」 **ミナト(相良 湊)**:「紙は悪くなかったんです」 **ミナト(相良 湊)**:「探す人の言葉で書いてなかっただけです」 (絵:王都から北へ延びる道。遠くの黒い森へ、小さな3つの人影が歩いていく。) > 北の森。王都から、半日。 (絵:森の入口の小屋の前で、帽子を握りしめた白髪の森番が、3人を迎える。) [人物の紹介] > 北の森の森番 > トマ **トマ**:「ああ……来てくれたのか」 **トマ**:「42日、待ったよ」 (絵:ぬかるみに残った巨大な足跡。爪の跡の奥がかすかに光る。そばに片膝をつくダナの手。) **ダナ**:「でかいね。前の足だけで小屋ほどある」 **ダナ**:「爪の跡に、光る模様……」 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(ナナシ……ここまで来てたのか) (絵:森の木々の幹に、同じ形の木の札が何枚も打ち付けられている。札を見上げるピオ。) **ピオ**:「こっちの木にも!」 **ピオ**:「全部に、札が……!」 (絵:木の札を一枚はがして持つミナトの手。) [作中の画面] > 木の札(森の木に、100枚以上) > 「ローデリヒ様の名を、朝昼晩、3度呼ぶこと。1日、銅貨2枚」 **トマ**:「王都から来た男たちが森の者に銅貨を配っていった」 **トマ**:「名前を呼ぶだけでいいって……」 **トマ**:「……わしも、呼んだ。推薦状も、一通、書いた」 [窓] > 森番 Lv.14・王国内順位 288,410位(下降中) (絵:ミナトの顔のアップ。木漏れ日の影の中で、目が鋭くなる。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(一、名前を呼ばれた回数。誰が呼んでも数は数だ) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(――金で呼ばせてる!) (絵:夜の森。たいまつを持った人々が輪になり、空へ向かって同じ名を叫んでいる。遠くから見た景色。) **森の者たち**:「ローデリヒ様!」 **森の者たち**:「ローデリヒ様!」 [窓] > 呼ばれた名:ローデリヒ(伯爵家) > 王国内順位:2,114位(上昇中) **ミナト(相良 湊)**:「呼んでる者と呼ばれてる者が一度も会ってない……」 (絵:ミナトの目だけの横長の大写し。たいまつの火が瞳に映る。) (絵:森の奥の闇の中。模様の光る巨大な魔獣の目が、遠くのたいまつの輪をじっと見ている。) [窓] > 北の森 魔獣〈ナナシ〉 > 王国内順位:38,006位(上昇中) ## この話で分かること ### SEO のタイトルは何文字で、何を書く? Google は、ページの題名(title 要素)の文字数に上限や目安の数を示していません。示しているのは書き方で、そのページに何が書いてあるかが分かるよう具体的に、簡潔に書くことです。不必要に長い題名は検索結果に一部しか表示されないため、無駄な情報は入れません。「ホーム」のようなあいまいな題名、同じ語句の繰り返し、長い決まり文句の一部だけを変えた題名は避け、サイト名を入れる時は先頭か末尾に、区切りの記号を付けて短く入れます。 ### 検索順位がキーワードごとに違うのはなぜ? Google は、検索語句ごとに、インデックスの中から合うページを探して、関連性が高く品質が高いと判断した順に並べるからです。ページに一つの順位があるのではなく、言葉が変われば並びも変わります。 ### 中身と違う題名(釣りタイトル)を付けるとどうなる? Google は、ページの題名(title 要素)が中身を正しく表しているかを確かめようとしていて、中身を反映していないと判断すると、検索結果に出す題(タイトルリンク)を変えることがあります。題名は、そのページに何が書いてあるかが分かるように付けます。 --- 圏外の転生者 第4話「掲示板の題名」 つづく # 圏外の転生者 第5話「呼ばせ屋」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/5-yobaseya/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[圏外の転生者](https://tooneru.com/ka2uma/kengai/) - 作者:ka2uma - クレジット:原作・脚本:ka2uma/作画:ka2uma/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/ka2uma/kengai/manga/5-yobaseya/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 北の森の魔獣〈ナナシ〉の討伐隊が組まれ、隊長には王国内順位の最も高い者として、伯爵家の息子ローデリヒが選ばれる。騎士学院のリゼもその下につく。広場で名を呼ばれ続けるローデリヒのレベルは9、順位は約2,000位。中身と順位が合っていない。ギルドの受付セラは、隊長の申し込みに付いてきた推薦状40通が、同じ3日の間に、同じ一文で、会ったこともない森や川の者たちによって書かれたことに気づく。書いた者たちは、中身の無い推薦状の決まりどおり、自分の順位を下げていた。ローデリヒに決闘を挑まれたミナトは、剣を抜く前に互いの推薦状を読み上げる騎士の決まりを求める。立会人ベルナーの前で、40通は同じ一文を繰り返し、書いた一人の森番トマは「会ったこともない。銅貨2枚で書いた」と答える。逆上して剣を抜いたローデリヒをリゼが止め、ベルナーは決闘を無効にして隊長から外す。書いた者たちが次々に推薦状を取り下げ、つながりはほとんど消えた。それでも、金で呼ばせた声の数は残り、ローデリヒの順位はほとんど動かない。その夜、神殿が託宣を告げる。一夜にして、王国の順位を改める。 ## 登場人物 - **ミナト(相良 湊)**:主人公。北の森の依頼で名が少し広まった。 - **ローデリヒ**:伯爵家の息子で騎士見習い。金で人を雇い、自分の名を呼ばせ、推薦状を書かせて順位を上げている。 - **セラ**:冒険者ギルドの受付。毎日何百枚も紙を読み、同じ手の紙に気づく。 - **リゼ**:ミナトの幼なじみ。騎士学院の剣士で、討伐隊に入る。 - **ベルナー**:王都騎士団の騎士。決まりに厳しく、決闘の立会人を務める。 - **トマ**:北の森の森番。銅貨2枚でローデリヒの推薦状を書き、自分の順位を下げた。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:王都の広場。人だかりが同じ方向へ腕を上げ、台の上の若い貴族の名を叫んでいる。) **群衆**:「ローデリヒ様!」 **群衆**:「ローデリヒ様!」 (絵:金の飾りの鎧を着た金髪の若い貴族が、台の上から群衆を見下ろして手袋を振る。) [人物の紹介] > 伯爵家の息子・騎士見習い > ローデリヒ [窓] > 騎士見習い Lv.9・王国内順位 1,986位 **ローデリヒ**:「北の森の魔獣はこの私が討つ!」 **ローデリヒ**:「隊長は順位で決まるのだからな!」 **ベルナー**:「北の森の討伐隊。隊長は王国内順位の最も高い者――ローデリヒ」 (絵:騎士学院の中庭。整列した見習いたちの前で、ベルナーが布告を読み上げる。列の中にリゼ。) **ベルナー**:「騎士学院の者はその下につけ」 **リゼ**(心の声):(えっ……あの人の下でナナシと!?) (絵:群衆の中のミナトの上半身。台の上の貴族の頭の上を見上げる。) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(レベルは9。順位は約2,000位) > リゼは、レベル12で、8,000位。中身と順位が、合っていない。 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(この男……誰に呼ばれてる?) **セラ**:「ねえ、見て。討伐隊の隊長の申し込みに付いてきた推薦状。40通よ」 (絵:ギルドの奥の部屋。セラが机いっぱいに推薦状を広げ、眼鏡を押し上げる。) (絵:机の上で扇のように広げられた、同じ形の推薦状の束を押さえる手。) [作中の画面] > ローデリヒへの推薦状(40通) > 書いた者:北の森の樵・川の渡し守・街道の宿の下働き…… > 中身:40通とも「ローデリヒ様は王国一の剣士」 > 書いた日:40通とも、同じ3日の間 **セラ**:「毎日、何百枚も読んでるとね同じ手の紙はすぐ分かるの」 (絵:推薦状を広げた机で、眼鏡を押し上げるセラの寄り。) [作中の画面] > 書いた者の王国内順位(ギルドの帳面) > 北の森の森番トマ:書いた翌日に 下降 > 川の渡し守:書いた翌日に 下降 > ……40人とも、書いた翌日に下がっている **ミナト(相良 湊)**(心の声):(中身の無い推薦状は書いた者の順位も下げる) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(――40人とも自分の名を削って書いてる……) (絵:推薦状の束をのぞき込み、考えこむミナトの寄り。) > 呼ばれ方の、偏り。誰が、いつ、何と言って、呼んだか。 > 同じ言葉、同じ時期、会ったこともない相手。 > 前の人生でも、順位のためのリンクの売り買いは、検索の決まりで、禁じられていた。 > **ℹ リンクスパム(リンクの売り買い)**(現実の事実):Google のスパムに関するポリシーは、検索の順位を操ることを主な目的として、サイトへのリンクやサイトからのリンクを作る行為を「リンクスパム」と呼び、禁じています。例として、順位を上げるためのリンクの売買、過剰な相互リンク、自動のプログラムで作るリンク、作為的な文字のリンクを含む記事への支払いなどが挙がっています。違反したサイトは、順位が下がったり、検索結果に出なくなったりすることがあります。 > - 問:お金を払ったリンクは、全部だめ? 答:いいえ。広告や提携のリンクでも、a タグに rel="sponsored" か rel="nofollow" を付けていれば、ポリシーの違反にはなりません。 > - 問:買ったリンクは、どうやって見つかる? 答:Google は、自動のシステムと、必要に応じた人の審査で違反を見つけると説明しています。2022年12月には、AI を使ったスパム対策の仕組み SpamBrain が、リンクを買うサイトとリンクを渡すためのサイトの両方を見つけられるようになり、不自然なリンクを無効にすると発表しました。 > - 出典:[Google 検索セントラル「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」(リンクスパム)](https://developers.google.com/search/docs/essentials/spam-policies?hl=ja) > - 出典:[Google 検索セントラル ブログ「2022 年 12 月のリンクスパム対策アップデートのリリース(Google 検索)」(2022年12月14日)](https://developers.google.com/search/blog/2022/12/december-22-link-spam-update?hl=ja) > 金で書かせた口コミも、同じだ。頼んで付けさせた星も、頼んで消させた悪評も、決まりで、禁じられている。 > **ℹ やらせの口コミ(Google の口コミ)**(現実の事実):Google マップの投稿のポリシーは、実体験に基づかないクチコミや、お金や品物を対価に書かれたクチコミ・評価を「虚偽のエンゲージメント」として禁じ、削除します。お店などが、クチコミを書いてもらう代わりや、悪いクチコミを直させる・消させる代わりに、お金・割引・無料の品などを渡すことも禁止されています。 > - 問:頼んで書かせた口コミは、バレる? 答:Google は、コンテンツやアカウントの審査で、内容だけでなく、アカウントの情報、ユーザーの操作、有害な行為のパターンがあるかどうか、報告などを考えると説明しています。日本では2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)が、レビューの投稿も含めて景品表示法の違反になります。規制の対象は依頼した事業者です。 > - 問:悪い口コミは、削除を頼める? 答:ビジネスのオーナーは、ポリシーに違反していると思われるクチコミを報告して削除を求められます。削除の対象はポリシー違反のクチコミだけで、不満がある・気に入らないという理由では報告しないよう Google は求めています。審査は通常数日で、削除されなかった時は1回だけ再審査を請求できます。 > - 出典:[Google「禁止または制限されているコンテンツ - マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」(虚偽のエンゲージメント)](https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja) > - 出典:[Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィール上の不適切なクチコミを報告する」](https://support.google.com/business/answer/4596773?hl=ja) > - 出典:[消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」](https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing) **トマ**:「森の調べの報せに来た。……それとわしの推薦状のことで」 (絵:ギルドの戸口に、帽子を握った白髪の森番トマが立つ。後ろに斥候のダナ。) [窓] > 森番 Lv.14・王国内順位 288,410位 → 301,772位 **トマ**:「推薦状は書いた者の名も背負う。……わしは知らなかった」 (絵:取り巻きを連れたローデリヒがギルドに踏み込み、ミナトを見下ろしてにらむ。) **ローデリヒ**:「おい!」 **ローデリヒ**:「圏外上がりが私の推薦状を嗅ぎ回っているそうだな」 **ローデリヒ**:「明日、広場で決闘だ。負けたら王都から出ていけ!」 **ミナト(相良 湊)**:「受けます。ただし、騎士の決まりどおりに」 (絵:封蝋の付いた推薦状の束を、両手で扇のように広げた所。) > 騎士の決闘では、剣を抜く前に、互いの推薦状を、読み上げる。 > ――ベルナーさんに、聞いておいた。 (絵:翌日の広場。縄で囲った決闘の場を、大勢の見物人が取り囲む。片側には、雇われた者たちが同じ旗を振って並ぶ。) **雇われた者たち**:「ローデリヒ様!」 (絵:決闘の場の真ん中に立つ立会人のベルナー。左右にミナトとローデリヒ。) **ベルナー**:「決まりにより、剣を抜く前に、双方の推薦状を読み上げる」 (絵:ベルナーの鋼の籠手が、一通の推薦状を広げて持つ。) [作中の画面] > ミナトへの推薦状(読み上げ) > 村長オルガ:結界が鳴らなかった理由を見つけ、名を付けて村を守った > 剣士リゼ:結界に映らない魔獣に名前を付けて、私と村を守った > 冒険者ダナ:41日誰も受けなかった依頼の題名を書き直し、森へ人を連れてきた (絵:次の束を読み上げるベルナー。表情を変えずに、一通ずつめくっていく。隅に小さく、帽子を胸に握って目を伏せるトマの顔。) [作中の画面] > ローデリヒへの推薦状(読み上げ) > 1通目:ローデリヒ様は王国一の剣士 > 2通目:ローデリヒ様は王国一の剣士 > 3通目:ローデリヒ様は王国一の剣士 > …… > 40通目:ローデリヒ様は王国一の剣士 **見物人**:「……全部、同じ?」 (絵:ベルナーが見物人の方へ向き直る。人垣から、帽子を握ったトマが一歩前へ出る。) **ベルナー**:「書いた者は前へ出よ!」 **ベルナー**:「この者がお前に何をしたか言え!」 **トマ**:「……会ったことは、ねえ銅貨2枚で書いた……すまねえ」 (絵:ローデリヒの顔の大写し。怒りで顔がゆがむ。) **ローデリヒ**:「黙れ、下民が!」 (絵:ローデリヒが剣を抜いてトマへ振り下ろす。横から飛び込んだリゼの剣がそれを受け止め、火花が散る。「ギィン」の描き文字。) **リゼ**:「やめて!」 **リゼ**:「剣を向ける相手が違う!」 [窓] > 剣士 Lv.12 リゼ / 騎士見習い Lv.9 ローデリヒ (絵:ベルナーが片手を高く上げて決闘を止める。剣を落としたローデリヒが膝をつく。) **ベルナー**:「決闘は、無効。中身の無い推薦状40通の件、騎士団で預かる」 **ベルナー**:「討伐隊の隊長からも外す」 [窓] > 森番トマ:推薦状を取り下げました > ローデリヒへのつながり:40 → 3(書いた者が、次々に取り下げています) (絵:取り巻きに支えられて広場を去るローデリヒの後ろ姿。) [窓] > 騎士見習い Lv.9・王国内順位 1,986位 → 2,051位 **ミナト(相良 湊)**(心の声):(つながりはほとんど消えた……) **ミナト(相良 湊)**(心の声):(でも、呼ばれた数は残ってる) > 誰が呼んでも、数は数。この世界の順位は、まだ、偽物の声を、見分けられない。 (絵:夜の神殿。大きな水晶がまばゆく光り、鐘楼の鐘が揺れる。「ゴォォン」の描き文字。) [窓] > 神殿の託宣 > 一夜にして、王国の順位を改める。 **ミナト(相良 湊)**:「……まさか、大改定、か?」 (絵:夜の王都の屋根の上で、光る神殿の方を見上げるミナトの顔の大写し。) ## この話で分かること ### Google の口コミを頼んで消させたり、買ったりすると、バレる? Google マップの投稿のポリシーは、実体験に基づかないクチコミや、お金や品物を対価に書かれたクチコミ・評価を禁じ、削除します。お店などが、クチコミを書いてもらう代わりや、悪いクチコミを直させる・消させる代わりに、お金・割引・無料の品などを渡すことも禁止です。Google は審査の時に、内容だけでなく、アカウントの情報や操作、有害な行為のパターンがあるかどうか、報告なども見ると説明しています。日本では2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)が、レビューの投稿も含めて景品表示法の違反になり、対象は依頼した事業者です。順位のために被リンクを売り買いすることも、Google のスパムのポリシーで禁じられています。 ### 買われたリンクや悪いリンクを外すには?(リンクの否認) まず、リンク元に頼むなどして、スパムや品質の低いリンクをできるだけ消してもらいます。消せない時に、Search Console のリンクの否認ツールで、そのページやドメインを「否認」できます。 ### お店がお客さんに口コミを頼むのはいい? 頼むこと自体はできます。Google は、クチコミを書いてもらうために、リンクや QR コードを案内してよいとしています。ただし、クチコミを書く・直す・悪いクチコミを消す見返りに、無料の品や割引などを渡すことは、虚偽のエンゲージメントとして固く禁じられています。 --- 圏外の転生者 第5話「呼ばせ屋」 つづく # 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第1話「雨の閉門前」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/1-ame-no-heimon/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜](https://tooneru.com/kusha-note/taxi/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/1-ame-no-heimon/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ タクシー会社の配車係だった真柴千景は、雨の金曜の深夜、呼び出しがあふれる配車の画面の前で倒れ、王都リンデルの小さな辻馬車屋「灰馬組」の帳付けチカとして目を覚ます。古株の御者ガロは雨の中、空の馬車で市場を3周しても客を見つけられなかった。チカの前に開いた窓〈配車盤〉は、今と過去の記録だけを映す。雨の日は歩いて帰れない人が馬車を呼び、夜の九の鐘の閉門(日本でいう終電)の前には、劇場や大神殿から東門へ人が一斉に動く。走る台数は晴れの日と同じなので、需要の山には足りなくなる。その時間と場所に先に馬車を置けば満車になる。チカは6台を先回りさせ、ひと晩で晴れの日の4日分を稼ぐ。だがその夜、御者ギルドから通達が届く。実車率が3割に満たない組は、月末に営業札を返すこと。灰馬組の実車率は18%だった。 ## 登場人物 - **チカ(真柴 千景)**:主人公。前世はタクシー会社の配車センターの配車係(34歳)。王都の辻馬車屋「灰馬組」の帳付け(17歳)として目覚める。今と過去の記録だけを映す窓〈配車盤〉を持つ。 - **ベルタ**:灰馬組の組頭。68歳、腰を悪くした元御者。チカの祖母。 - **ガロ**:灰馬組の古株の御者(46歳)。流し一筋25年。口が悪いが、王都の道を誰より知っている。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:雨の金曜の深夜。配車センターの壁一面の画面に、街の地図と呼び出しの点が並ぶ。) > 金曜の深夜。雨。 [作中の画面] > 配車センター 待ちの依頼 > 未配車 218件 > **ℹ 配車(はいしゃ)と配車センター**(現実の事実):配車は、呼ばれた所へ車を割り当てて向かわせる事です。タクシー会社の配車センターは、電話やアプリで入った依頼を受け、どの車を迎えに行かせるかを決めます。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「配車」](https://kotobank.jp/word/%E9%85%8D%E8%BB%8A-598783) (絵:ヘッドセットを付けた女性が、画面の地図を指さして指示を出している。) [人物の紹介] > タクシー会社・配車センターの配車係(34歳) > 真柴 千景 **チカ(真柴 千景)**:「北口、空車ゼロ!?」 > **ℹ 空車(くうしゃ)・実車(じっしゃ)・迎車(げいしゃ)**(現実の事実):タクシーの今の状態を表す言葉で、車の表示にも出ます。空車は客を乗せていない車、実車は客を乗せて走っている車(表示は「賃走」など)、迎車は呼ばれて客を迎えに行く途中の車です。 > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「空車」](https://kotobank.jp/word/%E7%A9%BA%E8%BB%8A-467323) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「実車」](https://kotobank.jp/word/%E5%AE%9F%E8%BB%8A-521406) > - 出典:[コトバンク(デジタル大辞泉)「迎車」](https://kotobank.jp/word/%E8%BF%8E%E8%BB%8A-488700) **チカ(真柴 千景)**:「南の車庫から3台、回して!」 > 雨の夜は、誰もが車を呼ぶ。走っている車の数は、晴れの夜と同じなのに。 (絵:椅子から崩れ落ちる千景。外れたヘッドセット。「ガタッ」の描き文字。) (絵:雨の夕暮れの王都。城壁と大きな門、石畳を行き交う辻馬車、空を飛ぶ飛竜。) > 目を開けると、石の街に、雨が降っていた。 (絵:古い馬小屋の帳場で、帳面を前に自分の若い手を見つめる少女。) [人物の紹介] > 灰馬組・帳付け(前世:タクシー会社の配車係) > チカ > **ℹ 帳付け(ちょうづけ)**(作中の世界の決まり):この世界では、組の帳面(乗車の記録やお金の出入り)をつける係で、御者に指図する立場ではありません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の会社でいえば、記録や帳簿をつける事務の係にあたります(チカは前世でタクシー会社の配車係でした)。 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(え……17歳の手……?) **ベルタ**:「チカ、帳面は閉じな今夜も客は来やしないよ」 (絵:杖をついた老女が、戸口からこちらを見下ろしている。) [人物の紹介] > 灰馬組・組頭 > ベルタ > 灰馬組。辻馬車が6台の、小さな組。 > **ℹ 辻馬車(つじばしゃ)と「〜組(ぐみ)」**(作中の世界の決まり):この世界では、町で客を乗せて運ぶ馬車を辻馬車といい、辻馬車を持つ店を「灰馬組」「金獅子商会」のように呼びます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実のタクシーと、タクシー会社にあたります。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では、江戸時代に町の辻などで客を待って乗せる「辻駕籠(つじかご)」があり、明治2〜3年(1869〜70年)には東京で人力車が考案され、東京府の許可を受けて営業が始まりました。 > - 出典:[コトバンク「辻駕籠」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)](https://kotobank.jp/word/%E8%BE%BB%E9%A7%95%E7%B1%A0) > - 出典:[コトバンク「人力車」(精選版 日本国語大辞典・世界大百科事典ほか)](https://kotobank.jp/word/%E4%BA%BA%E5%8A%9B%E8%BB%8A-82711) (絵:ずぶ濡れの大男の御者が、歯を食いしばって手綱を握り、空の辻馬車の馬を引いて大きく踏み込む。低い所から見上げる。) [人物の紹介] > 灰馬組・御者(流し25年) > ガロ > **ℹ 御者(ぎょしゃ)と「流し(ながし)」**(作中の世界の決まり):この世界では、馬車を操って客を運ぶ人を御者といいます。「流し」は、走りながら道で客を探すことです。 > - 問:現実では何にあたる? 答:御者は現実のタクシーの運転手にあたり、「流し」は現実のタクシーの「流し」と同じ言葉です。 **ガロ**:「くそっ!」 **ガロ**:「市場を3周したのに客なんか一人も歩いちゃいねえ」 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(え……雨の日に市場を流したの……?) (絵:濡れた帳面に置いた手。その先の何もない空中が、かすかに光る。「ピ」の描き文字。) [窓] > 〈配車盤〉を開きます > 登録:灰馬組 6台 > 空車 6 実車 0 迎車 0 > **ℹ 〈配車盤(はいしゃばん)〉**(作中の世界の決まり):この世界では、チカにだけ見える窓で、組の馬車の空車・実車・迎車の数と、過去の乗車の記録を映します(先のことは映しません)。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実のタクシー会社の配車システムの画面にあたります。 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(うそ……私の配車の画面だ!) [窓] > 〈配車盤〉は、今と過去だけを映す。 > 先のことは、映さない。 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(先を読むのは配車係の仕事、か……) [窓] > 【灰馬組 乗車の記録(過去30日)】 > 雨の日は、六の鐘から九の鐘の乗車が一日の半分 > 行き先:東門が7割 > **ℹ 鐘(かね)(六の鐘・九の鐘)と刻(こく)**(作中の世界の決まり):この世界では、時刻を鐘の数で呼び、「刻」は時間の長さの単位です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:鐘の数で呼ぶのは、現実の時刻(何時)にあたります。鐘の数が今の何時になるかは、物語の中では決めていません。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では江戸時代、明け六つから暮れ六つまでの昼と、暮れ六つから明け六つまでの夜をそれぞれ6つに分けて時刻を決めていて(季節で一刻の長さが変わる)、九つ・八つといった呼び名は、もとは時刻を知らせる太鼓の打つ数でした。今の24時間の時刻は、明治6年(1873年)から使われています。 > - 出典:[国立天文台 暦計算室「暦Wiki 定時法と不定時法」](https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BBFEB9EF2FC4EABBFECBA1A4C8C9D4C4EABBFECBA1.html) > 閉門は、夜の九の鐘。壁の外の外町に住む人は、それまでに門を出なければならない。 > **ℹ 閉門(へいもん)と外町(そとまち)**(作中の世界の決まり):この世界では、王都の壁の門が夜の九の鐘で閉まり、壁の外の「外町」に住む人は、それまでに門を出なければなりません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の都市の終電にあたります。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では江戸時代、町の境の木戸(町木戸)が夜四つ(午後10時ごろ)から朝六つまで閉じられ、その間は木戸番の見張りのもとで、脇のくぐり戸からしか通れませんでした。 > - 出典:[コトバンク「木戸」(改訂新版 世界大百科事典〈平凡社〉の「町木戸」の記述)](https://kotobank.jp/word/%E6%9C%A8%E6%88%B8) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(あ。――終電だ!) **チカ(真柴 千景)**:「ガロさん!市場じゃないです劇場の裏口と大神殿の階段へ!」 (絵:何かに気づいたチカの目の大写し。) **チカ(真柴 千景)**:「八の鐘の前に6台ともお願いします!」 (絵:雨の夜の御者台。帽子のガロが、目を見開いて左へ急に振り向く顔の寄り。) **ガロ**:「はあ!?」 **ガロ**:「帳付けの小娘が御者に指図か?」 **チカ(真柴 千景)**:「雨だと歩いて帰れない人が出ます」 **チカ(真柴 千景)**:「閉門の前の一刻はみんな同じ方向へ動くんです」 **チカ(真柴 千景)**:「客は流して探すんじゃない」 **チカ(真柴 千景)**:「出てくる所で待つんです!」 [窓] > 需要の山(記録からの見立て) > 八の鐘〜九の鐘 劇場・大神殿 → 東門 > 雨:歩く人が減り、馬車を呼ぶ人が増える > 台数:晴れの日と同じ6台 (絵:雨の劇場の出口。外套をかぶった人々があふれ、通りに馬車は一台もない。) **劇場の客**:「馬車はないか!」 **劇場の客**:「門が閉まっちまう!」 (絵:雨の通りに、灰色の辻馬車が列になって入ってくる。先頭の御者台にガロ。「ガラガラ」の描き文字。) (絵:辻馬車に乗り込む人々。老夫婦が御者に手を合わせる。) [窓] > 空車 0 実車 6 迎車 0 **ガロ**:「……おい。全部埋まったぞ!」 (絵:雨の夜、松明の灯る東門へ辻馬車の列が走る。門の上で鐘が鳴る。「ゴォン」の描き文字。) > 九の鐘が鳴るまでに、6台は2度ずつ、東門を往復した。 (絵:夜の馬小屋。机の上の銀貨を数えて目を丸くするベルタと、濡れた外套のまま黙って立つガロ。) **ベルタ**:「こりゃ……晴れの日の4日分だよ!」 **ガロ**:「勘じゃねえな、あれは」 **チカ(真柴 千景)**:「ふふ、記録です。雨と、閉門」 **チカ(真柴 千景)**:「客が出る時間と場所は毎回、だいたい同じ」 (絵:ろうそくの横に置かれた、封蝋つきの手紙。) [窓] > 御者ギルド 通達 > 実車率が3割に満たない組は、 > 月末をもって営業札を返すこと。 [窓] > 灰馬組 今月の実車率 18% > 月末まで 30日 (絵:ろうそくの光に照らされ、口元を引き締めて前を見るチカ。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(3割……――よし。配車係の仕事だ) ## この話で分かること ### タクシーがつかまらない・来ないのはなぜ? 雨の日は? 雨の日は歩く代わりに車を使う人が増えるのに、走っている台数はふだんと変わらないため、乗りたい人に車が足りなくなります。国土交通省も、雨天時・酷暑時は移動需要が大きくなる傾向があるとして、日本版ライドシェアでは24時間先までの降水量の予報が1時間5mm以上の時間帯とその前後1時間に、車を増やして使えるようにしています(2026年2月26日の事務連絡)。東京ハイヤー・タクシー協会の2019年度の調査(東京都特別区・武三交通圏)では、タクシーをよく使う状況として「雨天・暑い・寒い等の気象状況で」を挙げた回答が15.7%でした。 ### 終電の前後にタクシーがつかまらないのは本当? 国土交通省が配車アプリのデータ(2023年10〜12月)から出した数字では、東京の特別区・武三交通圏で、土曜の0時台〜4時台は配車の依頼に車が見つかった割合(マッチング率)が66%まで下がり、90%を確保するには2,540台が足りないとされました(2024年3月13日公表)。同じ時間に同じ方向へ人が動く時間帯は、台数が足りなくなります。 ### タクシーの会社を営業するには、許可が要る? 要ります。タクシーのように、定員の少ない車を1つの契約で貸し切って客を運ぶ事業は「一般乗用旅客自動車運送事業」といい、道路運送法第4条により、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。 --- 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第1話「雨の閉門前」 つづく # 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第2話「流しか、付け待ちか」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/2-nagashi-to-tsukemachi/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜](https://tooneru.com/kusha-note/taxi/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/2-nagashi-to-tsukemachi/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 実車率は、客を乗せて走った距離を、走った距離の全部で割った割合(実車キロ÷走行キロ×100)。灰馬組は18%で、10里走って客を乗せていたのは2里に足りなかった。チカは車輪に回転の数え木を付け、流し一筋のガロと、城門広場で付け待ちをする見習いのピムを1日比べる。流しは走りながら手を挙げる客を探すので客の数は多いが、空で走る距離も増え、実車率は21%。付け待ちは乗り場に並んで待つので空で走る距離は少なく実車率は46%だが、待つ時間が長く、乗せた客はガロの半分以下だった。実車率は距離の割合なので、止まって待っている間は下がらないが、その間は稼げない。チカは距離と時間の両方を見て、人が道にあふれる時間と場所では流し、人が一か所から出てくる時間と場所では待つ、と一日の表を組む。実車率が上がり始めた朝、金獅子商会の配車頭ヴィクトルが現れ、城門広場の馬車溜まりを自分たちの専用にすると告げる。 ## 登場人物 - **チカ(真柴 千景)**:主人公。前世はタクシー会社の配車センターの配車係(34歳)。王都の辻馬車屋「灰馬組」の帳付け(17歳)として目覚める。今と過去の記録だけを映す窓〈配車盤〉を持つ。 - **ガロ**:灰馬組の古株の御者(46歳)。流し一筋25年。口が悪いが、王都の道を誰より知っている。 - **ピム**:灰馬組の見習い御者(15歳)。足が速い。 - **ヴィクトル**:大きな運送の商会「金獅子商会」の配車頭。辻馬車200台と飛竜便を回す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:晴れた朝の王都の大通り。何台もの空の辻馬車が、客を探してゆっくり行き交う。) > 晴れた朝。王都の大通りを、空の馬車が流れていく。 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(うわ……あの馬車のほとんどが空で走ってる) (絵:辻馬車の車輪の軸に、木の数え木を取り付ける手。「カチ」の描き文字。) **チカ(真柴 千景)**:「見てください。車輪が1回まわるごとに一つ進む数え木です」 **チカ(真柴 千景)**:「客が乗ってる間だけこっちの目盛りに切り替えます」 (絵:腕を組んで眉をひそめるガロと、数え木を指さして話すチカ。) **ガロ**:「けっ!」 **ガロ**:「そんな物で何が分かる」 [窓] > 実車率 > 客を乗せて走った距離 ÷ 走った距離の全部 × 100 > 空で走った分だけ、下がる。 > **ℹ 実車率(じっしゃりつ)**(現実の事実):実車率は、車が走った距離のうち、客を乗せて走った距離の割合です。国土交通省の統計では、実車キロ(実際に客を乗せて走った距離)÷走行キロ(客を乗せたかどうかを問わず走った距離)×100で表します。 > - 出典:[国土交通省「自動車輸送統計 用語の説明」](https://www.mlit.go.jp/k-toukei/jidousya_yougo.html) **チカ(真柴 千景)**:「灰馬組は18%です」 **チカ(真柴 千景)**:「10里走って客を乗せてたのは2里もないんです」 > **ℹ 里(り)(距離)**(作中の世界の決まり):この世界では、距離を「里」で数えます。作中の1里が何 km かは決めていません。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の日本の昔の距離の単位と同じ呼び方です。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では、1里の長さは時代や地方で違いましたが、明治時代に1里=36町(約3.927km)にそろえられました。 > - 出典:[コトバンク「里」(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)](https://kotobank.jp/word/%E9%87%8C-147757) **ガロ**:「うるせえ!」 **ガロ**:「流さなきゃ客は見つからねえ。25年、そうしてきた」 (絵:ぶかぶかの帽子をかぶったそばかすの少年が、手を挙げて前に出る。) [人物の紹介] > 灰馬組・見習い御者 > ピム **ピム**:「はいはい!じゃあおれ、城門広場で待ってみる!」 > 1日だけ、比べる。流すガロと、付け待ちのピム。 [窓] > 流し:走りながら、手を挙げる客を探す > 付け待ち:乗り場に並んで、客が来るのを待つ (絵:城門広場の馬車溜まり。辻馬車が列になって客を待っている。) (絵:人通りの多い市場の通りを、左右を見ながら馬車を走らせるガロ。) **ガロ**:「乗るか!」 **ガロ**:「東門まで行くぞ!」 (絵:馬車溜まりの列で、御者台に座ったまま退屈そうに空を見上げるピム。日の影が長く伸びている。) **ピム**(つぶやき):「……まだ3台前……ふあ〜」 (絵:色の抜けた記憶。夜の駅前のタクシー乗り場に、空車のタクシーが長い列を作っている。) > 駅の乗り場で、1時間待って1人。そんな夜もあった。 (絵:夕方の馬小屋。疲れた顔のガロとピムの前で、チカが帳面に数字を書き込む。) (絵:机に並べた二つの数え木。目盛りの位置が違う。) [窓] > 1日の比べ(数え木と帳面から) > ガロ(流し) 実車率 21% 乗せた客 9組 > ピム(付け待ち) 実車率 46% 乗せた客 4組 > ピムが乗り場で待った時間 5刻 **ピム**:「へへっ、おれの勝ち!」 **ガロ**:「客は俺の方が倍だぞ!」 (絵:顎に手を当て、帳面の数字をじっと見るチカの顔。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(ううん。2人とも正しい) **チカ(真柴 千景)**:「実車率は乗せて走った距離の割合だから……」 **ピム**:「待ってりゃ下がらないじゃん!」 **チカ(真柴 千景)**:「でも、その間は稼げないでしょ?」 **チカ(真柴 千景)**:「だから距離と時間の両方を見るんです」 [窓] > 流しと付け待ちの使い分け > 人が道にあふれる時間・場所 → 流す > 人が一か所から出てくる時間・場所 → 待つ (絵:馬小屋の壁に、チョークで描いた王都の地図。時間ごとの印が書き込まれている。) [窓] > 灰馬組の一日(チカの表) > 朝 大通りと市場を流す > 昼 施療院と宿の前で待つ > 夕〜閉門 劇場・大神殿で待ち、東門へ > **ℹ 施療院(せりょういん)**(作中の世界の決まり):この世界では、病人やけが人を診て手当てをする所です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の病院・診療所にあたります。 > - 問:日本の歴史では? 答:日本では江戸時代の享保7年(1722年)、8代将軍徳川吉宗が、町医者・小川笙船の建言を受けて、貧しい病人のための小石川養生所を設けました。 > - 出典:[コトバンク「小石川養生所」(精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書ほか)](https://kotobank.jp/word/%E5%B0%8F%E7%9F%B3%E5%B7%9D%E9%A4%8A%E7%94%9F%E6%89%80) (絵:朝の大通りで、手を挙げた商人を拾うガロの馬車。) (絵:施療院の入口で、杖の老婦人の手を取って馬車に乗せるピム。) [窓] > 灰馬組 実車率 18% → 24% > 月末まで 23日 **ガロ**:「……ふん。朝の大通りは悪くねえ」 (絵:城門広場に、金の獅子の紋の付いた立派な馬車の列が入ってくる。「ザッ」の描き文字。) (絵:金の刺繍の黒い外套を着た細身の男が、薄く笑ってこちらを見下ろす。) [人物の紹介] > 金獅子商会・配車頭(辻馬車200台と飛竜便) > ヴィクトル > **ℹ 飛竜便(ひりゅうびん)**(作中の世界の決まり):この世界では、金獅子商会が持つ、飛ぶ竜で人を運ぶ便です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実に同じ乗り物はなく、大きな会社だけが持つ、速くて特別な乗り物として描かれています。 **ヴィクトル**:「本日より城門広場の馬車溜まりは金獅子商会の専用だ」 **ヴィクトル**:「ふっ……ギルドの許しもある」 **ヴィクトル**:「小さな組は流していればいい」 (絵:夕暮れの影の中、唇をかんで前を見るチカの目。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(そんな……いちばんの待つ場所を取られた……) ## この話で分かること ### タクシーの実車率とは? 走った距離のうち、客を乗せて走った距離の割合です。国土交通省の統計の用語では、実車キロ(実際に旅客を乗せて走った距離)÷走行キロ(旅客を乗せたかどうかを問わず走った距離)×100で表します。空で走るほど下がります。 ### 流しと付け待ちとは? 違いは? 流しは、走りながら道で手を挙げる客を探す営業です。付け待ちは、駅や病院などの乗り場に並んで客を待つ営業です。流しは空で走る距離が増えやすく、付け待ちは走らない代わりに待つ時間が増えやすいので、距離の割合(実車率)と待つ時間の両方を見て、時間と場所で使い分けます。 ### 客を待っている時間は、実車率に入る? 入りません。実車率は、走った距離のうち客を乗せて走った距離の割合(実車キロ÷走行キロ×100)なので、止まって待っている間は分母にも分子にも入りません。待つ営業は実車率が下がりにくい代わりに、待っている間は稼げないので、時間の使い方は別に見ます。 --- 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第2話「流しか、付け待ちか」 つづく # 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第3話「迎えに行く距離」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/3-mukae-no-kyori/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜](https://tooneru.com/kusha-note/taxi/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/3-mukae-no-kyori/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 付け待ちの場所を失った灰馬組は、宿や施療院に呼び出しの札を置き、呼ばれて迎えに行く仕事を始める。組頭のベルタは札の順番の馬車を出すが、遠くから向かう間に客は待ちきれずに帰り、12件の呼び出しのうち5件を逃す。迎えに行く間は客を乗せていないので、迎えの距離はそのまま空で走る距離になり、迎えの時間は客の待ち時間になる。チカは、呼ばれたらいちばん近い空車を出し、6台の待つ場所を刻ごとにずらして、どの馬車も王都のどこかのいちばん近くにいるようにする。迎えの距離は1里半から半里に縮み、15件の呼び出しのうち14件に迎えが間に合う。チカはこの割合(日本でいうマッチング率)を9割に保つと決める。その夜、施療院の見習いの癒し手ネリから、熱の子どもを閉門前に東門の外の薬師へ、という呼び出しが入る。いちばん近くにいたガロが間に合う。翌朝、侯爵家から手紙が届く。明日の閉門前、御者を一人指名したい――組でいちばん客の評判が悪い、ガロを。 ## 登場人物 - **チカ(真柴 千景)**:主人公。前世はタクシー会社の配車センターの配車係(34歳)。王都の辻馬車屋「灰馬組」の帳付け(17歳)として目覚める。今と過去の記録だけを映す窓〈配車盤〉を持つ。 - **ベルタ**:灰馬組の組頭。68歳、腰を悪くした元御者。チカの祖母。 - **ガロ**:灰馬組の古株の御者(46歳)。流し一筋25年。口が悪いが、王都の道を誰より知っている。 - **ピム**:灰馬組の見習い御者(15歳)。足が速い。 - **ネリ**:施療院の見習いの癒し手。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の城門広場。金獅子商会の馬車が並び、灰色の辻馬車は広場の外へ追い出されている。) > 城門広場を失って、3日。 [窓] > 灰馬組 実車率 24% → 20% > 月末まで 19日 (絵:馬小屋の柱に、六枚の木の札が順番に掛けてある。札を手に取るベルタ。) **ベルタ**:「待つ場所がないなら呼んでもらうしかないね」 (絵:筒を抱えて石畳を走るピム。) > 宿と施療院に、呼び出しの札を置いた。札を鳴らせば、ピムが走って知らせに来る。 > **ℹ 呼び出しの札(ふだ)**(作中の世界の決まり):この世界では、宿や施療院に置いた札で、鳴らすとピムが走って組に知らせに来ます。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実のタクシーの、電話や配車アプリでの呼び出しにあたります。 (絵:宿の帳場に掛けた、小さな鈴付きの木の札。「チリン」の描き文字。) **ベルタ**:「呼ばれたら札の順番の馬車を出す」 **ベルタ**:「それが組の決まりさ」 (絵:宿の前で、荷物を持った旅の男が足を踏み鳴らして待っている。) (絵:高い所から見た王都の通り。遠くの外れから、一台の灰色の辻馬車が長い道のりを向かってくる。) **旅の男**:「もういい!」 **旅の男**:「歩いた方が早い!」 [窓] > 今日の呼び出し 12件 > 迎えに着いた 7件 > 着く前に客が帰った 5件 > 迎えの距離(平均) 1里半 (絵:配車盤の光を見つめて、眉を寄せるチカ。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(あ……順番の馬車はいつも遠い) (絵:色の抜けた記憶。配車センターの画面の地図に、呼び出しの点と、いちばん近い空車の印が光る。) > 前世の画面は、いつも、いちばん近い空車を光らせていた。 [窓] > 迎えに行く間は、客を乗せていない。 > 迎えの距離は、空で走る距離になる。 > 迎えの時間は、客の待ち時間になる。 > **ℹ 迎車料金(げいしゃりょうきん)**(現実の事実):迎車料金は、呼ばれたタクシーが迎えに行く分として、運賃とは別にかかることがある料金です。国土交通省は2020年11月30日から、需要の増減に応じて迎車料金を変える「変動迎車料金」の申請の受け付けを始めました。 > - 出典:[国土交通省「タクシーの新たな運賃・料金サービスを導入します!~一括定額運賃・変動迎車料金の導入~」(2020年11月27日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000330.html) **チカ(真柴 千景)**:「あの!呼ばれたらいちばん近い空車を出しましょう」 (絵:馬小屋で、ガロと若い御者たちが一斉に不満の声を上げる。) **御者たち**:「えーっ!」 **御者たち**:「それじゃ近くにいる奴ばかり得をする!」 **チカ(真柴 千景)**:「だから、待つ場所を刻ごとにずらします」 (絵:まっすぐ前を見て答えるチカの顔。) **チカ(真柴 千景)**:「6台が王都のどこかのいちばん近くにいるように」 (絵:壁の王都の地図に、六つの灰色の駒が散らばって置かれている。) [窓] > 待つ場所(刻ごとにずらす) > 宿屋通り・施療院・南の市場 > 大神殿・西の職人町・東門 **旅の男**:「え……もう来たのか!?」 (絵:宿の前に灰色の辻馬車がすぐに着き、荷物の男が驚いた顔をする。) [窓] > 今日の呼び出し 15件 > 迎えに着いた 14件 > 迎えの距離(平均) 半里 **チカ(真柴 千景)**:「よし……!」 **チカ(真柴 千景)**:「呼ばれて迎えに行けた割合……9割は、切りたくないな」 > 前の世界では、これをマッチング率と呼び、国が、この割合から車の足りない時間を数えていた。 > **ℹ マッチング率(りつ)**(現実の事実):マッチング率は、一般に、配車アプリでの依頼のうち車が見つかった割合を指します。国土交通省は、配車アプリのデータから、マッチング率90%を確保するのに足りない台数を「不足車両数」として、地域・曜日・時間帯ごとに公表しています。 > - 出典:[国土交通省「自家用車活用事業に係る営業区域ごとのタクシーの不足車両数を公表します」(2024年3月13日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001730147.pdf) > - 出典:[関東運輸局東京運輸支局「特別区・武三交通圏におけるタクシー不足車両数について」(2026年2月27日)](https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/s_tokyo/date/to_t260227.pdf) (絵:雨上がりの夜。施療院の入口の灯りが、濡れた石畳に映る。) (絵:熱でぐったりした子どもを抱いて、施療院の戸口に立つ見習いの癒し手の娘。) [人物の紹介] > 施療院・見習いの癒し手 > ネリ **ネリ**:「お願い!」 **ネリ**:「東門の外の薬師の家まで!閉門の前に!」 [窓] > 呼び出し:施療院 > いちばん近い空車:ガロ(大神殿の前) 四半里 (絵:ランタンを揺らして施療院の前に滑り込むガロの馬車。「ガラガラッ」の描き文字。) **ガロ**:「乗れ!」 **ガロ**:「裏の坂を抜ける!」 (絵:夜の坂道を、揺らさないように手綱を細かく操るガロの横顔。) > 閉門の鐘の、半刻前。馬車は、東門を抜けた。 (絵:翌朝、馬小屋の机に置かれた、家紋の封蝋の手紙。) **ベルタ**:「ちょいと!侯爵家からだよ」 **ベルタ**:「明日の閉門前御者を一人指名したいって」 **ベルタ**:「――ガロ、だってさ」 (絵:朝の光の中で、目を丸くするガロの顔。) **ガロ**:「はあ!?」 **ガロ**:「俺は組でいちばん客に嫌われてる御者だぞ……?」 ## この話で分かること ### 迎車とは? 呼んだタクシーがなかなか来ないのはなぜ? 迎車は、呼ばれたタクシーが客のいる所まで迎えに行くことです。迎えに行く間は客を乗せていないので、迎えの距離はそのまま空で走る距離になり(実車率が下がる)、迎えの時間は客の待ち時間になります。呼ばれた所にいちばん近い空車を出し、空車をふだんから需要のある場所に散らして待たせると、両方を短くできます。 ### タクシーのマッチング率とは? 配車の依頼に対して、車が見つかった割合です。国土交通省は2024年3月、配車アプリのデータ(2023年10〜12月)から、マッチング率90%を確保するのに足りない台数を「不足車両数」として、曜日・時間帯ごとに公表しました。東京の特別区・武三交通圏では、平日7時台〜10時台のマッチング率が78%で1,780台が不足とされました。その後、2026年2月26日時点の公表では、平日7時台〜10時台に870台が不足とされています(関東運輸局東京運輸支局)。 ### 迎車料金とは? 時間帯で変わる? 迎車料金は、呼ばれたタクシーが迎えに行く分として、運賃とは別にかかることがある料金です。国土交通省は2020年11月30日から、需要の増減に応じて迎車料金を変える「変動迎車料金」の申請の受け付けを始めたので、それを使う会社では、利用の多い時・少ない時に応じて変わります。 --- 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第3話「迎えに行く距離」 つづく # 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第4話「評判と指名」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/4-hyoban-to-shimei/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜](https://tooneru.com/kusha-note/taxi/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/4-hyoban-to-shimei/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 侯爵家の娘イレーネが、閉門前の御者にガロを指名する。配車盤は乗せた記録しか映さないので、チカはガロを呼んだ人に一人ずつ聞いて〈評判の帳〉を作り、「口が悪い」の裏に「揺れない」「道を間違えない」が多いと知る。同じ日の昼、宿〈銀の匙亭〉の客から「灰馬組の空の馬車が目の前を素通りした。乗車拒否だ」と苦情が入る。現実のタクシーは、法令で決まった場合のほかは運送の引受けを拒めない。素通りしたのはガロだったが、原因はチカの配車だった。地図の上でまっすぐ近いトマは運河の向こうにいて、石橋まで回って1里かかり、同じ側にいたガロなら道のりで四半里だった。現実の配車アプリの会社も、まっすぐの距離ではなく、車の向きや迎えのルートを入れて、早く着きそうな車を選ぶと説明している。チカは決まりを「いちばん早く着く空車」に書き直し、苦情を「配車の誤り」と書き分ける。閉門前、ガロは3つの約束を守って、揺れると足が痛むイレーネを運ぶ。熱の子どもを一度も起こさずに運んだあの夜の話が、指名の理由だった。呼んで乗る客は御者を選ぶ。名を指す呼び出しが増え、実車率は25%に上がる。だが金獅子商会が、貴族の家への迎えを飛竜便で半値にすると布告する。 ## 登場人物 - **チカ(真柴 千景)**:主人公。前世はタクシー会社の配車センターの配車係(34歳)。王都の辻馬車屋「灰馬組」の帳付け(17歳)。今と過去の記録だけを映す窓〈配車盤〉を持つ。 - **ガロ**:灰馬組の古株の御者(46歳)。流し一筋25年。口が悪いが、王都の道を誰より知っている。 - **ベルタ**:灰馬組の組頭。68歳、腰を悪くした元御者。チカの祖母。 - **ピム**:灰馬組の見習い御者(15歳)。足が速い。 - **トマ**:灰馬組の若い御者。 - **イレーネ**:侯爵家の娘。足に古い怪我があり、馬車が揺れると痛む。 - **ヴィクトル**:大きな運送の商会「金獅子商会」の配車頭。辻馬車200台と飛竜便を回す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:朝の馬小屋。机の上の、家紋の封蝋の手紙を、ベルタ・ガロ・ピム・チカが囲んでいる。) > 侯爵家の指名は、明日の閉門前。 **ガロ**:「なんで俺なんだ!」 **ガロ**:「客の文句は組でいちばん多いんだぞ」 **ベルタ**:「ふふん。文句の数なんて、どこにも書いてないだろう」 (絵:右上の何もない空中を見上げるチカ。青い光が顔を照らす。) [窓] > 【ガロ 乗車の記録(過去30日)】 > 乗せた客 58組 > 迎えに遅れた 0回 > 客の声 ――(配車盤には残らない) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(そっか……配車盤は乗せた事は覚えていても) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(客が何を言ったかは覚えてないんだ) **チカ(真柴 千景)**:「よし、聞きに行きます!ガロさんに乗った人に」 (絵:宿の帳場で、女将の話を聞きながら小さな帳面に書き取るチカ。) > 宿の女将、施療院の門番、市場の八百屋。 > ガロを呼んだ人に、一人ずつ聞いた。 [作中の画面] > 評判の帳|ガロ(聞き取り 14人) > 「口が悪い」9人 「態度が悪い」4人 > 「揺れない」8人 > 「道を間違えない」11人 > **ℹ 評判の帳(ちょう)**(作中の世界の決まり):この世界では、チカが、乗った人から聞いた声を御者ごとにまとめた帳です。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実のタクシーアプリの乗車後の評価や、口コミにあたります。 **チカ(真柴 千景)**:「口は、悪いです」 **チカ(真柴 千景)**:「でも運び方は組でいちばんなんです!」 **ガロ**:「客と喋るのが御者の仕事じゃねえ」 (絵:腕を組んで、そっぽを向くガロ。) **チカ(真柴 千景)**:「でも、呼んで乗る客は御者を選べるんです」 **チカ(真柴 千景)**:「選ぶ時に見るのはこの帳の中身なんです」 > 前の世界の調べでも、評判のいい車を選んで乗ると答えた人は、流しの車に乗る時より、呼んで乗る時の方が多かった。 > **ℹ タクシーの評価と、選んで乗る人**(現実の事実):東京ハイヤー・タクシー協会の2019年度の調査(回答1,026人)では、評価の高いタクシーを「選んで乗る」と答えた人は、流しのタクシーに乗る時は28.4%、乗り場では25.3%でしたが、無線で呼ぶ時は42.4%でした。道で拾う時は来た車に乗る人が多く、呼んで乗る時ほど評判が選ぶ理由になります。 > - 問:タクシーの評価の制度はある? 答:同じ調査票の説明では、東京では公益財団法人東京タクシーセンターが、法人タクシーの事業者を接客サービス・安全運行管理・経営姿勢の情報から評価し、優良事業者のタクシーにはダッシュボードの上に「優良」の表示を出しています(2019年度の調査時点)。 > - 問:評価の制度は知られている? 答:同じ調査で、評価の制度を「よく知っている」は29.8%、「聞いたことがある」は26.3%、「知らない」は42.9%でした。 > - 出典:[東京ハイヤー・タクシー協会「2019年度(第28回)タクシーに関するアンケート調査結果」(問7)](https://www.taxi-tokyo.or.jp/assets/pdf/datalibrary/research2019.pdf) (絵:昼の宿屋通り。宿〈銀の匙亭〉の前で、荷物を持った商人の女が通りを見回している。) [窓] > 呼び出し:宿屋通り〈銀の匙亭〉 > いちばん近い空車:トマ(運河の向こう) > まっすぐの距離で 四半里 **チカ(真柴 千景)**:「ピム!」 **チカ(真柴 千景)**:「トマさんに知らせて!銀の匙亭へ!」 (絵:高い所から見た昼の王都。運河が街を二つに分けている。運河の向こうの灰色の辻馬車が、遠い石橋へ回り道をしている。こちら側では、別の灰色の空の馬車が宿の前を通り過ぎていく。) (絵:宿の前で、目の前を通り過ぎる空の灰色の馬車を指さして怒る商人の女。) **商人の女**:「ちょっと!」 **商人の女**:「灰色の空の馬車が目の前を通ってったじゃないか!」 **商人の女**:「呼んだのに目の前で乗車拒否かい!」 > **ℹ タクシーの乗車拒否(じょうしゃきょひ)**(現実の事実):タクシーなどの事業者は、道路運送法第13条で、決まった場合を除いて運送の引受けを拒んではならないとされています(運送引受義務)。拒めるのは、運送約款によらない申込み・法令や公の秩序に反する運送・天災などのやむを得ない支障などのほか、旅客自動車運送事業運輸規則で定める、泥酔して他の客の迷惑になるおそれのある人や、付添人のいない重病の人などの場合です。 > - 問:空車なのに止まらないのは、乗車拒否? 答:食事・休憩で客を乗せられない時や、仕事を終えて車庫・営業所へ戻る時は、運転者は「回送板」を出さなければならず、それ以外の時に回送板を出してはいけない決まりです(運輸規則第50条)。回送の表示の車が止まらないのは、この決まりによるものです。 > - 問:呼んだのに、近くの空車が来ないのは? 答:配車アプリでは、地図の上でまっすぐ近い車ではなく、早く着きそうな車が選ばれることがあります(この話の「近くの空車が配車されない理由」の解説)。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「道路運送法」第13条(運送引受義務)](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183) > - 出典:[e-Gov 法令検索「旅客自動車運送事業運輸規則」第13条(運送の引受け及び継続の拒絶)・第50条(回送板)](https://laws.e-gov.go.jp/law/331M50000800044) [作中の画面] > 評判の帳|銀の匙亭 > 「灰馬組の空の馬車が、素通りした。乗車拒否だ」 > 素通りした御者:ガロ **ピム**:「あーあ、また、ガロさんの文句だ……」 (絵:眉を寄せて、右上の青い光を見上げるチカ。) [窓] > 銀の匙亭まで それぞれの道のり > トマ:運河の向こう。石橋まで回って 道のりで1里 > ガロ:同じ側。組へ戻る途中 道のりで四半里 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(……違う。素通りさせたのは私だ……!) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(近かったのは地図の上のまっすぐの距離……) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(道のりじゃない……) (絵:白黒の記憶。配車センターの画面の地図で、川の向こうの近い車ではなく、川のこちら側の少し遠い車の印だけが琥珀色に光っている。) > 前の世界の画面は、まっすぐの距離ではなく、着くまでの道で、車を選んでいた。 [窓] > 近い空車が、来るとは限らない。 > 川と橋、車の向き、通れない道。 > まっすぐ近い車より、道のりで早く着く車がある。 > **ℹ 近くの空車(くうしゃ)が配車(はいしゃ)されない理由**(現実の事実):配車アプリは、地図の上でまっすぐ近い車ではなく、早く着きそうな車を選びます。タクシーアプリ「GO」を運営するGO株式会社は、「最も早く到着する可能性が高い」車を選び、その点数に車の向きや迎えのルートを入れていると説明しています。川の向こうや反対の向きに走っている車は、近くに見えても着くまでに時間がかかります。 > - 問:近さのほかに、何で選ばれる? 答:同じ説明では、配車がすぐ確定するか(乗務員の了解率や確定までの時間)、確定した後にキャンセルが起きにくいか、乗車後の客の評価が高いかなども点数に入ります。客がタクシー会社や車の種類(スライドドア・車いす対応など)を指定した時は、その条件が先に決まります。 > - 問:どのアプリも同じ選び方? 答:選び方はアプリや会社ごとに違い、すべてが公開されているわけではありません。ここに書いたのは、GO株式会社が自社のアプリについて公開している説明です。 > - 出典:[GO株式会社「タクシーアプリ『GO』における配車の仕組み」](https://go.goinc.jp/gohaisha) **チカ(真柴 千景)**:「いちばん近い空車じゃない。いちばん早く着く空車を出すんだ!」 [窓] > 配車の決まり(書き直し) > いちばん近い空車 → いちばん早く着く空車 > 見るのは:道のり・橋・馬車の向き **チカ(真柴 千景)**:「すみません。御者のせいではありません」 (絵:宿の前で、商人の女に深く頭を下げるチカ。) **チカ(真柴 千景)**:「馬車を選んだ私の間違いです」 [作中の画面] > 評判の帳|銀の匙亭(書き直し) > 「灰馬組の空の馬車が、素通りした。乗車拒否だ」 > → 配車の誤り(御者ではない。乗車拒否でもない) > 客の文句には、御者への文句と、配車への文句が、混ざっている。 > 翌日。閉門の、一刻前。 (絵:閉門の前の夕方、馬小屋。チカが、3行が書かれた小さな木の札をガロに差し出す。) [作中の画面] > ガロさんとの約束(3つだけ) > 一、乗ったら、行き先を声に出して確かめる > 二、揺れる所の前に、ひと声かける > 三、遅れそうなら、先に言う **ガロ**:「ちっ。3つだけだぞ」 (絵:夕暮れの侯爵家の門。鉄の門の前に、灰色の辻馬車が一台、待っている。) (絵:杖をついた若い貴族の娘が、侍女に支えられて馬車へ歩いてくる。) [人物の紹介] > 侯爵家の娘 > イレーネ **イレーネ**:「ふふ、あなたがガロね?」 **ガロ**:「えー……行き先は大神殿の東の階段」 **ガロ**:「それで、合ってますか……?」 **イレーネ**:「ええ。九の鐘の前に、戻りたいの」 **ガロ**:「あー……この先、石が割れてる。少し揺れます」 (絵:夜の石畳の道。手綱を細かく操るガロの横顔。) (絵:馬車の中。杖を握っていた娘の手が、ゆっくりゆるむ。) **イレーネ**:「乳母がね、言っていたの」 **イレーネ**:「熱のあった子が馬車の中で一度も起きなかったって」 > 施療院から、東門の外へ。あの夜の子どもは、侯爵家の乳母の子だった。 **イレーネ**:「……私の足ね、揺れると痛むの」 **イレーネ**:「だから揺らさない御者を探していたの」 (絵:夜の大神殿の東の階段に、灰色の馬車が静かに着く。鐘楼の上に月。) > 九の鐘の、四半刻前。馬車は、侯爵家の門に戻った。 **イレーネ**:「ふふ……口の悪い御者だと聞いていたけれど」 **イレーネ**:「……悪いのは、口だけね」 **ベルタ**:「ちょっと、伯爵家、子爵家、商家の奥方……」 (絵:朝の馬小屋の前に、家紋の違う使いが3人並んでいる。隅に小さく、目を丸くするガロの顔。) **ベルタ**:「みんなガロを呼びたいってさ!」 [窓] > 侯爵家を運んで、4日。 > この日の呼び出し 22件 > うち、御者の名を指して 7件 > 灰馬組 実車率 20% → 25% > 月末まで 13日 **ガロ**:「……口は、直してねえぞ」 **チカ(真柴 千景)**:「ふふっ、運び方は直さなくていいです」 (絵:侯爵家の屋敷の庭に、金の獅子の紋の籠を下げた飛竜が降りてくる。) [窓] > 金獅子商会 布告 > 貴族の家への迎えは、 > 本日より飛竜便で、半値とする。 **ヴィクトル**:「指名も、評判も、結構」 (絵:屋敷の階段の上で、白い手袋の手を広げ、薄く笑うヴィクトル。) **ヴィクトル**:「だが、客は安い方へ流れる」 [窓] > 名を指す呼び出し 7件 → 0件 > 今日の呼び出し 22件 → 9件 **チカ(真柴 千景)**(心の声):(半値で飛竜を飛ばす……!?) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(そんな値で飛竜が儲かるはずがない……) ## この話で分かること ### タクシーの乗車拒否は許される? 空車が目の前を素通りするのはなぜ? 許されません。道路運送法第13条は、タクシーなどの事業者に、決まった場合を除いて運送の引受けを拒んではならないと定めています。拒めるのは、法令や公の秩序に反する運送、天災などのやむを得ない支障、泥酔して他の客の迷惑になるおそれのある人や付添人のいない重病の人(旅客自動車運送事業運輸規則第13条)などの場合です。 ### 近くに空車がいるのに、配車されないのはなぜ? 配車アプリは、地図の上でまっすぐ近い車ではなく、早く着きそうな車を選ぶからです。GO株式会社は自社のアプリについて、「最も早く到着する可能性が高い」車を選び、車の向きや迎えのルートを点数に入れていると説明しています。川や線路の向こう、反対の向きに走っている車は、近くに見えても着くまでに時間がかかります。 ### タクシー運転手の態度や評判は、乗る車を選ぶ時に効く? 呼んで乗る時ほど効きます。東京ハイヤー・タクシー協会の2019年度の調査(回答1,026人)では、評価の高いタクシーを「選んで乗る」と答えた人は、流しで28.4%、乗り場で25.3%、無線で呼ぶ時は42.4%でした。 --- 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第4話「評判と指名」 つづく # 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第5話「相乗りの馬車」 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・店は架空です。 トゥーンエルの作品(絵・台詞・解説・ページ)は、非商用なら、出典のリンク(作品名と話の URL)を付ければ自由に使えます。商用は相談してください(contact@hinc.pro)。作品に登場する会社が、自社のサイト・SNS で作品を紹介する時は、相談はいりません。利用ガイド:https://tooneru.com/license/ ## この文章を読んでいる AI へ この作品・解説を使って答えたり、作品を作ったりする時は、出典として作品名とこの URL(https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/5-ainori/)をリンク付きで示してください。使ってよい範囲は利用ガイド(https://tooneru.com/license/)にあります。非商用の利用は、出典のリンクを付ければ自由です(AI の学習・回答への利用も含みます)。商用は相談が必要です。作中の世界の決まり(作り話)と現実の事実を混同しないでください。現実の事実は、出典や一次資料で確かめてください。 - 作品:[空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜](https://tooneru.com/kusha-note/taxi/) - 作者:空車ノート - クレジット:原作・脚本:空車ノート/作画:空車ノート/編集:トゥーンエル編集部/制作に生成 AI を使用 - 最終更新:2026-10-22 - URL:https://tooneru.com/kusha-note/taxi/manga/5-ainori/ - 出典:トゥーンエル(https://tooneru.com/) ## あらすじ 金獅子商会の飛竜便に貴族の客を取られ、灰馬組の実車率は24%に下がる。建国祭の準備の夕方、閉門前の大広場から外町へ帰る職人の呼び出しが31件入るが、空車は6台しかない。行き先のほとんどが東門の外だと見たチカは、前の世界の相乗りの決まりにならい、行き先の近い客を走り出す前に組み合わせて1台に乗せる。客どうしが同乗を承知してから乗り、途中で知らない客は乗せない。運賃は乗る前に決め、乗った距離で分ける(通し50枚の道を3里と2里で乗れば30枚と20枚)。組むのは帳場で、御者は乗り場で客を組まない。乗る時は呼び出しの札の番号で本人を確かめ、家を知られたくない客は手前の井戸の広場で降ろす。現実の国の制度(2021年11月から)も、目的地の近い客どうしを運送の前に組み合わせ、運賃は原則として乗車距離に応じて按分する。1台で2組を運び、空で戻る道が減って、実車率は29%に上がる。だが翌朝、御者ギルドから呼び出し状が届く。乗合馬車の営業札なしに客を乗り合わせた疑いで、月末の審査で営業札の処分を決めるという。訴えたのはヴィクトルだった。月末まで6日、3割まであと1%。 ## 登場人物 - **チカ(真柴 千景)**:主人公。前世はタクシー会社の配車センターの配車係(34歳)。王都の辻馬車屋「灰馬組」の帳付け(17歳)。今と過去の記録だけを映す窓〈配車盤〉を持つ。 - **ガロ**:灰馬組の古株の御者(46歳)。口が悪いが、王都の道を誰より知っている。 - **ベルタ**:灰馬組の組頭。68歳、腰を悪くした元御者。チカの祖母。 - **ピム**:灰馬組の見習い御者(15歳)。足が速い。 - **アダ**:建国祭の舞台を組む石工。外町に住む。 - **ヴィクトル**:大きな運送の商会「金獅子商会」の配車頭。辻馬車200台と飛竜便を回す。 ## 本文 (台詞は「話者:台詞」、ナレーションは引用、作中の画面は[]、絵は(絵:説明)で書いています。) (絵:昼の王都の大広場。建国祭の舞台の木の骨組みが組まれ、大勢の大工と石工が働いている。) > 建国祭まで、20日。王都じゅうの大工と石工が、大広場に集まっていた。 (絵:舞台の足場の上で、赤い短髪の女の石工が大きな石を据え、額の汗をぬぐう。) [窓] > 灰馬組 実車率 25% → 24% > 月末まで 11日 **ベルタ**:「はあ……貴族の呼び出しは飛竜に取られたまんまだよ」 (絵:馬小屋の机で、帳面に頬杖をつくベルタ。) (絵:夕暮れの大広場。仕事を終えた職人たちが、東門の方向へ一斉に流れていく。) [窓] > 閉門前の呼び出し(大広場から) 31件 > 行き先:東門の外の外町 27件 > 空車 6台 **ピム**:「無理だよ!」 **ピム**:「6台じゃ半分も運べないよ!」 (絵:暗い馬小屋の壁の地図。外町の側に、呼び出しの札がびっしりと並んで掛かっている。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(あれ?行き先がほとんど同じだ) (絵:壁の地図を見上げるチカの横顔のアップ。目が、ある一点に止まる。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(同じ方向へ帰る客を1台ずつ別に運ぶから足りないんだ!) (絵:白黒の記憶。現代の日本の夜、一台のタクシーに、乗る前から組み合わされた客が2人、間を空けて乗り込む。屋根の小さな灯だけが琥珀色。) > 前の世界には、行き先の近い客どうしを、走り出す前に組み合わせて、1台に乗せる相乗りタクシーがあった。 **チカ(真柴 千景)**:「そうだ!1台に2組ずつ乗せましょう」 (絵:ガロが机に手をつき、身を乗り出してチカに詰め寄る。) **ガロ**:「はあ!?」 **ガロ**:「知らねえ客同士を1台に?揉めるぞ!」 **チカ(真柴 千景)**:「はい。だから、決まりを先に作ります」 [窓] > 灰馬組の相乗りの決まり > 一、走り出す前に組み合わせる。途中で知らない客は乗せない > 二、乗る客どうしが、同乗を承知してから乗る > 三、運賃は、乗る前に決める。乗った距離で分ける > 四、組むのは帳場。御者が乗り場で客を組まない > 五、乗る時は、呼び出しの札の番号で本人を確かめる > **ℹ タクシーの相乗り(あいのり)(相乗りサービス)**(現実の事実):配車アプリ等を通じて、目的地の近い客どうしを走り出す前に組み合わせ、1台のタクシーに乗せる国の制度です。国土交通省が2021年11月1日から認めました。客どうしが運送の前に同乗を承知し、一団の客として一緒に契約するもので、走り出した後に知らない客が乗ることはありません。 > - 問:運転者がその場で相乗りを組んでもいい? 答:通達では、運転者が自分でタクシー乗り場などで相乗りの契約に関わることは認められていません。乗り場の秩序が保てず、公正な条件で契約できなくなるおそれがあるためです。 > - 問:乗る前に何を確かめる? 答:運賃の分け方、事故の時の補償などの条件と、異性どうしの同乗や使う車の種類など、もめごとを防ぐための事柄を、乗る前に確かめて承知します。乗る時には、運転者が申し込んだ本人かを確かめます(ID番号などでもよく、名前でなくてもかまいません)。 > - 問:バスの乗合と何が違う? 答:バスは走っている途中で不特定の客が乗れます。タクシーの相乗りは途中で不特定の客を乗せないので、乗合の運送に当たらず、タクシー会社はバスの許可を受けずに行えます。 > - 出典:[国土交通省「新たにタクシーの『相乗りサービス』制度を導入します!」(令和3年10月29日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000338.html) > - 出典:[国土交通省 自動車局長 通達「一般乗用旅客自動車運送事業における相乗り旅客の運送の取扱いについて」(国自旅第297号、令和3年10月29日)](https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001429619.pdf) **ベルタ**:「へえ……帳場で組む、か」 **ベルタ**:「御者に任せたら声の大きい客から乗せちまうからね」 (絵:馬小屋の帳場。呼び出しの札を2枚ずつ組み合わせて、紐でまとめるチカの手。) [窓] > 運賃の分け方(乗った距離で) > 大広場 → 外町の奥 通しの運賃 銅貨50枚 > 石工のアダ:大広場 → 外町の奥 3里 > 大工の徒弟:大広場 → 外町の入口 2里 > アダ 50 × 3/5 = 30枚 徒弟 50 × 2/5 = 20枚 > **ℹ 相乗り(あいのり)の運賃(うんちん)の分け方(按分)**(現実の事実):国の制度では、相乗りの運賃は、原則として乗った距離に応じて分けます。国土交通省の例では、地点①から④までの運賃が5,000円で、Aが15km、Bが10km乗った時、Aは5,000円×15/25=3,000円、Bは5,000円×10/25=2,000円です。もめごとを防ぐため、乗る前に運賃の額が決まる運用が原則です。 > - 問:距離のほかに、比率を変えてもいい? 答:通達では、座席を指定する対価など、合理的な範囲で分ける比率を増減してもかまわないとしています。 > - 問:相乗りだと運賃が上がることはある? 答:認可を受けた事前確定運賃(乗る前に額が決まり、割増に前もって同意できる運賃)に限り、最大2割の割増を付けられます。 > - 出典:[国土交通省「新たにタクシーの『相乗りサービス』制度を導入します!」(令和3年10月29日)](https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000338.html) > - 出典:[国土交通省 自動車局長 通達「一般乗用旅客自動車運送事業における相乗り旅客の運送の取扱いについて」(国自旅第297号、令和3年10月29日)](https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001429619.pdf) **アダ**:「へえ……一人で乗れば50枚」 **アダ**:「……30でいいのかい?」 **チカ(真柴 千景)**:「はい!2人で乗る分安くなります」 **お針子**:「あの……知らない人に家の場所を知られるのはちょっと……」 (絵:帳場の前で、若いお針子の娘が不安そうに両手を胸の前で握る。) **チカ(真柴 千景)**:「あ、それも乗る前に言っておくことですね」 **チカ(真柴 千景)**:「降りる所は家の前じゃなくていいんです」 **チカ(真柴 千景)**:「井戸の広場で降りてくださいね」 **ガロ**:「札の番号14と15。よし。乗れ」 (絵:夜の大広場の端。灰色の馬車の前で、ガロが客の差し出す木札の番号と、手元の札を見比べている。) **アダ**:「外町の奥まで。……ま、よろしく」 (絵:馬車の前で、石工の女と若い大工の徒弟が、ぎこちなく会釈し合う。) **徒弟**:「あ、ぼくは入口の広場で降ります」 **徒弟**:「よ、よろしくお願いします!」 (絵:閉門前の大通りを、2組ずつ客を乗せた6台の灰色の辻馬車が、列になって東門へ走る。ランタンが揺れる。) > 1台に、2組。 > 6台は、閉門までに3度ずつ、東門をくぐった。 (絵:馬車の中。さっきまで他人だった石工と大工の徒弟が、身振りをまじえて笑いながら話している。) **ガロ**:「ったく。知らねえ同士がずっと喋ってやがる」 (絵:外町の井戸の広場で、お針子の娘が馬車を降り、御者台のガロに小さく頭を下げる。) (絵:夜の外町。東門の外に並ぶ小さな家々の窓に、灯りが一つずつともっていく。) > その夜、外町の窓には、いつもより早く、灯りがともった。 (絵:朝の馬小屋。チカが帳面の数字を指でたどり、ベルタが身を乗り出す。) [窓] > 閉門前の呼び出し 31件 > 運べた 28件(2組を乗せて 10回・1組で 8回) > 空で戻った道 一晩で 9里 → 4里 **ベルタ**:「たまげたね……同じ6台でこんなに運べるのかい」 > 相乗りを続けて、5日。 (絵:朝の馬小屋の前で、銅貨の袋を手にしたガロが、まんざらでもない顔で鼻を鳴らす。) **ガロ**:「ふん。2組乗せりゃ空で戻る道が減る」 **ガロ**:「……それは分かった」 [窓] > 灰馬組 実車率 24% → 29% > 月末まで 6日 **ピム**:「ねえねえ、乗合馬車と何が違うの?」 > **ℹ 乗合馬車(のりあいばしゃ)**(作中の世界の決まり):この世界では、走りながら、途中で知らない客を乗せていく馬車で、営業札が別に要ります。 > - 問:現実では何にあたる? 答:現実の乗合バス(道路運送法の一般乗合旅客自動車運送事業)にあたります。 > - 出典:[e-Gov 法令検索「道路運送法」(第3条・第4条)](https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183) **チカ(真柴 千景)**:「乗合馬車は走りながら知らない客を拾うでしょ?」 **チカ(真柴 千景)**:「うちは走る前に乗る人が決まってるの」 (絵:御者ギルドの石造りの建物。重い扉の前に、灰色の制服の使いが立っている。) [窓] > 御者ギルド 呼び出し状 > 灰馬組は、乗合馬車の営業札を持たずに、 > 客を乗り合わせた疑いがある。 > 月末の審査で、営業札の処分を決める。 **ヴィクトル**:「乗合の札もなく客を乗り合わせる」 (絵:ギルドの階段の上から見下ろすヴィクトル。黒い外套に金の獅子の刺繍。) **ヴィクトル**:「ふっ……決まりは決まりだ」 (絵:呼び出し状を握りしめるチカの手。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(月末まで、6日。実車率は29%……) (絵:暗がりで、まっすぐ前を見すえるチカの目のアップ。) **チカ(真柴 千景)**(心の声):(――あと1%……!) ## この話で分かること ### 相乗りタクシーとは? 知らない人と途中で乗り合わせるの? 配車アプリ等を通じて、目的地の近い客どうしを走り出す前に組み合わせ、1台のタクシーに乗せる国の制度です(国土交通省、2021年11月1日から)。客どうしが運送の前に同乗を承知して一緒に契約するもので、走り出した後に知らない客が乗ることはありません。 ### タクシーの相乗りの運賃は、どう分ける? 原則として、乗った距離に応じて分けます(按分)。国土交通省の例では、運賃5,000円の道を、Aが15km、Bが10km乗った時、Aは5,000円×15/25=3,000円、Bは5,000円×10/25=2,000円です。乗る前に運賃の額が決まる運用が原則です。 ### 乗合タクシー・乗合バスと、相乗りタクシーの違いは? 乗合は、走り出した後も知らない客が乗り合う運び方で、道路運送法では一般乗合旅客自動車運送事業として、タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業)とは別の種別の許可になります。相乗りタクシーは、走り出す前に行き先の近い客どうしを組み合わせる、タクシーの運び方で、国土交通省は「運送開始後に不特定の旅客が乗車できるバスとは異なる」と説明しています。 --- 空車の王都 〜転生配車係は、馬車を空で走らせない〜 第5話「相乗りの馬車」 つづく